関連ワード | 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) / 周知性 / 広く認識 / 需要者 / 商品等表示 / 出所表示性(出所表示) / 類似性(類似) / 混同のおそれ(混同) / 商品の形態(商品形態) / 模倣 / 意匠登録 / 差止請求(差止) / 因果関係 / 損害額の推定(損害額と推定) / 利益額(利益の額) / 弁護士費用 / 代理人 / 請求権者 / 混同のおそれ(混同) / 商品形態模倣行為(2条1項3号) / 損害賠償 / 損害額 / 推定 / 販売数量 / 具体的態様 / |
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事件 |
平成
15年
(ワ)
28377号
不正競争行為差止等請求事件
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原告 株式会社良品計画 原告 リス株式会社 原告ら訴訟代理人弁護士 伊藤真 補佐人弁理士 峯唯夫 被告 株式会社伸和 被告訴訟代理人弁護士 石川悌二 補佐人弁理士 黒田勇治 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2004/07/14 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,別紙被告商品目録1ないし6記載の各収納ケースを,製造し,譲渡し,貸し渡し,譲渡又は貸渡しのために展示し,輸出し,又は輸入してはならない。 2 被告は,その所有する前項記載の各収納ケースを廃棄せよ。 3 被告は,その所有する第1項記載の各収納ケースを製造するための金型を廃棄せよ。 4 被告は,原告株式会社良品計画に対し,金1690万円及びこれに対する平成15年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告リス株式会社に対し,金1690万円及びこれに対する平成15年12月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は,原告らが,被告によるポリプロピレン製収納ケースの製造販売が,不正競争防止法2条1項1号及び3号の不正競争行為に当たるとして,同法3条,4条に基づき,被告のポリプロピレン製収納ケースの製造販売等の差止め及び損害賠償を求めた事案である。 1 争いのない事実等(認定の根拠を掲げない事実は当事者間に争いがない。) (1) 当事者 ア 原告ら (ア) 原告株式会社良品計画(以下「原告良品計画」という。)は,家庭用品を中心とした「無印良品」の標章を付した商品を販売している。 (イ) 原告リス株式会社(以下「原告リス」という。)は,ダイニングキッチン用品や収納用品などの家庭用プラスチック製品を製造販売している。 イ 被告 被告は,合成樹脂の製造・販売,合成樹脂製品・金型の売買及び輸出入等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 (2) 原告らの行為 原告リスは,別紙原告商品目録1ないし8のポリプロピレン製収納ケース(以下順に「原告商品1」,「原告商品2」などといい,これらを併せて「原告商品」という。)を製造し,原告良品計画はこれらを販売している。 (3) 原告商品の形態 原告商品の形態は,以下のとおりである(検甲1ないし6,弁論の全趣旨)。なお,以下では,「ケース本体」とは,一つを単独で使用する場合には,本体(側板,底板及び後板から構成される部分)に蓋をはめ込んだものを指し,複数個積み重ねて使用する場合には,本体を複数はめ合わせて積み重ね,最上段の本体に蓋をはめ込んだものを,それぞれ指す。「収納ケース」とは,ケース本体及び引き出しから構成されるものを指す。 ア 原告商品1 原告商品1は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増加させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) (ア) 左右の2枚の側板,底板及び後板からなり,前部及び上部が開口した四角枠状の本体に,上部の開口部に四角板状の蓋をはめ込んで,正面視R処理のない方形のケース本体を構成し, (イ) 前記ケース本体に,上部が開口した四角容器状の引き出しが,引き出し自在に収納され, (ウ) 引き出しの前面下部に幅方向に延びて引手部が形成されている。 (具体的形態) (エ) ケース本体は,隅部はすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理され, (オ) 引き出しの前面は,引手部を構成する凹入部分を除き,幅が狭くごく低い凸条で縁取りされ,縁取りの内側部分の引き出し前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜し, (カ) 引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させると共に,引き出し前面の板の下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されている。 (キ) 大きさは,幅18センチメートル,奥行き40センチメートル,高さ21センチメートルである。 イ 原告商品2 原告商品2は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増減させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) (ア) 左右の2枚の側板,底板及び後板からなり,前部及び上部が開口した四角枠状の本体を複数個積み重ねて一体化し,上部の開口部に四角板状の蓋をはめ込んで,正面視R処理のない方形のケース本体を構成し, (イ) ケース本体に,上部が開口した四角容器状の引き出しが,引き出し自在に収納され, (ウ) 引き出しの前面下部に幅方向に延びて引手部が形成されている。 (具体的形態) (エ) ケース本体は,隅部はすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理されており, (オ) 引き出しの前面は,引手部を構成する凹入部分を除き,幅が狭くごく低い凸条で縁取りされ,縁取りの内側部分の引き出し前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜し, (カ) 引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させると共に,引き出し前面の板の下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されている。 (キ) 本体の積み重ね個数は4個である。 (ク) 大きさは,幅18センチメートル,奥行き40センチメートル,高さ78センチメートルである。 ウ 原告商品3 原告商品3は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増加させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 原告商品1と同じ。 (具体的形態) (エ) ケース本体は,隅部はすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理されており, (オ) 引き出しの前面はよく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜し, (カ) 引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させると共に,引き出し前面の板の下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されている。 (キ) 大きさは,幅26センチメートル,奥行き37センチメートル,高さ17.5センチメートルである。 エ 原告商品4 原告商品4は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増加させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 原告商品1と同じ。 (具体的形態) 大きさが,幅26センチメートル,奥行き37センチメートル,高さ12センチメートルであることを除き,原告商品3と同じ。 オ 原告商品5 原告商品5は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増加させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 原告商品1と同じ。 (具体的形態) 大きさが,幅26センチメートル,奥行き37センチメートル,高さ12センチメートルであること,引き出しは,ケース本体の正面開口部の2分の1の大きさのものを2個並べて装着されていることを除き,原告商品3と同じである。 カ 原告商品6 原告商品6は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増加させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 原告商品1と同じ。 (具体的形態) 大きさが,幅26センチメートル,奥行き37センチメートル,高さ17.5センチメートルであること,引き出しは,ケース本体の正面開口部の2分の1の大きさのものを2個並べて装着されていることを除き,原告商品3と同じである。 キ 原告商品7 原告商品7は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増減させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 原告商品2と同じ。 (具体的態様) 本体の積み重ね個数は3個であり,本体及び引き出しの形態は,原告商品4と一致し,大きさは,幅26センチメートル,奥行き37センチメートル,高さ32.5センチメートルである。 ク 原告商品8 原告商品8は,「収納ケース」であり,本体の積み重ね数を適宜増減させて使用することを可能にしたものであり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 原告商品2と同じ。 (具体的態様) 本体の積み重ね個数は3個であり,本体及び引き出しの形態は,原告商品5と一致し,大きさは,幅26センチメートル,奥行き37センチメートル,高さ32.5センチメートルである。 (4) 被告の行為 被告は,平成14年10月23,24日,幕張メッセで開催された「27th 全日本プラスチック日用品フェア」において,「more natural」と題するパンフレットを配布し,その中に,別紙被告商品目録1ないし6の商品(以下順に「被告商品1」,「被告商品2」などといい,これらを併せて「被告商品」という。)を掲載した。そして,そのころから被告商品の製造及び販売を開始した。 (5) 被告商品の形態 被告商品の形態は,以下のとおりである。 ア 被告商品1 被告商品1は,「収納ケース」であり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) (ア) 左右の2枚の側板,底板及び後板からなり,前部及び上部が開口した四角枠状の本体の上部の開口部に四角板状の蓋をはめ込んで正面視R処理のない方形のケース本体を構成し, (イ) 前板,左右2枚の側板,底板及び後板からなり,上部が開口した四角容器状の引き出しがケース本体に引き出し自在に収納され, (ウ) 引き出しの前面下部に幅方向に延びて,引手部が形成されている。 (具体的形態) (エ) ケース本体は,隅部はすべて直角に処理されて丸みがなく,左右の側板の各前辺縁部,底辺縁部及び上辺縁部に突出して全体として略コ状をなす縁取突条を有し,蓋の左右側面とケース本体の側面との間に段差を有し, (オ) 引き出しの前面は,引手部を構成する凹入部分を除き,幅が狭くごく低い凸条で縁取りされ,縁取りの内側部分の引き出し前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜し, (カ) 引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させるとともに,引き出し前面の板の下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されている。 (キ) 大きさは,幅18.4センチメートル,奥行き42.3センチメートル,高さ22.2センチメートルである。 イ 被告商品2 被告商品目録2は,「収納ケース」であり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) (ア) 左右の2枚の側板,底板及び後板からなり,前部及び上部が開口した四角枠状の本体を複数個積み重ねて一体化し,上部の開口部に四角板状の蓋をはめ込んで正面視R処理のない方形のケース本体を構成し, (イ) 前記ケース本体に,上部が開口した四角容器状の引き出しが,引き出し自在に収納され, (ウ) 引き出しの前面下部に幅方向に延びて引手部が形成されている。 (具体的形態) (エ) ケース本体は,隅部はすべて直角に処理されて丸みがなく,左右の側板の各前辺縁部,底辺縁部及び上辺縁部に突出して全体として略コ状をなす縁取突条を有し,蓋の左右側面とケース本体の側面との間に段差を有し, (オ) 引き出しの前面は,引手部を構成する凹入部分を除き,幅が狭くごく低い凸条で縁取りされ,縁取りの内側部分の引き出し前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜し, (カ) 引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させるとともに,引き出し前面の板の下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されている。 (キ) 本体の積み重ね個数は3個である。 (ク) 大きさは,幅18.4センチメートル,奥行き42.3センチメートル,高さ62.5センチメートルである。 ウ 被告商品3 被告商品3は,「収納ケース」であり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 被告商品2と同じである。 (具体的形態) 本体の積み重ね個数が4個であり,大きさが以下のとおりであるほか,被告商品2と同じである。 大きさは,幅18.4センチメートル,奥行き42.3センチメートル,高さ82.5センチメートルである。 エ 被告商品4 被告商品4は,「収納ケース」であり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 被告商品2と同じである。 (具体的形態) 本体の積み重ね個数が5個であり,大きさが以下のとおりであるほか,被告商品2と同じである。 大きさは,幅18.4センチメートル,奥行き42.3センチメートル,高さ102.5センチメートルである。 オ 被告商品5 被告商品5は,「収納ケース」であり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 被告商品1と同じである。 (具体的形態) 大きさが以下のとおりであるほか,被告商品1と同じである。 大きさは,幅26センチメートル,奥行き35.5センチメートル,高さ17.3センチメートルである。 カ 被告商品6 被告商品6は,「収納ケース」であり,ケース本体,引き出しともにポリプロピレン製乳白色半透明であって,その形態は,以下のとおりである。 (基本的形態) 被告商品1と同じである。 (具体的形態) 大きさが以下のとおりであるほか,被告商品1と同じである。 大きさは,幅26センチメートル,奥行き35.5センチメートル,高さ11.5センチメートルである。 2 争点 (1) 被告商品を製造販売する被告の行為は,不正競争防止法2条1項1号に該当するか。 ア 原告商品の形態の商品等表示性の有無 イ 原告商品の商品形態の周知性の有無 ウ 原告商品と被告商品の類似性,混同のおそれの有無 (2) 被告商品5及び6を製造販売する被告の行為は,不正競争防止法2条1項3号に該当するか。 (3) 原告の被った損害の額は幾らか。 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(不正競争防止法2条1項1号該当性)について ア 原告商品の形態の特徴及び商品等表示性の有無 (原告らの主張) (ア) 原告商品共通の形態の特徴及び商品等表示性 原告商品に共通する商品形態の特徴は,以下のaないしgのとおりである。 下記aないしc記載の特徴を備えた収納ケースは,被告の主張するとおり,従来から存在していた。しかし,下記dないしg記載の具体的特徴を同時に充足する収納ケースは存在しなかった。特に,下記gの引手部の形状は,極めて特徴的である。また,下記dのケース本体及び引き出しの全部を乳白色半透明としたものは存在しない。 したがって,aないしcの基本的形態を備えた収納ケースにおいて,下記dないしgの特徴を同時に備えている点は,原告商品に独特の特徴的な形態であって,このような特徴的形態が,原告らの商品であることを示す商品等表示として機能している。 a 左右の2枚の側板,底板及び後板からなり,前部及び上部が開口した四角枠状の本体の上部の開口部に四角板状の蓋がはめ込まれている。 b 前板,左右2枚の側板,底板及び後板からなり,上部が開口した四角容器状の引き出しが,ケース本体に引き出し自在に収納されている。 c 引き出しの前面下部に幅方向に延びて引手部が形成されている。 d ケース本体,引き出しは,共に乳白色半透明である。 e 本体は,隅部がすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理されている。 f 引き出しの前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜している。 g 引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させるとともに,引き出しの前面の板の下部裏側に指掛け用の溝を全幅にわたり形成している。 (イ) 原告商品1ないし4の形態の商品等表示性 原告商品1ないし4の形態は,前記1(3)アないしエ記載のとおりであり,上記(ア)記載のとおり,その形態により原告らの商品であることを識別できるから,商品等表示性を有している。 (被告の反論) 以下の点からすると,原告が原告商品又は原告商品1ないし4の特徴と主張する形態は,いずれも,原告商品独特の特徴的形態ではないのみならば,他の同種の商品と識別し得る顕著な特徴ではないから,原告らの商品であることを示す商品等表示として機能しているとはいえない。 (ア) 前記aないしcのケース本体と引き出しの組合わせ形態及びケース本体単位体を複数個積み重ねて最上段のケース本体単位体の上部に蓋を着脱自在に取り付ける形態並びに上記d及びeの形態は,乙3(意匠登録第969631号公報)に記載の「収納ケース」及び乙4の1ないし4の「DesktopChest FE-9」の意匠に見られるように,原告商品が販売される以前から知られていた形態である。 (イ) 引き出し前面における前記f及びgの各形態は,乙5(意匠登録第763951号公報)に記載の「衣服整理箱」の意匠に見られるように,原告商品が販売される以前から知られていた形態である。 (ウ) 前記dないしgの形態は,この種の商品の分野に限らず,四角箱状ケースの上面における,ごくありふれた形態といえる。また,ケース本体の稜部をほとんど直角状とすることも,ごくありふれた形態といえる。各形態が公然と知られ,また,ありふれた造形処理からなるものであることは,乙6ないし乙13からもうかがえる。 (エ) 原告商品は,ほとんどが「無印良品」の直営店か,「無印良品」の看板を掲げたコーナーで販売され,また,「無印良品」商品として,雑誌やカタログ等で紹介されているから,需要者は,専ら,原告商品を紹介するカタログや広告に掲載された「無印良品」の名称や,「良品計画」という会社名によって,原告商品の出所を認識し,原告商品の形態によりその出所を認識することはない。 イ 原告商品の商品形態の周知性の有無 (原告らの主張) 原告商品は,そのシンプルで無駄のない独特の形態が消費者の大きな支持を得,その結果,原告良品計画が販売する「無印良品」のヒット商品の一つとなり,いわゆる定番商品として発売開始以来継続して全国200店舗以上の店舗で展示販売され,また,西武百貨店,西友,パルコ,ロフトの無印良品コーナー,及びセゾングループ以外のイオン成田,ルミネ新宿,八王子東急スクエア,ジャスコ,近鉄百貨店,阪神百貨店などにおいて展示販売されている。 また,原告商品は,原告良品計画の商品カタログや原告良品計画のホームページなどに継続して掲載されているほか,発行部数の多い著名な雑誌などにおいても度々紹介され,その商品写真も掲載されている。さらに,原告商品は,平成15年3月以降は,企業に配布され多数の社員の目に触れる通信販売用カタログ「ASKUL」(発行部数250万部)に写真とともに掲載されている。 このように,原告商品の前記の特徴的な形態は,遅くとも被告が被告商品を展示発表した平成14年10月以前に,「無印良品」の商品を示す商品等表示として需要者の間に広く認識されるに至っていた。 (被告の反論) 争う。 原告商品の形態は,需要者の間に広く認識されていない。 ウ 原告商品と被告商品の類似性,混同のおそれの有無 (原告らの主張) (ア) 原告商品と被告商品との共通形態における類似性,混同のおそれ 被告商品は,原告商品の形態と同一であり又は類似している。被告商品は,原告商品を模倣したものである。 そして,被告商品は原告商品と同様に,ケース本体を適宜数積み重ねて増減させて使用することを可能にしたポリプロピレン製「収納ケース」であり,ケース本体,引き出しをともにポリプロピレン製で乳白色半透明としたものであり,前記原告商品の形態の特徴を維持しつつ原告商品と同様にバリエーション展開している。 したがって,需要者は,原告商品と被告商品とを混同する。 (イ) 原告商品1ないし4と被告商品との類似性,混同のおそれ a 原告商品1と被告商品1 被告商品1の形態は,原告商品1の形態と同一であり又は類似している。両者は,側面のわずかな突条及び段差の有無並びに寸法に差異があるが,これらは認識困難な程度のものにすぎない。 したがって,被告商品1は,原告商品1と同一又は類似する形態を有し,需要者は,原告商品1と被告商品1とを混同する。 b 原告商品2と被告商品2ないし4 被告商品3の形態は,原告商品2の形態と同一であり又は類似している。両者は,側面のわずかな突条及び段差の有無並びに寸法に差異があるが,これらは認識困難な程度のものにすぎない。 また,被告商品2及び4と被告商品3との差異は,積み重ね段数の違いにすぎず,このような積み重ね段数の違いは,商品等表示として類似しているか否かという点において意味を有しないから,被告商品2及び4の形態は,いずれも原告商品2の形態と類似する。 したがって,被告商品2ないし4は,原告商品2と同一又は類似する形態を有し,需要者は,原告商品2と被告商品2ないし4とを混同する。 c 原告商品3と被告商品5 被告商品5の形態は,原告商品3の形態と同一であり又は類似している。両者は,側面のわずかな突条及び段差の有無並びに寸法に差異があるが,これらは詳細に観察して気がつく程度のものにすぎない。 したがって,被告商品5は,原告商品3と同一又は類似する形態を有し,需要者は,原告商品3と被告商品5とを混同する。 d 原告商品4と被告商品6 被告商品6の形態は,原告商品4の形態と同一であり又は類似している。両者は,側面のわずかな突条及び段差の有無並びに寸法に差異があるが,これらは詳細に観察して気がつく程度のものにすぎない。 したがって,被告商品6は,原告商品4と同一又は類似する形態を有し,需要者は,原告商品4と被告商品6とを混同する。 (被告の反論) (ア) 類似性について 原告商品と被告商品とは,以下の点で相違する。 原告商品は,蓋を外したケース本体を数個積み重ねて最上段のケース本体の上部に蓋をはめ込む構造とすることにより積み重ね段数を変更し得る構成となっているのに対して,被告商品は,ケース本体を適宜積み重ねて増減させて使用することはできない構成となっている点で相違する。 また,原告商品は,ケース本体の左右の側面が全くの平坦面であり,かつ,蓋の左右側面と面一の形態となっており,全体の側面が全くの平坦面となっているのに対して,被告商品は,ケース本体の左右の側板の各前辺縁部,底辺縁部及び上辺縁部に縁取突条が略コ状に突出形成され,かつ,蓋の左右側面とケース本体の側面との間に段差が設けられ,側面全体を見ると,完全な平坦面ではない点において相違する。 さらに,原告商品は,引き出しの左右2枚の側板,底板及び後板が,その前板と比較して透明度が高くなっており,これら5枚の板のうち,1枚の板よりも残りの4枚の板の透明度が高い全体として不統一な乳白色半透明を呈しているのに対して,被告商品は,引き出しの左右2枚の側板,底板及び後板の透明度とその前板とは同じ透明度になっており,5枚の板のすべての透明度は統一されている点において相違する。 したがって,被告商品と原告商品は類似しない。 (イ) 混同の有無について 原告商品は,原告良品計画の「無印良品」の名称の店舗のみで販売され,かつ,同店舗には「無印良品」以外の商品が陳列されていることはないので,同店舗を訪れる需要者(購入者)は混同を生ずることなく原告商品を購入できる。 これに対し,被告商品は,「無印良品」の名称の店舗では販売しておらず,一般のスーパー,ホームセンター等の店舗で販売しており,これらの店舗を訪れる需要者(購入者)はこれらの店舗には原告商品が陳列されていないことを当初から認識しているので,原告商品と被告商品とを混同することはあり得ない。 また,「無印良品」の店舗を訪れる需要者は比較的若年層が多く,最初から「無印良品」の購入を目的としているので,被告商品の購入を求める需要者と購買者層を異にする。 したがって,原告商品と被告商品との間に混同は生じない。 (2) 争点(2)(不正競争防止法2条1項3号該当性)について (原告らの主張) 以下のとおり,被告商品5及び6は,原告商品3及び4の形態を模倣したものであるから,被告が被告商品5及び6を製造,販売する行為は,不正競争防止法2条1項3号に該当する。 ア 原告商品の販売開始時期 原告商品3及び4の販売開始時期は,平成13年6月21日である。 イ 被告の原告商品へのアクセス及び原告商品の模倣の意思の存在 原告商品が,全国の「無印良品」店舗のほか,西友,西武百貨店などでも展示,販売されており,被告の本店所在地が存在する新潟県にも無印良品の店舗が存在する以上,被告が原告商品に接し,その形態を模倣し得る状況にあった。 また,被告商品のカタログには,原告商品カタログに掲載されている写真とほぼ同一の形態を有する商品の写真が掲載されている。 これらの事実からすると,被告は原告商品にアクセスし,模倣の意思をもって,被告商品を製造販売したものであることは明らかである。 ウ 形態の実質的な同一性 原告商品3と被告商品5,原告商品4と被告商品6との間には,側面のわずかな突条及び段差の有無,引き出し前面における縁取りのわずかな凸条の有無,そして寸法に多少の差異がある。 しかし,これらの差異は,詳細に観察して気がつく程度のものにすぎず,前記1(3)記載のとおり,被告商品5の形態は原告商品3の形態と,被告商品6の形態は原告商品4の形態と,それぞれほぼ同一である。 (被告の反論) ア 不正競争防止法2条1項3号該当性 以下のとおり,被告商品5及び6を製造販売する被告の行為は,不正競争防止法2条1項3号に該当しない。 (ア) 原告商品の販売開始時期 原告が販売開始時期を立証するための証拠として提出する甲6は,平成13年6月21日付の売上伝票にすぎず,その時期に商品が販売された事実を示すにとどまり,販売開始時期を証明するものではない。 (イ) アクセス及び模倣の意思の不存在 被告が原告商品にアクセスし,模倣の意思をもって被告商品を製造販売したことはない。 (ウ) 形態の同一性について 原告商品3及び4の形態と被告商品5及び6の形態との間には,側面のわずかな突条及び段差の有無,引き出し前面における縁取りのわずかな凸条の有無並びに寸法に差異が存在する。 そして,需要者はこの種の商品の購入に際し,実際に商品に触って見るのが常であり,値段の安いものではなく,むしろ高価な商品に入ることから,なおさら商品を注意深く観察する。そうすると,わずかな突条,段差であっても,大きな相違点であると認識される。同様に,引き出し前面の縁取凸条の有無の差異についても,商品の正面に存在する差異であり,需要者の意識に訴えるに足りる差異といえる。 したがって,原告商品3及び4の形態と被告商品5及び6の形態とが実質的に同一であるとはいえない。 (エ) 通常有する形態であること 前記(1)ア(被告の反論)欄記載の事実,及び原告商品に係る意匠につき特許庁が無効審判をした事実に照らすと,原告商品3及び4の形態は,同種の商品が通常有する形態にすぎないというべきである。 イ 請求権者について 原告商品に係る意匠権の権利者が訴外岐阜プラスチック工業株式会社であり,その創作者が同社の社員であることからすると,原告らが原告商品を開発したとはいえず,原告らは,被告に対し,不正競争防止法2条1項3号に基づく請求権者にはなり得ない。 もっとも,原告リスは,前記会社の完全子会社であるから,同原告が共同開発者となる余地があるとしても,原告良品計画は,開発者ではあり得ないから,同原告は,被告に対し,不正競争防止法2条1項3号に基づく請求権を有しない。 (3) 争点(3)(損害の額)について (原告らの主張) ア 被告の販売利益 被告は,平成14年11月ころから被告商品1ないし6の製造販売を開始し,それぞれ少なくとも以下の規模の製造販売をしたものと考えられる。 そして,被告商品1ないし6の各販売価格(小売価格)は下記のとおりであり,被告は,少なくともその20%の販売利益を得たと考えられる。 したがって,被告の受けている利益の額は,以下のとおり3080万円となり,これが原告らの被った損害額と推定される。 販売価格 製造販売数量 利益率 利益額 被告商品1 1200円 1.5万個 20% 360万円 被告商品2 3000円 0.3万個 20% 180万円 被告商品3 3000円 1.5万個 20% 900万円 被告商品4 4000円 1万個 20% 800万円 被告商品5 1000円 3万個 20% 600万円 被告商品6 800円 1.5万個 20% 240万円 合計 3080万円 被告が被告商品を製造販売したことにより,原告良品計画及び原告リスが被った損害の割合は,ほぼ等しいと考えられるから,被告に対する損害賠償請求権は,原告良品計画及び原告リスに各2分の1ずつ帰属する。 イ 弁護士等費用 原告らは,被告に対して被告商品の販売の停止などを求める通告書を内容証明郵便で送付したが,被告は模倣の事実を争い,販売を継続し,さらに,被告商品以外にも原告らの製造販売する商品を模倣した商品を販売している。そのため,原告らは,原告訴訟代理人らに委任して,本件訴訟を提起せざるを得なかった。 この弁護士費用及び弁理士費用のうち,被告らの不正競争行為と相当因果関係のある弁護士費用等は上記損害額の合計額である3080万円の約1割である300万円を下らない。 原告らは,それぞれ,この2分の1を請求する。 (被告の反論) 争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点(1)ア(原告商品の形態の商品等表示性の有無)について (1) 事実認定 前記争いのない事実等,証拠(甲5,14,18ないし21,23ないし35,37,乙3ないし10,19の1ないし乙22,乙23の4ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 ア 原告商品の共通の形態 原告商品は,以下の共通の形態を有している(以下これらを順に「共通形態(ア)」,「共通形態(イ)」などといい,併せて「共通形態」という。)。 (ア) 左右の2枚の側板,底板及び後板からなり,前部及び上部が開口した四角枠状の本体の上部の開口部に四角板状の蓋がはめ込まれている。 (イ) 前板,左右2枚の側板,底板及び後板からなり,上部が開口した四角容器状の引き出しが,ケース本体に引き出し自在に収納されている。 (ウ) 引き出しの前面下部に幅方向に延びて引手部が形成されている。 (エ) ケース本体,引き出しは,共に乳白色半透明である。 (オ) 本体は,隅部がすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理されている。 (カ) 引き出しの前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜している。 (キ) 引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させるとともに,引き出しの前面の板の下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されている。 イ 原告商品の販売状況等 原告良品計画は,遅くとも昭和62年ころからポリプロピレン製の収納ケースの販売を開始し,現在に至っている。 原告商品は,原告良品計画の経営する全国の「無印良品」の直営店で展示,販売されているほか,西武百貨店,西友,パルコ,ロフトの無印良品コーナー,及びセゾングループ以外のイオン成田,ルミネ新宿,八王子東急スクエア,ジャスコ,近鉄百貨店,阪神百貨店などの「無印良品」の店舗においても展示,販売されている。 また,各種雑誌において,原告商品が,「無印良品」の商品として紹介されているほか,オフィス用品を扱うアスクルのカタログにも,他の部分と区別して「無印良品」の製品の項目が設けられ,原告商品が掲載されている。 ウ 被告商品の販売状況等 被告商品は,一般のスーパー,ホームセンター等の店舗で販売されている。 エ 同種製品の販売状況等 共通形態のうち,(ア)ないし(ウ)を備えた収納ケースは,原告商品が販売を開始する以前から存在していた。また,以下のとおり,共通形態(エ)ないし(キ)のうちのいくつかを備えた収納ケースも販売等されていた。もっとも,原告商品以外に共通形態をすべて備えた商品は販売されていない。 (ア) 登録意匠第763951号意匠公報(乙5) 昭和61年7月30日に出願され,平成元年3月9日に登録された,衣服整理箱に係る登録意匠第763951号意匠公報には,ケースの引手部が,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させるとともに,パネル部分下部裏側に指掛け用の溝を全幅にわたり形成した共通形態(キ)を備えた意匠が記載されている。 (イ) 登録意匠第969631号意匠公報(乙3) 平成5年8月20日に出願され,平成8年9月2日に登録された,収納ケースに係る登録意匠第969631号意匠公報には,収納ケースの側面が上下にわたり面一とされ,共通形態(オ)を備えた意匠が記載されている。 (ウ) 株式会社吉川国工業所製の商品(乙4の1ないし4,乙21) 株式会社吉川国工業所及びライクイット株式会社は,平成10年9月ころ,デスクトップチェストを販売していた(乙4の1ないし4)。同デスクトップチェストは,本体を2つ重ねた「収納ケース」であり,商品全体が本体ケース,引き出しともに乳白色半透明で,本体は,隅部がすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理され,共通形態(エ)及び(オ)を備えている。 また,株式会社吉川国工業所等は,平成12年9月ころにも,共通形態(エ)及び(オ)を備えた収納ケースの販売を行っている。 (エ) 株式会社ヨシカワ製の商品(乙6の1ないし4,乙7の1ないし4) 株式会社ヨシカワは,平成3年10月ころから,収納ケースを販売している。上記収納ケースは,ケースの引手部が,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入されるとともに,パネル部分下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されているという共通形態(キ)の形態を備えているほか,引き出しの前面は,引手部を構成する凹入部分を除き,凸条で斜めに縁取りされているが,縁取りの内側部分の引き出し前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜しているとの共通形態(カ)の形態も備えている。また,上記収納ケースの中には,本体ケース,引き出しともに乳白色半透明であるとの共通形態(エ)の形態も備えている商品が存在する(乙7の4)。 (オ) 大林化学工業株式会社製の商品(乙19,20の各1,2) 平成12年11月ころ及び平成11年12月ころに販売された大林化学工業株式会社製の収納ケースは,商品全体が本体ケース,引き出しともに乳白色半透明であり,本体ケースの隅部がすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理されているという共通形態(エ)及び(オ)を備えている。 (2) 商品等表示性の有無についての判断 上記(1)認定した事実を基礎として,原告商品の共通形態,及び原告商品1ないし4の形態が,商品等表示性を有するか否かについて検討する。 商品の形態は,必ずしも商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが,商品の形態が他の商品と識別し得る独特の形態を有し,かつ,商品の形態が,長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は,短期間であっても商品形態について強力な宣伝等が伴って使用されたような場合には,商品の形態が商品等表示として需要者の間で広く認識されることがあり,そのような場合には,商品の形態が不正競争防止法2条1項1号により保護されると解するのが相当である。そこで,この観点から判断する。 ア 原告商品の共通形態における商品等表示性の有無 (ア) 判断 原告商品の共通形態のうち,「商品全体がケース本体,引き出しともに乳白色半透明である」との形態(共通形態(エ)),「本体は,隅部はすべて直角に処理されて丸みがなく,側面も上下にわたり面一に処理されている」との形態(共通形態(オ)),及び,「引手部は,引き出しの前面下部を全幅にわたり凹入させるとともに,引き出しの前面の板の下部裏側に指掛け用の溝が全幅にわたり形成されている」との形態(共通形態(キ))については,いずれも,原告商品1及び2の販売が開始された平成11年1月(甲1,3,弁論の全趣旨)よりも前から,これらの一つ又は複数を備えた収納ケースが販売されていたのであるから,これらの各形態をもって,他の商品と識別し得る独特の特徴的な形態であるということはできない。 また,「引き出しの前面の板は,よく注意して観察して初めて気がつく程度のごく小さな角度で傾斜している」との形態(共通形態(カ))は,この形態を備えた商品が販売されていたのみならず,この形態は,需要者がよく注意して観察して初めて気がつく程度のものにすぎないから,他の商品と識別し得る特徴的な形態ということはできない。 したがって,共通形態は,いずれも他の商品と識別し得るだけの原告商品に独特の特徴的な形態であるということはできない。 (イ) 原告らの主張について これに対し,原告らは,原告商品につき,共通形態(ア)ないし(ウ)の基本構成に加え,共通形態(エ)ないし(キ)の特徴をすべて兼ね備えた商品は,従前存在せず,この点に共通形態の特徴がある旨主張する。 しかし,前記のとおり,共通形態(ア)ないし(オ)の各形態を備えた収納ケースや共通形態(ア)ないし(エ),(カ)及び(キ)を備えた収納ケースが原告商品の発売前から販売されており(乙4の1ないし4,乙7の1ないし4),これら既存の収納ケースと原告商品とは,共通形態(カ),(キ)又は共通形態(オ)の存否という,それ自体特徴的とはいえない形態上の差異があるにすぎない。したがって,原告商品の形態は,共通形態(ア)ないし(キ)のすべてを備えた商品が従来存在しないからといって,独特の特徴的な形態であるということはできず,この点の原告らの主張を採用することはできない。 イ 原告商品1ないし4の形態における商品等表示性の有無 原告らは,原告商品1ないし4についても,それぞれ他の商品と識別し得るだけの特徴的な形態を有し,商品等表示になり得る旨主張する。 (ア) 原告商品1について 原告商品1の形態は,共通形態とほぼ同一であり,これと異なる点は,原告商品1においては,引き出しの前面は,引手部を構成する凹入部分を除き,幅が狭くごく低い凸条で縁取りされている点のみである。 しかし,前記(1)エ(エ)のとおり,引き出し前面部が凸条で縁取りされた収納ケースは,原告商品1の販売開始時期よりも前から既に販売されており,この凸条の縁取りを幅を狭くごく低いものにしたとしても,それ自体は何ら独特の形態とは認められないから,原告商品1の形態が独特の特徴的な形態であるということはできない。 (イ) 原告商品2について 原告商品2の形態は,共通形態とほぼ同一であり,これと異なる点は,原告商品2においては,本体の積み重ね数が複数(4個)とされていること,引き出しの前面が引手部を構成する凹入部分を除き,幅が狭くごく低い凸条で縁取りされている点である。 しかし,共通形態及び引き出しの前面が引手部を構成する凹入部分を除き,幅が狭くごく低い凸条で縁取りされている点がいずれも独特の特徴的な形態といえないことは前記ア及び上記(ア)のとおりである。そして,原告商品2は,独特の特徴的な形態を有しないものを複数積み上げたにすぎないのであるから,やはり独特の特徴的な形態を有するものということはできない。 (ウ) 原告商品3及び4について 原告商品3及び4の形態は,共通形態と同一であり,相互に大きさが異なるにすぎない。したがって,原告商品3及び4が独特の特徴的な形態を有するものということはできない。 ウ 小括 以上のとおり,原告商品の共通形態,及び原告商品1ないし4の形態は,いずれも独特の特徴的な形態とはいえず,原告らの商品であることを示す出所表示機能を有しないというべきである。 よって,原告らの不正競争防止法2条1項1号に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 2 争点(2)(不正競争防止法2条1項3号該当性)について (1) 判断 原告らは,被告商品5及び6は,原告商品3及び4の形態を模倣したものであると主張する。 しかし,当裁判所は,@原告商品3及び4の形態は,同種の商品が通常有する形態からなること,及びA被告商品5及び6の販売を開始したのは,原告商品3及び4と共通形態を具備する原告商品1及び2が販売されてから,満3年を経過した後であることから,原告の請求は理由がないと判断する。 ア 原告商品3及び4は,いずれもその大きさを除けば同一の形態を有しており,その形態は,共通形態と同一であるところ,前記のとおり,共通形態(ア)ないし(キ)は,いずれも,原告商品3及び4の販売が開始されたとされる時期以前に共通形態(ア)ないし(キ)の一つ又は複数を備えた商品が存在しており,共通形態(ア)ないし(キ)はそれぞれ収納ケースに用いられる形態としてはありふれたものにすぎない。そして,原告商品3及び4は,これらの共通形態(ア)ないし(キ)をすべて備えているにすぎず,他の商品と識別し得る形態的特徴も見出し難い。そうすると,原告商品3及び4の形態は,ありふれた形態を組み合わせたにすぎず,不正競争防止法2条1項3号所定の「同種の商品が通常有する形態」に当たるというべきである。 イ 原告商品3及び4は,いずれもその大きさを除けば同一の形態を有しており,その形態は,共通形態と同一であり,前記認定のとおり,共通形態を備えた原告商品1及び2は,平成11年1月から販売されている。そうすると,被告が被告商品5及び6の販売を開始した平成14年10月には,原告商品1及び2が販売されてから,既に満3年を超える3年9か月が経過しているから,原告商品3及び4の形態は,不正競争防止法2条1項3号の保護対象とはならない。 (2) 小括 よって,原告らの不正競争防止法2条1項3号に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 |
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結論
以上のとおり,原告らの請求はいずれも理由がない。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 榎戸道也 |
裁判官 | 神谷厚毅 |