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事件 平成 14年 (ワ) 15052号 不正競争行為差止等請求事件
原告 ソフトシアター株式会社
訴訟代理人弁護士 古川健三
被告 データバンク株式会社
訴訟代理人弁護士 辻惠
同 町田 亜砂子
同 足立政孝
訴訟復代理人弁護士 山田拓男
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2004/01/27
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,120万円及びこれに対する平成14年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の,その余を被告の負担とする。
4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
原告の請求
1 被告は,別紙商品目録(2)記載の商品を製造,販売し,または販売のために展示してはならない。
2 被告は,原告に対し,7000万円及びこれに対する平成14年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,「SPEED」という名称のガソリンスタンド向け顧客管理システムを販売している原告が,被告に対し,被告との間で締結したOEM販売委託契約に定められた買取義務の不履行によって代金相当額の損害が生じたとして,損害賠償の請求をするとともに,被告が上記OEM販売委託契約及び代理店契約上の義務に違反して競合商品を取り扱うなどの行為を行ったとして,被告に対し,商品の製造販売等の差止め及び債務不履行に基づく損害賠償の請求をしている事案である。
1 争いのない事実等(証拠により認定した事実については,末尾に証拠を掲げた。) (1) 当事者 原告は,コンピュータシステムの開発・販売等を業とする株式会社であり,被告はアプリケーションの開発・レンタル事業,経営コンサルタント等を業とする株式会社である。
原告は,リライトカードを使用したポイントカードによるガソリンスタンド(SS)向け顧客管理システム(以下「原告商品」という。)を開発し,平成13年4月ころから「SPEED」の名称で販売している。
一方,被告は,「e-okyaku.com(いいお客どっと混む)」のブランド名で,ガソリンスタンド向け顧客管理システムの販売を展開していた。
(2) OEM契約 原告と被告は,平成13年11月1日付で,原告が原告商品の仕様を一部変更した別紙商品目録記載(1)の商品を「e-okyaku.com」中のポイントカードシステム(以下「本件OEM商品」という。)として被告にOEM供給することを内容とするOEM契約(以下「本件OEM契約」という。)を締結した(甲2,甲3)。
本件OEM契約の契約書(甲2)には以下の記載がある(甲2)。
「(買取台数) 第3条 乙(被告を指す。以下同じ。)の本製品の月間買取台数は最低10台とする。
(競合契約の禁止) 第10条 乙は本製品と同一又は類似の製品の取扱をしてはならない。
(機密保持) 第11条 甲(原告を指す。以下同じ。)乙は相互に本契約並びに本製品に関連して知り得た相手方の機密については,技術に関するものはもちろん,業務上の一切に関して他に漏らさないことを誓約する。
(契約の有効期間) 第14条 本契約の有効期間は,本契約締結の日から1年とする。ただし,期間満了の3ヶ月前までに甲乙いずれからなんら申出のない場合は,更に1ヶ年延長されるものとし,以降同様とする。」 (3) 代理店基本契約 本件OEM契約に先立つ平成13年8月2日,原告と被告は,原告が被告に原告商品を継続的に供給し,被告が販売することを内容とする販売代理店基本契約(以下「本件代理店契約」という。)を,期間1年(ただし,期間が満了する60日前までに当事者のいずれからも文書による契約終了の申し出がない場合には,さらに1年間自動的に期間が延長されるものとする。)の約定のもとに締結した。
(甲1,弁論の全趣旨)。 2 争点及び当事者の主張 (1) 本件OEM契約の合意解約及び清算合意 (被告の主張) 以下に述べるとおり,平成14年3月中旬ないし5月下旬ころ,原告及び被告は,本件OEM契約を合意解約した。したがって,本件OEM契約の存続を前提とする原告の主張は理由がない。
ア 原告は,本件OEM契約締結後,平成13年11月及び同年12月の2度にわたって納期を延期し,しかも実際に原告が納品しようとした製品は,検収できる最低限のレベルにも達しないものであった。このような原告の納品の不手際が度重なったため,被告は,原告に対して書面を送付して,これをとがめるなどした。
また,原告は,本件OEM契約を締結しているにもかかわらず,平成14年2月7日から同月12日までの間,原告独自で開催した全国セミナーにおいて,被告に無断で被告ブランドの製品を資料に載せるなどしたため,被告は原告に対して不信感を募らせていた。
イ 同年2月20日ころ,被告は,取引先から,本件OEM契約に基づき販売した商品について,仕様にないブザーが鳴る機能があるという連絡を受けた。そこで,被告が原告に対して事情を問い合わせたところ,原告は,同月27日,被告に対して上記機能についての説明を全く行うことなく,一方的に支払日の確認,買取台数が月間10台に満たないことに基づく違約金の支払請求及び本件OEM契約の解約を申し入れてきた。
ウ 被告は,上記アのような事情があったため原告に対して不信感を募らせていた上に,原告が被告を無視して原告商品の販売網を独自に構築し始めるなどしたため,このまま本件OEM契約を継続するメリットはほぼなくなったと判断し,同年3月14日ころ,原告の上記イ記載の解約の申入れを受け入れることとしたものである。原告においても,同月27日付けのファックス(甲19)において,「弊社としても出来ることであれば,12ヶ月間のOEM契約を解除することは望みません。しかしながら,いくつかの諸用件から途中解約せざるを得ないと判断しております」と記載するなどして,本件OEM契約を本年3月末日をもって解約することに同意したものである。その後,同月26,27日,同年5月21日にも原被告間においてやりとりは行われているが,解約の合意を前提としつつ,解約後の清算の詳細な条件についてのすり合わせが行われていたにすぎず,清算金については合意に至らなかったとしても,解約の合意はされていたものである。したがって,本件OEM契約が同年3月末日をもって合意解約されたことは明らかである。
エ 仮に,原被告の本件OEM契約の解約の申し入れが,正確にかみ合っていないとしても,前述のとおり,その後のやりとりにおいて原被告とも本件OEM契約を終了させるという意思を有していたことが確認できるから,遅くとも5月末の時点で,一定のライセンス分を被告が原告から買い取る条件のもとで本件OEM契約は合意解約されたものと判断するのが妥当である。
(原告の主張) 被告の主張は否認しかつ争う。本件OEM契約が合意により解約された事実はない。合意解約については,書面で行うのが通常であるところ,原告と被告との間には,そのような書面は一切交わされていない。
平成14年5月21日ころ,原被告間において協議が行われ,被告が本件OEM契約の解約を申し入れてきたことから,原被告間において解約の条件を巡りやりとりが行われた事実はあるが,結局合意に至らなかったものである。
従って,平成14年3月末日は当然のことながら,それ以降においても本件OEM契約が合意により解約された事実はなく,原告としては,本件OEM契約の存続を前提として,被告に対して買取義務不履行による損害を請求しうるものである。
(2) 被告による買取義務の不履行 (原告の主張) 本件OEM契約のようなOEM契約において,供給元は,OEM供給に係る商品開発等のために,時間,労力,費用を費やすのであるから,最低買取台数を定めるのは当然のことであり,本件OEM契約に定める買取義務は法的義務と解すべきものである。しかるに被告による買取実績は29台にとどまり,本件OEM契約に定める最低買取台数120台(月10台)を大きく下回ったものであるので,原告は,被告に対して91台分の代金相当額を請求できるものである。
(被告の主張) 原告は,本件OEM契約の合意解約の話が出た時点になって,初めて契約書第3条にいう買取台数に拘束力がある旨を主張してきたが,契約が履行されている間は,上記の条項は拘束力を持つものではないことを前提として業務を継続していた。したがって,この条項は単なる努力義務を定めた規定に過ぎないというべきである。
(3) 被告による競業避止義務違反 (原告の主張) ア 平成13年ないし14年当時,SS向けのカード式顧客管理システムは,ほとんど未開拓の分野であり(実際,原告は,原告商品に関連して特許を取得済みである。),原告が原告商品を開発した当時は,九州で類似の商品を手がける企業があっただけであり,関東圏では原告と競合する企業は皆無で,原告の商品は画期的な新商品として業界各紙が取り上げるほどであった。
イ 被告は原告の代理店及びOEM供給先として原告商品の機能等詳細を熟知しているばかりか,原告から顧客やSSに関する情報の提供を受けていた。
ウ 被告は,平成14年6月ころから,本件OEM商品とは別に被告が販売する別紙物件目録(2)記載の商品(以下「被告商品」という。)を,本件OEM商品の「バージョンアップ」と銘打って大々的な宣伝を開始し,従来原告商品(非OEM版)を利用していた原告の顧客に対しても「バージョンアップ」したと称して積極的に営業をかけた。被告の上記の宣伝活動は,一般顧客はもとより原告の販売代理店に対しても,原告商品がバージョンアップするかのごとき錯覚を与え,これにより一斉に買い控えが起こり,原告は,平成14年7月には原告商品が1台も売れないという大打撃を受けた。
原告と被告は営業先でたびたび競合しているが,被告は,自ら熟知している原告の商品との比較販売を行って自社製品の優位性を印象づける手法で営業を行っている。このため,原告がPOS連動の機能により被告商品と差別化を図る前には,圧倒的に被告商品の販売が優勢となっていた。
上記のとおり,被告の競合商品発売により,原告商品には,深刻な売上の落ち込みが発生した。
エ 上記のような被告の行為は,本件OEM契約第10条に定める競業避止義務に違反するものである。
また,本件OEM契約とは別に,原告と被告との間には,平成14年8月1日までの間本件代理店契約が存在していた。同契約による販売委託の趣旨に照らせば,被告は,信義則上,販売委託者たる原告と競合する活動により原告に損害を与えてはならない義務を負っているものと解すべきであるところ,被告はこのような義務にも違反しているものである。
被告による被告商品の製造,販売行為は,上記の競業避止義務に違反するものであるから,原告は,被告に対し,被告商品の製造,販売等の差止めを求めるとともに,競業避止義務違反行為によって生じた損害の賠償を請求するものである。
(被告の主張) ア 原告の主張は争う。
本件OEM契約は,平成14年3月ないし5月をもって合意解約されており,合意解約以降被告は本件OEM契約に基づく競業避止義務を負わないものである。
イ 原告は,本件代理店契約に基づく競業避止義務を主張するが,原告が主張するような義務違反はない。また,本件代理店契約は,次のような事情により,本件OEM契約締結時あるいは,本件OEM契約終了時に終了したというべきである。
(a) 原告商品と本件OEM商品はそもそも競合製品であり,被告が本件OEM商品の販路拡大を企図することは,すなわち,原告商品の競合商品の販売を強化することを意味する。その意味で,原告商品の取扱いに関する本件代理店契約と本件OEM商品の取扱いに関する本件OEM契約とは,現実には併存することが困難である。このような認識の下で,原告及び被告は,本件OEM契約締結時に,本件代理店契約を終了させることについて合意したというべきである。事実,被告は,本件OEM契約締結後,原告商品を一切扱っておらず,このことについて原告から何らの抗議もされていない。
(b) 仮に,本件OEM契約締結時に本件代理店契約が終了していなかったとしても,本件OEM契約の終了と同時に本件代理店契約は終了したものである。
すなわち,本件OEM契約終了の背景には,原告の数々の背信行為があったところ,販売代理店契約も当事者間の信頼関係の上に成り立つものであり,当事者たる被告の人格が1つである以上,たとえそれが複数の契約であっても信頼関係の破壊を別々に考えることは事実上あり得ない。従って,当事者の意思を合理的に解釈すれば,本件OEM契約の解約の意思表示には,本件代理店契約の解約の意思表示も含まれているというべきであり,本件OEM契約が合意解約された時点で,当然に本件代理店契約も終了したものである。
(4) 原告の損害 (原告の主張) ア 買取義務違反による損害 本件OEM契約に基づき原告が被告に販売できたのは29台にとどまり,本件OEM契約に定める最低買取台数120台(月10台)を大きく下回った。これによる損害は1台当たりの利益を25万円として以下の計算式のとおり,2275万円である。
(120-29)×25万=2275万円 イ 競業避止義務違反による損害 被告による競業行為によって,原告の売上が落ち込むこととなったが,売上減少額は少なくとも5000万円を下らない。
弁護士費用 原告は被告の行為により訴訟代理人を依頼して訴訟提起せざるを得なくなったが,これにより,300万円を下らない弁護士費用の負担を余儀なくされることになった。
エ 小括 被告の債務不履行により原告の受けた損害額は上記のとおりであるが,原告はそのうち7000万円を損害賠償として請求するものである。
(被告の主張) 原告の主張は,否認ないし争う。
なお,仮に被告に損害賠償義務があるとしても,平成14年5月21日に行われた原被告間の協議において,本件OEM契約終了に伴う清算について5台分のライセンスを被告が買い取るということで合意に達したものであり,5台分のライセンス相当額を超える賠償の義務はないというべきである。
当裁判所の判断
1 争点(1)(本件OEM契約の合意解約及び清算合意)について (1) 前記の争いのない事実等(前記第2,1)に証拠(甲2,4,5,6,8,9の1,2,11ないし13,14の1ないし3,16,17ないし19,乙1)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。
ア 原告は,平成12年ころ,原告商品を開発し,「SPEED」の名称で平成13年4月ころから販売するようになった。
他方,被告は「e-okyaku.com」の名称でSS向けの顧客管理システムを販売していたが,平成13年8月2日,原告との間で本件代理店契約を締結し,販売代理店として原告商品を取扱うようになった。
その後,原告と被告は,原告製品のシステムを被告の顧客管理システムに組み込んだ本件OEM商品を原告が製作し,被告ブランドで被告が販売することについて合意に至り,同年11月1日付けで本件OEM契約を締結した。
イ 本件OEM契約に基づく原告から被告への本件OEM商品の開発は,被告の注文に合わせた仕様変更に時間を要したことから,当初の予定から大幅にずれ込み,原告において最終的な開発が終わったのは同年12月半ばころとなった。また,納品先からシステムがうまく作動しないという苦情が寄せられることもあり,こういった納品のトラブルに関し,被告も電話対応等の顧客対応を行わざるを得ない場合も生じた。
ウ 平成14年2月20日ころ,本件OEM商品の納入先から,被告に対し,納品された製品に仕様にはないアラームが付いていることに関するクレームが入った。被告は,本件OEM商品に関して顧客から数度にわたりクレームを受けることとなったり,原告が本件OEM商品と競合する原告製品を販売しているなどの事情があったために原告に対して不信感を抱くようになっていたことから,このような不信感も手伝って,上記のアラーム機能について,強く原告に対して抗議を申し入れた。
エ 他方,原告は,被告からの本件OEM商品の代金支払いが遅滞気味であったことにかねてより不満を抱いていたところ,同月27日ころ,前記の被告からの抗議を受けて行われた被告代表者と原告代表者との協議の中で,原告代表者は被告に対して,「このような支払状況では,本件OEM契約を継続するのは困難であるので,入金日は守ってもらいたい。そうでないとキャッシュオンデリバリーなどの形で取り引きせざるを得ない」旨を伝えた。
オ 同年3月14日ころ,被告の代金支払いの遅れや買取義務が守られていないこと等の本件OEM契約に関する問題を話し合うため,原告及び被告は話し合いを行った。被告は「『e-okyaku.com』運用に関するレビュー」と題する書面(甲17)を原告に提示し,原告の納品遅れや納品された商品に欠陥がありその対応にコストを要したこと等について原告に対して不満を述べ,さらに,3月末日をもって本件OEM契約を解約し,4月以降は改めて代理店契約を締結したいなどと主張したものの,話し合いは平行線となり,結局何も決まらなかった。
カ その後,原告と被告との間では,買取義務の履行や代金支払の点を解決すべく何度か交渉が行われたが,同年3月27日,被告から原告に対し,原告からの要求に対する回答に先立って確認しておきたいことがあるとして,@すでに販売したシステムに対するトラブルの対応,A本件OEM契約が実際に履行された時期,B被告のこれまでの納品実績についての確認を求める内容のファクシミリ(甲18)が送付されたが,同ファクシミリには契約の解除をうかがわせる内容は記載されていなかった。
キ 同日,前記カ記載の被告からのファクシミリ(甲18)に対する回答として,原告から被告に対し,「ご質問に対するご回答」と題する文書(甲19)が送付された。同文書においては,上記カのファクシミリ(甲18)に記載された確認事項に対する回答に加えて, 「弊社としてもできることであれば,12ヶ月間のOEM契約を解除することは望みません。しかしながら,幾つかの諸用件から途中解約せざるを得ないと判断をしております。したがって,両社の今後のビジネスを円滑に進める上において3月末までの残ライセンス11台について,御社のご希望をお伺いさせていただきたいと思います」 と初めて途中解約を示唆する内容が記載されたが,これに対して被告からは明確な回答はなかった。
ク 同年3月31日,原告は被告に対し,125万円あまりの本件OEM商品の請求書を送付したが,これに対して被告から異議が述べられることはなく,約定日どおりに入金が行われた。また,翌4月3日,5日には,原告から本件OEM商品の納品が行われ,同月30日に118万円あまりの請求書が送付されたが,これに対しても約定日どおりに入金が行われた。
ケ 同年4月に入って以降,原告は被告に対して,買取義務に満たない台数分の買取や,本件OEM契約の解除を求めて,交渉を申し入れ,これに対し被告からは「もう少し整理したい」などという回答はなされたものの,契約解除に同意する旨の意思表示はされなかった。かえって,被告は自己のホームページに本件OEM商品の紹介を掲載するなどして,本件OEM商品の売り込みを図っていた。
コ 同年5月21日ころ,原告と被告は協議を行い,本件OEM契約を5月末日をもって解除し,買取義務の未履行分については11台分のライセンスのうち5台分のライセンス相当額を被告が支払うことで合意に達したが,ここで合意された解約の条件については,原告が条件を記載した文書を5月末日までに被告に対して送付し,合意文書を作成することとされた。
サ 上記コにおける協議の結果を受け,同年5月末日ころ,原告において,解約の条件を記載した「OEM販売提携契約解除についての合意書」(甲14の1)と題する書面を作成の上,被告に対して送付した。もっとも,これに対して,被告は同文書の内容は5月21日の協議の場において話し合われた内容にはなかった競業避止義務の条件が付加されているとしてその内容に異議を唱え,同年6月3日に至り,同年3月末日をもって本件OEM契約は既に解除されている旨の主張を記載した書面を原告に対して送付した。同年6月以降,現在に至るまで原被告間において本件OEM商品の取引は行われていない。
(2) 以上の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
上記(1)において認定の事実関係を総合すると,平成14年3月に被告から本件OEM契約の解約の申し入れが行われた後,原告も途中解約せざるを得ないとの認識に至り,原被告間で解約を前提とした話し合いが開始されたこと,話合いにおいて主に問題とされた事項は被告の買取義務の履行をどうするかということであったこと,同年5月21日に行われた打合せにおいて同月末日をもって本件OEM契約を解約することは合意され書面の作成のみが後日に委ねられたこと,原告が送付した「OEM販売提携契約解除についての合意書」(甲14の1)について被告が異議を述べたのは競業避止義務を定めた条項についてのみであったこと,競業避止義務の点については5月21日の打合せの段階では問題とされていなかった事項であり,そのため被告が異議を唱えたものであること,現実に同年6月以降は本件OEM製品の取引は全く行われていないことがそれぞれ認められるのであって,このような事実経過に照らすならば,本件OEM契約は,被告による買取義務未履行分のうち5台分のライセンス相当額を被告が原告に対して支払うことを条件として,平成14年5月末日をもって合意解約されたものと認めるのが相当である。
原告は,合意解約の条件について双方で合意に達していなかった以上,本件OEM契約は合意解約は行われていなかったと主張する。しかしながら,前記のとおり,本件OEM契約は,平成14年5月末日をもって合意解約されたものと認めるのが相当である。
2 争点(2)(被告による買取義務の不履行)について 前記の争いのない事実等(前記第2,1)に証拠(甲2,4,5,13,16ないし18,乙1)及び弁論の全趣旨を総合すれば,@本件OEM契約を締結するにあたり,原告から被告に対し,原告製品を別ブランド仕様にあわせるために,相応の買取台数を確保してもらいたい旨の希望が述べられ,それを受けて本件OEM契約の契約書(甲2)に,被告による本件OEM商品の月間買取台数は最低10台である旨の条項が盛込まれたこと,A原告は遅くとも平成14年2月以降,被告が買取義務を守らないことを問題とし,原被告間では買取義務の履行を巡って協議が重ねられたものであること,B同年5月21日,原被告は本件OEM契約を解約することに合意したが,その際,契約に定められた本件OEM商品の買取義務が満たされていないことを前提としつつ,5台分のライセンス相当額を被告が支払うということで合意したことが,認められる。
以上の事実によれば,本件OEM契約の契約書に定められた被告による本件OEM商品の月間買取台数は最低10台である旨の買取義務の条項は,単なる努力義務を定めたものではなく,被告のシステムの仕様にあわせた製品を開発し,納入するというOEM供給の特質に鑑み,当事者間に拘束力のある条項として合意されたものといわざるを得ない。したがって,この買取義務に違反して被告が買取を行わなかった場合には,原告は被告に対して納品することによる利益相当額を損害として損害賠償を請求することができるものと解される。
しかしながら,本件においては,上記1に認定のとおり,平成14年5月21日に行われた協議において,被告による買取義務未履行分のうち5台分のライセンスを被告が買い取ることで契約を終了させるとの清算合意がされたものであるから,本件において前記買取義務の不履行による損害として原告が被告に対して請求することが許される損害は,5台分のライセンス相当額に限定されるというべきである。
3 争点(3)(被告による競業避止義務違反)について (1) 前記の争いのない事実等(前記第2,1)に,証拠(甲1ないし5,8,9の1,2,13,14の1ないし3,16,20,21の1ないし9,乙1)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の各事実を認めることができる。
ア 本件OEM契約においては,被告は,本件OEM契約期間中,本件OEM商品と同一又は類似の商品の取扱いをしてはならないこと(第10条),及び,原被告は相互に本件OEM契約及び本件OEM商品に関連して知り得た相手方の機密について他に漏らしてはならないこと(第11条)が定められていたが,本件OEM契約終了後についての定めはなかった。
イ 被告は,原告との間で,本件OEM契約に先立つ平成13年8月2日ころ,原告商品を販売することを内容とする本件代理店契約を締結したが,同契約の契約書(甲1)においては,原被告が同契約を通じて知り得た相手方の営業上の機密に関する事項に関して,互いに秘密を保持し,外部への情報の漏えいがないよう細心の注意を払わなければならないことは定められているものの,被告において競合商品を取り扱うことを禁止する条項やその他競合品の取扱いについて規定する条項は存在しない。
ウ もっとも,実際には,原告から被告に原告商品あるいは本件OEM商品のソースコード等の技術上の秘密情報が開示されたわけではなかったし,顧客情報等の営業上の情報についても,個別に問い合わせを行ってきた顧客の情報を被告に対して提供したことがあったにすぎず,原告の営業上,技術上の秘密が被告に対して開示されたことはなかった。
エ 平成14年5月21日ころ,原告及び被告は,本件OEM契約を5月末日をもって解除することについて概ね合意に達したが,その際のやりとりを受けて原告が作成し,被告に送付した「OEM販売提携契約解除についての合意書」(甲14の1)中には,@本件OEM契約解除後といえども,本件OEM契約によって知り得た相手方の技術上,営業上,その他一切の有用な知識を第三者に開示または漏えいし,もしくは自己の営業のために利用してはならない旨,A被告は本件OEM契約解除後3年間は,本件OEM商品と競合するおそれのあるSS向けe-CRMシステムまたはこれと同種のシステム(関連商品を含む)を自ら開発・販売しまた第三者をして開発・販売させてはならない旨が解約の条件として記載されていた。
オ 被告は,エ記載の書面を受けて平成14年6月3日ころ,同年3月末日をもって本件OEM契約は解除されている旨の主張を記載した書面を原告に対して送付したが,同書面中においては,前記エの@及びAに記載したような条件について合意した事実はなく,被告としては,同年6月1日以降は原告と被告は互いに何の制約も受けない関係であるとの被告の認識が記載されていた。そして,この後,被告が本件OEM製品を取り扱うことはなかったし,原告が本件OEM商品の取扱いの継続を被告に求めることもなかった。
カ 被告は同年6月以降,業界紙上において,被告商品が本件OEM商品の「バージョンアップ」した商品であると広告を行うなどして,原告商品及び本件OEM商品との競合品である被告商品の積極的な販売を開始した。原告製品と被告製品は競合する製品であるため,実際の営業において,原告の営業先と被告の営業先が重なることもあった。
以上の事実が認められる。なお,原告は,被告に対し,営業秘密であるSS顧客リストを提供したと主張するが,かかる事実を認めるに足りる証拠はない。
(2) 以上の事実を前提に判断する。
まず,本件代理店契約と異なり,本件OEM契約において,あえて,本件OEM契約の契約期間中は被告に競合製品を取り扱わないという義務を課すこととしたのは,原告が被告システムに合わせた商品を被告に提供し,それを被告が被告自身のブランドで販売するという,OEM契約の性質に照らすと,契約期間中に被告が競合商品を取り扱うと,自社ブランドでの販売を行うことができない原告は著しく不利な立場に追い込まれることになるという点を考慮したものと考えられる。
本件においては,前記のとおり平成14年5月末日をもって本件OEM契約は合意解約されたと認められるから,本件OEM契約終了後に,同契約上の競業避止義務条項を根拠として,原告が被告に対し,被告商品の取扱いの禁止を求めることはできない。しかるところ,本件OEM契約が合意解約された平成14年5月末日以前に,被告が上記条項において禁止される競業活動を行った事実は,本件全証拠によっても認めることが出来ない。したがって,原告の本件OEM契約に基づく競業避止義務違反を理由とする損害賠償の請求は理由がない。また,すでに本件OEM契約が合意解約されている以上,被告に対して商品の製造等の差止めを求めることもできない。
また,原告は,本件代理店契約の趣旨に照らせば,販売委託者たる原告と競合する活動により原告に損害を与えてはならない契約上の保護義務が被告に認められ,被告には競合製品を取り扱ってはならない義務が存在したと主張する。しかしながら,上記(1)認定のとおり,本件代理店契約においては原告商品の競合商品の取扱いについて何らかの形で規制する条項は全く定められておらず,かえって,原被告間においては,原告商品の競合商品となる本件OEM商品の取扱いを内容とする本件OEM契約が締結されていた事実が存在するのであって,本件代理店契約において,被告に原告商品の競合品となる商品の取扱いをしてはらなないという信義則上の義務が存在したとまでは認めることはできない。したがって,原告が本件代理店契約に基づき,被告に対して被告商品の取扱いを禁止を求めることはできないと解するのが相当であり,同契約上の義務に違反したとして被告に対して被告商品の取扱いの差止め及び損害賠償を求める原告の請求も,理由がないものというべきである。
4 争点(4)(原告の損害)について (1) 買取義務違反による損害 上記2において説示したとおり,被告に負担させることができる買取義務違反による原告の損害は,本件OEM商品5台分のライセンス相当額に限られるところ,証拠(甲13,16,24ないし26)及び弁論の全趣旨によれば,本件OEM商品の1台当たりの原告の利益は少なくとも24万円であったものと認められるので,上記1台分の損害24万円に5台を乗じて原告の損害額を算定すると,買取義務違反による原告の損害は120万円と認めるのが相当である。
(2) 弁護士費用 債務不履行に基づく損害賠償を請求する本件において,弁護士費用を相当因果関係を有する損害と認めることはできない。
5 結論 以上のとおりであるから,原告の被告に対する請求は,金120万円及びこれに対する平成14年7月26日(訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかである。)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 大須賀寛之
裁判官 松岡千帆
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