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事件 |
令和
4年
(ネ)
2081号
不正競争行為差止等請求控訴事件
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令和5年4月27日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官 令和4年(ネ)第2081号 不正競争行為差止等請求控訴事件(原審・大阪地方 裁判所令和2年(ワ)第4530号) 口頭弁論終結の日 令和5年1月31日 5判決 控訴人(一審原告) 有限会社トオヤ 同訴訟代理人弁護士 藤沼光太 同 小林幸夫 同 平塚健士朗 10 同訴訟代理人弁理士 服部秀一 同補佐人弁理士 廣瀬哲夫 同 鈴木佑子 被控訴人(一審被告) 有限会社財津釣具 同訴訟代理人弁護士 遠藤光太郎 15 同千葉康博 |
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裁判所 | 大阪高等裁判所 |
判決言渡日 | 2023/04/27 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
20 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、原判決別紙被告商品目録記載1ないし5の商品を譲渡し、引き 渡し、譲渡又は引渡しのために展示し、輸出し、輸入してはならない。 3 被控訴人は、前項記載の商品を廃棄せよ。 25 4 被控訴人は、控訴人に対し、386万円及びこれに対する令和2年3月6日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 6 仮執行宣言 第2 事案の概要 以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。 5 1 事案の要旨 ? 本件は、釣り具のうきである原告商品を製造販売する控訴人が、同じくう きである被告商品を製造販売する被控訴人に対し、被告商品1及び被告商品 3〜5の形態が原告商品1〜9の形態(ZF形態)に、被告商品2の形態が 原告商品10及び11の形態(SP形態)にそれぞれ類似しており、被控訴10 人による被告商品の販売は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条 1項1号所定の不正競争行為に該当すると主張して、同法3条 1 項に基づき、 被告商品の譲渡、引渡し、譲渡又は引渡しのための展示、輸出及び輸入の差 止め、同条2項に基づき、被告商品の廃棄をそれぞれ求めるとともに、同法 4条に基づき、前記不正競争行為によって控訴人が被った損害386万円及15 びこれに対する当該行為の後の日(被告商品の販売中止を求める催告をした 日の翌日)である令和2年3月6日から支払済みまでの平成29年法律第4 4号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め ている事案である。 ? 原審は、原告商品1〜11の形態が不競法2条1項1号にいう「他人の商20 品等表示として需要者の間に広く認識されているもの」に該当するとはいえ ないと判断し、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする 控訴人が本件控訴を提起した。 2 前提事実 次のとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の2(原判決225 頁14行目から3頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用す る。 ? 原判決3頁12行目の「ゴム管、」の後に「ゴム管に装着して使用するた めに(ゴム管着脱方式)、原告商品1ないし12については長短2種類、原 告商品13及び14については1種類のトップが付属し、」を挿入する。 ? 原判決3頁25行目末尾に改行し、次のとおり加える。 5 「 被告商品も、「棒うき」の一種であり、うき本体(ボディ)とトップ(魚 信部材)が分離しており、トップの装着方法は、被告商品3についてはねじ 型着脱方式、それ以外の被告商品についてはゴム管着脱方式を採用している。 (甲83)」 3 争点10 原判決「事実及び理由」欄の第2の3(原判決3頁26行目から4頁6行目 まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 4 当事者の主張 下記5において当審における当事者の補充主張を加え、次のとおり補正する ほか、原判決「事実及び理由」欄の第2の4(原判決4頁7行目から14頁815 行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ? 原判決4頁18行目の末尾に改行して「E ゴム管の上部に複数の蛍光色 が塗り分けられているトップが接続している。」を加える。 ? 原判決4頁26行目の末尾に改行して「E ゴム管の上部にオレンジ蛍光 色が塗られたトップが接続している。」を加える。 20 5 当審における当事者の補充主張 (控訴人の主張) 原告商品に係る形態に商品等表示性があり、被告商品と誤認混同のおそれが ある。SP形態である原告商品10及び11と被告商品2を中心に述べると以 下のとおりである。 25 ? 特別顕著性があること ア 原告商品と被告商品の需要者はいずれも自立うきの需要者であるところ、 うきは、ボディの形状の違いにより性能が大きく違うものである。特に原 告商品や被告商品の需要者である自立うきの使用者であれば、膨れの位置 やうきの大きさは、釣り場・天候・水深・風の強さ・潮の流れ等に合わせ てふさわしいうきを選ぶための重要な情報であって、この微細な違いが他 5 の商品と原告商品の差を生み出している。そのため、需要者は、その微細 な違いに着目して商品を選択することから、ボディの形態をもって特別顕 著性があるというためには、ほかのうきとはかけ離れた「特異な形態」を 備えている必要はなく、ほかのうきにはない形態を備えていれば足りる。 イ そして、木製黒色のボディ下部が下膨れ形状をした自立うきが控訴人の10 商品と認識されていることは、釣り雑誌類等の記事から裏付けられている。 この点、SP形態と他社商品の形態の違いを整理すると、別紙SP形態と 他社商品の形態の違い一覧表のとおりであり、特に、全長と下膨れ最太部 の直径の比率は、うき全体を観察した際に、太めのうきとの印象を与える か、細めのうきという印象を与えるか重要な部分であり、また、ゴム管の15 直径と下膨れの最太部の直径の比率は、下膨れの程度のイメージを決定す る重要な部分であるところ、原告商品と他社の商品はこれらの比率が異な っている。また、うきのトップはアタリを見たり、餌の状態を確認したり するために、基本的に水に沈まずに水面上に突き出ている一方で、ボディ 部分は使用時に水面下に沈むところ、原告商品の黄白色の部分は、水面下20 に沈む部分、すなわち、ボディ部分の上部に塗布されているという点で他 社商品にない特徴となっている。 ウ そもそも、下膨れ形状のうきを継続して大量に製造販売するには技術的 な困難性を伴うところ、自立うきの中で、原告商品10及び11が販売さ れる前の昭和57年時にはすでに下膨れ形状のうきの一般名称を控訴人の25 商品である「遠矢うき」と称されていたことや、その後も自立うきの代名 詞として「遠矢うき」が認識されていたこと、他社のうきにSP形態の有 する特徴の一つ又は二つを有するものはあったが、SP形態のとおりの特 徴や全長と下膨れの最太部の直径の比率が約1:0.13、ゴム管の直径 と下膨れの最太部の直径の比率が1:2.66〜3となる商品はこれまで に存在していなかったことからすると、原告商品のSP形態はうきの形態 5 としては特別顕著であるといえる。 エ そして、下膨れ形状のうきを長期間販売したのは控訴人だけであり、Z F形態を有する下膨れのうきが多くの雑誌に掲載され、下膨れ形状のうき である「遠矢うき」が需要者の間で周知である状況のもと、SP形態のう きが販売され短期間に多くの雑誌で取り上げられたことからすると、SP10 形態は控訴人の商品を示す表示として周知になっており、SP形態に商品 等表示性を認めることができる。 ? 周知性について 原告商品と被告商品の需要者は、いずれも自立うきの需要者であるから、 その間で周知になるためには、一般消費者全部を対象とする全国的な新聞や15 テレビ等のマスメディアで広告する必要はなく、釣りの専門雑誌で十分であ る。そして、原告商品である遠矢うきの製作者であるP1は、クロダイ(チ ヌ)釣りの世界で「名人」と称され、多くの雑誌で特集が組まれる程度に同 業界で著名な人物であり、また、P1が、下膨れのうきである「遠矢うき」 の製作者であることも、同業界では広く知られている。自立うきの需要者は、 20 その有名なP1が作成した自立うきだからこそ、原告商品を手に取る機会も 多く、その形状も含めて詳細に観察するから、原告商品の形態と原告の商品 であるという出所を結び付けて理解する。控訴人が実施した需要者に対する アンケート(甲152)は、中立性が保たれ信用できるものであるが、これ によっても原告商品の形態が周知であることが裏付けられている。 25 したがって、原告商品の形態は周知である。 ? 誤認混同について 原告商品10及び11の形態と被告商品2の形態は、ボディ全長とボデ ィ下部の最太部の比率が、前者が1:0.13、後者が1:0.125とや や異なるものの、その違いは、うきを注視しても容易に区別可能な程度の違 いではないことから、両商品の形態におけるボディ全長とボディ下部の最太 5 部の比率は近似している。被告商品2の形態は、原告商品10及び11の商 品等表示である形態の特徴を全て共通にすることから、両商品の商品等表示 は類似するものといえ、被告商品2の需要者である錘内蔵型の自立うきの需 要者に対し、被告商品2が原告の営業に係る商品であると誤認させるおそれ がある。 10 (被控訴人の主張) ? 特別顕著性について 控訴人が主張するように、需要者がうきの選択に際してその形状を考慮 しているなら、それはデザイン性そのものに着目して選択しているのではな く、うきの性能を推知させる事情として考慮しているにすぎない。そして、 15 機能ないし効果と必然的に結びつく形態は、本来、発明ないし考案として、 特許法等の工業所有権法により一定の期間独占的地位を保障されることを通 じて保護されるべきものであり、不競法2条1項1号にいう「商品等表示」 に該当しないというべきである。 したがって、ボディの形態をもって特別顕著性があるというためには、他20 のうきとはかけ離れた特異な形状を備えている必要があり、かつ、その形状 が商品の機能ないし効果と必然的に結びつくようなものでないことが必要で ある。 色彩・配色についても、ありふれた色彩について、控訴人にその独占的使 用を認めると、他の者は自らの商品に付する色彩の選択肢の範囲を狭められ、 25 極端にいえば最後発の業者は商品に付する色彩がなくなってしまうというよ うな事態にもなりかねないから、不競法2条1項1号による保護を与えられ ない。うきという商品の性質上、うきのボディのうち水面から出ているボデ ィ上部の色は、使用者(釣り人)が遠方から見て判別が容易な色とするのが 通常であるといえることから、ボディの色に黒と黄色(等の蛍光色)が採用 されるのは自然であり、かかる配色が出所表示機能を有するとは考え難い。 5 なお、控訴人は、自立うきと非自立うきの需要者が競合しないことを前提 に、原告商品と被告商品の需要者が自立うきの需要者に限られる前提で主張 しているが、一般に、需要者が自立うきと非自立うきのいずれか一方の需要 者としかなり得ないとする根拠はなく、そもそも棒うきの需要者に限定する 根拠すらない。 10 ? 周知性について 商品の形態が商品等表示として不競法上の保護を受けるためには、特定の 事業者によって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極 めて強力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の 出所を表示するものとして周知である(周知性)ことが必要とされる。 15 したがって、単に雑誌等で頻繁に紹介されていたという事情があったから といって、周知性は認められない。 控訴人は、控訴人の前代表者であるP1が有名であることを強調するが、 そのことはZF形態及びSP形態の周知性を基礎づける事情とはならない。 むしろ、P1が有名な釣り人あるいはうき製作者であるゆえにその製作に係20 る控訴人の商品が周知であるとすれば、控訴人の商品は、その形態のいかん にかかわらず、P1が製作した「遠矢うき」としてその名称において識別さ れることになる。「遠矢うき」の中には、ボディ下部の膨らみを備えないも のやボディが黒色でないものも存在していることを考えれば、「遠矢グレ」 等の名入りの有無によって需要者が控訴人の商品を識別しているものという25 ほかなく、ZF形態及びSP形態自体が周知性を有しているということはで きない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告商品1〜11の形態の商品等表示該当性)について 当裁判所も原告商品1ないし11の形態は、不競法2条1項1号にいう「他 人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの」、すなわち商品 5 等表示に該当するとはいえないと判断する。その理由は、次のとおり補正する ほか、原判決「事実及び理由」欄の第3(原判決14頁9行目から29頁1行 目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ? 原判決24頁11行目冒頭から同頁25行目末尾までを次のとおり改める。 「? 不競法2条1項1号の趣旨は、周知な商品等表示の有する出所表示機10 能を保護するため、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用 を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止することによ り、同法の目的である事業者間の公正な競争を確保することにあると解 される。 そして、不競法2条1項1号は、「商品等表示」について、「人の業15 務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商 品又は営業を表示するもの」と規定しているところ、商品の形態は、商 標等とは異なり、本来的には商品の出所を表示する目的を有するもので はない。しかしながら、商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的 意味を有するに至った場合には、法2条1項1号の趣旨に照らし、当該20 形態の出所表示機能が不競法によって保護される余地があると解される。 そして、商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し、不 競法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当するといえるためには、 「商品等表示」が「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容 器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」と規定されてい25 ることに照らし、@ 商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕 著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、A その形態が特定の事 業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な宣伝広告や爆 発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定 の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性) を要すると解するのが相当である。 5 そこで、以下、原告商品1ないし11について検討する。」 ? 原判決25頁1行目の「これを本件についてみると、」を削る。 ? 原判決25頁4行目の「使用時には」から同頁5行目の「状態であり、」 までを削る。 ? 原判決27頁25行目冒頭から28頁4行目末尾までを次のとおり改める。 10 「 さらに、前記前提事実によれば、控訴人は、釣りの専門雑誌や書籍等に広 告や記事を掲載しており、これらはうきの需要者である釣り愛好家間で原告 商品について一定の宣伝効果を有するものということができるが、その広告 や記事の内容はうきの形態そのものより製作者であるP1が製作したうきで あることが強調ないし印象づけられるものであるから、これから原告商品の15 形態そのものに周知性が生じるほどの極めて強力な宣伝広告が行われていた とは認められない。」 ? 原判決28頁15行目の「識別しているもの」から同頁16行目の「でき ない」までを「識別しているものと認めるほかない」に改める。 ? 原判決28頁16行目の末尾に改行の上、次のとおり加える。 20 「ウ そうすると、ZF形態及びSP形態を含む原告商品1〜11の形態に周 知性があると認めることはできない。」 ? 原判決28頁17行目の「ウ」を「エ」に改める。 2 当審における当事者の補充主張について ? 控訴人は、需要者は、うきの選択に際してその形状の微細な差に着目して25 商品選択をするから、特別顕著であるといえるためには、かけ離れた特異な 形態を備えている必要はなく、他のうきにはない形態を備えていれば足りる と主張する。 しかし、証拠(甲155、156、乙26、証人P2(原審)、控訴人代 表者(原審)、被控訴人代表者(原審))及び弁論の全趣旨によると、釣り 具のうきの形態は、時代によって変化してきているが、その変化は、他の商 5 品一般に見られるような需要喚起のための装飾的観点からのものではなく、 より良い釣果を上げるための技術的工夫がうきの形態に反映され、徐々に改 良されていった結果であると認められるところ、より良い釣果を求めてうき に対して加えられる技術的工夫は、機能及び効用の側面等から自ずと一定の 範囲に収れんすることになるため、商品ごとの形態の差は細部に及ぶ上、そ10 の差は微細なものになることが認められる。 そうすると、需要者が、より多くの釣果を求めて釣り具の選択をする際、 その形状や色彩を釣り具の性能を推知する資料として観察するとしても、も ともと形態の差が細部に及ぶ微細なものである上、そもそも外観から観察し てうきの性能の優劣自体を判断することには自ずと限度があることから(控15 訴人が自立うきの性能を決する上で重要である旨主張する錘の量及び錘の位 置は、うきの形態からは分からないはずのものである。)、結局、需要者は、 棒うき、円錐うき等といったうきの種類を商品形態によって見分けるとして も、その中で、さらに微細な商品形態の差に依拠して商品選択をするとは考 えられず、それよりも、釣り仲間や雑誌等の情報から得られる商品やその製20 造者の評判ないし評価を主に参考にして商品を選択しているものと考えられ る。そうすると、上記のような商品群の中における商品選択の在り方を前提 にして、商品形態に特別顕著性があるといえるためには、他のうきとはかけ 離れた特異な形態であることが必要であって、これに反する前提に立つ控訴 人の主張は採用できない。そして、原告商品が他社のうきとはかけ離れた特25 異な形態であるとも認められないから、その商品形態に特別顕著性があると いうことは到底できない。 また、控訴人は、原告商品に用いられた色彩にも特徴があるように主張す るが、その付された色彩は、明らかに釣り人が遠方から見て判別が容易な色 が選択されており、その色彩は、そのような目的において採用され得る色彩 の中でありふれたものにすぎないから、その彩色部分が他のうきと少し異な 5 っていたからといって原告商品の色彩が出所表示機能を有するようになった とは到底認められない。 ? なお、補正の上引用した原判決「事実及び理由」欄の第3の2?エ(原判 決21頁10行目から同頁26行目まで)の記載に係る認定事実及び甲16 3の1ないし121、甲165の1ないし27によれば、原告商品の製作者10 である控訴人の前代表者のP1は、クロダイ(チヌ)釣りの世界で「名人」 と称され、多くの雑誌で特集が組まれる程度に同業界で著名な人物であり、 原告商品がそのP1が製作したうきであるという事実も多くの雑誌で紹介さ れている事実が認められるから、原告商品は、P1が製作したうきとして釣 り愛好家の間で知られている商品であること自体は認められる。しかし、前15 記のとおり、需要者は、主に商品やその製造者の評判ないし評価を参考にし て商品を選択すると考えられることからすると、需要者は、原告商品を、そ の商品名を手掛かりとして、有名なP1が製作したうきであると認識した上 で他の商品から識別して認識するものと考えられる(現に原告商品自体のみ ならず、そのパッケージには、P1が製作したうきであることが一目で分か20 るよう行書体からなる「遠矢」の文字が記載されており、これによって他社 の商品であるうきと識別されていると認められる。)。 そうすると、周知性という点では、原告商品について、これを認める余地 があるが、それはあくまで「遠矢」ないし「遠矢うき」という商品名と結び ついて知られているものと認めるのが合理的であって、その商品形態の周知25 性を裏付けるものではないというべきである。 ? したがって、原告商品1ないし11の形態は不競法2条1項1号に規定す る「商品等表示」に該当するとは認められないから、不競法2条1項1号該 当を前提とする控訴人の被控訴人に対する請求は理由がないというほかない。 3 結論 以上によると、その余の点について検討するまでもなく、控訴人の被控訴人 5 に対する請求は理由がないからいずれも棄却すべきであるところ、これと同旨 の原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。よって、本件控訴を棄却する こととして、主文のとおり判決する。 |
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10裁判長裁判官森崎英二15裁判官20渡部佳寿子裁判官25岩井一真-13-(別紙)SP形態と他社商品の形態の違い一覧表名称・社名特徴(原審の特徴(控訴人用途備考認定)の反論)「ちぬ磯」(デB木製黒色トップ固定方(黒鯛用)飛昭和61年、 ュエル)ボディ下部に式。トップはばしうき(外平成2年(乙膨らみ取り外しでき部錘)を必要6)ない。とする二段仕ゴム管下部に掛けのアタリ平成2年9月黄白色の塗装うき。12日付けで無し。意匠権に抵触非自立ウキ。すると原告が警告を出したところ、デュエル側からは平成2年10月12日付にて、意匠権を尊重する立場から製造販売を停止すると回答を得ている。甲16(8)「黒鯛」(デュCそのボデゴム管部無(黒鯛ウキと平成12年エル)ィ上部に黄白し。上部浮力明記)飛ばし(乙5の1)色の樹脂塗装型形状であうき(外部り、ゴム管に錘)を必要とよるトップ着する二段仕掛脱方式ではなけのアタリうい。トップ固き。 定方式。非自立ウキ。ボディ形状は上部が丸く、真ん中は棒型で末端のみ細くしており、下膨れではない。 プラスチック製。 非自立ウキ。 「黒鯛鉛入」Cそのボデゴム管部無(黒鯛ウキと平成12年(デュエル)ィ上部に黄白し。上部浮力明記)(乙5の1)色の樹脂塗装型形状であり、ゴム管によるトップ着脱方式ではない。トップ固定方式。ボディ形状は上部が丸く、真ん中は棒型で末端のみ細くしており、下膨れではない。 プラスチック製。 「チヌスリBボディ下ゴム管部無(黒鯛用)飛平成12年ム」デュエ部に膨らみ(し。ゴム管にばしうき(外(乙5の1)ル)よるトップ着部錘)を必要脱方式ではなとする二段仕い、トップ一掛けのアタリ体型。トップうき。 固定方式。非自立ウキ。ボディ形状は棒形状で、上部から中心部がややシェイプして細く、ボディ(黒)の下から1/3部分が最太部である中ぶくれタイプ。下端に行くにしたがって細くなっている。黄白色は現物ではオレンジ色であり、ボディは青。黄白色部(実際はオレンジ)はトップ部である。プラスチック製。 非自立ウキ。 「桐チヌ」(ヒB木製黒色ゴム管部無(黒鯛用)飛昭和62年、 ロミ産業)ボディ下部にし。ゴム管にばしうき(外昭和63年膨らみよるトップ着部錘)を必要(乙4)脱方式ではなとする二段仕い。トップ固掛けのアタリ定方式。非自うき。 立ウキ。また、形状は瓢箪型である。 「桐チヌ(鉛B木製黒色ゴム管部無(黒鯛用)飛昭和62年、 入)(ヒロミボディ下部にし。ゴム管にばしうき(外63年(乙」産業)膨らみよるトップ着部錘)を必要4)脱方式ではなとする二段仕い。トップ固掛けのアタリ定方式。まうき。 た、形状は瓢箪型である。 鉛が入っているが、完全自立ではない。 「遠投チヌ」Bボディ下ゴム管部無(黒鯛・グレ平成3年(乙(キザクラ)部に膨らみし。ゴム管に用)磯、波止3の1)(平成11年よるトップ着からチヌ、グ頃に黒色ボデ脱方式ではなレの船がかり平成11年ィとなった)い。トップ固と明記。(乙3のCそのボデ定方式。自立かご釣り用。5)平成1、 ィ上部に黄白ウキ。下膨れ重量が55g6年(乙3の色の樹脂塗装ではなく、中もある。6)ぶくれタイプ(最太部が真ん中)。 黄白色部分は、ボディ部分ではなくトップ部分である。 「自立チヌ」Bボディ下Dゴム管部分(黒鯛用)平成5年、平(キザクラ)部に膨らみはない。ハカ磯、波止用自成7年(乙3Cそのボデマ付きトップ立タイプの2,3)ィ上部に黄白が先端を尖ら色の樹脂塗装せた本体上部Dそのボデに被せるようィ上部にゴムに固着させて管が突き出ている。また、 いるボディ上部が緑色のものも販売されている(2009年時点)Bボディ形状は最太部がボディやや中央寄りで、最太部から末端までの長さがボディ1/3で、末端に向かって急に細長くなっている。Cボディは青みの強い色である。黄白色の塗装部分は見当たらない。 「玄秀自立」B木製黒色Bゴム管部無チヌ、アジ、平成10年、 (キザクラ)のボディ下部し。ゴム管に鯖、スズキ、平成11年、 の一部が青色よるトップ着ボラ、メバ平成16年で、ボディ下脱方式ではなル、ハゼ、キ(乙3の4〜部に膨らみがい。ハカマ付ス用。6)あり、きトップと尖浅場遠投用。 Dそのボデらせた本体のィ上部にゴム先端部を固着管が突き出てした一体型。 いる青紫色に塗装されたボディで、下部に明るい青を塗装。下膨れに見えるが、最太部から末端までが長い。 色の印象がまるで違う。 Dゴム管部分は初期のもの平成10年時はなく本体と一体型。トップ下部を黒く塗りつぶしているだけでありゴム管部分はない。平成16年になってゴム管採用と明記(乙3の6)。しかし、それも、 三角錐状のゴム管部分がつき着脱式となるが、ゴム管の形状が原告商品であるSP100と違う。 「スーパースB黒色のボBゴム管部無(黒鯛用)平成11年リムチヌ」(キディ下部に膨し。実物を見磯、波止用(乙3の5)ザクラ)らみると完全な中Cそのボデぶくれタイプィ上部に黄白である。ゴム色の樹脂塗装管部分はなく、トップ下部を黒く塗りつぶしているだけ。裾が黒いハカマ付きトップを本体に固着させるトップ固定方式。非自立ウキのため、別途水中ウキが必要。)C黄白色はボディの半分部分を占め、斜め円形を描き中ぶくれのため、SP100―16やSP80―18とは印象が異なる。 「キザクラ万B黒色ボデゴム管部無磯のチヌ、グ平成11年能」キザクィの下部に膨し。ゴム管にレから波止の(乙3の5)(ラ)らみよるトップ着メバル、イカCそのボデ脱方式ではな釣り用と明ィ上部に黄白くトップと本記。 色の樹脂塗装体が一体型。 非自立ウキ。 黒いボディ部分は中ぶくれ形状。最太部から末端までが細く長い。 Cトップ部と本体の区別がなく一体型。 トップの先端に突起物がある。ゴム管などによる本体とトップの区別はなく、裏を返すと、黄白色は明らかにトップ部である。デザイン上たまたま、ボディにはみ出た感あり。その黄白色の形状も円形を2つくっつけた意匠のために、最太部がくびれて見えるため、 SP100―16やSP80―18とは印象が異なる。 「ツインシグB黒色のボゴム管部無イカ釣り用平成16年ナル」(キザクディ下部に膨し。ゴム管に泳がせフロー(乙3の6)ラ)らみよるトップ着トと明記。 脱方式ではなパッケージにい、トップ固は「イカ、太定方式。非自刀魚対応」と立ウキ。最太明記。 部が丸く、トップの付け根が二段階にテーパーをつけたために、細く、涙型に見える。イカ用である。 ボディの色は黒っぽい深緑色である。 「釣研・立ちB黒色のボBゴム管によ対象魚種、釣平成4年(甲ウキ」(釣研)ディ下部に膨るトップ着脱り方不明73)らみ方式ではない。ゴム部を持っているが固定型である。 瓢箪形状であり、太くなる部分が2ヶ所ある。最も最太部から末端までがボディ長の約1/2を占め、末端まで細くなっていく、中ぶくれ形状と見える。 「黒潮」(被控B木製黒色Bゴム管無アミかご釣り遅くとも昭和訴人)ボディし。ゴム管に用と明記。63年(乙2Cボディ上部よるトップ着かご釣りとい8)に黄白色の樹脱方式ではなう分野の違う脂塗装い。トップとウキである。 本体一体型。非自立ウキで錘が内蔵されあり、飛ばしていない非自うき(外部立ウキ。黒い錘)を必要とボディは中ぶする二段仕掛くれ型。最けのアタリう(太部が中心部き。 にある)昭和48年ごC黄白色部分ろはブダイウは、ボディでキが人気で、 はない、明らこの形状で棒かに細い部分状のものが一であることか般的である。 ら、トップ部分である。 「ちぬ立うB木製黒色ゴム管部分な黒鯛用(ちぬ昭和63年き」被控訴ボディ下部にし。ゴム管にと明記)((乙27,乙人)膨らみよるトップ着28)脱方式ではない。トップ固定方式。 また、ボディは黒ではなく、木の生地を生かした塗装となっている。ボディ上部が極端に細い。 「グレフカB木製黒色Bゴム管部分グレフカセ用昭和63年セ」被控訴ボディ下部になし。ゴム管と明記。 ((乙27,乙人)膨らみによるトップ小型棒ウキタ28)Cボディ上部着脱方式ではイプの「アタに黄白色の樹ない。トップリうき」と明脂塗装と本体一体記。別途飛ば型。最太部かしうきが必ら末端にかけ要。二段仕掛てかなり細くけ用。 なっている。グレ用ボディの1/3を占めており、やや中膨れに近く見える。 C黄白色はボディではなく、明らかにトップ部である。また、黄白色の上の2ヶ所の黒部分は描いた線であってゴム管ではない。 「SUPER紫がかった黒ゴム管による黒鯛用(ちぬ平成8年(乙チヌ」(被控訴色のボディ上トップ着脱方と明記)7)人)部に黄白色の式ではない。 樹脂塗装ハカマ付きトップを本体上部に被せた形のトップ固定型である。下膨れではなく最太部が中心にある中ぶくれ形状に近い棒型タイプである。最太部から末端へボディ長の1/3を占めている。 また、ボディの色は明るい青紫であり、 SP100-16やSP80-18とは異なって見える。 本体上部の色は緑色であり、緑の下部にわずかに入る黄色より緑が大きな面積を占め、黄白色はわずかである。SP100等はゴム管下のレモン色を争点としているのでこれは対象外。 |