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事件 損害賠償請求事件、使用差止め等反訴請求事件
令和7年2月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 令和3年(ワ)第18479号 損害賠償請求事件 令和5年(ワ)第70136号 使用差止め等反訴請求事件 口頭弁論終結日 令和6年10月17日 5判決
原告(反訴被告) 株式会社クリーブラッツ (以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 竹澤克己 伊達雄介 10 須嵜由紀
被告(反訴原告) 須崎市 (以下「被告」という。)
同訴訟代理人弁護士 中田祐児 小泉博嗣 15 島尾大次 益田歩美
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2025/02/07
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は、原告に対し、786万2347円及びこれに対する令和3年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
20 2 原告のその余の本訴請求をいずれも棄却する。
3 被告の反訴請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを2分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
5 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
25 事 実 及 び 理 由第1 請求11 本訴請求被告は、原告に対し、4323万5455円及びこれに対する令和3年8月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 反訴請求5 (1) 原告は、別紙原告著作物目録3記載の各写真若しくは別紙原告イラスト目録記載の各イラストを付し又はこれらの外観を備えた別紙物品目録記載の物品を頒布してはならない。
(2) 原告は、別紙原告著作物目録2記載の着ぐるみ又はその複製物を用いて、
各種イベントを開催し又は広告宣伝若しくは販売促進活動を行ってはならな10 い。
(3) 原告は、別紙原告著作物目録2記載の着ぐるみ若しくはその複製物を撮影した動画又は別紙原告イラスト目録記載の各イラストを使用したアニメーションを放送し、自動公衆送信し、送信可能化し又は上映してはならない。
(4) 原告は、別紙原告著作物目録3記載の各写真若しくは別紙原告イラスト目15 録記載の各イラストを付し又はこれらの外観を備えた別紙物品目録記載の物品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し又は電気通信回線を通じて提供してはならない。
(5) 原告は、各種イベントの企画・運営若しくは開催又は広告宣伝若しくは販売促進活動において、別紙原告著作物目録2記載の着ぐるみ又はその複製物20 を使用してはならない。
(6) 原告は、別紙原告著作物目録3記載の各写真若しくは別紙原告イラスト目録記載の各イラストを付し又はこれらの外観を備えた別紙物品目録記載の物品を廃棄せよ。
(7) 原告は、別紙原告著作物目録2記載の着ぐるみ及びその複製物を廃棄せよ。
25 (8)ア 主位的請求原告は、被告に対し、2695万円並びにうち770万円に対する令和22年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1925万円に対する令和5年2月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
イ 予備的請求5 原告は、被告に対し、2090万円並びにうち165万円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1925万円に対する令和5年2月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
(9)ア 主位的請求10 原告は、被告に対し、2450万円並びにうち700万円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1750万円に対する令和5年2月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
イ 予備的請求15 原告は、被告に対し、1900万円並びにうち150万円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1750万円に対する令和5年2月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等20 1 事案の要旨(1) 本訴事件本訴事件は、「ちぃたん☆」という名称のキャラクター(以下「キャラクターちぃたん」という。)を使用する原告が、被告に対し、被告による原告の取引先への通知及び被告代表者による記者会見における発言等が、①不正競争25 防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号所定の営業誹謗行為、②信義則上の義務違反を理由とする不法行為及び③名誉毀損を理由とする不法行3為に当たり、原告は、これらの行為によってキャラクターちぃたんに係る各種活動を取り止めざるを得なくなり、出演料及びロイヤリティに係る逸失利益合計1695万7379円、放送できなくなったアニメの制作費に係る損害金1728万円、名誉毀損に係る損害金500万円及び弁護士費用相当損5 害金393万円の合計4316万7379円の損害を被ったとして、主位的に民法709条、予備的に国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、同額及びこれに対する令和3年8月20日(不法行為後の日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(上記逸失10 利益の支払請求は上記①を理由とする請求であり、上記アニメの制作費に係る損害金の支払請求は上記①及び②を理由とする各請求の選択的併合、上記名誉毀損に係る損害金の支払請求は上記①及び③を理由とする各請求の選択的併合)事案である。
なお、原告は、上記逸失利益に係る損害額を減縮したにもかかわらず、当15 初の請求額を訂正しなかったため、請求の趣旨における請求額と請求原因として主張する損害額とは一致していない。
(2) 反訴事件反訴事件は、「しんじょう君」という名称のキャラクター(以下「キャラクターしんじょう君」という。)を使用する被告が、原告に対し、
20 ア 原告は、被告が著作権を有する別紙被告著作物目録1記載の著作物(以下「しんじょう君オリジナル」という。)を翻案して別紙原告著作物目録1記載の各イラスト(以下、総称して「ちぃたんオリジナル」という。)を制作し、これに基づいて制作した別紙原告著作物目録3記載の各写真(以下、
総称して「ちぃたん着ぐるみ写真」という。)及び別紙原告イラスト目録記25 載の各イラスト(以下、総称して「ちぃたんイラスト」という。)を付した別紙物品目録記載の各物品(以下、総称して「ちぃたん物品」という。)を4頒布したり、別紙原告著作物目録2記載の着ぐるみ(以下「ちぃたん着ぐるみ」という。)及びその複製物を用いたイベントの開催、動画の配信等をしたりしているところ、原告がちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真を制作又は製作する行為は、しんじょう君オリジ5 ナルに係る被告の翻案権を侵害するとともに、原告がちぃたんイラスト、
ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真を使用する行為は、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利として専有するちぃたんイラスト、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真に係る被告の複製権、譲渡権、
公衆送信権及び上映権を侵害する10 イ 原告は、被告が有する別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件被告商標権」という。)に係る登録商標(以下「本件被告商標」という。)と類似する写真、イラスト等を付したちぃたん物品を販売したり、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いたイベントの開催等をしたりしているところ、
この原告の行為は、本件被告商標権を侵害する15 ウ 原告は、被告の著名な商品等表示であり、かつ、商品等表示として需要者の間に広く認識されているしんじょう君オリジナル、別紙被告著作物目録2記載の着ぐるみ(以下「しんじょう君着ぐるみ」という。 、別紙被告)著作物目録3記載の各写真(以下、総称して「しんじょう君着ぐるみ写真」という。)及び別紙被告イラスト目録記載の各イラスト(以下、総称して20 「しんじょう君イラスト」という。)と類似するちぃたん物品を頒布したり、
ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いたイベントの開催等をしたりしているところ、この原告の行為は、不競法2条1項2号及び1号の不正競争に該当すると主張して、以下の請求をする事案である。
25 ア 著作権法112条1項に基づく差止請求(ア) ちぃたん物品の頒布の差止め(反訴請求に係る請求の趣旨(1))5(イ) ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いてイベントを開催すること等の差止め(同(2))(ウ) ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を撮影した動画又はちぃたんイラストを使用したアニメーションの放送、自動公衆送信、送信可能化及び上5 映の差止め(同(3))イ 商標法36条1項及び不競法3条1項に基づく差止請求(ア) ちぃたん物品の譲渡、引渡し、譲渡又は引渡しのための展示、輸出及び電気通信回線を通じて提供することの差止め(同(4))(イ) イベントの開催等において、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を使用10 することの差止め(同(5))ウ 著作権法112条2項、商標法36条2項及び不競法3条2項に基づく廃棄請求(ア) ちぃたん物品の廃棄(同(6))(イ) ちぃたん着ぐるみ及びその複製物の廃棄(同(7))15 エ 不法行為に基づく損害賠償請求(ア) 主位的請求平成31年1月20日から令和5年2月28日までに生じた著作権法114条2項、商標法38条2項及び不競法5条2項により算定される損害金2450万円及び弁護士費用相当損害金245万円の合計26920 5万円並びにうち770万円(平成31年1月20日から令和2年3月31日までに生じた損害金)に対する令和2年3月31日から支払済みまでの改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金及びうち1925万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた損害金)に対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年3パーセン25 トの割合による遅延損害金の支払(同(8)ア)(イ) 予備的請求6令和元年12月15日から令和5年2月28日までに生じた著作権法114条2項、商標法38条2項及び不競法5条2項により算定される損害金1900万円及び弁護士費用相当損害金190万円の合計2090万円並びにうち165万円(令和元年12月15日から令和2年3月5 31日までに生じた損害金)に対する令和2年3月31日から支払済みまでの改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金及びうち1925万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた損害金)に対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金の支払(同(8)イ)10 オ 不当利得返還請求権に基づく利得金支払請求(ア) 主位的請求平成31年1月20日から令和5年2月28日までに生じた利得金2450万円並びにうち700万円(平成31年1月20日から令和2年3月31日までに生じた利得金)に対する令和2年3月31日から支払15 済みまでの改正前民法所定年5分の割合による利息及びうち1750万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた利得金)に対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年3パーセントの割合による利息の支払(同(9)ア)(イ) 予備的請求20 令和元年12月15日から令和5年2月28日までに生じた利得金1900万円並びにうち150万円(令和元年12月15日から令和2年3月31日までに生じた利得金)に対する令和2年3月31日から支払済みまでの改正前民法所定年5分の割合による利息及びうち1750万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた利得金)に25 対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年3パーセントの割合による利息の支払(同(9)イ)7なお、前記エ及びオの各請求は、認容額が多くなるものについての認容を求めるという条件付きの選択的併合である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)5 (1) 当事者ア(ア) 原告は、芸能事務所を運営する株式会社である。
(イ) Aⅰ(以下「Aⅰ」という。)は、映像コンテンツ制作等を業とするジェイワークス合同会社において番組制作プロデューサーとして稼働している者であり、キャラクターちぃたんに関する被告とのやり取りに当た10 って原告側の窓口を務めていた(甲16、118、乙71)。
イ(ア) 被告は、高知県所在の普通地方公共団体である。
被告の部署である元気創造課(以下「被告元気創造課」という。)は、
キャラクターしんじょう君に係る知的財産権の管理等を担当している。
(イ) Bⅰ(以下「Bⅰ」という。)は、ご当地キャラ運営代行、ふるさと納15 税業務代行事業等を業とする株式会社パンクチュアルの代表取締役であり、平成29年ないし30年当時、被告元気創造課の元気創造係に所属し、主幹としてキャラクターしんじょう君の活動に携わっていた(甲17、乙203)。
(ウ) Cⅰ(以下「Cⅰ」という。)は、被告の副市長職にある者であり、平20 成29年ないし30年当時、被告元気創造課の課長を務めていた(乙204)。
(2) キャラクターしんじょう君についてア 被告は、平成14年頃から、ニホンカワウソをモデルにしたキャラクターしんじょう君をいわゆるマスコットキャラクターとして、地域振興や市25 の広報活動に使用している。
イ 被告は、平成24年11月頃、キャラクターしんじょう君の新たなデザ8インを公募した。当該公募の際の募集要項には、応募作品の著作権その他知的財産権に係る権利は被告に帰属する旨が定められていた。
Dⅰ(以下「Dⅰ」という。)は、著作物であるしんじょう君オリジナルを制作し、上記公募に応募した。
5 被告は、平成25年1月、キャラクターしんじょう君の新たなデザインとして、しんじょう君オリジナルを選定し、上記募集要項の規定に基づき、
Dⅰからしんじょう君オリジナルに係る著作権を譲り受けた。
ウ 被告は、平成25年4月頃、しんじょう君オリジナルに基づき、著作物であるしんじょう君着ぐるみを製作した。
10 また、被告は、同月以降、しんじょう君着ぐるみ及びその複製物に基づき、著作物であるしんじょう君着ぐるみ写真を撮影した。
エ 被告は、平成28年10月7日、本件被告商標について商標登録出願をし、平成29年9月8日、本件被告商標権の設定登録を受けた。
オ 被告は、キャラクターしんじょう君の新たなデザインとしてしんじょう15 君オリジナルを選定して以降、キャラクターしんじょう君の各種イベント、
テレビ番組、テレビCMなどへの出演、しんじょう君着ぐるみ写真、しんじょう君イラスト等を付した商品の販売許諾などを通じて、その知名度及び人気の向上に努めた。その結果、キャラクターしんじょう君は、平成28年11月、1421体のキャラクターが参加した「ゆるキャラグランプ20 リ2016」においてグランプリに選出された。
(3) キャラクターちぃたんについてア 原告は、平成29年4月10日に出生したコツメカワウソを「ちぃたん☆」と名付けて飼育し(以下、このコツメカワウソを「カワウソちぃたん」という。 、チバテレ(千葉テレビ放送株式会社)において放送されていた)25 「カワウソちぃたん☆が行くホントの日本」と題する番組(日本全国各地を訪れて各地の話題等を紹介するという教育番組で、毎週火曜日の午後99時55分から午後10時まで放送されていた。以下「本件番組」という。)に、司会者として出演させていた(甲5ないし7、118)。
イ 原告は、平成29年9月頃から11月頃にかけて、Dⅰに対し、カワウソちぃたんの着ぐるみのデザインの制作を依頼し、Dⅰは、これを受けて、
5 ちぃたんオリジナルを制作した。
原告は、同月29日までに、ちぃたんオリジナルに基づき、ちぃたん着ぐるみを製作した。
原告は、同月頃以降、ちぃたん着ぐるみ又はその複製物に基づき、ちぃたん着ぐるみ写真を制作した。
10 ウ 原告は、平成29年11月頃以降、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を撮影して制作した動画及びちぃたんオリジナルを複製して制作されたちぃたんイラストを使用したアニメーションを放送したり、YouTube等を通じてインターネットで配信したり、イベント会場で上映したりしている。
15 また、ちぃたん着ぐるみは、イベントやCMにも出演している。
エ 原告は、平成29年12月18日及び平成30年11月19日、別紙原告著作物目録1記載1のイラスト及びその下部に配された「ちぃたん☆」との文字から成る商標について、それぞれ指定商品等を異にする商標登録出願(商願2017-165376及び同2018-143025)をし、
20 令和3年8月4日及び令和4年6月8日、各商標に係る商標権の設定登録(商標登録第6424587号及び同第6568098号)を受けた(乙133、135、147、148、162)。
また、原告は、平成30年7月17日及び同年11月19日、ちぃたん着ぐるみを正面から撮影した写真及びその下部に配された「Chiita25 n☆」との文字から成る商標について、それぞれ指定商品等を異にする商標登録出願(商願2018-91724及び同2018-143026)10をし、令和3年8月4日及び令和4年6月8日、各商標に係る商標権の設定登録(商標登録第6424588号及び同第6568099号)を受けた(乙134、136、149、162)。
(4) カワウソちぃたんの須崎市観光大使への委嘱及び解嘱5 被告は、平成30年1月18日、東京都内において須崎市観光大使委嘱式を挙行し、カワウソちぃたんを須崎市観光大使に委嘱した。
被告は、平成31年1月17日、カワウソちぃたんを須崎市観光大使から解嘱した。
(5) 被告による書面の送付等10 ア 原告に対する書面の送付被告は、原告に対し、平成31年1月19日到達の書面により、キャラクターちぃたんのイラスト、着ぐるみ等の表現物を自社ウェブサイト等に掲載するなどの行為が著作権侵害及び不競法違反に該当するとして、当該行為を直ちに中止するとともに、キャラクターちぃたんに係る表現物一切15 をしんじょう君と全く異なるデザインに変更するよう求めた(以下「本件被告通知」という。。
)イ 第三者に対する書面の送付、定例記者会見における発言等(以下、これらの行為を総称して、「本件被告行為」という。)(ア) 被告は、株式会社フジテレビジョン(以下「フジテレビ」という。)及20 び株式会社テレビ東京(以下「テレビ東京」という。)に対し、それぞれ平成31年1月31日付けの書面(以下、それぞれ「フジテレビ宛書面」及び「テレビ東京宛書面」という。)により、ちぃたん着ぐるみを番組に出演させる行為は、しんじょう君に係る被告の著作権を侵害するなどとして、ちぃたん着ぐるみの番組出演等を中止するよう申し入れた(以下、
25 それぞれ「フジテレビ宛書面送付行為」及び「テレビ東京宛書面送付行為」という。。
)11フジテレビ宛書面には、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号1の枝番1ないし4の「原告の主張」「問題となる表現」欄の各表現が、テレビ東京宛書面には、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号2の枝番1ないし4の「原告の主張」「問題となる表現」欄の各表現が、それぞれ記載されて5 いた。
(以上、甲52、53)(イ) 被告は、平成31年2月6日、被告代表者による定例記者会見に当たり、資料(以下「本件定例会見資料」という。)及びスライド(以下「本件定例会見スライド」という。)を配布した(以下、それぞれ「本件定例10 会見資料配布行為」及び「本件定例会見スライド配布行為」という。 。
)本件定例会見資料には、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号3の「原告の主張」「問題となる表現」欄の表現が、本件定例会見スライドには、同表の番号4の「原告の主張」「問題となる表現」欄の表現がそれぞれ記載されていた。
15 そして、被告代表者は、同日、定例記者会見において、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号5の枝番1及び2の「原告の主張」「問題となる表現」欄の各表現を含む内容の発言をした(以下「本件定例会見発言行為」という。甲85)。
(ウ) 被告代表者は、平成31年2月8日、後記(6)の原告の書面を受けて、
20 報道機関に対し、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号6の枝番1ないし3並びに別紙名誉毀損行為主張対比表の番号6の枝番1及び3の「原告の主張」「問題となる表現」欄の各表現が記載された書面(以下「本件報道機関宛書面」という。)を送付した(以下「本件報道機関宛書面送付行為」という。。
)25 (エ) 被告代表者は、平成31年2月15日、報道機関に対し、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号7及び別紙名誉毀損行為主張対比表の番号7の12「原告の主張」「問題となる表現」欄の各表現を含むコメントを発出した(以下「本件コメント発出行為」という。甲83、84)。
(6) 原告による書面の送付原告は、平成31年2月8日、報道機関に対し、キャラクターちぃたんは5 被告の担当者からデザイナーの紹介を受けて制作したものである上、被告からキャラクターちぃたんのデザインやちぃたん着ぐるみを他の企業が利用することについての許可は不要との回答を得ていることから、キャラクターしんじょう君に係る知的財産権を侵害するものではないとの見解を有している旨記載した「ちぃたん☆に関するお知らせ」と題する書面(以下「本件原告10 書面」という。)を送付した(甲57)。
(7) 本件訴訟に至る経緯ア 被告は、平成31年2月16日付けで、東京地方裁判所に、原告を債務者として、原告が別紙原告著作物目録1記載1のイラスト及びちぃたん着ぐるみを営業上の活動に使用することが、被告の著作権(翻案権、二次的15 著作物の利用に関する原著作者の権利)及び商標権を侵害するとともに、
不競法2条1項1号及び2号の不正競争に当たると主張して、原告が上記イラスト及びちぃたん着ぐるみを営業上の活動に使用することの差止めの仮処分を求める申立てをした(平成31年(ヨ)第22022号。以下「本件仮処分事件」という。。
)20 同裁判所は、令和元年9月20日、被告が原告による別紙原告著作物目録1記載1のイラスト及びちぃたん着ぐるみの使用について黙示の許諾をしていたと認められるなどとして、被告の上記申立てを却下する旨の決定をした。
被告は、上記決定を不服として、知的財産高等裁判所に即時抗告したが25 (令和元年(ラ)第10008号)、同裁判所は、同年12月25日、抗告を棄却する旨の決定をし、その後、同決定は確定した。
13(以上、甲1、2、弁論の全趣旨)イ 原告は、令和3年7月15日、被告に対し、本件本訴を提起した。
被告は、令和5年3月23日、原告に対し、本件反訴を提起し、同年9月4日、その反訴状に係る補正書が送達された(なお、反訴状は送達され5 ていない。。
)(以上、当裁判所に顕著な事実)3 争点(1) 本訴事件ア 本件被告行為についての民法709条及び不競法2条1項21号の適用10 の可否(争点1)イ 不競法2条1項21号所定の不正競争を理由とする損害賠償責任の有無(争点2)(ア) 原告と被告との間の「競争関係」の有無(争点2-1)(イ) 「事実を告知し、又は流布する行為」に当たるか(争点2-2)15 (ウ) 告知又は流布された事実が「虚偽」であるか(争点2-3)a キャラクターちぃたんに係る使用及び活動についての許諾の有無(争点2-3-1)b 許諾に係る錯誤無効の成否(争点2-3-2)c 許諾に係る詐欺取消しの成否(争点2-3-3)20 d 許諾に係る合意の解除の成否(争点2-3-4)(エ) 告知又は流布された事実が原告の「営業上の信用を害する」ものか(争点2-4)(オ) 正当な権利行使として違法性が阻却されるか(争点2-5)ウ 信義則上の義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償責任の有無25 (争点3)エ 名誉毀損を理由とする不法行為に基づく損害賠償責任の有無(争点4)14オ 被告の故意又は過失の有無(争点5)カ 原告の損害の有無及びその額(争点6)(2) 反訴事件ア 著作権侵害の成否(争点7)5 イ 商標権侵害の成否(争点8)ウ 不競法2条1項2号所定の不正競争の成否(争点9)エ 不競法2条1項1号所定の不正競争の成否(争点10)(ア) 被告の商品等表示として周知なものか(争点10-1)(イ) 被告の「営業と混同を生じさせる行為」であるか(争点10-2)10 オ キャラクターちぃたんに係る使用及び活動についての許諾の有無(争点11)カ 許諾に係る錯誤無効の成否(争点12)キ 許諾に係る詐欺取消しの成否(争点13)ク 許諾に係る合意の解除の成否(争点14)15 ケ 許諾に係る期間が満了したか(争点15)コ 差止め等の必要性(争点16)サ 不法行為に基づく損害賠償請求の当否(争点17)(ア) 原告の故意又は過失の有無(争点17-1)(イ) 被告の損害の有無及びその額(争点17-2)20 シ 不当利得返還請求の当否(争点18)4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件被告行為についての民法709条及び不競法2条1項21号の適用の可否)について(原告の主張)25 ア 本件被告行為が国賠法1条1項所定の「公権力の行使」に当たらないこと15本件被告行為は、純然たる私経済作用に属するキャラクターライセンス事業に付随するものとして行われたものであり、同事業と一体を成すものとして私経済作用に該当する行為に当たる。
したがって、本件被告行為は、国賠法1条1項所定の「公権力の行使」5 に当たらないから、これらについては、直接、民法及び不競法が適用される。
イ 国賠法4条所定の「民法」に不競法が含まれること仮に、本件被告行為が国賠法1条1項所定の「公権力の行使」に当たるとしても、不競法は、民法の特則を規定した法律であって、国賠法4条所10 定の「民法」に含まれるから、本件被告行為については、同条を介して、
民法及び不競法が適用される。
(被告の主張)ア 本件被告行為が国賠法1条1項所定の「公権力の行使」に当たること本件被告行為は、純然たる私経済作用ではなく、また、国賠法2条の対15 象となる公の営造物の設置・管理作用でもないから、同法1条1項所定の「公権力の行使」に当たる。
したがって、本件被告行為については、同項が適用される余地があるとしても、民法709条は適用されない。
イ 不競法2条1項21号は国賠法4条所定の「民法」に当たらないこと20 国賠法4条の趣旨は、①同法1条又は同法2条の適用を受ける分野について、同法の規定を適用するほか、同法に規定のない事項(損害賠償の範囲、共同不法行為者の責任、過失相殺、消滅時効等)につき民法の規定を適用すること、②国賠法1条又は同法2条の適用を受けない分野(いわゆる私経済作用)における国又は公共団体の損害賠償責任について、民法25 (形式的意義における民法典に限らず、民法の附属法規(実質民法)をも含む。)の不法行為の規定を適用することとするものと解される。
16他方で、不競法は、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保する」(同法1条)ことを目的とした法律であるから、その適用範囲は、事業者等の競争の場面に限られる。同法2条1項21号も、
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は5 流布する行為」を不正競争とするものであって、当然、事業者等が競争関係にある場合に適用される条項である。また、不競法が、失火責任法、自動車損害賠償保障法等のように、民法の不法行為に関する特定の規定の特則を定めたものではないことに照らすと、不競法ひいては同法2条1項21号は、民法の不法行為に関する附属法規であるとはいえない。
10 したがって、本件被告行為について、国賠法4条を介して、不競法2条1項21号が適用されるとはいえない。
(2) 争点2-1(原告と被告との間の「競争関係」の有無)について(原告の主張)不競法2条1項21号所定の「競争関係」にあるというためには、その需15 要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りる。
被告は、キャラクターしんじょう君に関連する各種ライセンスを実施するというキャラクターライセンス事業の主体として活動してきたところ、こうした活動が被告の権能外のものであったということはあり得ない。そして、
原告の活動と、上記の被告の活動とは、キャラクター商品を販売する取引者20 や最終需要者(一般消費者)が共通している。
したがって、原告と被告は、不競法2条1項21号所定の「競争関係」にある。
(被告の主張)被告は、地方公共団体であり、国家の統治機構の一つとして、統治の作用25 としての事務一般等(地方自治法2条2項の事務)を処理する権能を有し、
現に同事務を処理している。本件被告行為も、純然たる私経済作用ではなく、
17公権力の行使として行ったものである。
これに対し、原告は、芸能事務所を運営する株式会社であり、営利企業として営利事業等に従事する一方で、地方公共団体ではないから、統治の作用としての事務一般等(地方自治法2条2項の事務)を処理する権能を有して5 おらず、現に同事務を処理していない。そして、原告は、キャラクターちぃたんに係る活動を純然たる私人としての経済活動として行っている。
このように、原告と被告は、法人としての基本的性格の差異に由来して、
それぞれの活動の場面と内容、性質とが異なるのであるから、不競法2条1項21号所定の「競争関係」にあるとはいえない。
10 (3) 争点2-2(「事実を告知し、又は流布する行為」に当たるか)について(原告の主張)ア 別紙営業誹謗行為主張対比表の「原告の主張」「問題となる行為」欄記載の各行為は、同「問題となる表現」欄記載の各表現により、同「告知又は流布された事実」欄記載の各事実をそれぞれ告知又は流布するものである。
15 イ 別紙営業誹謗行為主張対比表の「原告の主張」「区分」欄がAのものは、
権利侵害警告が不競法2条1項21号所定の虚偽の「事実」に当たるか否かが問題となる場合であるところ、権利侵害の警告等においては、権利行使の前提となる権利が存在しているか否かそれ自体が「事実」であって、
当該警告で指摘された権利侵害が成立しないときには、それ自体が虚偽の20 「事実」に当たる。
また、別紙営業誹謗行為主張対比表の「原告の主張」「区分」欄がBのものは、発言内容や書面等の記載内容がまさに事実を摘示するものである。
さらに、別紙営業誹謗行為主張対比表の「原告の主張」「区分」欄がCのものは、キャラクターちぃたんが制作された背景事情をあえて省いて説明25 することにより、他の部分の表現と相まって、原告が被告に全く無断でキャラクターちぃたんを制作して活動させたとの事実を摘示するものである。
18(被告の主張)ア 告知又は流布された内容が「事実」について別紙営業誹謗行為主張対比表の「原告の主張」「問題となる行為」欄記載の各行為において、同「問題となる表現」欄記載の各表現により告知又は5 流布された事実は、同表の「被告の主張」「告知又は流布された事実について」欄記載のとおりである。
なお、同表の番号6枝番3の表現によって告知又は流布された内容は、
意見ないし論評であるから、不競法2条1項21号所定の「事実」ではない。
10 イ 不競法2条1項21号所定の「告知…する行為」に当たらないこと被告によるフジテレビ宛書面送付行為は、フジテレビが、原告と提携して、「S-PARK」という番組にちぃたん着ぐるみを出演させる行為が、
フジテレビの被告に対する著作権侵害行為及び不正競争行為に該当することから、著作権等の正当な権利行使の一環として、フジテレビに対し、当15 該行為を中止するように求めたものである。
また、被告によるテレビ東京宛書面送付行為は、テレビ東京が、原告と提携して、ちぃたん着ぐるみをテレビ番組に出演させ、キャラクターちぃたんのアニメ番組を制作・放送する行為が、テレビ東京の被告に対する著作権侵害行為及び不正競争行為に該当することから、著作権等の正当な権20 利行使の一環として、テレビ東京に対し、当該行為を中止するように求めたものである。
したがって、被告によるフジテレビ宛書面送付行為及びテレビ東京宛書面送付行為は、原告と共に被告の権利を侵害する者であるフジテレビ及びテレビ東京に対し、直接、被告の権利を侵害している旨を通知するもので25 あるから、不競法2条1項21号所定の「告知…する行為」に当たらない。
(4) 争点2-3-1及び11(キャラクターちぃたんに係る使用及び活動につい19ての許諾の有無)について(原告の主張)ア カワウソちぃたんは、テレビ番組に出演するなどして商業活動を積極的に行っていたものの、生き物であるが故に様々な活動に一定の制限が生ず5 ることから、原告は、その活動の幅を広げることを目的として、キャラクター化することとした。そのため、カワウソちぃたんのキャラクター化に当たっては、原告がこれを用いて自由に独自の商業活動を行えることが大前提となっていた。
イ AⅰとBⅰとが平成29年9月24日に会談した際、Bⅰは、キャラク10 ターちぃたんの活動に当たって一切の制限がないと回答し、これを前提として、Aⅰが事前に準備していた叩き台のPR案に記載されていた内容を大筋の方向性として原告と被告とが協力関係を進めていくことが確認された。そして、原告は、同日から同年11月8日までの間、Bⅰに対し、Aⅰを通じて、キャラクターちぃたんのデザインやこれに基づく着ぐるみの15 製作状況を複数回にわたって情報提供しており、被告は、当該デザイン及び当該着ぐるみがキャラクターしんじょう君と一定程度類似していることを当然把握していた。
この経緯を踏まえて、原告は、同月2日及び同月8日、Bⅰに対し、Aⅰを通じて、確定したキャラクターちぃたんのデザインやこれに基づく着20 ぐるみの商業的な使用を前提とする要請であることを明示した上、そのデザインに係る被告の許可を求めた。これに対し、Bⅰは、Aⅰに対し、同月2日、被告内部で検討した結果、特に被告による許可の必要がないと回答した上、同月8日、被告元気創造課の元気創造係のメールアドレスを用いて、「ちぃたん」の着ぐるみ製造に関して、しんじょう君を製造するわけ25 ではないので被告として特に許可は必要がないとの回答をした。
その後、Aⅰは、同月29日、Bⅰに対し、完成したちぃたん着ぐるみ20の映像を提供したものの、Bⅰは、この際も、キャラクターちぃたんの活動に対する制限等の存在を示唆するような発言を一切していなかった。
ウ 以上の経緯からすると、被告は、遅くとも平成29年11月8日に被告元気創造課から正式に回答がされた時点で、原告に対し、原告が前記確定5 したキャラクターちぃたんのデザインと同一のちぃたんオリジナル及びこれに基づく着ぐるみを使用して活動することに関し、何ら期限及び制限を付すことなく黙示に許諾していたというべきである。
(被告の主張)ア 著作権、商標権、商品等表示などの知的財産権は、その権利者にとって10 も社会的にも重要な権利であるから、権利者が、他者に対し、これらの権利の使用を許諾するときには、契約書、承諾書等の書面をもって、許諾の期間、許諾が及ぶ地域、使用条件、対価等について細かく合意するのが通常である。
現に、キャラクターしんじょう君についても、詳しい使用条件及びこれ15 を踏まえた申請書、使用承認通知書等の書式が定められており、被告は、
キャラクターしんじょう君の使用希望者から事前に使用申請書、使用する商品の見本等の提出を受け、その申請内容を審査した上、使用者との間で、
書面をもって、具体的な使用条件を合意している。
したがって、被告が、原告に対し、自身の知的財産権に関する重大事に20 ついて、書面によることなく、LINEやメールでのやり取りによって、
キャラクターちぃたん等の使用及び活動について許諾するということは、
あり得ない。
イ そして、原告が指摘する平成29年11月8日付けのメールが正式な許可書でないことは明らかである。当該メールは、ちぃたん着ぐるみの製造25 に関するものにすぎず、商業的な活動については一切触れていないし、許可の期間がない、対価が無償である等の記載もない。
21ウ 以上によれば、被告がキャラクターちぃたんに係る使用及び活動について許諾していないことは明らかである。
(5) 争点2-3-2及び12(許諾に係る錯誤無効の成否)について(被告の主張)5 ア カワウソちぃたんのツイッター(現在の名称はX。以下、名称変更の前後を問わず「ツイッター」という。)アカウントのフォロワー数不正水増し等に係る錯誤があること原告が使用しているカワウソちぃたんのツイッターアカウントは、フォロワー数が0人の状態から新規に運営が開始されたものではなく、他の業10 者がフォロワー数を不正に増やしたアカウントを購入したものである。原告は、このような不正なアカウントを悪用した上、フォロワー数を購入するなどして、カワウソちぃたんの人気があるように偽り、多方面に営業活動を行っていた。そして、原告は、平成29年9月4日以降、被告に対し、
カワウソちぃたんの須崎市観光大使就任を打診するに際し、その経歴を詐15 称して、「カワウソ「ちぃたん☆」のツイッターのフォロワー数は70万人を超えている」等と虚偽の説明により欺き、被告をして、真実、カワウソちぃたんのツイッターアカウントのフォロワー数が70万人を超えており、
同アカウントが大きな発信力を有するものと誤信させた。
その結果、被告は、原告に対し、カワウソちぃたんを須崎市観光大使に20 委嘱する旨の意思表示をし、これに伴って、カワウソちぃたんを擬人化したキャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示に許諾するに至ったものである。
仮に、被告がカワウソちぃたんのツイッターアカウントのフォロワー数が不正に水増しされていることを知っていれば、カワウソちぃたんに須崎25 市観光大使としてのいわばお墨付きを与えることで原告の不正行為に加担することになってしまうことから、被告は、キャラクターちぃたんに係る22使用行為について黙示の許諾をしなかったものである。
したがって、被告は、原告の詐欺により上記錯誤に陥って、キャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示に許諾をしたものといえる。
そして、上記の錯誤は、要素の錯誤であり、かつ、表示されている。
5 イ キャラクターちぃたんのツイッターアカウントのフォロワー数不正水増し、不正営業等に係る錯誤があること(ア) 原告は、キャラクターしんじょう君の人気と知名度に目を付け、キャラクターしんじょう君を翻案して、カワウソちぃたんを擬人化したキャラクターちぃたんを制作し、カワウソちぃたんと同様に、他の業者がフ10 ォロワー数を不正に増やしたアカウントを悪用して、キャラクターちぃたんの人気があるように偽り、多方面に営業活動を行うことを計画し、
前記アのとおり、被告をして、真実、カワウソちぃたんのツイッターアカウントのフォロワー数が70万人を超えており、同アカウントが大きな発信力を有するものと誤信させた。
15 (イ) 次に、原告は、平成29年9月27日以降、被告の了解を得ることなく、Dⅰに対し、ちぃたん着ぐるみのデザインをキャラクターしんじょう君に非常に似せたものにするように求めた。そして、原告は、独断専行する形で、キャラクターしんじょう君を翻案してキャラクターちぃたんのデザインを制作し、もはや後戻りできない段階になってから、被告20 側にそのことを報告した。原告は、その際、キャラクターちぃたんのツイッターアカウントについても、他の業者がフォロワー数を不正に増やしたアカウントを悪用して、キャラクターちぃたんの人気があるように偽り、多方面に営業活動を行うことを計画していることを隠蔽し、被告に前記(ア)記載の計画を告げることなく、キャラクターちぃたんが、カワ25 ウソちぃたんを擬人化した存在として、不正な手段によらずに活動し、
被告の地域おこしやPR活動に大きく貢献するかのように虚偽の説明を23行って、被告をして、真実、キャラクターちぃたんが、不正な手段によらずに活動し、被告の地域おこしやPR活動に大きく貢献するものと誤信させた。
(ウ) さらに、原告は、前記(ア)記載の計画に基づき、キャラクターちぃたん5 について、フォロワー数を水増ししたツイッターアカウントを使用したほか、日本語、英語、韓国語、アラビア語、ポルトガル語及びタイ語で発信しているキャラクターちぃたんの各ツイッターアカウント、「カメちゃん」のツイッターアカウントについても、フォロワー数を水増ししたツイッターアカウントを使用した。そして、原告は、キャラクターちぃ10 たんについて、「高知県須崎市の観光大使」と須崎市観光大使を標榜し、
「全世界SNS総フォロワーが1000万突破!」等と称して、多方面に不正な営業活動を行い、被告の信用を失墜させた。しかし、原告は、
被告にキャラクターちぃたんのデザインを報告したり着ぐるみを製作して披露したりするに際し、このような不正な営業活動を行う計画を隠匿15 し、被告をして、原告が、キャラクターちぃたんについて、かかる不正な営業活動を行うなどして被告の信用を失墜させるようなことはないものと誤信させた。
(エ) 前記(ア)ないし(ウ)の錯誤の結果、被告は、原告に対し、カワウソちぃたんを擬人化したキャラクターちぃたんを制作すること及びキャラクタ20 ーちぃたんに係る使用行為について黙示に許諾するに至ったものである。
仮に、被告が、カワウソちぃたんのツイッターアカウントに係るフォロワー数が不正に水増しされていること、キャラクターちぃたんについても、ツイッターアカウントに係るフォロワー数が不正に水増しされたアカウントを悪用して人気があるように偽ることで多方面に営業活動を25 行うことが計画されていることを知っていれば、キャラクターちぃたんについて、須崎市観光大使であるカワウソちぃたんを擬人化したキャラ24としてのいわばお墨付きを与える形となることで原告の不正行為に加担することになってしまうことから、被告は、上記黙示の許諾をしなかったものである。
したがって、被告は、原告の詐欺により前記(ア)ないし(ウ)の錯誤に陥5 って、キャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示に許諾をしたものといえる。
そして、上記の錯誤は、要素の錯誤であり、かつ、表示されている。
ウ まとめ以上によれば、仮に被告がキャラクターちぃたんに係る使用行為につい10 て黙示に許諾していたとしても、この許諾は錯誤により無効(改正前民法95条)である。
(原告の主張)ア カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんの各ツイッターアカウントについて15 (ア) カワウソちぃたんのツイッターアカウントは、カワウソの飼育に携わっていた者が使用していたアカウントを原告が平成29年5月25日から無償で引き継いで使用していたもので、フォロワー数が0人の状態から運営が開始されたものではないものの、フォロワーは、当該アカウントに対するフォローをいつでも停止することができ、実際にもその後に20 フォロワー数の増減が生じている。そして、原告の営業努力によってフォロワーの維持及び拡大がされ、結果的にカワウソちぃたんのツイッターアカウントのフォロワー数は、引き継いだ際の11万人から70万人超までに大きく増加していた。このように、カワウソちぃたんのツイッターアカウントについて、フォロワー数が0人の状態から運営が開始さ25 れていないことに重要な意味はなく、同アカウントの発信力に虚偽がないことは明らかである。
25(イ) キャラクターちぃたんのツイッターアカウントは、原告代表者が個人的に使用していたものを、平成29年12月16日にキャラクターちぃたんのツイッターアカウントとしての使用を開始し、その頃、当該アカウントの管理主体を原告代表者個人から原告に変更したものである。
5 また、原告は、平成26年4月頃から、外部業者に対し、海外のツイッターアカウントについての準備、管理及び運用の委託を開始したが、
平成31年1月頃、当該業者と連絡が取れなくなり、アカウントへアクセスすることもできない状況となった。その後、アカウントの凍結、アカウントの第三者による乗っ取りなどが発生し、原告も詳細の把握が不10 可能となっている。
(ウ) 以上のとおり、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんのいずれのツイッターアカウントについても、不正に入手したものでもなく、フォロワー数の購入等の事実もない。なお、原告は、フォロワーを獲得するに当たり、ツイッター社が当時提供していた公式の広告ツールを有償15 で使用していたものの、このような公式ツールの使用が何ら規約に違反するものでないことは明らかである。
イ カワウソちぃたんのツイッターアカウントについてのフォロワー数の不正水増し等に係る錯誤がないこと被告が、カワウソちぃたんの発信力に着目して、須崎市観光大使として20 委嘱したとの指摘はそのとおりである。
そして、原告は、被告に対し、当初から、30万人のフォロワー数があると説明していたところ、その後、営業努力によりフォロワー数を70万人超にまで拡大した。このように、原告が被告に提供したカワウソちぃたんの発信力についての情報は真実である。
25 また、前記アのとおり、アカウントのフォロワーは、当該アカウントに対するフォローをいつでも停止することができ、随時入れ替わっていくも26のであるから、フォロワー数が0人の状態からアカウントの運営が開始されていないことに重要な意味はない。
以上のとおり、原告は、この点に関し、被告に何らかの虚偽の情報を提供していないから、被告が誤信するということはあり得ない。
5 なお、キャラクターちぃたんに係る使用行為についての黙示の許諾は、
カワウソちぃたんの須崎市観光大使の委嘱よりも以前に、その就任と無関係かつ別個にされたものであるから、当該黙示の許諾に当たり、カワウソちぃたんの発信力についての誤信が問題となることはない。
ウ キャラクターちぃたんのツイッターアカウントのフォロワー数不正水増10 し、不正営業等に係る錯誤がないこと前記アのとおり、原告によるキャラクターちぃたんのツイッターアカウントの運用に不正はなく、かつ、キャラクターちぃたんの発信力についても虚偽はない。
したがって、原告は、この点に関し、被告に何らかの虚偽の情報を提供15 していないから、被告が誤信するということはあり得ない。
(6) 争点2-3-3及び13(許諾に係る詐欺取消しの成否)について(被告の主張)前記(5)(被告の主張)のとおり、被告は、原告の詐欺により、キャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示に許諾したものであるから、当該詐20 欺を理由として、この許諾を取り消す(改正前民法96条1項)。
したがって、仮にキャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示の許諾があったとしても、この許諾は初めから無効であったものとみなされる。
(原告の主張)前記(5)(原告の主張)において主張したところと同様に、原告が被告を欺25 いたことはない。
(7) 争点2-3-4及び14(許諾に係る合意の解除の成否)について27(被告の主張)ア 許諾条件違反(ア) 仮に、キャラクターちぃたん等の使用行為について黙示の許諾があったと評価されるとしても、その許諾は、無制限や無条件のものではなく、
5 以下の範囲及び条件に限られるものである。
a 許諾の範囲ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真は、原告が、しんじょう君オリジナルを翻案して、順次、制作又は製作したものであるから、いずれもしんじょう君オリジナルの二次的著10 作物である。そして、被告において認識していたのは、原告によるキャラクターちぃたんのプロモーションビデオへの出演や、ツイッターなどでの被告の情報発信など、須崎市観光大使設置要綱に沿って、被告のPR活動を行う行為である。
したがって、許諾の範囲は、二次的著作物の利用に関する原著作者15 の権利として被告が専有するちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真に係る複製権を基礎として、ツイッターなどでの被告の情報発信等についてのこれらに係る公衆送信権等、イベント、ビデオ等への出演についてのちぃたん着ぐるみに係る展示権に限られる。
20 これに対し、被告が、商標権及び商品等表示に係る黙示の許諾をしたということはあり得ない。
b 許諾の条件についてキャラクターちぃたん等の使用行為についての黙示の許諾は、カワウソちぃたん及びこれを擬人化したキャラクターちぃたんが、須崎市25 観光大使として、その目的(被告の魅力を広く紹介し、被告の知名度の向上と観光産業の発展を図ること)、要件(各界、各分野において国28内外で活躍しており、被告の魅力や情報を積極的に発信する機会を有し、須崎市観光大使設置要綱の趣旨に沿った活動が期待できること)、
役割(被告の知名度の向上と観光産業の発展を図るために必要な活動を行うこと)に合致した活動を行うことが当然の前提となっている。
5 さらに、正式な書面による使用の許可を得たときでさえ、一定の許可条件が付されること、かかる許可条件は被告のホームページで公開されていることにかんがみれば、万一、キャラクターちぃたんの使用行為について黙示の許諾があったと評価されるとしても、その許諾には、
最低でもかかる許可条件と同等の許諾条件が付されていたというべき10 である。
したがって、カワウソちぃたん及びこれを擬人化したキャラクターちぃたんが、須崎市観光大使として、その目的、要件、役割に合致した活動を行わない場合、カワウソちぃたんが須崎市観光大使の職を解嘱された場合、被告の信用又は品位を害するものと認められる場合、
15 使用によって誤認又は混同を生じさせるおそれがあると認められる場合、しんじょう君のイメージを損なうおそれがあると認められる場合等には、須崎市観光大使設置要綱に沿って被告のPR活動を行うという許諾の目的に反するから、被告は、当然、許諾に係る合意を解除することができる。
20 (イ) 前記(ア)のとおり、許諾の範囲は、被告がちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真について有する複製権を基礎として、ツイッターなどでの須崎市の情報発信等についてのこれらに係る公衆送信権等、イベント、ビデオ等への出演についてのちぃたん着ぐるみに係る展示権に限られる。
25 しかし、原告は、この許諾の範囲を超えて、キャラクターちぃたんについて、「高知県須崎市の観光大使」と須崎市観光大使を標榜し、「全世29界SNS総フォロワーが1000万突破!」等と称して、多方面に不正な営業活動を行った。
(ウ) また、前記(ア)のとおり、被告による許諾は、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんが須崎市観光大使として設置要綱に定める目的、要5 件及び役割に合致した活動を行うことを当然の前提とするものとなっている。
しかし、カワウソちぃたんは、平成31年1月17日をもって須崎市観光大使を解嘱された上、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんは、いずれも須崎市観光大使の目的、要件及び役割に合致した活動を何10 ら行っておらず、かえって、多方面に不正な営業活動を行うことに邁進している。
(エ) さらに、キャラクターしんじょう君の使用に際しては、しんじょう君の名称、被告の著作権表示及び承認番号を表示することを含め、許可条件を遵守しなければならない。すなわち、被告の信用又は品位を害する15 ものと認められる場合、使用によって誤認又は混同を生じさせるおそれがあると認められる場合、キャラクターしんじょう君のイメージを損なうおそれがあると認められる場合等には、許可条件に反したものとして、
許可が取り消される。
しかし、原告は、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんのいず20 れについても、フォロワー数を不正に水増ししたツイッターアカウントを使用した上で、「高知県須崎市の観光大使」と須崎市観光大使を標榜し、
「全世界SNS総フォロワーが1000万突破!」等と称して、多方面に不正な営業活動を行い、被告の信用を失墜させている。また、キャラクターちぃたんの使用によって、キャラクターしんじょう君との誤認及25 び混同を生じさせ、キャラクターしんじょう君のイメージを損なわせている。
30(オ) 以上のとおり、原告によるカワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんの使用行為は、許諾の範囲及び条件に違反するものである。
イ 信頼関係が破壊されたこと(ア) 前記(5)(被告の主張)のとおり、原告は、カワウソちぃたん及びキャ5 ラクターちぃたんのいずれについても、不正にフォロワー数を水増ししたツイッターアカウントを使用した上で、不正な営業行為を行った。
(イ) 原告は、しんじょう君オリジナルに係る著作権者かつ本件被告商標権の権利者等である被告の明示的な同意を得ることなく、平成29年12月18日、別紙原告著作物目録1記載1のイラスト及びその下部に配さ10 れた「ちぃたん☆」との文字から成る商標につき商標登録出願をしたのを皮切りに、ちぃたん着ぐるみを正面から撮影した写真を含む商標についても商標登録出願をした。これに加え、原告は、中国、米国、韓国及びブラジルの少なくとも4か国においても、ちぃたん着ぐるみを正面から撮影した写真を含む商標について商標登録出願をした。
15 そして、原告は、被告がこれらの商標登録に一貫して反対しており、
かつ、拒絶理由通知を繰り返し受けたにもかかわらず、ちぃたんオリジナル及びちぃたん着ぐるみ写真がしんじょう君オリジナルを翻案したものであることを否認するなど、被告に対する不誠実な言動に終始し、執拗に商標登録しようとし続けた。さらに、原告は、上記商標登録出願に20 ついて拒絶をすべき旨の査定を受けた後も、審判を申し立て、現在までに、国内において複数の商標に係る商標権について設定登録を受けた。
また、海外においても少なくとも数件の商標に係る商標権について設定登録を受けている。
特に、海外においてちぃたん着ぐるみを正面から撮影した写真を含む25 商標に係る商標権の設定登録がされたことにより、被告は、上記の各国においてキャラクターしんじょう君に係る商標登録を受けることが困難31となり、ひいては、キャラクターしんじょう君の海外展開が妨げられた。
このように、原告は、カワウソちぃたんが須崎市観光大使に委嘱される前から、被告に無断で別紙原告著作物目録1記載1のイラストを含む商標について商標登録出願をするなど、多方面に不正な営業活動を行う5 準備を進め、被告の反対にもかかわらず、強引に商標登録を受けた。この原告の行為は、権利者である被告をないがしろにするものであって、
原告を信用して正式に契約書等を交わすことなく黙示の許諾をした被告の信頼を著しく裏切る背信的行為である。
(ウ) 原告は、カワウソちぃたんが須崎市観光大使になることを口実に、キ10 ャラクターちぃたんを制作しながら、キャラクターちぃたんを使用した被告のPR活動も須崎市観光大使の目的、要件及び役割に合致した活動も何ら行っておらず、かえって、多方面に不正な営業活動を行うことに邁進している。
(エ) 原告は、キャラクターちぃたんが悪目立ちするように、ツイッターア15 カウントにおいて、ちぃたん着ぐるみが、回転するヘリコプターのローターに近付くという非常に危険な自殺行為同然の行為や、走行する消防車に「箱乗り」をし、運転中に手を離して道路に落下、転倒するという道路交通法違反の犯罪行為にまで及ぶような危険な動画を投稿した。
これに対し、被告は、キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょ20 う君とを誤認混同したり、キャラクターちぃたんを須崎市観光大使と誤信したりした視聴者、市民等から、「危険である」「子供が真似をするお、
それがある」などの多数のクレームや批判を受けており、被告の信用及び品位が著しく害されている。しかし、原告は、これらのクレームや批判に反省することなく、かえって、営業資料に、「SNS上での体を張っ25 たチャレンジ動画が話題になり色んな意味で有名になった。」等と記載するなど、危険行為や炎上行為を売りにして営業活動を行っている。
32このような危険行為や炎上行為をそのまま放置すれば、ちぃたん着ぐるみのスーツアクターの生命及び身体に関わる重大な事故が発生したり、
巻き込まれた通行人等が怪我をしたり、子供が危険行為を真似て死亡したりする事態も懸念され、被告は、その信用及び品位が著しく害される5 に留まらず、地方公共団体として重大な道義的責任を問われかねない。
(オ) 原告による本件本訴の提起は、権利者である被告をないがしろにするものであって、原告を信用して正式に契約書等を交わすことなく黙示の許諾をした被告の信頼を著しく裏切る背信行為である。
(カ) キャラクターちぃたんに係る使用行為についての許諾は、無償のもの10 であって、これを基礎付ける原告と被告との間の信頼関係が破壊された場合にまで、被告に許諾の継続を強制するような趣旨のものではない。
そして、前記(ア)ないし(オ)の事情にかんがみれば、黙示の許諾の前提となる原告と被告との間の信頼関係は、完全に破壊されている。
ウ 許諾の解除の意思表示15 本件被告通知は、前記ア及びイの許諾条件違反及び信頼関係破壊を理由とする黙示の許諾の解除の意思表示を含むものである。
エ まとめしたがって、仮にキャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示の許諾があったとしても、この許諾に係る合意は、許諾条件違反及び信頼関20 係破壊を理由として解除され、その効力を失った。
(原告の主張)ア 許諾条件違反との主張について被告による黙示の許諾は、期間その他の限定・条件等が何ら付されていないものであるから、これらが付されていることを前提とする被告の主張25 は失当である。
イ 信頼関係が破壊されたとの主張について33前記(5)(原告の主張)のとおり、原告は、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんの各ツイッターアカウントのフォロワー数につき、不正な水増しをしていない。
また、被告が原告に対してキャラクターちぃたんに関連する商標登録出5 願をしないように求めていたことはない。むしろ、原告は、キャラクターしんじょう君のライセンス窓口であった株式会社ダンデライオンアニメーションスタジオ(以下「ダンデライオンアニメ社」という。)の担当者から、
海外でキャラクターしんじょう君とキャラクターちぃたんのペアライセンスを進めるため、海外でキャラクターちぃたんに関する商標登録出願手続10 を進めることを促されていた。
さらに、原告は、被告のPR活動に関し、Bⅰからの指示やリクエストに全て応じており、そのような活動として不足するようなことはなかった。
そして、ちぃたん着ぐるみを使用した動画の投稿は、キャラクターしんじょう君や被告の信用、社会的評価を低下させるものではないし、被告が15 配信したしんじょう君着ぐるみを使用した動画との比較においても、ちぃたん着ぐるみを使用した動画が特に危険なものであるとはいえない。
以上のとおり、黙示の許諾の前提となる原告と被告との間の信頼関係破壊を基礎付ける事情は存在しない。
ウ 許諾条件違反及び信頼関係破壊による許諾に係る合意の解除の意思表示20 の不存在被告は、本件被告通知について、許諾条件違反及び信頼関係破壊による許諾の解除の意思表示を含むものであると主張するが、同通知に係る書面にそのような意思表示を含意するとの記載はない。
(8) 争点2-4(告知又は流布された事実が原告の「営業上の信用を害する」も25 のであるか)について(原告の主張)34本件被告行為によって告知又は流布された事実が原告の営業上の信用を害するものであることは明らかである。
(被告の主張)争う。
5 (9) 争点2-5(正当な権利行使として違法性が阻却されるか)について(被告の主張)前記(3)(被告の主張)イのとおり、フジテレビ及びテレビ東京は、原告と共に被告の権利を侵害する者にほかならない。
したがって、被告によるフジテレビ宛書面送付行為及びテレビ東京宛書面10 送付行為は、いずれも正当な権利行使の一環としてされたものであるから、
違法性が阻却される。
(原告の主張)被告が、本件における事実関係及び経過や原告と被告との間の関係性等をあえて無視し、違法であると断じて原告の取引先に告知することが、正当な15 権利行使であるとは到底いえない。
また、被告が、被告代表者の公式会見やプレスリリースにより、第三者に対して告知及び流布した行為について、正当な権利行使の一環と評価する余地がないことは明らかである。
(10) 争点3(信義則上の義務違反を理由とする不法行為に基づく損害賠償責任20 の有無)について(原告の主張)ア 事実経過について原告は、テレビ東京の子供向けバラエティ番組「きんだーてれび」において平成31年4月から放送が予定されていた「ちぃたん」をキャラクタ25 ーとするショートアニメ「妖精ちぃたん☆」(各話約1分30秒、全13話)の企画(以下「テレビアニメ企画」という。)を進めていた。
35被告は、平成30年5月16日からしんじょう君の商品化窓口としてダンデライオン社を選任し、特に同年夏以降の原告とのやり取りは主に同社の担当者であったEⅰ(以下「Eⅰ」という。)との間でされていた。そこで、原告は、同年8月30日、Bⅰ及びEⅰに対し、テレビ東京における5 アニメの放送が平成31年4月に予定されていることを報告した。その後も、原告は、Eⅰに対し、国内でのキャラクターちぃたんの他の商業活動の状況と共に、テレビアニメ企画の進捗を報告していた。こうした一連の報告に対し、被告の窓口であるBⅰやEⅰからは、テレビアニメ企画を制約する旨の言動は一度もなく、制約される可能性があることの示唆すらな10 かった。
原告は、このような被告とのやり取りを踏まえ、テレビアニメ企画の準備を進めた。具体的には、原告は、平成31年4月の放送開始に向けて、
平成30年10月25日、株式会社インフィニティビジョン(以下「インフィニティビジョン」という。)との間で当該アニメに係る制作委託契約を15 締結し、同社に制作費として合計1728万円(消費税込み)を支払った。
その後も、上記アニメの制作準備は進められ、具体的な放送スケジュールも告知されるに至った。
このような経過にある中で、被告は、テレビ東京宛書面送付行為を含む本件被告行為に及んだ。
20 イ 被告には信義則上の義務違反があること被告は普通地方公共団体であり、被告の行為には一般の民間企業とは格段に違う社会的影響力があるから、そのような被告が、「ちぃたん」に関する原告との経緯を秘匿して、テレビ東京宛書面送付行為等に及べば、テレビ局がこれを無視して放送等をすることは困難であるところ、被告もこれ25 を当然認識していたものである。それにもかかわらず、被告は一方的な通知や記者会見及びプレスリリース等を断行し、その結果として、既に放送36スケジュールが告知されていたテレビアニメ企画の中止が決定された。
以上の事実経過を踏まえれば、原告と被告との間ではテレビアニメ企画に関する黙示の許諾が当然に成立しており、被告は、このテレビアニメ企画に関し、原告に対して理由なく損害を被らせないようにする信義則上の5 義務を負っていたにもかかわらず、同義務に違反したものというべきである。
ウ 被告は不法行為に基づく損害賠償責任を負うこと被告は、原告がテレビアニメ企画の準備として制作を進めていることを十分に認識しながら、放送直前になって、テレビ東京宛書面送付行為等に10 より、テレビアニメ企画を中止に追い込んだものであり、被告の行為は極めて高い違法性を有する。
したがって、被告には、信義則上の義務違反を理由とする不法行為に基づき、原告に生じた損害を賠償する責任がある。
(被告の主張)15 否認ないし争う。
(11) 争点4(名誉毀損を理由とする不法行為に基づく損害賠償責任の有無)について(原告の主張)ア 事実を摘示するものであること20 別紙名誉毀損行為主張対比表の「原告の主張」「問題となる行為」欄記載の各行為においてされた同「問題となる表現」欄記載の各表現は、同「摘示事実」欄記載の各事実をそれぞれ摘示するものである。
イ 原告の社会的評価を低下させるものであること前記アの各表現の意味内容は、別紙名誉毀損行為主張対比表の「原告の25 主張」「名誉毀損となる理由」欄記載のとおり、原告の社会的評価を低下させるものである。
37ウ 違法性阻却事由がないこと公共の利害に関する事実に係るものであるかや、その目的が専ら公益を図ることにあったかの各要件はともかくとして、摘示された事実がその重要な部分について真実ではない上、被告において当該事実を真実と信ずる5 について相当の理由もない。
(被告の主張)ア 意見ないし論評の表明にとどまるものであること別紙名誉毀損行為主張対比表の「被告の主張」「摘示事実について」欄及び同「名誉毀損の成否について」欄各記載のとおり、同表の「原告の主張」10 「問題となる表現」欄記載の各表現は、いずれも証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪又は優劣についての批評や論議であるから、意見ないし論評の表明に当たるイ 原告の社会的評価を低下させるものであるとの主張について争う。
15 ウ 違法性阻却事由があること別紙名誉毀損行為主張対比表の「被告の主張」「名誉毀損の成否について」欄記載のとおり、本件報道機関宛書面送付行為及び本件コメント発出行為は、公共の利害に関する事実に係るものであり、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった。
20 また、同欄記載のとおり、意見ないし論評の前提としている事実は重要な部分について真実であり、かつ、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものではないし、仮に、意見ないし論評の前提としている事実の重要な部分が真実でないとしても、当該事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由がある。
25 (12) 争点5(被告の故意又は過失の有無)について(原告の主張)38定例記者会見における被告知者が権利を侵害したとする喧伝や取引先への取引中止の告知は、法的手続によることなく専ら自己の認識判断に基づいて自力救済的に行われる権利行使であって、常にその認識判断が誤っている危険をはらむものである一方で、一度そのような行為がされた場合には、被告5 知者との取引が控えられるなど、被告知者に重大な損害をもたらすおそれが高いものであるから、告知者には高度の注意義務が課せられるものと解するのが相当である。
また、被告は、普通地方公共団体であって、その行動や発言は、私企業のそれと比較すると一般的に高い信頼性があると受け止められるから、普通地10 方公共団体において、一般私企業が法令違反行為を行っていると断定して告知する際には、それまでの経緯等を精査した上、通常の私人等と比較してより慎重に行われる必要がある。
しかし、被告は、前記(4)(原告の主張)において主張した事実関係を十分に知悉しているにもかかわらず、本件被告行為に及んでいるのであるから、
15 被告が普通地方公共団体であるということも併せかんがみれば、被告において少なくとも過失があることは明らかである。
(被告の主張)否認ないし争う。
(13) 争点6(原告の損害の有無及びその額)について20 (原告の主張)ア はじめに本件被告行為により、別紙原告損害整理表の番号1ないし7記載の各企画が中止になるなどして、原告には、以下に敷衍するとおり、同表の「原告の主張」「損害額(円)」欄記載の額の損害が生じた。
25 なお、原告が主張する請求権と各損害との対応関係は、同表の「請求権との対応」欄記載のとおりである。
39また、フジテレビ宛書面送付行為と相当因果関係のある損害は同表の番号1に、テレビ東京宛書面送付行為と相当因果関係のある損害は同表の番号2に、その余の本件被告行為と相当因果関係にある損害は同表の番号1ないし8に、各記載のものである。
5 イ 原告の営業に係る損害(ア) 逸失利益a S-PARK案件(a) 得られたであろう収益について原告は、平成31年1月17日までに、フジテレビとの間で、同10 社が放映するスポーツニュース番組「S-PARK」内で、同月27日から同年2月24日までの間、「ちぃたん」の出演するCMを5回放送すること、CM出演料として同社から70万円の支払を受けることを合意した。当該CMは、同年1月9日に撮影が終了し、同月24日に納品、同月27日に1回目の放送がそれぞれされたもの15 の、被告によるフジテレビ宛書面送付行為により、CMの放送は全て中止となった上、原告は、フジテレビと合意していたCM出演料の支払を受けられなかった。
(b) 控除すべき費用についてS-PARK案件の企画にアテンドやアクター、声優及び監修担20 当者として関与した者は、いずれも原告の従業員である。原告は、
当該従業員に対し、当該企画と関係なく給与等を支払っているから、
これらの給与等は、逸失利益の算定に当たって控除すべき費用に当たらない。むしろ、当該費用は、原告が実際に支出したものであるから、損害として評価すべきものである。
25 b 太田胃にゃんとのコラボ企画(a) 得られたであろう収益について40原告は、平成30年11月から、株式会社オートクチュール京都(以下「オートクチュール京都」という。)との間で、株式会社太田胃散のマスコットキャラクターである「太田胃にゃん」とキャラクターちぃたんとが出演する1本当たり15ないし30秒の長さのW5 eb用CMを4本制作し、同年秋から令和元年夏まで季節ごとに放送すること、オートクチュール京都は、原告に対し、キャラクターちぃたんの出演料として1本当たり200万円(消費税別)、合計800万円(消費税別)の支払を受けることを合意した。しかし、本件被告行為により、冬バージョンのCMの撮影が中止され、これを10 含む3本のCMへのキャラクターちぃたんの出演も全て取り止めとなったため、原告は、オートクチュール京都から、3本分の出演料600万円(消費税別)の支払を受けられなかった。
(b) 控除すべき費用について太田胃にゃんとのコラボ企画にアテンドやアクターとして関与し15 た者は、いずれも原告の従業員である。原告は、当該従業員に対し、
当該企画と関係なく給与等を支払っているから、これらの給与等は、
逸失利益の算定に当たって控除すべき費用に当たらない。むしろ、
当該費用は、原告が実際に支出したものであるから、損害として評価すべきものである。
20 もっとも、前記(a)のとおり、この企画においては、4回の撮影が予定されていたものの実際に撮影されたのは1回に留まるから、逸失利益の算定にあたり、3回分の撮影に要する費用6万8076円を控除する。
c 株式会社ドン・キホーテ(以下「ドン・キホーテ」という。)向け販25 売商品企画(a) 得られたであろう収益について41原告は、平成30年1月1日、株式会社ブランチ・アウト(以下「ブランチアウト」という。)との間で、ドン・キホーテにおいて販売する予定の衣類関係の商品について商品化許諾契約を締結し、当該契約に基づき、Tシャツ7点等についてデザイン監修、サンプル5 チェックを行っていた。ブランチアウトは、平成31年4月以降、
Tシャツ7点を皮切りに、ドン・キホーテにおいて各商品の販売を予定していた。当該商品化許諾のロイヤリティは、商品の希望小売価格に製造予定枚数を乗じた金額の6パーセント(消費税別)と合意されていたところ、原告は、少なくとも、平成31年4月以降に10 販売が予定され、その枚数等が確定していたTシャツ7点につき、
ロイヤリティとして64万4400円(=1074万円×0.06)の支払を受けられる見込みであった。しかし、原告は、同年2月14日、ブランチアウトから、本件被告行為に係る報道を見たとして、
衣類関係商品の販売を中止する旨の連絡を受け、結果として、6415 万4400円(消費税別)のロイヤリティの支払を受けられなかった。
(b) 控除すべき費用についてドン・キホーテ向け販売商品企画に監修担当者として関与した者は、原告の従業員である。原告は、当該従業員に対し、当該企画と20 関係なく給与等を支払っているから、これらの給与等は、逸失利益の算定に当たって控除すべき費用に当たらない。むしろ、当該費用は、原告が実際に支出したものであるから、損害として評価すべきものである。
d 株式会社しまむら(以下「しまむら」という。)向け販売商品企画25 (a) 得られたであろう収益について原告は、ブランチアウトとの間で、しまむらにおいて販売する予42定の衣類関係の商品について、商品化許諾に向けた交渉を行い、平成31年1月31日、そのロイヤリティに関し、「ボクサーパンツ」、
「ステテコ」 「パジャマ」及び「キッズ商品」については5パーセ、
ント(消費税別) 「靴下」及び「寝具/インテリア」については6、
5 パーセント(消費税別)とすることを合意した。当該合意成立を受けて、商品化許諾契約の締結が予定されており、当該契約に基づき、
原告は、ロイヤリティとして673万1055円(=441万5833円+231万5222円)の支払を受けられる見込みであった。
しかし、原告は、同年2月7日、ブランチアウトから、本件被告行10 為に係る報道を見たとして、衣類関係商品の販売を中止する旨の連絡を受け、結果として、673万1055円(消費税別)のロイヤリティの支払を受けられなかった。
(b) 控除すべき費用についてしまむら向け販売商品企画に監修担当者として関与した者は、原15 告の従業員である。原告は、当該従業員に対し、当該企画と関係なく給与等を支払っているから、これらの給与等は、逸失利益の算定に当たって控除すべき費用に当たらない。むしろ、当該費用は、原告が実際に支出したものであるから、損害として評価すべきものである。
20 e ゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」とのコラボ企画(a) 得られたであろう収益について原告は、平成31年1月12日、株式会社クラフトワーク(以下「クラフトワーク」という。)との間で、同社に対し、DeNAが展開するゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」において、キャラクタ25 ーちぃたんのデザインを使用することを許諾するとともに、そのロイヤリティを115万円(消費税別)とすることを合意した。しか43し、クラフトワークは、本件被告行為に係る報道を見たとして、上記の使用を中止するとの判断を示し、原告は、結果として、115万円(消費税別)のロイヤリティの支払を受けられなかった。
(b) 控除すべき費用について5 ゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」とのコラボ企画に監修担当者として関与した者は、原告の従業員である。原告は、当該従業員に対し、当該企画と関係なく給与等を支払っているから、これらの給与等は、逸失利益の算定に当たって控除すべき費用に当たらない。むしろ、当該費用は、原告が実際に支出したものであるから、
10 損害として評価すべきものである。
f 株式会社KADOKAWA(以下「KADOKAWA」という。)とのムック本企画(a) 得られたであろう収益について原告は、KADOKAWAとの間で、平成31年2月21日販売15 予定の「まるごとちぃたん☆ブック」と題するムック本の制作準備を進めていた。平成30年12月26日には、当該ムック本の付録となるバッグのデザインが確定し、平成31年2月6日には、KADOKAWAから使用許諾契約書のドラフト修正版が原告に送付され、正式に使用許諾契約を締結しようとしていた矢先に、本件被告20 行為により、当該企画は頓挫した。原告は、締結予定だった使用許諾契約に基づき、KADOKAWAから、著作権使用料として次の支払を受けられる予定であった。
①1万5000部までにつき、出版物の定価×7.5パーセント×決定部数25 ②1万5001部以降につき、出版物の定価×10パーセント×決定部数44初版部数は1万5000部、定価は1600円とされていたから、
原告は、少なくとも初版部数に関し、180万円の著作権使用料の支払を受けられなかった。
(b) 控除すべき費用について5 この企画にアテンドやアクター、監修担当者として関与した者は、
原告の従業員である。原告は、当該従業員に対し、当該企画と関係なく給与等を支払っているから、これらの給与等は、逸失利益の算定に当たって控除すべき費用に当たらない。むしろ、当該費用は、
原告が実際に支出したものであるから、損害として評価すべきもの10 である。
(イ) 放送が不可能となったアニメの制作費用前記(10)(原告の主張)のとおり、原告は、平成31年4月の放送開始に向けて、テレビアニメ企画の準備を進め、平成30年10月25日、
インフィニティビジョンに対し、妖精ちぃたん☆製作委員会の代表幹事15 会社として、委託費1600万円(消費税別)で当該アニメの制作を委託し、当該契約に基づき、同年12月26日に864万円(消費税込み)、
平成31年2月18日に864万円(消費税込み)をそれぞれ支払った。
しかし、テレビ東京宛書面送付行為を受けて、同月15日、当該アニメの放送が中止されることとなった。当該アニメは、1話が1分30秒20 と短いことから、他に転用することが困難で、制作の目的を達成することが不可能となった。これは、上記制作委託費と同額の価値を有する原告の財産権が完全に失われたに等しいものである。
したがって、原告には、少なくとも制作委託費として原告が支出した1728万円(消費税込み)の損害が発生した。
25 ウ 無形損害被告による営業誹謗行為及び名誉毀損行為によって原告の社会的評価が45低下させられたところ、それによって生じた無形損害の額は500万円を下らない。
弁護士費用相当損害金本件被告行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金の額は3935 万円である。
(被告の主張)ア 本件被告行為と原告が主張する各損害との間に相当因果関係がないこと別紙原告損害整理表の番号1ないし7記載の各企画の当事者は、本件被告行為があったからといって、直ちに当該企画を中止するわけではなく、
10 原告から事情を聴取したり、原告が被告から許諾を受けた正当な権利者であることを裏付ける契約書等の提出を求めたりして、情報を収集した上で、
実施の可否を主体的に判断するはずである。
しかし、原告は、知的財産権を利用したビジネスをするにもかかわらず、
被告から教示された手続を取らず、永年かつ無償かつ無限定の使用許諾を15 受けた等と称して、キャラクターちぃたんに関する権利が不確実かつ不明確なまま、独自の判断で営業活動を拡大させたものであって、自己の権原を的確に証明する契約書等も保持していなかった。そのため、上記各企画の当事者は、原告が取引上必要な権利処理すらしていない杜撰な事業者であって、およそ知的財産権を利用したビジネスを共同で行うことはできな20 いと判断し、各企画を中止したと考えられる。
そうすると、仮に本件被告行為をきっかけとして上記各企画が中止されたとしても、それは原告自身の知的財産権の管理等の問題に起因するものである。そして、上記各企画が中止に至った唯一の原因が本件被告行為であって他に原因がないこと等についての立証はない。
25 したがって、本件被告行為と原告が主張する各損害との間に相当因果関係はない。
46イ 本件被告行為と相当因果関係のある逸失利益の有無及びその額について(ア) 別紙原告損害整理表の番号1ないし7記載の各企画が中止になったとしても、以下のとおり、それだけで直ちに逸失利益が生じるとはいえない。
5 a S-PARK案件について原告の主張によっても、当該CMの収録が終わり、納品もされているというのであるから、CMの放送が中止になったとしても、通常は少なくとも出演料の一部が支払われるはずである。
それが支払われていないとすれば、原告がフジテレビとの契約条件10 に違反したこと等が原因と考えられるから、フジテレビ宛書面送付行為又は本件被告行為と相当因果関係がある損害とはいえない。
b 太田胃にゃんとのコラボ企画について原告は、冬バージョンのCMの撮影が中止になったと主張するところ、そうであれば、その日に当該撮影に使用する予定であったちぃた15 ん着ぐるみや、中に入る予定であったスーツアクターを使って、YouTube向けの動画を撮影したり、イベントに参加したりするなど、
他の方法で稼働し、利益を得ることが可能であったといえる。
(イ) 逸失利益の算定に当たっては、経費を適切に控除する必要がある。しかし、原告が経費として主張する額を前提とすると、各企画の利益率は、
20 驚異的に高く、通常あり得ないものであるから、実際の経費はより高額であることが合理的に推認できる。
また、原告は、太田胃にゃんとのコラボ企画についての一部の経費を除き、これらの経費を実際に支出しているのであるから、損害として評価すべきである等と主張する。しかし、原告のこの主張は、当該経費す25 ら控除せずに売上げそのものを損害と主張するものであって、逸失利益ではなく「逸失売上げ」を損害と主張するに等しいものである。さらに、
47この主張は、本件被告行為によって生じた逸失利益(消極損害)を得るために要する経費を、余分に支出を要した費用(積極損害)と構成するものであって、消極損害と積極損害とを混同しており失当である。
無形損害及び弁護士費用相当損害金について5 否認ないし争う。
(14) 争点7(著作権侵害の成否)について(被告の主張)ア ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真はしんじょう君オリジナルの二次的著作物であること10 原告は、平成29年9月27日以降、しんじょう君オリジナルを翻案して、順次、ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真を制作又は製作した。
したがって、ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真は、しんじょう君オリジナルの二次的著作物である。
15 そして、上記の制作等行為は、いずれもしんじょう君オリジナルの著作権者である被告の許諾を得ることなく無断でされたものであるから、被告の翻案権を侵害する。
イ 原告によるちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真の使用行為が被告の著作権を侵害すること20 (ア) ちぃたん物品の頒布行為原告は、平成29年11月頃以降、ちぃたんオリジナルを複製(多少の修正増減を含む。)したちぃたんイラスト及びちぃたん着ぐるみ写真を付し、又は、これらの外観を備えたちぃたん物品を頒布している。
前記アのとおり、ちぃたんオリジナルはしんじょう君オリジナルの二25 次的著作物であるから、ちぃたんオリジナルを複製したちぃたんイラストも同様である。そうすると、しんじょう君オリジナルの著作権者であ48る被告は、二次的著作物であるちぃたんイラスト及びちぃたん着ぐるみ写真の使用に関し、著作権の各支分権であってちぃたんイラスト及びちぃたん着ぐるみ写真の著作権者が有するものと同一の種類の権利を専有するから、原告は、被告との合意によらなければ、ちぃたんイラスト及5 びちぃたん着ぐるみ写真を使用することができない。しかし、ちぃたんイラスト及びちぃたん着ぐるみ写真の使用に関し、原告と被告との間の合意は存在しない。
したがって、原告がちぃたん物品を頒布することは、被告の複製権及び譲渡権を侵害する。
10 (イ) ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いた活動原告は、平成29年11月頃以降、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いて、各種イベントを開催したり、広告宣伝及び販売促進活動を行ったりしている。
しんじょう君オリジナルの著作権者である被告は、二次的著作物であ15 るちぃたん着ぐるみ及びその複製物の使用に関し、著作権の各支分権であってちぃたん着ぐるみ及びその複製物の著作権者が有するものと同一の種類の権利を専有するから、原告は、被告との合意によらなければ、
ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を使用することができない。しかし、
ちぃたん着ぐるみ及びその複製物の使用に関し、原告と被告との間の合20 意は存在しない。
したがって、原告がちぃたん着ぐるみ及びその複製物を使用してイベントを開催等することは、被告の展示権を侵害する。
また、原告がちぃたん着ぐるみの複製物を製作することは、被告の複製権を侵害する。
25 (ウ) キャラクターちぃたんの動画及びアニメーションにおける使用行為原告は、平成29年11月頃以降、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物49を撮影して制作した動画並びにちぃたんイラストを使用して制作したアニメーションを放送したり、インターネットで配信したり、イベント会場で上映したりしている。
前記(ア)及び(イ)のとおり、原告は、被告との合意によらなければ、ち5 ぃたん着ぐるみ及びその複製物並びにちぃたんイラストを使用することができないところ、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物並びにちぃたんイラストの使用に関し、原告と被告との間の合意は存在しない。
したがって、原告がちぃたん着ぐるみ及びその複製物並びにちぃたんイラストを使用して制作した動画及びアニメーションを放送、配信及び10 上映することは、被告の公衆送信権及び上映権を侵害する。
(原告の主張)キャラクターちぃたんのデザインの制作に当たり、しんじょう君のデザインが参考にされていたものの、両者は配色や頭部の髪の毛の有無、帽子の形状などに顕著な差があるなど、数多くの相違が存在することから、両者は、
15 外観上相紛れるおそれのないデザインであり、全体として非類似であることは明らかである。キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君の両者のデザインに一定の類似性があるとしても、それは、同じモチーフであるカワウソを使用して、同じ著作者により制作されたことに起因するものであって、著作者の個性が発露した結果として、限定的な類似部分が生じたにすぎ20 ない。
したがって、ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真はしんじょう君オリジナルの二次的著作物に当たらないから、これらの制作、使用等の行為がしんじょう君オリジナルに係る被告の著作権を侵害することはない。
25 (15) 争点8(商標権侵害の成否)について(被告の主張)50ア 原告による使用行為原告は、平成29年11月頃以降、ちぃたんイラスト及びちぃたん着ぐるみ写真を付し又はこれらの外観を備えたちぃたん物品を頒布し、各種イベントの企画・運営又は開催、広告宣伝、販売促進活動において、ちぃた5 ん着ぐるみ及びその複製物を使用している。
イ 本件被告商標とちぃたんイラスト等は類似すること(ア) ちぃたんイラストとの類否a 本件被告商標とちぃたんイラストの外観は、いずれもカワウソを擬人化したキャラクターであり、丸い顔と縦長楕円の目、ウエストのく10 びれがない楕円形の胴、短い手足及び短い尻尾からなり、二本足で立っている点において共通している。
また、本件被告商標とちぃたんイラストは、いずれもカワウソとの観念を想起させる。
これに対し、本件被告商標は「しんじょうくん」、ちぃたんイラスト15 は「ちぃたん」との称呼を生じさせるものの、ちぃたんイラストから、
常に「ちぃたん」という称呼が生じるわけではないから、両者の間の称呼における差異は有意なものではない。
b 被告は、正規に使用許可を申請した使用者に対し、しんじょう君着ぐるみ写真、しんじょう君イラストを商品等に使用することを許諾し20 ており、令和4年6月時点でも、使用者は、累計1500件以上に及び、しんじょう君着ぐるみ写真、しんじょう君イラストを付した様々なキャラクターグッズを販売している。その中には、原告が頒布する前記アの物品と同種の物が多数存在する。
また、キャラクターしんじょう君及びキャラクターちぃたんは、い25 わゆる「ゆるキャラ」 「ご当地キャラ」等であり、いずれも「ゆるキ、
ャラグランプリ」に出場したことからも明らかなとおり、その活動領51域は重なっており、需要者も共通している。
c このような取引の実情の下においては、取引者、需要者は、本件被告商標とちぃたんイラストの外観呼称又は観念に基づく印象記憶
連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか5 ら、本件被告商標とちぃたんイラストは類似している。
(イ) ちぃたん着ぐるみとの類否前記(ア)と同様に、本件における取引の実情の下においては、取引者、
需要者は、本件被告商標とちぃたん着ぐるみの外観呼称又は観念に基づく印象記憶連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取る10 おそれがあるから、本件被告商標とちぃたん着ぐるみは類似している。
なお、本件被告商標とちぃたん着ぐるみとの表現形式の差異は、その類否を左右するものとはいえない。
(ウ) ちぃたん着ぐるみ写真との類否前記(ア)と同様に、本件における取引の実情の下においては、取引者、
15 需要者は、本件被告商標とちぃたん着ぐるみ写真の外観呼称又は観念に基づく印象記憶連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるから、本件被告商標とちぃたん着ぐるみ写真は類似している。
なお、本件被告商標とちぃたん着ぐるみ写真との表現形式の差異は、
20 その類否を左右するものとはいえない。
ウ 本件被告商標の指定商品又は指定役務と同一であるか又は類似する商品又は役務について使用されたこと(ア) ちぃたん着ぐるみ写真及びちぃたんイラストを、本件被告商標の指定商品又は指定役務と同一であるか又は類似する商品又は役務に使用して25 いること原告が販売するちぃたん物品は、本件被告商標の指定商品に該当する。
52また、原告が、その他のキャラクターグッズ(トートバッグ、巾着袋、
ポーチ、バスボール、スマホカバー、スマホクリーナー、モバイルバッテリー、パスケース、キーカバー、リップケース、マグカップ、ギターピック、ミラー、タオル、フェイスタオル、ハンドタオル、缶バッジ、
5 チケットホルダー、根付、アクリルネームプレート、アクリルスタンド)を販売することは、本件被告商標の指定役務である「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に該当する。
したがって、原告は、ちぃたん着ぐるみ写真及びちぃたんイラストを、
10 本件被告商標の指定商品又は指定役務と同一であるか又は類似する商品又は役務に使用している。
(イ) ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を本件被告商標の指定役務と同一であるか又は類似の役務に使用していること各種イベントの企画・運営又は開催は、本件被告商標の指定役務であ15 る「セミナーの企画・運営又は開催」 「映画・演芸・演劇又は音楽の演、
奏の興行の企画又は運営」 「スポーツの興行の企画・運営又は開催」又、
は「興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。」と同一であるか又は類似する。
)20 また、広告宣伝又は販売促進活動は、本件被告商標の指定役務である「広告業」 「商品の販売に関する情報の提供」と同一であるか又は類似
する。
したがって、原告は、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を、本件被告商標の指定役務と同一であるか又は類似する役務に使用している。
25 (原告の主張)ア 原告による使用行為がないこと53原告は、ちぃたん物品の販売者等に対し、ちぃたん着ぐるみ写真及びちぃたんイラストの使用を許諾しているにすぎず、自らちぃたん物品を販売していない。
イ 本件被告商標とちぃたんイラスト等は類似していないこと5 前記(14)(原告の主張)のとおり、本件被告商標とちぃたんイラスト等は類似していない。
ウ 本件被告商標の指定商品又は指定役務と同一であるか又は類似する商品又は役務について使用されたことについてちぃたん物品が本件被告商標の指定商品に該当することは認める。
10 これに対し、ちぃたん着ぐるみが第三者の主宰するイベントやCM等に出演したことが、「セミナーの企画・運営又は開催」 「広告業」又は「商品、
の販売に関する情報の提供」に当たるとはいえない。
(16) 争点9(不競法2条1項2号所定の不正競争の成否)について(被告の主張)15 ア 被告は、平成25年、ご当地キャラであるキャラクターしんじょう君の新たなデザインを選定し、その後、しんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君オリジナルを複製(多少の修正増減を含む。)したしんじょう君イラストを用いて、キャラクターしんじょう君の知名度及び人気の向上に尽力した。そして、平成220 8年までには、キャラクターしんじょう君は、海外へ進出したり、各種イベント、テレビ番組、テレビCM等に積極的に出演したりして、活動の場を更に広げ、被告の地域おこしやPR活動のために尽力し、大きく知名度及び人気を高めた。
その結果、キャラクターしんじょう君は、平成28年11月、142125 体のキャラクターが参加した「ゆるキャラグランプリ2016」において、
グランプリ(1位)に選出された。また、キャラクターしんじょう君は、
54同月10日、「高知県キャラクター観光特使」の第1号に委嘱され、被告だけではなく高知全体の魅力を発信していく重要な公的役割を担うことになった。
さらに、キャラクターしんじょう君が積極的に宣伝活動を続けた「すさ5 きがすきさ応援寄附金」(ふるさと納税)は、キャラクターしんじょう君が「ゆるキャラグランプリ」で優勝したことも大きく影響して、平成28年度は約6万0250件、約10億円に及んだ。
イ このように、しんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストは、平成28年までには、
10 被告の商品及び活動を示す表示であることが、全国的に広く認識されている状態となった。
したがって、しんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストは、いずれも被告の著名な商品等表示である。
15 (原告の主張)キャラクターしんじょう君は、飽くまでも被告のPRキャラクターとして一定の範囲で認知度を得たにすぎず、全国的に広く認識された状態となっていない。
したがって、しんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょ20 う君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストは、いずれも被告の著名な商品等表示とはいえない。
(17) 争点10-1(被告の商品等表示として周知なものか)について(被告の主張)前記(16)(被告の主張)のとおり、しんじょう君オリジナル、しんじょう25 君着ぐるみ、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストは、平成28年までには、被告の商品及び活動を示す表示であることが、少なくとも55ご当地キャラのファン等の間では広く認識されている状態となった。
したがって、しんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストは、被告の商品等表示として周知なものである。
5 (原告の主張)しんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストがご当地キャラのファン等の間で広く認識されている状態となったとの評価は争う。
したがって、しんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょ10 う君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストは、被告の商品等表示として周知なものとはいえない。
(18) 争点10-2(被告の「営業と混同を生じさせる行為」であるか)について(被告の主張)15 ちぃたん着ぐるみ写真及びちぃたんイラストを付した商品と、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストを付した商品とは、いずれもキャラクターグッズであって、需要者(消費者、取引事業者等)を共通にしている。
また、ちぃたん着ぐるみが提供する役務と、しんじょう君着ぐるみが提供20 する役務とは、いずれもゆるキャラ、ご当地キャラ等の活動であって、需要者を共通にしている。
さらに、原告が、ちぃたんオリジナルをしんじょう君オリジナルに非常に似せて制作させたこともあって、ちぃたん着ぐるみ写真としんじょう君着ぐるみ写真、ちぃたんイラストとしんじょう君イラスト、ちぃたん着ぐるみと25 しんじょう君着ぐるみは、それぞれ非常に酷似している。
したがって、需要者が、ちぃたん着ぐるみ写真及びちぃたんイラストを付56した商品並びにちぃたん着ぐるみが提供する役務について、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラストを付した商品並びにしんじょう君着ぐるみが提供する役務と出所が同一であると誤認するおそれがあり、少なくとも、後者と何らかの関係が存すると誤認するおそれがある。
5 (原告の主張)前記(14)(原告の主張)のとおり、キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君とは、そのデザインが全体として非類似であり、かつ、キャラクター全体から受ける印象が相当に異なるから、誤認混同のおそれはない。
(19) 争点15(許諾に係る期間が満了したか)について10 (被告の主張)キャラクターしんじょう君の使用許諾に当たり、その期間は2年以内とされているから、キャラクターちぃたんに係る使用許諾に係る期間も最長で2年に制限され、改めて許諾を得ない限り、それを超える使用は認められない。
したがって、仮にキャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示の許15 諾があったとしても、キャラクターちぃたんは、平成29年12月15日から活動を開始しているから、令和元年12月14日をもって黙示の許諾に係る期間が満了した。
(原告の主張)前記(7)(原告の主張)アのとおり、被告は、原告に対し、原告によるちぃ20 たんオリジナル及びこれに基づいて製作されたちぃたん着ぐるみの使用及び活動に関し、何ら期限及び制限を付すことなく黙示に許諾していたから、許諾に係る期間が付されていたことを前提とする被告の主張は失当である。
(20) 争点16(差止め等の必要性)について(被告の主張)25 ア 著作権法112条1項に基づく差止請求(ア) 原告がちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ、ちぃたん着ぐるみ写57真を制作又は製作する行為は、しんじょう君オリジナルに係る被告の翻案権を侵害し、原告がちぃたんイラスト、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真を使用する行為は、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利として専有するちぃたんイラスト、ちぃたん着ぐるみ及びちぃ5 たん着ぐるみ写真に係る被告の複製権、譲渡権、公衆送信権及び上映権を侵害する。
(イ) したがって、原告に対し、①ちぃたん物品の頒布、②ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いてイベントを開催すること等並びに③ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を撮影した動画又はちぃたんイラストを使用し10 たアニメーションの放送、自動公衆送信、送信可能化及び上映の差止めを命じる必要がある。
イ 商標法36条1項及び不競法3条1項に基づく差止請求(ア) 原告は、本件被告商標と類似する写真、イラスト等を付したちぃたん物品を販売したり、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いたイベント15 の開催等をしたりしているところ、この原告の行為は、本件被告商標権を侵害する。
また、原告は、被告の著名な商品等表示であり、かつ、商品等表示として需要者の間に広く認識されているしんじょう君オリジナル、しんじょう君着ぐるみ、しんじょう君着ぐるみ写真及びしんじょう君イラスト20 と類似するちぃたん物品を頒布したり、ちぃたん着ぐるみ及びその複製物を用いたイベントの開催等をしたりしているところ、この原告の行為は、不競法2条1項2号及び1号の不正競争に該当する。
(イ) したがって、原告に対し、①ちぃたん物品の譲渡、引渡し、譲渡又は引渡しのための展示、輸出及び電気通信回線を通じて提供することの差25 止め並びに②イベントの開催等においてちぃたん着ぐるみ及びその複製物を使用することの差止めを命じる必要がある。
58ウ 著作権法112条2項、商標法36条2項及び不競法3条2項に基づく廃棄請求前記ア(ア)及びイ(ア)によれば、原告に対し、①ちぃたん物品の廃棄並びに②ちぃたん着ぐるみ及びその複製物の廃棄を命じる必要がある。
5 (原告の主張)否認ないし争う。
(21) 争点17-1(原告の故意又は過失の有無)について(被告の主張)ア 原告には故意があること10 原告は、権原がないままキャラクターちぃたんの使用行為に及んだものであるから、故意があることは明らかである。
イ 原告には過失があること(ア) 他人の商標権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があったものと推定される(商標法39条が準用する特許法103条)。
15 (イ) 原告による著作権侵害行為及び不正競争行為についても、被告は、原告に対し、平成31年1月19日到達の本件被告通知をもって、キャラクターちぃたんの使用行為の差止めを請求したから、原告は、少なくとも同日以降、被告がキャラクターちぃたんの使用行為を許諾していないことを明確に認識できた。
20 したがって、原告には、少なくとも本件被告通知が到達した日の翌日である同月20日以降において、権原がないままキャラクターちぃたんの使用行為に及んだことについて過失がある。
(原告の主張)否認ないし争う。
25 (22) 争点17-2(被告の損害の有無及びその額)について(被告の主張)59ア 原告が得た利益相当額に係る損害額(ア) 原告が、著作権、商標権及び不正競争による営業上の利益侵害する行為により利益を受けているときは、その利益の額は、被告が受けた損害の額と推定される(著作権法114条2項、商標法38条2項、不競5 法5条2項)。
(イ) 原告は、これまでに、キャラクターちぃたんの営業活動によって、少なくとも年間2000万円の売上げを得ていた。
他方、経費についてみると、キャラクターちぃたんに係る営業活動は、
基本的には商品にキャラクターちぃたんのイラストや写真を付す形での10 キャラクタービジネスであるから、ちぃたん着ぐるみのスーツアクターの人件費及びアニメ制作費のような特別の支出を除くと、経常的にはほとんど経費を要しない。そうすると、売上げに占める利益率は、低く見積もっても30パーセントを下らない。
したがって、原告がキャラクターちぃたんの使用行為によって得てい15 る利益は、少なくとも、年額にして600万円、月額にして50万円を下らない。
(ウ) 前記(イ)の事実関係を前提として、原告がキャラクターちぃたんの使用行為によって得た利益を算定すると、平成31年1月20日から令和5年2月28日までの間(4年1月余り)につき、その額は少なくとも220 450万円を下らない。
仮にキャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示の許諾があったとしても、前記(19)(被告の主張)のとおり、令和元年12月14日をもって黙示の許諾に係る期間が満了したところ、同月15日から令和5年2月28日までの間(3年2月余り)に原告がキャラクターちぃた25 んの使用行為によって得た利益の額は、少なくとも1900万円を下らない。
60(エ) したがって、被告が被った損害の額は、2450万円(主位的主張)又は1900万円(予備的主張)を下らない。
弁護士費用相当損害金原告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金の額は、少5 なくとも245万円(主位的主張)又は190万円(予備的主張)を下らない。
ウ まとめ以上によれば、被告に生じた損害の額は次のとおりとなる。
(ア) 主位的主張10 2695万円並びにうち770万円(平成31年1月20日から令和2年3月31日までに生じた損害金)に対する令和2年3月31日から支払済みまでの改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金及びうち1925万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた損害金)に対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年315 パーセントの割合による遅延損害金(イ) 予備的主張2090万円並びにうち165万円(令和元年12月15日から令和2年3月31日までに生じた損害金)に対する令和2年3月31日から支払済みまでの改正前民法所定年5分の割合による遅延損害金及びうち20 1925万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた損害金)に対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年3パーセントの割合による遅延損害金(原告の主張)否認ないし争う。
25 (23) 争点18(不当利得返還請求の当否)について(被告の主張)61ア 原告は、キャラクターちぃたんの使用行為によって、平成31年1月20日から令和5年2月28日までの間(4年1月余り)につき、少なくとも2450万円を下らない利益を、令和元年12月15日から令和5年2月28日までの間(3年2月余り)につき、少なくとも1900万円を下5 らない利益を、それぞれ得た。
そして、原告は、上記の使用行為につき、法律上の権限なく、被告の著作権、商標権及び商品等表示を使用して、同利益を受け、そのために被告に損失を及ぼしたことになるから、不当利得として、同利益を被告に返還する義務を負う。
10 また、前記(21)(被告の主張)のとおり、原告は、権原がないままキャラクターちぃたんの使用行為に及んだことについて故意又は過失があるから、悪意の受益者である。したがって、原告は、同利益に利息を付して返還しなければならない。
イ 以上によれば、原告が被告に返還すべき利得金は次のとおりとなる。
15 (ア) 主位的主張2450万円並びにうち700万円(平成31年1月20日から令和2年3月31日までに生じた利得金)に対する令和2年3月31日から支払済みまでの改正前民法所定年5分の割合による利息及びうち1750万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた利得金)20 に対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年3パーセントの割合による利息(イ) 予備的主張1900万円並びにうち150万円(令和元年12月15日から令和2年3月31日までに生じた利得金)に対する令和2年3月31日から25 支払済みまでの改正前民法所定年5分の割合による利息及びうち1750万円(令和2年4月1日から令和5年2月28日までに生じた利得金)62に対する令和5年2月28日から支払済みまでの民法所定年3パーセントの割合による利息(原告の主張)否認ないし争う。
5 第3 当裁判所の判断1 認定事実等前提事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1) ちぃたんオリジナルの制作及びちぃたん着ぐるみの製作の経緯10 ア 原告と被告とのやり取りの端緒(ア) 原告は、平成29年4月10日に出生したカワウソちぃたんを飼育し、
同年8月8日から令和5年5月30日までチバテレで放送されていた本件番組に司会者として出演させていた(前提事実(3)ア、甲118)。
平成29年8月当時、カワウソちぃたんのツイッターアカウントに対15 するフォロワー数は30万人を超えていた(甲7)。
(イ) 本件番組の企画案として、カワウソちぃたんと同様にカワウソをモチーフとした被告のご当地キャラクターであるキャラクターしんじょう君をゲストとして呼ぶという案が浮上したことから、本件番組の番組制作プロデューサーであったAⅰは、平成29年8月22日、被告元気創造20 課に対し、出演依頼の連絡をした。当時、被告元気創造課の元気創造係に所属していたBⅰは、Aⅰからの当該連絡に対し、被告側の担当者として対応した。AⅰがBⅰに対し、同年9月19日放送分(第7回)から同年10月3日放送分(第9回)までの3回分について、キャラクターしんじょう君のゲスト出演を打診したところ、Bⅰに快諾されたこと25 から、同年9月4日及び5日にかけて、キャラクターしんじょう君がゲストとして参加する放送3回分の撮影がされることとなった。(甲6、16318、乙72)。
Aⅰは、上記の撮影に合わせて東京を訪れたBⅰと会談し、カワウソちぃたんを須崎市観光大使に就任させることなどを提案した(甲118、
乙203)。
5 (ウ) Bⅰは、前記(イ)の東京出張から須崎市に戻った後、Cⅰに対し、カワウソちぃたんを被告の観光大使に就任させたいとの申し出があり、委嘱する方向で話を進めたいとの提案をしたところ、Cⅰは、これを了承した(乙203、204)。
(エ) AⅰとBⅰは、前記(イ)の会談後から、主にLINEを使用してやり取10 りを重ね、カワウソちぃたんとキャラクターしんじょう君それぞれのSNSの投稿に対して互いにリツイートすることなどを相談していた(甲8、乙76)。
イ ちぃたん着ぐるみのデザイン確定に至る経緯(ア) 被告によるDⅰの紹介15 Bⅰは、平成29年9月13日、Aⅰに対し、カワウソちぃたんの須崎市観光大使就任の件について内々で了承されそうである旨の連絡をした(甲8、乙76)。原告は、当時、カワウソちぃたんの着ぐるみを製作してキャラクター化することを検討していたところ、原告代表者は、Bⅰからの上記の連絡を受けて、Aⅰに対し、カワウソちぃたんの観光大20 使就任について了解するとともに、カワウソちぃたんの着ぐるみ製作について相談した(甲119、証人Aⅰ)。そこで、Aⅰは、Bⅰに対し、
キャラクターしんじょう君を制作したデザイナーにカワウソちぃたんの着ぐるみのデザインを依頼することが可能かどうか、カワウソちぃたんのキャラクターをキャラクターしんじょう君の友達という設定とした上25 で、被告においてカワウソちぃたんのキャラクターの着ぐるみを製作してもらうことが可能かどうかを照会した(甲8、乙76)。これを受けて、
64Bⅰは、Aⅰに対し、デザイナー及び製作会社についてはいずれも紹介できるものの、被告において着ぐるみを製作することについては相談を要する旨の回答をした(甲8、乙76)。
また、Bⅰは、同月17日、Aⅰに対し、改めて、観光大使の件につ5 いて市長にも話が通っている旨の連絡をした(甲8、乙76)。
Aⅰは、同月24日、Bⅰに連絡をしたところ、ちょうどBⅰが東京に来ていたことから、Aⅰが作成した広報協力案をBⅰと共有した上、
AⅰとBⅰは、渋谷所在の居酒屋「土間土間・宮益坂店」において、打合せをした。上記広報協力案においては、ちぃたん(着ぐるみを含む。)10 が被告に対して協力する内容として、①SNSでしんじょう君(被告)をPRする、②被告主催イベントへの出演、③国内外のゆるキャライベントへの出演、④地方局テレビ番組への出演及び⑤観光大使任命式への出演が挙げられていた。(甲8、乙76)Aⅰは、Bⅰとの打合せ終了後、原告代表者に対し、打合せの結果と15 共に、着ぐるみのデザイナーと製作会社を紹介してもらえる旨を報告したところ、原告代表者は、着ぐるみについては原告が製作費用を負担するので先に進めてほしい旨を回答した(甲117)。
Aⅰが、同月25日、Bⅰに対し、製作費用を原告が負担してすぐに着ぐるみ製作に着手したい旨及びちぃたんのゆるキャラは「しんじょう20 君の親友」という設定にしたいことから「しんじょう君」に似せて作りたい旨を示した上、デザイナーの紹介を依頼したところ、Bⅰは、この依頼を了承した。しかし、Aⅰは、同日のうちに、Bⅰが紹介した着ぐるみ製造会社から、年内は受注できないとの連絡を受けた。(甲8、乙76)25 Bⅰは、同月27日、Aⅰに対し、しんじょう君オリジナルの制作者であるDⅰの連絡先を伝えた(甲8、乙76)。
65(イ) 着ぐるみのデザイン制作についての原告と被告とのやり取りAⅰは、原告代表者に対し、Bⅰから聞いたDⅰの連絡先を伝え、その後、原告とDⅰとの間で、カワウソちぃたんの着ぐるみのデザイン制作についてのやり取りがされた(甲91、乙80)。
5 Dⅰから、平成29年10月3日に上記着ぐるみのデザインラフの最初の提案が、同月6日に同2回目の提案が、それぞれされたことから、
原告は、同日、Aⅰを通じて、Bⅰに当該デザインラフを送った。その後、AⅰとBⅰとの間で、上記デザインラフについてのやり取りがされ、
Bⅰは、Aⅰに対し、「象徴的なワンポイントいりますよね」 「デザイン
10 は概ねゴーですけど」などとコメントした。(甲8、91、乙76、80)原告とDⅰは、上記着ぐるみのデザイン制作についての相談を進め、
Dⅰから、同月11日、原告に対し、デザインラフの5回目の提案がされた。原告が、同日、Aⅰを通じて、上記デザインラフをBⅰに送ったところ、Bⅰは、同月12日、Aⅰに対し、「個人的には目に光が無い方15 がいい気もします。目があっちゃうので」 「いやしかしうちとの対比で、
いいかもしれません」とコメントした。(甲8、91、乙76、80)同月24日までに上記着ぐるみのデザインがほぼ確定したことから、
原告は、同日、Aⅰを通じて、Bⅰに対し、「ちぃたんのイラスト(ほぼ確定)です」と添えてイラストを送ったところ、Bⅰは、「…こっちのが20 いいですね」等とコメントした (甲8、乙76)。
Bⅰは、同日、Cⅰに対し、原告がカワウソちぃたんに係るゆるキャラを制作しようとしていること、そのデザインがほぼ出来上がっており、
着ぐるみも製作中であることを報告するとともに、原告からAⅰを通じて送られた上記イラストを示した。Cⅰは、被告元気創造課の元気創造25 係のFⅰ係長(以下「Fⅰ」という。)と協議したところ、上記イラストとキャラクターしんじょう君のデザインとが似すぎているとの意見が出66たものの、着ぐるみ製作について特段の要請はせず、静観することとなった。(乙203、204、証人Bⅰ)上記の経緯を経て、ちぃたん着ぐるみの基となるデザイン、すなわちちぃたんオリジナルが完成した。
5 ウ ちぃたん着ぐるみ製作の経緯(ア) Aⅰは、ちぃたん着ぐるみのデザイン制作と並行して、着ぐるみ製作会社の手配を進めた(甲118)。
前記イ(ア)のとおり、Bⅰが当初紹介した業者から受注できないとの回答があったことから、Aⅰは、平成29年10月5日、Bⅰに対し、他10 の着ぐるみ製作会社の紹介を依頼したところ、Bⅰから紹介された新たな着ぐるみ製作会社が対応可能であったため、同社に着ぐるみ製作を依頼することとなった(甲8、乙76)。
(イ) Aⅰは、平成29年10月13日、着ぐるみ製作会社からサイズなどについての照会があったことを踏まえ、Bⅰに対し、「しんじょう君の頭15 の横幅、奥行きのサイズが知りたいときましたので教えていただければ嬉しいです。」と尋ねたところ、Bⅰは、同月15日、Aⅰに対し、極秘資料であるとのコメントと共に、しんじょう君着ぐるみの寸法の情報を回答した(甲8、乙76)。
Aⅰは、Bⅰから提供された情報に基づいて着ぐるみ製作会社と協議20 を進め、同月18日、Bⅰに対し、着ぐるみ製作会社から提案された寸法入りのデザイン案を示し、着ぐるみのサイズ感について相談した(甲8、乙76)。
(ウ) 原告は、平成29年11月2日頃、着ぐるみ製作会社から、ちぃたん着ぐるみのデザインについての被告からの許可の取得状況について問合25 せを受けたため、同日及び同月8日、Aⅰを通じて、Bⅰとの間で別紙メッセージ一覧表記載のやり取りをした。
67BⅰがAⅰにメッセージを送信するに当たり、被告側で行われた検討状況は以下のとおりである。
a Bⅰは、平成29年11月8日、Aⅰからの別紙メッセージ一覧表の番号2記載のメッセージを受けて、Cⅰに対し、原告側から、ちぃ5 たん着ぐるみを製作するに当たり、被告から許可が取得できていることの照会があった旨を報告するとともに、これまでの経緯を説明した。
Cⅰは、Fⅰと協議した上、Bⅰに対し、原告側に「着ぐるみ製作であれば、しんじょう君を作るわけではないから、許可する必要はない」旨を回答するよう指示をした。
10 Bⅰは、上記指示を受けて、Aⅰに対し、別紙メッセージ一覧表の番号6ないし8記載の各メッセージを送信するとともに、同日午後2時17分、被告元気創造課の元気創造係が管理するメールアドレスを用いて、「ちぃたん着ぐるみ製造に関して」と題し、「標題の件ですが、
しんじょう君を製造する訳ではないので須崎市としては特に許可は必15 要ございません。今後におきましては、様々なタイアップ、よろしくお願いいたします。」との内容のメールを送信した。
b 前記aのBⅰからのメールに対し、Aⅰが、別紙メッセージ一覧表の番号14記載のとおり、書面作成に係るメッセージを送信したことから、Bⅰは、改めてCⅰにその旨を報告した。
20 Cⅰは、Bⅰに対し、原告が正式な書面による許可を求めるのであれば、具体的な許可の内容、範囲、条件等の希望を明示して正式に書面で申請させ、その内容を審査して対応を決める必要があるとの考えを簡単に説明した上、原告から被告宛に許可を求める事項について正式に書面を提出してほしい旨を回答するよう指示した。
25 Bⅰは、上記指示を受けて、Aⅰに対し、別紙メッセージ一覧表の番号16記載のメッセージを送信した。
68c Aⅰは、前記bのBⅰからのメッセージに対して別紙メッセージ一覧表の番号17記載のメッセージを送信した後、前記aないしbの許可に係る特段の要請をしていない。
(以上、甲8、18、乙76、203、204、証人Bⅰ)5 (エ) 平成29年11月29日にちぃたん着ぐるみが完成したことから、Aⅰは、同日、Bⅰに対し、その映像を送り、完成した旨を報告した(甲8、乙76)。
Cⅰは、同日、Bⅰからの報告を受けて、Fⅰと共に上記映像を確認し、ちぃたん着ぐるみとしんじょう君着ぐるみとが似ているとの印象を10 持った(乙204)。
(2) キャラクターちぃたんの活動開始原告は、ちぃたん着ぐるみが完成したことを受けて、平成29年12月15日、キャラクターちぃたんの活動を開始した。
原告は、同日、コラボグッズの企画の準備も兼ねて、Bⅰの立会いの下、
15 キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君の撮影会を実施し、ちぃたん着ぐるみとしんじょう君着ぐるみが一緒に横断歩道を渡ったり、公園で遊んだりする様子を撮影した。そして、原告は、同日、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんの各ツイッターアカウントに、「お友達のしんじょう君と一緒の写真もありますよ」 「お友達はしんじょう君」等との記事と共に、

20 ちぃたん着ぐるみ及びしんじょう君着ぐるみを撮影した写真を投稿するなどしたところ、キャラクターちぃたんのツイッターアカウントに対するフォロワー数は、活動開始1日で12万人にまで達した。(甲8、11、乙76)このフォロワー数を聞いたBⅰは、原告の了承を得て、しんじょう君のツイッターアカウントに、ちぃたん着ぐるみ及びしんじょう君着ぐるみを撮影25 した写真を投稿した(甲8、11の6、乙76)。
ちぃたん着ぐるみは、平成30年1月2日、本件番組にも出演した(甲2697、乙76)。
(3) カワウソちぃたんの須崎市観光大使委嘱被告は、平成29年10月4日、カワウソちぃたんを須崎市観光大使に任命すると発表した(甲8、乙76)。
5 Bⅰは、平成30年1月15日、カワウソちぃたんを須崎市観光大使とすることにつき、略歴等として「SNSを中心に人気が高いコツメカワウソ」及び「冠番組 チバテレビ「カワウソちぃたん☆が行くホントの日本」」と記載した意見書を起案し、Cⅰは、これを被告代表者に提出した(甲12、13、乙130)。
10 被告は、同月18日、東京都所在の高知県アンテナショップ「まるごと高知」において須崎市観光大使委嘱式を挙行し、カワウソちぃたんを須崎市観光大使に委嘱した。上記委嘱式には、カワウソちぃたんのほか、被告代表者及びちぃたん着ぐるみも出席し、被告代表者からちぃたん着ぐるみに委嘱状が手渡され、カワウソちぃたん、被告代表者及びちぃたん着ぐるみとで記念15 写真の撮影などが行われた。(前提事実(4)、甲8、15、19、乙76、84、85、123)(4) キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君との協働の状況ア SNS等での活動(ア) 原告は、平成30年2月頃、SNSやYouTubeにおいて、ちぃ20 たん着ぐるみを使用した動画の配信を開始した(甲8、20、22)。
その後、原告とBⅰは、しんじょう君着ぐるみとちぃたん着ぐるみとが共演する動画を複数制作してツイッター等で配信したり、ちぃたん着ぐるみが様々なアクション(瓦割り、輪投げなど)に挑戦する動画を受け、しんじょう君着ぐるみが同様のことをするパロディ動画を制作した25 りするとともに、相互にリツイートするなどしていた(甲20ないし26、乙185ないし187)。
70(イ) もっとも、原告が、平成30年2月20日から令和5年1月10日にかけて投稿した、ちぃたん着ぐるみを使用した動画の中には、以下のとおり、視聴者に対し、危険な行為に及んでいると感じさせるものがあり、
そのような動画について、危険であるとの趣旨の投稿がされたり、被告5 に対し、危険である、子供が真似をするおそれがあるなどの抗議の電話がかかってきたりメールが送られてきたりした(乙150、151、173)。
a 「バランスボールで毎日鍛えてますっ☆」と題して、バランスボールの上に立ち上がり、バランスを崩し転倒するもの10 b 「スケボーを買ってもらいましたっ☆」と題して、見通しの悪い急な坂道でスケボーをして滑り降りるものc 「前方伸身宙返り2回ひねり後方屈身宙返りに挑戦しましたっ☆」と題して、トランポリンで反動をつけ、受け身を取らずに宙返りをして頭部から着地するもの15 d 「買って貰ったトランポリンを破壊してしまいました、 」と題して、

正しい使用方法を逸脱しトランポリンを破壊するものe 「ホッピングを買ってもらいましたっ☆」と題して、ホッピングをしながら柵等の公共物にめがけて転倒するものf 「竹馬を買ってもらいましたっ☆ 」と題して、1mほどの高さに足20 場を設定した竹馬に乗り、バランスを崩して高い位置から転倒するものg 「やぶさめセットを買ってもらいましたっ☆」と題して、子供を参加させた上で、自転車を手放し運転しておもちゃの弓を放ち、バランスを崩し転倒するもの25 h 「#限界うさぎ/ちゃんと友だちになりましたっ☆」と題して、繁華街の通行人が多数いる前で、他のゆるキャラと一緒にホッピングをし71て、派手に転倒するものi 「気持ちのいい天気だったのでスケボーして遊びましたっ☆」と題して、見通しの悪い急な坂道でスケボーをして滑り降りるものj 「階段で遊びましたっ☆」と題して、階段を滑り降りるもの5 k 「滑り台とスケボーのスペシャルな遊びをしましたっ☆」と題して、
滑り台をスケボーで滑り降り、藪に向けて転倒するものl 「草刈機を買ってもらいましたっ☆」と題して、草刈り機を振り回すものm 「レペゼン地球ちゃんたちと遊びましたっ☆DJまるちゃんが一番10 楽しそうでしたっ☆」と題して、人気ユーチューバーと共に、室内でロケット花火を飛ばすものn 「立ちロデオしましたっ☆おおむね成功ですっ☆」と題して、子供が多数いる公園で、子供用の遊具の上に立ち上がるものo 「新技開発しましたっ☆」と題して、2本の支柱に架けた長い棒に15 腹ばいに跨がり、バランスを崩して落下、転倒するものp 「駐車のお手伝いはお任せですっ☆ 運転手ちゃんへ→バックしててちぃたん☆の感触がしたらOKですっ☆」と題して、2台の車に挟まれた状態で後退する前方の車を手で受け止めるものq 「やっぱ川はいいですっ☆」と題して、流れの速い川に面した岩場20 から、裏返しにしたゴムボートの上をうつ伏せに滑り降りて川に落ち、
川に流されるものr 「ちぃたん☆も飛べるかしらっ?」と題して、ヘリコプターの回転するローターの近くで、ちぃたん着ぐるみが手を広げて回転するものs 「ヤッターマンで出動しますっ☆おおむね成功ですっ☆」と題して、
25 走行する消防車に「箱乗り」をし、運転中に手を離して道路に落下、
転倒するもの72t 「ちぃたん☆爆弾ですっ☆ 」と題して、室内で爆竹を体の真下で受けるものu 「泳ぎにはめっちょ自信がありますっ☆」と題して、着ぐるみのまま泳ぐもの5 v 「ルームランナーでんぐり返しという技を思いつきましたっ☆」と題して、動いているルームランナーの上で前転をするものw 「遅刻確定の時の階段の早降りの方法ですっ☆これで大丈夫ですねっ☆行ってらっしゃいっ☆」と題して、公園の子供用遊具の階段を、
尻からずり落ちる方法で滑り降りるもの10 (ウ) 被告は、前記(イ)の抗議等に対し、キャラクターちぃたんは、被告とは別の事業者が運営しており、いただいた意見を運営元に伝えることはできるものの、被告としては運営方針を変更することができないなどと回答していた(乙173)。
他方、ちぃたん着ぐるみの動画を受けて、しんじょう君着ぐるみが同15 様のことをするパロディ動画(前記(ア))の中には、前記(イ)の視聴者に対し危険な行為に及んでいると感じさせるもの(f及びg)も含まれていた(甲22、乙187)。
また、Bⅰは、ちぃたん着ぐるみが頭に包丁等を付けている動画が投稿されていたことを受けて、原告に対し、平成30年6月10日付けの20 メールにおいて、新たに制作する別の動画のアイデアとして、スーパーボールを1000個詰めた風船をしんじょう君着ぐるみが投げ、前のようにちぃたん着ぐるみの頭に包丁又は画鋲を付け、ヘディングで破裂させるものを提案するなどしていた(甲26)。
イ 商品化、イベント出演、アニメへのゲスト出演等25 (ア) カワウソちぃたんの須崎市観光大使委嘱式に合わせて、一般財団法人高知県地産外商公社から、キャラクターちぃたんとキャラクターしんじ73ょう君のそれぞれのイラストが描かれた「まるごと高知限定トートバッグ」が販売された。AⅰとBⅰとの間で、事前に、上記商品のデザインを被告側が制作することやデザインそのものについての検討がされたほか、原告は、当該商品の製造販売に当たり、同公社から、イラストデザ5 イン使用料として4万5000円(消費税込み)の支払を受けた(甲8、
39ないし41、乙76)。
(イ) 被告は、平成29年12月18日、ダンデライオンアニメ社との間で、
ライセンス基本契約を締結し、同社は、キャラクターしんじょう君の全世界におけるライセンス権及びアニメ化権を取得した(甲33の1、310 3の2、61)。
これに合わせて、原告とダンデライオンアニメ社との間で、平成30年5月頃、キャラクターちぃたんがキャラクターしんじょう君のアニメにゲスト出演することや、株式会社テレビ埼玉が放送する番組へ参加することなどが協議され、そのやり取りは、被告元気創造課の元気創造係15 が管理するメールアドレスにも送信されていた(甲108)。
(ウ) 原告とBⅰとの間では、平成30年11月に開催された「世界キャラクターさみっと in 羽生2018」において、ちぃたん着ぐるみとしんじょう君着ぐるみとが同じステージで共演できるようにする調整などがされていた(甲126)。
20 ウ 海外展開に向けた協議等Bⅰは、平成30年4月、原告に対し、中国、タイ、台湾、ヨーロッパ等において、キャラクターしんじょう君が登場するアニメの放送が予定されているところ、キャラクターちぃたんにもこのアニメに登場してもらうなどして、世界的に展開していくのはどうかとの趣旨の提案をした(甲225 4)。
原告とダンデライオンアニメ社は、台湾、韓国、香港、東南アジアにお74いてキャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君とをペアでライセンスしていくことに関する協議を行い、同年10月頃にダンデライオンアニメ社が作成したスタイルガイド(デザインを管理、統一するための基準となる資料)案には、キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君5 のそれぞれのイラストが使用されるに至った(甲46ないし48)。
また、上記協議においては、キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君が海外においてコラボレーションするためのスタイルガイドの作成に当たり、キャラクターちぃたんについても、各国において商標登録出願がされ、又はしていくことを念頭に置いたやり取りがされていた(甲410 8)。
(5) キャラクターちぃたん独自の商業活動等についてア 活動の状況原告は、平成29年12月15日以降、キャラクターちぃたんについて、
ウェブサイトを開設したほか、ちぃたん着ぐるみがイベントへ参加したり、
15 テレビ番組や各種CMへ出演したりするなどの商業活動を展開している。
また、原告からちぃたん着ぐるみ写真、ちぃたんイラスト等を使用した商品の製造、販売の許諾を受けた他の企業により、キャラクターちぃたんのグッズが販売されるなどした。(甲27、28、弁論の全趣旨)そして、Bⅰは、平成30年3月頃、キャラクターちぃたんのガチャの20 商品化に関し、原告と株式会社タカラトミーアーツの担当者との間の取次ぎをし、原告も、Bⅰに対し、ちぃたん着ぐるみのテレビへの出演、雑誌ポップティーンにおけるモデル活動やCMへの出演についての情報を提供していた(甲10)。
商標登録出願25 (ア) 国内での商標登録出願について前提事実(3)エのとおり、原告は、平成29年12月18日以降、別紙75原告著作物目録1記載1のイラスト及びその下部に配された「ちぃたん☆」との文字から成る商標並びにちぃたん着ぐるみを正面から撮影した写真及びその下部に配された「Chiitan☆」との文字から成る商標について、それぞれ指定商品等を異にする商標登録出願をし、少なく5 とも4件の商標に係る商標権の設定登録を受けた。
(イ) 海外での商標登録出願について原告は、中国、米国、韓国及びブラジルの少なくとも4か国においても、ちぃたん着ぐるみを正面から撮影した写真及びその下部に配した文字から成る商標について商標登録出願をした(乙137ないし140)。
10 (6) キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君の知名度キャラクターちぃたんは、平成30年12月、 Twitter Japan 株式会社が主催する「#Twitter トレンド大賞」の「Most Retweeted Tweet 個人の部」において、「2018年、最もリツイートされたツイート」に選出された(甲9)。
15 また、キャラクターしんじょう君のツイッターアカウントに対するフォロワー数は、平成28年12月時点では約2万3000人であったのに対し、
平成30年10月時点では約9万人となった(甲35、37)。
(7) 本件訴訟に至る経緯ア 原告は、被告に対し、平成31年1月29日付けの書面により、キャラ20 クターちぃたんに関する複数の企画の計画が進行しており、キャラクターちぃたんが使用できない事態となれば、原告に多額の損害が生じ、その賠償についても紛争が生じることとなるところ、そのような事態を避けるため、円満な話合いによる解決を希望する旨を申し入れた(甲51)。
イ 被告は、平成31年2月16日付けで、東京地方裁判所に、原告を債務25 者として、原告が別紙原告著作物目録1記載1のイラスト及びちぃたん着ぐるみを営業上の活動に使用することの差止めの仮処分を求める本件仮処76分事件を申し立てた。同裁判所は、被告の上記申立てを却下する旨の決定をしたため、被告は、これを不服として即時抗告したが、知的財産高等裁判所は、令和元年12月25日、抗告を棄却する旨の決定をし、その後、
同決定は確定した。(前提事実(7)ア)5 ウ 被告は、原告に対し、令和2年1月27日付けの書面により、和解協議の前提として、大要、①キャラクターちぃたんの個別具体的な活動及び使用については、事前に被告の書面による承諾を得る、②キャラクターちぃたんに関する商標について、国内外を問わず、商標登録出願を全て取り下げ、以後、キャラクターちぃたんと同一又は類似する商標に係る商標登録10 出願をしない、③キャラクターちぃたんの活動及び使用期間は、原告との協議成立後1年間とし、以後更新するか否かは被告が判断するとの条件を提示した(甲70)。
その後、原告と被告との間で、キャラクターちぃたんの活動及び使用の条件や、原告においてキャラクターちぃたんがキャラクターしんじょう君15 の二次的著作物であることを認めるか否か等についてのやり取りがされたものの、協議がまとまらず、原告は、令和3年7月15日、被告に対し、
本件本訴を提起した(前提事実(7)イ、甲71ないし78)。
2 争点1-1(本件被告行為についての民法及び不競法の適用の可否)について20 (1) 本件被告行為が国賠法1条1項所定の「公権力の行使」に当たるか否かについて国賠法1条1項所定の「公権力の行使」とは、公行政作用のうち私経済作用を除く全ての作用をいい、いわゆる非権力的行政作用であっても、公行政作用としての性質を持つものである限りは、当該「公権力の行使」に含まれ25 ると解するのが相当である。
そして、前提事実(2)アのとおり、キャラクターしんじょう君は、被告の地77域振興や広報活動をする際に使用しているマスコットキャラクターであるところ、本件被告行為は、このような位置づけにあるキャラクターしんじょう君に係る被告の権利ないし法的利益の保護を目的としてされたものと認められる。このようにキャラクターしんじょう君が、被告の地域振興や広報活動5 の一端を担っているという側面にかんがみれば、被告におけるキャラクターしんじょう君に係る活動、ひいてはこれに関する被告の権利ないし法的利益の保護を目的としてされた本件被告行為が、純然たる私経済作用にとどまるとはいえない。
したがって、本件被告行為は、国賠法1条1項所定の「公権力の行使」に10 当たる。
(2) 不競法2条1項21号が国賠法4条所定の「民法」に当たるか否かについてア 不競法2条 1 項は、法律上の利益を侵害するものとして損害賠償責任を生ずべき不法行為の特殊類型である不正競争を規定したものと考えられるから(同法4条本文、民法709条)、民法が定める不法行為法を補充するも15 のと解される。
イ この点について、被告は、不競法2条1項21号は事業者等が競争関係にある場合に適用される条項であることを指摘して、同号の定めは国賠法4条所定の「民法」に当たらないと主張する。
しかし、前記アのとおり不競法2条1項は民法が定める不法行為法を補20 充するものといえるのに対し、公権力の行使に当たる公務員の行為が不正競争に該当する場合に不競法2条1項の適用を排除すべき合理的理由も、
不競法2条1項の各号の規定に応じて同項の適用の可否を異にすべきとする合理的理由も、何らうかがわれない。
確かに、不競法2条1項21号は事業者等が競争関係にある場合に適用25 される条項であるものの、公権力の行使に当たる公務員の行為について同号の適用を一律に排除しなくとも、同号の適用があることを前提として、
78国又は公共団体との間で競争関係にあるか否かを検討することによって、
不競法の定める要件に則した妥当な解決を図ることができるというべきである。
ウ したがって、不競法2条1項21号の定めは、国賠法4条所定の「民法」5 に当たると解するのが相当である。
(3) まとめ以上によれば、普通地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって不正競争を行って他人の営業上の利益侵害したときは、当該普通地方公共団体は、国賠法1条1項に基づ10 き、これを賠償する責任を負うというべきである。
そして、前提事実(5)イによれば、本件被告行為は、いずれも普通地方公共団体である被告の公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについてしたものであるといえる。
3 争点2-1(原告と被告との間の「競争関係」の有無)について15 不競法2条1項21号は、客観的真実に反する虚偽の事実を告知し又は流布して、事業者にとって重要な資産である営業上の信用を害することにより、競業者を不利な立場に置き、自ら競争上有利な地位に立とうとする行為を防止する趣旨の規定であると解される。そして、事業者双方の事業について、需要者又は取引者を現に共通にする場合のみならず、需要者又は取引者を共通にする20 可能性があれば、営業上の信用を害された競業者は、これから参入しようとする市場において不当に不利な立場に置かれることとなるから、同号所定の「競争関係」とは、事業者双方の事業につき、その需要者又は取引者を共通にする可能性があることで足りると解するのが相当である。
本件についてみると、前記1(2)及び(5)のとおり、原告は、平成29年1225 月15日以降、ちぃたん着ぐるみをイベントへ参加させたり、テレビ番組及び各種CMへ出演させたりしているほか、少なくとも他の企業にちぃたん着ぐる79み写真、ちぃたんイラスト等を使用した商品の製造、販売を許諾している。
他方で、前提事実(2)のとおり、被告は、平成25年1月以降、キャラクターしんじょう君を各種イベント、テレビ番組、テレビCMなどへ出演させたり、
しんじょう君着ぐるみ写真、しんじょう君イラスト等を付した商品の販売許諾5 をしたりしている。
このように、原告と被告は、それぞれが使用するキャラクターに係る着ぐるみをイベントに参加させたり、テレビ番組及びCMに出演させたりしている上、
当該キャラクターのイラスト、着ぐるみの写真を付した商品の販売を許諾しているとの点で同一の事業を行っているといえるから、需要者及び取引者を共通10 にする可能性があるというべきである。
したがって、原告と被告は、被告が本件被告行為に及んだ平成31年の時点以降において、不競法2条1項21号所定の「競争関係にある」と認められる。
4 争点2-2(「事実を告知し、又は流布する行為」に当たるか)について(1) 権利を侵害する又は不正競争行為に該当するとの内容が不競法2条1項2115 号所定の「事実」に当たるかについて原告は、権利侵害の警告等においては、権利行使の前提となる権利が存在しているか否かそれ自体が不競法2条1項21号所定の「事実」であって、
当該警告等で指摘された権利侵害が成立しないときには、それ自体が同号所定の「虚偽の事実」に当たると主張するので、この点について検討する。
20 権利を侵害するか否かや不正競争行為に該当するか否かを告知又は流布することは、法的な見解の表明に当たるところ、法的な見解の正当性それ自体は、証明の対象とはなり得ないものであり、法的な見解の表明が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項ということができないことは明らかであるから、事実を摘示するものとはいえず、意見ない25 し論評の表明に当たるものというべきである(最高裁平成15年(受)第1793号、第1794号同16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻580号1615頁参照)。
しかし、前記3のとおり、不競法2条1項21号は、客観的真実に反する虚偽の事実を告知し又は流布して、事業者にとって重要な資産である営業上の信用を害することにより、競業者を不利な立場に置き、自ら競争上有利な5 地位に立とうとする行為を防止する趣旨の規定であって、同法は、このような行為に対し、損害賠償請求のみならず、差止請求を認めることによって、
事業者にとって重要な資産である営業上の信用の保護を図ったものと考えられる。そして、権利を侵害する又は不正競争行為に該当するとの内容を告知又は流布することは、その前提となる事実のみを告知又は流布する場合と比10 較して、より直接的に競業者の営業上の信用を害するおそれがあるにもかかわらず、それが意見ないし論評の表明に当たるとの理由により同法2条1項21号該当性を否定することは、事業者にとって重要な資産である営業上の信用の保護を図ろうとした同号の趣旨に反することとなる。
また、権利を侵害するか否かや不正競争行為に該当するか否かは、証拠や15 客観的な基準に基づいて決することができない物事の価値、善悪、優劣などといった価値判断と異なり、証拠によって虚偽であるか否かが判断可能な事項であるから、不競法2条1項21号所定の「虚偽の事実」との文言とも一応整合的といえる。
したがって、不競法2条1項21号所定の「事実」は、権利を侵害するか20 否かや不正競争行為に該当するか否かといった法的な見解の表明を含み、指摘された権利侵害等が成立しないときには、同号所定の「虚偽の事実」に当たると解するのが相当である。
(2) 告知又は流布された内容についてア 不競法2条1項21号所定の告知又は流布の内容は、その告知又は流布25 の相手方の普通の注意と読み方又は聞き方を基準として判断すべきと解される。
81これを本件についてみると、フジテレビ宛書面送付行為及びテレビ東京宛書面送付行為については、当該各会社における法務関係を担当する役職員が、本件定例会見資料配布行為、本件定例会見スライド配布行為、本件定例会見発言行為、本件報道機関宛書面送付行為及び本件コメント発出行5 為については、報道機関関係者及び一般市民が、それぞれ告知又は流布の相手方と考えられる。
これを前提とすると、別紙営業誹謗行為主張対比表の「原告の主張」「問題となる行為」欄記載の各行為は、同「裁判所の判断」「告知又は流布された内容」記載の各内容を告知又は流布するものと認めるのが相当である。
10 イ 以下、本件被告行為のうち、本件定例会見スライド配布行為、本件報道機関宛書面送付行為及び本件コメント発出行為について、前記アの認定の理由を補足して説明する。
(ア) 本件定例会見スライド配布行為について被告は、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号4の「原告の主張」「問題15 となる表現」欄記載の表現の内容は、時系列に沿って事実の経過を記載したものにすぎないと主張する。
確かに、上記の表現の内容は、基本的に時系列に沿った事実の経過であって、被告の許諾がなかったとの明示の記載はない。しかし、上記の表現の内容には、「著作権法112条1項及び不正競争防止法3条1項,20 2項に基づき活動停止を求めた。」との記載がある上、本件定例会見スライドの他の部分には、
誤認混同が生じ不正競争に該当」と題し、キャラクターしんじょう君とキャラクターちぃたんの各イラスト及び各着ぐるみ写真を対比するスライドが設けられていたり、著作権法及び不競法の条文が掲記されていたりすること(甲80)にかんがみれば、上記の表25 現の内容は、これを見聞きする報道機関関係者及び一般市民の普通の注意と読み方又は聞き方を基準として判断すると、黙示的に「原告が被告82に全く無断でキャラクターちぃたんを制作して活動させたという事実」を述べるものと認めるのが相当である。
(イ) 本件報道機関宛書面送付行為についてa 原告は、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号6枝番1の「原告の主5 張」「問題となる表現」欄記載の表現内容は、本件原告書面を作成した原告の対応が悪質であるとの事実を述べるものであると主張する。
しかし、原告の対応が悪質であるか否かは、物事の価値、善悪、優劣などといった価値判断であって、虚偽であるか否かが判断可能な事項であるとはいえないから、これは意見ないし論評を表明するものに10 当たるというべきである。
したがって、上記の表現の内容は、これを見聞きする報道機関関係者及び一般市民の普通の注意と読み方又は聞き方を基準として判断すると、①原告が被告の了解を何ら得ずに、キャラクターちぃたんの制作及び諸活動を行ったとの事実と、②本件原告書面を作成した原告の15 対応が悪質であるとの意見ないし論評を述べるものと認めるのが相当である。
b 原告は、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号6枝番3の「原告の主張」「問題となる表現」欄記載の表現内容は、原告が、被告の信頼を失うような独善的な複数の行為を行ったとする事実を述べたものである20 と主張する。
しかし、行為が独善的であるか否かは、物事の価値、善悪、優劣などといった価値判断であるから、これを見聞きする報道機関関係者及び一般市民の普通の注意と読み方又は聞き方を基準として判断すると、
上記の表現の内容は、「原告の行為が独善的であり、それにより原告と25 被告との関係の修復が不可能であるとの意見ないし論評」を述べるものと認めるのが相当である。
83(ウ) 本件コメント発出行為について原告は、別紙営業誹謗行為主張対比表の番号7の「原告の主張」「問題となる表現」欄記載の表現内容は、被告からのキャラクターちぃたんの活動停止の求めに対して、原告が何も対応せず、これを黙殺し、違法状5 態を拡大させようとしているとの事実を述べるものであると主張する。
しかし、違法状態であるか否かは、法的な見解の表明に当たるというべきであるから、上記の表現の内容は、これを見聞きする報道機関関係者及び一般市民の普通の注意と読み方又は聞き方を基準として判断すると、①被告からのキャラクターちぃたんの活動停止の求めに対して、原10 告が何も対応していないとの事実と、②原告が違法状態を拡大させようとしているとの法的な見解を表明するものと認めるのが相当である。
(3) フジテレビ宛書面送付行為及びテレビ東京宛書面送付行為が不競法2条1項21号所定の「告知」に当たるかについて被告は、フジテレビ及びテレビ東京が原告と共同して被告の権利を侵害す15 る者であるとの主張を前提に、フジテレビ宛書面送付行為及びテレビ東京宛書面送付行為について、いずれも、競争関係にある侵害者に対して、直接、
被告の権利を侵害している旨を通知するものであるから、不競法2条1項21号所定の「告知…する行為」に当たらないと主張する。
しかし、仮に、告知の相手方が競業者と共同して告知者の権利を侵害して20 いるとしても、競業者が告知者の権利を侵害する旨の陳述という「告知」に相当する行為が現に存在する上、当該告知によって、競業者の重要な資産である営業上の信用が害され、競業者が不利な立場に置かれることに変わりはない。そうすると、競業者と共同して告知者の権利を侵害している者に対し、
競業者が告知者の権利を侵害する旨を陳述する行為については、正当な権利25 行使の一環として違法性が阻却される可能性があるとしても、不競法2条1項21号所定の「告知…する行為」に該当すること自体は否定されないとい84うべきである。
したがって、この点についての被告の上記主張を採用することはできない。
(4) まとめ以上によれば、本件被告行為は、別紙営業誹謗行為主張対比表の「裁判所5 の判断」「不競法2条1項21号所定の「事実」」欄記載の各事実を告知又は流布するものと認められる。
5 争点2-3-1及び11(キャラクターちぃたんに係る使用及び活動についての許諾の有無)について(1) ちぃたん着ぐるみの使用について10 ア ちぃたん着ぐるみのデザイン確定に至る経緯は、前記1(1)イのとおりである。すなわち、被告の担当者であったBⅰは、原告がカワウソちぃたんのキャラクターを「しんじょう君の親友」という設定にしたいという理由でカワウソちぃたんのキャラクターの着ぐるみを「しんじょう君」に似せて作りたいとの希望を有していることを把握しつつ、平成29年9月2715 日、そのデザイナーとしてしんじょう君オリジナルの制作者であるDⅰを原告に紹介した。また、Bⅰは、同年10月6日から同月24日にかけて、
原告から、デザインラフの2回目の提案から確定案に至るまで、少なくとも合計3回にわたり、カワウソちぃたんの着ぐるみのデザイン案を受領していた。また、Cⅰは、同日、Bⅰからカワウソちぃたんの着ぐるみのデ20 ザインがほぼ出来上がっている旨の報告と同デザインの確定案を示されたことを受けて、Fⅰと協議をしたところ、その協議において、同デザインがキャラクターしんじょう君のデザインと似すぎているとの意見が出ていた。
このような経緯に照らせば、被告元気創造課は、ちぃたん着ぐるみが完25 成する前の時点において、ちぃたん着ぐるみのデザインの基となったちぃたんオリジナルやちぃたん着ぐるみの具体的な図案や体裁を認識していた85のみならず、これらがしんじょう君オリジナルやしんじょう君着ぐるみと似たものになることをも認識していたと認められる。
イ また、ちぃたん着ぐるみ製作の経緯は、前記1(1)ウのとおりである。すなわち、原告は、平成29年11月2日及び同月8日に、Aⅰを通じて、
5 Bⅰに対し、ちぃたん着ぐるみのデザインに関して、関係各所からちぃたんのデザインがキャラクターしんじょう君の色違いだが許可を取得できている保障がほしいといわれている旨、着ぐるみ製作会社だけではなく今後タイアップする企業へも証明する必要がある旨をそれぞれ伝えた。これに対し、Bⅰは、同日、Fⅰとの協議を踏まえたCⅰからの指示に基づき、
10 Aⅰに対し、被告元気創造課の元気創造係が管理するメールアドレスを用いて、「しんじょう君を製造する訳ではないので須崎市としては特に許可は必要ございません。今後におきましては、様々なタイアップ、よろしくお願いいたします。」との内容のメールを送信した。そして、Bⅰは、同月29日、Aⅰから、ちぃたん着ぐるみが完成したとの報告及びその映像の送15 付を受け、Cⅰ及びFⅰも当該映像を確認した。
さらに、前記1(2)のとおり、同年12月15日、Bⅰの立会いの下、キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君の撮影会が実施され、原告は、同日、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんの各ツイッターアカウントに、「お友達のしんじょう君と一緒の写真もありますよ」「お友、
20 達はしんじょう君」等との記事と共に、ちぃたん着ぐるみ及びしんじょう君着ぐるみが一緒に撮影された写真を投稿したこと、前記1(3)のとおり、
平成30年1月18日に挙行されたカワウソちぃたんの須崎市観光大使委嘱式に、ちぃたん着ぐるみも出席し、被告代表者からちぃたん着ぐるみに委嘱状が手渡されたこと、前記1(4)のとおり、原告とBⅰは、同年2月頃25 以降、しんじょう君着ぐるみとちぃたん着ぐるみとが共演したり、ちぃたん着ぐるみが様々なアクションに挑戦したりする動画を受け、しんじょう86君着ぐるみが同様のことをする動画を制作、配信したことといった事情を指摘することができる。
このような事情に照らせば、Bⅰは、Cⅰに対し、Aⅰを通じて把握したちぃたん着ぐるみに関する原告の希望やその製作状況を報告し、Cⅰの5 指示に基づいて、Aⅰに回答していたと認められるから、Bⅰの対応は、
被告元気創造課ひいては被告の意向に基づくものであったというべきである。しかも、被告代表者が、同年1月18日に挙行されたカワウソちぃたんの須崎市観光大使委嘱式において、ちぃたん着ぐるみを直接現認し、同年2月以降も、しんじょう君着ぐるみとちぃたん着ぐるみとが共演したり、
10 ちぃたん着ぐるみが様々なアクションに挑戦したりする動画を受け、しんじょう君着ぐるみが同様のことをする動画が制作、配信されていたにもかかわらず、平成31年1月19日到達の本件被告通知がされるまでの間、
被告から原告にちぃたん着ぐるみの使用の中止を求めるなどの対応がされたと認めるに足りる証拠はない。
15 ウ 前記ア及びイのちぃたん着ぐるみのデザイン確定及びその製作についての被告の認識並びに原告による着ぐるみちぃたんを使用した活動についての被告の認識及び対応にかんがみれば、被告は、原告に対し、ちぃたん着ぐるみの使用を黙示に許諾していたものと認めるのが相当である。
(2) その余のキャラクターちぃたんの商業活動について20 ア 前記1(1)ア(ア)のとおり、原告は、カワウソちぃたんが須崎市観光大使に委嘱される前から、本件番組に司会者として出演させていたほか、カワウソちぃたんのツイッターアカウントを運営するなど、カワウソちぃたんについて独自の商業活動を展開していた。また、前記1(5)のとおり、原告は、平成29年12月15日以降、キャラクターちぃたんについて、ウェ25 ブサイトを開設したほか、キャラクターしんじょう君の関与の有無にかかわらず、ちぃたん着ぐるみをイベントへ参加させたり、テレビ番組や各種87CMへ出演させたりしているほか、他の企業との共同企画により、キャラクターちぃたんのグッズ販売を許諾するなどしている。
そして、カワウソちぃたんの須崎市観光大使委嘱式に合わせて、キャラクターちぃたんとキャラクターしんじょう君のそれぞれのイラストが描か5 れた「まるごと高知限定トートバッグ」が販売されたこと(前記1(4)イ)からも明らかなとおり、原告がキャラクターちぃたんについての商業活動を展開するに当たっては、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真のみならず、その基となった図案であるちぃたんオリジナル及びちぃたんイラストを使用することも予定されていたといえる。
10 イ Bⅰは、キャラクターちぃたんは原告が独自に商業活動を展開していたカワウソちぃたんをキャラクター化したものであることを認識していた(前記1(1)ア、(3))上、原告から、ちぃたん着ぐるみのテレビへの出演、
雑誌ポップティーンにおけるモデル活動やCMへの出演について情報提供を受けていたり、キャラクターちぃたんのグッズに関し、原告と他社の担15 当者との間を取り次いだりしていたものである(前記1(5)ア)から、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんが須崎市観光大使とは別個の独自の商業活動を展開していることを把握していたと認められる。
また、Bⅰが起案したカワウソちぃたんを須崎市観光大使に委嘱することについての意見書には、略歴等として、SNSでの活動やテレビ番組へ20 の出演が記載されていたところ、当該意見書は、Cⅰによって被告代表者に提出されていたこと(前記1(3))に加え、Bⅰは、ちぃたん着ぐるみのデザイン確定及びその製作に至る過程で、随時、Cⅰに状況を報告し、同人から指示を受けていたこと(前記(1))にかんがみれば、Bⅰは、直接又はAⅰを通じて把握したカワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんが須25 崎市観光大使とは別個の独自の商業活動を展開しているとの状況についても、Cⅰに報告し、同人の指示に基づいて対応していたと推認できるから、
88Bⅰの対応は、被告元気創造課ひいては被告の意向に基づくものであったというべきである。
他方で、原告がキャラクターちぃたんを用いて独自に商業活動を展開していることについて、平成31年1月19日到達の本件被告通知がされる5 までの間、被告から原告にその中止を求めたり、キャラクターちぃたんについて使用料等の支払を請求したりするなどの対応がされたと認めるに足りる証拠はない。
ウ 前記ア及びイの原告によるキャラクターちぃたんに係る商業活動並びにこれについての被告の認識及び対応にかんがみれば、被告は、原告に対し、
10 ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ写真及びちぃたんイラストの各使用を含め、キャラクターちぃたんが独自に商業活動をすることについて黙示に許諾していたと認めるのが相当である。
(3) まとめ以上によれば、被告は、原告に対し、ちぃたん着ぐるみのみならず、ちぃ15 たんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ写真及びちぃたんイラストの各使用を含め、キャラクターちぃたんが独自に商業活動をすることについて黙示に許諾していたというべきである。
6 争点2-3-2及び12(許諾に係る錯誤無効の成否)について被告は、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんのツイッターアカウン20 トのフォロワー数に不正な水増し等がされていたところ、そのようなことがないと誤信して黙示の許諾をしたものであるから、この許諾は錯誤により無効であると主張する。
この点について、原告は、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんのいずれのツイッターアカウントについても、新規にアカウントを開設したもので25 はないことを自認しているものの、ツイッターの規約や社会通念を前提に検討すると、本件全証拠によっても、両アカウントのフォロワー数が不当に水増し89されていたと認めることはできないというべきである。
したがって、被告の上記主張を採用することはできず、許諾に係る錯誤無効の成立は認められない。
7 争点2-3-3及び13(許諾に係る詐欺取消しの成否)について5 被告は、カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんのツイッターアカウントのフォロワー数に不正な水増し等がされていたところ、原告の詐欺により、
キャラクターちぃたんに係る使用行為について黙示に許諾したのであるから、
当該詐欺を理由として、この許諾を取り消すと主張する。
しかし、前記6と同様に、ツイッターの規約や社会通念を前提に検討すると、
10 本件全証拠によっても、両アカウントのフォロワー数が不当に水増しされていたと認めることはできないというべきである。
したがって、被告の上記主張を採用することはできず、許諾に係る詐欺取消しの成立は認められない。
8 争点2-3-4及び14(許諾に係る合意の解除の成否)について15 (1) 許諾条件違反について被告は、前記5の許諾が存在するとしても、①その許諾の範囲は、ツイッターなどでの被告の情報発信等についてのちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真に係る公衆送信権等、イベント、ビデオ等への出演についてのちぃたん着ぐるみに係る展示権に限られ、②カワウソち20 ぃたん及びキャラクターちぃたんが、須崎市観光大使として、設置要綱に定める目的、要件及び役割に合致した活動を行うことが前提となっており、かつ、③キャラクターしんじょう君の使用許可条件に合致するものでなければならないのに、原告によるカワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんの使用行為は、これら①ないし③の許諾条件に違反するものであるから、上記の25 許諾は解除されたと主張する。
しかし、前記5(2)のとおり、原告は、カワウソちぃたんが須崎市観光大使90に委嘱される前から、カワウソちぃたんについて独自の商業活動を展開しており、被告もこれを認識していたところ、被告がカワウソちぃたんを須崎市観光大使に委嘱するに当たり、原告と被告との間で、その活動範囲を限定するとの明示又は黙示の合意がされたと認めるに足りる証拠はない。
5 また、キャラクターちぃたんについても、被告が独自の商業活動を黙示に許諾するに当たり、原告と被告との間で、ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真の使用条件やキャラクターちぃたんの商業活動の範囲及び条件を被告が主張するように限定するとの明示又は黙示の合意がされたと認めるに足りる証拠はない。
10 したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告の上記主張を採用することはできず、許諾条件違反を理由として許諾に係る合意が解除されたと認めることはできない。
(2) 信頼関係破壊についてア 被告は、原告が、①カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんのいず15 れについても、不正にフォロワー数を水増ししたツイッターアカウントを使用するなどしたこと、②被告に無断で別紙原告著作物目録1記載1のイラストを含む商標等について商標登録出願をしたこと、③キャラクターちぃたんを使用して須崎市観光大使の目的、要件及び役割に合致した活動をせず、かえって不正な営業活動を行っていること、④キャラクターちぃた20 んが悪目立ちするように、危険な動画を投稿するなどしていること、⑤本件本訴を提起したことから、原告と被告との信頼関係は破壊されたと主張する。
(ア) そこで、まず①についてみると、前記6のとおり、本件証拠上、
カワウソちぃたん及びキャラクターちぃたんのいずれのツイッターアカ25 ウントについても、ツイッターの規約や社会通念に照らし、両アカウントのフォロワー数が不当に水増しされていたものであると認めることは91できない。
(イ) また、②については、前記1(5)イのとおり、原告は、平成29年12月18日以降、別紙原告著作物目録1記載1のイラスト及びその下部に配された「ちぃたん☆」との文字から成る商標並びにちぃたん着ぐるみ5 を正面から撮影した写真及びその下部に配された「Chiitan☆」との文字から成る商標について、それぞれ指定商品等を異にする商標登録出願をし、少なくともその一部の商標に係る商標権の設定登録を受けたほか、中国、米国、韓国及びブラジルの少なくとも4か国においても、
ちぃたん着ぐるみを正面から撮影した写真及びその下部に配した文字か10 ら成る商標について商標登録出願をしたことが認められる。
しかし、前記(1)と同様に、被告が、キャラクターちぃたんの独自の商業活動を黙示に許諾するに当たり、原告と被告との間で、商標登録出願に係る条件を明示又は黙示に合意したと認めるに足りる証拠はない。また、前記1(4)ウのとおり、原告とダンデライオンアニメ社との間の協議15 において、キャラクターちぃたんについても、各国において商標登録出願がされ、又はしていくことを念頭に置いたやり取りがされていた一方で、被告側から、キャラクターちぃたんに係る商標登録出願を控えてほしいとか、出願時期を調整してほしいなどの申入れがされたことを認めるに足りる証拠はない。
20 確かに、原告による別紙原告著作物目録1記載1のイラスト及びその下部に配された「ちぃたん☆」との文字から成る商標に係る商標登録出願について、拒絶理由通知が出されたり、拒絶する旨の査定がされたりした(乙141、143、145)ことからすると、原告が国内外において上記の商標に係る商標権の設定登録を受けるなどしたことにより、
25 被告が、キャラクターしんじょう君に係る商標登録出願をした場合に、
原告が有する商標権を理由として、被告がキャラクターしんじょう君に92関連する商標に係る商標権の設定登録を受けるまでの過程に障害が生じたり、結果として設定登録を受けられなくなったりする可能性は否定できない。結局のところ、原告と被告との間で、キャラクターちぃたんに係る商標登録出願についての調整が不足していたといわざるを得ないも5 のの、本件全証拠によっても、そのような事態に至ったことについて原告側のみに落ち度があると認めることができないから、上記の可能性は被告による許諾に係る合意の解除を正当化する事情とはならないというべきである。
(ウ) ③については、前記(1)のとおり、本件証拠上、被告がキャラクターち10 ぃたんの独自の商業活動を黙示に許諾するに当たり、原告と被告との間で、被告が主張するような範囲及び条件とする旨を明示又は黙示に合意したと認めることはできないし、本件全証拠によっても、原告によるキャラクターちぃたんの商業活動が社会通念上不正な活動であると認めることはできない。
15 (エ) ④については、前記1(4)ア(イ)のとおり、原告が、平成30年2月20日から令和5年1月10日にかけて投稿した、ちぃたん着ぐるみを使用した動画の中には、視聴者に対し危険な行為に及んでいると感じさせるものがあり、被告に対しても、危険である、子供が真似をするおそれがあるなどの抗議の電話がかかってきたりメールが送られてきたりした20 ことが認められる。
しかし、前記1(4)ア(ウ)のとおり、被告は、キャラクターちぃたんについて、被告とは別の事業者が運営しており、被告としては運営方針を変更することができないとの姿勢を対外的に明らかにしていた上、原告に対し、原告が投稿、配信する動画の内容について、これを差し控える25 べきであるなどといった意見を述べていたと認めるに足りる証拠はない。
かえって、ちぃたん着ぐるみの動画を受けて被告が制作したパロディ動93画の中にも、ちぃたん着ぐるみが視聴者に対し危険な行為に及んでいると感じさせるものが含まれていたり、しんじょう君着ぐるみ単独でも、
吊り橋の上で何度もジャンプし、帽子を下に落とす動画などを投稿していたりしていたことが認められる(甲103)。さらに、Bⅰは、雑誌の5 取材に対し、他のキャラがなかなかやらない「やりすぎ」感がキャラクターしんじょう君の人気の秘密の一つではないかと話していたことが認められる(甲101の3)。これらの事情からすると、原告がちぃたん着ぐるみの動画の投稿を開始した当初から、被告が当該動画を否定的に捉えていたとは認められない。
10 また、前記1(5)ア(イ)lの動画(「草刈機を買ってもらいましたっ☆」と題して、草刈り機を振り回すもの)は、刃が装着されていない草刈り機を使用して撮影された(甲38)ということからすると、他の動画も、
ちぃたん着ぐるみの演者等の安全に配慮して撮影されていた可能性が否定できない。
15 以上検討したところによれば、被告がキャラクターちぃたんの独自の商業活動を黙示に許諾するに当たり、視聴者に対しちぃたん着ぐるみが危険な行為に及んでいると感じさせる動画を投稿することに反対していたとまでは認められないから、④の事情が原告と被告との間の信頼関係を破壊するものであるとはいえない。
20 (オ) ⑤については、前記1(7)のとおり、原告は、被告に対し、被告による本件仮処分事件の申立前から、円満な話合いによる解決を希望する旨を申し入れ、その後、本件仮処分事件を挟み、被告との間でキャラクターちぃたんの活動・使用条件等についてやり取りしたものの、協議がまとまらず、本件本訴の提起に至ったものである。
25 私人間の紛争について当事者同士による解決ができなかった場合に訴えを提起することは、正当な権利の行使である上、上記の経緯も考慮す94ると、原告が本件本訴を提起したことは、被告による許諾に係る合意の解除を正当化する事情とはいえない。
イ したがって、前記アの被告の主張を採用することはできず、信頼関係破壊を理由として許諾に係る合意が解除されたと認めることはできない。
5 9 争点2-3(告知又は流布された事実が「虚偽」であるか)について前記5ないし8のとおり、被告は、原告に対し、キャラクターちぃたんが独自に商業活動をすることについて黙示に許諾していたと認められるところ、当該許諾について、錯誤無効、詐欺取消し及び合意の解除はいずれも成立しない。
そうすると、原告の行為が被告の著作権を侵害し又は不正競争行為に該当す10 るものであって、原告が被告の権利を侵害する活動を続けてそれを拡大しようとしているとの法的な見解の表明については、指摘された権利侵害等が存在しないというべきであり、また、原告が、被告に無断で、キャラクターちぃたんを制作し、これを使用してテレビ出演を始めとする各種の経済活動を行っているとの事実は、客観的な真実に反するものというべきであるから、これらはい15 ずれも不競法2条1項21号所定の「虚偽の事実」に当たる。
そして、本件被告行為が、いずれも「事実を告知し、又は流布する行為」に当たることは、前記4で説示したとおりである。
したがって、被告は、本件被告行為により、虚偽の事実である別紙営業誹謗行為主張対比表の「裁判所の判断」「不競法2条1項21号所定の「事実」」欄20 記載の各事実を告知又は流布したと認められる。
10 争点2-4(告知又は流布された事実が原告の「営業上の信用を害する」ものであるか)について前記4(2)のとおり、フジテレビ宛書面送付行為及びテレビ東京宛書面送付行為については、当該各会社における法務関係を担当する役職員が、本件定例会25 見資料配布行為、本件定例会見スライド配布行為、本件定例会見発言行為、本件報道機関宛書面送付行為及び本件コメント発出行為については、報道機関関95係者及び一般市民が、それぞれ告知又は流布の相手方と考えられる。
そして、これらの相手方の普通の注意と読み方を基準として判断すると、原告の行為が被告の著作権を侵害し又は不正競争行為に該当するものであって、
原告が被告の権利を侵害する活動を続けてこれを拡大しようとしているとの法5 的な見解の表明や、原告が、被告に無断で、キャラクターちぃたんを制作し、
これを使用してテレビ出演を始めとする各種の経済活動を行っているとの事実が原告の営業上の信用を低下させるものに当たることは明らかである。
11 争点5(被告の故意又は過失の有無)について本件において、原告と被告との間で、被告においてキャラクターちぃたんに10 よる独自の商業活動を許諾したことを示す契約書等は作成されていないものの、
被告代表者及び被告の職員は、本件被告行為に当たり、原告の営業上の信用を害しないよう、事実関係を調査した上、当該事実関係に沿った適切な表現を用いるべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠ったものといわざるを得ない。
15 したがって、「公務員」である被告代表者及び被告の職員には少なくとも過失があったものと認められる。
12 争点6(原告の損害の有無及びその額)について(1) 原告の営業に係る損害についてア 逸失利益について20 (ア) S-PARK案件について証拠(甲63、127)によれば、原告は、フジテレビとの間で、同社が放映するスポーツニュース番組「S-PARK」内で、平成31年1月27日から同年2月24日までの間、「ちぃたん」の出演するCMを5回放送し、同社が原告に対しCM出演料として70万円を支払うとの25 合意をしていたこと、当該CMは、同年1月9日に撮影が終了し、同月24日に納品、同月27日に1回目の放送がそれぞれされたものの、そ96の後のCMの放送が全て中止となったことが認められる。
しかし、上記のとおり、フジテレビ宛書面送付行為がされる前までに、
当該CMの撮影及び納品に加え、1回目の放送がされていたところ、そのような場合も含め、原告とフジテレビとの間で上記CM出演料の支払5 条件がどのように定められていたのかについては、具体的な主張及び立証がないことから、原告がフジテレビから当該CM出演料の支払を受けることが社会通念上不可能になっているとまでは認めることはできない。
したがって、S-PARK案件について原告に逸失利益が生じたと認めることはできない。
10 (イ) 太田胃にゃんとのコラボ企画について証拠(甲64)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成30年秋頃、
オートクチュール京都との間で、太田胃にゃんとキャラクターちぃたんとが出演するCMを4本制作して、その頃から令和元年夏まで季節ごとに当該CMを放映し、オートクチュール京都が原告に対しキャラクター15 ちぃたんの出演料として1本当たり200万円(消費税別)を支払うことを合意したものの、キャラクターちぃたんが参加する冬バージョンのCM撮影が中止となり、これを含む3本のCMへのキャラクターちぃたんの出演も全て取り止めとなったため、原告は、オートクチュール京都から、3本分の出演料600万円(消費税別)の支払を受けられなかっ20 たことが認められる。
まず、オートクチュール京都が作成した平成31年2月6日付けメールには、被告により同日付けで差止請求がされたことを踏まえて冬バージョンのCMは太田胃にゃん単体で撮影する旨が記載されていたこと(甲64の3)からすれば、原告がオートクチュール京都から3本分の25 出演料600万円(消費税別)の支払を受けられなかったことは本件被告行為に起因するものと認めるのが相当である。
97そして、本件被告行為の前に秋バージョンのCMが撮影され、原告はそれに係る出演料の支払を受けていることが認められる(甲64の2)ものの、春・夏バージョンの内容は、流行等を考慮して平成31年2月頃に企画を想起するとされていた上、最後の夏バージョンのCMの納期5 は令和元年6月末と約半年先とされており(甲64の1)、本件全証拠によっても、残りの全ての撮影等が予定のとおりに行われるのが確実であったとはいい難いことを考慮すると、太田胃にゃんとのコラボ企画について、本件被告行為と相当因果関係のある原告の逸失利益は、原告が主張する593万1924円の70パーセントに相当する415万23410 7円(1円未満四捨五入)と認められる。
(ウ) ドン・キホーテ向け販売商品企画について証拠(甲65、99)によれば、原告は、平成30年1月1日、ブランチアウトとの間で、ドン・キホーテにおいて販売する予定の衣類関係の商品について商品化許諾契約を締結し、当該契約に基づき、平成3115 年4月から、Tシャツ7点を販売する予定であったこと、商品化許諾のロイヤリティは、商品の希望小売価格に製造予定枚数を乗じた金額の6パーセント(消費税別)とされていたこと、平成29年12月27日時点で、希望小売価格は1枚当たり1790円、販売予定数量は合計6000枚、使用料の支払時期はブランチアウトが原告に許諾を求める商品20 等を記載した申請書を提出した翌月末日限りとされていたことが、それぞれ認められる。そして、原告とブランチアウトとの間を取り次いでいた株式会社リヴァレー(以下「リヴァレー」という。)が作成した平成31年2月14日付けのメールにおいて、原告と被告との間で和解が成立する兆しがない状況で商品展開をすることは難しいとの趣旨の記載がさ25 れていたことが認められる(甲65の10)。
しかし、他方で、原告代表者が作成した陳述書(甲127)には、ド98ン・キホーテから、被告と和解ができていない限り商品展開をしないとの回答があった上、生産が進んでいる生地に係る損害賠償を請求したいとの申入れがあったものの、本件仮処分事件において原告の主張が認められたことを受けて、当該損害賠償請求を留保してもらっているとの記5 載がある。この記載からすると、本件訴訟の帰趨如何によっては、上記Tシャツの商品化が実現する可能性を否定できないから、同Tシャツにの商品化が社会通念上不可能になっていると認めることはできない。
したがって、ドン・キホーテ向け販売商品企画について、原告に逸失利益が生じたと認めることはできない。
10 (エ) しまむら向け販売商品企画について証拠(甲65の5の1ないし65の10)によれば、原告は、ブランチアウトとの間で、しまむらにおいて平成31年5月から販売する予定の衣類関係の商品について、商品化許諾に向けた交渉を行い、同年1月7日時点で、商品のデザイン案が出来上がり、同月31日時点で、その15 ロイヤリティに関し、
「ボクサーパンツ」「ステテコ」「パジャマ」及び、 、
「キッズ商品」については5パーセント(消費税別) 「靴下」及び「寝、
具/インテリア」については6パーセント(消費税別)とする方向で協議が行われていたこと、上記商品についての販売計画書において、ロイヤリティが合計673万1055円とされていたことが認められる。
20 そして、原告とブランチアウトとを取り次いでいたリヴァレーが作成した同年2月7日付けのメールにおいて、しまむらのバイヤーから、原告が著作権を侵害しているとして被告代表者が活動停止を求めたとの報道を見たので生産を止めてほしいとの連絡があったとの趣旨の記載がされていたこと(甲65の10)からすると、上記の商品化に至らなかっ25 たのは、本件被告行為に起因するものと認められる。
しかし、原告がブランチアウトとの間で上記の商品について商品化許99諾契約を締結したと認めるに足りる客観的な証拠はない。そして、同年1月31日時点で、「靴下」及び「寝具/インテリア」に関し、ブランチアウトからライセンス料率を6パーセントとすることで承諾が得られたものの、原告が商品化を許諾するか否かについてはいまだ検討中であっ5 たとうかがわれること(甲65の10)を考慮すると、本件全証拠によっても、本件被告行為がなければ原告が上記ロイヤリティの支払を受けられたとまでは認められないというべきである。
したがって、しまむら向け販売商品企画について、原告に逸失利益が生じたと認めることはできない。
10 (オ) ゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」とのコラボ企画についてa 証拠(甲67の3)によれば、原告は、平成31年1月12日、クラフトワークとの間で、同社に対し、DeNAが展開するゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」内で装備可能な防具にキャラクターちぃたんのデザイン等を使用することを許諾するとともに、そのロイヤリテ15 ィを115万円(知的財産使用料として100万円、告知のための2次使用料として15万円。いずれも消費税別)とした上、2次使用の内容については、①生放送での発表、②宣伝材料写真を使った記事、
告知バナーなどによる広告、拡散、③配布アイテムのデザイン完成後、
ウェブサイトに掲載し、アイテムの画像を使ったバナーなどによる拡20 散を予定するとして合意したことが認められる。
また、証拠(甲67の2、67の4、127)によれば、同月21日、ゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」をPRする生番組にキャラクターちぃたんが出演して、上記コラボ企画が発表されたものの、
クラフトワークから、同年2月19日、同月6日の被告代表者の記者25 会見を見たとして、当該コラボ企画の中止と原告が送付した当該コラボ企画に関する請求書を破棄する旨が通知されたことが認められる。
100b 上記ロイヤリティのうち、知的財産使用料100万円についてみると、ゲーム中で装備可能な防具にキャラクターちぃたんのデザインを使用することについての対価であったと解されるところ、証拠(甲67の1)及び弁論の全趣旨によれば、ゲーム中でそのような防具等が5 利用可能となる前に当該企画が中止されたと認められるから、原告が当該知的財産使用料の支払を受けることは、社会通念上不可能になったものといえる。
他方で、2次使用料15万円についてみると、前記aの当該2次使用に係る合意の内容に照らせば、当該2次使用料には、生放送での発10 表、宣伝材料写真を使った記事及び告知バナーなどによる広告における使用に係る対価も含まれていたものと解される。しかし、前記aのとおり、平成31年1月21日に、ゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」をPRする生番組が放送されるとともに、同年2月26日まで、
コラボ告知記事等の掲載が継続されていたと認められる(甲67の4)15 ところ、そのような場合も含め、原告とクラフトワークとの間で上記ロイヤリティの支払条件がどのように定められていたのかについては、
具体的な主張及び立証がないことから、原告がクラフトワークから当該2次使用料の支払を受けることが社会通念上不可能になったと認めることはできない。
20 c 弁論の全趣旨によれば、原告の従業員が監修担当者としてこの企画に関与していたことが認められるものの、原告は、通常、当該従業員に当該企画と関係なく給与等を支払っていると考えられるのに対し、
当該企画のために特別に時間外労働に係る賃金や手当を支払ったと認めるに足りる証拠はなく、本件全証拠によっても、この点についての25 逸失利益の算定に当たり、他に控除すべき費用があると認めることもできない。
101d 以上によれば、ゲーム「トリカゴ スクラップマーチ」とのコラボ企画について、本件被告行為と相当因果関係のある原告の逸失利益は100万円と認められる。
(カ) KADOKAWAとのムック本企画について5 証拠(甲68、127)によれば、原告は、KADOKAWAとの間で、平成31年2月21日販売予定の「まるごとちぃたん☆ブック」と題するムック本の制作準備を進めており、当該ムック本のデザインが概ね確定し、対外的に発売予告がされていたこと、同年1月10日には、
当該ムック本に使用する写真の撮影が行われたこと、同年2月6日時点10 で、原告とKADOKAWAとの間で使用許諾契約書案についての具体的な協議がされていたこと、当該契約書案において、KADOKAWAが原告に支払う著作権使用料を、1万5000部までにつき、出版物の定価×7.5パーセント×決定部数、1万5001部以降につき、出版物の定価×10パーセント×決定部数により算定する旨が記載されてい15 たことが認められるから、本件被告行為がなければ、上記ムック本が予定通りに発売されていた可能性は高かったといえる。
しかし、本件全証拠によっても、本件被告行為がされた時点において、
原告とKADOKAWAとの間で、上記のムック本に係る使用許諾契約書契約が締結されるに至っていたとも、上記著作権使用料算定の基礎と20 なる部数が確定していたとも認めることはできないから、上記認定に係る各事情を考慮しても、本件被告行為がなければ、原告が主張する上記著作権使用料の支払を受けられたと認めることはできない。
そうすると、KADOKAWAとのムック本企画について、原告に逸失利益が生じたと認めることはできない。
25 イ 放送が不可能となったアニメの制作費用について証拠(甲66、100)によれば、テレビ東京の子供向けバラエティ番102組「きんだーてれび」において、平成31年4月3日から、「ちぃたん」をキャラクターとするショートアニメ「妖精ちぃたん☆」(各話約1分30秒、
全13話)の放送が予定され(テレビアニメ企画)、原告は、平成30年10月25日、インフィニティビジョンに対し、妖精ちぃたん☆製作委員会5 の代表幹事会社として、委託費1600万円(消費税別)で当該アニメの制作を委託し、当該契約に基づき、同年12月26日に864万円(消費税込み)、平成31年2月18日に864万円(消費税込み)をそれぞれ支払ったものの、テレビ東京宛書面送付行為を受けて、その放送が中止されたことが認められる。
10 この点に関し、原告は、上記アニメは、1話が1分30秒と短いことから、他に転用することが困難で、制作の目的を達成することが不可能となったと主張するが、当該アニメについて、他の媒体における使用も含め、
転用が一切不可能となったことを認めるに足りる証拠はない。
また、原告は、上記制作委託費と同額の価値を有する原告の財産権が完15 全に失われたに等しいものであるとも主張するが、上記アニメの財産的価値が毀損していると認めるに足りる証拠はない。
そうすると、放送が不可能となったアニメに関し、原告に上記アニメ制作費相当額の損害が生じたと認めることはできない。
ウ まとめ20 以上によれば、本件被告行為によって原告に生じた営業に係る損害は、
合計515万2347円と認められる。
(2) 無形損害について前提事実(5)イのとおり、被告による営業誹謗行為は、定例記者会見における資料の配布や発言、報道機関宛への書面及びコメントの発出との態様で、
25 原告の行為が被告の著作権を侵害し、又は、不正競争行為に該当するとの法的な見解の表明等をしたものであるから、この被告の行為により、原告の営103業上の信用が毀損されたと認められる。
そして、被告の上記行為は、普通地方公共団体の代表者である市長の記者会見や書面及びコメントの発出という態様で、報道機関ひいては一般市民に向けてされたものであって、原告の行為が被告の著作権を侵害し、又は、不5 正競争行為に該当するとの法的な見解が複数の報道機関で報じられたこと、
前記(1)において説示したとおり、本件被告行為により、原告に逸失利益が生じたとまでは認められないものも含め、キャラクターちぃたんに関連する複数の企画が中止となったことからすると、原告は、キャラクターちぃたんに関連する複数の取引の機会を多数失った可能性が高いことといった事情を考10 慮すると、被告の営業誹謗行為によって原告の営業上の信用が毀損されたことによる損害額は、200万円と認めるのが相当である。
(3) 弁護士費用について被告による営業誹謗行為と相当因果関係のある弁護士費用は、71万円と認めるのが相当である。
15 (4) まとめ以上によれば、被告による営業誹謗行為と相当因果関係のある損害は、786万2347円と認められる(別紙原告損害整理表の「裁判所の判断」「損害額(円)」欄参照)。
13 争点15(許諾に係る期間が満了したか)について20 前記8(1)のとおり、被告が、キャラクターちぃたんについて独自の商業活動を黙示に許諾するに当たり、原告と被告との間で、ちぃたんオリジナル、ちぃたん着ぐるみ及びちぃたん着ぐるみ写真の許諾に係る期間を明示又は黙示に合意したと認めるに足りる証拠はない。
したがって、その余の点について判断するまでもなく、許諾に係る期間が満25 了したと認めることはできない。
14 小括104(1) 本訴請求のまとめ原告は、フジテレビ宛書面送付行為と相当因果関係のある損害は、S-PARK案件に係る損害であると主張しているところ、前記12(1)ア(ア)のとおり、原告にこの点について逸失利益が生じたと認めることはできないから、
5 フジテレビ宛書面送付行為が正当な権利行使として違法性が阻却されるか否かにかかわらず、当該行為を理由とする原告の請求は理由がない。
同様に、原告は、テレビ東京宛書面送付行為と相当因果関係のある損害は、
テレビアニメ企画に係る損害であると主張しているところ、前記12(1)イのとおり、原告にこの点について上記アニメ制作費相当額の損害が生じたと認10 めることはできないから、テレビ東京書面送付行為が正当な権利行使として違法性が阻却されるか否かにかかわらず、当該行為を理由とする原告の請求は理由がない。
他方で、フジテレビ宛書面送付行為及びテレビ東京書面送付行為を除く本件被告行為により、原告に786万2347円の損害が生じたと認められる15 から、原告は、被告に対し、国賠法1条1項に基づき、不競法2条1項21号所定の営業誹謗行為を理由として、同額及びこれに対する令和3年8月20日(不正競争行為後の日)から支払済みまでの平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分(不正競争行為時に適用される法定利率)の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
20 (2) 反訴請求のまとめ前記5ないし8及び13のとおり、被告は、原告に対し、キャラクターちぃたんが独自に商業活動をすることについて黙示に許諾していたと認められるところ、当該許諾について、錯誤無効、詐欺取消し及び合意の解除はいずれも成立せず、許諾に係る期間が満了したともいえない。
25 したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告の反訴請求はいずれも理由がない。
105第4 結論よって、原告の請求は、国賠法1条1項に基づき主文第1項記載の支払を求める限度で理由があるから、これを一部認容し、その余は理由がないからいずれも棄却し、被告の反訴請求は理由がないから、これをいずれも棄却すること5 として、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部裁判官10間 明 宏 充裁判官15塚 田 久 美 子裁判長裁判官國分隆文は、差支えにつき署名押印することができない。
20 裁判官間 明 宏 充106
事実及び理由
全容