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事件 平成 24年 (ネ) 10067号 不正競争行為差止請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/03/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成25年3月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成24年(ネ)第10067号 不正競争行為差止請求控訴事件

原審・東京地方裁判所平成23年(ワ)第7924号

口頭弁論終結日 平成25年2月28日

判 決

控 訴 人 日本車輌製造株式会社

同訴訟代理人弁護士 熊 倉 禎 男

佐 尾 重 久

富 岡 英 次

相 良 由 里 子

小 林 正 和

被 控 訴 人 日本車両リサイクル株式会社

同訴訟代理人弁護士 佐 藤 治 隆

同 弁理士 花 村 太

主 文

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人は,「日本車両リサイクル株式会社」の商

号を使用してはならない。

3 被控訴人は,富山地方法務局平成21年6月25日

付けでなされた被控訴人設立の登記中,「日本車両

リサイクル株式会社」なる商号の抹消登記手続をせ

よ。

4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

主文同旨


1
第2 事案の概要(略称は,審級に応じた読替えをするほか,原判決に従う。)

1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人の商号が,@控訴人の著名な

営業表示と類似し(不正競争防止法2条1項2号),又は,A被控訴人の周知の営

業表示と類似し,控訴人の営業と混同を生じさせる(同項1号)として,同法3条

1項に基づき,当該商号の使用の差止めを求めるとともに,同条2項に基づき,当

該商号の抹消登記手続を求める事案である。

原判決は,「日本車両」との表示(控訴人表示)が控訴人の営業であることを示

す表示として,著名であると認めることはできないし,需要者の間に広く認識され

ているとも認められないとして,控訴人の請求を棄却した。

そこで,原判決を不服として,控訴人が控訴したものである。

2 前提となる事実(いずれも当事者間に争いがない。)

(1) 控訴人は,各種鉄道車両の製造等を目的として,明治29年8月18日に

設立された株式会社であり,会社案内冊子やウェブサイトにおいて,控訴人の営業

であることを表示するものとして,控訴人表示を使用している。

(2) 被控訴人は,鉄道車両の解体,リサイクル等を目的として,平成21年6

月25日に設立された株式会社である。

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点に関する当事者の主張は,後記2のとおり付加するほかは,原判決の

「事実及び理由」の第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 当審における主張(争点1(控訴人表示が,控訴人の営業表示として著名又

は周知であるか否か)について)

〔控訴人の主張〕

(1) 控訴人表示の著名性周知性について

ア 控訴人表示と旧字体の「日本車輌」との区別について

原判決は,旧字体で表記された「日本車輌」と控訴人表示とを区別した上で,控

訴人の営業表示であることを示す表示として控訴人表示のみが使用された全国紙の


2
全国版は,昭和37年4月26日付けの朝日新聞にとどまると認定した。

しかし,「輌」という文字が常用漢字の「両」に該当することは常識的に知られ

ている。そして,「輌」は常用漢字ではないため,控訴人の略称に限らず,一般的

に「車輌」を「車両」と表記することが多く行われていることは経験則上明らかで

あり,「車輌」の文字に触れた一般の需要者は,これを「車両」の記載と同視する

ものである。

また,控訴人を示す略称として,「日本車輌」との表記と控訴人表示とが渾然一

体として使用されてきた歴史に鑑みれば,いずれの表記も区別なく,広く知られて

いるものと考えるのが自然である。

したがって,控訴人の略称として使用されることのある「日本車輌」という表記

を,控訴人表示と区別することに合理性はない。

イ 控訴人による控訴人表示の積極的使用について

原判決は,控訴人がその営業であることを示す表示として控訴人表示を使用ない

し宣伝していたことは格別窺えないと判断した。

しかし,控訴人は,カタログや新聞,雑誌等の宣伝広告等において,控訴人表

示及び「日本車輌」との表示を控訴人の社名の略称,商品,役務等の表示として

古くから使用してきた。

また,控訴人は,控訴人表示又は「日本車輌」との表示を鉄道車両の銘板や建

設機械の本体に明瞭に表示してきた。例えば,旅客車両には,「日本車両」等の

文字が表示された銘板が,一般旅客等の目に触れやすい位置に,見やすい大きさ

の文字で張り付けられ,一般旅客等が長期間にわたって繰り返し見ることができ

るものとなっている。

さらに,控訴人は,平成8年に創業100周年を迎えたことを契機として,

「ベーシックデザインマニュアル」を作成し,控訴人表示と社標とを組み合わせ

た社名ロゴマークが使用される様々なものについて,表記方法のルールを定めた。

こ れに従い,建物の看板,社用車,会社備品,展示会用のぼり,工事現場にお


3
け る看板等の表示が社名ロゴマークに統一された。

以上によれば,控訴人が,控訴人の営業を表示するものとして,控訴人表示を

積極的に使用,宣伝していたことは明らかである。

ウ 新聞記事における控訴人表示について

過去10年余の間に限り,主要な新聞の記事において,控訴人の略称として控

訴人表示又は「日本車輌」との表示が使用された例を検討すると,少なくとも,

414件の記事(甲48〜453)を見いだすことができる。また,甲550の

報告書の調査結果によれば,控訴人の略称として,控訴人表示又は「日本車輌」

との表示が使用された393件の新聞記事のうち,82件が全国紙の全国版に掲

載された記事であった。さらに,甲443及び550の各報告書にまとめられた

新聞記事のうち,控訴人表示が使用されている全国紙の全国版の記事は92件あ

り,更にそのうち70件については,見出しあるいは副見出しにおいて控訴人表

示が明記されている。

エ 雑誌における控訴人表示について

控訴人表示又は「日本車輌」との表示は,週刊東洋経済,エコノミスト等の著

名かつ一般的な経済誌において,控訴人の営業を表示するものとして使用されて

いる。

オ その他のメディア等における使用事例について

控訴人表示やその音読みは,テレビ放送及びラジオ放送,ユーチューブ等にお

いても,控訴人の営業を表示するものとして使用されている。

カ 以上によれば,控訴人表示が,控訴人の営業表示として著名であり,又は,

少なくとも需要者の間に広く認識されていることは明らかであり,控訴人表示が

著名又は周知であるとは認められないとした原判決の判断は誤りである。

(2) 控訴人と被控訴人との業種及び取引先の異同について

ア 業種の異同について

原判決は,控訴人と被控訴人はともに鉄道車両を扱う同業者であり,同業者に


4
対 して控訴人表示が著名であれば,不正競争防止法2条1項2号の著名な営業表

示に当たるとの控訴人の主張について,控訴人の主たる業務は鉄道車両の製造で

あるのに対し,被控訴人の主たる業務は鉄道車両のリサイクルであり,主たる業

務が異なるから,控訴人と被控訴人とが同業者であるということはできず,控訴

人の主張は前提を欠くものであると判断した。

しかし,控訴人表示は国民一般に対して著名であるといえるのであるから,業

種のいかんを問わず,不正競争防止法2条1項2号の「著名性」を認めることが

できるのであり,これを業種の異同によって判断した原判決は誤りである。

イ 取引先の異同について

(ア) 原判決は,控訴人表示が不正競争防止法2条1項1号にいう周知表示に

該当するか否かの検討に当たり,被控訴人の需要者が,解体するための鉄道車両

等の購入相手である鉄道会社等やリサイクルした製品,解体した鉄等の販売先で

あると認定した上で,鉄道会社についてはともかくとして,少なくともリサイク

ルした製品や解体した鉄等の販売先については,控訴人表示が控訴人の営業であ

ることを示す表示として広く認識されているとは考え難いと判断した。

しかし,被控訴人の事業からすれば,使用を終えた鉄道車両をリサイクル業者

に有償,無償で引き渡す鉄道会社という最も重要な取引先について判断しない理

由はなく,その判断をしなかったことは原判決の審理不尽である。また,これを

措くとしても,解体した鉄等の販売先は,鉄スクラップを原料として使用する鉄

鋼生産業者等の金属工業関連事業者であると推測されるから,日本の産業界にお

いて,鉄道車両の著名な製造業者として知られ,かつ,建設機械や橋梁工事をも

手広く手がけ,杭打機や発電機等についても高いシェアを有する控訴人について,

そのような業界で広く認識されているとは考え難いという判断は,常識を欠くも

のである。

(イ) なお,被控訴人は,鉄道業者は解体車両の販売者であって,被控訴人の

需要者ではないと主張する


5
し かし,不正競争防止法2条1項1号の「需要者」には,最終需要者に至るま

での各段階の取引業者も含まれることは確立した解釈であり,購入者のみが取引

者であるという解釈は不合理である。

〔被控訴人の主張〕

(1) 控訴人表示の著名性周知性について

ア 控訴人表示と旧字体の「日本車輌」との区別について

原判決は,「車両」と「車輌」との文字の相違だけを取り出して,控訴人表示に

著名性周知性がないと判断したものではない。要するに,控訴人の略称が区々

であり,字体を含めて統一して使用されていないこと,報道や宣伝広告が著名性

周知性を認定できる程十分にされていないことを総合して判断したものである。控

訴人は,字体の相違について縷々述べているが,判決の意味を正確に理解している

ものではない。

イ 控訴人による控訴人表示の積極的使用について

控訴人は,カタログ,新聞,雑誌等の宣伝広告等において,控訴人表示及び「日

本車輌」との表示を控訴人の社名の略称,商品,役務等の表示として古くから使用

してきたと主張する。

(ア) しかし,控訴人が,昭和60年から現在までの27年間に,新聞で行った

広告は75回であり(甲454〜528),1年当たりにならすと3回にも満たな

い。また,その大部分は,工業新聞,証券新聞等であり,一般紙は2割に達しない。

さらに,被控訴人の調査によれば,一般紙のうち,朝日新聞,毎日新聞,読売新聞

及び日本経済新聞の各紙における広告は全11回で,全国版(最終版)での掲載は,

甲454から528では1件も確認できなかった。例外は,甲551に添付された

資料2の日本経済新聞での全面広告であるが,当該広告では,「日本車両という社

名は,ご存じなくても,鉄道を利用なさったことがある方なら,すでにわたしたち

と旧知の間柄です。」と記載されており,控訴人表示を知らない者が多数であるこ

とが想定されている。結局,経済紙と全国紙の全国版では,27年間で1回しか目


6
立った広告がされていないことになる。

(イ) 雑誌等での広告も,この24年間で僅か21件であり,1年当たり1回弱

である。

(ウ) パンフレット類は,限られた範囲で配布されるものであり,どの企業でも

当然行っている程度のものにすぎない。

(エ) 控訴人は,「日本車両」等の文字が表示された銘板が一般旅客等の目に

触れやすい位置に,見やすい大きさの文字で貼り付けられていると主張する。

しかし,銘板の多くは,車両の一端,一側の高い位置にあり,近付かなければ確

認できない程度の大きさのものであって,控訴人の主張は実態に反する。

(オ) 控訴人は,平成8年に社名ロゴマークが使用される様々なものについて,

表記方法のルールが定められたと主張する。

しかし,上記ルールの策定は,略称も書体もバラバラであった表記の統一を図っ

たというものであるが,報道機関等にその趣旨を伝えて,統一的な使用を依頼した

形跡はなく,業界紙を含む第三者にはほとんど認識されていないから,いまだ統一

されていない。

(カ) 以上のとおり,控訴人が,国民の間に広く知られるように,控訴人表示を

積極的に使用,宣伝していたという実態はなく,その広告は投資家や専門業者に向

けたものを中心としたものであって,控訴人表示の著名性に繋がるようなものでは

ない。

ウ 新聞記事における控訴人表示について

(ア) 控訴人は,過去10年余の間に限り,主要な新聞の記事において,控訴人

の略称として,控訴人表示又は「日本車輌」の表示が使用されている例を検討して

いるが,この分類をまとめたという報告書(甲550)には誤りがあり,その正確

性は疑問である。

(イ) 控訴人は,甲550の報告書の調査結果によれば,控訴人の略称として,

控訴人表示又は「日本車輌」との表示が使用された393件の新聞記事のうち,


7
82件が全国紙の全国版に掲載されたものであるなどと主張する。

しかし,82件という記事の数を12年で割ると,1年当たり7件であり,1紙

当たりでは1件にも満たない。また,これらの記事の内容は,決算結果や人事異動

を含め,大多数は経済記事であり,そのような報道の実態をみても,控訴人表示が

国民各層に広く知られた著名表示であることを裏付けるほどの質,量でないことは

明らかである。

(ウ) 控訴人は,全国紙の全国版のうち70件では,見出しあるいは副見出し中

に控訴人表示が明記されているなどと主張する。

しかし,そうした記事では,見出しだけでは読者が正確に認識できないため,本

文中に商号を記載している。見出しも小さな記事では小さな見出しであるし,多少

のスペースを占める記事でも,本見出しで控訴人表示がされることは極めて少なく,

多くは袖見出しか割見出しであり,目立つようなものではない。

エ 雑誌における控訴人表示について

雑誌における控訴人表示の使用例は,合計10誌が指摘されているだけであり,

極めて少ない。その雑誌の内容も,名古屋地区をターゲットにした広報誌,名古屋

特集,鉄道専門誌ないし鉄道特集といったもので,広く国民一般に控訴人表示を知

らしめるようなものではない。

オ その他のメディア等における使用事例について

テレビ放映は,約20年間で25回,そのうち全国ネットは13回であり(甲5

58),1年当たり地方局で約1.2回,全国ネットで0.6回という数字は,極

めて少ないものである。ラジオ取材も同様で,約10年間で5本というのは(甲5

59),余りに少ない。また,ユーチューブのアクセス数は,1タイトル当たり数

万であり(甲557),アクセス数が多いとはいえない。

カ 以上のとおり,各種メディアによる報道等は,控訴人表示が控訴人の営業等

表示として著名であると認めるには,質,量ともに不十分である。

(2) 控訴人と被控訴人の業種及び取引先の異同について


8
ア 業種の異同について

本件において,控訴人と被控訴人の業種の異同を論じるのは,不正競争防止法2

条1項1号の規定する「需要者」の要件の充足を検討するためである。控訴人は,

需要者という要件をしばしば取引者,業者,関係者と置き換えて曖昧にして主張し

ているが,その議論の誤りであることは明らかである。

イ 取引先の異同について

(ア) 不正競争防止法2条1項1号にいう「需要者」とは,対象となる営業等表

示を使用している者の需要者を意味し,本件では,被控訴人の営業等の需要者を指

すものである。したがって,仮に,控訴人の需要者に控訴人表示が周知であったと

しても,被控訴人の需要者に周知でなければ,同号の適用はないことになる。

この点,被控訴人は,鉄道車両をリサイクルの対象としているが,それ故に控訴

人と需要者が共通するものではない。

すなわち,鉄道業者は,解体車両の販売者であって,被控訴人の需要者ではない。

また,被控訴人が解体した車両から分別した鉄は,圧縮し,くず鉄として取引業者

に販売,輸出され,その後,種々の取引ルートを経て,製鉄業者に供給されて鋼材

になる。鉄スクラップを原料として使用する鉄鋼生産業者が被控訴人と取引をもつ

ことはない。

したがって,被控訴人の業務の結果生み出された商品の需要者は,控訴人の事業

分野とは全く異なるものであるというべきである。

(イ) また,不正競争防止法2条1項1号の「需要者」に鉄道会社が含まれると

しても,同号は,当該営業と表示に接する多数の需要者における誤認混同等を予

定しているものであって,需要者が極めて限られた分野であるような場合を想定し

ているものではない。鉄道営業という許認可事業を行う限られた企業の限られた担

当者や鉄道車両製造というこれも極端な寡占業界の関係者間では,相互に相手方の

営業表示のみならずその事業内容等を熟知した上いわばプロ同士で取引しているの

であって,そこに営業等表示による誤認混同が生じるといったことは,定型的にあ


9
り得ない。同号は,需要者における誤認混同を防止するためのものであるが,市場

において混同して取引する可能性がない者は,周知性の主体として重視する必要は

ない。

第4 当裁判所の判断

当裁判所は,控訴人の本訴請求は,いずれも理由があるから,これを認容すべき

ものであると判断する。その理由は,次のとおりである。

1 争点1(控訴人表示が,控訴人の営業表示として著名又は周知であるか否

か)について

(1) 前記前提となる事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,

次の事実が認められる。

ア 当事者

(ア) 控訴人について

a 控訴人は,明治29年に設立された,日本における民間最初の鉄道車両製造

会社(資本金118億円)であり,名古屋市に本店がある。平成21年度決算期に

おける売上高は約985億円であり,平成22年4月1日現在の従業員数は175

1名である(甲3)。

b 日本における鉄道車両製造業界は,控訴人を含む5社がほぼ独占していると

ころ,控訴人は,その中でも最大手の鉄道車両製造会社である。控訴人は,新幹線

車両,リニアモーターカーのほか,特急型車両,通勤型車両,地下鉄型車両,新交

通システムの車両等の多様な鉄道車両を製造し,関東,東海,関西,九州等の全国

各地の鉄道会社に販売し,海外にも車両を輸出している(甲3,4,10,25)。

また,控訴人は,鉄道車両メーカー,鉄道車両に搭載される電気機器メーカー及

び電気以外の機器・部品メーカーを正会員とし,鉄道関連メーカー等を賛助会員,

鉄道事業者を特別会員とする社団法人日本鉄道車輌工業会の正会員であり,同法人

のウェブサイトには,正会員として,「日本車輌製造(株)」との記載がある(甲1

4の1〜4)。


10
c さらに,控訴人は,建設機械製造,橋梁建設等も業として行っている(甲3,

562の1・2)

(イ) 被控訴人

被控訴人は,平成21年6月25日に設立された,鉄道車両の解体,リサイクル

を主たる目的とする株式会社であり,昭和43年6月に被控訴人代表者が設立した

豊富産業株式会社のグループ企業である。なお,当該グループ企業の1つである日

本オートリサイクル株式会社は,自動車の解体処理等を業としている(甲2,乙4,

6,11)。

イ 控訴人による控訴人表示の使用について

(ア) 控訴人が製造した車両の銘板について

控訴人が製造した鉄道車両には,原則として,その車内の前部又は後部の壁の上

段等に,控訴人表示を記載した銘板が設置されている。ただし,新幹線車両など,

鉄道会社の意向により,銘板が設置されていない車両もある(甲15,554)。

(イ) 宣伝広告について

a 平成7年7月16日から平成24年5月25日までの間に,朝日新聞,毎日

新聞,日本経済新聞,フジサンケイビジネスアイ,東洋経済日報,中部経済新聞,

日刊工業新聞,日本工業新聞,株式新聞,日本証券新聞又は證券新報において,控

訴人の表示として,控訴人表示を用いた広告が少なくとも合計20件以上掲載され

ている(甲503,506〜528)

b 昭和60年11月30日から平成7年9月12日までの間に,朝日新聞,読

売新聞,毎日新聞,中日新聞,中部経済新聞,日刊工業新聞,日本工業新聞,株式

新聞,証券日刊新聞,日本証券新聞,證券新報,日刊投資新聞,株式市場新聞又は

交通新聞において,控訴人の表示として,「日本車輌」との表示を用いた広告が少

なくとも合計50件掲載されている(甲454〜497,499,500〜502,

504,505)。

c 平成6年4月11日付け中部経済新聞には,控訴人の表示として,「日本車


11
輌製造株式会社」との表示を用いた広告が掲載されている(甲498)。

d 「THE21 6月特別増刊号 リニア中央新幹線が21世紀を拓く」平成

12年6月1日発行,「WEDGE 11月号」平成18年10月20日発行,

「北総線時刻表 vol.5」同年12月8日発行,「北総線時刻表 vol.

7」平成21年2月9日発行,「WEDGE 3月号」同年2月20日発行,「W

EDGE 9月号」同年8月20日発行,「WEDGE 1月号」同年12月20

日発行,「サンエイムック 鉄道のテクノロジー vol.5 新幹線2010」

平成22年2月3日発行,「京成時刻表vol.25 平成22.7.17 ダイ

ヤ改正」同年7月17日発行,「WEDGE 9月号」同年8月20日発行,「W

EDGE 1月号」同年12月20日発行,「週刊朝日進学MOOK 東海の大学

力 2011」平成23年発行,「WEDGE 1月号」同年12月20日発行,

「週刊朝日進学MOOK 東海の大学力 2012」平成24年発行,「2012

小田急時刻表」同年4月23日発行,「WEDGE 9月号」同年8月20日発行,

「週刊朝日百科 週刊JR全駅・全車両基地03」同年8月26日発行,「週刊朝

日百科 週刊JR全駅・全車両基地04」同年9月2日発行及び「週刊朝日百科

週刊JR全駅・全車両基地07」同年9月23日発行の各雑誌には,控訴人の表示

として,控訴人表示を用いた広告が掲載されている(甲531〜549)。

e 「エコノミスト」平成元年12月別冊号及び「エコノミスト」平成3年8月

経済白書には,控訴人の表示として,「日本車輌」との表示を用いた広告が掲載さ

れている(甲529,530)。

(ウ) 社名ロゴマークについて

控訴人は,平成8年に創業100周年を迎えたのを契機として,コーポレートマ

ークに「日本車両」との文字(控訴人表示)を組み合わせた社名ロゴマークを策定

した。これに伴い,ベーシックデザインマニュアルが作成され,社名ロゴマークの

使用について,表記のルールが定められた。その後,建物看板等(本社,豊川製作

所,鳴海製作所,衣浦製作所等),社用車,会社備品(封筒,段ボール,カレンダ


12
ー等),展示会用のぼり,工事現場等の看板などに上記社名ロゴマークが使用され

ている(甲552,561)。

また,控訴人は,上記社名ロゴマークあるいは控訴人表示が記載された会社案内,

入社案内,各種建築機材等の製品案内等を作成し,これらを学生や顧客等に配布し

ている(甲3,553)。

さらに,控訴人は,自社のホームページ上でも,上記社名ロゴマークを表示して

いる(甲30)。

ウ 控訴人に関する新聞記事について

昭和37年4月26日付けの朝日新聞では,控訴人の表示として控訴人表示が用

いられている(甲7の3)。

平成11年以降の新聞記事における控訴人の表示の使用例は,おおむね,次のと

おりである。

(ア) 全国紙

a 平成14年1月29日から平成24年6月19日までの間に,朝日新聞又は

産経新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示のみが用いられているものが

少なくとも合計25件以上ある(甲72,75,76,78〜83,91,92,

94,96〜98,103〜108,117,139,175,312,443)。

b 平成11年11月10日から平成24年7月27日までの間に,朝日新聞,

読売新聞,毎日新聞又は日本経済新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示

とともに,「日本車両製造」との表示が用いられ,かつ,その見出しに控訴人表示

が記載されているものが少なくとも合計80件ある(甲48,49,51,52,

54,55,57〜71,73,74,77,84,86,87,89,90,9

3,95,99〜101,109,110,112〜116,118,119,1

21,124〜126,130,131,133〜135,137,138,14

1〜144,146〜148,150〜153,155,157〜160,162,

163,165,166,168,170,176,178,180,443)。


13
c 平成16年2月11日から平成24年9月9日までの間に,朝日新聞,読売

新聞又は日本経済新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示とともに,「日

本車両製造」との表示が用いられ,かつ,その見出しに「日本車両製造」との表示

が記載されているものが少なくとも合計6件ある(甲88,120,123,12

7,128,181)。

d 上記b及びc以外で,平成12年1月29日から平成23年1月21日まで

の間に,朝日新聞又は日本経済新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示と

ともに,「日本車両製造」との表示が用いられているものが少なくとも合計6件あ

る(甲50,85,136,145,443)。

e 平成18年8月1日付け毎日新聞では,控訴人の表示として,「日本車輌」

との表示が用いられている(甲122)。

f 平成12年4月20日から平成24年7月21日までの間に,読売新聞又は

毎日新聞において,控訴人の表示として,「日本車輌製造」との表示とともに,

「日本車輌」との表示が用いられているものが少なくとも合計15件以上ある(甲

53,56,102,129,132,140,149,154,156,161,

164,167,169,171〜174,177)。

(イ) 地方紙

a 平成11年11月9日から平成24年8月25日までの間に,中日新聞にお

いて,控訴人の表示として,控訴人表示のみが用いられているものが少なくとも合

計8件ある(甲182,185,196,222,232,245,259,27

8)。

b 平成12年4月11日から平成24年7月27日までの間に,中日新聞,東

愛知新聞,東海日日新聞又は新潟日報において,控訴人の表示として,控訴人表示

とともに,「日本車両製造」との表示が用いられ,かつ,その見出しに控訴人表示

が記載されているものが少なくとも合計75件以上ある(甲186〜191,19

3〜195,197〜215,217〜221,223,225〜227,229,


14
233,234,236,237,239,242〜244,246〜258,2

60〜277)。

c 平成12年7月6日から平成16年4月1日までの間に,中日新聞において,

控訴人の表示として,控訴人表示とともに,「日本車両製造」との表示が用いられ,

かつ,その見出しに「日本車両製造」との表示が記載されているものが少なくとも

合計3件ある(甲192,224,230)。

d 上記b及びc以外で,平成11年12月9日から平成18年6月3日までの

間に,中日新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示とともに,「日本車両

製造」との表示が用いられているものが少なくとも合計6件ある(甲184,23

1,235,238,240,241)。

e 平成11年11月10日付け東愛知新聞及び平成16年1月8日付け名古屋

タイムスでは,控訴人の表示として,「日本車輌」との表示のみが用いられている

(甲183,228)。

f 平成14年12月27日付け中日新聞では,控訴人の表示として,「日本車

輌」との表示とともに,「日本車輌製造」との表示が用いられている(甲216)。

(ウ) 専門紙

a 平成11年7月11日から平成23年11月17日までの間に,フジサンケ

イビジネスアイ,日経産業新聞,日刊工業新聞,株式新聞,証券日刊新聞,日本証

券新聞,證券新報又は證券タイムズにおいて,控訴人の表示として,控訴人表示の

みが用いられているものが少なくとも合計25件以上ある(甲281,282,2

84,289,295,305,307,308,323,327,330〜33

2,341,360,372〜375,377〜379,382,386,390,

391,397,403)。

b 平成11年11月10日から平成24年7月24日までの間に,フジサンケ

イビジネスアイ,日経産業新聞,日刊工業新聞,日本工業新聞,株式新聞,日本証

券新聞又は株式市場新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示とともに,


15
「日本車両製造」との表示が用いられ,かつ,その見出しに控訴人表示が記載され

ているものが少なくとも合計55件以上ある(甲283,290,293,294,

296,300〜304,309,310,315〜318,320,321,3

24,325,328,329,334〜340,343,345,346,35

3〜359,364,366,368,371,376,380,381,384,

385,387,388,392〜396,398,399,402,405)。

c 平成14年11月6日から平成20年4月23日までの間に,日経産業新聞

又は日刊工業新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示とともに,「日本車

両製造」との表示が用いられ,かつ,その見出しに「日本車両製造」との表示が記

載されているものが少なくとも合計5件ある(甲322,348,349,361,

365)。

d 上記b及びc以外で,平成12年5月22日から平成23年3月31日まで

の間に,日経産業新聞,日刊工業新聞又は日本証券新聞において,控訴人の表示と

して,控訴人表示とともに,「日本車両製造」との表示が用いられているものが少

なくとも合計8件ある(甲292,297,314,333,344,352,3

89,401)。

e 平成13年6月7日から平成20年3月28日までの間に,株式新聞,日本

証券新聞又は證券新報において,控訴人の表示として,控訴人表示とともに,「日

本車輌製造」との表示が用いられ,かつ,その見出しに控訴人表示が記載されてい

るものが少なくとも合計3件ある(甲298,306,363)。

f 平成18年7月12日から平成20年8月22日までの間に,株式新聞又は

日本証券新聞において,控訴人の表示として,控訴人表示とともに,「日車両」と

の表示が用いられているものが少なくとも合計5件ある(甲342,351,36

7,369,370)。

g 平成20年3月24日付け日本証券新聞では,控訴人の表示として,控訴人

表示,「日車両」との表示,「日本車両製造」との表示が用いられている(甲36


16
2)。

h 平成11年11月17日付け證券新報及び同年12月1日付け日刊投資新聞

では,控訴人の表示として,「日本車輌」との表示のみが用いられている(甲28

5,287)。

i 平成11年11月19日から平成18年12月1日までの間に,フジサンケ

イビジネスアイ,日刊工業新聞,日本工業新聞,株式新聞,證券新報又は交通新聞

において,控訴人の表示として,「日本車輌」との表示とともに,「日本車輌製

造」との表示が用いられているものが少なくとも合計9件ある(甲286,288,

291,299,311,319,326,347,350)。

j 平成24年4月26日付け日本証券新聞では,控訴人の表示として,「日車

輌」との表示,「日本車輌製造」との表示及び「日本車輌」との表示が用いられて

いる(甲404)。

k 平成23年3月2日付け日本証券新聞では,控訴人の表示として,「日車

輌」との表示とともに,「日本車輌」との表示が用いられている(甲400)。

エ 控訴人に関するテレビ放送について

(ア) 控訴人は,平成22年8月1日にNHK総合テレビで放送された「めざせ

会社の星」という番組内で,「日本車輌」として紹介された(甲27,36の1)。

(イ) 控訴人は,平成23年3月22日に日本テレビの「火曜サプライズ特大版

スゴいぞニッポンSP」という番組内で,「日本車輌製造株式会社」として紹介さ

れた(甲28,36の2)。

(ウ) 平成5年から平成24年7月までの間に,テレビ東京,名古屋テレビ放送,

NHK,フジテレビ等の放送において,その画面上に控訴人表示が表示されたこと

がある(甲558)。

オ 博覧会等について

(ア) 控訴人は,平成元年に開催された世界デザイン博覧会(総入場者数約15

18万人)に「日本車輌館」というパビリオンを出展し,同パビリオン来館者を対


17
象に控訴人の認知度やイメージ等についてのアンケートを実施したところ,有効回

答数220のうち,控訴人を「知っていた」との回答は76.4%であった(甲1

9の1,2)。

(イ) 控訴人が製造した鉄道車両は,平成22年に入館者数が400万人を突破

したさいたま市所在の鉄道博物館や平成23年に入館者数が50万人を突破した名

古屋市所在のリニア・鉄道館に展示されており,両館のガイドブックには,製造会

社として「日本車輌製造」との記載がある(甲20〜23)。

(ウ) 控訴人は,平成22年度のグッドデザイン賞を受賞した鉄道車両の製作に

携わったほか,少なくとも20件の同賞受賞車両の製作に携わっている(甲24)。

カ 平成24年3月8日に,電子百科事典であるウィキペディアで「日本車両」

を検索したところ,検索結果のうちの多くが控訴人に関する記事であり,さらに,

控訴人表示の検索結果数(197件)は,東急車両(28件)や近畿車両(13

件)の検索結果数よりも多かった(甲43の1〜3)。

キ なお,控訴人及び被控訴人以外に,商号中に「日本車両」又は「日本車輌」

を含む法人として,株式会社日本車輌,財団法人日本車両検査協会,日本車輌洗滌

機株式会社,新日本車輌整備株式会社,株式会社日本車輌機器販売,新日本車輌有

限会社,新日本車輌株式会社,東日本車輌株式会社,西日本車輌有限会社,北日本

車両株式会社,北日本車輌株式会社,株式会社北日本車輌工業所が存在している

(甲47,乙1〜3,18〜21,23,25〜27)。

(2) 前記認定のとおり,控訴人は,創業100余年を数え,その主要事業であ

る車両製造の分野では,国内最大手の会社である。そして,控訴人の表示としては,

その商号である「日本車輌製造株式会社」のほか,控訴人表示(日本車両),「日

本車輌」「日本車両製造」「日本車輌製造」「日車両」「日車輌」等があるが,控

訴人は,平成8年に,「日本車両」との文字(控訴人表示)とコーポレートマーク

を組み合わせた社名ロゴマークを策定し,建物看板,展示用のぼり,工事現場等の

看板にこれを使用していること,控訴人が製造した鉄道車両には,原則として,そ


18
の社内の前部又は後部の壁の上段等に,控訴人表示を記載した銘板が設置されてい

ること,多数の新聞,雑誌で控訴人表示を用いた広告が行われていること,控訴人

に関する新聞記事でも,控訴人の表示として,控訴人表示を用いたものが多数ある

ことなどからすると,控訴人表示と「日本車輌」との表示の差異について検討する

までもなく,控訴人表示は,控訴人の営業表示として,控訴人の商品又は営業の取

引者,需要者のほか,広く一般の国民にも認識されており,遅くとも被控訴人が設

立された平成21年6月までには,少なくとも周知性を獲得していたということが

できる。

なお,控訴人表示が表示された各新聞記事は,控訴人が自らその営業表示として

控訴人表示を使用したものではない。しかしながら,不正競争防止法2条1項1号

にいう広く認識された他人の営業であることを示す表示には,営業主体がこれを使

用ないし宣伝した結果,当該営業主体の営業であることを示す表示として広く認識

されるに至った表示だけでなく,第三者により特定の営業主体の営業であることを

示すものとして用いられ,そのような表示として広く認識されるに至ったものも含

まれるものと解するのが相当である(最高裁平成5年(オ)第1507号同年12

月16日第一小法廷判決・裁判集民事170号775頁参照)から,上記各新聞記

事に基づいて控訴人表示の周知性を認定することが妨げられるものではない。

(3) 被控訴人の主張について

ア 被控訴人は,控訴人表示は国名を表す「日本」と,鉄道車両に限られない車

両全般を表す「車両」という普通名詞を組み合わせたものであり,識別性がないか

ら,控訴人表示は,控訴人の営業表示として,需要者の間に広く認識されていると

はいえないと主張する。

しかしながら,控訴人表示が普通名詞を組み合わせた表示であるとしても,前記

(2)のとおり周知性を獲得するに至っている以上,控訴人表示に識別性がないとい

う被控訴人の主張は失当であり,これを採用することはできない。

イ 被控訴人は,被控訴人の事業の需要者と控訴人の事業の需要者は共通するも


19
のではなく,また,鉄道業者や鉄鋼生産業者は被控訴人の需要者ではないとして,

仮に,控訴人表示が控訴人の需要者には周知でも,被控訴人の需要者には周知でな

いから,不正競争防止法2条1項1号は適用されない旨主張する。

しかしながら,前記のとおり,控訴人表示は,控訴人の営業表示として,控訴人

の商品又は営業の取引者,需要者のほか,広く一般の国民に認識されているもので

ある以上,控訴人の商品又は営業の取引者,需要者と被控訴人の商品又は営業の取

引者,需要者との異同にかかわらず,被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者

間における控訴人表示の周知性が否定されるものではない。

のみならず,不正競争防止法2条1項1号にいう「需要者」には,最終需要者

至るまでの各段階の取引業者も含まれると解すべきところ,控訴人は,鉄道車両の

製造以外にも,建設機械製造,橋梁建設等を業として行っているから,その取引者,

需要者には,鉄道車両を購入する鉄道会社のほか,建設工事業者や橋梁工事等で発

生した産業廃棄物の処理業者等も含まれるものと考えられ,一方,鉄道車両の解体,

リサイクルを主たる目的とする被控訴人の取引者,需要者には,解体する車両を提

供する鉄道会社のほか,リサイクルした製品,解体した鉄等の販売先等が含まれる

ものと考えられるから,両者の取引者,需要者は,相互に重なり合うか,あるいは,

密接な関連性を有するものであるということができる。そうだとすると,控訴人の

商品又は営業の取引者,需要者の間で控訴人表示が広く認識されているものである

以上,被控訴人の商品又は営業の取引者,需要者の間においても,控訴人表示は広

く認識されているというべきである。

したがって,被控訴人の主張は採用することができない。

2 争点2(被控訴人の商号は,控訴人表示と同一又は類似の営業表示であるか

否か)について

ある営業表示が不正競争防止法2条1項1号にいう他人の営業表示と類似のもの

に当たるか否かについては,取引の実情の下において,取引者,需要者が,両者の

外観,称呼又は観念に基づく印象記憶連想等から両者を全体的に類似のものと


20
して受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である(最高裁昭

和57年(オ)第658号同58年10月7日第二小法廷・民集37巻8号108

2頁参照)。

これを本件についてみると,被控訴人の商号である「日本車両リサイクル株式会

社」は,会社の種類を表す「株式会社」の部分を除くと,「日本車両」と「リサイ

クル」で構成されている。このうち,「リサイクル」の部分は,業種を表すもので

あって,商品又は役務の出所識別機能が認められるものではない。他方,「日本車

両」の部分は,「日本」と「車両」の普通名詞の組合せからなるものであるが,控

訴人の営業表示として周知であることから,自他識別力を有するものである。そう

すると,被控訴人の商号のうち,その要部となる「日本車両」の部分は,控訴人表

示と外観,称呼(ニホンシャリョウ),観念において完全に同一である。

そうすると,控訴人表示と被控訴人の商号とは,取引者,需要者外観,称呼又

観念の同一性に基づく印象記憶連想等から,両者を全体として類似のものと

して受け取るおそれがあるというべきである。

3 争点3(被控訴人の行為は,控訴人の営業と混同を生じさせるものであるか

否か)について

不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」とは,他人の周知

の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が同人とその他人とを同一営業主体

として誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列

関係など緊密な営業上の関係が存するものと誤信させる行為をも包含し,混同を生

じさせる行為というためには両者間に競争関係があることは要しないと解される

(最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年5月29日第三小法廷判決・民集

38巻7号920頁,最高裁平成7年(オ)第637号同10年9月10日第一小

法廷判決・裁判集民事189号857頁参照)。

これを本件についてみると,前記のとおり,被控訴人の商号「日本車両リサイク

ル株式会社」と控訴人表示は,全体として類似するものと認められ,また,被控訴


21
人の事業は車両の解体,リサイクルであり,他方,控訴人の主たる事業は鉄道車両

の製造,販売であって,その業務内容には密接な関連性があるものと認められるか

ら,控訴人と被控訴人との間にいわゆる親会社,子会社の関係や系列などの緊密な

営業上の関係が存すると誤信させるおそれがあることは明らかである。

4 争点4(控訴人は営業上の利益を害されるおそれがあるか否か)について

前記3のとおり,被控訴人が,周知な商品等表示である「日本車両」と類似する

被控訴人商号を使用することにより,被控訴人の営業が控訴人と関連を有する会社

による営業と誤認混同されるおそれがあると認められる以上,控訴人の営業上の利

益が侵害されるおそれがあるということができる。

したがって,本件においては,不正競争防止法3条1項に基づく被控訴人の商号

の使用の差止め及び同条2項に基づく被控訴人の商号の抹消登記手続を命ずる必要

性があるものと認められる。

5 結論

以上によれば,控訴人の本訴請求はいずれも理由がある。

よって,上記判断と異なる原判決は不当であるから,これを取り消し,控訴人の

本訴請求をいずれも認容することとして,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 土 肥 章 大




裁判官 部 眞 規 子




裁判官 齋 藤 巌


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