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事件 平成 24年 (ネ) 10065号 不正競争行為差止請求控訴事件

控訴人 プリヴェAG株式会社
訴訟代理人弁護士 大野聖二
同 井上義隆
同 小林英了
被控訴人株式会社総通
被控訴人 有限会社日本光材
両名訴訟代理人弁護士 村林驤
同 井上裕史
同 佐藤潤
同 佐合俊彦
同補佐人弁理士 玉利 冨二郎
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/02/06
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは,原判決被告商品目録記載の物件を製造し,譲渡し,引き渡し, 譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通 じて提供してはならない。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
事案の概要
1 本件は,控訴人が,被控訴人らに対し,控訴人が販売する原判決別紙原告商品目録1〜3の商品(以下,併せて「原告商品」と総称する。)に共通する形態は需要者の間に広く認識されている商品等表示に該当し,原判決別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)を,被控訴人有限会社日本光材が製造し,被控訴人らが販売する行為は,原告商品との混同を生じさせる行為であり,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争に該当すると主張して,同法3条1項に基づき,被告商品の製造,販売等の差止めを求める事案である。
2 原審の東京地裁は,平成24年7月4日,原告商品の共通形態は,他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴に当たるものということができず,商品等表示性を認めることができないとして,控訴人の被控訴人らに対する請求をいずれも棄却した。
そこで,控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。
当事者の主張
1 前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,次に付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の第2の1,2及び第3記載のとおりであるから,これを引用する(略称は,本判決で注記したもののほか,原判決のものを用いる。)。
2 当審における控訴人の主張 (1) 原告商品の共通形態の認定について ア 原判決は,原告商品のレンズ部分の形状がいずれも略長方形状であるにもか かわらず,これを否定した点において,誤りである。
イ 原告商品は,@耳と鼻に掛ける眼鏡タイプの形態からなるルーペであり(以下「特徴@」という。),Aそのレンズ部分は眼鏡の重ね掛けができる程度に十分大きい一対のレンズを並べた略長方形状(以下「特徴A」という。)という共通形態を備えている。
ウ 原判決は,特徴Aについて,レンズ部分が略長方形状であることは共通形態ではないと判示した。しかし,原告商品のレンズ部分の形態につき,その細部の形状を殊更に強調する原判決は,原告商品の商品形態の認定を誤るものである。控訴人は,原告商品のレンズ部分の形状が厳格に「長方形」であると主張するものではなく,若干の丸みや切り欠き等が存することを前提として,「略長方形状」,すなわち,おおよそ長方形であると主張するものであり,原告商品1〜3がこれに該当することは明白である。原判決の認定は,原告商品の細部の形状を殊更に強調して,原告商品のレンズ部分の形状が「略長方形状」であることを否定するものであり,控訴人の主張を正解せずになされたものである。
(2) 原告商品の共通形態の商品等表示性について ア 原判決は,原告商品の商品等表示性を判断する際に,ルーペを比較対象となる他の同種商品とすべきであるにもかかわらず,老眼鏡を他の同種商品とし,原告商品の商品等表示性を否定した点において,誤りである。
イ 原告商品は,特徴@,Aの共通形態を備えている。かかる形態を備えるルーペが全く存在しない状況下において,控訴人は,眼鏡タイプのルーペというカテゴリに属する商品を,ほぼ独占的に販売するとともに,各種媒体を通じて原告商品を強力に宣伝広告してきたことから,他の商品と識別し得る独特の特徴である上記共通形態を備え得る原告商品は,遅くとも平成21年4月末頃には,商品等表示性を獲得するに至ったことは明白である。
なお,原判決は,原告商品の共通形態のうち,特徴@における「眼鏡タイプの形態」に関して,「原告が原告商品の共通形態として主張するものが,市場において 広く眼鏡タイプとされるルーペを含むものか,通常の眼鏡の形態のものに限定するものかは必ずしも明らかではないので,以下では,この2つの場合を分けて検討する」(21頁8行〜10行)としたが,控訴人は,原告商品の共通形態における 眼 「鏡タイプの形態」とは, 常の形態の眼鏡を意味していることを明らかにしており, 通以下においては,「眼鏡タイプの形態」を「通常の形態の眼鏡のもの」に限定した場合において,原判決の認定が誤りであることを明らかにする。
ウ 比較対象となる商品はルーペであること 原判決は,老眼鏡が比較対象の同種商品となる理由として,@老眼鏡とルーペはいずれも高齢者が近くの小さい文字等が見にくい場合に用いるという点では機能上の共通点があること,Aネット上で同種商品として取り上げられていること,B小売店等において近接した場所で販売している例が認められること,を挙げている。
しかし,上記@〜Bは,いずれも原告商品と老眼鏡を同種商品とすべき理由にはならない。
上記@は,高齢者が小さい文字等を見たいという使用場面における重なりであって,機能上の共通点ではない。老眼鏡を必要とする高齢者がルーペだけでものを見ようとしても,程度の差こそあれ,単にぼけている像を拡大していることになることから(甲41),両者に機能上の共通点を見いだすことは不可能である。
次に,上記Aについては,そもそも原告商品は,ルーペであることを強調した態様で販売されているのであり,ネット上で一部の業者が原告商品を老眼鏡のカテゴリーに分類し販売していることによって,原告商品の機能が老眼鏡に変遷することはありえない。
上記Bについては,眼鏡タイプのルーペである原告商品が眼鏡エリアに近接して販売されることは,何ら不自然なことではなく,この点を捉えて原告商品が老眼鏡と同種商品となり得る余地はない。
エ 原告商品が老眼鏡と同種商品とならないことは,原告商品は老眼鏡とは異なりテレビショッピングや通販雑誌等を通じた宣伝広告が繰り返しなされているとい う事実,また,価格帯を異にしているという事実からも明確に裏付けられる。
(3) 老眼鏡を比較対象となる他の同種商品とした場合について ア 仮に,老眼鏡を比較対象となる他の同種商品とした場合であっても,原告商品は他の同種商品(老眼鏡)と識別し得る独特の特徴を有している。
イ 原判決は,「原告が原告商品の共通形態であると主張する原告商品の上記@及びAの形態は,同種製品である老眼鏡の形態(乙24の16・18,25の1ないし3・5・9・11ないし14,26の1ないし5)と比較して,これらと識別し得る独特の特徴といえるものではない」(24頁下から3行〜25頁2行)と判示した。
しかし,上記各証拠に記載されている老眼鏡のレンズ形状は,通常の眼鏡と異なるものではなく,特徴Aの「眼鏡の重ね掛けができる程度に十分大きい一対のレンズを並べた略長方形状」という形態を備えた老眼鏡は一切開示されていない。さらに付言すれば,レンズ部分が「略長方形状」であることが原告商品の共通形態であることが否定されるとしても,「眼鏡の重ね掛けができる程度に十分大きい一対のレンズを並べた形態」の老眼鏡は,上記証拠上一切開示されていない。
したがって,原告商品の商品等表示性を判断する際に,比較対象として老眼鏡を他の同種商品としても,特徴Aの形態を備える原告商品は,他の同種商品である老眼鏡と識別し得る独特の特徴を有する。
3 控訴人の主張に対する被控訴人の反論 (1) 原告商品の共通形態の認定の主張に対し 商品等表示性を判断するための商品の形態の抽出にあっては,需要者の識別の対象となる具体的な形態を認定すべきであることはいうまでもない。
したがって, 「おおよそ長方形」などという上位概念で商品の形態を捉えようとする控訴人の主張には,理由がない。
原告商品1〜3のレンズ部分の形態は,それぞれが特徴的な形状となっているから,具体的なレンズ部分の形態に「共通形態」は見いだせない。
(2) 原告商品の共通形態の商品等表示性の主張に対し ア 原告商品と眼鏡タイプとされるルーペが同種商品であることは明らかであるから,商品等表示性の判断において対象となる同種商品は,「市場において広く眼鏡タイプとされるルーペ」を含む(老眼鏡+眼鏡+眼鏡タイプルーペ)とするのが適切である。
イ 控訴人は,自ら原告商品を「ペアルーペ 老眼鏡」(乙24,甲61,62等)と表示し,老眼鏡と同種商品であると明示して,需要者の多くがアクセスするネットなどで販売している。
したがって,需要者において,原告商品と老眼鏡とが同種商品と認識されているのは明らかであるから,控訴人の主張には理由がない。
(3) 仮に,原告商品のレンズ部分の具体的形態が商品等表示性を有するとしても,被告商品は,「同一若しくは類似商品等表示」を使用していない。
原告商品は,いずれも左右のレンズ部分が枠部分を介さず「一対のレンズを並べた形態」となっており,当該形態は,原告商品の特徴的な形態である。
これに対し,被告商品は,左右のレンズ部分の間にレンズフレームが存在し,「一対のレンズを並べた形態」ではないから,「同一若しくは類似商品等表示」ではない。
当裁判所の判断
1 当裁判所も,原告商品の共通形態は,他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴を有しているということができず,不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当するということができないから,控訴人の被控訴人らに対する本訴請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第4記載のとおりであるから,これを引用する。
2 控訴人の当審における主張に対する判断(1) 原告商品の共通形態の認定について ア 控訴人は,原告商品は,@耳と鼻に掛ける眼鏡タイプの形態からなるルーペ であり(特徴@),Aそのレンズ部分は眼鏡の重ね掛けができる程度に十分大きい一対のレンズを並べた略長方形状(特徴A)という共通形態を備えるものであり,特徴Aについて,レンズ部分が「略長方形状」であることは共通形態ではないとした原判決は,誤りであると主張する。
イ 原告商品のレンズ部分の形態は,上記認定(引用に係る原判決17頁5行〜21行及び別紙原告商品目録添付の原告商品写真目録1〜3)のとおりであり,原告商品1,2においては,いずれもレンズ部分が「略長方形状」と認められるが,原告商品3においては,レンズ部分は, 辺中央部分が浅い半円状に切り欠かれた 下形状となっており, 辺部分は, 下 上記切欠き部分から左右に向けてやや斜め上方向に持ち上がっており,左右下隅はやや丸みを帯びた形状となって,丸みを帯びた左右辺につながり,下辺中央部には,半円状の切り欠き部分がある。そうすると,原告商品3のレンズ部分には,4隅(特に左右下隅)及び下辺中央部にかなりの大きさの曲線部分が存在し, 需要者にはそのような形態として認識されるものと認められ,これを「略長方形状」の形態と認めることはできない。
したがって, レンズ部分が略長方形状であることは共通形態ではないとした原判決の認定に誤りはなく,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 原告商品の共通形態の商品等表示性について ア 控訴人は,原告商品は特徴@,Aの共通形態を備えており,同様の形態を備えるルーペが全く存在しない状況下において,眼鏡タイプのルーペをほぼ独占的に販売するとともに, 種媒体を通じて原告商品を強力に宣伝広告してきたことから, 各原告商品は遅くとも平成21年4月末頃には商品等表示性を獲得したと主張する。
イ しかし,特徴Aのうちレンズ部分が「略長方形状」である点は,原告商品の共通形態と認められないことは,上記(1)のとおりである。
ウ そして,「耳と鼻に掛ける眼鏡タイプの形態からなるルーペであり」,「そのレンズ部分は眼鏡の重ね掛けができる程度に十分大きい一対のレンズを並べた形状」が原告商品の共通形態として認められても,上記認定(引用に係る原判決21 頁15行〜22頁18行)のとおり,控訴人が原告商品が周知性を獲得したと主張する平成21年4月よりも前から,「耳と鼻に掛ける眼鏡タイプの形態からなるルーペであり」「一対のレンズを並べた形状」(ただし,「眼鏡の重ね掛けができる」タイプではない。)の眼鏡タイプのルーペ(甲6の池田レンズ工業株式会社製「メガネタイプ」)や,フレームから前方に突出したアームに取り付けられた「一対のレンズ」を眼鏡に取り付けることにより,眼鏡の上から「重ね掛けができる」タイプの双眼ルーペ(同「クリップタイプ」)が販売されていたことが認められる。したがって,「耳と鼻に掛ける眼鏡タイプの形態」,「眼鏡の重ね掛けができる」形態,「一対のレンズを並べた形状」の形態は,いずれも,従前から他社の眼鏡タイプのルーペや双眼ルーペにも見られたもので,他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴であると認めることはできず,原告商品の上記共通形態は,これらの形態を組み合わせたものにすぎないから,他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴ということはできない。
エ 以上のとおり,原告商品の共通形態は,他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴を有しているということはできないから,その余の点について検討するまでもなく,不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当するということはできない。
3 結論 よって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の被控訴人らに対する請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 俊文
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