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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成15ワ5711営業差止等請求事件 判例 不正競争防止法
昭和60ワ4131秘密保持義務存在確認等請求事件 判例 不正競争防止法
平成15ネ1010損害賠償請求控訴事件 判例 不正競争防止法
平成18ワ5172損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
平成10ワ13353損害賠償請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  商標登録 /  商品等表示 /  普通名称 /  類似性(類似) /  混同のおそれ(混同) /  表示の使用 /  過失 /  共同不法行為 /  デザイン /  代理人 /  代表者 /  混同のおそれ(混同) /  プログラム /  損害賠償 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 20610号 損害賠償請求事件
原告A
訴訟代理人弁護士 對崎俊一
被告 株式会社ツインリンクもてぎ
訴訟代理人弁護士 平尾正樹
同 勝又祐一
補佐人弁理士 山中 伸一郎
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2004/01/19
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,原告に対し,金1億0500万円及びこれに対する平成14年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 本件は,原告が被告に対して,以下のとおり主張して,損害賠償及び未払金の支払を請求した事案である。すなわち, @ 被告が曲技飛行競技会(後記の平成12年,13年大会)を開催するに当たって,「FWGPA」,「アエロバティックス」,「AEROBATICS」及び「ウイングマーク」の標章を使用した行為は,不正競争防止法2条1項1号に該当するので,損害賠償を求める。 A 被告が,上記の大会を開催にするに当たって,原告を事業から排除したことは,第三者との共同不法行為を構成するので,損害賠償を求める。
B 被告は,原告に対して,曲技飛行競技会(後記の平成11年大会)を開催するに当たり,前記各表示を使用すること等の対価を支払う旨約したが,一部が支払われていないことを理由として,未払金の支払を求める。
2 争いがない事実等(証拠を末尾に掲げない事実は当事者間に争いがない。) (1) 当事者 原告は,ドイツ連邦共和国ミュンヘンにおいて,対ヨーロッパ,対日本の輸出入業務及びこれに関連するコンサルタント業務を主として行う会社を経営する者である(甲74)。
被告は,オートバイや四輪自動車のレース及び各種スポーツ競技の興業を主たる事業目的とする株式会社であり,本田技研工業株式会社のグループに属する企業である。
(2) 被告による曲技飛行競技会の開催 ア 平成10年大会の開催 被告は,平成10年10月,被告が管理する自動車レース場であるツインリンクもてぎサーキットにおいて,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS ’98アエロバティックス日本グランプリ」と称する曲技飛行競技会(以下「平成10年大会」という。)を開催した。同大会は,主管がFWGPA及び国際航空連盟(FAI),主催が被告とされた。
イ 平成11年大会の開催 被告は,平成11年10月,ツインリンクもてぎサーキットにおいて,「’99アエロバティックスHONDAグランプリ」と称する曲技飛行競技会(以下「平成11年大会」という。)を開催した。同大会は,前年と同様,主管がFWGPA及び国際航空連盟(FAI),主催が被告とされた。
ウ 平成12年大会の開催 被告は,平成12年10月にも,FWGPAの代表であるMとの間で契約を締結し(乙7),ツインリンクもてぎサーキットにおいて,「アエロバティックスHONDAグランプリ2000」と称する曲技飛行競技会(以下「平成12年大会」という。)を開催した。同大会は,主管がFAI-WGPA及び国際航空連盟(FAI),主催が被告とされた。
エ 平成13年大会の開催 被告は,平成13年10月にも,Mとの間で契約を締結し(乙8),ツインリンクもてぎサーキットにおいて,「2001 AEROBATICS JAPAN GRAND PRIX」と称する曲技飛行競技会(以下「平成13年大会」という。)を開催した。同大会は,前年と同様,主管がFAI-WGPA及び国際航空連盟(FAI),主催が被告とされた。
3 争点 (1) 被告が,平成12年,13年大会において,標章を使用した行為は,不正競争防止法2条1項1号に該当するか。
(2) 被告が,平成12年,13年大会を,原告を関与させないで,開催した行為は,共同不法行為を構成するか。
(3) 原告の被った損害の額はいくらか。
(4) 被告は,原告に対して,契約に基づく支払を怠ったか。
4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)(不正競争防止法所定の行為の有無)について (原告の主張) ア 原告の業務 原告は,平成7年以降,独自に改良開発した通信機器を用い,音楽とシンクロした小型飛行機の曲技飛行競技や曲技飛行について,商業的利用価値のあるイベント(以下「本件イベント」という場合がある。)として開催することを着想し,そのために必要な行政上の許可の取得,航空自衛隊との調整,国際航空連盟(FAI)公認とするための国際航空連盟(FAI)への手配,必要な参加者(パイロット,審査員等),機材(飛行機,通信・音響機器等)の手配等の業務を行った。
原告は,平成8年から平成11年まで,「FWGPA」の名称の下,3回の国際航空連盟(FAI)公認の曲技飛行競技会,及びその他の6回の曲技飛行の催しについて,主催者との間で,主管者として,上記各役務を提供する旨の契約を締結し,同役務を提供した。
イ 原告の営業表示 原告は,本件イベントのために,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」という競技名称を創作した。また,原告は,別紙営業表示目録(1)ないし(4)記載の「FWGPA」,「アエロバティックス」,「AEROBATICS」及び「ウイングマーク」(以下「本件営業表示」という。)を創作して,これらの各標章を主催者に対して,使用することを許諾して,催しの運営全体を統括した。
ウ 本件営業表示の周知性 上記催しは,いずれも多数の観客を動員し,マスコミにも多数回取り上げられ,ポスター等による広告宣伝やマスコミ報道においても,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」又は「アエロバティックス」という名称で呼ばれ,「ウイングマーク」や「FWGPA」が,大会を象徴する標章であることや,イベント主管者が「FWGPA」であることが,繰り返し伝えられた。
その結果,遅くとも平成11年末の時点では,「FWGPA」,「アエロバティックス」,「AEROBATICS」及び「ウイングマーク」の本件営業表示は,いずれも,曲技飛行競技会が開催された場合には,原告が企画し,役務を提供して開催される小型飛行機による曲技飛行競技会を指す表示として,業界関係者や一般消費者に広く周知されるに至った。
エ 被告による本件営業表示の使用 被告は,平成12年大会及び平成13年大会において,原告の許諾を得ることなく,「FWGPA」,「アエロバティックス」,「AEROBATICS」及び「ウイングマーク」の本件営業表示を使用し,競技会を開催した。
被告の行為は,原告の営業であることを示すものとして周知である本件営業表示を使用し,原告の営業との混同を生じさせる行為であるから,不正競争防止法2条1項1号に該当する。
(被告の反論) ア 原告の業務及び本件営業表示の周知性 「FWGPA」は,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS(又は,AVIATION)」の略称であるが,同名称は,Mが経営する会社「FWGPA」の名称である。同社又はMは,国際航空連盟(FAI)から,曲技飛行競技会を開催する権限の付与を受けている。被告は,FWGPAに委託して,曲技飛行競技会を実施したものである。
原告は,FWGPAの日本部局として,曲技飛行競技会を開催するに当たって,行政上の許可取得などの業務を行ったにすぎない。原告が行った業務によって,曲技飛行競技会の主体になるわけでないから,本件営業表示が,原告の行う役務(曲技飛行競技会)を表示するものとなることはあり得ない。
イ 被告による本件営業表示の使用 被告は,平成12年大会及び平成13年大会において,「FWGPA」の表示を使用したことはない。
「アエロバティックス」及び「AEROBATICS」の表示は,曲技飛行を表す普通名称として,大会名称の一部に使用したのであり,このような態様での使用は,普通名称の使用であるから,不正競争行為には該当しない。
「ウイングマーク」は,そもそも,Mが考案し,Mの会社であるFWGPAが管理している標章である。被告は,Mの承諾を得て使用したのであるから,「ウイングマーク」の使用が不正競争行為に該当することはない。
(2) 争点(2)(共同不法行為の成否)について (原告の主張) ア Hの不法行為 原告は,平成8年から平成11年までの4年間,継続して,曲芸飛行競技会の開催等に関与してきたが,原告がドイツに居住する関係で活動に制約があることから,Hを日本常勤の従業員として雇用し,日本における業務の補助者として使用してきた。
Hは,原告を排除して,競技会の業務を行えば,従業員よりも多額の収入を得ることができると考え,遅くとも平成11年ころから,密かに画策を始め,平成12年3月初旬,札幌市内にある原告の事務所(FWGPA事務所)をHが管理していることを奇貨として,原告が取得した様々な重要情報を含め,原告が同事務所内に保管していた書類,機器,備品等を不法に搬出した。Mは,平成12年3月ころ,被告に対し,MがFAIから「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」開催の権利を授与されていること,MがHを日本における唯一の代理人として選任したことなどを伝え,平成12年大会において,原告を排除して,M及びHを相手方として契約するよう働きかけた。以上のとおり,Hは,原告が取得した情報を,原告の事務所から持ち出し,また,原告が有する本件営業表示を,被告をして,無断で使用させたのであって,同人の行為は不法行為を構成する。
イ 被告のHとの共同不法行為 被告は,平成12年6月25日,平成12年大会に関して,M及びHとの正式な契約をした。ところで,被告は,@曲技飛行競技会の開催には,原告が取得し,蓄積した様々な情報や本件営業表示を使用することが不可欠であること,AHが原告の従業員であって,原告の事業活動を補助してきた者にすぎないこと,B平成12年4月25日に,原告が,Hの業務上横領行為を発見して,Hを解雇し,刑事告訴したこと,をいずれも認識しながら,HやMと協議したことを原告に知らせることもなく,Hとの間で正式な契約を締結して,Hの持ち出した原告の重要情報及び本件営業表示を使用して,平成12年大会を主催者として開催した。このような被告の行為は,Hとの共同不法行為に当たるというべきである。
(被告の反論) 被告は,Hに対し,平成12年大会についての実施業務を委託したが,これは,FWGPAのMが,日本代表としたのがHだからである。
被告は,原告がHを告訴したことは知っていたが,両者の関係の詳細については知らなかったので,告訴が成り立つか否かについて判断できなかった。
したがって,被告が,平成12年大会を開催するに当たり,Hに業務を委託した行為は,原告に対する共同不法行為に該当しない。
(3) 争点(3)(原告の被った損害の額)について (原告の主張) ア 不正競争行為による損害 被告は,原告に対し,平成10年大会及び平成11年大会において,営業表示の使用の対価として,各4500万円を支払う旨の合意をした。したがって,平成12年大会及び平成13年大会において,被告が原告に無断で,本件営業表示を使用したことによって原告が被った損害は,合計9000万円となる。
共同不法行為による損害 被告の共同不法行為により,原告は,平成12年大会及び平成13年大会に参加することができなかったため,原告は,各大会において,本件営業表示使用の対価相当額である4500万円を,それぞれ得ることができなかった。したがって,原告の被った損害は,合計9000万円となる。
ウ 原告は被告に対して,上記ア,イのとおりの9000万円の損害金の支払を選択的に請求する。
(被告の反論) 争う。
(4) 争点(4)(被告の原告に対する未払金の有無)について (原告の主張) 平成11年大会開催に当たり,原告は,被告に対して,本件営業表示の使用の対価として合計4500万円の支払をする旨約したが,被告は内金3000万円を支払ったのみで,残額1500万円の支払をしない。
この点について,平成11年大会覚書には,原告に支払われるべき対価として,実施報酬として3000万円,事業商権として1500万円を上限とする旨の記載がある。これは,平成11年大会が2年目であることから,原告に対する支払額を減額する方が,被告における決裁を円滑に進められるとの被告側の事情により,形式上は,実施報酬を3000万円とし,事業商権を1500万円としたにすぎないのであり,実質的には,平成11年大会が終了した後,速やかに1500万円を支払うという趣旨であった。原告は,被告から,被告の主張するような入場券の交付も,広告スペースの提供も受けていない。
(被告の反論) 平成11年大会開催に当たり,被告は,FWGPA日本部局との間で,FWGPA日本部局に対し,その業務の対価として,現金3000万円の支払及び1500万円相当を上限とする事業商権の付与を行う旨約した。事業商権とは,平成11年大会のチケットの交付や広告スペースを与えることを指す。そして,被告は,FWGPA日本部局に対し,3000万円を支払ったほか,ファミリー入場券1000枚を600万円分の事業商権としてFWGPA日本部局へ送付し,さらに,原告がスポンサーを見付けてくれば広告スペースを提供する用意があることを説明し,実際にも広告スペースを与えた。
したがって,被告には,債務不履行はない。
争点に対する判断
1 争点1(不正競争行為の該当性)について 原告は,本件営業表示は,いずれも,原告の行う役務(曲技飛行競技会)を表示するものとして周知である旨主張する。
当裁判所は,本件営業表示は,原告の実施する役務(曲技飛行競技会)を表示するものではなく,かえって,@国際航空連盟(FAI)が実施する役務(曲技飛行競技会),A同連盟から委託を受けたM又はMの運営する会社が実施する役務(曲技飛行競技会)を表示するものと解すべきであると判断する。その理由は,以下のとおりである。
(1) 事実認定 証拠(甲1ないし47,53,57ないし73,74(以下の認定に反する部分を除く。),乙1ないし14,19ないし35の2,乙37の1ないし4,乙38ないし40,乙42ないし86,92)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,これを覆すに足りる証拠はない。
ア 「AEROBATICS」(エアロバティックス)競技 (ア) 国際航空連盟(FAI)は,航空スポーツの普及を目的として1905年に設立され,1985年に国際オリンピック委員会の承認を受けた非政府,非営利の国際団体である。国際航空連盟(FAI)の行う競技には,バルーン,グライダー,ラジコン,曲技飛行等があるが,このうち専用の小型飛行機を用い,設定された空域の中で,規定演技又は自由演技のプログラムでする曲技飛行については,「AEROBATICS」(エアロバティックス)と呼ばれている(乙24の2,乙30,弁論の全趣旨)。
(イ) エアロバティックスの競技会は,国際航空連盟(FAI)の後援の下,その公式世界選手権として,スイスの時計製造会社であるブライトリング社が主催者となって,平成2年から平成4年までは,「ブライトリング・マスターズ・オブ・エアロバティックス」(Breitling Masters of Aerobatics)との名称で,平成5年から平成7年までは,「ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックス」(Breitling World Cup of Aerobatics)との名称で,それぞれ開催された(乙46)。Mは,平成2年から,ブライトリング・マスターズを,平成4年から,ブライトリング・ワールドカップを,企画,開催した(乙24の2)。
(ウ) 日本においては,平成6年に,厚木において,ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックス・デモンストレーション・イベントが開催された(乙46)。また,平成7年に,兵庫県の但馬空港において,但馬空港フェスティバル実行委員会が,但馬空港フェスティバル’95の一環として,ブライトリング社及び日刊スポーツ新聞社の主催で,ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックスの最終戦を実施した(甲46,乙46)。
イ ブライトリング社の撤退と競技会の継続 (ア) ブライトリング社は,平成7年10月,翌年以降のブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックスのスポンサーから降りることを決定した。これに対して,国際航空連盟(FAI)は,同競技会の人気が高かったことから,発案者であるMを競技会のディレクターに任命して,曲技飛行の競技会を継続することとした(乙47)。また,国際航空連盟(FAI)の下部組織であるFAI International Aerobatics Comission(FAI国際エアロバティックス飛行委員会,CIVA)も,その会議において,競技会を継続していくこと,その競技会の名称は,ブライトリング社主催の名称とは異なる名称とすること,その実施をMに託することを採決し,Mを国際航空連盟(FAI)の平成8年のエアロバティックスシリーズのマネージャーに任命して,CIVAの代表として行動する全面的な権限を与えた(乙53)。
(イ) CIVAは,平成7年10月の時点においては,商標登録をするのに差し支えがあるとして,競技会の新名称については結論を出さなかった。同年11月,FAICIVAの会長は,Mに対して,「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」との名称の登録手続を行う旨を伝えた(乙49)。
(ウ) Mは,FAI及びCIVAから競技会のマネージャーに任命された後,平成8年には,上海において,エアロバティックスの競技会である「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS Airshow China」を開催した。これによって,「ブライトリング・ワールドカップ」を「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」として,継続したことを示している(乙68,69)。
ウ 但馬大会の準備 (ア) ブライトリング社は,平成7年の但馬での競技会を最後に,曲技飛行競技会から撤退した。しかし,同競技会に関与していたFは,その翌年の平成8年に,但馬において,エアロバティックス大会を開催することができるように,Mとの間で,ファックス等により,詳細の打ち合わせをしたことがあった。その際,Mは,Fにあてて,「Breitling World Cup of Aerobatics」(ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックス)との名称に代えて,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」との名称が公式に採択されたが,まだ国際航空連盟(FAI)及びFAI国際エアロバティックス飛行委員会(CIVA)によって公表されていない旨を書面で伝えている(乙55)。また,MがFにあてた書面のレターヘッドには「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」と記載されており,それ以降,Mが作成する書面のほとんどは,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」の表記がされている。原告は,当時,Fとともに,曲技飛行競技会に関する業務を行っていた。
(イ) その後,Fは,Mに対して,但馬大会の開催を実現するために,FAI WGPA Japan Delegation(以下,「FAI日本代表部」という場合がある。)を設置すること,及び自らが日本代表として活動できることが必要であることを伝え,Mは,最終的な契約を締結されることを条件として,これに同意した(乙46)。もっとも,Mは,Fに対し,FAI総会において,契約書を締結し,「World Grand Prix of Aerobatics」の銀行口座に,保証金の20万米ドルの金員が振りこまれない限り,FAI World Grand Prix of Aerobatics日本代表部を認めない旨も伝えている。
(ウ) 但馬大会における日本側の準備は,資金的な理由などから,必ずしも順調には進まなかった。
Mは,平成8年3月22日,但馬組織委員会及び日本代表部事務局長のFあてに,同年10月の但馬大会開催のための登録及び確定のため,FAI World Grand Prix of Aerobaticsの銀行口座に,同年3月31日までに,前渡金として10万米ドルを振り込むよう請求した(乙63)。
(エ) これに対して,原告が,FWGPA日本代表部のテクニカルアドバイザーとの肩書きで,同年3月28日,但馬空港フェスティバル実行委員会が,同年のFAI World Grand Prix of Aerobaticsを但馬において開催する申請を公式に行うこと,地元市議会が競技会に対し,25万米ドルを支払うための予算を承認したこと,10万米ドルについては,前渡金として,同年4月末までに所定の口座に振り込むこと等を回答した(乙26)。このころから,Mとの連絡は,Fではなく,専ら,原告が担当するようになった。なお,原告は,自ら,FWGPA日本代表部又はFWGPA JAPANテクニカルアドバイザーと称していた。
(オ) Mは,前記委員会会長に対し,同月22日,正式に登録でき次第,前記委員会に協力していくこと,FAI World Grand Prix of AerobaticsのDelegate(代理,代表)を原告とすること,原告は,FAI World Grand Prix of Aerobaticsと前記委員会との間の連絡員として,大いに役に立つこと,ただし,Mが署名した時のみ国際航空連盟(FAI)が責任を負うこと等を伝えている(乙27)。
原告は,同月30日,「マーケティング・サービスイズ代表X」名義で,Mの「World Grand Prix of Aerobatics」名義の口座に手付金10万米ドルを振り込んだ(乙67)。
エ 但馬大会,とよころ大会の開催 (ア) 平成8年10月25日から27日にかけて,兵庫県但馬空港において,「FAI World Grand Prix of Aerobatics in Tajima」との名称で,エアロバティックス競技会が開催された(甲3ないし9。以下,「但馬大会」という場合がある。)。但馬大会は,主管が国際航空連盟(FAI),主催が但馬空港フェスティバル実行委員会として開催された。原告は,必要な航空法上の許可を得る等,但馬大会開催のために必要な作業を行い,豊岡市から開催実施委託料の支払を約された(甲47)。しかし,原告は,豊岡市から,その支払を受けることができず,訴えを提起して,裁判上の和解により,支払を受けた。なお,但馬大会においては,その広告用のポスター,入場券,名札及び会場内通行証(甲3ないし7,9)等において,アエロバティックス及びAEROBATICSの標章並びにウイングマークが使用された。また,但馬大会に関する報道においても,但馬大会において行われた曲技飛行についてアエロバティックスと表記されていた(甲39ないし41)。もっとも,FWGPA-Jとの標章は使用されているが,FWGPAとの標章は使用されていない。
(イ) 平成9年8月9日及び10日には,北海道とよころ飛行場において,「FWGPA Official Exhibition 遠TONE音 with AEROBATICS」との名称で,エアロバティックス競技会が開催された(甲10。以下「とよころ大会」という。)。とよころ大会は,主管がFAI World Grand Prix of Aerobatics Head Officeとされ,また,同競技会のポスター(甲10)には,FWGPA-JAPAN DELEGATIONが共催する旨の記載がされているほか,裏面には,「アエロバティックスには,国際航空連盟(FAI)の公認する最高峰のFAI ワールド・グランプリ・オブ・アエロバティックス(FWGPA)があり,世界最高のパイロットによる競技会となりますが,今回の豊頃での演技は,この試技・エキシビションとなります。」と記載された。そして,とよころ大会に関する報道においても,とよころ大会において行われた曲技飛行について,アエロバティックスと表記されていた(甲43の1ないし3)。なお,とよころ大会開催に当たり必要となる施設等の使用承諾,及び航空法上の各種許可は,いずれも原告に対しされているが,原告の肩書きは,FWGPA-J(甲12,13),FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION(甲14),FWGPA JAPAN(甲15)などと付記されている。
オ 平成10年大会の開催 (ア) 被告は,平成8年ころから,ツインリンクもてぎサーキットにおいてエアロバティックス大会を開催することを検討し始め,同年8月6日には,被告のO課長とY主任(いずれも当時。以下同じ。)とが原告と面会し,また,同年10月14日には,Hと面会した。なお,その際,原告及びHの名刺には,「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」とされ,原告の肩書きは「TECHNICAL ADVISER/JAPAN DELEGATION」,Hの肩書きは,「PUBLIC AFFAIRS/JAPAN DELEGATION」とされていた(乙32の1ないし3)。
(イ) 平成9年8月ころ,原告は,Yらから,翌平成10年3月に予定されているツインリンクもてぎサーキットの開業祝典の一つとして曲技飛行競技会を開催したいので,そのための業務を実施してほしいとの依頼を受けた(争いがない。)。原告は,正規の飛行場ではないツインリンクもてぎサーキットにおいて曲技飛行競技会を開催できるように種々の航空法上の許可を得る作業を行い,原告名義で飛行場外での外国曲技専用航空機運航に関する許可等を得,その結果,同年3月26日から28日の間,同サーキットにおいて,被告主催の自動車レース’98FedEx.チャンピオンシップシリーズ第2戦Budweiser500の際に,曲技飛行競技が実施された(乙39)。もっとも,その際,FWGPAや「ウイングマーク」は,使用されなかった。なお,前記の許可取得の際の原告の肩書きは,FWGPA-J(甲16),FWGPA JAPAN(甲17),FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION(甲18,19)などとされていた。また,原告は,前記大会の終了を陸上自衛隊等に報告する際には,FWGPA-J日本代表との肩書きを使用した。
(ウ) 平成10年6月13及び14日に,ツインリンクもてぎサーキットにおいて全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第4戦が行われた際にエキシビションとして曲技飛行が行われたが,この際の各種許可等も原告名義で取得された。もっとも,その肩書きは,FWGPA-J(甲22),FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION(甲23ないし25)とされ,対日本代表部と記載されたものもあった。
(エ) その後,被告は,平成10年大会開催のため,平成10年9月15日,Mとの間で,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION PROMOTER AGREEMENT」と題する契約(以下「平成10年大会契約」という。)を締結した(乙5)。また,被告は,原告との間で,同年8月10日,「’98アエロバティックス日本グランプリ開催に関する覚書」(以下「平成10年大会覚書」という。)を締結し,原告に対し,大会開催準備・開催に至る実施報酬として4500万円を支払うことを約した。なお,平成10年大会覚書において,原告については,「国際航空連盟・曲技飛行部門FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS 日本代表部 X」と記載されており,原告も,自ら「FWGPAJ 対日本代表 X」と署名した(乙9)。
そして,被告は,平成10年10月,被告が管理するツインリンクもてぎサーキットにおいて,平成10年大会を開催した。その際,平成10年大会のポスターには,「FWGPA」,「アエロバティックス」及び「AEROBATICS」並びに「ウイングマーク」の標章が,いずれも使用された。
(オ) 平成10年大会に先立ち,同年7月31日に,MがFWGPAチーフエグゼクティブ(最高責任者)として提出した書類(乙33)では,原告について,日本のもてぎグランプリに関連したFAI World Grand Prix of Aerobatics/Aviation(FWGPA)のマネジメントチームの一員であることを認証し,その役割として,FWGPAのチーフエグゼクティブと主催者との間で交わされる契約における話合いと契約の署名に関する進行に携わり,契約が円滑に遂行されるように,主催者との良好な調整に関わるものであると記載され,それらの業務に関連して,原告は,管理上発生するすべての運送事項,運送,衣食住,規則に関する解釈や詳細などにおいて,もてぎグランプリの主催者である被告の業務をアシストする権限をFWGPAチーフエグゼクティブより付与されている旨記載されており,実際にも,原告は,Mと被告との契約に当たり,両者の間に入り,その締結に関与した。
(カ) 平成10年大会覚書においては,原告の業務として,平成10年大会を行うに当たり必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括,「FWGPA」,「C-1」等国際航空連盟(FAI)・曲技競技部固有の商標・意匠標章等知的財産権の管理,機材の輸送に関する手続等の統括,パイロットらの査証の取得,通信機器,音響機器等の設置監修,広報用素材の提供等,航空機運行保険契約の締結が挙げられている。そして,実際に,航空法上の各種許可はいずれも原告名義で取得されているが,その肩書きは,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION(甲27ないし29)などとされている。原告は,H及び外1名とともに,平成10年大会において,前記の業務を実施し,前記の業務の実施報酬として,被告から4500万円の支払を受けた。
(キ) 平成10年大会は,雑誌等で報道され,アエロバティックスとの表記が用いられている。
その後も,原告は,エアロバティックスを行うに当たり,各種許可を原告名義で取得したことがあったが,その申請の際の肩書きをFAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATIONとしていた(甲58ないし73)。また,許可証に付された肩書きは,FWGPA-J(甲30),FAI対日本代表(甲31),FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION(甲32ないし35)とされていた。
カ 平成11年大会の開催 (ア) 被告は,平成11年6月1日,Mとの間で,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION PROMOTER AGREEMENT」と題する契約(以下「平成11年大会契約」という。)を締結するとともに(乙6),原告との間で,「’99 アエロバティックス日本グランプリ開催に関する覚書」(以下「平成11年大会覚書」という。)を締結した。平成11年大会覚書には,原告に対し,大会開催準備・開催に至る実施報酬として,3000万円及び事業商権を1500万円相当を上限として支払う旨記載された。なお,上記覚書において,原告については,「国際航空連盟・曲技飛行部門FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS 日本代表部 X」と記載されており,「FWGPA-J事務局」との押印がなされている(乙10)。
(イ) 原告らは,平成11年大会においても,平成10年大会と同様の業務を行った。航空法上の許可についても原告名義で取得されたが,その肩書きは,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION(甲36)とされていた。なお,平成11年大会のポスターにおいても,「FWGPA」,「アエロバティックス」及び「AEROBATICS」,「ウイングマーク」の標章がいずれも使用され,雑誌等でも,アエロバティックスとの名称で報道された。
(2) 判断 以上認定した事実を基礎として,本件営業表示が,原告の行う役務(曲技飛行)を表示するものと認められるか否かについて判断する。
ア FWGPAの標章について (ア) 平成10年大会,平成11年大会及び但馬大会においては,国際航空連盟(FAI)及びFWGPAが大会を主管することが明示され,また,とよころ大会についても,国際航空連盟(FAI)の公認する競技会の試技・エキシビションとなるとの説明がされ,国際航空連盟(FAI)との関係を示唆する表記がされている。他方,平成10年大会,平成11年大会,但馬大会,及びとよころ大会において,その大会の主体が,原告であるとの表記が示されたことはない。
平成10年大会及び平成11年大会において,原告は,大会を実施するに当たって必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括等を業務として担当したが,大会の主管は,国際航空連盟(FAI)であり,主催者は被告である。
したがって,原告の担当した業務の内容に照らすならば,FWGPAの標章が,原告の役務を示す商品等表示となる余地はない。
(イ) のみならず,原告の主張は,以下の理由からも失当である。すなわち,FWGPAの標章は,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSとの名称のうち,FAI,WORLD,GRAND,PRIX及びAEROBATICSの各単語の頭文字を取って,短縮したものである。そして,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSは,スイスの会社であるブライトリング社の主催する「ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックス」が,主催して実施していた曲技飛行競技会について,国際航空連盟(FAI)が継続して実施する際の名称として付されたものである。
国際航空連盟(FAI)から同競技会のFAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSのDirector General(理事長)として任命されたMは,その作成する書面等で継続的にFAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSとの表示を使用している。
これに対して,原告は,自らをFWGPA JAPAN DELEGATION,FWGPA日本代表部などと,FWGPAに由来し,かつ,その日本支部を示す名称を使用していること,原告が一切関与していない中国における曲技飛行競技会においても,その契約書においてFAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSとの表示が用いられていること,平成10年大会覚書及び平成11年大会覚書には,FWGPAについて,国際航空連盟(FAI)・曲技競技部を示す標章等として扱われていること等を総合考慮すると,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」又は「FWGPA」の標章は,原告固有のものではないから,原告の商品等表示とはいえない。
イ AEROBATICS及びアエロバティックスの標章について (ア) 上記アと同様に,平成10年大会及び平成11年大会において,原告は,大会を行うに当たり必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括等を業務として行っているが,大会の主管は,FAIであり,主催者は被告である。
したがって,原告の担当した業務の内容に照らすならば,AEROBATICS及びアエロバティックスの標章が,原告の役務を示す商品等表示となる余地はない。
(イ) のみならず,原告の主張は,以下の理由からも失当である。すなわち,AEROBATICSとの名称は,一般に,曲技飛行又は曲技飛行術を意味し(甲55),平成7年に但馬で行われた但馬航空フェスティバルにおいても,「エアロバティックス」の名称が曲技飛行を指すものとして使われている(乙24の1,2,弁論の全趣旨)。
この点,原告は,アエロバティックスとの名称について,AEROBATICSの英語の発音はエアロバティクスであり,原告がこれをあえてアエロバティックスと表記した点に特徴があり,通常の使用方法とは異なる旨主張する。
しかし,AEROBATICSとの語をローマ字読みするとアエロバティックスとの称呼が生じること,アエロバティックスの標章から曲技飛行又は曲技飛行術が想起されることは十分に考えられこと等の点に照らすと,アエロバティックスとの表記が,特に,通常とは異なる使用方法であるということはできないから,アエロバティックスの標章が,曲技飛行という通常の使用方法を越えて,原告の実施する役務を表示する特別の名称であるとする余地もない。
ウ 「ウイングマーク」の標章について (ア) 原告は,自らが「ウイングマーク」を発案したものであり,したがって,「ウイングマーク」は原告の役務を表示するものである旨主張する。 しかし,上記アと同様に,平成10年大会及び平成11年大会において,原告は,大会を行うに当たり必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括等を業務として行っているが,大会の主管は,FAIであり,主催者は被告である。したがって,原告の担当した業務の内容に照らすならば,「ウイングマーク」の標章が,原告の役務を示す商品等表示となる余地はない。
(イ) また,原告の主張は,以下の理由からも失当である。すなわち,不正競争防止法2条1項1号における保護の対象となる商品等表示は,そもそも,原告の創作に係る表示であるか否かにより消長を来すものではないのみならず,本件全証拠によるも,「ウイングマーク」を原告において創作したものと認定することはできない。
すなわち,Mは,ブライトリング社から国際航空連盟(FAI)が引き続いて行う曲技飛行競技会の名称がFAI World Grand Prix of Aerobaticsとされたことを受けて,平成7年12月ころから,フランス空軍のマーク,地球,FAI旗(虹のデザイン),FAI及びWORLD GRAND PRIX OF AEROBATICSという文字を組み合わせた,曲技飛行競技会を示すロゴを作成することを検討した。Mは,建築家のジゼル・ベルジェール(以下「ベルジェール」という。)に依頼し(乙34,46,79ないし81),ベルジェールと平成8年4月19日に打合せを行い,ベルジェールからロゴ案(乙82)を受け取るとともに,ロゴのデザインについての指示を与え,さらにベルジェールと打合せを重ねた(乙46,70)。Mは,ベルジェールから,同年7月1日に,新しく工夫したロゴ案(乙83,84)を受け取り,同月末に,完成品の納品を受け,その後,デザイン料として,総額3000フランをベルジェールに支払った(乙70,73,74)。
原告は,平成8年5月19日,スイスのヌーシャテルにあるMの事務所を訪問した際,Mらの考案したロゴ案の写しを受け取った(乙46)。さらに,原告は,同年7月7日ころ,但馬大会の打合せのためにMの事務所を訪問し,Mの考案したロゴ案のコピーを受け取った(乙46)。原告は,「TAKE-1」社に対して,「ウイングマーク」のデジタル化を指示し,マークを完成させた(甲2の3ないし11)。もっとも,TAKE-1とのやりとりにおいて現れているマークと「ウイングマーク」とは,AEROBATICSの文字の位置や,月桂冠の有無とで異なり,「ウイングマーク」は,Mがベルジェールに依頼して作成したロゴと,AEROBATICSの文字の位置において類似する。 上記事実によれば,「ウイングマーク」は,そもそも,Mが考案したロゴに依拠して,これをわずかに改変して作成されたものであって,原告が作成したものということはできない。
(3) 結論 以上のとおり,FWGPA,AEROBATICS及びアエロバティックス,並びに「ウイングマーク」の標章は,いずれも原告の行う役務を表示するものと認めることはできないから,その余の点を判断するまでもなく不正競争防止法に基づく原告の主張は理由がない。
2 争点(2)(共同不法行為の成否)について 原告は,被告がHらと共同して,平成12年大会及び平成13年大会から,原告を排除し,これらの行為は共同不法行為に該当すると主張するので,この点について検討する。
(1) 事実認定 前掲各証拠によれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠はない。
ア 平成11年大会が終了した後,原,被告の間で,平成12年大会の開催に向けた打ち合わせをした。
ところが,被告は,平成12年3月13日ころ,Mから,平成12年大会についての日本における唯一の代理人としてH及びTを任命し,平成12年大会に関連する第三者とのすべての協定,合意又は契約は,MとHとの連帯の署名をもってのみ有効である旨記載された書面を受け取った(乙12)。さらに,被告は,同年5月31日にも,再度Mから,原告とMとの間にはもはや関係はなく,Hを日本における代表者と考えてほしい,グランプリに関するあらゆる合意はMとHとの両者の署名により,独占的に行わなければならないと内容の電子メールを受け取った(乙13)。
イ そこで,被告は, そのころ,Mとの間で,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION TRM AGREEMENT」と題する契約(平成12年大会契約)を締結するとともに(乙7),「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION マネージングディレクター」と称するHとの間で,平成12年6月25日,「’00エアロバティックス日本グランプリ開催に関する覚書」を作成し,Hに対し,大会開催準備・開催に至る実施報酬として,3000万円を支払う旨約した(乙11)。被告は,原告との契約をすることなく,平成12年大会を開催した。
ウ また,被告は,Mとの間で,平成13年3月5日,「FAI WORLD GRAND PRIX ORGANISER AGREEMENT Motegi,Japan」と題する契約(平成13年大会契約)を締結した(乙8)。被告は,原告又はHと覚書を締結することなく平成13年大会を開催した。この平成12年大会及び平成13年大会では,主管が国際航空連盟(FAI)及びFAI-WGPAとされている。
なお,平成12年大会及び平成13年大会において使用されたポスターでは,「アエロバティックス」及び「AEROBATICS」の表示は使用されたが,「FWGPA」の表示及び「ウイングマーク」は使用されていない。
エ 原告は,平成12年4月25日,Hが原告の事務所から管理を依頼されていた原告の通帳,印鑑その他の物品を持ち出し,現金を引き出す等の行為をしたとして,Hを業務上横領罪で豊平警察署長に対し告訴した(乙14)。
(2) 判断 以上認定した事実を基礎として判断する。
被告が平成12年大会及び13年大会について原告との間で契約を締結しなかったのは,Mから,原告とMとは関係がなくなり,Hを日本における代表者と扱うようにと指示されたからであり,このような事情に照らすならば,被告が,Mの指示に基づいて,Hとの間で契約を締結し,原告と契約を締結しなかったことに,故意又は過失があると解することはできず,したがって,原告に対する不法行為を構成するとはいえない。
よって,被告による共同不法行為に関する原告の主張は理由がない。
3 争点(4)(被告の原告に対する未払金の有無) 原告は,原告と被告は,被告が,原告に対し,平成11年大会開催に当たり,前記の名称表示や「ウイングマーク」使用許諾の対価等として合計4500万円を支払う旨約したが,被告は内金3000万円を支払ったのみで,残金1500万円の支払をしないこと,また,平成11年大会覚書において事業商権とされた1500万円相当については,後に現金で支払う旨の合意があったことを主張するので,この点を判断する。
(1) 事実認定 証拠(乙19ないし23,43ないし45)によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
ア 平成11年大会覚書においては,原,被告間で,被告が,原告に対し,大会開催準備・開催に至る実施報酬として,現金3000万円及び事業商権を1500万円相当を上限として支払う旨記載されている。このような定めにされたのは,以下のとおりの経緯によるものである。
イ 被告の担当者であったY課長(当時。以下同じ)は,Hに対して,平成11年2月5日,@曲技飛行競技会の採算が合わず予算が厳しいこと,A大会開催が2度目となり,コスト削減が可能であること,B平成10年大会では,原告側で業務を行ったのは3人であったが,平成11年大会では,原告側で業務を行ったのは原告とHの2名となること,C原告の支払額が,Mへの支払額よりも高額になるのは釣合いがとれないことなどを理由として,平成11年大会における実施報酬につき,4500万円から減額するよう要請した。しかし,原告側は,同月7日,一旦は,被告の要請を拒否した。同月11日,被告の予算会議において,1億円の予算の範囲内で開催し,費用がこれを越える場合には大会を取りやめると採決されたため,Y課長は,同月13日,Hに対して,@平成10年大会と同様にグランプリの格式を維持しつつコストを削減する,Aグランプリではなくエキシビションイベントに格下げしてコストを削減する,Bイベントを取りやめる,のいずれかの選択肢しかない旨を伝え,同月27日にも,3000万円しか支払えないことを伝えた。
ウ これに対し,Hは,被告に対して,平成11年3月1日,原告が,覚書の作成に当たり,現金を3000万円,事業商権1500万円とすること,事業商権の内容として,チケットのみの場合,6000万円分のチケットの交付を受けることを希望する旨対案を示して,回答を求めた。そして,同月3日,Y課長とHとの間で,覚書上,報酬については,現金を3000万円,事業商権については1500万円を上限とする旨の合意がなされた。そして,被告は,Hに対し,契約の履行として,ファミリーチケットを合計1000枚(600万円分)を送付した。
(2) 判断 上記認定した経緯を総合すれば,平成11年大会覚書において,1500万円相当を上限とする事業商権とされた報酬について,後日現金を支払う旨の合意がなされていたものと認めることはできない(なお,そもそも,乙1の覚書は,被告と,国際航空連盟・曲技飛行部門日本代表部との間に結ばれたものであり,原告が,被告に対し,上記覚書に基づく金銭を請求することができる性質のものとはいえない。)。
したがって,原告の,被告に対する,平成11年大会覚書に基づく報酬の支払請求には理由がない。
結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 今井弘晃
裁判官 神谷厚毅
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