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事件 |
令和
5年
(ワ)
4240号
損害賠償請求事件
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5 原告 株式会社アイメシア 代表者代表取締役 訴訟代理人弁護士 神田知宏 10 被告 株式会社00H (以下「被告会社」という。) 代表者代表取締役 P1 被告 P1 15 (以下「被告P1」という。) 被告ら訴訟代理人弁護士 幸田勝利 同 大黒光大 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2023/10/23 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告らは、原告に対し、連帯して18万円及びこれに対する令和3年7月3日20 から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 25 事 実 及 び 理 由第1 請求1被告らは、原告に対し、連帯して189万2000円及びこれに対する令和3年7月3日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1 本件は、原告が、被告P1(被告会社の代表者)がウェブサイト上で別紙投稿5 記事目録の各「投稿内容」欄記載の投稿記事(以下、同目録の「番号」欄記載の順に従い「本件投稿記事1」及び「本件投稿記事2」といい、これらを併せて「本件各投稿記事」という。また、被告P1による本件各投稿記事の投稿行為を、 「本件各投稿行為」「本件投稿行為1」などという。 、 )を投稿した行為が、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号の不正競争(営業誹謗行為)及び10 不法行為であり、これにより、社会的評価や信用の低下等の損害を被ったと主張して、被告P1に対しては不競法4条及び民法709条に基づき、被告会社に対しては会社法350条に基づき、連帯して損害賠償金189万2000円及びこれに対する最後の行為日である令和3年7月3日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 15 2 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠〔特に記載するものを除き枝番号を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア 原告は、ウェブサイト作成・運営・保守事業等を目的とする株式会社である(甲2の3)。 20 イ 被告会社は、コンピューターと周辺機器の導入設置等を目的とする株式会社であり、被告P1は、被告会社の代表取締役である(甲5)。 (2) 原告による被告会社に対する営業行為等(争いがない。)原告従業員は、令和3年7月2日、被告会社に対して営業目的で電話をし、 被告P1がこれに応対した。 25 また、原告は、被告会社に宛てて原告の業務に関する資料を送付し、同月3日、被告P1はこれらを受け取った。 2(3) 被告P1による本件各投稿行為被告P1は、 「電話帳ナビ」と題するウェブサイト(電話番号を検索キーとする検索により事業者名等が判明するサービスを提供するもの。以下「本件サイト」という。)上の原告の電話番号を検索した際に表示されるページ(以下「本5 件ページ」という。)において、匿名で、令和3年7月2日午後11時24分08秒頃に本件投稿記事1を、同月3日午後4時46分47秒頃に本件投稿記事2をそれぞれ投稿した。 (4) 原告の被告らに対する前件訴訟被告P1は、 「jpnumber 電話番号検索」と題するウェブサイト(以10 下「前件サイト」という。本件サイトと同様のウェブサイトと解される。)上の原告の電話番号を検索した場合に表示されるページにおいて、匿名で、令和3年7月2日午後11時頃に本件投稿記事1と同一内容の記事(以下「前件投稿記事1」という。 を、 ) 同月3日午後4時頃に本件投稿記事2と同一内容の記事(以下「前件投稿記事2」という。)をそれぞれ投稿し(以下、それぞれ「前件15 投稿行為1」、 「前件投稿行為2」という。、 ) また、同日午後6時頃には、 「(株)アイメシア 自前で悪評判を立てた上で対策しますという、うさんくさい営業を行う詐欺会社。 との記事を投稿した」 (以下、かかる記事と前件投稿記事1及び同2とを併せて「前件各投稿記事」といい、かかる投稿と前件投稿行為1及び同2とを併せて「前件各投稿行為」という。。 )20 原告は、令和3年12月、前件各投稿行為が不競法2条1項21号の不正競争に該当し、これにより信用毀損等の損害を被ったとして、被告らに対し、損害賠償金154万円(内訳は、無形損害100万円、調査費用相当額44万円、 弁護士費用10万円)及び遅延損害金の連帯支払を求める訴訟を大阪地方裁判所に提起した(当庁令和3年(ワ)第11152号事件。以下「前件訴訟」と25 いう。。 )大阪地方裁判所は、令和5年3月16日、前件各投稿行為が不競法2条1項321号の不正競争に該当するとした上で、被告らに対し、連帯して60万円(内訳は、無形損害50万円、調査費用相当額5万円、弁護士費用5万円)及びこれに対する遅延損害金を原告に支払うよう命じる旨の判決(以下「前件判決」という。 を言い渡し、 ) 同判決は同年4月4日に確定した。 (以上につき、乙1、 5 2)3 争点(1) 本件各投稿行為が不正競争及び不法行為となるかどうか(争点1)(2) 原告の損害の発生及びその額(争点2)第3 当事者の主張10 1 本件各投稿行為が不正競争及び不法行為となるかどうか(争点1)【原告の主張】(1) 不正競争についてア 原告の事業と被告会社の事業は、ウェブサイトの作成、運営、SEO(検索エンジン最適化のサービス提供)などで共通しており、原告と被告会社と15 は競争関係にある。そして、被告P1は、被告会社の代表取締役であることから、原告と競争関係にある。 イ 被告P1は、本件投稿記事1において、原告につき「特定商取引法に関する知識はなく」「何度も何度も電話してくる」と記載した。かかる記載について、一般読者の普通の注意と読み方を基準にすると、原告が、特定商取引法20 (以下「特商法」という。 が禁じる再勧誘禁止に違反して何度も電話をして)くるとの事実が摘示されたものと読み取ることができるから、法令違反の営業活動をしている会社と評価されるという意味において原告の社会的評価が低下し、営業上の信用が害される。 しかし、原告は、リストを使用して電話での営業をしているため、電話先25 から拒否された場合、同じ相手に再度電話することはないから、上記摘示事実は虚偽である。 4ウ また、被告P1は、本件投稿記事2において、原告につき「自分でネットに企業の誹謗中傷を書いて、それをネタにネットの誹謗中傷対策しますというマッチポンプ詐欺の会社」と記載した。かかる記載について、一般読者の普通の注意と読み方を基準にすると、原告が、営業先の悪評をあらかじめイ5 ンターネット上に書き込んだ上で、当該営業先に対し、当該書き込みに対する対策を行うよう促す営業をしているとの事実が摘示されたものと読み取ることができるから、詐欺的な営業行為をしている会社と評価されるという意味において原告の社会的評価が低下し、営業上の信用が害される。 しかし、原告は、上記のような手法の営業をしていないから、上記摘示事10 実は虚偽である。 エ したがって、被告P1の本件各投稿行為は、不競法2条1項21号の不正競争に該当する。 (2) 不法行為について前記(1)のとおり、被告P1の本件各投稿行為は、原告の社会的評価を低下さ15 せるから、原告の名誉権を侵害する不法行為に該当する。 (3) 被告らの責任について被告P1は、不競法4条及び民法709条に基づき、原告に対する損害賠償責任を負う。 そして、被告P1は、被告会社の業務において使用するメールアドレスを用20 いて契約したプロバイダを通じてインターネットに接続し、本件各投稿行為を行ったものであるから、被告会社は、会社法350条に基づき、代表者である被告P1がその職務を行うにつき原告に加えた損害について、損害賠償責任を負う(被告P1の債務と不真正連帯)。 【被告らの主張】25 原告の主張はいずれも争う。 なお、本件各投稿行為の時点で、被告ら以外の者によっても原告の営業を非難5する口コミが既に投稿されていたところ、被告P1は、原告に対する警告と、他の業者に対して原告による悪質な営業に引っかからないよう注意喚起する意味を含めて、本件各投稿行為に至ったものである。 2 原告の損害の発生及びその額(争点2)5 【原告の主張】(1) 損害費目及び額ア 無形損害本件各投稿行為により、原告には、社会的評価の低下、信用の低下、企業価値の低下、商品価値の低下及び潜在的な顧客の喪失といった抽象的不利益10 が生じた。これを金銭に換算すると、不正競争につき50万円、不法行為(名誉権侵害)につき100万円の合計150万円を下らない。 イ 調査費用原告は、本件各投稿記事の投稿者を特定するために、弁護士に発信者情報開示請求の手続を依頼し、その着手金として22万円を支払った。 15 原告は、本件各投稿行為により名誉権を侵害されているところ、その加害者を特定するために必要不可欠なものとして、上記費用の全額が本件各投稿行為(不法行為)と相当因果関係のある損害として認められるべきである。 ウ 弁護士費用原告は、弁護士に委任して本件訴訟を提起しており、前記ア及びイの損害20 額(合計172万円)の1割に相当する17万2000円の損害を被った。 エ 合計前記アないしウを合計すると、原告が被った損害額は189万2000円となる。 (2) 被告らの主張について25 前件各投稿記事は前件サイトに、本件各投稿記事は本件サイトにそれぞれ投稿されており、前件各投稿行為と本件各投稿行為は別個の行為であるし、サイ6トが違えば利用者も異なり、閲覧者の範囲も異なる以上、上記各行為により発生した結果も異なる。また、原告は、前件訴訟では営業権侵害(不競法2条1項21号の不正競争)しか主張していなかったが、本件訴訟では、これに加えて名誉権侵害(不法行為)も主張しており、保護法益が異なる。したがって、 5 本件各投稿行為によって原告が被った損害は、前件訴訟で全て評価し尽くされているとはいえない。 また、前件訴訟において原告が本件各投稿行為による請求の追加的変更をすべき義務はない。 【被告らの主張】10 原告が主張する損害はいずれも争う。 (1) 前件各投稿行為のうち、前件投稿行為1及び同2については、投稿記事の内容が本件投稿行為1及び同2と全く同一であり、投稿日時が数分異なるにすぎず、投稿先も同種の口コミサイトである。そうすると、本件訴訟で原告が主張する事情は、前件訴訟の事情と全く同種のものであって、本件各投稿行為によっ15 て原告が被った損害は、前件訴訟で全て評価し尽くされているといえる。 また、原告は、遅くとも前件訴訟の序盤の段階で、本件各投稿行為が被告らによるものと認識していたのであり、前件訴訟において本件各投稿行為も含めて違法行為の対象とすることも十分可能な状況にあった。それにもかかわらず、 前件判決の確定後に本件各投稿行為を取り上げて本件訴訟を提起した原告の行20 為は、いたずらに請求を分断し、既に確定した紛争を蒸し返して被告らに応訴の負担を強いるものであり、かかる事情は原告の損害の判断に当たって考慮されるべきである。 なお、本件各投稿行為の時点で、被告ら以外の者によっても原告の営業を非難する口コミが既に投稿されていたところ、被告P1は、原告に対する警告と、 25 他の業者に対して原告による悪質な営業に引っかからないよう注意喚起する意味を含めて、本件各投稿行為に至ったものであり、かかる事情も原告の損害の7判断に当たって考慮されるべきである。 (2) 原告が主張する無形損害という概念自体、抽象的な不利益を指すものであるところ、前件判決においては、原告の無形損害について「社会的評価が一定程度低下」と判示されているにすぎず、損害の具体的な中身まで特定されている5 わけではないから、本件訴訟で原告が新たに名誉権侵害の主張を追加したからといって、名誉侵害分として無形損害の金額が増えるものではない。 さらに、前件各投稿行為に係る投稿記事が閲覧された範囲について、前件判決では「一定数の不特定多数の者に閲覧された」と判示されているにすぎず、 具体的な範囲まで特定されているわけではない。そして、本件各投稿行為が、 10 前件各投稿行為に新たな内容を追加するものではなく、投稿者も同一で、投稿時期も近接していること、投稿先のサイトも同種の口コミサイトで、匿名の書き込みが可能であり、閲覧者が書き込みについて信頼性が高い情報として受け取るものではないことからすれば、本件各投稿記事が閲覧された範囲についても、前件判決中の「一定数の不特定多数の者に閲覧された」において評価され15 ているというべきである。 (3) 調査費用については、本件訴訟は、前件訴訟と比べて訴訟物の基礎となる事情が同一であることからすると、原告が名誉権侵害の主張を追加したからといって、調査費用の全額が本件各投稿行為と相当因果関係のある損害となるものではない。また、原告は、仮処分や訴訟を経ずとも、本件各投稿行為を行った者20 が被告P1であることを十分特定可能であったから、調査費用は不要であって、 本件各投稿行為との間の相当因果関係は認められない。 第4 当裁判所の判断1 認定事実前記前提事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認めら25 れる。 (1) 本件サイトは、検索項目欄に電話番号を入力した上で検索すると、当該電話8番号の情報として、当該電話番号の基本情報(事業者名、業種、住所、回線種別、推定発信地域等)、地図情報に加え、不特定多数の者が「クチコミ」として当該電話番号に係る事業者等について投稿した内容が表示される。 (甲1、弁論の全趣旨)5 (2) 被告P1は、令和3年1月14日午後5時頃、本件サイト上の本件ページにおける「クチコミ」として、 「アイメシアとか名乗る会社の超迷惑営業電話 下調べもなしにかけてくるとはぬるい営業ですね」との記事を匿名で投稿した(甲1)。 (3) 本件各投稿行為の態様等(甲1)10 ア 被告P1は、令和3年7月2日、原告従業員からの営業目的の電話に応対した後、同日午後11時頃、本件ページにおける「クチコミ」として、前件投稿記事1と同一内容の本件投稿記事1を投稿した(本件投稿行為1) この。 投稿は、前件投稿記事1の投稿(前件投稿行為1)の直後に行われたものであった。 15 イ 被告P1は、同月3日、原告から被告会社に宛てて送付された書類等を受け取った後、同日午後4時頃、本件ページにおける「クチコミ」として、前件投稿記事2と同一内容の本件投稿記事2を投稿した(本件投稿行為2) こ。 の投稿も、前件投稿記事2の投稿(前件投稿行為2)の直後に行われたものであった。 20 ウ 令和3年12月4日の時点で、本件ページには、原告の会社名、業種が掲載された上、 「クチコミ」として、本件各投稿記事のほか、被告P1による前記(2)の投稿記事が掲載されており、この3件以外の投稿記事はなかった。また、本件ページの「アクセス数」が197回と記載されているほか、同年7月27日から同年12月4日の間のアクセス数は90回程度と表示されてい25 た。 (4)ア 原告は、本件の原告訴訟代理人に委任の上、本件サイトの管理者を相手方9(債務者)として、本件各投稿行為に係るIPアドレス等の開示を求める仮処分の申立てを行い、令和4年1月14日に上記管理者から上記IPアドレス等の任意開示を受けた後、本件各投稿行為に係る経由プロバイダに対し、 発信者情報の開示を求める旨の同月22日付け開示請求書を送付し、同年25 月3日頃に発信者情報の任意開示を受けた。かかる任意開示は、経由プロバイダからの意見照会に対し、被告が発信者情報の開示に同意したことによるものであった。(甲3、4)イ 原告は、本件の原告訴訟代理人に対し、前記各手続に係る費用として合計22万円を支払った(甲6)。 10 (5) 本件各投稿記事は、令和4年1月中に削除された(争いがない。。 )(6) 前件訴訟において、大阪地方裁判所は、令和5年3月16日、前件各投稿行為が不競法2条1項21号の不正競争に該当するとした上で、被告らに対し、 連帯して60万円(内訳は、無形損害50万円、調査費用相当額5万円、弁護士費用5万円)及びこれに対する遅延損害金を原告に支払うよう命じる旨の前15 件判決を言い渡し、同判決は同年4月4日に確定した(なお、前件訴訟において、原告は、前件各投稿行為が原告の名誉権を侵害する不法行為に該当する旨の主張はしていなかった。。 )2 本件各投稿行為の不正競争及び不法行為該当性並びに被告らの責任(争点1)について20 (1) 不正競争についてア 前提事実及び弁論の全趣旨によれば、原告と被告会社は、いずれもSEO(検索エンジン最適化のサービス提供)を含むウェブサイト(ホームページ)の制作等の同種の事業を行っており、営業活動上需要者や取引先を共通にする可能性があるといえることから、競争関係にあると認められる。そして、 25 被告P1は、被告会社の代表取締役であるから、その職務に関して原告と競争関係にあるといえる。 10イ 本件投稿記事1の内容は、「アイメシア 特定商取引法に関する知識はなく、コンプライアンス担当者はおらず… 何度も何度も電話してくるということで明らかに地雷会社です さらに電話の人間は嘘丸出しの営業トーク」などというものであって、原告につき、特商法に関する知識がなく、コンプ5 ライアンス担当者がおらず、営業先に対し多数回電話をかけ、電話をした従業員が事実に反した話をするという事実を指摘するものである。本件ページを訪れて本件投稿記事1を見た閲覧者は、原告が上記のようなことを行う会社であると読み取るものといえる。 この点、前記認定によると、原告は、被告会社に対し、令和3年1月1410 日と同年7月2日の2回にわたり営業目的の電話をかけ、被告P1がこれに応対したものと認められるが、本件投稿記事1における「何度も何度も」との表現はこれを過大に誇張するものであり、また当該事情から原告を「地雷会社」と表現することも、表現として相当でない。 また、本件投稿記事1のうち、原告につき特定商取引法に関する知識の欠15 如、コンプライアンス担当者の不在、事実に反する話をする従業員の存在を指摘する部分についてみると、これらを否定する原告従業員の陳述(甲2の1)がある一方、これらの事実に係る同証拠の証明力を減殺する証拠や、これらの事実があったと認めるに足りる証拠がないから、当該事実は存在しないと認められる。 20 以上のことからすると、本件投稿記事1の内容は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であると認めるのが相当である。 ウ 本件投稿記事2の内容は、 「自分でネットに企業の誹謗中傷を書いて、それをネタにネットの誹謗中傷対策しますというマッチポンプ詐欺の会社」というものであり、原告について、営業先の企業を誹謗中傷する内容の記事をあ25 らかじめインターネット上に書き込むなどした上で、当該企業に対し、当該書き込みを契機としてその対策業務を行う原告への依頼を促す旨の詐欺的な11営業活動を行っているという事実を指摘するものである。本件ページを訪れて本件投稿記事2を見た閲覧者は、原告が上記のような営業活動を行う会社であると読み取るものといえる。 この点についても、前判示と同様、これを否定する証拠(甲2の1)があ5 る一方で、この事実に係る同証拠の証明力を減殺する証拠や、原告がこのような営業活動を行ったことを認めるに足りる証拠はないから、本件投稿記事2の内容は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であると認められる。 エ 以上のことからすると、被告P1による本件各投稿行為は、被告らと競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する10 行為といえるから、不競法2条1項21号の不正競争に該当する。 (2) 不法行為について本件各投稿記事は、いずれも原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の記載であり、少なくとも営業上の信用の低下という意味において原告の社会的評価を低下させるものといえるから、被告P1による本件各投稿行為は、原告の名15 誉権を侵害する不法行為に該当すると認められる。 (3) 被告らの責任について被告P1の前判示に係る行為態様に照らすと、同被告には少なくとも過失が認められ、また、同被告の行為は、被告会社への原告の営業に対応したものと考えられるから、被告会社の代表者である被告P1が、その職務を行うについ20 て行ったものであるといえる。 したがって、被告会社は、会社法350条に基づき、被告P1と連帯して(不真正連帯債務)、被告P1の本件各投稿行為によって原告に生じた損害を賠償する責任を負う。 (4) 被告らの主張について25 被告らは、本件各投稿行為の時点で、被告ら以外の者によっても原告の営業を非難する口コミが既に投稿されていたところ、被告P1は、原告に対する警12告と、他の業者に対して原告による悪質な営業に引っかからないよう注意喚起する意味を含めて、本件各投稿行為に至ったものである旨主張するが、それ自体は特に抗弁とならない上、これを認めるに足りる証拠もないから、いずれにせよ失当である。 5 3 原告の損害の発生及びその額(争点2)について(1) 無形損害についてア 本件各投稿記事は、その閲覧者に対し、原告につき、特商法に関する知識がなく、コンプライアンス担当者がおらず、営業先に対し何度も何度も電話をかけ、電話をした従業員が事実に反した話をするような会社であると認識10 させ、また、営業先の企業を誹謗中傷する内容の記事をあらかじめインターネット上に書き込むなどした上で、当該企業に対し、当該書き込みを契機としてその対策業務を行う原告への依頼を促す旨の詐欺的な営業活動を行うような会社であるとの印象を与えるものであるから、原告の営業上の信用ないし社会的評価を相応に低下させるものである。 15 イ もっとも、本件各投稿記事は、投稿先は異なるものの、前件各投稿記事とほぼ同時期に投稿されたものであるところ、前件判決においては、前件各投稿行為が不競法2条1項21号の不正競争に該当するとされた上で、原告の無形損害の額が50万円と認定されている。 この点、本件各投稿行為と、前件各投稿行為は、掲載されたウェブサイト20 が異なることから別個の不法行為となり、前件判決の損害認定によって本件各投稿行為を含めた損害の評価が尽くされたということはできないが(この点で、被告らの主張は採用できない。、行為及び結果の双方において同質性)が高いから、前件訴訟において損害の認定に当たって考慮された要素と、本件において損害を検討するに当たり考慮される要素は、相当程度重なりがあ25 るのであって、本件における損害を検討するに当たり前件訴訟において評価済みの要素があることを考慮することは許されるものというべきであり、こ13の点を踏まえた、本件各投稿行為によって被った原告の無形損害の額は、15万円と認めるのが相当である。 ウ なお、原告は、前件訴訟では営業権侵害(不競法2条1項21号の不正競争)しか主張していなかったが、本件訴訟では、これに加えて名誉権侵害(不5 法行為)も主張しており、保護法益が異なる旨主張する。しかし、原告は営利企業であって、無形損害の中核を成すのは営業上の信用の低下であるところ、本件各投稿行為による名誉権侵害(営業上の信用の低下という意味での社会的評価の低下)を理由とする不法行為が形式的には成立するとしても、 これによる損害は、特段の事情のない限り、不正競争行為による上記の営業10 上の信用の低下に包摂され、上記名誉権侵害について独立の損害を考慮する必要はないものというべきである(本件において特段の事情も認められない。。 )よって、この点は、前記判断を左右しない。 (2) 調査費用及び弁護士費用について本件事案の内容、原告に生じたと認められる前記無形損害の額その他本件に15 現れた一切の事情を考慮し、本件各投稿行為と相当因果関係のある調査費用及び弁護士費用をそれぞれ1万5000円と認める。 (3) 小括以上のとおり、本件各投稿行為と相当因果関係のある原告に生じた損害の額は、合計18万円となる。 20 第5 結論以上によれば、原告の請求は、被告らに対し、18万円の損害賠償金及びこれに対する最後の不正競争ないし不法行為(本件投稿行為2)の日である令和3年7月3日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないからいずれも棄却25 することとして、主文のとおり判決する。 14大阪地方裁判所第26民事部5 裁判長裁判官松 阿 彌 隆10 裁判官阿 波 野 右 起15 裁判官峯 健 一 郎(別紙投稿記事目録―省略)15 |
事実及び理由 | |
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全容
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