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関連ワード 他人の商品 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  意匠登録 /  営業上の利益 /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  商品形態模倣行為(2条1項3号) /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  損害額 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 3997号 損害賠償請求事件
原告A
同訴訟代理人弁護士 伊藤忠敬
被告 株式会社富士精密計器製作所
同訴訟代理人弁護士 川村正敏
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2004/05/14
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,金6000万円及びこれに対する平成16年3月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 争いのない事実等(証拠によって認定できる事実については,末尾括弧書内にそれぞれ記載した。) (1) 原告の特許出願 原告は,昭和57年ころ,直角水平器に関する次の内容の発明(以下「本件発明」という。)を行い,昭和57年3月30日,本件発明につき特許出願をした。
発明の名称 水準器 出願番号 昭和57-50151 出 願 日 昭和57年3月30日 公 開 日 昭和58年10月4日 特許請求の範囲 別紙公開特許公報の特許請求の範囲記載のとおり なお,原告は,昭和57年12月15日,稲葉産業株式会社(以下「稲葉産業」という。)に対し,本件発明に係る特許を受ける権利を譲渡したが(甲7),その後上記権利は消滅した。
(2) 意匠登録 株式会社稲葉経済研究所(以下「稲葉経済研究所」という。)は,原告を創作者とする以下の登録意匠(以下「本件意匠」という。)の意匠権者であった(甲3)。
出 願 日 昭和57年12月21日 登 録 日 昭和59年4月25日 登録番号 第629526号 意匠に係る物品 直角水平器 登録意匠 別紙意匠公報1記載のとおり なお,上記意匠権は,登録免許税の支払をしなかったことにより消滅した。
(3) 被告の行為 ア 被告は,昭和58年12月21日,意匠に係る物品を水準器とする別紙意匠公報2記載の意匠登録出願を行い,昭和62年2月12日,意匠登録を受けた(甲13,弁論の全趣旨。)。
イ 被告は,昭和58年12月30日,別紙公開実用新案公報記載の実用新案登録出願をした(甲14)。
ウ 被告は,昭和59年から(終期については争いがある。),別紙被告製品目録記載の直角水平器(以下「被告製品」という。)の製造販売をした(甲11,弁論の全趣旨)。
2 本件は,原告が,被告に対し,被告製品は本件発明及び本件意匠を製品化した直角水平器の形態を模倣したものであるなどと主張して,主位的に不正競争防止法2条1項3号及び同法4条に基づき,予備的に民法709条に基づき,損害額3億円の一部である6000万円の賠償を請求する事案である。
3 争点 (1) 不正競争防止法2条1項3号及び4条の適用の可否 (2) 不法行為の成否 (3) 損害の有無及びその額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(不正競争防止法2条1項3号及び4条の適用の可否)について 〔原告の主張〕 (1) 原告は,昭和58年4月ころから同年11月ころまでの間,本件発明に係る直角水平器(以下「原告製品」という。)を製造販売していた。
(2) 被告は,昭和59年から現在まで,継続して被告製品を販売している。
(3) 被告製品は,次の点において,原告製品の特徴とするところと完全に一致しており,原告製品の形態を模倣したものである。
ア 本体の構造が原告製品と全く同じ原理かつ形態であり,寸法も同一であり,重量も同じである。
イ 機械本体は,測定者が指を挿入して持ちやすくするための穴を有しているが,これは販売代理店である株式会社イネコウ(以下「イネコウ」という。)が発注した試作品及び商品と形状と寸法が同一である。
ウ 原告製品と同様に「NEXTER」の名称がついている。
エ イネコウのロゴマークが使用されている。
オ 機械本体に「INEKOH JAPAN」と表示されている。
〔被告の主張〕 (1) 不正競争防止法2条1項3号について ア 被告製品に原告製品と同一の「NEXTER」の名称が付され,イネコウのロゴマークが使用され,機械本体に「INEKOH JAPAN」と表示がされていることは認めるが,被告製品が原告製品を完全に模倣又は盗作したことは争う。
イ そもそも,原告製品の最初の販売は遅くとも昭和60年7月12日であるから,既に最初に商品を販売した日から3年を経過しており,不正競争防止法2条1項3号の適用はない。 (2) 不正競争防止法4条の適用の可否 ア 不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争について同法4条に基づいて損害賠償請求をなし得る者は,形態模倣の対象とされた商品を自ら開発商品化して市場に置いた者に限定されるところ,原告は原告製品を商品化していないから,この損害賠償請求をなし得ない。
イ 不正競争防止法(平成5年法律第47号)附則3条によれば,同法4条の規定は,同法施行前に開始した同法2条1項3号に掲げる行為に該当するものには適用されないとされているところ,被告製品の販売は,昭和59年から同60年4月ころまでであるから,同法4条の適用はない。
2 争点(2)(不法行為の成否)について 〔原告の主張〕 原告は,稲葉産業及び稲葉経済研究所の代表者であるBとともに本件発明の製品化を企画し,被告に原告製品の製造を依頼して,これを製造販売していたものであるが,被告は,昭和58年11月ころ,原告に対し,原告製品の本体接合部分の分離を防ぐことが困難であり,かつ,本体内部のガラス管の接合部分の水漏れを防ぐことが技術的に非常に困難であるため,ユーザーからの受注を止めてほしいとの虚偽の事実を申し向け,原告を錯誤に陥らせて原告製品の製造販売を断念させた。
また,被告は,本件意匠を盗用し,その説明とほぼ同様の説明によって,意匠登録を出願し,さらに,本件発明の原理を盗用して,実用新案登録を出願した。
その上で,被告は,昭和59年初めころから全国規模で原告製品と全く同一形態の直角水平器を販売した。
被告のこれらの行為は原告に対する不法行為である。
〔被告の主張〕 原告製品の製造及び販売が断念されたことは認めるが,被告が原告に対して原告の主張するような虚偽の事実を申し向け,原告を錯誤に陥らせたことは否認する。
被告が被告製品を製造したのは昭和59年ないし昭和60年ころであり,昭和60年4月ころには製造を中止して,以後被告製品を製造していない。
原告は,原告製品に係る特許出願の権利などの一切の権利及びその変形たる損害賠償請求権をB,稲葉産業又は稲葉経済研究所に対して譲り渡したか,又は,本件発明に係る特許を受ける権利及び本件意匠に係る意匠権等は,登録免許税の不払等によって消滅した。 したがって,原告は,原告製品あるいは被告製品に関し,特許権,意匠権,商標権など,何らの知的財産権も有するものではなく,被告の意匠登録及び実用新案登録出願は,原告の権利に抵触しない。
3 争点(3)(損害の有無及びその額)について 〔原告の主張〕 被告は,被告製品を1基当たり8000円の小売価格で販売しており,その原価は1基当たり1700円である。被告製品の販売個数は5万基を下らないから,原告が被告の不正競争防止法2条1項3号に該当する行為又は不法行為によって受けた損害は3億円を下らない。この3億円のうちの一部6000万円の支払を求める。
〔被告の主張〕 争う。原告は原告製品を商品化したことも製造したこともなく,イネコウ,稲葉産業又は稲葉経済研究所のいずれも遅くとも昭和61年ころには直角水平器の販売を中止したから,原告には原告製品に関して営業上の利益はなく,損害がない。
当裁判所の判断
1 争点(1)(不正競争防止法2条1項3号及び4条の適用の可否)について (1) 不正競争防止法2条1項3号について 不正競争防止法2条1項3号は,最初に販売された日から起算して3年間,一定の要件の下で商品の形態を保護する規定であるところ,原告の主張によっても,原告が最初に原告製品を販売したのは,昭和58年4月であり,最初に販売された日から起算して既に3年を経過していることは明らかであるから,同号には当たらない。
(2) 不正競争防止法4条の適用の可否について また,不正競争防止法(平成5年法律第47号)附則3条によれば,同法4条の規定は,同法施行前に開始した,同法2条1項3号に掲げる行為に該当する行為を継続する場合には適用されないところ,原告の主張によっても,被告製品の販売が開始されたのは昭和59年初めころであり,それが現在まで継続しているというのであるから,同法4条の適用はないといわざるを得ない。
(3) よって,不正競争防止法2条1項3号,同法4条に基づく損害賠償請求は,主張自体失当であり,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
2 争点2(不法行為の成否)について 本件全証拠によっても,被告が原告に対し原告の主張するような虚偽の事実を申し向け,原告を錯誤に陥らせて原告製品の製造販売を断念させたことを認めるに足りる証拠はない。
また,本件発明に係る特許を受ける権利は,原告から稲葉産業に譲渡され,本件意匠に係る意匠権は,稲葉経済研究所が有していたものであり,のみならず,これらの権利が既に消滅したことは,前記第2の1認定のとおりである。したがって,原告は,本件発明あるいは本件意匠に関し,何らかの権利を有するものとはいえないから,被告の意匠登録及び実用新案登録出願は,原告の権利を侵害するものではない。他に被告の意匠登録及び実用新案登録出願が原告の権利を侵害したと認めるに足りる証拠はない。
さらに,被告製品の販売が不正競争防止法2条1項3号に該当せず,同法4条が適用されないことは,前記1のとおりである。このように,不正競争防止法(平成5年法律第47号)施行前の他人の商品の形態を模倣した商品を販売する行為については,同法4条の規定が適用されないが,これは同法施行前に違法ではなかった行為を損害賠償等の対象とはしない趣旨と解される。そして,市場における競争は本来自由であるべきところ,不正競争防止法2条1項3号に該当しない場合において,民法709条所定の不法行為が成立するためには,ことさら相手方に損害を与えることを意図して,法律上保護に値する相手方の営業上の利益を,著しく不公正な方法により侵害したといい得ることが必要であると解される。本件において,被告がことさら原告に損害を与えることを意図して,著しく不公正な方法により被告製品の販売を行って,法律上保護に値する原告の営業上の利益侵害したと認めるに足りる証拠はない。
他に不法行為を基礎づける事実を認めるに足りる原告の主張・立証はないから,その余の点について判断するまでもなく,不法行為を根拠とする原告の請求も理由がない。
3 結論 以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用は原告の負担とすることとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 東海林保
裁判官 田邉実
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