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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成14ワ3030不正競争行為の差止等請求事件 平成15ワ230損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
平成16ワ18865営業差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 記憶 /  自己の氏名 /  差止請求(差止) /  逸失利益 /  代理人 /  代表者 /  得べかりし利益 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  有用性 /  営業上の情報 /  非公知性 /  営業秘密 /  2条1項7号 /  不正取得行為 /  不正開示行為 /  不正の利益を得る目的(図利目的) /  損害賠償 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 10721号 損害賠償等請求事件
原告 有限会社バードランドミュージック
同訴訟代理人弁護士 神谷信行
被告 合資会社ノックスエンタテインメント
被告A
被告B
被告C
被告D
上記5名訴訟代理人弁護士 味岡良行
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2004/04/13
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告らは,原告に対し,各自,金1000万円及びこれに対する被告合資会社ノックスエンタテインメントについては平成15年7月2日から,被告Aについては同年6月21日から,被告Bについては同月18日から,被告Cについては同月21日から,被告Dについては同月19日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは,原告の顧客,登録アルバイト員,受注内容及び業務日程に関する情報を,被告らの営業に関し使用してはならない。
3 被告らは,原告の顧客,登録アルバイト員,受注内容及び業務日程を記録したすべての媒体(文書,フロッピーディスク,CD-ROMその他すべての媒体)を廃棄し,コンピュータのハードディスク,携帯電話のメモリー等から上記営業秘密を消去せよ。
事案の概要等
1 争いのない事実等 (1) 当事者 原告は,音楽制作,音楽家の養成,音楽著作権管理,コンサートや各種イベントの企画・制作等を業務とする有限会社である。
被告A(以下「被告A」という。)は,もと原告の従業員であり,被告B(以下「被告B」という。),被告C(以下「被告C」という。)及び被告D(以下「被告D」という。)は,いずれももと原告のアルバイト員として登録され,原告のコンサート・イベント事業部門である「トップ・ギア」に所属していた。上記被告ら4名の在籍期間は以下のとおりである。
ア 被告Aは,平成11年10月から原告のアルバイト員として登録され,平成13年1月,正社員として原告に入社したが,平成14年10月末,自己都合により退社した。
イ 被告Bは,平成13年12月23日から平成14年10月まで,原告のアルバイト員として登録されていた。
ウ 被告Cは,平成10年4月21日から平成15年4月まで,原告のアルバイト員として登録されていた。
エ 被告Dは,平成11年2月から平成15年4月まで,原告のアルバイト員として登録されていた。
上記被告ら4名は,被告Aが原告を退社した後,平成15年1月に被告合資会社ノックスエンタテインメント(以下「被告会社」という。)を設立し,原告と競業する行為を開始した。被告Bは,被告会社の無限責任社員であり,被告A,同C及び同Dは,いずれも被告会社の有限責任社員である。
(2) 原告の業務 原告は,イベントを実施する主催者のサポート業務を日常業務の1つとしている。すなわち,通常,主催者がイベント制作の元請に制作発注をなし,原告は,その元請からイベント現場の運営や管理について下請を受注している。原告は,アルバイト情報誌により現場へ派遣する実働員のアルバイト員を募り,その応募者を登録し,その中から現実のイベント日に実働できる者を選んで現場に派遣する。
(3) 原告が保有する情報 ア 原告は,原告事務所内の原告所有のパソコンに「トップ・ギア クライアントリスト一覧」と題する顧客リスト(甲10の1)を入力し保管している。原告は,同リストに記載された顧客名,担当者名,電話番号,FAX番号の情報(以下「本件情報@」という。)を保有している。
イ 原告は,原告事務所内の原告所有のパソコンに「トップ・ギア 登録者リスト」と題する登録アルバイト員リスト(甲10の2)を入力し保管している。
原告は,同リストに記載された登録アルバイト員の氏名,生年月日,最寄り駅,連絡先,携帯電話番号,スーツ保有の有無,運転免許保有の有無,髪型・髪色・ピアスの有無,備考欄記載の事実の情報(以下「本件情報A」という。)を保有している。
ウ 原告は,アルバイト員に応募した者から履歴書の提出を受け,登録時に登録アルバイト員に登録表(甲5の2)を作成させ,それらをファイルにつづり,原告事務所内の書棚上に保管している。原告は,これらに記載されたアルバイト員の氏名,生年月日,住所,経歴,運転免許保有の有無の情報(以下「本件情報B」という。)を保有している。
エ 原告は,原告事務所内の原告所有のパソコンに見積書(甲10の3)を入力し,その情報を保管している。原告は,同見積書に記載された顧客名,会場名,催物名,見積金額,催物の日時・時間帯,受注事項の情報(以下「本件情報C」といい,本件情報@ないしCを併せて「本件各情報」という。)を保有している。
(4) 被告会社の営業 有限会社ハーフラインプロデュース,有限会社ムーンクリエイティブ及び株式会社タムコは原告の顧客であるが,被告会社は,以下のとおりこれらの会社からイベント業務を受注し,原告に登録されているアルバイト員を派遣した。
ア 平成14年11月30日,東京都新宿区所在の福家書店新宿サブナード店において,有限会社ハーフラインプロデュースの元請に係るアイドル握手会の業務を受注した。
イ 平成15年3月10日及び11日,東京都千代田区所在の国際フォーラムにおいて,有限会社ムーンクリエイティブの元請に係る「アットネットホームビジネスカンファレンス2003」会場の出展車両誘導業務を受注した。
ウ 同月21日から同年4月7日までの間,東京都渋谷区所在の渋谷マークシティにおいて,有限会社ムーンクリエイティブの元請に係る「マークシティ3rdアニバーサリー抽選会」会場の顧客誘導業務を受注した。
エ 同月1日及び2日,横浜市所在の横浜アリーナにおいて,株式会社タムコの元請に係る「CDTVプレミアライブ」の制作補助業務を受注した。
オ 同月5日及び12日,東京都町田市所在のこどもの国において,有限会社ムーンクリエイティブの元請に係る「東急カップフットサルクリニック」の大会運営業務を受注した。
2 事案の概要 本件は,イベントを実施する主催者ないしその元請からの依頼を受けて,登録アルバイト員を派遣する業務を日常業務の1つとしている原告が,原告の元従業員である被告Aが,勤務中に特別に持ち出しを許諾されていた本件情報@及びAをプリントアウトした顧客リスト及び登録アルバイト員のリストを不正の利益を得る目的で使用し(不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争行為),被告会社,同B,同C及び同Dが,被告Aによる上記情報の開示が営業秘密不正開示行為であることを知って上記情報を取得し,それを使用した(同項8号所定の不正競争行為)と主張し,さらに,被告Aが,勤務中に持ち出しを許諾されていなかった原告所有のパソコン内の本件情報@,A及びC並びに本件情報Bを不正の手段により取得して使用し(同項4号所定の不正競争行為),被告会社,同B,同C及び同Dが,上記情報の不正取得行為が介在したことを知って上記情報を取得し,それを使用した(同項5号所定の不正競争行為)と主張して,被告らに対し,同法3条に基づき,本件各情報の使用の差止め並びに本件各情報を記録した媒体の廃棄及びこれらの情報の消去を求めるとともに,民法719条1項,709条に基づき,1000万円の損害賠償を請求する事案である。
なお,原告は,原告が作成する請求書に記載された顧客名,催物名,請求金額の情報についても原告の営業秘密に該当する旨主張するが,当該情報にかかわる被告らの不正競争行為を特定して主張しないから,主張自体失当であり,以下,その点は判断しない。
3 本件の争点 (1) 本件各情報の営業秘密該当性 ア 本件各情報の秘密管理性 イ 本件各情報の有用性 ウ 本件各情報の非公知性 (2) 被告らが原告から示された本件各情報を使用したか。
(3) 原告の被った損害の有無及び額
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(本件各情報の秘密管理性)について 〔原告の主張〕 (1) 本件情報@及びAの管理状況 ア 本件情報@及びAに関する基礎データは,原告事務所にあるパソコン内のフォルダに入力され保管されていた。原告は,被告Aに対し,これらのデータをフロッピーディスク等の媒体へコピーして持ち出すことを許諾していなかった。
イ 本件情報@及びAをプリントアウトした顧客リスト及び登録アルバイト員リストは,原告事務所内の扉付き書棚(甲9の3)中,書類キャビネットの「トップギア関係」の引出し(甲9の4)中に保管されていた。この「トップギア関係」の引出しには,「持出し厳禁」及び「社外秘」の表示がなされていた。
扉付き書棚の鍵は2つあり,原告代表者と原告従業員E(以下「E」という。)が保有しており,被告Aは,扉付き書棚の鍵を持つことを許諾されたことは一度もなかった。原告代表者とEは,一日の業務が終了すると,扉付き書棚の鍵を閉め,その鍵をそれぞれの机の中にしまい,さらに机の鍵を施錠して,その鍵を持って帰宅していた。翌日,原告代表者とEのうち早く出社した方が扉付き書棚の鍵を開けていた。なお,被告Aは,従業員の中で最も遅く出社していた。
原告は,被告Aに対し,アルバイト員の選定と配置の迅速性を考慮して,本件情報@及びAをプリントアウトした書面をイベント現場に持ち出すことを許諾していた。ただし,この帯出許諾は,イベント業務の迅速な遂行のための例外的措置であって,同被告が退職した後に引き続き上記各書面の保有を許されるものではなく,退職時に原告に返還しなくてはならないものであった。しかるに,被告Aは,退職時に上記プリントアウトした顧客リスト及び登録アルバイト員リストを原告に返還しなかった。
(2) 本件情報Bの管理状況 履歴書及び登録表は,原告事務所にある扉なし書棚(甲9の1)中の「登録者リスト」(甲9の2)中にファイルされていた。このファイルの背表紙には「社外秘」の表示がなされていた。
(3) 上記(1)の引出しの「持ち出し厳禁」及び「社外秘」の表示並びに上記(2)のファイルの「社外秘」の表示は,平成10年10月ころ,Eが作成し表示した。
秘密管理に関する表示は,不正利用者に対して秘密とされていることが認識され得る程度になされていれば十分であり,上記引出しの「持ち出し厳禁」及び「社外秘」並びに上記ファイルの「社外秘」の表示は,この秘密管理の客観的表示として十分なものである。
(4) 本件情報Cの管理状況 本件情報Cは,原告事務所にあるパソコン内のフォルダに入力され保管されていた。原告は,被告Aに対し,プリントアウトした見積書,パソコンのフォルダ内の見積書の情報を会社外に持ち出すことを許諾していなかった。
〔被告らの主張〕 (1) 本件情報@及びAの管理状況 ア 本件情報@及びAをプリントアウトした顧客リスト及び登録アルバイト員リストが扉付き書棚(甲9の3)中,書類キャビネットの「トップギア関係」の引出し(甲9の4)中に保管されていたとの事実は否認する。引出しに入っていた資料は,アルバイト員に渡すための仕事の説明書と賃金額を記載した表であった。
また,被告Aの在職中,上記引出しには,「持ち出し厳禁」及び「社外秘」の表示はなかった。
イ 登録アルバイト員リストは,従業員各自が自分の引出し中に保管するか又はかばんに入れて持ち歩いていた。被告Aは,登録アルバイト員リストを現場に持参することが認められていたが,同リストを退職時に破棄し又は原告の従業員に引継ぎして交付した。
ウ 原告は,扉付き書棚の鍵の保管状況について,原告代表者又はEが施錠して退社すると主張するが,虚偽である。被告Aは,退社時刻が従業員の中で最も遅い日が毎週2,3日あったが,扉付き書棚が施錠されていたことは一度もなく,先に退社した者が施錠して退出することはなかった。被告Aは,同書棚の鍵を持っていなかったから,最後に退社する時に同書棚の鍵をかけたことはなかったし,そのような指示を受けたことはなかった。
(2) 本件情報Bの管理状況 ア 履歴書及び登録表が扉なし書棚(甲9の1)中の「登録者リスト」(甲9の2)中にファイルされていた事実は認めるが,この背表紙に「社外秘」の表示はなかった。
イ 履歴書及び登録表が収められている扉なし書棚は,扉がないため施錠するなどの方法で閲覧を制限することはできなかった。原告の従業員は,履歴書及び登録表のファイル等を自由に取り出せる状態にあり,現に必要に応じて従業員全員がいつでも連絡のためなどに閲覧するなどしていた。
(3) 被告A及び登録アルバイト員間での情報交換 ア 被告Aは,履歴書に記載された登録アルバイト員の氏名,住所及び電話番号を個人所有のパソコンに入力して整理していた。また,被告Aは,仕事の過程で直接登録アルバイト員から連絡用としてメールアドレスを聴取し,上記パソコン及び個人所有の携帯電話に入力していた。そして,顧客から原告へ注文が入ると,被告Aは,必要な人員をそろえるためパソコン又は携帯電話に入力した登録アルバイト員のメールアドレスあてに連絡を取って日程の都合を聞き,人選を行うなどしていた。
同様に,被告Aのみならず,登録アルバイト員同士も互いに住所,携帯電話の番号,メールアドレスを教え合い,連絡を取り合っていた。登録アルバイト員でありながら現場で指示を出し得る経験を有し,被告Aを補助する立場にある者も,各自が所有するパソコン又は携帯電話にメールアドレスを入力しているので,それを利用して登録アルバイト員への連絡を行っていた。
したがって,登録アルバイト員の氏名,住所,電話番号,メールアドレス等の情報(本件情報B)は,被告Aらだけが保有しているものではなく,登録アルバイト員の間でも交換されていたものである。
イ 被告Aの所有するパソコンは,A4サイズのノートパソコンであるが,同被告はそれを毎日のように持ち歩いて仕事に使用していたから,他人がそれを使用する機会はなく,したがって,パスワードを設定して同被告以外の者が開けないようにするなどの特別な管理をしていたわけではないし,原告からそのような指示も受けていなかった。パソコンとこれに記載された情報をいつどのように使用するかについて,被告らは原告から何らの制限も受けていなかった。
2 争点(1)イ(本件各情報の有用性)について 〔原告の主張〕 (1) 本件情報@について 本件情報@は,原告と取引関係のある顧客との連絡に関する事項であり,原告が定例イベントの受注等に関する営業活動を行うため必要不可欠の情報である。
(2) 本件情報Aについて 本件情報Aは,原告がアルバイト情報誌に広告料を支払って募集をした上,応募者が提出した登録表,面接から情報収集したものであって,原告の費用と労力投下のもとにデータ化されたものであり,イベント業務の現場に迅速かつ確実にアルバイト員を派遣するために必要不可欠な情報であり,取引上有用な営業秘密である。具体的には,以下のとおりである。
ア 氏名,生年月日 氏名,生年月日の情報は,本人特定の徴表であるとともに,原告は未成年者雇用をしていないので,アルバイト採否の基準となる。
イ 最寄り駅 原告のイベント業務は,早朝出勤という形態も多いため,最寄り駅に関する情報は,指定時間までに始発電車でイベント現場に到達できる人員を選別できる指標となる。さらに,イベント終了後の撤収作業等が終電後となる場合,自動車でアルバイト員を自宅付近まで送り届けることになるが,その際,最寄り駅に関する情報は,複数のアルバイト員を最短距離で送ることのできる経路を割り出し,無駄な経費のかからないアルバイト員の組合せを決定するための指標となる。
ウ 連絡先(自宅の電話番号)と携帯電話の番号 連絡先,携帯電話の番号は,通常の手配の連絡だけでなく,既に担当の決まっている者が事故,急病その他の事情で現場に到達できない場合,緊急に代わりの者を派遣するため特に重要な情報である。
エ スーツ保有の有無 コンサート本番における会場業務の場合,顧客からスーツ着用を指定されることがほとんどであり,スーツを持っていない者は当該現場に派遣できないから,コンサートイベントについて,スーツ保有についての情報は特に重要である。
オ 運転免許保有の有無 現場への移動,機材の運搬,イベント会場でのレンタカー使用,イベント敷地内での車両移動,終電後帰宅などについて,特に運転免許を持っている者を現場へ配置することが必要になることが多いから,運転免許保有の有無の情報は,業務遂行上重要な情報である。
カ 髪型・髪色・ピアスの有無 コンサートなどイベント会場業務では,顧客から,茶髪・金髪・長髪・ピアス禁止という情報が付けられるのがほとんどであり,アルバイト員の外貌に関する情報は,顧客の条件にかなう人員を適切に当該現場に配置する上で必要不可欠の情報である。
キ 備考欄の情報 備考欄には,大学生などで日中大学の授業のため夜間アルバイトしかできない者とか,土日しか働けないという情報等が書かれているが,これらの情報は,顧客の指定時間に現場への派遣が可能かどうかを判断する際,極めて重要な指標になる。
(3) 本件情報Bについて 本件情報Bのうち,氏名,生年月日,住所,運転免許保有の有無に関する情報の有用性は,前記(2)ア,オと同様である。
原告にアルバイト登録する前に,同種業務の経験,舞台大道具,パソコン使用の経験等のある者は,現場において初心者より秀でた点があるため,指導の在り方や配置にもおのずと差が出るものであるから,略歴についての情報は重要である。
(4) 本件情報Cについて 本件情報Cは,顧客に対する単価の交渉,値下げの実態,定例イベントの時期を知るために重要な情報であり,営業秘密上最も重要な情報である。これらの情報を知ることにより,原告の単価より低廉な価格を申し出て,原告の顧客からの仕事を取ることが可能となる。
〔被告らの主張〕 本件情報Aのうち,未成年か成年者かは雇用と無関係なので,生年月日には秘密としての有用性がない。最寄り駅は,アルバイト員が友人の家に宿泊して仕事に出たり戻ったりする場合が多く,その都度アルバイト員に聴取して都合を聞くので,人選の基準となるものではない。スーツ保有の有無,運転免許保有の有無,髪型等は,常に変動する情報なので,必要に応じてその都度アルバイト員から聞いて人選している。
したがって,本件情報Aは,有用な情報ではない。
3 争点(1)ウ(本件各情報の非公知性)について 〔原告の主張〕 (1) 本件各情報は,公然と知られていない。
(2) 原告の営業行為によって取引関係を得た顧客に関する情報は,公然と知られていない。仮に,電話番号やFAX番号そのものが電話帳に記載されていたとしても,本件の顧客が原告の顧客であること自体が公開されていないのであるから,原告の顧客の電話番号やFAX番号も,公開のものではない。
〔被告らの主張〕 原告の顧客名,電話・FAX番号の情報は,顧客名が分かれば電話帳,インターネット又は業界名鑑等によって容易に最新のものを入手することができる公然と知られている情報である。そして,被告らは,約20社の顧客名を記憶している。したがって,いずれの情報も公然と知られた情報である。
4 争点(2)(被告らが原告から示された本件各情報を使用したか)について 〔原告の主張〕 原告は,原告の日常業務のため,被告Aら原告の従業員に対し,各従業員が保有しているパソコン内に,原告の営業秘密である顧客の住所・電話番号,受託した企画の単価,登録アルバイト員のリストを記録させていたほか,登録アルバイト員の氏名・電話番号各従業員の携帯電話に入力させ,その情報の使用を許諾していた。このように,被告らは,原告から示された営業秘密を現に保有し,使用している。
〔被告らの主張〕 (1) 原告の主張のうち,原告の各従業員が,各自の所有するパソコン内に,顧客の住所・電話番号,受託した企画の単価,登録アルバイト員のリストを入力保存していた事実及び各自の所有する携帯電話に登録アルバイト員の氏名・電話番号を入力保存していた事実はいずれも認めるが,これらのデータの入力保存が,原告が指示して記録させたものであるとの事実は否認する。
(2) 本件情報@について 本件情報@のうち,被告らが現に保有している情報は,被告らが記憶している約20社の顧客名,電話・FAX番号である。これらの情報は,顧客名が分かれば電話帳,インターネット又は業界名鑑等によって容易に最新のものを入手することができる公然と知られている情報であり,被告らはこれらを通じて取得したに過ぎず,原告から示された情報ではない。
(3) 本件情報Aについて 被告らは,本件情報Aのうち,アルバイト員の生年月日,最寄り駅,スーツ保有の有無,運転免許保有の有無,髪型・髪色・ピアスの有無,備考欄記載の情報は保有していない。被告らは,アルバイト員の氏名,携帯電話の番号及び電子メールアドレス(これは,登録アルバイト員リスト,履歴書,登録表には記載されていない。)を保有しているが,これらの情報は,被告らがアルバイト員から直接聴取して取得した最新のものである。したがって,原告の本件情報Aに記載された内容とは一致しないものもあり,それらは,原告から示された情報ではない。
5 争点(3)(原告が被った損害の有無及び額)について 〔原告の主張〕 (1) 逸失利益 ア 原告は,被告らの不正競争行為によって,有限会社ハーフラインプロデュース,有限会社ムーンクリエイティブ及び株式会社タムコからの下請業務を受注できなかったばかりか,深刻な顧客離れが生じた。原告がいったん得た顧客は,その後も継続してイベント業務を発注してくるのが常であり,最低向こう5年間の取引は並行して得られるのが通常であった。しかるに,原告は,被告らの不正競争行為によって,年間約800万円,平成14年以降5年間で合計約4000万円以上売上げが減少する。そして,平均利益率を25%とすると,平成14年以降5年間に失う得べかりし利益は,1000万円を超える。
イ 原告は,平成14年10月から平成15年3月にかけて,被告会社の違法な介入により,原告の登録アルバイト員が原告の仕事を受任しなかったため,20件のイベントについては,自社の登録アルバイト員を派遣できず,すべて他社に外注せざるを得なかった。これらについては売上高に算入されているが,かえって外注先に対し自社で行うときの金額より高い金額を支払わなくてはならず,原告は,これによって合計24万6750円の得べかりし利益を失った。
(2) 積極損害 ア 原告は,被告会社による不法な介入により,新たにアルバイト募集の広告(消費税込み1回4万7250円)を5回出さざるを得ず,合計23万6250円を支出させられた。
イ 原告は,事務所の安全管理のため,鍵の付け替え(消費税込み9450円),新たな合い鍵の作成(消費税込み1417円),盗聴器発見器の購入(消費税込み2万0790円)を余儀なくされ,そのために3万1657円を費やした。
(3) 原告は,(1)及び(2)の合計の損害を被ったものであり,原告の被った損害は,1000万円を下らない。
〔被告らの主張〕 〔原告の主張〕は,否認ないし争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)ア(本件各情報の秘密管理性)について (1) 不正競争防止法における「営業秘密」に該当するためには,@ 秘密として管理されている情報であること(秘密管理性),A 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性),B 公然と知られていない情報であること(非公知性)の3つの要件を充足する必要がある(同法2条4項)。
原告は,前記争いのない事実等(3)記載のとおり本件各情報を保有し,それらの情報が同法2条4項営業秘密に該当する旨主張するので,以下,まず,本件各情報が秘密として管理されていたか否かを検討する。
(2) 前記争いのない事実等に証拠(甲5の2,8,9の1ないし5,10の1ないし3,11,16,乙1,3)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の各事実が認められる。
ア 原告には,原告代表者の外,従業員3名が勤務し,肩書地に1部屋の事務所(以下「原告事務所」という。)を設置し,イベントを実施する主催者のサポート業務等を日常業務の1つとしている。イベントを実施する主催者のサポート業務は,通常,主催者がイベント制作の元請に制作発注し,原告は,イベント現場の運営や管理等につきその元請から下請を受注する。原告は,「トップ・ギア」というコンサート・イベント事業部門を有しているところ,その業務は,コンサートやイベントの現場において,音楽機材等の搬入・搬出,チケットのもぎり,チラシやアンケートの配布・回収,本番中の警備,物販等の実働を担当することであった。
原告は,現場へは登録アルバイト員を派遣して上記の実働を行わせている。
イ 被告Aは,平成11年10月,原告にアルバイト員として登録され,平成13年1月に原告に入社し,以後平成14年10月末まで原告の正社員として勤務した。同被告は,原告のコンサート・イベント事業部門である「トップ・ギア」部門を率い,アルバイト員の採用,顧客からの仕事の受注,アルバイト員の手配,イベント会場における作業の指示等の業務を行っていた。
被告Bは,平成13年12月23日から平成14年10月下旬まで,被告Cは,平成10年4月21日から平成15年4月まで,被告Dは,平成11年2月から平成15年4月まで,それぞれ原告にアルバイト員として登録されていた。
上記被告ら3名は,上記「トップ・ギア」部門に所属していた。
原告と被告A,同B,同C及び同Dとの間で,秘密保持の約定等は締結されていない。
ウ 履歴書及び登録表 原告は,アルバイト情報誌によりアルバイト員を募集し,原告代表者又は被告A若しくはEが,これに応募してきた者と面接した。応募者は,その際,履歴書を原告に提出するとともに,面接前には原告が用意した登録表に自己の氏名,生年月日,住所,経歴,運転免許保有の有無の情報(本件情報B),その他の情報を記入し,原告に提出した。面接の結果,通常全員合格となり,原告にアルバイト員として登録された(以下「登録アルバイト員」という。)。
原告は,登録アルバイト員の提出した履歴書及び登録表をファイルにつづり,原告事務所の入り口を入り右手奥に存在する扉のない書棚(以下「扉なし書棚」という。)にそれを保管していた。上記ファイルは,3冊に分かれ,それぞれ背表紙に大きく「登録者リスト(女性)」,「登録者リスト(ア〜カ行)」,「登録者リスト(サ〜ワ行)」とゴシック体の文字が書かれ,いずれもその題名の上に横書きで赤文字の「社外秘」と書かれたラベルが貼られていた。この「社外秘」のラベルは,Eが原告に入社した平成10年10月ころに作成して各ファイルに貼付したものであり,それ以降,現在まで貼付されたままである。したがって,被告Aが従業員として原告に在籍していた平成13年1月から平成14年10月までの間も,同様に上記ラベルが貼付されていた。
エ 登録アルバイト員リスト 原告は,原告事務所内に存在する原告所有のパソコン内に上記ウで登録アルバイト員から提出された登録表の情報を入力し,登録アルバイト員リストを作成していた。登録アルバイト員リストには,登録アルバイト員の氏名,生年月日,最寄り駅,連絡先,携帯電話番号,スーツ保有の有無,運転免許保有の有無,髪型・髪色・ピアスの有無,備考欄記載の事実の情報(本件情報A)が入力されていた。登録アルバイト員リストは,新たなアルバイト員が登録される都度,被告A又は原告従業員F(以下「F」という。)が更新していた。
原告は,本件情報Aをプリントアウトした登録アルバイト員リストを,上記ウの扉なし書棚の右隣りに存在する扉付き書棚(以下「扉付き書棚」という。)中段に置かれた書類キャビネットの引出しの中に,他の書類とともに保管していた。上記引出しの表側には,「トップギア資料」とゴシック体の文字が書かれ,その右横に赤文字で「(社外秘)」と書かれたラベルが貼付されていた。また,これらの表示の左側には,これらの文字より少し大きめに,赤文字で「持出し厳禁」と書かれたラベルが貼付されていた。これらの「トップギア資料(社外秘)」及び「持出し厳禁」のラベルは,Eが原告に入社した平成10年10月ころに作成して貼付したものであり,それ以降,現在まで貼付されたままである。したがって,被告Aが従業員として原告に在籍していた平成13年1月から平成14年10月までの間も,同様に上記ラベルが貼付されていた。
原告は,本件情報Aをプリントアウトした登録アルバイト員リストを上記引出しに保管するとともに,各従業員にアルバイト員の選定と配置を迅速にさせる必要があることから,被告Aら従業員全員に配布していた。被告Aら従業員は,それを机の中に保管したり,かばんに入れて持ち歩いていた。なお,原告が,プリントアウトした登録アルバイト員リストの配布に際し配布部数を確認したり,更新されたリストの配布に際し古いリストをすべて回収するなどという管理を行っていたと認めるに足りる証拠はない。
オ 顧客リスト 原告は,原告事務所内に存在する原告所有のパソコン内に,原告に業務を発注する顧客の情報を入力して,顧客リストを作成していた。顧客リストには,顧客名,顧客の担当者名,電話番号,FAX番号の情報(本件情報@),その他の情報が入力されていた。
原告は,本件情報@をプリントアウトした顧客リストを,上記登録アルバイト員リストと同様,扉付き書棚中段に置かれた書類キャビネットの,「トップギア資料(社外秘)」及び「持出し厳禁」のラベルの貼付された引出し中に保管していた。同時に,原告は,本件情報@をプリントアウトした顧客リストを被告Aら従業員全員に配布していた。被告Aら従業員は,それを机の中に保管したり,かばんに入れて持ち歩いていた。なお,原告が,プリントアウトした顧客リストの配布に際し配布部数を確認したり,更新されたリストの配布に際し古いリストをすべて回収するなどという管理を行っていたと認めるに足りる証拠はない。
カ 見積書 被告A,Fら原告の従業員は,受注するイベントの見積書を各自作成していた。具体的には,各従業員個人が所有するパソコンで見積書を入力し,原告所有のパソコンに電子メールで送信したり,フロッピーディスクによりデータを原告所有のパソコンに移したり,あるいは,直接原告所有のパソコンに入力して作成した。見積書には,顧客名,会場名,催物名,見積金額,催物の日付・時間帯・受注事項の情報(本件情報C)が入力され,プリントアウトしたものが顧客に郵送される。原告は,会社用控えをプリントアウトせず,本件情報Cを原告所有のパソコン内に保管していた。
キ 原告事務所及び書棚の鍵の管理 原告事務所は,原告代表者及び従業員3名の合計4名が自由に出入りできる部屋であり,入口は1か所あり,原告代表者及び従業員全員がその鍵を保有している。
扉付き書棚の鍵は2個あり,原告代表者及びEが所持していた。営業時間中扉付き書棚は施錠せず,鍵は,書棚の中の袋に入れて保管していた。業務終了後は,原告代表者又はEが扉の鍵を閉め,鍵を各自の机に保管し,机の鍵を閉めて,その鍵を原告代表者及びEが自宅に持ち帰った。ただし,被告Aが原告従業員の中で最も退社が遅いことが毎週2,3日程度あったが,その際は,原告代表者もEも扉付き書棚に施錠せずに帰宅した。朝は,原告代表者又はEのうち早く出社した方が,扉付き書棚の鍵を開けた。被告Aは,扉付き書棚の鍵を持っていなかったし,原告従業員の中で最も出社が遅かったため,扉付き書棚の鍵を開けることはなかった。
扉なし書棚には,鍵のかかる扉はなく,その中にある「登録者リスト」等のファイルは,原告代表者及び従業員全員が自由に閲覧できるものであった。
ク 原告所有パソコン内の情報の管理 原告事務所内の原告所有パソコンには,上記エないしカ記載の本件情報@,A及びCが保有されていたが,このパソコンにはパスワードが設定されておらず,原告代表者及び従業員全員が自由に各情報にアクセスして閲覧することができた。
ケ 被告A所有のパソコン及び携帯電話内の情報 被告Aは,ウインドウズのA4型のノートパソコンを所有していた。同被告は,上記パソコンに,顧客のリスト,登録アルバイト員のリスト,イベントのスケジュールや現場の場所,配置アルバイト員などの情報を入力し保有していた。
また,自己所有の携帯電話に顧客及びアルバイト員の電話番号を記録し保有していた。原告代表者は,原告の従業員が登録アルバイト員に連絡し,日程の合う者を選び,仕事を発注するという業務をするという必要性から,従業員が自己所有のパソコン及び携帯電話に上記のような情報を保有することを許諾していた。
また,被告Aは,上記パソコン及び携帯電話に登録アルバイト員の氏名,携帯電話番号の外に電子メールアドレスを入力して保有していた。登録アルバイト員の氏名,携帯電話の番号及び電子メールアドレスの情報は,被告A及び現場で実働する登録アルバイト員の間で互いに教えあっている情報であり,被告Aも,これらの者の電子メールアドレスを直接聴取してパソコン及び携帯電話に入力していた。
被告Aは,登録アルバイト員との連絡に際し,口頭の連絡であると聞き間違いや言い間違いなどが生じるおそれがあると考え,これを避けるため,平成13年6月ころから,電子メール機能を備えた携帯電話を利用して,登録アルバイト員との連絡を行うようになった。これに対し,原告代表者は,電子メールでのやりとりでは相手がその電子メールを見るかどうか確認が取れず,予想外の事故が生じる危険があるということで,電子メールで登録アルバイト員と連絡を取ることを嫌い,被告Aを含む原告の従業員に対し,電子メールでの連絡を禁止する旨の注意を与えたことがあったが,被告Aは,原告退職時まで電子メールでの連絡を継続していた。
コ 被告Aの退職時の状況 被告Aが原告を退職する際,Fは,同被告から引継ぎを受けたが,引き継いだものは,アルバイト員の同意書の書式の入ったフロッピーディスク1枚だけであり,本件情報@及びAに関するフロッピーや,これらをプリントアウトした顧客リスト及び登録アルバイト員リストは含まれていなかった。退職時,被告Aは,自己所有のパソコンを持参していなかったが,原告代表者は,被告Aに対し,「パソコンのデータは消しとけよ。」と言って,パソコン内のデータの消去を指示した。
サ 被告Aが現在保有している情報 被告Aは,現在,原告の登録アルバイト員の住所,氏名,携帯電話番号,電子メールアドレス,原告の顧客の名称,電話番号,FAX番号,担当者名の情報を,自己所有のパソコンないし携帯電話内に保有している。
(3) 情報が営業秘密として管理されているか否かは,具体的事情に即して判断されるものであり,例えば,当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていること及び当該情報にアクセスできる者が制限されていることなどといった事情や,パソコン内の情報を開示した場合はこれを消去させ,又は印刷物であればこれを回収し,当該情報を第三者に漏洩することを厳格に禁止するなどの措置を執ることなどといった事情がある場合には,当該情報が客観的に秘密として管理されているということができる。
ア 本件情報@について 前記(2)オ,ク,ケ認定のとおり,本件情報@については,そのデータが原告従業員全員が閲覧可能な原告所有のパソコンに保存され,そのパソコンにはパスワードの設定もなく,原告は,本件情報@をプリントアウトした顧客リストを全従業員に配布しており,被告Aら原告の従業員は,このリストを机の引出しに保管していたかあるいはかばんに入れて持ち歩いており,原告代表者は,被告Aが自己所有のパソコン及び携帯電話に本件情報@を保有することを許諾していたものである。他方,原告が,原告所有のパソコンにアクセスできる者を制限する措置を執ったり,各従業員に配布した顧客リストのコピー数を確認し同数のコピーを事後回収するといった措置を執ったり,配布した顧客リストに関する情報あるいは被告Aが自己所有のパソコン及び携帯電話に入力した上記情報を第三者などに漏洩することを厳格に禁止するなどの措置を執ったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,原告は,本件情報@を客観的に秘密として管理していたとはいえない。
なお,本件情報@をプリントアウトした顧客リスト1部が,原告代表者及びEが鍵を管理している扉付き書棚中の書類キャビネットの「持ち出し厳禁」,「社外秘」の表示のある引出しに収められていたことは,前記(2)オ,キ認定のとおりであるが,それ以外にプリントアウトされた顧客リストが各従業員に配布され,それについて秘密として管理されていなかったのであるから,上記認定を覆すに足りない。
イ 本件情報Aについて 前記(2)エ,ク,ケ認定のとおり,本件情報Aについては,本件情報@と同様,そのデータが原告従業員全員が閲覧可能な原告所有のパソコンに保存され,そのパソコンにはパスワードの設定もなく,原告は,本件情報Aをプリントアウトした登録アルバイト員リストを全従業員へ配布しており,被告Aら原告の従業員は,このリストを自分の引出しに保管していたかあるいはかばんに入れて持ち歩いており,原告代表者は,被告Aが自己所有のパソコン及び携帯電話に本件情報Aを保有することを許諾していたものである。さらに,本件情報Aは,登録アルバイト員の電子メールアドレスと合わせて,被告A及び現場で実働する登録アルバイト員の間で互いに交換され,被告A及び登録アルバイト員は,上記情報及び電子メールアドレスを自己のパソコンあるいは携帯電話に入力していたものである。他方,原告が,原告所有のパソコンにアクセスできる者を制限する措置を執ったり,各従業員に配布した登録アルバイト員リストのコピー数を確認し同数のコピーを事後回収するといった措置を執ったり,配布した登録アルバイト員リストに関する情報あるいは被告Aが自己所有のパソコン及び携帯電話に入力した上記情報を,登録アルバイト員を含めた第三者に漏洩することを厳格に禁止するなどの措置を執ったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,原告は,本件情報Aを客観的に秘密として管理していたとはいえない。
なお,プリントアウトした登録アルバイト員リスト1部が「持ち出し厳禁」,「社外秘」の表示のある引出しに収められていたとしても上記認定を覆すに足りないことは,上記アと同様である。
ウ 本件情報Bについて 前記(2)ウ,エ認定の事実によれば,履歴書及び登録表に記載された本件情報Bのうち,登録アルバイト員の住所及び経歴を除く情報は,原告所有のパソコン内の登録アルバイト員リストに入力される基礎となる情報である。本件情報Aが客観的に秘密として管理されていなかったことは,前記イのとおりであるから,この基礎となった履歴書及び登録表記載の上記情報も,秘密として管理されていたということはできない。
本件情報Bのうち,登録アルバイト員の住所及び経歴は,登録アルバイト員リストに転記されていないところ,上記(2)ウ認定のとおり,履歴書及び登録表がつづられたファイルの背表紙には,赤文字で「社外秘」と記載されている。しかしながら,当該ファイルが保管されている書棚には扉がなく,当該ファイルにアクセスする者を一定の者に制限するといった措置も執られておらず,従業員が自由に閲覧できるものであったことは,前記(2)キ認定のとおりである。原告事務所には,原告代表者及び従業員を併せて4名という極めて少人数の社員が勤務しているため,業務時間中書棚に鍵をかけたり,上記ファイルにアクセスする者を一定の者に制限することは業務の円滑な遂行の観点から困難であるとしても,かかる状況下において,例えば,就業規則で定めたり,又は誓約書を提出させる等の方法により従業員との間で厳格な秘密保持の約定を定めるなどの措置や,例えば,コピーを取る場合に配布部数を確認したり,使用後そのコピーを回収する等の方法により用途を厳格に制限するなどの措置を執ることは十分可能であるにもかかわらず,原告がそのような措置を執っていなかったことは,前記(2)イ,エ,オ認定のとおりである。
以上によれば,本件においては,原告が履歴書及び登録表に記載された本件情報Bを客観的に秘密として管理していたということはできない。
エ 本件情報Cについて 前記(2)カ,ク認定のとおり,本件情報Cは原告所有のパソコンに保管されており,被告Aら原告従業員は,それぞれ各自が所有するパソコンあるいは原告所有のパソコンにおいて見積書を作成していたものである。他方,原告が,原告所有のパソコンにアクセスできる者を制限する措置を執ったり,原告従業員各自が所有するパソコンで見積書を作成した場合に,その情報を直ちに消去することを徹底して指導したり,上記情報を第三者に漏洩することを厳格に禁止するなどの措置を執ったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,原告は,本件情報Cを客観的に秘密として管理していたとはいえない。
(4) 以上によれば,原告が保有していた本件各情報は,被告Aが原告に在籍していた当時,いずれも秘密として管理されていたとはいえず,不正競争防止法2条4項所定の営業秘密に該当するということはできない。
2 結論 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 上田洋幸
裁判官 宮崎拓也
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