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関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  商標登録 /  需要者 /  混同行為 /  他人の営業 /  類似性(類似) /  混同のおそれ(混同) /  差止請求(差止) /  代理人 /  代表者 /  混同のおそれ(混同) /  損害賠償 / 
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事件 平成 15年 (ネ) 4173号 損害賠償等請求控訴事件
控訴人 特定非営利活動法人 家庭教師派遣業自主規制委員会
訴訟代理人弁護士 澤田保夫
被控訴人 有限会社旭学園 代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士 松岡宏
同 森本 耕太郎
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/02/27
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,「家庭教師派遣業自主審査実行委員会」との名称を使用してはならない。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事案の概要
本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が使用する「家庭教師派遣業自主審査実行委員会」との名称(以下「本件名称」という。)は,控訴人の業務に係る営業表示として需要者の間に広く認識されている「家庭教師派遣業自主規制委員会」の表示(以下「控訴人表示」という。)と類似しており,控訴人の営業と混同を生じさせているとして,不正競争防止法2条1項1号,3条1項に基づき,本件名称の使用差止めを求めた事案である。
なお,原審においては,株式会社日本家庭教師センター学院(以下「原審原告学院」という。)も共同原告となり,本件被控訴人に対し,原判決「事実及び理由」欄の第1「請求の趣旨」記載の請求をし,全部敗訴したが,控訴を提起しなかったため,原判決中,原審原告学院の関係部分は確定した。また,控訴人は,当審において,原審における請求のうち,上記「請求の趣旨」第8項記載の本件名称の使用差止請求以外のすべての請求について,当該請求に係る訴えを取り下げた。
本件の前提となる事実並びに争点及びこれに関する当事者の主張は,以下のとおりである。
1 前提となる事実 (1) 控訴人は,控訴人代表者Aが中心となって家庭教師派遣業者により平成12年12月28日に設立された特定非営利活動法人である(甲1,弁論の全趣旨)。
(2) 被控訴人は,家庭教師派遣業を営む有限会社である(乙15)。
(3) 被控訴人が「岐阜県PTA」新聞及び「愛知のPTA」新聞の平成14年6月号及び7月号に掲載した広告には,その右下部分に,「疑問や不安を感じたら悩まずに通報して下さい!消費者被害トラブル相談室・・・家庭教師派遣業自主審査実行委員会」と記載されており,本件名称の表示がある(甲15の1〜3,6,7)。
2 争点 (1) 控訴人表示は,控訴人の営業を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるか。
(2) 被控訴人が本件名称を使用しているか。
(3) 被控訴人による本件名称の使用は,類似の営業表示を使用して控訴人の営業と混同を生じさせる行為に当たるか。
3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(控訴人表示の周知性の有無) (控訴人の主張) 本件において,不正競争法防止法2条1項1号に規定する「需要者」とは,「家庭教師派遣業者」ではなく,家庭教師を雇う「一般消費者」を意味するものである。
控訴人は,家庭教師派遣業者の自主審査を実行し,優良業者にAAAの認定評価を付与して,消費者を保護するとともに,家庭教師派遣業界の発展に寄与する団体である。家庭教師派遣業者にとって,自主審査を実行する団体は特定非営利活動法人である控訴人のみであると認識されているからこそ,被控訴人を含む多数の業者が,控訴人に対し,自主審査を申し込んできたのであり,そのことは,取りも直さず,一般消費者の間においても,控訴人表示が広く認識されていることの反映である。
控訴人は,家庭教師派遣業者を審査し,AAAの認定評価をして,その評価を一般消費者に知らせることにより,これを保護することを目的の一つとしているから,一般消費者に対する認定評価結果の宣伝広告が非常に重要となる。その意味で,控訴人表示は,上記のとおり,一般消費者を対象としている。
(被控訴人の主張) 控訴人表示は,一般消費者の間においてはほとんど認識されていない。
控訴人が,控訴人表示を使用するのは,家庭教師派遣業者に対し何らかの審査を実行する場合であって,控訴人表示は,一般消費者を対象として使用されるものではない。
(2) 争点2(被控訴人が本件名称を使用している事実の有無) (控訴人の主張) 原判決は,上記1(3)の事実を認定しながら,「家庭教師派遣業自主審査実行委員会」という団体(以下「本件団体」という。)と被控訴人とが別の団体であることは明らかであるとして,被控訴人が本件名称を使用しているとはいえないと判断した。しかしながら,被控訴人が本件名称を使用しているか否かと,被控訴人と本件団体とが別の団体であるか否かとは関係がない。被控訴人が本件団体の一員として本件名称を使用する形態は当然にあり得るのであって,上記1(3)の例が正にその場合である。したがって,被控訴人は,本件名称を使用している。
(被控訴人の主張) 被控訴人は,自らの掲載する広告紙面の一部を提供し,家庭教師の紹介を口実にした「悪質商法」の被害に遭わないよう,消費者に対し注意を喚起するとともに,被害者の救済を目的とする「消費者被害トラブル相談室」の電話番号を掲記したものである。そして,そうした運動の主体が,営利を目的としない業界団体であることを明らかにすべく,本件団体を紹介しているのであって,いかなる営業行為もしていない。
また,被控訴人が「岐阜県PTA」新聞及び「愛知のPTA」新聞における広告に本件名称を使用したのは,平成14年6月〜8月の3回のみであり,それ以後は全く使用していない。
(3) 争点3(被控訴人表示と本件名称との類否,混同のおそれの有無) (控訴人の主張) 控訴人表示と本件名称とは,文言上,「規制」と「審査実行」の部分が相違するだけであり,類似している。そして,被控訴人が本件名称を表示した広告を行ったことにより,控訴人と本件団体とは同一又は類似のものとして消費者に認識されるようになったのであるから,被控訴人の行為は,正に,類似の表示を使用して控訴人の営業と混同を生じさせる行為である。
(被控訴人の主張) 控訴人の上記主張は争う。
当裁判所の判断
1 争点1(控訴人表示の周知性の有無)について (1) 控訴人は,上記第2の1(1)のとおり,控訴人代表者Aが中心となって家庭教師派遣業者により平成12年12月28日に設立された特定非営利活動法人であり,証拠(甲1,6,7)及び弁論の全趣旨によれば,家庭教師派遣業者のサービズ評価を自主審査し,消費者が家庭教師を依頼したり,個別指導教室を選択するときの目安として,「AAA」「AA」「A」等の格付けを行い,「優良AAA業者」等の認定評価を付与し,その認定料等の収入を事業活動費に充てることを主な業務とする団体であることが認められる。
ところで,控訴人表示は,控訴人の名称から団体の種別を示す「特定非営利活動法人」の文字を除外した「家庭教師派遣業自主規制委員会」の文字からなる標章であるが,控訴人が上記のとおり設立された後,平成13年4月ころ作成の「特定非営利活動法人家庭教師派遣業自主規制委員会ご入会案内」(甲1),同年12月ころ作成の「経済産業省ガイドライン『サービス評価』審査システム 『優良AAA業者』認定登録証交付のご案内」(甲6)等のパンフレット,同年12月5日付け「教育報道新聞」の記事(甲8-1),同月20日付け「訪販ニュース」の記事(甲8-2),平成14年6月3日付け「教材新聞」の記事(甲13),同年6月12日付け大一印刷有限会社作成の控訴人あての請求書(甲14),平成13年12月1日付け控訴人のインターネットホームページ(甲9-3),同年11月29日付け控訴人理事会の議事録(甲16-1),同年12月28日付け控訴人臨時総会の議事録(甲16-2),同年7月〜9月ころの控訴人と家庭教師派遣業者間のファックス送信文書(甲18〜21の各1,2,甲23,乙11,12-1〜3)等に,控訴人表示それ自体,又は上記団体種別表示を控訴人表示の冒頭に冠した表示が付されており,これによれば,控訴人の設立後,控訴人表示が一定の範囲で控訴人の営業表示として使用されていたことが認められる。しかしながら,上記文書類は,家庭教師派遣業者に対して控訴人への入会又は自主審査への応募を勧誘することを目的とする文書,控訴人と家庭教師派遣業者との間の通信文書,控訴人の内部文書,控訴人の営業行為に伴う取引文書,あるいは,家庭教師派遣業者に関連する業界内のみに流布していたいわゆる業界紙の類であって,いずれも家庭教師を雇う「一般消費者」を対象としたものではないことが明らかである。
不正競争防止法2条1項1号にいう営業表示の周知性の認識主体については,当該営業の種類,性質,取引の実情等により個々具体的に判断すべきものであるが,控訴人は,当審において,本件名称の使用差止請求の根拠としている同号所定の「需要者」とは,「家庭教師派遣業者」ではなく,家庭教師を雇う「一般消費者」であることを明示的に主張しているところ,上記証拠によっては,控訴人表示が控訴人の営業表示として上記需要者の間において広く認識されていたものと認めることは到底できない。また,平成14年2月〜平成15年1月の職業別タウンページ(静岡県東部版)(甲25)上に掲載された「平成学院スパルタ塾」の広告中には,「AAA優良業者です。(NPO家庭教師派遣業自主規制委員会認定)」と表示されているが,わずかに1業者の1地域における広告である上,同広告文面の末尾に小さく表示されているにすぎないことなどからみても,これをもって,控訴人表示の一般消費者に対する周知性を肯定することは困難というほかはない。なお,控訴人代表者Aが同じく代表者を務める原審共同原告の原審原告学院が「家庭教師派遣業自主規制委員会」の商標登録(平成9年12月19日登録)を得ている(甲3-3)ことも,控訴人表示の一般消費者に対する周知性を基礎付けるものということはできない。
他人の営業表示が不正競争防止法2条1項1号周知性を具備すべき時点は,同号に該当する営業主体混同行為差止請求の関係では,差止請求訴訟の事実審の口頭弁論終結時である(最高裁昭和63年7月19日判決・民集42巻6号489頁参照)ところ,本件口頭弁論終結時の平成16年1月28日の時点における,控訴人表示の一般消費者に対する周知性については,以上のとおり,これを認めるに足りる証拠はない。
(2) これに対し,控訴人は,控訴人表示の周知性を認めるべき根拠として,@家庭教師派遣業者の間では,自主審査を実行する団体は特定非営利活動法人である控訴人のみであると認識されていたこと,A被控訴人を含む多数の業者が,控訴人に対し,自主審査を申し込んできたこと,B控訴人は,家庭教師派遣業者を審査し,AAAの認定評価をして,その評価を一般消費者に知らせることにより,これを保護することを目的の一つとしているから,一般消費者に対する認定評価結果の宣伝広告が非常に重要となることを主張する。
しかしながら,家庭教師派遣業者の認識(上記@)や,多数の業者の自主審査への応募の事実(上記A)については,これを認めるに足りる証拠がないばかりでなく,仮にそのような事実が認められたとしても,直ちに一般消費者の間における控訴人表示の周知性に結び付くわけではないことが明らかであるし,また,一般消費者への広告の重要性の点(B)も,実際に,一般消費者を対象とする広告,宣伝が実施されたことを示す的確な証拠が何ら提出されていない以上,上記(2)の認定判断を左右しないというべきである。
(3) 以上のとおりであるので,控訴人表示は,需要者である一般消費者の間に広く認識されているものであると認めることができない。
2 以上によれば,控訴人の被控訴人に対する不正競争防止法2条1項1号,3条1項に基づく本件名称の使用差止請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,これを棄却すべきである。
よって,以上と同旨の原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴
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