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事件 令和 1年 (ネ) 1620号 不正競争行為差止等本訴請求,不正競争行為差止反訴請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2020/01/10
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
令和2年1月10日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

令和元年(ネ)第1620号 不正競争行為差止等本訴請求,不正競争行為差止反訴

請求控訴事件

(原審 大阪地方裁判所平成29年(ワ)第1897号〔本訴〕,第6434号〔反

訴〕)

口頭弁論終結日 令和元年10月8日

判 決

控訴人(一審本訴被告・反訴原告) サンケイフーズ株式会社

(以下「控訴人フーズ」という。)

控訴人(一審本訴被告・反訴原告) サンケイアクア株式会社

(以下「控訴人アクア」という。)

上記2名訴訟代理人弁護士 谷 口 由 記

同 宇 根 駿 人

被控訴人(一審本訴原告・反訴被告) 本 部 三 慶 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 山 本 健 策

同 福 永 聡

同 千 田 史 皓

主 文

1 本件控訴をいずれも棄却する

2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を次のとおり変更する。

2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3 被控訴人は,その販売に係る原判決別紙「原告商品目録」記載の商品の容

器・包装のラベル若しくはその広告に,原判決別紙「原告品質表示目録」記載





の表示を使用し,又は同記載の表示をした商品を譲渡し,若しくは電気通信回

線を通じて提供してはならない。

4 被控訴人は,その占有に係る前項記載の商品の容器・包装のラベル,広告及

び電気通信回線を通じて提供される表示から,前項記載の表示を抹消せよ。

5 訴訟費用は本訴反訴を通じて第1,2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要

以下において用いる略称は,特に断りのない限り,原判決の例に従う。

1 各当事者の請求

本件は,食品添加物である殺菌料製剤の製造販売業者である控訴人らと被

控訴人との間の不正競争の紛争である。

(本訴)被控訴人は,控訴人らによる商品の販売等が,不正競争防止法2条

1項20号(平成30年法律第33号による改正前は14号,平成27年法

律第54号による改正前は13号。以下,原判決の表記に合わせて,14号

として引用する。)の品質誤認表示行為に該当し,かつ,同項1号の周知表

混同惹起行為に該当すると主張して,@ 同法3条1項に基づき,商品の販

売等の差止めを求め,A 同条2項に基づき,商品等の廃棄を求め,B 同法

4条に基づき,損害賠償を求めている。

(反訴)これに対し,控訴人らは,被控訴人による商品の販売等が,同法2

条1項14号の品質誤認表示行為に該当すると主張して,@ 同法3条1項

基づき,商品の販売等の差止めを求め,A 同条2項に基づき,商品等からの

当該品質表示の抹消を求めている。

(以下,単に「1号」,「14号」というときは,不正競争防止法2条1項

1号及び14号のことをいう。)。

各当事者の請求の具体的な内容は次のとおりである。

(1) 本訴

被控訴人は,原判決別紙「原告旧商品表示目録」記載のとおりの原告旧商





品表示(「PERFECT・PA」,「パーフェクト・ピュアーエース」)

を使用した殺菌料製剤をかつて販売していたが,控訴人らが原判決別紙「被

告商品目録」記載のとおりの殺菌料製剤である被告各商品(「PERFEC

T・PA(パーフェクト・ピュアーエース)」〔被告商品1〕,「ビュー

ティック12」〔被告商品2〕)を販売等することに関して,次の各請求を

している。

ア 控訴人らが,原判決別紙「被告品質表示目録」記載のとおりの被告品

質表示(「内容成分 高度サラシ粉 12.00%」)をした被告各商品

を販売するなどしたことは,不正競争防止法2条1項14号の不正競争

に該当するとして,

(ア) 同法3条1項に基づき,被告品質表示をした被告各商品の販売等の

差止

(イ) 同条2項に基づき,被告品質表示をした被告各商品等の廃棄

イ 控訴人らが,原告旧商品表示と同一の商品表示である被告商品表示

(原判決別紙「被告商品表示目録」記載の各商品表示)を使用した被告

商品1を販売するなどしたことは,不正競争防止法2条1項1号の不正

競争に該当するとして,

(ア) 同法3条1項に基づき,被告商品表示を使用した食品添加物である

殺菌料製剤の販売等の差止

(イ) 同条2項に基づき,被告商品表示を使用した食品添加物である殺菌

料製剤の廃棄

ウ 控訴人らが上記ア及びイの不正競争を行って被控訴人の営業上の利益

侵害したことは共同不法行為に該当すると主張して,不正競争防止法

4条に基づき,損害賠償金 1 億4423万5531円(逸失利益1億3

201万2181円と弁護士費用1222万3350円)及びうち平成

26年3月から本訴提起の日の前日である平成29年2月28日までの





間における逸失利益8407万8037円(上記ア及びイの不正競争に

よる損害)に対する不正競争の日の後である訴状送達の日の翌日(控訴

人フーズについては同年3月13日,同アクアについては同月11日)

から,うち本訴提起の日である同年3月1日から同年10月31日まで

の間における被告商品2の販売分に対応する逸失利益250万4382

円(上記アの不正競争による損害)に対する不正競争の日の後である同

年11月1日から,うち本訴提起の日である同年3月1日から平成30

年8月31日までの間における被告商品1の販売分に対応する逸失利益

3565万1082円(上記ア及びイの不正競争による損害)に対する

不正競争の日の後である同年9月1日から,各支払済みまで民法所定の

年5分の割合による遅延損害金の連帯支払

(2) 反訴

控訴人らは,被控訴人が,原判決別紙「原告品質表示目録」記載のとおり

の原告新品質表示(「高度さらし粉液体製剤」及び「成分<主剤>高度さら

し粉 7.50%」)をした原判決別紙「原告商品目録」記載の原告商品

(「ネオクリーンPA S」)を販売するなどしたことは,不正競争防止法

2条1項14号の不正競争に該当するとして,次の各請求をしている。

ア 不正競争防止法3条1項に基づき,原告新品質表示を使用した商品の

販売等の差止

イ 同条2項に基づき,原告新品質表示を使用した商品等からの原告新品

質表示の抹消

2 訴訟の経過

原審の判断は次のとおりであり,これに対し,控訴人らがそれぞれその敗訴

部分を不服として控訴した。

(1) 本訴

ア 品質誤認表示行為の差止等の請求(前記1(1)ア)は,いずれも棄却し





た。

周知表示混同惹起行為差止等の請求(前記1(1)イ)は,差止請求

び廃棄請求をいずれも認容した。

損害賠償請求(前記1(1)ウ)は,損害賠償金8250万6268円

逸失利益7500万6268円と弁護士費用750万円)及びうち5

387万4677円に対する控訴人アクアは平成29年3月11日から,

同フーズは同月13日から,うち160万6051円に対する同年11

月1日から,うち1952万5540円に対する平成30年9月1日か

ら,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を(重なり合う範囲

で)連帯して支払うことを求める限度で認容し,その余を棄却した。

(2) 反訴

請求をいずれも棄却した。

3 前提事実

次のとおり補正するほか,原判決5頁25行目から9頁19行目までに記載

のとおりであるから,これを引用する。

(原判決の補正)

(1) 原判決6頁26行目の「前者の」から7頁2行目の「されていた」まで

を「前者の化学式にある『OCL』は次亜塩素酸を意味するのに対し,後者の

化学式にある『CLO2』は亜塩素酸を意味する」に改める。

(2) 原判決7頁4行目の「甲38」を「甲40」に改める。

(3) 原判決7頁9,10行目の「適合していなかった」を「適合しないこと

が明白になった」に改める。

4 争点及び当事者の主張

本件の争点は次のとおりであり,これについての当事者の主張は,後記5に

おいて当審における控訴人らの主張を加えるほか,原判決10頁9行目から2

3頁22行目までに記載のとおりであるから,これを引用する(原判決23頁





22行目の「含有していない」を「含有していないこと」に改める。)。

ただし,前記2のとおり,品質誤認表示行為を理由とする被控訴人の差止

請求は原審でいずれも棄却され,被控訴人は不服を申し立てていないので,争

点4については,当審では,「控訴人らが被告商品表示をするおそれの有無と

廃棄の要否」のみが争点となる。

(1) 本訴関係

ア 1号関係固有の争点

原告旧商品表示の周知性並びに原告旧商品1と被告旧商品1及び被告新

商品1との誤認混同のおそれの有無(争点1)

イ 1号関係及び14号関係に共通の争点

(ア) 原告旧商品表示及び原告旧品質表示(被告品質表示)の使用の明示

又は黙示の許諾の有無(争点2)

(イ) 被控訴人の営業上の利益侵害の有無,本訴請求の権利濫用性等

(争点3)

(ウ) 控訴人らが被告商品表示及び被告品質表示をするおそれの有無と廃

棄の要否(争点4)

(エ) 控訴人らの共同不法行為責任の成否(争点5)

(オ) 被控訴人の損害の有無及び額(争点6)

(2) 反訴関係

原告新品質表示の品質誤認表示該当性(争点7)

5 当審における控訴人らの主張

(1) 原告旧商品及び原告新商品の成分について(争点3,7)

原告旧商品の主剤は高度サラシ粉とされているが,実際は,その主成分は,

食品添加物公定書にも記載のない亜塩素酸ナトリウムであった。被控訴人は,

亜塩素酸ナトリウムを高度サラシ粉と偽って販売し続けていたのである。

厚生労働省医薬食品局食品安全部長の平成17年9月16日付け通達(食





安発第0916001号)(乙26)により,数の子加工品についてそれま

で存在していた亜塩素酸ナトリウムの使用規制が撤廃されることとなり,高

度サラシ粉の表示を信じて原告旧商品を購入してきた被控訴人のメインの顧

客である数の子加工業者が安価な亜塩素酸ナトリウムに乗り換える可能性が

出てきたので,被控訴人は,平成21年になって,新商品として脱血効果が

高いとする原告新商品へと切り替えることとしたにすぎない。原告新商品の

成分は,原告旧商品と同じく,亜塩素酸ナトリウムであり,高度サラシ粉で

はない。

(2) 原告旧商品表示の周知性誤認混同のおそれについて(争点1)

被控訴人が原告旧商品表示の使用を中止してから本件本訴の提起まで7年

半も経過し,この間,被控訴人は原告旧商品を販売せず,宣伝広告もしな

かったのであるから,原告旧商品表示の周知性は失われている。

何より重要なのが,ユーザーが誤認混同を起こしたかであるが,次のとお

り,そのような事実はない。第1に,ほとんどが販売代理店を通じた販売で

あり,個人が店頭で購入する商品ではない。第2に,控訴人らは,被控訴人

が原告旧商品1を販売していた顧客に対しては営業活動を行っておらず,被

控訴人の顧客を奪った事実はない。第3に,被控訴人は,原告新商品に変更

した後,売上高がそれ以前より落ちていないと主張しているのであり,被控

訴人がホームページで宣伝し,代替品であるとして原告新商品への乗り換え

をさせたといえるからである。

(3) 原告旧商品表示及び原告旧品質表示の使用の許諾について(争点2)

原告旧品質表示及び原告新品質表示が虚偽であること(前記(1)参照)は,

三慶グループの幹部であった被控訴人のP1,P2やP3らが共有する極秘

事項であり,P3は被控訴人にとって極秘事項を共有する仲間であった。こ

のことからしても,被控訴人が原告旧商品の製造販売を中止するに当たり,

P3が代表者を務める控訴人フーズが原告旧商品表示及び原告旧品質表示を





使用することについて,被控訴人が認めることはあっても,拒否するという

ことはあり得ない。したがって,控訴人らが原告旧商品表示及び原告旧品質

表示を使用することにつき,被控訴人の明示又は黙示の許諾があったといえ

る。

(4) 14号関係の損害賠償請求の可否(権利濫用又は信義則違反)について

(争点3)

原告新商品は高度サラシ粉を含有しておらず,原告旧商品と同様に亜塩素

酸ナトリウムであるから,原告新商品も品質の虚偽表示をしている(前記

(1)参照)。したがって,被告各旧商品が販売されなかった場合に原告新商

品が販売できたとする因果関係は認められないし,原告新商品も品質虚偽表

示であるから,14号の不正競争を理由とする損害賠償請求は権利濫用又は

信義則違反である。

(5) 損害認定について(争点6)

原判決は,不正競争防止法5条2項による損害の額の推定の覆滅について

判断するに当たり,競合品の存在を検討しているが,その際,高度サラシ粉

すなわち次亜塩素酸カルシウム(有効塩素60%以上)の商品について比較

しなければならないのに,別商品といえる次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素

10%)との比較広告文を軽率にも持ち込んで議論するという誤りを犯して

いる。原判決の指摘する次亜塩素酸ナトリウムを含めるならば,控訴人らは

それらの商品を加えて競合品の主張ができることになる。

また,液体製剤は,粉剤,錠剤,顆粒製剤と競合しないとした原判決の判

断は,事実誤認かつ不当である。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も,@ 控訴人ら共同による平成29年10月までの被告各旧商品

の販売行為(控訴人アクアが販売し,同フーズが幇助)は不正競争防止法2条

1項14号の不正競争に該当し,また,控訴人ら共同による平成30年8月ま





での被告旧商品1及び被告新商品1の販売行為(同上)は同項1号の不正競争

に該当するため,A 被告商品表示を使用した殺菌料製剤の販売等の差止め等

の請求はいずれも理由があり,B 原判決の判示の限度で,被控訴人の損害賠

償請求を認容すべきであると判断する。その理由は,次のとおり補正し,後記

2において当審における控訴人らの主張に対する判断を加えるほか,原判決2

3頁24行目から68頁14行目までに記載のとおりであるから,これを引用

する。

(原判決の補正)

(1) 原判決25頁10行目の「数の子の生産量」の前に「日本国内の」を加

える。

(2) 原判決25頁15行目の「塩干・塩蔵品製造業者」の前に「日本国内の」

を加える。

(3) 原判決33頁19行目の「そこで ,このメールの信用性について 」を

「P3は平成27年2月に死亡しているので(乙15),当該メールの形式

及び内容並びにP4の証言に基づき,その内容の信用性について」に改める。

(4) 原判決34頁1行目の「@」を「C」に改める。

(5) 原判決37頁14行目,18行目,57頁23行目,59頁1行目及び

63頁21行目の「被告旧品質表示」をいずれも「被告品質表示」に改める。

(6) 原判決39頁18行目及び21行目の「被告旧商品1」の次にいずれも

「及び被告新商品1」を加える。

(7) 原判決39頁18,19行目の「誤認混同のおそれ」を「誤認混同する

おそれ」に改める。

(8) 原判決39頁22行目の「証拠はない」から26行目末尾までを「証拠

はない。」に改める。

(9) 原判決40頁23行目の末尾に「。」を加える。

(10) 原判決46頁4行目の「各種試験結果」から「裏付けられており」まで





を「各種試験結果に照らしても同様のことをいうことができ」に改める。

(11) 原判決63頁10,11行目の「製造原価率」を「販売原価率」に改め

る。

(12) 原判決63頁12,13行目の「 1−(0.565+0.066)×100」を「 (1−

(0.565+0.066))×100」に改める。

(13) 原判決63頁22行目の「推定」の前に「損害の額の」を加える。

(14) 原判決64頁8,9行目及び66頁1行目の「被告旧製品1」をいずれ

も「被告旧商品1」に改める。

(15) 原判決66頁19行目及び20行目の「被告旧商品1」をいずれも「被

告新商品1」に改める。

2 当審における控訴人らの主張に対する判断

(1) 原告新商品の成分について

控訴人らは,原告新商品は高度サラシ粉を主剤として表示しているが(原

告新品質表示),その成分は,実際は,高度サラシ粉と表示することの許さ

れない亜塩素酸ナトリウムであると主張する。しかし,原告新商品の成分に

ついては,原告新商品を試料とする各種試験の結果が当事者双方から証拠と

して提出されており,これを検討した結果,原告新商品が高度サラシ粉を含

有していないと認めることができないことは,前記1で引用した原判決「事

実及び理由」第3の2(40頁1行目から46頁5行目まで)に記載のとお

りである。

この点については,次のような本件訴訟の審理経過を指摘することができ

る。本件訴訟の原審における審理は次のとおりであった(記録上明らかな事

実)。

平成29年 4月21日 第1回口頭弁論

(この間,第1回〜第10回弁論準備)

平成30年 5月28日 第2回口頭弁論(人証調べ)





7月10日 第3回口頭弁論

(この間,第11回〜第17回弁論準備)

平成31年 3月 8日 第4回口頭弁論(口頭弁論終結)

5月27日 第5回口頭弁論(判決言渡し)

平成30年7月10日の第3回口頭弁論期日において,当事者双方は「侵

害論についての主張立証は以上である。」と陳述し,裁判長は「本件本訴請

求につき,損害論の審理に進む。」と宣言した。また,同日の第11回弁論

準備手続期日においても,受命裁判官が重ねて,「本件本訴請求の,不正競

争防止法2条1項1号及び同14号について損害論の審理に進む。」と宣言

した。ところが,控訴人らは同年8月27日になって初めて,原告新商品が

高度サラシ粉を含有しているか等を鑑定事項とする鑑定申立書を提出し,原

審(受命裁判官)は,同年10月9日の第13回弁論準備手続期日において,

当該申立ては時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下した。

この審理経過を踏まえると,控訴人らは,本来客観的,科学的な方法で明

らかにし得る原告新商品の成分について,すみやかに適切な立証活動を行わ

なかったといわざるを得ない。当審において控訴人らは,原告新商品の品質

表示が虚偽であることの根拠として過去の様々な経緯を主張するけれども,

それらの事実をもって上記品質表示が虚偽であると認めることはできず,控

訴人らの主張を採用することはできない。

したがって,原告新商品について,その品質を誤認させるような表示があ

るとはいえない。

(2) 原告旧商品表示の周知性誤認混同のおそれについて

原告旧商品表示の周知性について,控訴人らは,被控訴人が原告旧商品表

示の使用を中止してから長期間が経過したことを指摘して,その周知性を否

定する。

しかし,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3)ア(37





頁22行目から39頁14行目まで)に記載のとおり,被控訴人が原告旧商

品1の製造中止をホームページでアナウンスした平成21年8月の時点で,

原告旧商品1及び原告旧商品表示は,被控訴人ないし三慶グループの商品及

び商品表示として殺菌料製剤(食品添加物)の需要者の間で高い周知性を獲

得しており,原告旧商品表示の被控訴人ないし三慶グループの出所表示とし

ての周知性はなお維持されていると認められる。控訴人らは,被控訴人が販

売を中止した時点からの期間の経過を強調するが,まず,平成23年9月ま

では,控訴人らを通じて原告旧商品1の在庫販売が継続していたのであり,

販売が中止されたという事実がない。また,この期間を通じて,さらにその

後も,控訴人らは,原告旧商品表示と同一の商品表示である被告商品表示を

して被告旧商品1の販売を継続していたのであり,かつ,その商品ラベルの

デザインやパンフレットの内容は原告旧商品1と同一であり,商品ラベルの

製造販売元の表記を含めて,その外観及び広告上,被告旧商品1の商品主体

が三慶グループとは別の事業者であると需要者が認識することは困難な状態

であった。このような被告旧商品1の販売の継続は,原告旧商品表示の周知

性を失わせるものではなく,かえって,これを維持する方向に働くもので

あったというべきである。

控訴人らは,また,ユーザーが誤認混同をしたことはないとも主張する。

しかし,上記原判決引用部分記載のとおり,原告旧商品1の需要者である数

の子加工業者が,原告旧商品1と被告旧商品1及び被告新商品1について,

出所が同一であると誤認混同するおそれがあったと認められるから,不正競

争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」があったといえる。

これに対し,実際には誤認混同をしていなかったという事実についての的確

な立証はなく,控訴人らの上記主張を採用することはできない。

(3) 原告旧商品表示及び原告旧品質表示の使用の許諾について

控訴人らは,当審において,被控訴人が原告旧商品表示及び原告旧品質表





示の使用を控訴人らに許諾したことの根拠として,原告旧品質表示及び原告

新品質表示が虚偽であることを挙げる。原告旧品質表示及び原告新品質表示

が虚偽であることがなぜ使用の許諾の根拠になるのか,控訴人らの主張に

よっても明らかでないが,その点をおくとしても,原告新品質表示を虚偽と

認めることができないことは前記(1)において説示したとおりであるから,

控訴人らの主張は前提を欠き,採用することができない。

(4) 14号関係の損害賠償請求の可否(権利濫用又は信義則違反)について

控訴人らは,ここでも,原告新商品の成分が高度サラシ粉ではなく亜塩素

酸ナトリウムであることを根拠として,品質誤認表示行為(14号)を理由

とする損害賠償請求は権利濫用信義則違反であると主張する。しかし,そ

の根拠が認められないことは前記(1)において説示したとおりであり,この

主張も理由がない。

(5) 損害認定について

控訴人らは,粉剤,顆粒剤又は錠剤である高度サラシ粉商品は,原告新商

品の競合品であると主張する。原告新商品は,食品添加物である殺菌料製剤

(液剤)であるから,食品に使用されるものであり,有効塩素濃度は6%で

あり,1kg当たりの単価は1200円である。これに対し,前記1で引用し

た原判決「事実及び理由」第3の4(1)(47頁23行目から60頁4行目

まで)に記載のとおり,高度サラシ粉商品のうち粉剤,顆粒剤又は錠剤は,

プールの水の殺菌・消毒を用途とするものが多くみられる上,有効塩素濃度

が判明しているものは70%以上であり,その一方で,1kg当たりの単価は,

原告新商品とそれほど異ならないか,低いものがほとんどであり,一番高い

ハイクロン1kg顆粒でもその単価は原告新商品の単価の3倍から3.5倍程

度である。これらのことからすると,原告新商品の需要者層と粉剤,顆粒剤

又は錠剤である高度サラシ粉商品の需要者層とは異なるというべきであるか

ら,粉剤,顆粒剤又は錠剤である高度サラシ粉商品を原告新商品の競合品と





認めることはできない。

控訴人らは,また,原判決が,ハイクロンFH(顆粒剤)の広告文中にお

いて,その有効塩素濃度(70%)と液体次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素

濃度(10%)との比較がされていることを取り上げている部分(原判決5

8頁)を非難する。その趣旨は,原判決が次亜塩素酸ナトリウム含有商品を

原告新商品の競合品として扱っていることを非難するものと解されるが,原

判決は,殺菌料製剤のうち粉剤,顆粒剤又は錠剤であるものと液剤であるも

のとを比較するという観点から上記の広告文を引用しているにすぎず,次亜

塩素酸ナトリウム含有商品を原告新商品の競合品として扱っているのでない

ことは,その文脈から明らかである。控訴人らの非難は当を得ない。

3 結論

以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから,

これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第8民事部



裁判長裁判官 山 田 陽 三




裁判官 倉 地 康 弘




裁判官久保井恵子は,差支えのため,署名押印することができない。



裁判長裁判官 山 田 陽 三






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