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事件 平成 24年 (ワ) 35742号 損害賠償請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2014/04/17
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
平成26年4月17日判決言渡   同日原本領収  裁判所書記官

平成24年(ワ)第35742号   損害賠償請求事件

口頭弁論の終結の日  平成26年1月23日

        判     決

  東京都渋谷区<以下略>

      原     告    株 式 会 社 X

      同訴訟代理人弁護士     飛  田  秀    成

               奥  村      剛

               三  好  啓    允

  東京都渋谷区<以下略>

      被     告    株 式 会 社 Y

  東京都荒川区<以下略>

      被     告    A

  東京都世田谷区<以下略>

      被     告    B

      上記3名訴訟代理人弁護士

               元  榮  太  一  郎

               木  村  光    伸

        主     文

   1  被告らは,原告に対し,連帯して110万0146円

     及びこれに対する被告株式会社Yについては平成

     25年1月11日から,被告Aについては同月13日か




        ら,被告Bについては同月12日からそれぞれ支払済み

        まで年5分の割合による金員を支払え。

      2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

      3  訴訟費用は,これを4分し,その1を原告の負担とし,

        その余を被告らの連帯負担とする。

      4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

          事実及び理由

第1  請求

   被告らは,原告に対し,連帯して148万0653円及びこれに対する訴状

   送達の日の翌日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2  事案の概要

   本件は,原告において,(1)  被告株式会社Y,その代表取締役の被

   告A及び取締役の被告Bが,図利加害目的で原告の営業秘密である登録モデ

   ルの個人情報を使用し,これにより営業上の利益侵害された,(2)    かつて

   原告の従業員であった被告A及び同Bが,秘密保持義務を負う秘密情報であ

   る上記登録モデルの個人情報を使用したとして,被告らに対し,不正競争防

   止法2条1項7号の不正競争の共同不法行為による損害賠償請求権又は債務

   不履行による損害賠償請求権に基づき,損害金148万0653円及びこれ

   に対する不法行為の後で,支払を催告した日である訴状送達の日の翌日から

   支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める

   事案である。

1  前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の




全趣旨により容易に認められる事実)

(1)  原告は,平成21年6月11日に設立された,モデルやタレントのマネ

ジメント及び管理等を業とする株式会社である。原告の業務は,従前,株式

会社Z(旧商号有限会社Z)がこれを行っていたが,

原告設立後の同年9月16日に,原告が株式会社Zからその譲渡

を受けたものである。

   被告株式会社Y(以下「被告会社」という。)は,平成23年9月

15日に設立された,モデルやタレントのマネジメント及び管理等を業とす

る株式会社である。被告Aは,平成11年4月に株式会社Zの従

業員として採用され,事業譲渡に伴い原告の従業員となったが,平成23年

9月15日に原告を退職し,被告会社を設立してその代表取締役に就任した

ものであり。被告Bは,平成18年12月に株式会社Zの従業員

として採用され,事業譲渡に伴い原告の従業員となったが,平成23年7月

15日に原告を退職し,被告会社の設立によりその取締役に就任したもので

ある。

(2)  原告は,1800名を超えるハーフや外国人及び約200名の日本人の

登録モデルについて,その氏名,連絡先(住所,電話番号やメールアドレ

ス),年齢,身長,容姿の特徴(髪や瞳の色等)並びに写真等の個人情報

(以下「登録モデル情報」という。)を,社内共有サーバー内のデータベー

スとして保有している。

(3)  原告は,平成23年3月14日頃,直前に発生した東日本大震災を受け

て,その後の緊急事態に対処するために,従業員に対し,登録モデルの氏名




 及び連絡先(住所,電話番号やメールアドレス)の情報(以下「本件情報」

 という。)をダウンロードすることができるようにし,被告A及び同Bは,

 その頃,本件情報をダウンロードした。

 (甲37)

(4)  平成22年6月1日に施行された原告の就業規則(以下「本件就業規則」

 という。)には,次の規定がある。

 「(秘密情報管理に関する遵守事項)

   第29条  経営上重要な情報(経営に関する情報,営業に関する情報,技

    術に関する情報,個人情報(雇用管理情報含む)及び顧客に関する情

    報等で会社が指定した情報)の漏洩防止のために,次に挙げる事項に

    ついて,従業員は遵守しなければなりません。

    (1)  従業員は,知り得た秘密情報を会社の許可なく,第三者に漏らし

    たり,私的に利用しないこと。退職後も同様とする。

    (2)  従業員は,秘密と指定された情報を記録する媒体物につき,所属

    長の許可なくしてコピー,複製,撮影等をしないこと。

    (3)  パソコン等からアクセスすることができる秘密情報については,

    許可なくコピー,プリントアウト,その他複製及び他のパソコンや

    ネットワークにデータ送信等をしないこと。」

 (甲1)

(5)  被告Bは平成23年7月15日に,被告Aは同年9月15日にそれぞれ

 原告を退職するに当たり,「秘密保持に関する誓約書」(甲5,6。以下

 「本件各誓約書」という。)を作成し,これを原告に提出した。本件各誓約

書には,次の規定がある。

第1条(秘密保持の確認)

    私は貴社を退職するにあたり,以下に示される貴社の技術上または営

   業上の情報(以下「秘密情報」という)に関する資料等一切について,

   原本はもちろん,そのコピー及び関係資料等を貴社に返還し,自ら保

   有していないことを確認致します。

    @製品開発,製造及び販売における企画,技術資料,製造原価,価格

    決定等の情報

    A財務,人事等に関する情報

    B他社との業務提携に関する情報

    C上司または営業秘密等管理責任者により秘密情報として指定された

    情報

    D業務上交換した名刺

    E以上の他,貴社が特に秘密保持対象として指定した情報」

第3条(退職後の秘密保持の誓約)

    秘密情報については,貴社を退職した後においても,私自身のため,

   あるいは他の事業者その他の第三者のために開示,漏洩もしくは使用

   しないことを約束致します。」

(甲5,6)

(6)  被告会社は,設立約5か月後の平成24年2月29日に原告の登録モデ

ル56名を含む64名のモデルと専属又は登録モデル契約を締結し,その約

半年後の同年8月10日に原告の登録モデル84名を含む124名のモデル

と専属又は登録モデル契約を締結した。

   (甲8,9,24)

2  争点及びこれに関する当事者の主張

   争点は,@登録モデル情報が営業秘密又は本件各誓約書上の秘密情報に当た

  るか,A被告らが図利加害目的で共同して本件情報を使用したか,B原告が

  受けた損害の額である。

  (1)  争点@(登録モデル情報が営業秘密又は本件各誓約書上の秘密情報に当

   たるか)について

   (原告の主張)

     原告は,登録モデル情報を社内共有サーバーに入力する作業を原則として

   データ管理を担当する従業員1名に行わせるとともに,登録モデル情報への

   アクセスを従業員11名中マネージャー業務を担当する従業員9名に限定し,

   データベースにアクセスするためのIDとパスワードの入力を求めている。

   IDとパスワードの入力には,自動入力機能が用いられていたが,30分で

   のオートログアウト機能を設定するなど,アクセスを制限していた。また,

   原告では,登録モデル情報を印刷した場合,使用後は印刷物を回収して裁断

   している。さらに,原告は,従業員に対し,本件就業規則29条や退職の際

   に提出する誓約書で秘密保持義務を課していた。そうであるから,登録モデ

   ル情報は,秘密として管理されていた。

     また,本件情報は,その豊富さゆえに,原告がモデルの管理,調整業務を

   遂行するのに有用な営業上の情報であり,個人情報であるから公然と知られ

   ていない。

したがって,登録モデル情報は,営業秘密に当たるし,本件各誓約書上の

秘密情報に当たる。

(被告らの主張)

    原告は,忙しいときや登録モデル情報の内容を変更するときに,その入

   力作業を他の従業員にも担当させていたし,従業員であればパソコンを起

   動させるためのIDとパスワードを入力するだけで登録モデル情報にアク

   セスすることができた。オートログアウト機能が併用されていたが,特定

   のソフトウェアを起動させたり時々他の従業員にマウスを動かしてもらっ

   たりするなどして,上記機能を回避する慣習があり,役員もこれを黙認し

   ていた。原告では,本件情報を制限なく印刷したり複写したりすることが

   できた上,使用後も印刷物を長期間にわたって机上に放置したり裏紙とし

   て再利用したり無施錠の棚に保管したりしており,秘密文書の表示もなか

   った。そして,原告では,秘密保持に関する社内教育も行われていなかっ

   た。そうであるから,本件情報は,秘密として管理されていなかった。

    また,本件情報は,その管理がずさんであったから有用なものでなく,

   公募イベントや口コミ,ウェブサイト等でその内容を知ることができるか

   ら公然と知られているものである。

    したがって,本件情報は,本件各誓約書上の秘密情報に当たるものでは

   ないし,本件各誓約書上の秘密情報に当たるものでない。

(2)  争点A(被告らが図利加害目的で共同して本件情報を使用したか)につ

いて

(原告の主張)

被告らは,平成23年9月ころから,共同して,本件情報を用いて原告の

 登録モデルを勧誘し,被告会社に登録させた。このことは,@被告らからの

 勧誘を受けた複数の登録モデルの陳述があることに加え,A被告A及び同B

 が原告在職中,常に登録モデル情報を用いて職務を遂行していたこと,B被

 告A及び同Bは,同年3月に本件情報をダウンロードをするや,同年6月に

 退職を申し出て,同年9月に被告会社を設立したこと,C専属又は登録モデ

 ル契約が設立直後から急増し,原告との重複登録となったモデルの大多数は,

 被告A及び同Bが担当していた売上げの多い顧客の宣伝に出演していたモデ

 ルであることから明らかである。

 (被告らの主張)

   登録モデルは,仕事をより多く受注することを求める上,特にハーフのモ

 デルは,相互のつながりが強く,仕事を紹介し合うから,複数のモデル事務

 所に重複登録するのが通常である。また,被告会社は,ハーフのモデルの求

 人に力を入れ,SEO対策や多くのオーディション会場での勧誘,モデル登

 録会の開催等を行った結果,原告との重複登録が増えただけである。被告A

 及び同Bは,平成23年1月ころには,原告の役員に対する人事上の不信感

 を抱くようになり,原告からの退職を検討していたのであって,同年3月に

 本件情報をダウンロードしたが,これを好機として原告を退職したものでは

 ないし,本件情報は原告退職時に全て削除しているのである。

   したがって,被告らは,本件情報を使用したものではない。

(3)  争点B(原告が受けた損害の額)について

 (原告の主張)

被告会社は,上記不正競争により,原告の登録モデルと専属又は登録モデ

ル契約を締結して,顧客の宣伝等に出演させたのであり,これにより,原告

は,登録モデルを顧客の宣伝等に出演させることができなくなって,営業の

利益を侵害された。そして,平成24年7月までに被告会社のウェブページ

に掲載された案件に限ってみても,原告は,14の案件(番号は日付の順で

ある。)について,次のとおり,合計148万0653円を下らない額の損

害を受けた。

     顧  客  売上高    原価率   限界利益

 @  i   ●円    ●%  4万4445円

 A  ii    ●円   ●%   63万円

 B  iii    ●円    ●%  4万4445円

 C  iv    ●円    ●%  3万6668円

 D  iii    ●円    ●%  14万0002円

 E  v     ●円  ●%  1万7778円

 F  vi    ●円    ●%  9万6800円

 G  vii   ●円  ●%  3万6300円

 H  viii   ●円    ●%  11万6669円

 I  ix     ●円    ●%  7万2600円

 J  x    ●円  ●%  4万1666円

 K  xi  ●円    ●%  11万6160円

 L  xii  ●円    ●%  7万2600円

 M  iv    ●円    ●%  1万4520円

(被告らの主張)

登録モデルは,専属モデル契約を締結していなければ,他のモデル事務所

と専属モデル契約を締結するのは自由であり,登録モデルのままであれば,

重複登録が可能であるから,出演元となるモデル事務所の選択も自由である。

そのような状況下で,被告会社が専属モデル契約の締結先や出演元として選

ばれたのは,被告らの営業努力によるものであるから,仮に被告らが本件情

報を不正に使用したのであるとしても,原告に損害は生じていない。

そして,@被告会社は顧客iでなく,他から注文を受けた。A被告

会社が専属モデル契約を締結した案件であり,被告会社は次のバージョンか

ら仕事を引き継いだ。B被告会社が顧客iiiから受けた仕事は案件a

でなく,別の商品のスチール広告である。C顧客iv

から受けた仕事は案件bで

なく,ヘアショーのモデルである。D顧客iiiからのI

の仕事は8人採用であり,被告のみならず,原告もこれを受けている。

EライターGからの仕事は被告A及び同Bが退職する前の案件である。F顧客vi

からの仕事はモデルが信頼関係や条件面から被告会社を選択しただ

けである。GIIからの仕事は被告A及び同Bが退職する前の案件で

ある。H顧客viiiからの仕事はモデルが信頼関係や条件面から被告会

社を選択しただけである。I顧客ixからの仕事は原告が日本人の子供の仕事

として受けたのに対し,被告会社はハーフモデルの子供の仕事として受けた。

J顧客xからの仕事は被告A及び同Bが退職する前の案件である。K顧客xi

からの仕事は原告が外国人,大人,男女,白,褐色の仕事

として受けたのに対し,被告会社はハーフモデルの子供の仕事として受けた。

   Lxiiからの仕事は被告らの営業努力による。M被告会社は

   顧客ivから注文を受けたのでなく,他から注文を受けた。

第3  当裁判所の判断

1  争点@(本件情報が営業秘密又は本件各誓約書上の秘密情報に当たるか)に

   ついて

   (1)  前記前提事実に,証拠(甲20ないし23,28ないし34,55,原

   告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。

   ア   原告は,社内共有サーバー内のデータベースに「モデルマスタ」,「取

      引先マスタ」,「オーディションマスター」等相互に関連付けをされた複

      数のマスターを構築し,情報をマスターの種類に従って分類した上これに

      入力している。本件情報を含む登録モデル情報は,「モデルマスター」に

      入力された情報である。

      原告の社内共有サーバーは,富士ゼロックス東京株式会社から提供され

      た「beatサービス」により,完全遮蔽式と呼ばれる方式のファイアウ

      ォールの下で外部のアクセスから保護されていた。

   イ   登録モデル情報の入力は,原則として,システム管理を担当する従業員

      1名がこれを行い,登録モデル情報へのアクセスは,原則として,マネー

      ジャー業務を担当する従業員9名に限定し,端末からアクセスする際には,

      端末へのログイン時にそれぞれのIDとパスワードの入力が求められ,3

      0分のオートログアウト機能を備えていた。

   ウ   従業員が登録モデル情報を印刷した場合,その利用が終わり次第これを

   回収ボックスに収納し,まとめてシュレッダーにより裁断していた。

 エ  原告では,顧客からモデル募集等の注文があると,マネージャー業務を

   担当する従業員が受注票(オファー票)を作成し,システム管理を担当す

   る従業員が受注票(オファー票)に基づきマスターに入力し,その後,マ

   ネージャー業務を担当する従業員が候補モデルを選抜してリストを印刷し,

   候補モデルに連絡をして意向やスケジュール等をチェックし,顧客に候補

   モデルの情報を提供する。

(2)  そこで,本件情報が営業秘密に当たるかについて検討する。

 ア  登録モデル情報は,外部のアクセスから保護された原告の社内共有サー

   バー内のデータベースとして管理され,その入力は,原則として,システ

   ム管理を担当する従業員1名に限定し,これへのアクセスは,マネージャ

   ー業務を担当する従業員9名に限定して,その際にはオートログアウト機

   能のあるログイン操作を必要とし,また,これを印刷した場合でも,利用

   が終わり次第シュレッダーにより裁断している。そして,原告は,就業規

   則で秘密保持義務を規定しているのであって,モデルやタレントのマネジ

   メント及び管理等という原告の業務内容に照らせば,登録モデル情報につ

   いて,上記のような取扱いをすることにより,原告の従業員に登録モデル

   情報が秘密であると容易に認識することができるようにしていたというこ

   とができる。

    そうであれば,原告は,登録モデル情報に接することができる者を制限

   し,かつ,これに接した者に秘密であると容易に認識することができるよ

   うにしていたのであるから,登録モデル情報は原告の秘密として管理され

  ていたと認められる。

   被告らは,原告は,他の従業員も登録モデル情報を入力していたし,従

  業員であればパソコンを起動させるためのログイン操作だけでアクセスす

  ることができた上,特定のソフトウェアを起動させたり時々他の従業員に

  マウスを動かしてもらったりするなどしてオートログアウト機能を回避す

  る慣習があったのであり,また,制限なく登録モデル情報を印刷したりす

  ることができ,使用後も印刷物を長期間にわたって机上に放置したりする

  などしていたのであって,登録モデル情報は秘密として管理されていたと

  はいえないと主張する。しかしながら,他の従業員が登録モデル情報の入

  力をしたことがあるとしても,これが恒常的に行われていたことを認める

  に足りる証拠はなく,また,マネージャー業務を担当する従業員でなけれ

  ば,登録モデル情報にアクセスすることはできないし,仮に従業員にマウ

  スを動かしてもらったりするなどしてオートログアウト機能を回避するこ

  とがあったとしても,これが恒常的に行われていたとか,このことを原告

  が容認していたことを認めるに足りる証拠はない。そして,登録モデル情

  報を印刷した場合には利用が終わり次第シュレッダーにより裁断している

  のであって,ことさらにこれを机上に放置したり,裏紙として再利用した

  りしていたことを窺わせるような証拠はない。被告らの主張は,採用する

  ことができない。

イ  原告は,モデルやタレントのマネジメント及び管理等を業とする株式会

  社であり,顧客からモデル募集等の注文があった際に,登録モデル情報を

  使用すれば,顧客の注文に即した候補モデルを短時間で効率的に選別する

  ことができるのは明らかであるから,登録モデル情報は,原告の事業活動

     に有用な営業上の情報である。

   ウ  原告の登録モデル情報は,原告に登録された2000名を超えるモデル

     の個人情報であり,一般には知られていないことが認められるから,公然

     と知られていないものある。

      被告らは,登録モデル情報は,公募イベントや口コミ,ウェブサイト等

     で知ることができるから公然と知られたものであると主張するところ,確

     かに,証拠(乙13)によれば,登録モデル情報のうち,氏名,年齢,身

     長,写真等の情報を知ることができることが認められるが,登録モデル情

     報は,原告に登録された2000名を超えるモデルの個人情報であって,

     しかも,年齢,身長,写真等のほか連絡先と有機的に結合したものである

     から,このような情報を公募イベントや口コミ,ウェブサイト等から知る

     ことはできない。被告らの主張は,採用の限りでない。

  (3)  したがって,原告の登録モデル情報は,原告の営業秘密に該当する。

2   争点A(被告らが図利加害目的で共同して本件情報を使用したか)について

  (1)  被告会社は,設立約5か月後の平成24年2月29日に原告の登録モデ

   ル56名を含む64名のモデルと専属又は登録モデル契約を締結し,その約

   半年後の同年8月10日に原告の登録モデル84名を含む124名のモデル

   と専属又は登録モデル契約を締結したというのであり,証拠(甲10ないし

   13,27)によれば,原告の従業員は,平成24年2月28日頃,原告の

   登録モデルの母親から,被告Aから「Xで働いてきたときは大変お世

   話になりました。このたび新事務所を設立いたしました事のご報告とともに,

   登録モデルの募集をしています。」との記載のある電子メールを受信したと

して,「ビックリしました。もしかしたら,もうどなたかが連絡しているか

もしれないですが,個人情報を社外に持ち出しているとしか思えません。」

との内容の電子メールを受信したこと,原告は,同年3月15日付で,原告

の登録モデルの親等に宛てて,「個人情報の適正管理にご協力いただくため

のアンケート」と題する書面を送付して,平成23年4月以降に連絡先を教

えたことのない事務所等からのアプローチの有無を尋ねたところ,一部から,

被告Aや被告Bから新たな登録の依頼等の電話や電子メールを受けたとの回

答があったことが認められる。これらの事実を併せ考えると,被告A及び同

Bは,本件情報を使用して原告の登録モデルを勧誘し,被告会社の専属又は

登録モデル契約として契約を締結したものと認められる。そして,被告Aは

被告会社の代表取締役であり,被告Bはその取締役であるから,被告らは,

少なくても不正の利益を得る目的で,共同して本件情報を使用したものとい

うほかはない。

(2)  被告らは,登録モデルは,仕事をより多く受注することを求めるなど複

数のモデル事務所に重複登録するのが通常であるし,被告会社は,ハーフの

モデルの求人に力を入れ,SEO対策や多くのオーディション会場での勧誘,

モデル登録会の開催等を行った結果,原告との重複登録が増えただけである

と主張する。しかしながら,登録モデルが複数のモデル事務所に重複登録す

るのが通常であるとしても,不正競争により,原告の登録モデルを勧誘し,

被告会社の専属又は登録モデル契約として契約を締結することが許されない

ことは明らかである。また,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,被告

会社は,平成24年2月18日にWEBサイトを開設したことが認められる

から,SEO対策を採ったとしても,これにより,同月29日までに原告の

登録モデル56名を含む64名のモデルと専属又は登録モデル契約を締結す

るに至ったとはいささか考え難い。そして,証拠(甲5,6,原告代表者

及び弁論の全趣旨によれば,被告A及び同Bは,それぞれ原告を退職するに

当たり,原告と同種の業務を行うことを告げ,原告代表者は,これを了承し

て,本件各誓約書の第4条(競業避止義務の確認)にあらかじめ記載されて

いた「@貴社と競合関係に立つ事業者に就職したり役員に就任すること」,

「A貴社と競合関係に立つ事業者の提携先企業に就職したり役員に就任する

こと」,「B貴社と競合関係に立つ事業を自ら開業または設立すること」と

の文言を抹消したことが認められるところ,そうであれば,被告A及び同B

は,被告会社の役員としてモデルを勧誘するについて,契約の締結に至った

経緯等を記録しておくなど,本件情報を含む原告の登録モデル情報を使用し

たとの疑念を持たれることがないよう何らかの工夫をするのが通常であると

考えられる。しかるところ,被告らは,SEO対策や多くのオーディション

会場での勧誘,モデル登録会の開催等を行ったと主張するだけで,本件情報

を使用することなくモデル契約の締結に至ったことについて,具体的経緯等

を何ら明らかにしない。そうであるから,被告らの上記主張は,到底これを

採用するに由ない。

また,被告らは,被告A及び同Bは,それぞれ原告を退職するに当たって

本件情報を削除したと主張するが,被告A及び同Bが本件情報を削除したこ

とを認めるに足りる的確な証拠はなく,上記(1)認定の事実に照らせば,被

   告A及び同Bは,かえって本件情報を削除しなかったものと認めざるを得な

   い。被告らの上記主張は,採用することができない。

  (3)  したがって,被告らは,故意により不正競争を行ったものと認められる。

3   争点B(原告に生じた損害の額)について

  (1)  番号@について

   ア  証拠(甲8,9,24,41,55ないし57)によれば,原告は,平

     成23年12月1日,顧客iから,使用期間を平成24年

     1月15日から平成25年1月14日までとし,IIIを広告

     主とする案件cのTVCM出演者募集の申入れを

     受け、1名について受注したこと,被告会社は,上記案件に関し,原告及

     び被告会社それぞれの登録モデルであるCを出演させたことが認められる。

     被告らは,顧客iでなく,他から注文を受けたと主張するが,この

     ことを認めるに足りる証拠はない。

      上記認定の事実によると,原告は,被告らの不正競争がなければ,原告

     は,自己の登録モデルを出演させ,これにより利益を得ることができたと

     認められる。

   イ  証拠(甲41,55ないし57)によれば,顧客iから

     の申入れの額は●円又は●円であり,それぞれの原価は●

     円又は●円であることが認められるから,被告会社は,

     不正競争により少なくても4万4445円を下らない額の利益を受けたも

     のと認められる。

   ウ  被告会社の利益の額は原告が受けた損害の額と推定されるから,そうす

   ると,原告は,番号@の案件に関し,4万4445円の損害を受けたこと

   になる。

(2)  番号Aについて

 ア  証拠(甲8,9,24,40,54,55,58、乙11)によれば,

   原告は,平成23年5月2日,顧客iiから,使用期間を同年

   7月29日から平成24年7月28日までとし,VIを広告主と

   する案件dのTVCM出演者募集の申入れを受けてこ

   れを受注し,原告の登録モデルであったDを出演させたこと,被告会社は,

   同年1月頃,Dとの間で専属又モデル契約を締結し,原告に対し,上記案

   件について,完了済みの作品等を除き,追撮,新バージョン撮影やこれに

   関わるイベント等その後のすべてのマネジメント権を被告会社の帰属とす

   ることを要求したこと,原告は,顧客iiとの契約期間の中途

   における被告会社の要求には不満であったが,原告と被告会社との間のい

   ざこざに関係しない顧客の顧客iiに迷惑をかけることはでき

   ないとして,不本意ながらも,上記案件を承継させたことが認められる。

   これによると,原告は,被告らの不正競争がなければ,原告が顧客ii

   との契約期間の終了までDを出演させ,これにより利益を得るこ

   とができたと認められる。

    被告らは,原告は,被告会社との連名の「御報告書」を作成して関係者

   に配布したから,納得して番号Aの案件を顧客iiに承継させ

   たと主張する。証拠(乙11)によれば,「御報告書」(乙11)には,

   Dが平成23年12月付で原告の登録を解除し,平成24年1月から被告

  会社と専属契約を締結したとして,「株式会社Xに登録期間中に締

  結いたしました合意事項を株式会社Yに継承し,遵守する事を合意

  致しました事を,ここにご報告致します。」との記載があることが認めら

  れるが,前記認定の事実によると,原告は,被告会社との間のいざこざに

  関係のない顧客に迷惑をかけることはできないとして,番号Aの案件を被

  告会社に承継させたに過ぎないから,「御報告書」を作成したことをもっ

  て,被告らの不正競争による損害賠償の責任を免除したなどということは

  できない。被告らの上記主張は,採用することができない。

イ  証拠(甲54,55,58,原告代表者)によれば,原告が番号Aの案

  件の受注に当たり作成された「広告出演契約書」(甲54)には,「甲」

  を顧客ii,「乙」を原告,「丙」をDとして,8条(契約出

  演料)に,「(1)  甲は乙に対し,本契約に基づく丙の出演の承諾及び第

  7条による拘束,制限の対価として,丙に関する契約出演料金●円

  也(消費税別途加算)を2011年8月31日までに,乙の指定す

  る銀行口座に現金振込にて支払うものとする。但し,上記金額は初回出演

  料(テレビCM,印刷媒体広告,ラジオCM)を含むものとする。」,

  「(2)  甲および乙は,有効期間内の2回目以降の丙の各媒体出演料につ

  いては,その都度二者間で協議し,協議により決定した金額を甲は乙の指

  定する銀行口座に現金振込にて支払うものとする。」との記載があること,

  原告は,顧客iiから契約出演料金●円の支払を受け,さ

  らに,追加の契約出演料金等合計●円の支払を受けることが予定さ

  れたが,案件を顧客iiに承継させたためにその支払を受ける

   ことができなかったこと,顧客iiからの申入れの額は●円

   であり,その原価は●円であることが認められる。これら

   の事実によると,被告会社は,追加の契約出演料金等合計●円の支

   払を受けたものであるところ,契約出演料金●円の原価が●円

   であることに照らすと,その原価は●円になるから,

   被告会社は,不正競争により62万9630円を下らない額の利益を受け

   たものと認められる。

 ウ  被告会社の利益の額は原告が受けた損害の額と推定されるから,そうす

   ると,原告は,番号Aの案件に関し,62万9630円の損害を受けたこ

   とになる。

(3)  番号Bについて

   証拠(甲8,9,24,42,55,59)によれば,原告は,平成23

 年11月28日,顧客iiiから,使用期間を平成24年1月20

 日から同年7月19日までとし,Vを広告主とする案件a

 のスチール広告出演者募集の申入れを受け、2名について

 受注したことが認められる。しかしながら,被告会社が上記案件を受注した

 ことを認めるに足りる証拠はない。なお,証拠(甲14)によれば,被告会

 社は,Vを広告主とする案件eのスチール広告

 にDを出演させたことが認められるが,これについて,原告が顧客iii

 から出演者募集の申入れを受けたことを認めるに足りる証拠はない。

   そうであるから,原告は,番号Bの案件に関して,被告らの不正競争によ

 り営業上の利益侵害されたとはいえない。


(4)  番号Cについて

   証拠(甲43,55,60)によれば,原告は,平成24年1月30日,

 顧客xiiiから,使用期間を同年4

 月1日からとし,きくやVIを広告主とする案件b

 の広告出演者募集の申入れを受け,1名について受注し

 たことが認められる。しかしながら,被告会社が上記案件を受注したことを

 認めるに足りる証拠はない。

   そうであるから,原告は,番号Cの案件に関して,被告らの不正競争によ

 り営業上の利益侵害されたとはいえない。

(5)  番号Dについて

 ア  証拠(甲8,9,24,44,55,61)によれば,原告は,平成2

   4年2月9日,顧客iiiから,使用期間を同年3月1日から同

   年8月31日までとし,Iを広告主とする案件f

   のTVCM出演者募集の申入れを受け、2名

   について受注したこと,被告会社は,上記案件に関し,原告及び被告会社

   それぞれの登録モデルであるEとFを出演させことが認められる。これに

   よると,原告は,被告らの不正競争がなければ,登録モデルを出演させ,

   これにより利益を得ることができたと認められる。

 イ  証拠(甲44,55,61)によれば,顧客iiiからの申入

   れの額は●円(一人当たり15万円)であり,その原価は●円

   (一人当たり●円)であることが認められるから,被告

   会社は,不正競争により15万9998円を下らない額の利益を受けたも

   のと認められる。

 ウ  被告会社の利益の額は原告が受けた損害の額と推定されるから,そうす

   ると,原告は,番号Dの案件に関し,14万0002円の損害を受けたこ

   とになる。

(6)  番号Eについて

   証拠(甲45,55,62)によれば,原告は,平成22年8月5日,ラ

 イターGから,使用期間を同年9月18日からとし,顧客vを広告主とする

 案件gのスチール広告出演者募集の申入れを受け、1

 名について受注したことが認められる。しかしながら,これは,被告会社が

 設立される前の案件である。なお,証拠(甲14)によれば,被告会社は,

 顧客vを広告主とする案件hの表紙に原告

 及び被告会社それぞれの登録モデルであるHとIを出演させたことが認めら

 れるが,これについて,原告がライターGから出演者募集の申入れを受けた

 ことを認めるに足りる証拠はない。

   そうであるから,原告は,番号Eの案件に関して,被告らの不正競争によ

 り営業上の利益侵害されたとはいえない。

(7)  番号Fについて

 ア  証拠(甲8,9,24,46,55,63)によれば,原告は,平成2

   4年3月5日,顧客viから,使用期間を同年5月1日から平

   成25年5月1日までとし,VIIを広告主とする案件i

   のTVCM出演者募集の申入れ

   を受けたが,受注に至らなかったこと,被告会社は,上記案件に関し,原

   告及び被告会社それぞれの登録モデルであるJがこれに出演したことが認

   められる。これによると,原告は,被告らの不正競争がなければ,登録モ

   デルを出演させ,これにより利益を得ることができたと認められる。

 イ  証拠(甲46,55,63)によれば,顧客viからの申入

   れの額は●円であることが認められる。

    ところで,証拠(甲57ないし70)によれば,原告が挙げた14の案

   件のうち,顧客から原告に対し出演者募集の申入れがあったのが9件であ

   り,原告はそのうちの4件(番号@,A,D及びHの案件)を受注したこ

   と,受注した4の案件について,売上げ(決定金額)と原価(戻し金額)

   により原価率を算出すると,番号@の案件が●%,番号Aの案件

   が●%,番号Dの案件が●%,番号Hの案件が●%

   になることが認められ,この事実に鑑みれば,原価は,原告が主張す

   るように,売上げの●%程度とみるのが相当である。

    そうすると,被告会社は,不正競争により,顧客viからの

   申入額●円からその●%に相当する原価を控除した●円

   を下らない額の利益を受けたものと認められる。

 ウ  被告会社の利益の額は原告が受けた損害の額と推定されるから,そうす

   ると,原告は,番号Fの案件に関し,9万6800円の損害を受けたこと

   になる。

(8)  番号Gについて

   証拠(甲47,55,64)によれば,原告は,平成22年8月9日,

 顧客IIから,案件jの番組出演者募
 集の申入れを受けたが,受注に至らなかったことが認められる。しかしなが

 ら,これは,被告会社が設立される前の案件である。なお,証拠(甲14)

 によれば,被告会社は,顧客IIの平成24年4月30日放送の

 案件kの番

 組に原告の登録モデルで被告会社の専属モデルになったOを出演させたこと

 が認められるが,これについて,原告が顧客IIから出演者募集

 の申入れを受けたことを認めるに足りる証拠はない。

   そうであるから,原告は,番号Gの案件に関して,被告らの不正競争によ

 り営業上の利益侵害されたとはいえない。

(9)  番号Hについて

 ア  証拠(甲8,9,24,48,55,65)によれば,原告は,平成2

   4年3月28日,顧客viiiから,VIII

   とする同年5月13日実施の案件l

   のファッションショー出演者募集の申入れを受け,2名について受注した

   こと,被告会社は,上記案件に関し,原告及び被告会社それぞれの登録モ

   デル7名を含む8名がこれに出演したことが認められる。これによると,

   原告は,被告らの不正競争がなければ,登録モデルを出演させ,これによ

   り利益を得ることができたと認められる。

 イ  証拠(甲48,55,65)によれば,顧客viiiからの

   申入れの額は少なくても一人当たり●万円であり,その原価は●円

   であることが認められるから,被告会社は,不正競争により7名分に

   相当する11万6669円を下らない額の利益を受けたものと認められる。

 ウ   被告会社の利益の額は原告が受けた損害の額と推定されるから,そうす

 ると,原告は,番号Hの案件に関し,11万6669円の損害を受けたこと

 になる。

(10)  番号Iについて

    証拠(甲8,9,24,49の1,55,66)によれば,原告は,平成

 24年3月29日,顧客ixから,使用期間を同年4月1日からとし,

 IXを広告主とする,4ないし6歳の日本人の子供のTVCM出演

 者募集の申入れを受けたが,受注に至らなかったこと,被告会社は,上記案

 件に関し,原告及び被告会社それぞれのハーフの登録モデルであるKを出演

 させたことが認められる。しかしながら,上記案件に関し,原告が顧客ix

 からハーフの子供の出演者募集の申入れを受けたことを認めるに足り

 る証拠はない。

    そうであるから,原告は,番号Iの案件に関して,被告らの不正競争によ

 り営業上の利益侵害されたとはいえない。

(11)  番号Jについて

    証拠(甲50,55,67)によれば,原告は,平成19年7月9日,

 顧客xから,同年10月号の案件mのスチール広

 告出演者募集の申入れを受け、1名について受注したことが認められる。し

 かしながら,これは,被告会社が設立される前の案件である。なお,証拠

 (甲14)によれば,被告会社は,顧客xの平成24年6月号

 の案件mの表紙に原告の登録モデルで被告会社の専属モデル

 になったLを出演させたことが認められるが,これについて,原告が新美容

 出版株式会社から出演者募集の申入れを受けたことを認めるに足りる証拠は

 ない。

    そうであるから,原告は,番号Jの案件に関して,被告らの不正競争によ

 り営業上の利益侵害されたとはいえない。

(12)  番号Kについて

 ア   証拠(甲8,9,24,51の1・2,55,68)によれば,原告は,

 平成24年4月20日,顧客xiから,Xを広告主とする案件n

 の外国人の大人の男女のプリント・

 メディア等の出演者募集の申入れを受けたが,受注に至らなかったこと,被

 告会社は,上記案件に関し,原告及び被告会社それぞれのハーフの子供の登

 録モデルであるEとMを出演させことが認められる。しかしながら,上記案

 件に関し,原告が顧客xiからハーフの子供の出演者募集の申入

 れを受けたことを認めるに足りる証拠はない。

    そうであるから,原告は,番号Kの案件に関して,被告らの不正競争によ

 り営業上の利益侵害されたとはいえない。

(13)  番号Lについて

 ア   証拠(甲8,9,24,52の1・2,55,69)によれば,原告は,

    平成24年5月7日,顧客xiiから,XIを広

    告主とするTVCMの出演者募集の申入れを受けたが,受注に至らなかっ

    たこと,被告会社は,上記案件に関し,原告及び被告会社それぞれの登録

    モデルであるNを出演させたことが認められる。これによると,原告は,

    被告らの不正競争がなければ,登録モデルを出演させ,これにより利益を

    得ることができたと認められる。

  イ  証拠(甲52の1・2,55,69)によれば,顧客ixからの

    申入れの額は●円であることが認められる。そして,その原価は,前

    記(7)のとおり,売上げの●%とみるのが相当であるから,被告会

    社は,不正競争により,顧客ixからの申入額●円からその

    ●%に相当する原価を控除した7万2600円を下らない額の利益を

    受けたものと認められる。

  ウ  被告会社の利益の額は原告が受けた損害の額と推定されるから,そうす

    ると,原告は,番号Lの案件に関し,7万2600円の損害を受けたこと

    になる。

(14)   番号Mについて

    証拠(甲8,9,24,53の1・2,55,70)によれば,原告は,

  平成24年1月10日,顧客xiii

  から,XIIを広告主とする案件oの広告の出演

  者募集の申入れを受けたが,受注に至らなかったことが認められる。しかし

  ながら,被告会社が上記案件を受注したことを認めるに足りる証拠はない。

    そうであるから,原告は,番号Mの案件に関して,被告らの不正競争によ

  り営業上の利益侵害されたとはいえない。

4    以上によれば,被告らは,原告に対し,連帯して110万0146円及び

  これに対する訴状送達の日の翌日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合に

  よる遅延損害金を支払う義務がある。

    そして,訴状送達の日は,被告会社が平成25年1月10日,被告Aが同

  月12日,被告Bが同月11日であり,このことは記録上明らかであるから,

   原告の請求は,被告らに対し,連帯して110万0146円及びこれに対す

   る被告会社については同月11日から,被告Aについては同月13日から,

   被告Bについては同月12日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による

   遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。




5  よって,原告の請求を上記の限度で認容し,その余は失当としてこれを棄却

  することとして,主文のとおり判決する。




    東京地方裁判所民事第47部




     裁判長裁判官     高  野  輝  久




       裁判官     藤  田    壮




裁判官志賀勝は,転補のため署名押印することができない。




     裁判長裁判官     高  野  輝  久






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