関連ワード | 需要者 / 印象 / 差止請求(差止) / 逸失利益 / 無形損害 / 代理人 / 営業誹謗行為(2条1項14号) / 競争関係 / 虚偽の事実 / 損害賠償 / 損害額 / 営業上の信用 / |
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事件 |
平成
14年
(ワ)
28643号
損害賠償請求事件
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原告 株式会社日本衛生センター 同訴訟代理人弁護士 村上愛三 同 三好高文 同 松倉正和 同訴訟復代理人弁護士 照井史生 被告 日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 同訴訟代理人弁護士 晝間光雄 同 小島好己 同 藤本幸弘 同 藤原道子 同 佐藤知紘 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2004/06/23 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告は,別紙1記載の書面を頒布してはならない。 2 被告は,原告に対し,金200万円及びこれに対する平成15年1月16日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを20分し,その19を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 主文第1項と同旨 2 被告は,原告に対し,金5000万円及びこれに対する平成15年1月16日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,日本経済新聞の全国版朝刊に,別紙2謝罪広告目録記載の謝罪広告を同目録記載の条件で1回掲載せよ。 |
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事案の概要
原告は,被告に対して,原告の製造,販売する耐震補強金具に関して虚偽の事実を記載した文書を配布した被告の行為が,不正競争防止法2条1項14号所定の虚偽事実の告知又は流布行為に該当すると主張して,同文書の頒布差止,損害賠償金の支払及び謝罪広告の掲載を求めた。 1 前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する。) (1) 原告は,一般家庭・アパート・飲食店の殺鼠,殺虫作業等を目的とする株式会社であり,耐震補強金具である「グレートホルダー」(1ないし6型)(以下「原告製品」という。)を製造・販売している(甲1,乙5)。 (2) 被告は,耐震診断の実施,耐震補強に関する啓蒙活動等を目的とする協同組合であり,全国で600を超える工務店やリフォーム会社で構成されている。平成11年3月の設立以来平成15年7月までの間に,約6.8万棟の耐震診断や約1.6万棟の耐震補強工事の実績がある(乙10,12,13)。 (3) 原告及び被告は,耐震補強に関する商品や役務の提供について,需要者又は取引者を共通にし,競争関係にある(甲1,乙5,12,13)。 (4) 被告は,平成14年9月2日ころから,別紙1の「重要なお知らせ」と題する書面(以下「本件文書」という。)を被告の組合員に対して送付した。本件文書は,悪質な耐震補強工事業者や耐震金具販売業者について,注意を喚起する目的で配布されたものであり(乙10),以下の記載がされている。 @ 本件文書の冒頭部分には,「・・・最近悪質な耐震事業者によるトラブルが全国で相次いでおり,耐震診断・補強事業の普及を阻むものとなっています。 当組合といたしましてはそのような事業者とは一線を画し,消費者にとって有益な,優先順位の高い補強技術の普及に努めることが大切なテーマとなっております。 しかし,残念なことに当組合員の中においても,ごく一部の組合員が製品の性能の裏付けのとれていない耐震補強部材 を消費者に供給するなどして,その補強工事内容が専門家の中において問題になっており,組合としてもその対応に非常に苦慮しているところでございます。いわゆる『家屋補強』とよばれるような,耐震補強では無い製品の供給について,当組合に診断を依頼された消費者に供給されないようお願い申し上げます。また,貴社におけるお客様であっても,その様な製品の供給はあまりお勧めできません。」との記載がある。 本件文書の〈問題となっている補強製品〉との小見出しの下に,二社の製品についてメーカー名及び製品名が掲記され,その一つとして「・株式会社日本衛生センター社製品『グレートホルダー』等一式」との記載がある。 本件文書の〈理由〉との小見出しの下に,「『告示1460号に基づく仕口及び継手の試験方法及び評価法』に基づいて性能評価されていない。」との記載がある。 (上記のうち,「(ごく一部の組合員が)製品の性能の裏付けのとれていない耐震補強部材(を消費者に供給する)」との記載部分(上記の下線を付した部分)を「本件記載部分@」という。)。 A 本件文書1頁の本文21行目から,「特にシロアリ消毒業界を中心に普及している『家屋補強』方法なのですが,耐震診断を実施せず,物販的に家屋補強金物が販売されている所に問題があります。消費者は家屋補強も耐震補強も同様の工事として捉えています。別紙新聞記事にもある通り(写真:グレートホルダー),その販売方法や補強内容が問題となっています。」との記載がある。そして,本件文書には,「訪問販売 耐震工事トラブル」に関する新聞記事が添付されているが,同新聞記事の写真の被写体である補強金具が丸で囲まれ,「グレートホルダー」との指示説明がある。(上記のうち,「別紙新聞記事にもある通り(写真:グレートホルダー)」との記載部分(上記の下線を付した部分)を「本件記載部分A」という。)。 2 争点 (1) 被告の配布した本件文書中の本件記載部分@には,虚偽の事実が含まれているか。 (2) 被告の配布した本件文書中の本件記載部分Aには,虚偽の事実が含まれているか。 (3) 原告の被った損害はいくらか。 3 争点についての当事者の主張 (1) 争点(1)(被告の配布した本件文書中の本件記載部分@には,虚偽の事実が含まれているか。)について (原告の主張) ア 原告は,原告製品について,複数の大学等の研究機関に依頼してその性能試験を行い,その性能に関する裏付けを得ていたから,本件記載部分@の記載内容は虚偽である。 イ 被告は,原告製品については,国土交通省告示第1460号(以下「本件告示」という。)に基づく仕口及び継手の試験法及び評価法に基づいて性能評価されていない点において,性能に関する裏付けが採れていないので,本件記載部分@は,真実である旨主張する。 しかし,同主張は,以下のとおり理由がない。すなわち,本件告示に基づく試験,評価方法は,新築建物の耐震補強部材を念頭において定められた基準である。これに対して,既存建物には,むしろ既存建物であるがゆえの問題が多く存するのであって,上記試験,評価方法のみでは性能を判断することはできない。既存建物に関する耐震補強の必要性の判定方法や具体的な耐震補強方法,補強された建物の耐震性能の評価方法などはいまだ公に策定されておらず,現在,検討されている段階である。確かに,本件告示に基づく試験法及び評価法は,耐震性判断に一般的に用いられているものであることは否定しないが,それが唯一絶対的な基準というわけではない。したがって,同基準による評価を経ていないからといって,直ちに製品の性能の裏付けが採れていないということにはならない。 以上のとおり,本件記載部分@は,新築建物を対象とする本件告示を既存建物の補強基準として絶対視し,本件告示に基づく性能評価がされていない原告製品について,重大な問題が存するかのように記述され,読む者をして重大な誤解を生ぜしめるものであるから,虚偽事実の記述に当たる。 (被告の反論) ア 原告製品は,本件告示に基づく仕口及び継手の試験法及び評価法に基づいて性能評価されていない。本件告示は,建築基準法に基づく,既存建物を含めたすべての建築物を対象とした告示である。本件告示に基づく評価法で性能評価されていない部材を使用することは,安全面で問題があり,建築確認を要しない既存建物に対しても同評価法は妥当するといえる。 イ 耐震補強工事については,壁量の充足,偏心率の改善,柱の引き抜け防止(柱と土台の接合部のホールダウン金物での補強)などが優先的に行われるべきであるのに,原告製品は,これらの工事や耐震診断を踏まえずに,補強金具による接合補強を優先させる点で,問題がある。 ウ 以上のとおり,原告製品は性能の裏付けが採れていないから,本件記載部分@は,虚偽事実の記述に当たらない。 (2) 争点(2)(被告の配布した本件文書中の本件記載部分Aには,虚偽の事実が含まれているか。)について (原告の主張) 本件記載部分Aは,本件文書に添付された新聞記事掲載写真に写されている金具が原告製品であることを示す記述であるが,同写真で原告製品と示されている金具は,原告製品ではない。すなわち,原告製品のうちのグレートホルダー2型は,金属製の板材をL型に折り曲げ,その両片部の中間部を内側に弧状に湾曲させた特徴を有する。これに対して,前記写真の被写体となった製品は,両片部の中間部を内側に折曲して平坦な折膨出部を形成した形状であるから,グレートホルダー2型ではない。 したがって,本件記載部分Aは虚偽である。 (被告の反論) ア 本件文書に添付された新聞記事掲載写真には,原告製品のうちのグレートホルダー2型及びグレートホルダー6型が写されているから,本件記載部分Aに,虚偽事実は含まれていない。 イ 本件文書の本件記載部分Aは,性能評価がされていない原告製品が耐震補強工事のノウハウのない業者によって,消費者に誤解を招くような態様で販売されているという事実を述べたのであり,原告が製造販売する製品のうちグレートホルダーという特定の製品のみに問題があることやグレートホルダーという特定の製品を説明したものではない。したがって,本件文書に添付された新聞記事に掲載された写真の被写体に関する被告の説明に誤りがあったとしても,本件文書の目的に照らすと,本件記載部分Aが虚偽であると評価することはできない。 (3) 争点(3)(原告の被った損害はいくらか。)について (原告の主張) ア 本件文書が配布されたことにより,原告の売上げが減少した。 本件文書が配布された平成14年9月当時被告組合員であった4社の取引先に対する平成14年度の売上高の推移は別紙3のとおりであり,本件文書が配布された時点を基準とした前後6か月間の売上高を比較すると,本件文書配布後は売上減少額が合計で4629万6000円に及んでいる。 これら4社以外にも取引額が減少した取引先があること,また,原告の特別の営業努力をもって従前の取引額を維持できた取引先もあること等を考慮すると,原告に生じた損害は5000万円を下らない。 イ また,仮に,アの損害が認められないとしても,本件文書が配布されたことにより,原告が性能の裏付けのない製品を販売したことにより悪徳業者として新聞報道されたかのような印象を与え,原告の営業上の信用を著しく低下させた。 信用毀損による無形損害は,5000万円を下ることはない。 (被告の反論) 原告の主張は否認する。 |
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争点に対する判断
1 争点(1)(被告の配布した本件文書中の本件記載部分@には,虚偽の事実が含まれているか。)について (1) まず,本件記載部分@の「製品の性能の裏付けのとれていない耐震補強部材」との記述について,これを読んだ者によりどのように理解されるかの点について判断する。 前記「前提となる事実等」のとおり,被告は耐震診断の実施,耐震補強に関する啓蒙活動等を目的とする協同組合であること,被告の組合員は工務店やリフォーム会社であり,木造住宅の建築等を業とする者であること,本件文書は,被告から被告の組合員に対して送付されたものであること,本件文書には本件記載部分@の前後に「耐震診断・補強事業の普及」,「<問題となっている製品>(中略)<理由>・『告示第1460号に基づく仕口及び継手の試験方法及び評価法』に基づいて性能評価されていない。」,「いわゆる『家屋補強』とよばれるような,耐震補強では無い製品」などの記載があること等の事実に照らすならば,本件文書を受け取った被告の組合員は,本件記載部分@を,「『告示第1460号に基づく仕口及び継手の試験方法及び評価法』若しくはこれに準じるような一般的な耐震性の試験方法及び評価方法に従って,当該木造住宅の耐震性能を相当な程度向上させるものとの評価がされてない補強部材」との意味を記述した文章の一部であると理解するものと認められる。 (2) そこで,原告製品が,「本件告示に基づく試験・評価法若しくはこれに準じる一般的な耐震性の試験・評価法に従って,相当な程度向上するものと評価された補強部材」であるか否かについて検討する。 ア 原告は,原告製品について,複数の大学等の研究機関等に依頼して性能試験を実施し,その耐震性能の裏付けを得ていた旨主張する。しかし,原告は,甲5(「耐震補強金物(グレートホルダー)を用いた木質構造の耐震性に関する研究開発」と題する書面)を提出した点を除いて,原告自らが,依頼したとする試験の内容,依頼先及びその性能試験の結果がどのようなものであったについて,何ら明らかにしないのみならず,訴訟提起後においても,原告製品に関して「告示第1460号に基づく仕口及び継手の試験方法及び評価法」若しくはこれに準じるような耐震性の試験方法及び評価方法に従った性能試験を実施することもない。 イ 原告の提出した甲5には,原告製品のうちのグレートホルダー3型を仕口部(柱・梁の接合部や柱・土台の接合部)に用いた際の効果について,引張試験,曲げせん断試験,壁試験によって実験した結果から,曲げに対して特に効果があり,壁に用いた場合には山形プレートと同様の効果があるとする記載がされている。 しかし,乙9(一級建築士による意見書)によれば,@木造建築の耐震性能は,まず壁量によって評価され,次に部材の緊結が評価要素とされ,さらに,緊結するための金物(金具)が評価要素に加わること,A金物のみで耐震性を評価することは正確ではないこと,B一般に,客観的であると認められている耐震壁の試験方法としてはJIS基準による方法などがあるが,それらの客観的な方法と,甲5で実施された試験方法との関連性が明らかにされていないこと,C曲げ強度については,特殊な構造においてのみ評価されるべきであること,D壁に用いた際に山形プレートと同様の効果を有すると点については,一般的な金物と同様の効果があるとの意味にすぎず,これによって建築基準法令にいう耐震性能を高めることにはならないこと等の見解が述べられている。同意見書の内容は,添付の資料及びその他の証拠(乙1〜3)に照らして,十分に合理性があると解される。 したがって,甲5により,原告製品の耐震性能が評価されていると判断することはできない。 (3) 以上のとおり,原告製品を使用した木造住宅の耐震性能が,本件告示に基づく試験・評価法若しくはこれに準じる一般的な耐震性の試験・評価法によって,相当な程度向上するものと評価できるとは認められず,他にそのように評価できるというべき証拠はない。したがって,本件記載部分@の内容が虚偽であると認定することはできない。 2 争点(2)(被告の配布した本件文書中の本件記載部分Aには,虚偽の事実が含まれているか。)について (1) 証拠(甲1,7,8,乙1,4の1〜4の4,5,7の1)によれば,本件文書添付の新聞記事掲載写真に写された金具のうち,グレートホルダーであると丸で囲まれた書込みがされている金具は,原告製品のうちのグレートホルダー2型と似た形状を有している。しかし,グレートホルダー2型が,金属製の板材をL型に折り曲げ,その両片部の中間部を内側に弧状に湾曲させた形状を有するものであるのに対し,上記写真の被写体は,両片部の中間部を内側に折り曲げ,台形形状を有する点において,グレートホルダー2型とは,形状を異にすることが認められる。そうすると,本件記載部分Aは,グレートホルダーとは異なる補強部材をグレートホルダーであると説明している点で,事実に反する記述であると認められる。 (2) これに対して,被告は,本件文書添付の新聞記事掲載写真には,他の金具も被写体とされ,その内の1つは,原告製品グレートホルダー6型であるから,本件記事部分Aは虚偽ではないこと,また,本件文書は,性能評価がされていない原告製品が,耐震補強工事のノウハウのない業者によって,消費者に誤解を招くような態様で販売されるという事実を指摘したのであって,グレートホルダーという特定の製品を問題としたり,特定の製品の説明をしたわけではないから,本件文書に添付された新聞記事に掲載された写真の被写体に関する被告の説明に誤りがあったとしても,本件記載部分Aが虚偽であると評価することはできない旨主張する。 確かに,本件文書添付の新聞記事掲載写真には,原告製品のうちのグレートホルダー6型によく似た形状の補強部材が写されている(乙4の1〜4の4,乙7の1)。しかし,本件記載部分Aは,本件文書添付の新聞記事掲載写真の被写体の補強部材のうち,丸で囲んでグレートホルダーと説明した部分と一体となった記述であるから,丸で囲んだ補強部材が原告製品でない以上,本件記載部分Aは,事実に反することになる。また,本件記載部分Aを記述した目的がいかなるものであっても,その内容が虚偽であるか否かの判断に影響を与えるものではない。したがって,この点の被告の主張は採用できない。 (3) 以上のとおり,本件記載部分Aは虚偽であると認められ,原告と被告とは競争関係にあるから,被告が被告組合員に本件文書を送付した行為は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当する。 3 争点(3)(原告の被った損害はいくらか。)について そこで,被告の上記不正競争行為によって,原告が被った損害について判断する。 (1) まず,原告は,本件記載部分Aに係る虚偽の事実が告知・流布されたことにより,原告の売上が減少したとの損害(逸失利益)が生じており,その損害額は5000万円を下らない旨主張する。しかし,本件記載部分Aに係る虚偽の事実が告知・流布されたことによって原告の売上が減少したとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。よって,原告のこの点の主張を採用することはできない。 (2) 次に,原告は,本件記載部分Aに係る虚偽の事実が告知・流布されたことにより,原告の営業上の信用が著しく低下したとの損害が生じており,その損害額は5000万円を下らないと主張する。 本件文書は,訪問販売による耐震工事のトラブルが増加していることを報じる新聞記事を契機として,耐震工事を請け負う工務店やリフォーム会社から構成される被告の組合員に対して,耐震性能の裏付けの採れていない耐震補強部材を購入して,施工することがないよう注意を喚起する目的で,その趣旨を詳細に記載した上,耐震補強部材の性能評価がされていない製品のメーカー及び製品の一例として,原告の名称及び「グレートホルダー」を掲記した。前記認定のとおり,上記の記述については,虚偽の事実が含まれているとは認められないので,その事実を告知・流布した被告の行為は,不正競争行為に当たらない。しかし,本件文書に添付した新聞記事に掲載された写真の被写体についての説明部分には,被告製品でないにもかかわらず被告製品であると記述した点に虚偽の事実が含まれているので,これを告知・流布した被告の行為は,不正競争行為に該当する。 ところで,本件文書が作成,配付され,組合員に読まれることによって,確かに,原告は,その営業上の支障を来たし,信用が低下したものといえるが,原告が被告に対して賠償を請求することができる損害の額については,原告の信用毀損を金銭に評価した額のすべてではなく,被告の不正競争行為(写真の被写体に関する説明の誤り)によって原告が被った信用毀損を金銭に評価した額に限られるものというべきである。 この観点から検討する。原告の受けた信用の低下は,本件文書の事実を指摘した記述部分が大きく寄与しているものと解される。他方,訪問販売による耐震工事のトラブルが増加していることを報じる新聞記事の写真の説明において,原告の製品であると誤記したことは,本件文書を読む者に対して,原告製品が新聞記事において取り上げたトラブルの対象となった製品であるとの印象を,一層強く与えるものであり,新聞記事の内容ともあいまって,原告の信用低下に対する影響力は必ずしも小さいものとはいえない。以上の点を総合考慮すると,被告の不正競争行為(写真の被写体に関する説明の誤り)により原告の信用が毀損されたとの無形損害を金銭に評価した額について,200万円と認めるのが相当である。 |
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結論
以上のとおり,原告の請求は,本件文書頒布の差止並びに金200万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成15年1月16日から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容する。原告のその余の請求は理由がないので(謝罪広告に係る原告の請求については,信用回復としてその必要性はないものと解される。),棄却する。よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 榎戸道也 |
裁判官 | 山田真紀 |