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事件 平成 15年 (ワ) 2351号 不正競争行為差止等請求事件
原告 株式会社サンコー
訴訟代理人弁護士 牛田利治
同 粕谷誠
同 森岡利浩
補佐人弁理士 河野登夫
同 河野英仁
同 岡田充浩
同 門脇俊雄
同 岡田敏夫
被告 富士パックス販売株式会社
被告 株式会社ジェトー
被告ら訴訟代理人弁護士 塩見渉
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2004/05/13
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告富士パックス販売株式会社は、原告に対し、金445万2396円及びこれに対する平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社ジェトーは、原告に対し、金49万6990円及びこれに対する平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、原告に生じた費用の5分の1及び被告富士パックス販売株式会社に生じた費用の3分の1を被告富士パックス販売株式会社の負担とし、原告に生じた費用の20分の1及び被告株式会社ジェトーに生じた費用の10分の1を被告株式会社ジェトーの負担とし、原告及び被告らに生じたその余の費用を原告の負担とする。
5 この判決は、第1、第2項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨 (1) 被告富士パックス販売株式会社は、原告に対し、金1170万円及びこれに対する平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被告株式会社ジェトーは、原告に対し、金877万5000円及びこれに対する平成15年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は被告らの負担とする。
(4) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
1 請求原因 (1) 当事者 原告は、日用雑貨の製造、販売及び輸入等を目的とする株式会社である。
被告富士パックス販売株式会社(以下「被告富士パックス」という。)は、家庭用雑貨等の販売を営む株式会社であり、被告株式会社ジェトー(以下「被告ジェトー」という。)は、家庭用雑貨等の輸入、販売等を営む株式会社である。
(2) 保護主体 ア サンメイト株式会社(以下「サンメイト」という。)、エムエイシイサンコー株式会社(以下「エムエイシイサンコー」という。)及びサンコーテリア株式会社(以下「サンコーテリア」という。)は、いずれも原告の関連会社である。
サンメイトは、資金と労力等を投下して別紙原告製品目録記載の階段マット(以下「原告製品」という。)を商品化し、平成12年7月10日から原告製品を製造販売していた。
エムエイシイサンコーは、サンメイトから階段マットの開発を委託されて別紙特許目録記載の特許権に係る発明をし(以下、別紙特許目録記載の特許権を「本件特許権」といい、本件特許権に係る発明を「本件発明」という。)、本件特許権の出願を行い、デザイン料、企画管理料の支払を受けたが、原告製品の商品化に資金と労力を投下したのはサンメイトである。
エムエイシイサンコーは、本件発明についての特許を受ける権利をサンコーテリアに譲渡したことはない。本件特許権がサンコーテリアの名義で登録されたのは錯誤によるものであり、本件特許権は、平成15年7月25日付けで登記名義人の表示変更によりエムエイシイサンコー名義となり、同年8月13日付けで原告名義に移転登録された。
イ 原告は、平成14年4月1日、サンメイトを吸収合併した。それ以後は、原告が原告製品の製造販売を行っている。原告がサンメイトを吸収合併したことにより、原告が不正競争防止法2条1項3号により保護される商品形態の主体となった。
原告は、平成15年4月1日、エムエイシイサンコーをも吸収合併したから、エムエイシイサンコーが不正競争防止法2条1項3号により保護される商品形態の主体であったとしても、原告は、その主体の地位を有するに至った。
特許権と不正競争防止法2条1項3号とは、保護の対象や要件が全く相違し、特許の名義人が誰かということと、保護されるべき商品形態の主体が誰かということは別の問題であるから、本件特許権の登録時の名義がサンコーテリアになっていたとしても、そのことにより、サンコーテリアが同法2条1項3号により保護される商品形態の主体であるとはいえない。
(3) 原告製品 原告製品は階段マットであり、その形態は、別紙原告製品目録記載のとおりである。なお、原告製品は、15枚を1セットとして販売されている。
(4) 被告らの行為 ア 被告富士パックスは、別紙被告製品目録記載の階段マット(以下「被告製品」という。)を通信販売会社等に販売した。なお、被告製品は、15枚を1セットとして販売されている。
イ 被告ジェトーは、被告製品を輸入し(ただし、輸入名義は被告富士パックスである。)、被告富士パックスに販売した。被告ジェトーの被告製品の輸入名義が被告富士パックスとなっているのは、LC(輸入信用状)の開設が困難であったため、いわゆる代行輸入をしたと考えられる。
(5) 被告製品 被告製品は階段マットであり、その形態は、別紙被告製品目録記載のとおりである。
(6) 不正競争 ア 形態の類似 被告製品の形態は原告製品の形態と類似している。
模倣 原告製品と被告製品はその形態が「うりふたつ」と言えるほど似ており、原告製品が市場で販売された後に被告製品が販売されており、また、原告製品は市場において誰でも入手可能であったから、被告製品は、原告製品に依拠してこれを模倣したものである。
ウ 不正競争への該当性 被告らの行為は、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争に該当する。
(7) 営業上の利益侵害 被告らの行為により、原告は営業上の利益侵害された。
(8) 故意過失 被告らには、不正競争を行うにつき、故意又は重過失があった。
(9) 損害 〔主位的主張〕 ア 被告富士パックスの利益 (ア) 被告富士パックスの推定販売価格 1ケース単価 4680円 (イ) 被告富士パックスの被告ジェトーからの仕入価格 3510円 (ウ) 被告富士パックスの1ケース当たりの推定利益額 1170円(4680円-3510円=1170円) (エ) 被告富士パックスの推定販売数量 1万ケース (オ) 被告富士パックスの利益額 1170万円(1170円×1万ケース=1170万円) イ 被告ジェトーの利益 (ア) 被告ジェトーから被告富士パックスへの推定卸価格 1ケース単価 3510円 (イ) 被告ジェトーの1ケース当たりの推定利益額 877.5円(利益率25%。3510円×0.25=877.5円) (ウ) 被告ジェトーの推定販売数量 1万ケース (エ) 被告ジェトーの利益額 877万5000円(877.5円×1万ケース=877万5000円) 〔予備的主張〕 ア 被告富士パックスの利益 (ア) 販売数量 被告富士パックスは、平成15年2月末日までに、被告製品を3441セット販売した。
(イ) 売上額 被告製品の販売価格は、1セット当たり平均3158円であった。
被告富士パックスの被告製品の売上額は1086万6678円(3158円×3441セット=1086万6678円)であった。
(ウ) 仕入額 被告富士パックスの被告製品の仕入価格は、1セット当たり1813円であった。
被告富士パックスの被告製品の仕入額は623万8533円(1813円×3441セット=623万8533円)であった。
(エ) 利益額 a 被告富士パックスが被告製品の販売により受けた利益は、売上額から仕入額を差し引いて求めることができ、その額は462万8145円(1086万6678円-623万8533円=462万8145円)である。
b 被告らは、利益を算出するに当たって売上額から差し引く経費のうち直接経費について、運送料41万2920円、カタログ掲載料50万円を主張するが、これらについては、支出を裏付ける根拠がない。
被告らは、直接経費について、販売店名が記載されたちらしの印刷費用を含めてちらし代として主張するが、販売店名が記載されたちらしの印刷費用は、本来、その販売店の負担とすべきものであり、被告富士パックスは販売店からその償還を受けている可能性がある。
被告らは、直接経費について、被告製品の化粧箱の製版代を主張するが、化粧箱には被告ジェトーの名が記載されているから、被告富士パックスは、
これについて被告ジェトーから償還を受けている可能性がある。
被告らは、直接経費として、上記以外の経費を差し引くことも主張するが、証拠として提出された請求書等の記載の多くが塗りつぶされているため、
それらが被告製品の経費であったかどうか不明である。
被告らは、利益を算出するに当たって売上額から差し引く経費として一般管理費40万4023円も主張するが、これは、被告製品の製造販売に必要な費用ではないから、差し引くべきではない。
イ 被告ジェトーの使用料相当額 (ア) 輸入及び販売数量 被告ジェトーは、被告製品を4600セット輸入し、これを被告富士パックスに販売した。
(イ) 輸入額及び売上額 被告ジェトーは、被告製品を、輸入価格と同額で被告富士パックスに販売した。
被告ジェトーの輸入価格及び販売価格は、1セット当たり1813円であった。
被告ジェトーの輸入額及び売上額は、いずれも833万9800円(1813円×4600セット=833万9800円)であった。
(ウ) 使用料率 原告製品の形態の使用に対し受けるべき金銭の額は、売上額の5%である。
(エ) 使用料相当額 被告ジェトーによる被告製品の輸入及び販売についての使用料相当額は、41万6990円(833万9800円×0.05=41万6990円)である。
弁護士費用等 被告らは、原告の警告にもかかわらず不正競争を行い、任意に不正競争を停止せず、損害賠償義務を履行しなかったから、原告は本件訴訟を提起せざるを得なかった。各被告の不正競争と相当因果関係にある弁護士費用、弁理士費用は、
それぞれ50万円であり、合計100万円である。
(10) 結論 よって、原告は、不正競争防止法2条1項3号4条に基づき、被告富士パックスに対し、損害金1170万円、被告ジェトーに対し、損害金877万5000円及び上記各金員に対する不正競争の後である平成15年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否 (1) 請求原因(1)(当事者)の事実は認める。
(2)ア(ア) 請求原因(2)(保護主体)アの事実は不知。
(イ) エムエイシイサンコーは、平成12年6月30日、本件発明につき特許出願を行った。原告製品は、その構成、形態が、本件特許権に係る公開特許公報(特開2002-17551、乙第1号証)及び特許公報(乙第2号証)に記載された構成、図面と同じであるから、本件発明の実施品と考えられるが、本件特許権の出願日と原告製品の販売開始日が近接していることから、原告製品の形態を開発し、不正競争防止法2条1項3号によって保護される主体は、本件特許権の出願人であるエムエイシイサンコーであると考えられる。仮にサンメイトが商品化したとしても、本件特許権の特許出願の願書に添付された明細書、図面に記載された商品形態をそのまま利用したにすぎないから、その創作につき何らの寄与はなく、同法2条1項3号によっては保護されない。原告製品は本件発明の実施品であるから、原告製品の商品形態に関して何らかの権利があるとしても、その権利は本件特許権に付随するものと考えるべきである。
エムエイシイサンコーは、原告に吸収合併される前に、本件発明についての特許を受ける権利をサンコーテリアに譲渡していたから、不正競争2条1項3号により保護される主体としての地位もサンコーテリアに移転しており、原告には保護される主体としての地位はない。
イ 請求原因(2)イの事実のうち、原告が、平成14年4月1日、サンメイトを吸収合併したことは認め、その余は不知。
(3) 請求原因(3)(原告製品)の事実は認める。
(4)ア 請求原因(4)(被告らの行為)アの事実は認める。
イ 請求原因(4)イの事実のうち、被告ジェトーが被告製品を輸入し、被告富士パックスに販売したことは認めるが、その余は否認する。
(5) 請求原因(5)(被告製品)の事実は認める。
(6)ア 請求原因(6)(不正競争)ア(形態の類似)は認める。
イ 請求原因(6)イ(模倣)の事実は否認する。
ウ 請求原因(6)ウ(不正競争への該当性)は争う。
不正競争防止法2条1項3号模倣行為における不正競業的性格は、先行者が資金・労力を投下して商品化し市場に提供した成果を、模倣者が自ら資金・労力を投下することなく模倣して、競争上不公正な有利性を有することをいうものである。したがって、同法2条1項3号によって保護されるのは、競業価値を備えた商品の形態であり、模倣されることによっても競争上不公正が生じると評価されないような些細な新形態、すなわち競業価値のない商品の形態は、保護されない。
原告製品の形態は、階段に載置するマットとして格別特異な形態ではなく、蛍光マット部の形状も、マット等の敷物に通常施される模様の類と大差ない。
原告製品の形態についてあえて特徴的な点を挙げれば、蛍光マット部が二等辺三角形状になっていることであるが、このような形態は本件発明の特許出願の願書に添付された明細書中に開示されており、しかも、同明細書によれば、蛍光マット部は二等辺三角形状に限定されるものではなく、矩形等、他の形状に形成してもよいとされているから、蛍光マット部の形状を含め、原告製品の形態には競争価値がない。また、原告製品の形態は、技術的機能に由来する必然的な形態であるから、その構成が本件特許権によって保護されるべきものである点は別として、商品形態自体は何らの価値がなく、保護の対象とならない。
(7) 請求原因(7)(営業上の利益侵害)は争う。
原告は、原告製品を「吸着シリーズ〜マット〜」の一商品として販売しており、マットが床面等に吸着し又は滑止めを備えていることにより安全であるという構成、機能をセールスポイントとしている。
エムエイシイサンコーが被告富士パックスに送付した平成14年2月5日付け通知書においても、原告製品に係る出願中の特許を受ける権利が根拠とされているのみであり、原告製品の形態については何ら触れられていない。
被告富士パックスも、被告製品を販売するについて、「蛍光色のマーク付で、しかも滑り止め付きで非常に安全です。」のように、商品の形態ではなく、その構成、機能を強調している。
このように、原告製品は、その構成、機能の点で顧客吸引力を有しており、その形態は格別の特徴がなく、ありふれており、販売について何らの寄与もない。
したがって、被告製品が原告製品の形態を模倣したものであったとしても、原告の営業上の利益侵害されておらず、損害も発生していない。
(8) 請求原因(8)(故意過失)は争う。
(9) 請求原因(9)(損害)〔主位的主張〕ア(被告富士パックスの利益)及びイ(被告ジェトーの利益)の各事実は否認する。
〔予備的主張〕について ア(ア) 請求原因(9)(損害)ア(被告富士パックスの利益)(ア)ないし(ウ)の事実は認め、(エ)は争う。
(イ) 被告富士パックスが被告製品の販売に必要とした経費は、次のとおりである。
a 直接経費 @ ちらし(販売店名が記載されたちらしを含む)代 38万0992円(消費税相当額1万8142円を含む) A 製版代、製版デュープ代 10万0275円(消費税相当額4775円を含む) B 化粧箱の製版代 10万5000円(消費税相当額5000円を含む) C 倉庫料 35万7399円(荷降料1万8000円、保管料30万8580円及び荷役料1万3800円の合計34万0380円と消費税相当額1万7019円を含む) D 運送料 41万2920円 E カタログ掲載料 50万円 直接経費の合計(@ないしEの合計)は185万6586円である。
b 一般管理費 被告富士パックスの平成14年の決算によれば、売上高は45億9209万3726円であり、一般管理費は、給料・手当1億4041万9670円、旅費交通費1977万5786円、通信費1053万9915円の合計1億7073万5371円であるから、売上高に占める一般管理費の割合は3.718%である。
被告製品についての一般管理費は、被告製品の売上額1086万6678円の3.718%に当たる40万4023円である。
(ウ) 被告富士パックスが被告製品の販売により得た利益は、売上額1086万6678円から仕入額623万8533円、直接経費185万6586円及び一般管理費40万4023円を差し引いた236万7536円である。
(エ) 原告製品の形態が、競業価値のないありふれた没個性的な形態であること、原告製品に顧客吸引力があるとしても、それは専ら本件発明の構成を備えることによるものであり、形態によるものではないことなどを勘案すると、被告製品の形態がその販売に寄与する割合は最大でも20%である。
したがって、被告富士パックスが被告製品を販売したことにより原告が被った損害は、同被告が得た利益の20%に当たる47万3508円を超えることはない。
イ(ア) 請求原因(9)イ(被告ジェトーの使用料相当額)(ア)、(イ)の事実は認め、(ウ)、(エ)は争う。
(イ) 被告製品は、台湾の東吟貿易有限公司(以下「東吟貿易」という。)が製造した。被告ジェトー代表者と東吟貿易代表者は義理の兄弟の関係にあり、被告ジェトーは、東吟貿易の日本における販売代理店である。被告ジェトーは、被告富士パックスに被告製品の取引を申し入れ、被告富士パックスが被告製品を販売することとなった。被告ジェトーは、被告製品の輸入発売元として取引に介在したが、入出荷及び代金の決済は、被告富士パックスと東吟貿易との間で直接行われ、被告ジェトーは利益を得ていない。被告ジェトーの行為が原告の営業上の利益侵害し損害を発生させたとはいえない。
ウ 請求原因(9)ウ(弁護士費用等)は争う。
3 抗弁(同種の商品が通常有する形態) 同種の商品としてありふれた形態は、没個性的な形態であり、競業価値はないから、不正競争防止法2条1項3号かっこ書の「同種の商品が通常有する形態」に該当する。
原告製品の形態は、形態として格別工夫のみられるものではなく、一見してありふれた形態である。
原告は、サンメイトがエムエイシイサンコーに原告製品の開発を委託し、デザイン料、企画管理料を支払ったと主張するが、これらは、原告製品の形態を開発するための対価とは考えられず、本件発明やその特許出願の対価と考えられる。
また、原告製品の形態は、原告の商品である「OK-07おくだけ階段マット」の形態に三角形状の柄を入れただけのものである。階段マットといっても、通常のマットと形態において何ら異なるものではなく、それに三角形状という単純な図柄を入れることは、誰でも容易に思いつくものであり、その形態を作出するために特別の資金や労力を投下するほどのものではない。
したがって、原告製品の形態は、不正競争防止法2条1項3号かっこ書の「同種の商品が通常有する形態」に該当する。
4 抗弁に対する認否 抗弁は争う。
理 由1 請求原因(1)(当事者)の事実は当事者間に争いがない。
2 請求原因(2)(保護主体)について検討する。
(1) 甲第8号証、第10、第11号証、第12号証及び第13号証の各1、2、
第14号証、第15号証の1、2、第16、第17号証及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
ア 原告、サンメイト、エムエイシイサンコー及びサンコーテリアは、同一人が複数の会社の役員を兼ねるなどの関連のある同一グループに属する会社であった。
イ サンメイトは、平成11年8月ころ、エムエイシイサンコーに新規な階段マットの開発を委託した。これに応じて、エムエイシイサンコーの代表取締役であったA(原告代表者)が、階段マットに係る本件発明をなし、エムエイシイサンコーは、平成12年6月30日、本件発明につき特許出願をし、同月ころ、本件発明を実施した原告製品を開発した。
サンメイトは、エムエイシイサンコーに対し、原告製品の開発料として、
平成12年7月4日、33万1630円を支払ったほか、毎月、サンメイトの月当たりの売上額の1%に当たる金額を支払っている。
ウ サンメイトは、平成12年7月10日、原告製品の製造販売を開始した。
エ エムエイシイサンコーは、平成14年3月末ころ、本件発明の特許出願の出願代理人に対し、「社名及び所属変更内容」と題する文書を送付したが、同文書は、「エムエイシイサンコー株式会社」の社名が「サンコーテリア株式会社」に変更されるという趣旨にも読み得るものであった。そこで、出願代理人は、特許庁長官に対し、「エムエイシイサンコー株式会社」の名称を「サンコーテリア株式会社」に変更する旨の平成14年5月14日付けの名称変更届を提出した。この名称変更届により、上記特許出願の出願人の名称は「サンコーテリア株式会社」に変更された。そして、本件特許権は、平成15年3月14日、「サンコーテリア株式会社」の名義で設定登録された。しかし、実際は、「エムエイシイサンコー株式会社」の名称が「サンコーテリア株式会社」に変更されたのではなく、上記名称変更は錯誤によるものであった。
オ 原告は、サンメイトを吸収合併し、平成14年4月1日、その旨の登記がされた。それ以後、原告が原告製品の製造販売を行っている。また、原告は、エムエイシイサンコーを吸収合併し、平成15年4月1日、その旨の登記がされた。
カ 前記エのとおり、「エムエイシイサンコー株式会社」の名称を「サンコーテリア株式会社」に変更する旨の名称変更は錯誤によるものであったので、エムエイシイサンコーは、代理人を通じて、特許庁長官に対し、本件特許権の登録名義人の表示を「サンコーテリア株式会社」から「エムエイシイサンコー株式会社」に変更する旨の平成15年7月8日付けの登録名義人の表示変更登録申請書を提出し、
この申請は、同月10日、受け付けられた。
また、原告は、原告がエムエイシイサンコーを吸収合併し、本件特許権が原告に移転したことから、代理人を通じて、特許庁長官に対し、本件特許権の登録名義を原告に移転する旨の平成15年7月15日付けの合併による移転登録申請書を提出し、この申請は、同月17日、受け付けられた。
本件特許権については、上記の各申請により、平成15年7月25日付けで、登録名義人の表示を「サンコーテリア株式会社」から「エムエイシイサンコー株式会社」に変更する旨の登録がされ、同年8月13日付けで、本件特許権を原告に移転する旨の移転登録がされた。
以上の事実が認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。
(2) 上記認定事実によれば、サンメイトは、エムエイシイサンコーに原告製品の開発を委託して開発料を支払い、平成12年7月10日、原告製品の製造販売を開始したから、サンメイトが原告製品を商品化したものと認められ、不正競争防止法2条1項3号による保護の主体であるものと認められる。そして、上記認定事実によれば、原告は、サンメイトを吸収合併し、平成14年4月1日、その旨の登記がされたから、原告が、同法2条1項3号による保護の主体としての地位を承継したものと認められる。
ところで、上記認定事実によれば、本件特許権の登録名義がサンコーテリアとされたのは錯誤によるものであり、サンコーテリアが原告製品の開発に関与したことを認めるに足りる証拠はないから、サンコーテリアが不正競争防止法2条1項3号による保護の主体であると認めることはできない。
また、仮に、サンメイトから委託を受けて原告製品の開発行為を実際に行ったエムエイシイサンコーが原告製品を商品化したものであり、不正競争防止法2条1項3号による保護の主体であるとみる余地があるとしても、上記認定事実によれば、原告は、エムエイシイサンコーを吸収合併し、平成15年4月1日、その旨の登記がされたから、原告が、同法2条1項3号による保護の主体としての地位を承継したこととなる。
(3) したがって、原告は、原告製品について、不正競争防止法2条1項3号による保護の主体であるものと認められる。
3 請求原因(3)(原告製品)の事実は、当事者間に争いがない。
4(1) 請求原因(4)(被告らの行為)アの事実は、当事者間に争いがない。
(2) 請求原因(4)イの事実のうち、被告ジェトーが被告製品を輸入し、被告富士パックスに販売したことは、当事者間に争いがない。
乙第3号証、第4号証の2ないし4及び弁論の全趣旨によれば、輸入者の名義は被告富士パックスであることが認められる。
5 請求原因(5)(被告製品)の事実は、当事者間に争いがない。
6(1) 請求原因(6)(不正競争)ア(形態の類似)は、当事者間に争いがない。
(2) 請求原因(6)イ(模倣)について検討する。
甲第1号証、第7号証及び弁論の全趣旨によれば、原告製品と被告製品は、
その形態が極めてよく似ていることが認められる。また、前記2(1)ウ認定のとおり、原告製品は、平成12年7月10日から販売されたものであり、他方、乙第4号証の2ないし4によれば、被告製品は、平成14年2月18日ころ台湾から輸入されたことが認められ、乙第5ないし第47号証(各号証の枝番をすべて含む。)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品は、同月19日ころ以降、被告富士パックスから通信販売会社等に販売され、納品されたことが認められる。さらに、原告製品が販売される前に、原告製品と同様の形態の階段マットが存在したことを認めるに足りる証拠はない。これらの認定事実によれば、被告製品は原告製品を模倣したものと認めるのが相当である。
(3) 請求原因(6)ウ(不正競争への該当性)及び抗弁(同種の商品が通常有する形態)について検討する。
甲第1号証及び弁論の全趣旨によれば、滑り止めを目的として床面に置かれるマットとしては、平面視矩形状のマットが従前から存在したことは認められるが、階段の滑り止めを目的として踏面に置かれる階段マットでは、別紙原告製品目録記載の原告製品の形状のA(長辺4に沿う折り目7を形成して、細長い折り曲げ部5が設けられ、該折り曲げ部5を階段縁面に接触させる部分としている。)及びB(他方の長辺3側を階段上面に載置される踏み部2としている。)を備えたマットは、原告製品及び被告製品のほか、原告の商品である「OK-07おくだけ階段マット」の存在が認められるだけであり、それ以外に、同様の形状を備えたマットが存在することをうかがわせる証拠はない。原告製品は、原告の商品である「OK-07おくだけ階段マット」が備えていた別紙原告製品目録記載の原告製品の形状の@ないしBに加え、更にC(該折り曲げ部5から所定間隔を隔てた位置に、底辺6を折り目7に平行に配した二等辺三角形状のマット嵌め込み穴8が設けられている。)及びD(マット嵌め込み穴8には、同様の三角形状のマット9がはめ込まれている。)を備えており、原告製品が製造販売される以前に、原告製品と同様の形状のマットが存在したことをうかがわせる証拠はない。
このように、原告製品の形態は、従前のマットにはなかった新規な形態であったことが認められるから、不正競争防止法2条1項3号かっこ書の「同種の商品が通常有する形態」には該当せず、原告製品は、その形態により競争上有利な地位を占めることができたものと推認され、それ故にこそ、被告製品は、原告製品と極めてよく似た形態を採用したものと推認される。
したがって、原告製品の形態を模倣した被告製品の輸入、販売は、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争に該当するものと認められ、前記4(1)(請求原因(4)ア)のとおり被告富士パックスが被告製品を通信販売会社等に販売したこと、
前記4(2)のとおり被告ジェトーが被告製品を輸入し、被告富士パックスに販売したことは、いずれも不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争に該当するものと認められる。
7 請求原因(7)(営業上の利益侵害)について検討する。
(1) 前記6(3)認定のとおり、被告富士パックスによる被告製品の販売、被告ジェトーによる被告製品の輸入、販売は、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争に該当し、それにより原告の営業上の利益侵害されたものと認められる。
(2)ア 被告らは、原告製品は、その構成、機能の点で顧客吸引力を有しており、
その形態は格別の特徴がなく、ありふれており、販売について何らの寄与もないから、被告製品が原告製品の形態を模倣したものであったとしても、原告の営業上の利益侵害されておらず、損害も発生していない旨主張する。
イ 甲第1号証によれば、原告作成のカタログには、原告製品が「吸着シリーズ〜マット〜」の一商品として掲載されていること、原告製品を含め、「吸着シリーズ〜マット〜」の各商品の品質の項には、裏面がアクリル樹脂である旨記載されていることが認められ、「吸着シリーズ」という名称、及びマットの裏面がアクリル樹脂である旨の記載により、原告製品を含めた「吸着シリーズ〜マット〜」の各商品については、マットの裏面が床面等に吸着して滑らず、安全であることが、商品としての優れた特徴として宣伝されていることが認められる。しかし、それとともに、原告作成のカタログには、原告製品を階段に設置した状態の写真も掲載されていることが認められ、原告製品の形態も宣伝されていることが認められる。
また、甲第2号証の1、2によれば、エムエイシイサンコーは、被告製品を販売している被告富士パックスに対し、2002年(平成14年)2月5日付け通知書をもって、特許出願中の本件発明について、特許法65条1項の規定による警告を行い、同通知書は、同月7日、被告富士パックスに到達したことが認められる。他方、甲第3号証の1ないし3によれば、エムエイシイサンコーは、被告富士パックスに対し、同年5月17日付け警告書をもって、被告製品が原告製品を模倣した商品であり、被告製品の販売が不正競争防止法2条1項3号に該当するので、
被告製品の販売の停止、回収を求める旨の警告を行い、同警告書は、同月18日ごろ被告富士パックスに到達したことが認められ、甲第4号証によれば、被告富士パックスは、これに対し、仕入先の被告ジェトーに連絡するよう回答したことが認められる。甲第6号証の1ないし4によれば、エムエイシイサンコーは、被告ジェトーに対し、同年6月7日付け警告書をもって、被告富士パックスに対して行った警告と同趣旨で、被告ジェトーが被告富士パックスに被告製品を販売する行為は不正競争防止法2条1項3号に該当するとの警告を行い、同警告書は、同月8日ごろ被告ジェトーに到達したことが認められる。このように、原告は、特許法65条1項の警告のみならず、被告製品が原告製品を模倣したものであることについて、不正競争防止法2条1項3号による警告も行っていたものである。
さらに、甲第7号証によれば、被告製品の包装箱には、「蛍光色のマーク付で、しかも滑り止め付きで非常に安全です。」と記載されているが、それとともに、被告製品を階段に設置した状態の写真も大きく掲載されていることが認められ、被告製品の販売に当たっても、床面上で滑らないなどの機能のほか、商品の形態も重視されていることが認められる。
これらの認定事実に照らすと、原告製品は、その構成、機能の点のみならず、形態においても顧客吸引力を有しており、原告は、被告らに対して不正競争防止法2条1項3号該当行為があるとの警告を行い、形態模倣による不正競争を停止しようとしていたことが認められる。したがって、原告製品の形態を模倣した被告製品の販売により、原告の営業上の利益侵害され、損害が発生したものと認められ、前記アの被告らの主張は採用することができない。
8 請求原因(8)(故意過失)について検討する。
前記1(請求原因(1))のとおり、被告らは、家庭用雑貨等の輸入又は販売を営む株式会社であり、また、前記6(2)認定のとおり、被告製品は原告製品を模倣したものであり、甲第1号証、第15号証の2及び弁論の全趣旨によれば、原告は、その会社規模等からして、原告製品を相当程度広く宣伝し、販売していたものと推認されるから、これらの事実に照らすと、被告富士パックス及び被告ジェトーには、
被告製品の輸入、販売の当初から、不正競争を行うにつき、故意又は少なくとも重過失があったものと認められる。
9(1) 請求原因(9)(損害)〔主位的主張〕ア及びイの各事実を認めるに足りる証拠はない。
(2) 請求原因(9)〔予備的主張〕ア(被告富士パックスの利益)について検討する。
ア 請求原因(9)ア(ア)ないし(ウ)の事実は当事者間に争いがない。
この当事者間に争いのない事実によれば、売上額から仕入額を差し引いた粗利益は462万8145円であることが認められる。
イ 被告富士パックスが被告製品の販売により受けた利益の額(不正競争防止法5条2項)を算出するために粗利益から差し引くべき経費について検討する。
(ア) 不正競争防止法5条2項は、不正競争によって営業上の利益侵害された者が侵害者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、
その営業上の利益侵害された者が受けた損害の額と推定する旨規定しているところ、同項にいう「利益の額」とは、侵害者が侵害行為によって得た売上額から、侵害者において当該侵害行為を構成する商品の製造、仕入、輸入、販売等に必要であった諸経費を控除した金額であると解するのが相当である。
(イ)a 直接経費 @ ちらし代 乙48号証の1ないし9、第54号証(被告富士パックスの従業員の陳述書。採用することができない部分を除く。以下、同じ。)によれば、被告製品のちらしについて、販売店名が記載されていないちらしの印刷費用として18万4500円、個別の販売店名が記載されたちらしの印刷費用として17万8350円の合計36万2850円を要したことが認められる。
原告は、販売店名が記載されたちらしの印刷費用は販売店から償還されている可能性があると主張するが、償還されたことを裏付ける証拠がないから、販売店名が記載されたちらしの印刷費用も経費に含めるのが相当と認められる。
被告らは、ちらし代合計36万2850円に消費税相当額1万8142円を加えた38万0992円をもって経費として主張し、乙第54号証にもそれに沿う記述があるが、乙48号証の1ないし9によれば、ウサミ印刷株式会社の被告富士パックス宛の納品書の金額欄には、消費税について記載されておらず、他に消費税を含む金額が支払われたことを証する領収証等も提出されていないから、
納品書に記載された金額によって代金が決済されたことが推認され、消費税相当額を加えない、納品書に記載された金額の合計である36万2850円をもって経費と認めるのが相当であり、乙第54号証のうち、消費税相当額を加えた金額を経費とする部分は、採用することができない。
A 製版代、製版デュープ代 乙第49号証の1、第54号証によれば、ちらしの製版代として8万5000円を要したことが認められ、乙第49号証の2、第54号証によれば、
ちらしの製版デュープ(製版の複製)代として1万0500円を要したことが認められ、これらの合計は9万5500円である。
被告らは、製版代、製版デュープ代合計9万5500円に消費税相当額4775円を加えた10万0275円をもって経費として主張し、乙第54号証にもそれに沿う記述があるが、乙49号証の1、2によれば、ウサミ印刷株式会社の被告富士パックス宛の納品書の金額欄には、消費税について記載されておらず、他に消費税を含む金額が支払われたことを証する領収証等も提出されていないから、納品書に記載された金額によって代金が決済されたことが推認され、消費税相当額を加えない、納品書に記載された金額の合計である9万5500円をもって経費と認めるのが相当であり、乙第54号証のうち、消費税相当額を加えた金額を経費とする部分は、採用することができない。
B 化粧箱の製版代 乙第50号証、第54号証によれば、化粧箱の製版代として10万円を要したことが認められる。
被告らは、化粧箱の製版代10万円に消費税相当額5000円を加えた10万5000円をもって経費として主張し、乙第54号証にもそれに沿う記述があるが、乙第50号証によれば、ウサミ印刷株式会社の被告富士パックス宛の納品書の金額欄には、消費税について記載されておらず、他に消費税を含む金額が支払われたことを証する領収証等も提出されていないから、納品書に記載された金額によって代金が決済されたことが推認され、消費税相当額を加えない、納品書に記載された金額である10万円をもって経費と認めるのが相当であり、乙第54号証のうち、消費税相当額を加えた金額を経費とする部分は、採用することができない。
C 倉庫料 乙第51号証、第52号証の1ないし19、第54号証によれば、
倉庫料として、荷降料1万8000円、保管料30万8580円、荷役料1万3800円の合計34万0380円を要したことが認められる。これらの費用は、いずれも原告が名豊興運株式会社に支払ったものであるが、同社の被告富士パックス宛の荷降料の請求書である乙第51号証によれば、同請求書には、税率5%の消費税相当額を加えた金額が請求額として記載されていることが認められるから、これらの費用について、被告富士パックスは、名豊興運株式会社に対し、消費税相当額を加算した金額を支払ったものと推認される。したがって、これらの費用については、その合計34万0380円に消費税相当額1万7019円を加えた35万7399円をもって経費と認めるのが相当である。
D 運送料、カタログ掲載料 被告らは、運送料として41万2920円、カタログへの掲載料として50万円を要したと主張し、乙第54号証には、それに沿う記述があるが、被告製品の販売のためにこれらの費用を要したことを認めるに足りる証拠はないから、これらをもって、利益の額を算出するために粗利益から差し引くべき経費とするのは相当でない。
b 一般管理費 被告富士パックスは、一般管理費として40万4023円を要したと主張し、乙第54号証にもこれに沿う記述があるが、一般管理費は、被告製品の輸入、販売のためにのみ直接に要した費用には該当せず、特に一般管理費の中に被告製品の輸入、販売のために増大した費用があることの立証もないから、これをもって、利益の額を算出するために粗利益から差し引くべき経費とするのは相当でない。
c 経費合計 以上によれば、被告富士パックスが被告製品の販売により受けた利益の額を算出するために粗利益から差し引くべき経費の合計は、91万5749円(36万2850円+9万5500円+10万円+35万7399円=91万5749円)であるものと認められる。
ウ したがって、被告富士パックスが被告製品の販売により受けた利益は、粗利益462万8145円から経費91万5749円を差し引いた371万2396円であるものと認められる。
(3) 請求原因(9)〔予備的主張〕イ(被告ジェトーの使用料相当額)について検討する。
ア 請求原因(9)イ(ア)、(イ)の事実は当事者間に争いがない。
上記当事者間に争いのない事実と、甲第7号証、乙第3号証、第4号証の2ないし4及び弁論の全趣旨によれば、被告製品は台湾の東吟貿易が製造したものであること、被告ジェトーは東吟貿易の日本における販売代理店であること、被告ジェトーは被告富士パックスに被告製品の取引を申し入れ、被告富士パックスが被告製品を販売することになったこと、被告ジェトーは被告製品の化粧箱に被告製品の輸入発売元として記載されていること、被告ジェトーは、被告製品を4600セット輸入し、それを被告富士パックスに販売したこと、被告ジェトーは輸入発売元として被告製品の取引に関与したが、インボイスや輸入許可通知書上の輸入者はいずれも被告富士パックスとされており、入出荷及び代金の決済は、被告富士パックスと東吟貿易との間で直接行われたこと、被告ジェトーの輸入価格と被告富士パックスへの販売価格は同額で、被告製品1セット当たり1813円であり、被告ジェトーの輸入額及び売上額はいずれも833万9800円であったことが認められ、
この認定を左右するに足りる証拠はない。
イ 不正競争防止法5条3項本文及び同項2号は、同法2条1項3号所定の不正競争によって営業上の利益侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益侵害した者に対し、侵害に係る商品の形態の使用料相当額の金銭を、自己が受けた損害の額として賠償請求することができる旨定めており、この規定は、侵害者が不正競争によって実際に利益を受けたか否かにかかわらず、少なくとも使用料相当額の損害賠償を請求することができることを定めたものというべきである。
前記6(3)認定のとおり、被告ジェトーが被告製品を輸入し、被告富士パックスに販売したことは、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争に該当するから、原告は、被告ジェトーに対し、原告製品の形態の使用料相当額の損害賠償を請求することができるものと認められる。
原告製品の形態の使用料は、上記ア認定の事実その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると、原告主張のとおり、売上額に使用料率5%を乗じて求めるのが相当と認められる。
前記ア認定のとおり、被告ジェトーの被告製品の売上額は833万9800円であるから、被告ジェトーが被告製品を輸入、販売したことについて、原告製品の形態の使用料相当額は41万6990円(833万9800円×0.05=41万6990円)であると認められる。
(4) 請求原因(9)〔予備的主張〕ウ(弁護士費用等)について検討する。
前記9(2)ウ認定のとおり、被告富士パックスが被告製品の販売により受けた利益が371万2396円であること、及び本件の事案の内容、審理の経過等に照らし、被告富士パックスの不正競争と相当因果関係にある弁護士費用、弁理士費用は、各37万円で、合計74万円と認めるのが相当である。
前記9(3)イ認定のとおり、被告ジェトーが被告製品を輸入、販売したことについて、原告製品の形態の使用料相当額は41万6990円であること、及び本件の事案の内容、審理の経過等に照らし、被告ジェトーの不正競争と相当因果関係にある弁護士費用、弁理士費用は、各4万円で、合計8万円と認めるのが相当である。
(5) 以上によれば、原告が被告富士パックスに対して請求し得る金額は、被告富士パックスの受けた利益相当額371万2396円及び弁護士費用、弁理士費用74万円の合計445万2396円であり、被告ジェトーに対して請求し得る金額は、使用料相当額41万6990円及び弁護士費用、弁理士費用8万円の合計49万6990円である。
10 結論 よって、原告の被告富士パックスに対する請求は、損害金445万2396円及びこれに対する不正競争の後である平成15年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、被告ジェトーに対する請求は、損害金49万6990円及びこれに対する不正競争の後である同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余はいずれも失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条64条本文、65条1項ただし書を、仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 中平健
裁判官 大濱寿美
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