審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成27ワ33398 不正競争行為差止等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成28ネ10028 不正競争行為差止等請求控訴事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成27ワ28027 不正競争行為差止等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
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事件 |
平成
27年
(ワ)
31898号
不正競争行為差止等請求事件
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原告 貴金属精錬加工センター 株式会社 同 訴 訟代理人弁護士大森剛 犬飼一博 被告株式会社TEG 同 訴 訟代理人弁護士高橋元弘 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2016/04/21 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,金のインゴットの精錬分割加工業務を行ってはならない。 2 被告は,インターネット上に公開されている別紙ウェブサイト目録記載の各 ウェブサイト及び検索サイト「YAHOO!」に掲載されているリスティング 広告を削除せよ。 3 被告は,原告に対し,1980万円及びこれに対する平成27年12月2日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,原告が行っているリスティング広告を利用し た節税を目的とする金の小分け加工サービス(以下「原告サービス」という。) が商品等表示であって,被告によるリスティング広告を利用した金インゴット の精錬分割加工サービス(以下「被告サービス」という。)の提供が不正競争 防止法2条1項1号(以下「1号」という。)の不正競争に当たると主張して, @同法3条1項及び2項に基づく被告サービスの提供の差止め及び広告の削 除,A同法4条及び5条2項に基づく損害賠償金1980万円及びこれに対す る不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成27年12月2日から 支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案で ある。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認められる事実) (1) 当事者(甲1,2) ア 原告は,貴金属の精錬等を業とする株式会社である。 イ 被告は,時計,宝石,貴金属等の新品,中古品及び質流れ品の買取り等 を業とする株式会社である。 (2) 原告サービスの内容 原告サービスは,金インゴットの小分け加工を内容とするものであり,集 客のためにインターネット上のリスティング広告(検索エンジンで検索した 際の検索結果ページに表示されるテキスト広告)を利用している。 (3) 被告の行為 被告は,平成27年4月以降,被告サービスを提供している。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 (1) 被告による被告サービスの提供が1号の不正競争に当たるか (原告の主張) 原告サービスは,リスティング広告及び原告サービスの特徴を表現した広 告文言等という視認性を有する表示と一体のものとして表示性を有すると ともに,出所識別機能も有するから,商品等表示に当たる。 原告サービスの全国における一般需要者の認知度は極めて高いから,周知 性を有する。 被告は原告サービスと全く同一の被告サービスを提供しており,これによ って需要者は原告と被告が同一の営業主体であるか,又は原告サービスと被 告サービスが同一の出所を有するものと誤信するから,被告サービスの提供 は原告サービスと混同を生じさせる行為である。 したがって,被告による被告サービスの提供は1号の不正競争に当たる。 (被告の主張) 原告サービスのような単なる広告方法やサービス内容自体は,1号にいう 商品等表示に当たらない。また,原告サービスは周知性を有しないし,需要 者が原告サービスと被告サービスを混同することもない。 したがって,被告による被告サービスの提供は1号の不正競争に当たらな い。 (2) 損害の額 (原告の主張) 被告は被告サービスの提供によって平成27年4月からの6か月間で少 なくとも1800万円の利益を得たので,原告は同額の損害を被った(不正 競争防止法5条2項)。また,弁護士費用相当額の損害は180万円とする のが相当である。したがって,原告は,合計1980万円の損害を被った。 (被告の主張) 争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点(1)(被告による被告サービスの提供が1号の不正競争に当たるか)につ いて 原告は,原告サービスが商品等表示に当たる旨主張するので,以下検討する。 1号にいう商品等表示とは人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の 容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいうから,その規定 上,表示を伴っていない営業方法(ビジネスモデル)や役務そのものが商品等 表示に当たらないことは明らかである。また,商品等表示がある事業者の商品 又は営業と他の事業者の商品又は営業を識別する表示であることからすれば, 何らかの表示であっても,それが自他識別又は出所表示の機能を有しない場合 には商品等表示に当たらないと解される。 これを本件についてみるに,原告サービスは営業方法そのものである上,原 告サービスで利用されているリスティング広告は一般に用いられている広告手 法の一つであり(乙9,10),原告サービスに関する広告文言(「インゴッ トの分割・小分け」,「小分け加工で税金対策」,「1kgバーの税金対策」, 「1kgを100g-10本に小分け」等。甲3,弁論の全趣旨)はいずれも 原告サービスの内容を説明したものにすぎないから,これらが自他識別機能又 は出所表示機能を有するとは認められない。したがって,原告サービスが商品 等表示に当たるということはできない。 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,い ずれも理由がない。 2 結論 よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 長谷川浩二 |
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裁判官 | 萩原孝基 |
裁判官 | 中嶋邦人 |