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事件 平成 25年 (ワ) 23579号 不正競争行為差止等請求事件
東京都新宿区<以下略>
原告日中国際貿易株式会社
同訴訟代理人弁護士 小林幸夫
同 河部康弘
同訴訟復代理人弁護士 千且和也
同 補佐人弁理士高橋雅和
同 高橋友和 神戸市灘区<以下略>
被告株式会社三高
同訴訟代理人弁護士 笹野哲郎
同 貞本幸男
同 種谷有希子
同 山本佳世子
同 井家武男
同 福井理奈
同 山根みづほ
同 山本悠
同 補佐人弁理士室田力雄
同 羽柴拓司
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2014/12/26
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
- 1 -事 実 及 び 理 由第1 請求の趣旨1 被告は,別紙被告商品目録1ないし3記載の商品を譲渡し,譲渡のために展示し,又は輸入してはならない。
2 被告は,その占有する別紙被告商品目録1ないし3記載の各商品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,779万6250円及びこれに対する平成25年9月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告が輸入販売する別紙被告商品目録1ないし3記載の商品(以下,それぞれ「被告商品1」ないし「被告商品3」といい,併せて「被告各商品」という。)が,原告の商品等表示として周知な別紙原告商品目録1ないし3記載の商品(以下,それぞれ「原告商品1」ないし「原告商品3」といい,併せて「原告各商品」という。)の形態と類似し,誤認混同のおそれがあるとして,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号3条1項に基づき,被告商品の輸入,譲渡等の差止め,同法3条2項に基づき占有する被告各商品の廃棄,同法4条5条2項に基づき779万6250円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成25年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提となる事実等(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である。)(1) 当事者原告は,フレキシブルコンテナバッグの製造・輸入販売,各種産業資材・建設資材の輸入販売,各種縫製製品の委託加工業務等を業とする株式会社- 2 -である。
被告は,建築・土木資材の輸入販売・商品開発等を業とする株式会社である。
(2) 原告各商品の輸入販売原告は,平成3年頃から,左官用のバケツである原告各商品を輸入販売している。
原告各商品の形態は,別紙原告商品目録1ないし3のとおりである。
(3) 被告各商品の輸入販売被告は,左官用のバケツである被告各商品を中国から輸入し,卸売会社や被告のホームページ等を通じて販売している。
被告各商品の形態は,別紙被告商品目録1ないし3のとおりである。
(4) 原告各商品と被告各商品の形態類似性原告商品1ないし3と,被告商品1ないし3の形態が,それぞれ概ね類似することについて,被告は特段争わない(誤認混同のおそれがあるかについては争いがある。)。
2 争点(1) 原告各商品の形態商品等表示性(2) 原告各商品の形態周知性(3) 原告各商品と被告各商品の誤認混同のおそれ(4) 被告各商品は真正商品の並行輸入として違法性がないか(予備的抗弁)(5) 損害発生の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張1 争点(1)(原告各商品の形態商品等表示性)について〔原告の主張〕(1) 原告各商品の特徴ア 原告商品1の識別性- 3 -原告商品1の大きな特徴はバケツ本体の大きさと形状,流し口の形状にあり,この部分に他の商品との識別性が認められる。すなわち,使用者である左官職人等にとっては,流し込むノロ又はモルタルの量の調節にあたり,バケツ自体の使用感が非常に重要な要素であるため,バケツ本体の形状及び大きさや流し口の形状などにより,商品識別が行われている。
左官用バケツにおいては,運搬の際にバケツ同士を重ねやすいように上面部の直径が底面部の直径より大きい,台形型の形状を採用することが多い。これに対し原告商品1は,フランジを有する直径約28cmの上面開口部,直径約24cmの底面部,高さ約27cmという寸胴に近い形状かつ大きさを採用しており,この点は他社の左官用バケツにはみられない特徴である。また,バケツ本体に設けられた流し口は,幅約4cm,突出が約3cm,高さが約6cmの三角錐状であって,高さが低く,鋭い嘴状となっている。この流し口の大きさ及び形状も,他社の左官用バケツにはみられず,寸胴状のバケツ本体の形状と組み合わされた結果,他社と区別可能な態様をしている。
さらに,底面裏の模様と突起も,他社と異なる独特のものである。
したがって,平面側から見ても,底面側から見ても,バケツ本体の形状及び大きさから,原告商品1の特徴を把握し自他商品を識別することが可能である。
イ 原告商品2の識別性原告商品2の大きな特徴はバケツ本体の大きさと形状であり,この部分に他の左官用バケツとの識別性が認められる。すなわち,セメントやモルタル,特にセメントと水とを練り込んで作られるノロを入れることに使用される左官用バケツは,専ら左官用に使用されるものであり,- 4 -水と比べ比重の大きい液体の出し入れを繰り返すものであるから,その大きさ及び形状により,使用感が特定されるものである。
左官用バケツにおいては,運搬の際にバケツ同士を重ねやすいように上面部の直径が底面部の直径より大きい,台形型の形状を採用することが多い。これに対して原告商品2は,フランジを有する直径約31cmの上面開口部,直径約24cmの底面部,高さ約25cmの円筒状であるという,比較的寸胴に近い形状かつ大きさとなっており,この点は他社の左官用バケツには見られない特徴となっている。
また,ロープハンドルを保持するハンドルホルダーは,上面開口部と段差無く設けられており,ショルダー状に構成されているが,この構成も,他社の左官用バケツには見られず,寸胴状のバケツ本体の形状と組み合わされた結果,他社と区別可能な態様をしている。
さらに,底面裏の模様と突起も,他社と異なる独特のものである。
したがって,平面側から見ても,底面側から見ても,バケツ本体の形状及び大きさから,原告商品2の特徴を把握し自他商品を識別することが可能である。
ウ 原告商品3の識別性原告商品3には,ロープハンドルと金属ハンドルの2種類のハンドルが取り付けられている。原告商品3を発売した平成3年時点で,2種類の把手が取り付けられた左官用バケツは他に存在しなかったため,この点において原告商品3は他の左官用バケツと識別される。
(2) 原告各商品の形態は,以下のとおり特別顕著なものであるから,商品等表示性を有しており,被告が証拠で提出する類似のバケツの形態を考慮しても,この点は左右されない。
ア 原告商品1の形態の特別顕著性- 5 -原告商品1の形態の最大の特徴は,高さ方向の長さが極端に短い流し口部分の形状である。原告商品1の流し口の高さ方向の長さは,約6cmである。
一方,被告が原告各商品の類似品であると主張する乙1(被告代理人平成25年12月16日作成の写真撮影報告書)@記載の田中文金属株式会社取扱いの「U.S.BUCKET」(以下「乙1@バケツ」という。)の流し口の高さ方向の長さが約17cm,乙1A記載のASAKA INDUSTRIAL CO.LTD.製の「PAL−KET」(以下「乙1Aバケツ」という。)が約17cm,乙1B記載のリス興業株式会社製の「RABA−KET」 (以下「乙1Bバケツ」という。)が約11cmであり,甲16の比較写真から見て明らかなとおり,乙1Bバケツが原告商品1の2倍以上,乙1@バケツ及び乙1Aバケツに至っては3倍近い長さを有していて,流し口部分が形成する三角錐状の空間の形状が異なる。
このように,原告商品1の高さ方向の長さが極端に短い流し口部分の形状は,従前から他社の商品にも見られた特徴ではなく,原告商品1が遅くとも周知性を獲得した平成19年どころか,現在に至るまで左官用バケツ業界において原告商品1及び被告商品1以外の商品では採用されていない形状であって,当該商品形態は他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴ということができる。
なお,被告は,原告商品1の類似商品として,乙2(被告代理人平成25年12月16日作成のインターネット画像検索結果報告書)の「原告商品1類似品」@記載の田中文金属株式会社製の「フレックスバケツ」(以下「乙2−1−@バケツ」という。)を掲げるが,これは上記乙@バケツが沖縄県限定で商品名を付したものであり,形態としては実質的に同一である。
- 6 -イ 原告商品2の形態の特別顕著性原告商品2の形態の最大の特徴は, ハンドルホルダーが上面開口部と段差なく設けられていること,及び, そのハンドルホルダーの上面外側にR状の面取が施されていることである。被告が原告商品2に類似する商品であると主張する乙1C記載の大和技研工業株式会社製の「強靱バケツEX」(以下「乙1Cバケツ」という。),乙1D記載の三甲株式会社製の「サンバケツ」(以下「乙1Dバケツ」という。),乙2の「原告商品2類似品」B記載のリス興業株式会社製の「プラスターバケツ」(以下「乙2−2−Bバケツ」という。)は,上面開口部との間に段差が設けられ,ハンドルホルダーの上面外側に面取が施されていないか,平面状の面取が施されている。このため,原告商品2は,全体として丸みを帯びた柔らかい印象需要者に与えるのに対し,乙1Cバケツ,乙1Dバケツは,いずれも全体として角張った硬い印象需要者に与えるので,上記 及び は,原告商品2の特別顕著な特徴であるといえる。
このように,原告商品2の ハンドルホルダーが上面開口部と段差なく設けられていること,及び, そのハンドルホルダーの上面外側にR状の面取が施されていることは,従前から他社の商品にもみられた特徴ではなく,原告商品2が遅くとも周知性を獲得した平成19年度頃から現在に至るまで左官用バケツ業界において原告商品2及び被告商品2以外の商品では採用されていない形状であって,当該商品形態は他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴ということができる。
ウ 原告商品3の形態の特別顕著性原告商品3の形態の最大の特徴は,金属ハンドル及びロープハンドルの両方が取り付けられている点である。金属ハンドルとロープハンドルは,ともに左官用バケツを運ぶ際に把持する部分であり,その役割に- 7 -おいて本来的にはどちらか一方で足りるものである。それゆえに,バケツ本来の使用に直結しない金属ハンドルとロープハンドルの両方を有する左官用バケツは,原告商品3以外では被告商品3のほか存しない。
被告は,原告商品3の類似商品として ,乙2の「原告商品3類似品」@記載の大和技研工業株式会社製の「緑長強靭バケツミニ5型」(以下「乙2−3−@バケツ」という。)を挙げるが,その大きさは原告商品3と比較して明らかに小さ 左官業に用いる大量のモルタルの運搬には不向きであって,そもそも金属ハンドルではなくプラスチックハンドルを用いている点でも重いモルタルを入れての運搬に耐えられるか疑問であることから,左官用バケツのカテゴリーに含めることは妥当でないし,類似商品ともいえない。
このように,原告商品3の金属ハンドル及びロープハンドルの両方が取り付けられている点は,従前から他社の商品にも見られた特徴ではなく,原告商品3が遅くとも周知性を獲得した平成19年どころか,現在に至るまで左官用バケツ業界において原告商品3及び被告商品3以外の商品では採用されていない形状であって,当該商品形態は他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴ということができる。
(3) 被告のその他の主張に対する反論原告各商品及び被告各商品は,左官用バケツという商品に属する。そして,バケツの形状はその用途によって相当程度限定されるのであり,その商品形態において独自性を発揮できる部分は少ない。逆に言えば,原告商品1及び原告商品3のように商品の1か所にでも特異な形態的特徴を有する場合,その特徴は当該商品を他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴として,消費者に認知されやすいということができる。
また,原告各商品における需要者は,左官用バケツの販売業者や購入者である左官職人である。本件における特別顕著性の該当性判断は,左官用- 8 -バケツの販売業者や購入者である需要者を基準にすべきであり,左官用バケツの販売業者や購入者が通常接することがない実用新案の公報などに掲載されたに過ぎない商品形態は,特別顕著性の判断要素として考慮されるべきでない。被告の主張は,そうした実用新案公報に基づくものであるから,理由がない。
〔被告の主張〕(1) 原告各商品の形態は,以下のとおり商品等表示にあたらない。
ア 識別性がないこと商品の形態自体が識別性を有しているというには,その形態が極めて特殊かつ独自のものであるか否か,その形態が特定の商品形態として長年継続的かつ独占的に使用されてきたか否か,形態自体が強力に宣伝されてきたか否かなどの諸要素を総合判断して決すべきであるところ,原告各商品は以下のとおり一般的な形態にすぎず,長年継続的かつ独占的に使用されてきたものでもなく,また形態自体が強力に宣伝されてきたものではないため,商品等表示にあたらない。
類似商品が多数存在すること原告は,原告各商品が特徴的な形態である旨主張するが,以下のとおり,原告各商品と構造が類似した商品は多数存在し,原告各商品はバケツとして一般的な形状を有するにすぎず,特殊かつ独自性のある形状ではなく,識別性を有しない。
(ア) 乙1@バケツ,乙1Aバケツ,乙1Bバケツは,いずれも寸胴に近い形状であり,嘴状の流し口がある。また,金属ハンドルが付いており,ハンドルを保持するハンドルホルダーが両側に設けられている。以上の特徴は,原告商品1と類似するものである。
なお,乙2−2−Bバケツのほか,乙2の「原告商品2類似品」@記載の藤原産業株式会社製の「強靱バケツ」(以下「乙2−2−@バケツ」- 9 -という。),乙2の「原告商品2類似品」A記載の製造会社不明の「プラバケツEX13型」(以下「乙2−2−Aバケツ」という。)はいずれも,本体が寸胴に近い形状で,流し口(嘴状),金属ハンドル及びハンドルホルダーが設けられており,原告商品1と類似している。
(イ) 乙1Cバケツ,乙1Dバケツは,バケツ本体が寸胴に近い形状をしており,フランジ部分があり,ロープにゴム製の持ち手が巻きつけられているロープハンドルが付いており,ハンドルを保持するためのハンドルホルダーが両側に設けられている。以上の特徴は,原告商品2と類似するものである。
乙2−2−@ないしBバケツは,いずれも,本体が寸胴に近い形状で,ハンドルホルダーが設けられているし,ロープハンドルの持ち手部分にはゴムが巻きつけられており,原告商品2と類似する。
(ウ) 原告商品3については,乙2−3−@バケツでは,ロープハンドルに加えて別のハンドルが付いていることから,二種類の把手が付いていることは原告商品3に特徴的な形状ではないということができる。
ウ 原告各商品は,特定の商品形態として長年継続的かつ独占的に使用されていないこと原告が原告各商品(商品名EVAバケツ)の販売実績であるとするEVAバケツ販売実績数一覧表(甲4)を見ると,年度別小計数量の記載がある平成6年以降,平成6年の48,750個を皮切りに売上げ個数は減少をたどる一方であり,被告が被告各商品の販売を開始した平成19年頃には,既に20,517個まで大きく減少している。
このように,原告各商品の売上げが大きく減少しているということは,他社の同種のバケツが多く販売されているためであり,原告各商品の商品形態が継続的かつ独占的に使用されているとはいえない。
エ 形態が宣伝されていないこと- 10 -原告の商品宣伝用パンフレット(甲11,12)において,原告各商品について,「『プラスチックゴム・・・EVA』の特長」として,「1.使用の感触がよい,2.材料の清掃が簡単,3.耐摩耗性にすぐれている,4.耐寒性にすぐれている,5.耐衝撃性にすぐれている」と記載されており,プラスチックゴムの性質を銘打ってはいるものの,原告各商品の形態について特徴を強調し宣伝している記載は見られない。
そこからしても,原告自体が,原告各商品の形態が独自性を有するものと捉えていなかったことが明らかである。
(2) 原告の主張する形態の特徴は,機能的必然性からくるものである。
バケツ本体の寸胴な形状,嘴状の流し口,ハンドル,ハンドルホルダー等の原告が主張する原告各商品の構造は,重量に耐えうる強度及び構造,内容物の流し易さ,持ち運び易さなどバケツに要求される機能及び効用を達するために必要不可欠な形態である。原告各商品の形態は,左官用バケツとしての機能及び効用を達するために必然的なものであるから,商品等表示には当たらない。
(3) 原告各商品の形態には,以下のとおり,他の同種商品と識別できる独特な形態的特徴である特別顕著性も有していない。
ア 実願昭60−186406号(実開昭62−93945号)のマイクロフィルム(考案の名称「注ぎ口のついたバケツ容器」,考案者及び出願人 相次郎,公開日 昭和62年6月16日。乙8。以下「乙8マイクロフィルム」という。)で考案されている「注ぎ口のついたバケツ容器」は,図面の第1図ないし第4図のとおり,流し口の高さ方向の長さが極めて短い形状の注ぎ口がついている。また,登録実用新案公報(実用新案登録第3065265号。考案の名称「バケツ」,考案者及び出願人鈴木宏,出願日 平成11年6月28日,登録日 平成11年10月20日,発行日 平成12年2月2日。乙9。以下「乙9公報」という。)で- 11 -考案されているバケツも,図2にあるとおり,流し口部分の高さ方向の長さが極めて短い形状の嘴状の注ぎ口がついている。このように,流し口部分の高さ方向の長さが短い形状の嘴状の注ぎ口がついているという形態は,原告が周知性を獲得したという平成19年以前から存在していた。
したがって,原告商品1には形態の特別顕著性がないことは明らかである。
原告は,左官用バケツはその商品形態において独自性を発揮できる部分が少なく,1か所でも特異な形態的特徴を有する場合,同種商品と識別し得る独特の形態的特徴として消費者に認知されやすいと主張する。
しかし,あらゆるバケツの中で左官用バケツが独立した商品分野であるかは定かではない。また,仮に左官用バケツという商品分野があるにしても,乙9公報3頁には,当該バケツにモルタル等を入れることも想定されているから,当然,左官用バケツもその範疇に含むものである。つまり,仮に左官用バケツに限定しても,原告商品1と同じ形状の流し口を有するバケツが存在するのであるから,原告商品1の流し口の形状をもって同種商品と識別し得る独特の形態的特徴があるとはいい難い。
イ 原告は,原告商品2は, ハンドルホルダーが上面開口部と段差なく設けられていること,及び ハンドルホルダーの上面外側にR状の面取が施されていることから,特別顕著性があると主張する。
しかし,ハンドルホルダーはバケツ本体との比較において占める割合は極めて小さく,主要部分でもないうえ,ハンドルホルダーを上面開口部と段差なく設けるか否か,上面外側にR状の面取をするか否かは微細な差異にすぎず,それをもってバケツの機能や使用感が変わるものではない。また,ハンドルホルダーがバケツ本体に占める割合は極めて小さく,その差異も非常に微細であることから,ハンドルホルダーの形状の微細な差異を- 12 -もって,バケツ全体としての印象に違いが生じることもない。
したがって,原告商品2のハンドルホルダーの形状は独自性もなく,特別顕著な特徴といえるものでもなく,原告商品2の形態に特別顕著性がないことは明らかである。
ウ 原告商品3の特徴はロープハンドルと金属ハンドルの2種類のハンドルが取り付けられていることのみにあり,特別顕著性を備えないことは上記(1)のとおりである。
2 争点(2)(原告各商品の形態周知性)について〔原告の主張〕(1) 原告による原告各商品の宣伝広告原告は,原告各商品の販売を始めた平成3年頃から,毎年1回,日本全国の1千を超える左官用バケツ取扱業者に対して,原告各商品が掲載されているパンフレットを送付している。
左官用バケツが一般バケツとは異なる市場を形成しており,その市場規模が極めて小さいことに鑑みれば,20年以上にもわたって継続的に1千を超える左官用バケツ取扱業者にパンフレットを送付することによって得られた原告各商品の業界での知名度は大きく,周知性が認められることは明らかである。
証明書(甲8の1ないし3)には,原告各商品は周知である旨が記載されている。このような記載は,原告による上記宣伝広告によって原告各商品が周知となったことの証左である。
(2) 周知性の獲得時期原告各商品は上記のとおり特徴的な形状を有しているところ,原告は,その販売を開始した平成3年当初から,1千を超える左官業者,左官道具販売業者等にダイレクトメールを送付しており,また,被告各商品が販売される平成19年までには累計で46万個以上が市場に出回っている。
- 13 -したがって,原告各商品は,被告各商品が販売される平成19年までには既に周知となっていたというべきである。
〔被告の主張〕原告各商品の形態には,以下のとおり周知性はない。
(1) 市場の不存在原告は,原告各商品につき左官用バケツであると主張するが,原告各商品はそれ以外の用途でも使用できるものであるから,左官用バケツが独自の市場を形成しているとはいえない。また,原告は,嘴状の流し口のある原告商品1がノロ用,原告商品2及び3がモルタル用として別の市場を形成しているとも主張するが,原告パンフレットには3種類のバケツをまとめて「左官・土木・モルタル用」と記載されているだけで,各バケツの用途は示されていないことからも,ノロ用とモルタル用でそれぞれ別の市場を形成しているとは到底考えられない。
左官用バケツという市場やさらに用途によって細分化された市場があるのであれば,当該市場規模について明らかにすべきであるが,これに関する証拠は提出されていない。
(2) 原告各商品売上げ個数の減少原告は,原告各商品につき,平成3年頃から毎年1回,全国の左官用バケツを扱う業者へのパンフレット送付による宣伝を始め,20年以上にわたって継続的に1千を超える左官用バケツ取扱業者にパンフレットを送付していたと主張する。
しかし,「DM送付先」とある甲13の表は,原告が宣伝を始めたとする平成3年頃から現在までの累計なのか,ある年度における送付先なのかが不明である。また,甲13の表は,直送先名や住所の一部が黒塗りにされているだけでなく,原告は,フレキシブルコンテナバッグの製造・輸入販売,各種産業資材・建設資材の輸入販売,各種縫製製品の委託加工業務等を業とす- 14 -るとしていることからすれば,原告の事業は多岐にわたっているものであるから,「DM送付先」(甲13)が全て左官用バケツ取扱業者に対するものかも不明であるし,具体性にも乏しい。さらに,一例を挙げると,甲13の41番から44番は,住所が全て「千葉県船橋市<以下略>」とあり,送付先を重複して列挙している疑いすらある。同様に,送付先住所の地名が同じであり(地番は黒塗りのため不明である。)重複の疑いのある箇所が多数あり,原告のダイレクトメールの送付先が,左官用バケツ取扱業者のみで1千以上あるのか疑問である。
また,前記のとおり,EVAバケツ販売実績数一覧表(甲4)を見る限り,年度別小計数量の記載がある平成6年以降,平成6年の4万8750個を皮切りに売上げ個数は減少をたどる一方であり,原告が平成6年以降もパンフレットを送付し宣伝を続けていたかは明らかではないところ,仮に原告が宣伝を続けていたとしても,原告各商品の売上げ個数が減少していることに鑑みると,原告各商品と類似・代替する商品が多数,流通していたというべきである。したがって,原告各商品の形態周知性はない。
また,周知性は,口頭弁論終結時においても必要とされるところ,原告各商品の年度別小計数量は,平成25年度(おそらく6月分まで)は3780個であり,平成25年は年度途中であるとしても,1年間の総売上げ個数と考えられる平成24年度であっても,売上げ小計数量は,わずか7650個にすぎない。
原告各商品は,元々周知性を有する商品ではなかったが,現在においても周知性を有するほど独占的地位を占めていないことから,周知性はないというべきである。
原告は,証明書(甲8の1ないし3)は,原告各商品が宣伝広告によって周知であったことの証左であると主張するが,証明書(甲8の1ないし3)には,原告が宣伝広告をしていた旨の記載はなく,実際に原告が強力に宣伝- 15 -広告を行っていたのか,また,宣伝広告との因果関係についても全く不明である。
3 争点(3)(原告各商品と被告各商品の誤認混同のおそれ)について〔原告の主張〕(1) 被告は,原告各商品と被告各商品とではラベルが異なっているため,一見して別物であることが分かり,誤認混同のおそれはないと主張する。
しかし,左官用バケツの商品識別において重視されるのはバケツ本体の形状や容量,流し口の形状,把手部分の持ちやすさなどであり,これらの要素はバケツを正面から見るのではなく,上から見下ろすことによって把握される。このような事情を考慮して,多くの左官用バケツ取扱店では,左官用バケツを需要者の目線の位置の棚に置いたり,目線の位置まで積み上げたりはせずに,需要者が真上から見て当該左官用バケツを把握しやすいように,地面に直接置く,棚の下の方に配置するなどしている。
このように,左官用バケツの需要者は商品識別の際に当該商品を上から見下ろすが,この場合,ラベル部分は目につきにくい。すなわち,原告各商品及び被告各商品にはいずれもフランジ部分が存在しており,また原告各商品及び被告各商品のラベルはいずれも商品側面上方に配置されているため,当該左官用バケツを上から見下ろした場合,ラベル部分はフランジの影に隠れて見えなくなる。
(2) さらに,原告各商品,被告各商品ともに,ラベルは商品の側面の一部分に貼られているのみであり,例えば反対側側面から見た場合には,ラベルが貼られていることを認識することもできない。
(3) 以上のように,原告各商品,被告各商品に貼られたラベルは商品識別において目につくことも少なく,商品識別における重要性は低い。原告各商品と被告各商品ではラベルが異なっているからといって,誤認混同が生じないということはできない。
- 16 -〔被告の主張〕(1) 被告各商品におけるラベルの貼付により,被告各商品は原告各商品と誤認混同するおそれはない。
この点に関して原告は,左官用バケツの商品識別において,上から見下ろすことで把握されるため,左官用バケツ取扱店では,左官用バケツを目線の位置の棚に置いたりせず,地面に直接置く,又は棚の下の方に配置するなどしているため,バケツのフランジ部分にラベルが隠れて見えないと主張する。
しかし,購入者の心理として,商品を上から見下ろして一見しただけで購入するとは考えにくい。むしろ,原告の主張するように,バケツの形状や把手部分の持ちやすさがそこまで重要なのであれば,購入者は,商品を手にとって入念に調べたうえで購入する。そうであれば,ラベルは当然に購入者の目に入るはずである。
(2) また,原告は,ラベルは商品の側面の一部分に貼られているのみであり,反対側側面から見た場合にラベルを認識できないとも主張するが,販売店において商品を陳列する際には,ラベルが見えるように配置されるのが通常であるから,ラベルの存在は購入者の目に入るはずである。
実際にも,商品陳列の様子を写した写真(乙3)のとおり,左官用バケツを商品棚の最上段に置き,ラベルが購入者から見える向きで陳列している店があり,原告の主張が一般的に妥当するものかは疑問である。
(3) 原告の主張する誤認混同のおそれは,抽象的なものにすぎず,ラベルの貼付により誤認混同のおそれはない。
4 争点(4)(被告各商品は真正商品の並行輸入として違法性がないか〔予備的抗弁〕)について〔被告の主張〕被告は,仮に,被告各商品の輸入販売が不競法2条1項1号に該当するとしても,真正商品の並行輸入として違法性を欠くことを予備的に主張する。
- 17 -すなわち,原告は,かつて,原告各商品のバケツの金型を中国の興達浪管有限公司(以下「興達浪管」という。)に対して貸与するなどして,同社に対し原告各商品の製造を正式に委託し,それを輸入して販売していたとするところ,被告は,その興達浪管から,原告との契約関係等を全く知らずに,善意で被告各商品を輸入販売しているものであるから,仮に原告各商品が形態において周知性のある商品として認められたとしても,被告の行為については違法性が阻却されるべきである。以下,詳述する。
まず,裁判例によれば,国内における周知商品等表示と同一の商品等表示を付した商品が海外から輸入され,国内で販売等される場合,@当該商品が商品等表示を適法に付されたうえで拡布されたものであって,A国内の周知商品等表示の主体が海外で周知商品等表示と同一の商品等表示を適法に付して拡布した者と同一人又は同一人と同視されるような特殊な関係がある場合には,当該商品は真正商品ということができ,両商品等表示が表示し又は保証する商品の出所,品質は同一ということができ,出所識別機能及び品質保証機能を何ら害するものではないから,不正競争行為としての違法性を欠くものであるが,B国内の周知商品等表示の主体が自らの商品に独自の改良を施したり固有の付加価値を加えるなどし,その周知商品等表示と海外で適法に付された商品等表示の出所・品質が異なるものと認められるときには,真正商品の並行輸入として許容されない,と考えることができる。
これを本件についてみると,本件で問題となるのは表示ではなく,形態であるところ,@について,当該商品は商品等表示というべき形態を適法に付されたうえで拡布されたものである。すなわち,原告は,興達浪管といかなる契約関係にあったかを主張立証しようとしないから,現状少なくとも興達浪管の製造行為が違法とされる根拠はない。また,仮に違法だとしても,被告は,その違法性を全く知らずに輸入販売しているものである。
Aについては,国内の周知商品形態の主体(原告)が海外で周知商品等表示- 18 -と同一の商品等表示形態を適法に付して拡布した者(興達浪管)と同一人又は同一人と同視されるような特殊な関係がある。興達浪管は,自らが保持する金型によって本件各商品を生産して原告に提供し,原告は,興達浪管から全ての商品を仕入れて国内販売していたのであり,原告と興達浪管は互いに補完もしくは従属する関係にあるものといえ,経済的または法律的にも,両者は同一と見ることができる。
そしてBについては,国内の周知商品等表示の主体(原告)が自らの商品に独自の改良を施したり,又は固有の付加価値を加えるなどしたことによって,その周知商品等表示形態と海外で適法に付された商品等表示形態の出所・品質が異なるものと認められるときには,真正商品の並行輸入として許容されないが,本件において原告は形態についてそのような加工は全くしておらず,完全に同一形態のバケツを販売している。
そして,被告各商品は興達浪管で適法に製造されたものであり,出所源は同じであること,かつ,原告各商品と被告各商品において品質には何ら差異がないことから,原告各商品と被告各商品が表示し又は保証する商品の出所,品質は同一というべきであり,出所識別機能及び品質保証機能を何ら害することはなく,被告各商品は正しく真正商品である。
したがって,被告の行為は,真正商品の並行輸入と同一であるため,違法性がなく,原告の請求は棄却されるべきである。
〔原告の主張〕(1) 被告各商品は以下のとおり真正商品ではない。
そもそも興達浪管は,原告各商品の商品等表示を適法に付していない。
被告も主張するとおり,本件における商品等表示商品の形態そのものであるが,原告は興達浪管に対して原告各商品を製造させるために原告の所有する金型を貸与したのであって,原告が所有する金型を第三者のために消耗させる理由はなく,当然,興達浪管が第三者に対して商品を製造することを- 19 -許諾していない。
したがって,原告各商品の商品等表示を適法に付したとはいえない。
(2) 原告と興達浪管は同一人と同視されるような特殊な関係にはない。
興達浪管は原告の商品を専門に製造する工場ではなく興達浪管と原告の間に資本関係もない。単に原告が興達浪管に金型を貸与して原告各商品を製造させていたというだけで,原告と興達浪管に同一人と同視されるような特殊な関係が認められることはない。
(3) 原告商品1及び3と被告商品1及び3では品質が異なる。
原告商品1及び3では金属ハンドル部分にステンレスを用いているが,被告商品1及び3はクロムメッキを施しているのみであり,原告商品1及び3に比べて使用によって錆が出る可能性が高い。このように,原告商品1及び3と被告商品1及び3ではその品質が異なり,真正品の並行輸入として許容されない。
(4) 以上のとおり,被告各商品は真正商品には該当せず,被告が被告各商品を輸入販売する行為は,不競法2条1項1号に違反する。
5 争点(5)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕(1) 被告各商品1個当たりの利益額被告商品1の販売価格は500円程度,被告商品2の販売価格は550円程度,被告商品3の販売価格は950円程度であり,その利益率はいずれも30%を下らない。
したがって,被告各商品1個当たりの利益額は,@ 被告商品1 500円×30%=150円A 被告商品2 550円×30%=165円B 被告商品3 950円×30%=285円である。
- 20 -(2) 被告各商品の販売量原告は,原告商品1を年間約1000個,原告商品2を年間約7000個,原告商品3を年間約1500個販売していた。被告各商品は原告各商品よりも安価であり,少なく見積もっても原告各商品の1.5倍程度は販売されていたものと考えられる。
したがって,被告各商品の販売量は,@ 被告商品1 年間1500個A 被告商品2 年間10500個B 被告商品3 年間2250個と推定できる。
(3) 原告の損害額以上により,不競法5条2項によれば,本件訴訟提起前3年間の損害額は,@ 被告商品1 150円×1500個×3年間=67万5000円A 被告商品2 165円×10500個×3年間=519万7500円B 被告商品3 285円×2250個×3年間=192万3750円となり,その合計額は,67万5000円+519万7500円+192万3750円=779万6250円である。
〔被告の主張〕否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断1 争点(1)(原告各商品の形態商品等表示性)について原告は,原告各商品の形態商品等表示に該当すると主張するので,以下この点について判断する。
商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有- 21 -するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。そして,このように商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し,不競法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当するためには,@商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,Aその形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により(周知性),需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていることを要すると解するのが相当である。以下,この観点から検討する。
(1) 証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 乙1@バケツの形態は以下のとおりである。
イ 乙1Aバケツの形態は以下のとおりである。
- 22 -ウ 乙1Bバケツの形態は以下のとおりである。
- 23 -エ 乙1Cバケツの形態は以下のとおりである。
オ 乙1Dバケツの形態は以下のとおりである。
- 24 -カ 乙2−1−@バケツの形態は以下のとおりである。
キ 乙2−2−@バケツの形態は以下のとおりである。
- 25 -ク 乙2−2−Aバケツの形態は以下のとおりである。
ケ 乙2−2−Bバケツの形態は以下のとおりである。
- 26 -コ 乙2−3−@バケツの形態は以下のとおりである。
サ 乙8マイクロフィルムの記載は以下のとおりである。
- 27 -(ア) 明細書の考案の詳細な説明・「この考案は上部に注ぎ口をつけたバケツ容器に関するものである。」(2頁11行〜12行)・「本案は以上のような構造であるから,とって(2)をもち,液体を移す場合,注ぎ口(3)又は(4)から,従来より狭い範囲で液体がながれでるためにより確実に移せる。」(3頁4行〜7行)(イ) 図面・ 第1図・ 第2図・ 第3図・ 第4図- 28 -シ 乙9公報の記載は以下のとおりである。
(ア) 考案の詳細な説明・「【考案が解決しようとする課題】ところが,バケツ本体の底面が平面に形成されていると,次のような問題がある。
(1) 底面の外周に側面との間で角部が生ずるため,モルタル等の液状体を撹拌するとき,該角部で撹拌されない部分が発生する。」(段落【0003】)・「(2) 底面の外周に側面との間で角部が生ずるため,バケツに容入したものを『すくいとる』とき,該角部が完全にすくいとることができず残りが発生する。例えば,モルタルを入れて塗装する場合,みそ汁,スープ等を入れて給食の配膳をする場合,等に残りが生ずることは好ましくない。」(段落【0004】)・「また,従来のバケツは取手がないと持って移動することが不便であるが,バケツ本体を持って移動したいことが多々ある。
本考案は,この点に鑑み取手があっても,また,たとえ取手がなくてもバケツ本体を持って容易に移動可能なバケツを提供することを第2の目的とする。」(段落【0007】)・「さらに,バケツ本体1の開口4の周縁は,外側に比較的大きく折り返されて断面逆U字状又は逆V字状の手掛け部5に形成されている。この手掛け部5は,手が掛けやすくなっており,ここを持って- 29 -バケツの持ち上げ,移動ができるようになっている。」(段落【0016】)(イ) 図面・ 図1・ 図2・ 図3- 30 -ス 上記アないしコのバケツについては,遅くとも平成25年12月16日までには販売されているところ,リス興業株式会社は,「ウルトラバケツ」との商品名の左官用バケツを昭和48年から販売し,乙1Bバケツを平成13年頃から,乙2−2−Bバケツを平成19年頃から販売している。〔乙5の1,2〕また,三甲株式会社は,乙1Dバケツを,平成11年11月頃から販売している。〔乙6〕(2) 上記認定事実を基に判断する。
ア 原告は,原告各商品の形態につき平成19年には周知性を獲得したと主張し,原告商品1については高さ方向の長さが極端に短い流し口の形状であること,原告商品2については,@ハンドルホルダーが上面開口部と段差なく設けられていること,Aそのハンドルホルダーの上面外側にR状の面取が施されていること,原告商品3については,金属ハンドル及びロープハンドルの両方が取り付けられていることに,それぞれその形態の特別顕著性があるとするので,以下検討する。
(ア) 原告商品1について原告は,原告商品1の特別顕著性は高さ方向の長さが極端に短い流し口の形状にあると主張する。
- 31 -しかし,左官用バケツにおいて嘴状の流し口形状を有するという形態は乙1@ないしBバケツ及び乙2−1−@バケツなどにもみられる形態であり,特に平成13年頃に既に販売されていた乙1Bバケツの嘴状の流し口は,高さ方向の長さも比較的短く,原告商品1と乙1Bバケツの流し口の長さの差異自体にそれほどの特徴があるものとは到底認められないし,バケツ一般についてみれば,原告商品1のような高さ方向の長さが極端に短い流し口の形状は乙8マイクロフィルム及び乙9公報記載のバケツにもみられる特徴にすぎないから,原告商品1の流し口の形状が特別顕著な形態であると認めることはできないというべきである。
(イ) 原告商品2について原告は,原告商品2の特別顕著性は,@ハンドルホルダーが上面開口部と段差なく設けられていること,Aそのハンドルホルダーの上面外側にR状の面取が施されていることにあると主張する。
しかし,平成11年11月頃に既に販売されていた乙1Dバケツのほか,乙1Cバケツには,上面開口部と多少の段差があり,上面外側にR状の面取はないものの,その位置関係及び大きさにおいて原告商品2のハンドルホルダーと同様の形状の取手(ハンドルホルダー)が設けられているところ,それとの対比において,原告商品2におけるハンドルホルダーが上面開口部と段差なく設けられ,その上面外側にR状の面取が施されているとの点が格別の特徴を有するものと認めることはできない。
したがって,原告商品2が左官用バケツとして特別顕著な形態であるとはいえない。
(ウ) 原告商品3について原告は,原告商品3の特別顕著性は,バケツに金属ハンドル及びロープハンドルの両方が取り付けられていることにあると主張する。
しかし,金属ハンドルないしロープハンドルの一方を取り付けたバケ- 32 -ツは平成19年以前から販売されていたところ,バケツの用途及び使い勝手に応じて,金属ハンドル及びロープハンドルの両方を取り付けることは容易に想定されるものというべきであり,したがって,この両方を取り付けることにより形態としての特別顕著な特徴が生じるものとは認められないというべきであって,販売開始時期は不明であるもののロープハンドルとプラスチックハンドルの両方が取り付けられている乙2−3−@バケツが遅くとも平成25年12月には販売されていること等からしても,原告主張の原告商品3の形態が特別顕著なものであるということはできないと認めるのが相当である。
(エ) また,証拠(甲9の1,11,12)によれば,原告は,原告各商品の宣伝に用い,また卸売業者に対し送付していたと主張するパンフレット等において,原告各商品である「EVAバケツの特長」として,@使用の感触ないし使用感がよいこと,A材料の清掃が簡単であること,B耐摩耗性にすぐれていること,C耐寒性にすぐれていること,D耐衝撃性にすぐれていることは宣伝するものの,原告が原告各商品の形態特別顕著性として主張する部分について何ら言及していないことが認められるから,原告各商品について原告の主張する部分が特別顕著な形態であるといえないことはこの点からも明らかというべきである。
イ このほか,原告は,原告各商品について,バケツの大きさや寸胴状の形状,底面裏の模様と突起の点についても形態的特徴を有すると主張する。
しかし,原告各商品におけるバケツの大きさや寸胴状の形状については,乙1Bバケツ,乙1Dバケツその他前記(1)の各バケツにもみられるごくありふれた形状であるか,あるいは同種の商品が有する形状であると認められ,また,底面裏の模様と突起についても,格別の形状的特徴とは認めることはできないし,そもそも,それらはバケツの底面の形状にすぎないから,取引者及び需要者がバケツの形状の特徴として着目するものとも言い- 33 -難いから,いずれも原告各商品の特徴的な形態ということはできないというべきである。
ウ 以上によれば,原告各商品の形態は,商品等表示に当たるものとはいえない。
(3) 原告の主張に対する判断ア 原告は,原告各商品,被告各商品は左官用バケツという商品に属するところ,バケツの形状は用途によって相当程度限定され,商品形態において独自性を発揮できる部分は少ないから,商品の1か所にでも特異な形態的特徴を有する場合,その特徴は当該商品を他の同種商品と識別し得る独特の形態的特徴として,消費者に認知されやすい旨主張する。
しかし,原告各商品の形態につき,原告が特別顕著性ないし識別性を有すると主張する部分については,そもそもいずれも特別顕著性ないし識別性を有しないものであることについては,上記(2)で検討したとおりであるから,原告の上記主張はそもそもその前提を欠き採用することができない。
イ また,原告は,原告各商品における需要者は,左官用バケツの販売業者や購入者である左官職人であり,特別顕著性の該当性判断は,左官用バケツの販売業者や購入者である需要者を基準にすべきであるところ,これらの者が通常接することがない実用新案の公報などに掲載されたに過ぎない商品形態は,特別顕著性の判断要素として考慮されるべきではない旨主張する。
しかし,これら公報類についても,これら出願当時の同種製品の形状等を示すものとして考慮に入れること自体は何ら差し支えないというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ さらに,原告は,原告各商品の形態が特徴的なものである旨の主張に沿う証拠として,卸売業者の証明書(甲8の1ないし3)を提出する。
- 34 -しかし,上記各証明書は,いずれも不動文字で記載された同内容の書面に,各業者の関係者が記名ないし署名し押印したのみのものであり,卸売業者の一般的な認識を示すものとはいい難いほか,肩書に「専務」とするものがあるほかは,どのような者が記名ないし署名したのか すら不明であって,証明力には乏しいものといわざるを得ない。
そうすると,これらの証拠を考慮しても,原告各商品の形態についての原告の上記主張を採用することはできないというべきである。
2 結論以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官東 海 林 保裁判官今 井 弘 晃裁判官足 立 拓 人- 35 -別紙省略- 36 -
事実及び理由
全容
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