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事件 平成 27年 (ネ) 10118号 損害賠償請求控訴事件

控訴人 株式会社インタープライズ・ コンサルティング
訴訟代理人弁護士水野晃
同 島本泰宣
同 柴崎菊恵
被控訴人 株式会社リブ・コンサルティング
被控訴人 合同会社オートビジネス・ コンサルティング
被控訴人 Y1
被控訴人 Y2
上記4名訴訟代理人弁護士 榎園利浩
同 竹田真
被控訴人 Y3
訴訟代理人弁護士橋正樹
同 佐藤大文
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2016/03/08
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人リブ・コンサルティング(以下「被控訴人リブ社」という。),被 控訴人Y3(以下「被控訴人Y3」という。)及び被控訴人Y1(以下「被控 訴人Y1」という。)は,控訴人に対し,連帯して2735万3564円及び これに対する被控訴人リブ社,被控訴人Y3については平成25年9月13日 から,被控訴人Y1については平成25年9月19日から,各支払済みまで年 5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人リブ社,被控訴人Y3及び被控訴人Y2(以下「被控訴人Y2」と いう。)は,控訴人に対し,連帯して8439万9726円及びこれに対する 平成25年9月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被控訴人リブ社,被控訴人合同会社オートビジネス・コンサルティング(以 下「被控訴人オートビジネス社」という。),被控訴人Y3及び被控訴人Y2 は,控訴人に対し,連帯して2715万3534円及びこれに対する被控訴人 リブ社,被控訴人Y3及び被控訴人Y2については平成25年9月13日から, 被控訴人オートビジネス社については平成25年9月27日から,各支払済み まで年5分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人リブ社,被控訴人オートビジネス社,被控訴人Y1及び被控訴人Y 2は,連帯して2億9680万7411円及びこれに対する被控訴人リブ社及 び被控訴人Y2については平成25年9月13日から,被控訴人オートビジネ ス社については平成25年9月27日から,被控訴人Y1については平成25 年9月19日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 本件は,コンサルタント業務を主たる業務とする控訴人が,控訴人の元代表 取締役であった被控訴人Y3,専務取締役であった被控訴人Y1,執行役員で あった被控訴人Y2,被控訴人Y1が代表取締役を務める被控訴人リブ社及び 被控訴人Y2が代表取締役を務める被控訴人オートビジネス社(いずれもコン サルタント業務を業とする会社)に対し,被控訴人ら(全部又はその一部)は, 共謀の上,@控訴人に対し,被控訴人リブ社,被控訴人Y3又は被控訴人オー トビジネス社との間で,不当に高額な業務委託料額による業務委託契約を締結 させ,同委託料を支払わせるなどすることによって損害を与え,また,A控訴 人の営業秘密である顧客情報等を不正に取得するなどした上,控訴人所属のコ ンサルタントを引き抜き,顧客を奪うなどして控訴人に損害を与えたなどと主 張して,不法行為(又は不正競争行為)に基づく損害賠償を求める事案である。
すなわち, (1) 控訴人は,@被控訴人リブ社との間で,原判決別紙一覧表1,4,5,7 及び8記載の業務を同社に委託し,同社に対し,同表記載の業務委託料を支 払う契約を締結し,A被控訴人Y2との間で,原判決別紙一覧表2記載の業 務を被控訴人Y2に委託し,同人に対し,同表記載の業務委託料を支払う契 約を締結し,B被控訴人オートビジネス社との間で,原判決別紙3,6記載 の業務を同社に委託し,同社に対し,同表記載の業務委託料を支払う契約を 締結し,これらの業務委託料を支払ったが,これらの業務委託契約は,当該 業務から得られる粗利の95%を業務委託料額にするという法外に高額な委 託料額を定めたものであって,このような契約締結及び業務委託料の支払は, 控訴人の利益を奪い取ることを目的とした共同不法行為に当たるところ,控 訴人に生じた損害額は,業務委託料額の55%相当額に上るなどと主張して, ア 上記@については,控訴人を代表して契約締結等を行った被控訴人Y3, 契約の相手方である被控訴人リブ社及びその代表取締役である被控訴人Y 1に対し,共同不法行為に基づく損害賠償として,被控訴人リブ社が支払 を受けた業務委託料合計額の55%に当たる2735万3564円及びこ れに対する訴状送達日の翌日以降支払済みまで民法所定年5分の割合によ る遅延損害金の イ 上記Aについては,控訴人を代表して契約締結等を行った被控訴人Y3, 契約の相手方である被控訴人Y2及び利益の還流を受けたとする被控訴人 リブ社に対し,共同不法行為に基づく損害賠償として,被控訴人Y2が支 払を受けた業務委託料合計額の55%に当たる8439万9726円及び これに対する訴状送達日の翌日以降支払済みまで民法所定年5分の割合に よる遅延損害金の ウ 上記Bについては,控訴人を代表して契約締結等を行った被控訴人Y3, 契約の相手方である被控訴人オートビジネス社,同社の代表取締役である 被控訴人Y2及び利益の還流を受けたとする被控訴人リブ社に対し,共同 不法行為に基づく損害賠償として,被控訴人オートビジネス社が支払を受 けた業務委託料合計額の55%に当たる2715万3534円及びこれに 対する訴状送達日の翌日以降支払済みまで民法所定年5分の割合による遅 延損害金の 各連帯支払を求め,(2) 被控訴人Y1及び被控訴人Y2は,共謀の上,控訴人の営業秘密である顧 客情報を不正に取得し,更に,控訴人に所属するコンサルタントのあらかた を一斉に引き抜いた上,控訴人の顧客に対し,あたかも被控訴人リブ社及び 被控訴人オートビジネス社が控訴人のコンサルティング業務を引き継いだか のような虚偽の情報を提供するなどして控訴人の顧客を奪うという,不正競 争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号及び7号所定の不正競争 行為ないしは不法行為を行ったとして,被控訴人Y1及び被控訴人Y2並び にそれぞれが代表取締役を務める被控訴人リブ社及び被控訴人オートビジネ ス社(以下,この4名を「被控訴人4名」という。)に対し,控訴人が顧客 を奪われたことによって生じた損害8億9042万2233円及びこれに対 する訴状送達日の翌日以降支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損 害金の支払を求めたものである。
原判決が控訴人の請求をいずれも棄却したため,それを不服とした控訴人 が本件控訴を提起した。なお,控訴人は,上記?の請求の関係では,2億9 680万7411円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で原判 決に対して不服を申し立てている。
2 前提事実となる事実等及び争点は,次のとおり原判決を補正するほかは,原 判決「事実及び理由」の第2の1及び3のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決3頁19行目の「被告Y3」を「被控訴人Y2」と改める。
(2) 原判決4頁14行目の「同日」を「同年7月31日」と,23行目の「同 日」を「同年7月31日」と,5頁7行目の「同日」を「同月31日」と, 6頁3行目の「同日」を「同月26日」とそれぞれ改める。
(3) 原判決9頁17行目の「不法行為」を「被控訴人らの共同不法行為」と, 18行目の「被告ら」を「被控訴人4名」とそれぞれ改める。
争点に関する当事者の主張
争点に関する当事者の主張は,後記1のとおり原判決を補正し,後記2のと おり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の 第3記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正 (1) 原判決9頁21行目の「不法行為」を「被控訴人らの共同不法行為」と, 同26行目の「利益」を「粗利」と,10頁1行目の「被告Y1,及び同人 らが」を「被控訴人Y1及びそれぞれが」と,それぞれ改める。
(2) 原判決12頁12行目の「決済」を「決裁」と,23行目の「被告ら」を「被控訴人4名」と,それぞれ改める。
(3) 原判決12頁26行目の「原告の顧客情報」を「控訴人の保有する顧客の 会社名,住所,固定電話,過去のコンサルティング業務の実績(コンサルテ ィング契約の契約時期,契約期間,報酬等の情報),これまでのコンサルティ ングサービスの内容,コンサルタント教育等の手法・回数,それに基づく営 業成績の推移及び実績等の情報(以下,これらを併せて「本件顧客情報」と いう。)」と改める。
(4) 原判決13頁3行目の「原告の顧客情報」を「本件顧客情報」と改める。
(5) 原判決13頁4行目末尾に次のとおり加える。
「また,控訴人では,採用時に誓約書及び秘密保持誓約書の提出が求められ (甲58,9条2項1号),在職時及び退職後においても控訴人の機密事 項を漏洩することは禁止されていること(同13条2,3号),コンサル タントの資格を失った時には,業務に関連して得た顧客情報を直ちに返納 し,または破棄しなければならないとされていることから(同55条2項), 本件顧客情報も秘密保持義務の対象になることは明示されている。」(6) 原判決13頁13行目,15行目,17行目,26行目の「原告の顧客情 報」,及び18行目の「顧客情報」をいずれも「本件顧客情報」と改める。
(7) 原判決13頁24行目の「意思を以って取得した。」を「意思をもって取 得した(不競法2条1項4号)。」と,14頁3行目の「「開示」を行って いる。」を「「開示」を行っている(不競法2条1項7号)。」とそれぞれ 改める。
(8) 原判決14頁5行目,6行目,8行目の「被告ら」をそれぞれ「被控訴人4名」と改め,10行目冒頭に「(ア)」を加える。
(9) 原判決14頁12行目の「Y2らと共に,」を削る。
(10) 原判決14頁15行目の「(甲32の1,2,甲35の2)」を「(甲 31ないし35の2)」と改める。
(11) 原判決15頁23行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「(イ) なお,乙イ16のアンケートは,被控訴人Y1及び被控訴人Y2が 控訴人のコンサルタントを一斉に引き抜く目的で,綿密な計画の下,控 訴人の各事業部門の部長やマネージャーと面談して下準備をした上で, コアデイにおいて,控訴人のコンサルタントに対し,控訴人の経営陣に 対する不快感,不安感を植え付ける説明を行った後で実施されたもので ある。しかも,被控訴人Y1らは,コンサルティング業務に携わってい ながら,統計的有意性を持つとされている五つ以上の選択肢が記載され たものではなく,三つしか選択肢が記載されていない質問を用いてアン ケートを実施しており,アンケートが実施された時期に照らしても意図 的に退職する方向に巧妙に誘導した結果であるというべきである。同様 に,Aが控訴人所属のコンサルタントに本件メールを発信した後である 平成25年2月20日にも控訴人のコンサルタントが退職したのも,被 控訴人Y1らの計画に沿って誘導された結果にすぎない。」(12) 原判決16頁17行目の「依頼した」から18行目末尾までを次のとお り改める。
「依頼し(甲10,35の4,38〜40,42,44),実際に契約を切り 替えた顧客が存在する。なお,被控訴人Y1及び被控訴人Y2が,控訴人の 顧客等に控訴人と被控訴人リブ社とを誤認混同させようとしたことは,被控 訴人Y1及び被控訴人Y2が,控訴人の顧客を被控訴人リブ社へ確実に引き 抜くため,控訴人の顧客ごとに被控訴人リブ社の設立の経緯等を説明する担 当者を吟味して区分けしたこと(甲41の1ないし6)からも明らかである。」(13) 原判決16頁23行目及び24行目の「被告ら」を,それぞれ「被控訴 人4名」と改める。
(14) 原判決17頁2行目から3行目にかけて及び6行目の「原告の主張する 顧客情報」並びに4行目の「顧客情報」をいずれも「本件顧客情報」と改め る。
(15) 原判決17頁6行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「 また,本件顧客情報の大半は,本件各業務委託契約の契約書に添付され た「業務委託一覧」自体から明らかである。しかも,本件各業務委託契約 の契約書の8条により,被控訴人4名が,控訴人の顧客情報を取得し,使 用することが予定されていた。
したがって,被控訴人4名が,本件顧客情報を不正に取得し,使用・開 示したとはいえない。」 (16) 原判決19頁15行目の「いうべきであり,これを被告ら」を「いうべ きところ,このうち2億9680万7411円を被控訴人4名」と,16 行目の「請求の趣旨第4項」を「控訴の趣旨第5項」とそれぞれ改める。
2 当審における当事者の主張 (1) 争点(1)(本件各業務委託契約の締結が被控訴人らの共同不法行為に当た るか)について 〔控訴人の主張〕 原判決は,本件各業務委託契約の業務報酬の割合が95%とされているこ とにつき,社員の大量退職を防止して相当額の売上げを保ちながら控訴人の 事業を継続し,上場維持を図るという控訴人の要請に基づくものであり,業 務委託報酬の売上げにおける割合についても,双方協議を重ねた上で合意さ れたものであって,被控訴人リブ社らが建物賃料・電気代等の一部を負担し ていることからも,本件各業務委託契約の報酬が不相応に高額であるものと は認められない旨判断している。
しかしながら,控訴人の自動車部門の売上げは控訴人の売上げの約5分の 1以上を占めるものであり,本件各業務委託契約の対象となった業務は,控 訴人の自動車部門が当時締結していた業務のほぼ大半であるから,本件各業務委託契約の締結は,控訴人及びエル社の取締役会の決議が必要な「重要な財産の処分」(会社法第362条4項1号。控訴人の「関係会社管理規程」(甲62)6条,7条,9条,10条)に該当し,ひいては控訴人の株主総会決議の必要な自動車部門の「事業譲渡」(会社法467条1項1号,309条2項11号)に等しいものである。しかしながらこれらの決議はなされておらず,本件各業務委託契約の締結は「脱法的MBO」であるが,原判決はこの点につき特に排斥する理由を述べておらず,審理不尽の違法がある。
また,本件各業務委託契約の対象は,被控訴人Y1が担当していた業務のうち同人しか対応できない業務及び控訴人の自動車部門に関する業務であり,控訴人の不動産・住宅部門等に関する業務については被控訴人リブ社らとの間で業務委託契約は締結されていない。したがって,自動車部門以外の部門については,原判決が述べる上記目的が達成できる形とはなっておらず,この点について被控訴人らからは具体的な理由は主張されていない。
そもそも,控訴人の売上げは,上場会社であるエル社の当時の売上げの約6割を占めており,粗利の5%しか受領しない形では到底上場を維持できるはずがないから,控訴人から本件各業務委託契約を締結することを要請するはずがない。
被控訴人リブ社が建物賃料・電気代等の一部を負担している点も,控訴人が,本社・事業所の家賃,水道光熱費,減価償却費,租税公課,通信費,販売管理費等を負担している一方,被控訴人リブ社は「Y1のマネジメントサポートフィー」62万円との名目で対当額にて相殺し,その結果,家賃・清掃料・電気代込みの30万円という安価で控訴人の施設を利用して本件各業務委託契約に係る業務を実施していたのであるから,本件各業務委託契約における業務報酬の割合が不相応に高額であると認められない根拠とはなり得ない。
したがって,原判決の上記判断は誤りである。
〔被控訴人4名の主張〕 控訴人の主張は争う。
控訴人は,「脱法的MBO」に関する主張につき,原審における審理において,原審裁判所の訴訟指揮にもかかわらずその主張の趣旨を明らかにしていなかったことに照らすと,原判決に審理不尽の違法はない。なお,本件各業務委託契約につき控訴人の取締役会決議及び株主総会決議並びにエル社の取締役会決議を経るかどうかは,取引の相手方である被控訴人4名がコントロールすることのできない事項であるし,本件各業務委託契約は双方の真摯な合意が反映されたものであるから,それらの決議がなかったとしても,被控訴人4名に不法行為が成立する余地はない。
また,本件各業務委託契約を締結することにより,実際に,控訴人のコンサルタントが一斉に退職することは避けられ,上場維持のために必要な程度の売上げを維持することも達成されている。
さらに,「Y1のマネジメントサポートフィー」62万円と建物賃料等との相殺については,控訴人も,被控訴人リブ社が相殺に用いた上記債権につき,債権が存在しないとか,金額が高額にすぎるとは主張しておらず,上記債権が,被控訴人Y1が控訴人に対して提供していた業務の正当な対価であったことは明らかである。そうすると,控訴人の主張は,結局のところ,相殺により決済された債権は回収されていないことになるというに等しく,独自の見解に基づくものであって失当である。
〔被控訴人Y3の主張〕 控訴人の主張は争う。
本件各業務委託契約の締結及びその業務報酬の設定は,B及びエル社役員らと被控訴人Y1双方の真摯な合意に基づきされたものであり,何らの不法行為も成立しない。
本件各業務委託契約は,自動車部門に所属していたコンサルタントらが, 控訴人を退職後もなお控訴人へ売上げを残せるようにするために締結された ものであり,重要な財産の処分にも事業譲渡にも該当しない。この点につい ては,C弁護士も,本件各業務委託契約について株主総会決議が必要な事業 譲渡ではないと判断している(乙イ25)。
仮に,エル社において取締役会決議が必要であったとしても,本件各業務 委託契約の締結は,エル社から派遣されたBやエル社役員らが被控訴人Y1 と交渉を重ねて決定したものであるから,事実上エル社の取締役会決議があ ったことは明らかであるから,エル社における取締役会決議が存在しないと しても,被控訴人Y3の不法行為は成立しない。
(2) 争点(2)(被控訴人4名による営業秘密の使用等の不正競争行為ないし共 同不法行為の成否)について〔控訴人の主張〕 ア 控訴人にとってコンサルタントは重要な財産であり,控訴人の各事業部 門のコンサルタントのほとんど全てを被控訴人リブ社へ移籍させるのであ れば,事業譲渡として控訴人の株主総会決議を経るか,少なくとも重要な 財産の処分に該当するとして,控訴人の「関係会社管理規定」(甲62) に基づき,エル社の取締役会の承認を得るべきであった。被控訴人Y3は, 上記「関係会社管理規定」の存在を知っていたのであるから,少なくとも エル社の取締役会の承認手続を得るべきことは認識していたはずである。
そして,会社を空洞化する可能性があるにもかかわらず,役員や幹部社員 が適正な手続をとらないで,自らが在籍した会社の従業員を大量に移籍さ せることを安易に認めるべきではない。この点を踏まえ,控訴人は,原審 において,被控訴人Y1及び被控訴人Y2は,控訴人の取締役ないし執行 役員であったにもかかわらず,あらかじめ新会社を設立し,控訴人のコン サルタントのほとんど全員を引き抜いてこれらを新会社に移籍させ,控訴 人の業務を事実上「空っぽ」にしたもので,これは会社財産の詐取であり, 脱法的なMBOであって不法行為を構成する旨主張したが,原判決はこの 点について全く検討しておらず,審理不尽の違法がある。
イ 原判決は,本件確認書によって,被控訴人Y1らが控訴人在籍中に著作 した著作物等を利用できる旨判断した。
しかし,そもそも被控訴人Y1との間の本件確認書以外の確認書につい てDはその内容及び締結を了解していない。仮に,被控訴人Y1以外の者 との間の確認書が有効に作成されたとしても,控訴人に知的財産権が帰属 し,かつその対価も無償であるから,被控訴人リブ社が著作物を無制限に 利用できるものではなく,控訴人の顧客を奪ったり,控訴人と被控訴人リ ブ社とを誤認混同させ得る形での使用は,許諾された範囲を超えたもので あることは明らかであり,原判決の上記判断は誤りである。
〔被控訴人4名の主張〕 控訴人の主張は争う。
ア エル社は,平成24年7月下旬頃には,「本件を事業譲渡であるとして それなりの対価を算定して支払ってもらうべきではないか」との検討を行 っており(乙イ2),かつ,Dが平成24年9月13日に述懐したとおり, 「それ以外の方(判決注・被控訴人Y1以外のコンサルタント)がY1さ んと一緒の条件でいいのか」との検討も行っていたのであり(乙ア16), その上でなお,本件各業務委託契約を締結し,顧客に対する支援を多くの コンサルタントが移籍していた被控訴人リブ社に委ね続けるとの意思決定 をしていたのであるから,そのような意思決定に不当に介入しようとした ことすらない被控訴人4名に不法行為が成立することはない。
イ 被控訴人4名が,控訴人の著作物を無断で利用したり,控訴人を承継し たかのような虚偽の情報提供をしたことはない。
(3) 被控訴人Y3の単独不法行為(当審における予備的主張) 〔控訴人の主張〕 仮に,本件各業務委託契約の締結及び強制執行認諾条項付きの公正証書の 作成につき被控訴人らによる共同不法行為が成立しないとしても,次のとお り,被控訴人Y3については,上記行為につき不法行為が成立する。
被控訴人Y3は,上記各業務委託契約を締結し,強制執行認諾条項付きの 公正証書を作成した当時,控訴人の代表取締役であったから,控訴人に対し, 善管注意義務及び忠実義務を負い,法令及び定款等を遵守し,会社のため忠 実にその職務を行わなければならない立場にあった。
しかしながら,被控訴人Y3は,控訴人を退職した従業員との間で締結す る業務委託契約の業務報酬の割合を定めた「独立制度規程」(甲36)に反 することを認識しながら,業務報酬の割合が95%である本件各業務委託契 約を締結した。
また,被控訴人Y3は,本件各業務委託契約等を締結することは,重要な 財産の処分に等しく,その締結に当たり,控訴人の取締役会の承認決議が不 可欠であったにもかかわらず,その承認決議を得ていないし,控訴人の「関 係会社管理規程」(甲62)の存在を認識していたにもかかわらず,親会社 であるエル社の取締役会の承認決議も得ていない。さらに,被控訴人リブ社 への人材等の財産の移転は事業譲渡であり,控訴人の株主総会決議を要する ものである。
被控訴人Y3が,控訴人の代表取締役として控訴人の株主総会を招集する などし,これを開催していれば,本件各業務委託契約の締結の要否,業務報 酬の割合,コンサルタントの移籍に関する具体的な対価等につき吟味され, 控訴人としても業務委託契約書等を締結しないとか,あるいは,仮に業務委 託契約書等を締結し,コンサルタントの移籍を承認するとしても,しかるべ き対価を得るべきという結論になった。
以上によれば,被控訴人Y3は,その職務の執行に当たり,法令及び定款 等を遵守して適正な手続を得ることを行わなかったのであるから,その点に つき,不法行為が成立する。
〔被控訴人Y3の主張〕 「独立制度規程」は,独立を希望するエル社の社員の生涯設計プランを援 助することを目的に(同規程1条),独立者に対して経営資源の援助を行う (同6条)ことを内容とするものであるから,控訴人から何らの援助も受け ず,かつ,控訴人へ売上げを残すために締結された本件各業務委託は,同規 程の対象ではない。
また,本件各業務委託契約等が事業譲渡や重要な財産の処分に該当しない こと,控訴人の主張するエル社における取締役会決議が存在しないとしても, 被控訴人Y3の不法行為が成立しないことは前記(1)〔被控訴人Y3の主張〕 のとおりである。
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由 は,後記1のとおり原判決を補正し,後記2のとおり当審における当事者の主 張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第4の1ないし 3のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正 (1) 原判決20頁10行目の「当時エル社の監査役であったDは,B,Eとと もに」を「D(同年8月,エル社の監査役に就任)は,B,E(エル社監査 役)とともに」と,21頁13行目の「B」を「F取締役」と,それぞれ改 める。
(2) 原判決23頁14行目の「乙イ25」を「乙イ2,25」と,24頁8行 目の「エル社の親会社」を「原告の親会社」と,それぞれ改める。
(3) 原判決25頁12行目の「乙イ6」の次に「,乙イ7」を加える。
(4) 原判決26頁4行目の「本件報告書では,」の次に,「「Y1との合意に おいては,現在の契約期間が終了後は,IPC(判決注・控訴人を指す)と の契約を維持するか,リブ・コン(判決注・被控訴人リブ社を指す)との契 約をするかは,取引先の自由に任せることとなっている。したがって,IP Cとの契約の継続にむけて努力する必要がある。」,「実際に取引先に対し てコンサルをしているのは,リブ・コンであること等から,常識的に考えて, IPCが積極的な営業をしない限りは契約維持は困難であるところ,Y1と の合意の前提として,仮にすべての契約がリブ・コンに切り替えられたとし ても,リブ・コンからの業務委託料によって2年間上場維持ができる売り上 げが確保されていると説明されてきた。」,」を加え,19行目の「退職日 を遅らせるように頼む」を「退職日をさらに遅らせるよう働きかけることを 依頼する」と改める。
(5) 原判決28頁8行目及び11行目から12行目にかけての「乙ア19」を いずれも「乙ア20の1」と改める。
(6) 原判決29頁6行目の「不法行為」を「被控訴人らの共同不法行為」と改 め,7行目の「原告と被告らとの」を削る。
(7) 原判決29頁24行目末尾に「また,本件業務委託契約@ないしB及びE の締結に際して強制執行認諾条項付きの公正証書を作成したことについて も,同様の理由により,不法行為を構成するものとはいえない。」を加える。
(8) 原判決30頁5行目の「負担していること」を「負担していること,業務 委託報酬の割合が,控訴人の主張する粗利の40%を超える例もあること(甲 59の1,2,証人D)」と改める。
(9) 原判決30頁10行目の「被告ら」を「被控訴人4名」と改める。
(10) 原判決30頁13行目から21行目までを次のとおり改める。
「ア 控訴人は,被控訴人4名において控訴人の営業秘密である本件顧客情 報を不正に取得し,使用等した不正競争行為が存する旨主張する。
(ア) そこで,まず,控訴人が本件顧客情報を秘密として管理していた かどうか検討する。
a 後記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(a) 控訴人で用いられている販売管理システムには,「申込者」の 項目に顧客の会社名,住所,電話番号,「申込内容」の項目に業 務委託を受けた内容又は購入商品,「請求内容」の項目に,請求 日,入金予定日,最終入金日,最終入金額,「プロジェクト内容」 の項目に,プロジェクト名,契約期間等が登録されている(以下 「本件登録情報」という。甲66の1ないし3)。なお,「付加 価値分配」の項目もあるが,提出された証拠へのマスキングのた めその具体的内容は明らかではない。
そして,販売管理システムにログインするためにはユーザー名 及びパスワードの入力が必要である。もっとも,控訴人の従業員 には販売管理システムにログインするためのユーザー名及びパス ワードが与えられ,控訴人の従業員であれば,担当者に限らず, 本件登録情報を閲覧することができる。他方,管理部門等コンサ ルタント業務以外の会社情報には,管理部門の従業員しかアクセ スできないようにされていた(原審における控訴人の平成26年 8月21日付け準備書面(9)3頁ないし4頁参照)。
(b) 控訴人の就業規則(甲58)9条2項(1)では,従業員として 採用することが決定された者は,原則として入社日までに「誓約 書及び秘密保持誓約書」を提出しなければならないとされ,同1 3条(2)及び(3)では,従業員が,「自己の担当であると否とに関 わらず,会社の機密事項または会社の不利益となる事項を他に漏 洩する行為」((2)),及び,「業務上知悉した関係会社の機密事 項を他に漏洩する行為」((3))が在職中及び退職後において禁止 され,さらに,「従業員の資格を失ったときは,業務に関連して 得た会社及び顧客に関する資料,データその他の情報を直ちに返 納し,又は破棄しなければならない。」とされている(同55条 2項)。
? 被控訴人Y2がエル社に対し提出した平成18年4月7日付け 「秘密保持に関する誓約書」(甲60の2。その後,会社分割に より,控訴人に承継されたものと解される。)2項においては, 「私は,貴社での職務遂行に関連して貴社に関係する以下の情報 (秘密情報等)を得た場合には,この誓約書に従ってその秘密を 厳守します。」とされ,「書面,フロッピーディスク等の記憶媒 体物,その他の有体物に記載又は記録された情報」(同項(1))及 び「音声,映像,電子的・磁気的方法,記憶媒体物へのアクセス, その他有体物に記載または記録される以外の方法で知り得る情報 であって,当該情報の保管方法等により一般的な開示あるいはア クセスが制限されていることが示されている情報」(同項(2))が 挙げられているほか,同5項では,「私は,貴社を退職した場合, 本件業務の担当を外れた場合,その他貴社からの指示がある場合 には,秘密情報等が記載ないし記録された書面,図表,記述,報 告,記憶媒体等の有体物(秘密情報等がコピーされた有体物を含 む)の一切を直ちに返還し,かつ,当該返還物以外には秘密情報 等が記載ないし記録された有体物を私が一切保持しないものとし ます。私は,返還した秘密情報等を,方法の如何を問わず,復元 ないし再生しません。」とされ,同6項では「私が貴社を退職し た場合であっても,退職前に私が知ることとなった秘密情報等に ついては,この誓約書の規定事項に従います。」とされている。
なお,被控訴人Y1に関し,同人提出に係る「秘密保持に関する 誓約書」は証拠として提出されていない。
b 控訴人は,本件顧客情報が秘密として管理されていることを立証 するとして,前記a(a)の販売管理システムに係る書証を提出するの で,少なくとも,本件登録情報が本件顧客情報に含まれることを主 張するものと解される。そこで,本件登録情報が秘密として管理さ れているといえるかどうかを検討する。
本件登録情報は,元来,各コンサルタントが顧客から取得する情 報であるし,前記a(a)のとおり,管理部門等コンサルタント業務以 外の会社情報のように,アクセスできる従業員が限定されている情 報が存在する一方で,本件登録情報については,同情報の登録され た販売管理システムにログインするためにユーザー名及びパスワー ドの入力が必要とされていたものの,控訴人の従業員であれば誰で もログイン可能であり,アクセスできる従業員が限定されていない ものである。しかも,控訴人は,従業員によるユーザー名及びパス ワード,ないしは本件登録情報の具体的な管理方法について具体的 に主張立証しない。さらに,控訴人は,本件登録情報以外に販売管 理システムにおいて管理される情報があるかどうかや,その内容, 本件登録情報以外の情報がある場合,それと本件登録情報とが何ら かの形で区別されているかなどについても具体的に主張立証せず, 本件登録情報がその他の秘密とはされない情報と区別して管理され ているのかどうかも判然としない。
また,控訴人においては,前記a(b)のとおり,その従業員に対し, 就業規則において秘密保持義務を課していたことが認められるもの の,その対象は,「会社の機密事項または会社の不利益となる事項」 (13条(2)),「業務上知悉した関係会社の機密事項」(同(3)) とされているにとどまり,本件登録情報が上記の各事項に含まれる のかはその文言上必ずしも一義的に明らかではない。また,従業員 の資格を失った時には,業務に関連して得た会社及び顧客に関する 資料,データその他の情報を直ちに返納し,又は破棄することとは されているものの(55条2項),本件登録情報に係る情報そのも のについてどのように扱われるかはその文言からは必ずしも明確で はない。
前記a?の「秘密保持に関する誓約書」の記載をみても,「秘密 情報等」の対象とされているのは,控訴人に関係する情報であり(2 項),顧客に関係する本件登録情報がこれに含まれるのかは一義的 に明確ではない。
以上によれば,前記aの各事情をもって,控訴人が,本件登録情 報につき,同情報に接する者において秘密として認識し得るように していたと認めるのには疑問が残り,他にこれを認めるに足りる証 拠はない。
なお,本件登録情報以外に,本件顧客情報に含まれる控訴人保有 の控訴人の顧客に関する情報が存在したことを認めるに足りる証拠 はないし,仮に存在したとしても,これが秘密として管理されてい たことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,本件登録情報を含め本件顧客情報が,不競法2条6 項の「営業秘密」に該当するものと認めることには疑問が残るもの というべきである。
(イ) 仮に本件登録情報が不競法2条6項の「営業秘密」に該当するもの としても,控訴人が被控訴人Y1及び被控訴人Y2が本件登録情報を不 正に取得したことを立証するために提出する当時の控訴人従業員が被控 訴人Y2に宛てた平成24年8月1日付けメール(甲46)には,「P Cデータのコピーが終了いたしました。」旨記載されているにとどまり, コピーされたデータに本件登録情報が含まれるのかどうかは明らかでは ないから,これをもって被控訴人Y2が本件登録情報を不正の手段により取得した(不競法2条1項4号)と認めることはできず,他に,被控訴人Y1及び被控訴人Y2が本件登録情報を不正の手段により取得したことを認めるに足りる証拠はない。
かえって,本件登録情報のうち,本件各業務委託契約の対象となった顧客に関しては,元来,被控訴人リブ社に移籍した各コンサルタントが,控訴人在職中に顧客から取得し,その内容を熟知していたものと考えられる上に,前記(ア)a(a)のとおり,被控訴人Y1及び被控訴人Y2は,控訴人在籍中に自由に本件登録情報を閲覧することができたことが明らかであること,本件登録情報を構成する情報そのものあるいはその内容を導き出すために必要な情報が,本件各業務委託契約の契約書の別紙として添付された「業務委託一覧」にも開示されていることにも照らすと,被控訴人Y1及び被控訴人Y2が,本件登録情報を不正の手段により取得したとは認められない。
また,本件登録情報が,控訴人から被控訴人Y1及び被控訴人Y2に「示された」(不競法2条1項7号)ものであることを前提としても,そもそも,本件各業務委託契約の対象となっている顧客との関係では,当該顧客の情報を使用することは契約上当然の前提となるものと解されるから(本件各業務委託契約に係る契約書(甲11の1ないし甲18)の8条参照),上記顧客との関係で本件登録情報を使用等することが不競法2条1項7号所定の行為に該当するものとは認められないし,契約期間終了後,控訴人との契約を維持するか被控訴人リブ社との契約を維持するかは顧客に委ねられている上,本件各業務委託契約が締結された経緯に照らしても,常識的に考えて,控訴人が積極的な営業をしない限り,契約維持は困難であるとされていたことに照らすと(前記1(15)),契約期間終了後,被控訴人リブ社との契約を選択する顧客が現れたから といって,被控訴人4名が本件登録情報を不正に使用したと推認するこ とは困難である。また,以上の点からすると,被控訴人4名が本件登録 情報を使用していたとしても,そのことと控訴人の主張する損害との間 に相当因果関係が存在するとも認められない。さらに,被控訴人4名が, 本件各業務委託契約の対象となっていない控訴人の顧客に関し,本件登 録情報を不正に使用・開示したこと,あるいは,仮に使用・開示したと しても,そのことと控訴人の主張する損害との間に相当因果関係が存在 することを認めるに足りる証拠はない。
(ウ) 以上によれば,控訴人の不競法に基づく主張は理由がない。」(11) 原判決30頁22行目から23行目にかけての「顧客情報」及び26行 目の「原告の主張する顧客情報」をいずれも「本件顧客情報」と改める。
(12) 原判決30頁25行目及び31頁1行目の「被告ら」をいずれも「被控 訴人4名」と,30頁26行目から31頁1行目にかけての「認めることが できない」を「認めることには疑問がある」と,2行目の「証拠はない」を 「証拠がないことは,既に指摘したとおりである(上記ア)」と,それぞれ改 める。
(13) 原判決31頁15行目から16行目までを次のとおり改める。
「ア 控訴人は,被控訴人Y1と被控訴人Y2は,共謀の上,被控訴人Y1 が設立する被控訴人リブ社へ控訴人のコンサルタントの大部分を一斉に 引き抜き,不法に被控訴人リブ社らの利益を図る目的で,平成24年6 月29日のコアデイの前(同月18日から同月28日までの間)に控訴 人のコンサルタントらを統括する地位にある部長やマネージャーと面談 し,引き抜きに向けた根回しを行い,また,被控訴人Y1は,被控訴人 Y1らの意図を了知した被控訴人Y3と事前のすり合わせを行った上 で,上記コアデイにおいて,控訴人のコンサルタントらに対して,「L ’ALBAホールディングスに原告の株式を返還することになったが, 経営コンサルティング事業を知らない株主や経営陣がコンサルティング 事業をできるはずもないため,原告の株式を返還することで原告の存続 が危ぶまれる」,「今後も経営コンサルティング事業を存続させるので あればY1が独立してコンサルティング事業を引き継ぐしかない」 「原 , 告からリブ社へ売上金額の95%で業務委託契約を結んでいる。これは 公正証書をまいているから問題がない」旨を説明し,控訴人のコンサル タントの不安をあおるとともに,あたかも控訴人やエル社が被控訴人リ ブ社と業務委託契約書を締結することを承諾しているかのように誤信さ せて,被控訴人リブ社への移籍を勧誘し,その後も,控訴人のコンサル タントが被控訴人リブ社へ移籍するように,それぞれの意向を把握しな がら,移籍を明確に述べないコンサルタントについては個別に面談する などして根回しを行って,控訴人のコンサルタントの大量引き抜きとい う不法行為を行った旨を主張する。」(14) 原判決32頁7行目の「被告ら」を「被控訴人4名」と改める。
(15) 原判決32頁20行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「 また,控訴人は,乙イ16のアンケートは,被控訴人Y1及び被控訴 人Y2が控訴人のコンサルタントを一斉に引き抜く目的で,綿密な計画 の下,控訴人の各事業部門の部長やマネージャーと面談して下準備をし た上で,コアデイにおいて,控訴人のコンサルタントに対し,控訴人の 経営陣に対する不快感,不安感を植え付ける説明を行った後で実施され たものであり,しかも,コンサルティング業務に携わっていながら,被 控訴人Y1及び被控訴人Y2は,統計的有意性を持つとされている五つ 以上の選択肢が記載されたものではなく,三つしか選択肢が記載されて いない質問を用いた恣意的なアンケートを実施しており,アンケートを 実施された時期からしても意図的に退職する方向に巧妙に誘導したもの であるというべきであって,同様に,本件メールが発信された後である 平成25年2月20日にも控訴人のコンサルタントが退職したのも,被 控訴人Y1及び被控訴人Y2の計画に沿って誘導された結果にすぎない 旨主張する。
しかしながら,被控訴人Y1及び被控訴人Y2が控訴人のコンサルタ ントを一斉に引き抜く目的で,綿密な計画の下,控訴人の各事業部門の 部長やマネージャーと面談して下準備をしたとか,コアデイにおいて, 控訴人のコンサルタントに対し,控訴人の経営陣に対する不快感,不安 感を植え付ける説明を行ったことを認めるに足りる証拠はない。また, 上記アンケートには,選択肢のある質問についても,コメントを記載す る欄が設けられているほか,さらにその他のコメントを自由に記載する 欄が設けられているところ,これらのコメント欄には,回答者が選択肢 のある質問においてそのような回答をした理由が記載されているものも 多く,また,上記のその他のコメントを記載する欄にも,前記1(8)に挙 げたほか多数のコメントが記載されていることに照らせば,上記のアン ケートの結果が,回答者の自由な意思に基づくものであることは明らか である。そして,このアンケートは,あくまでも控訴人のコンサルタン トの意向を調査するものであって,正規の統計調査とは異なることから すれば,三つしか選択肢がないからといって異とするには足りないので あって,この点からしても,上記アンケートの回答がその実施者により 誘導された結果であるなどということはできない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 控訴人が当審で提出する甲67ないし78についても,説明会等にお ける説明内容をまとめたもの(甲67,69,71の2),被控訴人Y 1が,AやDから控訴人のコンサルタントの退職日を遅らせるよう働き かけることを依頼されていたこと(前記1(15))などに関連して,控訴 人から何らかの責任の追及をされる可能性を考慮してこれを避けるため の方策を検討したもの(甲74の4,75の2),Gが被控訴人Y1に 宛てた平成25年1月31日付けメールにおいて,元来退職の可能性が 高かった(前記1(15)),控訴人の住宅不動産コンサルティング事業部 のコンサルタントにつき,平成25年2月20日全員が被控訴人リブ社 に異動するかどうかについて,コンサルタントらの考え方やコンサルタ ントらの状況を伝えたりする(甲68)ものであるにとどまり,その余 の甲号各証も含め,被控訴人Y1らが,前記アの控訴人の主張する行為 を行ったことを裏付けるものとはいえない。なお,甲69(「1206 26役員ミーティング アジェンダ」と題する書面)には,「「新会社 に行くことは可能ですか?」という質問を仕込む。」との記載もあるが, この記載から直ちに,被控訴人Y1らが,平成24年6月29日のコア デイにおいて,前記アのとおりの言動をしたことが裏付けられるもので はない。
かえって,甲67(「120618役員ミーティング アジェンダ」 と題する書面)には,「1 マネージャーへの本件の伝え方」の項目に, 「NGワード:「こっちへ来なさい」「極端なリスクを伝える」」など と,マネージャーに対して移籍の勧誘をしないように注意する旨の記載 があることも認められる。
そうすると,上記甲号各証は,前記アの認定を左右するものとはいえ ない。」(16) 原判決32頁21行目の「被告ら」を「被控訴人4名」と改める。
(17) 原判決32頁24行目から33頁7行目までを次のとおり改める。
「 しかし,Dもその内容を了解した上で,控訴人と被控訴人Y1との間で 締結された本件確認書によれば,被控訴人Y1が控訴人在籍中に著作した 著作物等については,控訴人,被控訴人Y1において共同で利用できる旨 が定められているほか(前記1(10)),控訴人と他の控訴人を退職し被控 訴人リブ社に移籍したコンサルタントとの間でも,本件確認書とほぼ同内容の確認書が作成されていることが認められる(乙イ23,12頁)。
そして,控訴人の提出する被控訴人リブ社名義のパンフレット(甲19の2,27の2)やホームページ(甲20の2,21の2,22の2,23の2),「めざましコラム」(甲25の1,2),「SS業界レポート」(甲26の2),その他の資料(甲28の2,29の2)は,いずれも,本件確認書等に基づき,被控訴人Y1や被控訴人リブ社に移籍したコンサルタントらにおいて,控訴人在籍時に作成したものにつき,被控訴人リブ社らの名称を付したものと認められるから(甲19の1ないし甲29の2,被控訴人Y1本人,弁論の全趣旨),これらの利用が不法行為を構成するものとはいえない。
また,被控訴人Y1,被控訴人Y2及び被控訴人リブ社において,被控訴人リブ社が控訴人の事業を承継したかのような虚偽の情報提供をした事実を認めるに足りる証拠はなく,かえって,甲10には,被控訴人リブ社が控訴人から分離独立した旨記載されており,被控訴人リブ社が控訴人とは別の会社であることが明示されていることが認められる。
なお,控訴人は,被控訴人Y1及び被控訴人Y2が,控訴人の顧客等に控訴人と被控訴人リブ社とを誤認混同させようとしたことは,被控訴人Y1及び被控訴人Y2が,控訴人の顧客を被控訴人リブ社へ確実に引き抜くため,控訴人の顧客ごとに被控訴人リブ社の設立の経緯等を説明する担当者を吟味して区分けしたこと(甲41の1ないし6)からも明らかであるとも主張する。
しかし,上記甲号各証から,被控訴人リブ社の設立の経緯を説明するに当たり,役割の分担がされたことが認められるとしても,このことが直ちに,控訴人の顧客等に控訴人と被控訴人リブ社とを誤認混同させようとしたとの控訴人の主張の裏付けとなるものではない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。」2 当審における当事者の主張に対する判断 (1) 争点(1)(本件各業務委託契約の締結が被控訴人らの共同不法行為に当た るか)について ア 控訴人は,控訴人の自動車部門の売上げは控訴人の売上げの約5分の1 以上を占めるものであり,本件各業務委託契約の対象となった業務は,控 訴人の自動車部門が当時締結していた業務のほぼ大半であるから,本件各 業務委託契約の締結は,控訴人及びエル社の取締役会の決議が必要な「重 要な財産の処分」(会社法第362条4項1号。控訴人の「関係会社管理 規程」(甲62)6条,7条,9条,10条)に該当し,ひいては控訴人 の株主総会決議の必要な自動車部門の「事業譲渡」(会社法467条1項 1号,309条2項11号)に等しいものであるにもかかわらず,これら の決議はなされておらず,本件各業務委託契約の締結は,「脱法的MBO」 であるが,原判決はこの主張につき特に排斥する理由を述べておらず,審 理不尽の違法がある旨主張する。
しかしながら,原判決は,本件各業務委託契約の締結に当たり,控訴人 及びエル社の取締役会決議や控訴人の株主総会決議が存在しないことを前 提としても,上記各契約の締結が不法行為を構成するものではないと判断 していることは明らかであり,原判決には何ら審理不尽の違法はない。
なお,仮に本件各業務委託契約の締結が重要な財産の処分又は事業譲渡 に該当するとしても,被控訴人らにおいて,本件各業務委託契約を締結す ることを秘匿するなどして,控訴人及びエル社において取締役会決議を経 ることや控訴人において株主総会決議を経ることを妨げたといった事情が あれば格別,本件各業務委託契約は,エル社から派遣され,控訴人に対し ても影響力を持つBやDらも関与した交渉の結果,当時の状況を踏まえて 締結されたものであることは引用する原判決第4の2(1)のとおりである から,上記各決議がなされていないことは,エル社又は控訴人側の事情に すぎないというほかなく,上記各決議の不存在の事実が被控訴人らによる 共同不法行為を基礎付けるものとはいえない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 控訴人は,本件各業務委託契約の対象は,被控訴人Y1が担当していた 業務のうち同人しか対応できない業務や,控訴人の自動車部門に関する業 務であり,控訴人の不動産・住宅部門等に関する業務に関しては被控訴人 リブ社らとの間では業務委託契約は締結されていないから,自動車部門以 外の部門については,原判決が述べるような,社員の大量退職を防止して 相当額の売上げを保ちながら控訴人の事業を継続し,上場維持を図るとい う目的が達成できる形とはなっていない旨主張する。
しかしながら,本件各業務委託契約につき,上記目的で締結されたと認 定できることは,引用する原判決第4の2(1)のとおりである上に,業務委 託の対象となった業務自体,控訴人自身が,本来事業譲渡の対象とすべき 重要なものであったと主張しているようなものなのであるから,これらに ついて社員の大量退職を防止し,相当額の売り上げを保つことには十分な 意味があったといえる。したがって,控訴人の不動産・住宅部門等に関す る業務に関し業務委託契約が締結されていないとしても,そのことによっ て上記認定が左右されるものとはいえない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 控訴人は,控訴人の売上げは上場会社である当時のエル社の売上げの約 6割を占めており,粗利の5%しか受領しない形では到底上場を維持でき るはずがないから,控訴人から本件各業務委託契約を締結することを要請 するはずがない旨主張する。
しかしながら,引用する原判決第4の2(1)のとおり,本件各業務委託契 約は,被控訴人Y1らが控訴人を退職することが明らかとなると,これに 伴って控訴人所属のコンサルタントが大量に退職することが予想され,一 時に大量のコンサルタントが退職することとなると,控訴人の事業の継続 及び上場維持が危ぶまれる事態が想定された状況において締結されたもの であるし,引用する原判決第4の1(15)のとおり,本件各業務委託契約の 締結にかかわらず,控訴人の努力によりコンサルタントの退職を防げる可 能性があることも考慮されていたことに照らすと,控訴人が本件各業務委 託契約に定められた業務報酬を支払うことを含む契約を締結することが不 自然であったとはいない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
エ 控訴人は,被控訴人リブ社が建物賃料・電気代等の一部を負担している 点も,控訴人は,本社・事業所の家賃,水道光熱費,減価償却費,租税公 課,通信費,販売管理費等を負担している一方,被控訴人リブ社は「Y1 のマネジメントサポートフィー」62万円との名目で控訴人に対する債権 を計上し,これと対当額にて相殺し,その結果,家賃・清掃料・電気代込 みの30万円という安価で控訴人の施設を利用して本件各業務委託契約に 係る業務を実施していたのであるから,本件各業務委託契約における業務 報酬の割合が不相応に高額であると認められない根拠とはなり得ない旨主 張する。
しかしながら,そもそも,引用する原判決第4の1(11)のとおり,被控 訴人リブ社による建物賃料・電気代等の負担額は,控訴人と被控訴人リブ 社の合意により定められたものであり,その金額が不適正なものであるこ とを認めるに足りる証拠はない上,「Y1のマネジメントサポートフィー」 62万円についても,架空の業務に対する対価であるとか,金額が不適正 であると認めるに足りる証拠はないのであるから,両者が対当額で相殺さ れ,実際の支払額が減少したとしても,被控訴人リブ社が上記の負担をし ていることに何ら変わりはない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 争点(2)(被控訴人4名による営業秘密の使用等の不正競争行為ないし共 同不法行為の成否)について ア 控訴人は,控訴人にとってコンサルタントは重要な財産であり,控訴人 の各事業部門のコンサルタントのほとんど全てを被控訴人リブ社へ移籍さ せるのであれば,事業譲渡として控訴人の株主総会決議を経るか,少なく とも重要な財産の処分に該当するとして,エル社の取締役会の承認を得る べきであったこと,被控訴人Y3は,控訴人の「関係会社管理規定」(甲6 2)の存在を認識していたのであるから,少なくともエル社の取締役会の承 認手続を得るべきことは認識していたはずであるところ,会社を空洞化す る可能性があるにもかかわらず,役員や幹部社員が適正な手続をとらない で,自らが在籍した会社の従業員を大量に移籍させることを安易に認める べきではないことなどの事情を踏まえ,原審において,被控訴人Y1及び 被控訴人Y2は,控訴人の取締役ないし執行役員であったにもかかわらず, あらかじめ新会社を設立し,控訴人のコンサルタントのほとんど全員を引 き抜いてこれらを新会社に移籍させ,控訴人の業務を事実上「空っぽ」に したもので,これは会社財産の詐取であり,脱法的なMBOであって不法 行為を構成する旨主張したが,原判決はこの点について全く検討しておら ず,審理不尽の違法がある旨主張する。
しかしながら,原判決は,エル社の取締役会又は控訴人の株主総会決議 が存在しないことや,控訴人のコンサルタントが被控訴人リブ社に移籍し たことに関して,コンサルタントの移籍の経緯や,移籍したコンサルタン トの数を踏まえても被控訴人4名に不法行為が成立しない旨判断している ことは明らかであるから,原判決に何ら審理不尽の違法はない。
また,控訴人のコンサルタントが被控訴人らによる違法な引き抜き行為 によって退職したと認められないことは引用する原判決第4の3(2)のと おりであって,各コンサルタントはそれぞれの意思で退職したというほか なく,そうすると,コンサルタントの退職及び被控訴人リブ社への移籍が, 事業譲渡や重要な財産の処分に該当しないことは明らかであって,エル社 の取締役会決議や控訴人の株主総会決議の要否は問題とはなり得ない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 控訴人は,原判決は,本件確認書によって,被控訴人Y1らが控訴人在 籍中に著作した著作物を利用できる旨判断したが,そもそも被控訴人Y1 との間の本件確認書以外の確認書についてDはその内容及び締結を了解し ていないし,仮に,被控訴人Y1以外との間の確認書が有効に作成された としても,控訴人が知的財産権を保有する著作物等を無償で使用する以上, 被控訴人リブ社は著作物を無制限に利用できるものではなく,控訴人の顧 客を奪ったり,控訴人と被控訴人リブ社とを誤認混同させ得る形での使用 は,許諾された範囲を超えたものであることは明らかであり,原判決の上 記判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,そもそも当時控訴人の代表取締役であったわけでもない Dにおいて被控訴人Y1以外の者に係る確認書の内容等を確認していない ことが,これらの確認書の有効性に影響を与えるものとはいえない。この 点をおくとしても,引用する原判決第4の1(9)のとおり,Dが他のコンサ ルタントの退職に関しても被控訴人Y1に関するものと同様の契約を結ば ざるを得なかった旨を述懐していることに照らすと,控訴人において,被 控訴人Y1以外の者との間でも本件確認書と同内容の確認書を作成せざる を得ない状況にあったこともうかがえるから,控訴人と被控訴人Y1以外 の者との間の確認書も有効に締結されたものと認められる。そうすると, 被控訴人リブ社において,控訴人から移籍したコンサルタントが控訴人に 在籍していた際に作成した著作物を用いたからといって何らの不法行為を 構成するものではない。
また,引用する原判決第4の3(3)(本判決による訂正後のもの)におい て説示したところに照らすと,被控訴人リブ社が,控訴人の顧客を奪った り,控訴人と被控訴人リブ社とを誤認混同させ得る形で控訴人に帰属する 著作物を使用したとも認められない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(3) 被控訴人Y3の単独不法行為について(当審における予備的主張) 控訴人は,仮に本件各業務委託契約の締結及び強制執行認諾条項付きの公 正証書の作成につき被控訴人らによる共同不法行為が成立しないとしても, 被控訴人Y3は,忠実義務及び善管注意義務に反し,控訴人を退職した従業 員との間で締結する業務委託契約の業務報酬の割合を定めた「独立制度規程」 (甲36)に反することを認識しながら,業務報酬の割合が95%である本 件各業務委託契約を締結したほか,本件各業務委託契約等を締結することが, 重要な財産の処分に等しく,その締結に当たり,控訴人の取締役会の承認決 議が不可欠であったにもかかわらず,その承認決議を得ていないし,また, 「関係会社管理規程」(甲62)の存在を認識していたにもかかわらず,親 会社であるエル社の取締役会の決議を得ておらず,さらに,被控訴人リブ社 への人材等の財産の移転は事業譲渡であり,控訴人の株主総会決議を要する ものであるにもかかわらずこれを招集していないことから,被控訴人Y3に は,本件各業務委託契約の締結及び強制執行認諾条項付きの公正証書の作成 につき不法行為が成立する旨主張する。
しかしながら,本件各業務委託契約の締結や本件業務委託契約@ないしB 及びEの締結に際しての強制執行認諾条項付きの公正証書の作成が被控訴人 らによる不法行為を構成しないことは引用する原判決第4の2及び前記(1) のとおりであるから,被控訴人Y3単独の不法行為も成立する余地はない。
また,本件各業務委託契約は,エル社から派遣されたBやDらも関与した 交渉の結果,当時の状況を踏まえて締結されたものであることは引用する原 判決第4の2(1)のとおりであるし,原判決第4の1?に認定したとおり,控 訴人に所属するコンサルタントの大半が退職意向を示すという当時の状況に 照らしてみれば,本件各業務委託契約締結以外に有効な選択肢があったとは 認められないことからしても,本件各業務委託契約の締結や上記の公正証書 の作成に関し,被控訴人Y3において控訴人の取締役会やエル社の取締役会 の承認決議等を得ていないことが不法行為を構成し,控訴人に財産的損害を 与えたとはいえない。また,本件とは関わりなく退職したコンサルタントと の間で締結された業務委託契約においても,業務報酬の割合が80%程度に 上ったものがあること(乙イ29)からすると,上記「独立制度規程」は, 例外を許さないものであったとはいえないから,同規程違反をもって直ちに 不法行為であるとすることも困難である。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
3 結論 そうすると,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって,本件 控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官 大西勝滋
裁判官 神谷厚毅
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