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関連審決 審判1995-28124
関連ワード 商標登録 /  登録商標 /  需要者 /  他人の営業 /  類似性(類似) /  外観 /  観念 /  印象 /  混同のおそれ(混同) /  誤認混同 /  差止請求(差止) /  過失 /  逸失利益 /  ライセンス /  侵害 /  代理人 /  識別力 /  混同のおそれ(混同) /  営業誹謗行為(2条1項14号) /  品質等誤認表示(誤認) /  競争関係 /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  損害額 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 8年 (ワ) 20655号 損害賠償請求事件
原告 株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン
原告 株式会社サンライズ社
原告 西澤株式会社
原告三名訴訟代理人弁護士 佐藤雅巳
同復代理人弁護士 古木睦美
被告 東洋エンタープライズ株式会社
被告A
被告両名訴訟代理人弁護士 伊藤真
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/10/16
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
原告らの請求
1 被告らは,各自,原告西澤株式会社に対し,8000万円及びこれに対する平成8年10月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告東洋エンタープライズ株式会社は, (1) 原告株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパンに対し,1000万円及びこれに対する平成8年10月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 原告株式会社サンライズ社に対し,3000万円及びこれに対する平成8年10月29日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 当事者 原告株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン(以下「原告インディアン」という。)は皮革製品,衣料品,袋物,洋品雑貨等の輸出入及び販売等を,原告株式会社サンライズ社(以下「原告サンライズ」という。)は著作権の取得,譲渡,貸与,管理等を,原告西澤株式会社(以下「原告西澤」という。)は各種繊維原料及び繊維製品等の輸出入,卸売,仲介,代理等を,それぞれ目的とする株式会社である。
他方,被告東洋エンタープライズ株式会社(以下「被告東洋」という。)は繊維製品,化学製衣料品,雑貨類等の国内販売及び輸出入等を目的とする株式会社であり,被告Aは被告東洋の代表取締役である。
2 訴えの要旨 本件は,1950年代以前にアメリカ合衆国で人気を博したオートバイのメーカーに由来する,「インディアン」という名称のブランドの使用を巡る紛争である。
原告らは,@ 被告東洋の代表取締役である被告Aが,原告西澤の取引先及び原告サンライズのライセンシーである株式会社三竹産業(以下「三竹産業」という。)の取引先に別紙文書1を送付した各行為,並びに,A 被告東洋が,B名下に,いずれも原告サンライズのライセンシーである,(ア) 三竹産業に別紙文書2を,(イ) 株式会社元林(以下「元林」という。)に別紙文書3を,及び,(ウ) 兼松日産農林株式会社(以下「兼松日産農林」という。)に別紙文書4(以下,これらの各書面を,その番号に従い「文書1」などという。)を送付した各行為は,原告西澤との関係において,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽事実を告知し,又は流布する行為(不正競争防止法2条1項14号)に当たり,原告インディアン及び原告サンライズとの関係においては不法行為(民法709条)に当たると主張する。
その上で,原告西澤は,上記@について,被告Aに対し,不正競争行為を理由とする損害賠償を求めるとともに,被告東洋は代表取締役である被告Aの行為につき連帯して責任を負う(商法261条3項,78条2項,民法44条1項)と主張して,被告東洋に対しても損害賠償を求めている。また,上記Aについては,被告東洋に対し,不正競争行為ないし使用者責任(民法715条)を理由とする損害賠償を求めている。
原告インディアン及び原告サンライズは,上記@について,被告Aに対し,不法行為を理由とする損害賠償を求めるとともに,上記同様,被告東洋の連帯責任(商法261条3項,78条2項,民法44条1項)を主張して,被告東洋に対しても損害賠償を求めている。また,上記Aについては,被告東洋に対し,不法行為ないし使用者責任(民法715条)を理由とする損害賠償を求めている。
3 前提となる事実(当事者間に争いがないか,あるいは当該箇所に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 被告商標の出願及び登録 被告東洋は,平成3年11月5日,下記の商標を商標登録出願し,同商標は平成6年3月31日に商標登録された(乙11,12)。
したがって,被告東洋は,下記の商標権を有している(以下,この商標権を「被告商標権」といい,その登録商標を「被告商標」という。)。
出願年月日 平成3年11月5日 登録年月日 平成6年3月31日 登録番号 第2634277号 商品区分 平成3年政令第229号による改正前の商標法施行令 別表の商品区分第17類 指定商品 被服,その他本類に属する商品 登録商標 別紙「被告商標目録」記載のとおり (2) 原告商標の出願及び登録 原告インディアンは,平成4年2月6日に商標登録出願され,平成7年9月29日に商標登録された下記商標の商標権を有している(甲1,2。以下,この商標権を「原告商標権」といい,その登録商標を「原告商標」という。)。
出願年月日 平成4年2月6日 登録年月日 平成7年9月29日 登録番号 第2710099号 商品区分 平成3年政令第229号による改正前の商標法施行令 別表の商品区分第17類 指定商品 被服(運動用特殊被服を除く。),布製身回品(他の類に属するものを除く。),寝具類(寝台を除く。) 登録商標 別紙「原告商標目録」記載のとおり (3) 原告商標の出願経過 原告商標は,訴外Cが平成4年2月6日に出願したものであるが,平成5年9月,自然人であるCが法人を示す表記「Co.,Inc」を含む原告商標を用いることは,商標法4条1項7号に該当する旨の拒絶理由が通知された。これに対し,同年10月,Cから,当該出願については米国法人「Indian Motocycle Co.,Inc.」の了承を得ている旨の意見書が提出された。
また,原告商標については,平成6年2月,先願の前記被告商標と称呼が類似し,商標法4条1項11号に該当する旨の拒絶理由が通知された。これに対し,同年5月,Cから,原告商標からは「インディアンモトサイクルカンパニーインク」の称呼が生じるが,他方,被告商標からは「インディアンモーターサイクル」の称呼が生じるから,これらが類似するとはいえない旨の意見書が提出された。
上記の経過を経て,平成7年3月,原告商標につき登録査定がなされた。
(4) 原告インディアンの警告及び被告東洋の回答 原告インディアンは,原告商標が登録される前,平成7年6月30日付け「警告書」(乙6)において,被告東洋に対し,同被告による欧文字「インディアン」等の使用は,原告商標の商標登録により生じる商標権の侵害にあたり,同被告が上記使用行為を継続する場合には,民事・刑事上の責任を追及するつもりである旨通知した。
これに対し,被告東洋は,同年7月12日付け「回答書」(乙7)において,出願中の原告商標は,本来商標登録されるべきものでないと考えており,設定登録された場合には,直ちに無効審判を申し立てるつもりであるとともに,同被告の側でも,原告商標が被告商標権を侵害することを理由に,原告インディアンに対して法的措置を取る方針である旨を回答した。
(5) 原告標章の使用 原告インディアン及び原告サンライズは,被告東洋から上記「回答書」による警告を受けた後も,従前どおり,原告商標に関するライセンスビジネスを続けた。また,原告西澤も,別紙「原告標章目録」1及び2各記載の標章(以下,それぞれ「標章1」,「標章2」といい,これらを総称して「原告標章」という。)を襟ネームに付して使用した皮革製ジャケットを販売した(乙10及び弁論の全趣旨)。
(6) 原告商標の登録及び原告商標権の移転 平成7年9月29日,原告商標が商標登録された。
その後の平成7年10月16日,原告商標権は,Cから原告インディアンに譲渡され,平成8年5月27日,その旨の権利移転登録がされた。
(7) 原告商標の使用許諾等 ところで,原告インディアンは,出願の後商標登録に至るまでの間に,Cから原告商標の再許諾権限を含む使用許諾を受けており(弁論の全趣旨),同許諾に基づき,原告サンライズとの間で,原告商標の使用を第三者に許諾する再許諾権限を与える旨の契約を締結していた。
原告サンライズは,原告インディアンとの上記契約に基づき,原告商標につき,平成5年7月から,原告商標のサブライセンスを業として行い,原告西澤との間で,原告商標をジャケット等の商品に付して使用することを許諾する旨の契約を締結していた。また,三竹産業に対して原告商標を付した革ベルト,財布,キーホルダーの製造販売を,元林に対して原告商標を付したライターの製造販売を,兼松日産農林に対して原告商標を付したマッチの製造販売を,それぞれ許諾していた。
他方,原告西澤は,原告サンライズとの上記契約に基づき,平成7年5月から,原告商標を付した革製ジャケットを製造販売していた。
(8) 原告西澤と被告東洋の競争関係 原告西澤と被告東洋は,不正競争防止法上の「競争関係」(同法2条1項14号)にある。
(9) 原告サンライズによる文書配布 原告サンライズは,平成8年5月ころ,宛名を「関係各位様」とし,表題を「INDIAN MOTOCYCLEの商標について」とする同原告版権営業部D名下の同月16日付け文書(乙8)を,被告東洋の取引先を含む複数の会社に送付した。
同文書の中央下段には,原告商標が明示されている。本文においては,革製ジャンパー及び革製パンツの製造・販売に関して原告サンライズがサブライセンス契約を締結したのは原告西澤のみである旨の記載があり,さらに,「最近,当該商標に類似の商標を使用し革製のジャンパーやパンツを製造販売している他の第三者の企業がありますが,その様な企業に対しては,インディアン・モトサイクル・カンパニー・ジャパンより法的な訴えを起こしておりますので,展示や仕入れ及び販売など一切行わない様,お願い致します。もしその様なことがあれば,それを行った方に対しても同様の訴えを起こす事もありますので,ご理解ご了承下さい。」と記載されている。
また,原告サンライズは,平成8年6月ころ,宛名を「タローズハウス御中」とし,表題を「当社インディアン製品のご案内の件」とする同原告版権営業部部長代理D名下の同月3日付け文書(乙9)を送付した(なお,弁論の全趣旨によれば,上記「タローズハウス」は,原告西澤と同様,衣服類等の製造販売を行う業者であるものと認められる。)。
同文書においては,「当社は下記インディアン商標の所有権者である株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパンよりマスターライセンス許諾を受けて,自社での商品開発とサブライセンスをしております。サブライセンシーの(株)西澤では同封のカタログのようなインディアン製品を開発し,全国に販売しております。」との文章の下に,原告商標が明示され,さらにその下に,「最近,当方のインディアン製品の類似品が出回っており,この度,当社はこれら侵害品の製造元,問屋及び小売店に対し,東京地方裁判所に訴訟を提起いたしました。当社は当方のインディアン商標を守りながら,本物のインディアン製品をご提供すべく最善を尽くす所存でございます。」と文章が記載されている。
(10) 原告インディアンによる新聞広告 さらに,原告インディアンは,同原告名において,1996年(平成8年)7月22日付け繊研新聞に,「LEGEND RETURNS 伝説のブランド,復活。」という大見出しの下,中央に原告商標を配し,その右側に「現在のライセンシング状況」として,「〈マスターライセンシー〉株式会社サンライズ社」,「〈サブライセンシーおよび正規ディストリビューター〉西澤株式会社,株式会社三竹産業,株式会社元林,兼松日産農林株式会社」と記載され,さらに,下段に「右上に表記されておりますインディアン商標は,弊社の登録商標であります。最近,インディアン製品の類似品が出回っており,くれぐれもお取り扱いにご注意下さい。」と記載された広告(乙2)を掲載した。
(11) 被告Aによる文書1の配布 他方,被告Aは,平成8年7月,宛名を「御取引先各位 様」とし,表題を「商標:インディアンモーターサイクル/INDIAN MOTORCYCLE の件」とする同人名下の書面(文書1)を,原告西澤の取引先及び前記三竹産業の取引先に送付した。
文書1においては,「この度,インディアンモーターサイクル(INDIAN MOTORCYCLE)の商標を付した当社取引商品に関し,商標権侵害であるとする書面が,(株)サンライズ社より送られてきており,御取引先各位様には多大な御不安と御心配をおかけしているようであります。」との書き出しに続き,「当社は,商標『インディアンモーターサイクル』‥‥‥の正当な商標権者であり,発信人である(株)サンライズ社は勿論,何人であっても当社の承諾なく,商標『インディアンモーターサイクル』及びこれに類似する商標『INDIAN MOTORCYCLE』等を,衣料品等に付して販売することは出来ません。」との記載があり,さらに,「(株)サンライズ社や(株)西澤等は,当社の警告を無視して侵害を継続している」(以下「記載@」という。)ばかりか,「何等の権限もないサンライズ社(商標権者でも登録専用使用権者でもない。)名によって,当社関係先に対して脅迫に近い書面を発送する暴挙に及んだ」(以下「記載A」という。)ことは,「明らかに当社の業務を不法に侵害するものといわざるを得ません。」と記載されている。そして,「(株)サンライズ社が示す商標は,当社所有の商標権(平成6年3月31日登録)より後の登録(平成7年9月29日)であり,先願先登録が優先される法律(商標法)の下にあっては,当該商標の登録は明らかに過誤によるものであり,当然無効であります。」(以下「記載B」という。)との記載に続き,「当社と致しましては,今日まで事情を知らない代理店・販売店様に対しては,敢えて法的対応を控えてまいりましたが,当社の信用を損ねる先方のかかる行為に対しては,当社としても毅然とした態度をとらざるを得ないところであり,今後は当社所有の前記商標権を侵害する者に対しては,代理店又は小売店といえども,裁判の提起を含めた断固たる措置をとることと致しました。」と記載され,その上で,この件に関しては,「全面的に弊社の責任に於て対処し,御取引先各位様には,一切のご迷惑をお掛けしない所存で有りますので,御安心の上従来通りの御取引をお願い申し上げる次第です。」と結ばれている。
(12) 被告東洋による文書2〜4の配布 前記B弁護士は,被告東洋を代理して,平成8年8月2日,いずれも宛名を各社の代表取締役とし,表題を「ご連絡」とする同人名下の各書面(文書2〜4)を,前記の三竹産業(文書2),元林(文書3)及び兼松日産農林(文書4)にそれぞれ送付した。
これら3つの書面は,宛先が異なるほか記載内容は同一であるが,いずれも,「当職は,東洋エンタープライズ株式会社‥‥‥から委任を受けましたので,同社を代理して本書をお送りする次第です。」との書き出しに始まり,下段部分に欧文字筆記体「Indian Motocycle Co.,Inc.」を配した原告商標についての言及がされ,「一般に『Co.,Inc.』の英文字が法人を示す略号として用いられるものであることは公知の事実であり,下段主要部は『Indian Motocycle』の英文字ということになります。『Motocycle』という英単語は存しませんので,『Motorcycle』の誤記と理解され当社登録商標と同じ『インディアンモーターサイクル』の称呼が生じるものといえます。また,仮に英文字どおりに発音して『インディアンモトサイクル』の称呼が生じたとしても,当社登録商標と称呼において類似することは明かであります。」,「加えて,『Moto』は『Motor』の省略形として用いられるものですから,仮に上記のような誤記と理解しなかった場合でも,当社登録商標と同一の『インディアン(北米原住民)+モーターサイクル(オートバイ・自動二輪車)』が容易に観念されます。」,「従って,本件侵害商標は当社登録商標と称呼においても観念においても同一又は類似することが明かであります。」と,いわゆる類否の議論が説明された上で,原告商標が被告商標に類似する旨の結論が記載されている。そして,「本件登録商標については,株式会社 インディアン モトサイクル カンパニー ジャパンが有する商標である旨説明がなされているかと思いますが,同社の登録は当社登録商標の特許庁における登録がなされた平成6年3月31日より約1年半も後に登録されたものであり」,「先願先登録を優先する商標法上は,特許庁の過誤によりなされた無効な登録であること明かであります。」(以下「記載C」という。)との記載に引き続き,「かかる事情を承知の上で当社の商標権の侵害行為を継続している(株)サンライズ社,(株)西澤社等」(以下「記載D」という。)に対しては,「当社商標の使用差止並びに損害賠償請求の訴えを東京地方裁判所に提起致しております。」と記載されている。その上で,「以上の次第でございますので,本件侵害商標をはじめとして当社が商標権を有する『インディアンモーターサイクル』又はこれと類似する『INDIAN MOTOCYCLE』等の商標が付された衣料品等‥‥‥の製造・販売・宣伝等,商標の使用にあたる行為は一切行われないようお願い申し上げる次第です。」と記載され,「貴社がどのような商品に本件侵害商標をご使用になる予定であるのかは存じませんが,事情を知らないサブライセンシーやディストリビューターに対してまで法的対応をとることは当社の本意ではありませんので,本書をもって予めご注意申し上げることとした次第です。」,「当社の意をお汲み取り頂ければ幸甚です。」と結ばれている。
(13) 原告商標に対する無効審判の申立等 ア 被告東洋は,原告商標が商標登録されて間もない平成7年12月28日,原告商標につき無効審判(特許庁平成7年審判第28124号)を請求し,同審判において,原告商標権には,商標法4条1項7号,11号違反の無効事由が存在することなどを主張した。
特許庁は,平成10年4月10日,出願人のCが自然人である一方で,原告商標は法人名を表示したとしか認識し得ないものであるから,このような商標の使用は,法人でないものが「株式会社」や「有限会社」などの商号を使用することを禁止した商法や有限会社法の規定に該当し,商品流通社会の秩序に反するとともに,公共の利益を害するものというのが相当であるとして,原告商標は,商標法4条1項7号の規定に違反して登録されたものであると判断し,その登録を無効とする旨の審決(乙1)をした。
イ 原告インディアンは,上記審決に対して東京高等裁判所に取消訴訟(東京高裁平成10年(行ケ)第145号審決取消請求事件)を提起した。
ウ 東京高等裁判所は,平成11年4月14日,原告商標の文字部分である「Indian Motocycle Co.,Inc.」は,それ自体によっても,他の構成部分に照らしてみても,商法に基づいて設立された株式会社又は有限会社法に基づいて設立された有限会社を示すことが客観的に明らかであるとは到底言い難いから,Cによる原告商標の使用が,法人でないものによる「株式会社」や「有限会社」の商号の使用を禁じる法律の規定(商法18条1項及び有限会社法3条2項)に該当する旨の前記特許庁の判断は誤りであり,この誤った判断を前提にした商標法4条1項7号違反事由が存在する旨の判断も誤りであるとして,前記審決を取り消す旨の判決をした。
エ 被告東洋は,上記高裁判決に対して上告受理の申立(最高裁平成11年(行ヒ)第140号)をしたが,最高裁判所は,平成13年11月21日,上告不受理の決定をし,同判決は確定した。
(14) 原告商標権の無効の確定 ア 前記(13)の経緯を受けて,特許庁において,さらに前記無効審判請求事件の審理がされた。
特許庁は,平成14年2月28日,原告商標は,先願の被告商標(登録番号第2634277号)と少なくとも称呼において類似しており,電話等の口頭による取引が普通に行われている取引社会の実情からすると,外観及び観念を考慮しても,類似する商標といわざるを得ないから,原告商標は,商標法4条1項11号の規定に違反して登録されたものであるとして,その登録を無効とする旨の審決(乙13)をした。
イ 原告インディアンは,上記審決に対して東京高等裁判所に取消訴訟(東京高裁平成14年(行ケ)第140号審決取消請求事件)を提起し(甲7の1),同訴訟において,仮に原告商標と被告商標が称呼において類似するとしても,その類似性は低いものである上に,外観及び観念はいずれも相違しており,また,原告商標は同原告に係る被服等を表示するものとして周知であるから,原告商標をその指定商品について使用した場合,被告商標に係る商品と出所について混同を生じるおそれはないなどと主張した。
ウ 東京高等裁判所は,平成14年12月27日,@ 原告商標と被告商標は,称呼のみならず観念においても類似し,外観の相違も,称呼及び観念類似性をしのぐほどの格段の差異を取引者,需要者印象付けるものではないから,原告商標を指定商品に使用した場合,取引者,需要者において商品の出所を誤認混同するおそれがあり,したがって,原告商標は被告商標に類似する商標というべきである,A また,原告インディアン提出に係る多数の書証によっても,原告商標の登録査定時(平成7年3月30日)において,同原告が主張するように,原告商標が同原告に係る被服等を表示するものとして周知であったとまで認めることはできないとの判断を示し,原告商標が商標法4条1項11号に違反して登録されたものであるとの前記審決の判断に誤りはないとして,原告インディアンの請求を棄却する旨の判決(乙14)をした。
エ 原告インディアンは,上記高裁判決に対して上告受理の申立(最高裁平成15年(行ヒ)第73号)をしたが,最高裁判所は,平成15年6月12日,上告不受理の決定(乙15)をし,同判決は確定した。
(15) 被告商標の登録取消 なお,原告インディアンは,平成12年11月29日,商標法51条1項に基づき被告商標の登録を取り消す旨の審決を求めて,商標取消審判を請求した。
特許庁は,平成15年3月28日,被告商標の商標権者である被告東洋は,故意に,被告商標と類似し,かつ,原告商標とも類似する複数の商標を指定商品につき使用して,他人(原告インディアン)の業務に係る商品と混同を生じさせたというべきであるから,被告商標は上記条項により登録の取消を免れないとして,同商標の登録を取り消す旨の審決(甲17)をした。
被告東洋は,上記審決に対して東京高等裁判所に取消訴訟を提起し,同訴訟は現在も係属中である。
4 争点 (1) 文書1の記載@ないしB及び文書2〜4の記載C,Dは,それぞれ事実に反する虚偽のものといえるか(争点(1))。
(2) 仮に上記の記載@ないしDに虚偽のものがある場合,このような記載を含む文書1〜4を送付した被告らの各行為は,原告西澤との関係で,不正競争防止法上の「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」(同法2条1項14号)に該当するか。また,原告インディアン及び原告サンライズとの関係で,不法行為に該当するか(争点(2))。
(3) 原告らの損害額(争点(3))。
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(文書1の記載@ないしB及び文書2〜4の記載C,Dは,それぞれ事実に反する虚偽のものといえるか)について (原告らの主張) ア 原告らが被告商標権を侵害した事実はない。したがって,「(株)サンライズ社や(株)西澤等は,当社の警告を無視して侵害を継続している」との記載@,及び,「かかる事情を承知の上で当社の商標権の侵害行為を継続している(株)サンライズ社,(株)西澤社等」との記載Dは,いずれも事実に反する。
侵害品が販売されているときに,マスターライセンシーが,かかる侵害品の取り扱いをしないよう呼びかけるとともに,これに反したときは,訴えの提起もあり得ると伝えるのは正当な行為であり,そこには「脅迫に近い」要素などない。
したがって,被告Aが,原告サンライズによる前記乙8及び乙9の各文書の送付を指して,文書1において,「何等の権限もないサンライズ社(商標権者でも登録専用使用権者でもない。)名によって,当社関係先に対して脅迫に近い書面を発送する暴挙に及んだ」(記載A)と述べたのは,事実に反する記載であり,不法である。
ウ 原告商標は,特許庁の適正な審査を経て登録されたものであり,何ら無効原因は存しないし,そもそも,商標登録が本来的に無効などということはあり得ない。無効審判請求に基づき無効審決が出され,当該審決が確定して初めて商標登録は無効となる。また,先願主義の下にあっても,後願に無効事由があるのは,先願と後願が類似する場合に限り,かつ,先願に無効取消事由がない場合に限られる。
したがって,文書1における「(株)サンライズ社が示す商標は,当社所有の商標権(平成6年3月31日登録)より後の登録(平成7年9月29日)であり,先願先登録が優先される法律(商標法)の下にあっては,当該商標の登録は明らかに過誤によるものであり,当然無効であります」との記載B,及び,文書2〜4における「先願先登録を優先する商標法上は,特許庁の過誤によりなされた無効な登録であること明らかであります。」との記載Cは,いずれも事実に反している。
(被告らの主張) ア 原告らは,被告東洋が前記「回答書」(乙7。第2の3(4)参照)記載のとおりの警告を発したにもかかわらず,被告商標に類似する前記標章1及び標章2を襟ネームに付した皮革製ジャケットを販売し,被告商標権の侵害行為を継続した。
したがって,記載@及びDはいずれも真実である。
イ 原告サンライズは,商標権者でも専用使用権者でもなく,前記警告書面(乙8,9)を送付する権限を有するものではない。まして,乙8の作成日付け(平成8年5月16日)当時,まだ原告商標権の権利移転は登録されていなかったのだから,乙8における「インディアン・モトサイクル・カンパニー・ジャパンより法的な訴えを起こしております」との記載は,明白な虚偽である。このような書面の発送を「脅迫に近い書面を発送する暴挙」と評したのは,何らの不法もない客観的な評価であり,記載Aは事実を述べたものというべきである。
ウ 原告商標に無効原因が存すること(記載B及びC)については,原告商標の登録を無効とする旨の前記平成14年2月28日付け審決(乙13。第2の3(14)ア)が示すとおりである。
すなわち,同審決は,原告商標は,先願の被告商標(登録番号第2634277号)と少なくとも称呼において類似しており,取引社会の実情からすると,外観及び観念を考慮しても,類似する商標といわざるを得ないから,原告商標は,商標法4条1項11号の規定に違反して登録されたものであるとして,その登録を無効としたものであるが,この審決は,審決取消訴訟における東京高等裁判所の棄却判決(乙14)及び最高裁の上告不受理決定(乙15)を経て,既に確定している。したがって,原告商標が無効であることは明らかである。
また,記載Bに「当然無効」との記載があるのは,「無効」は「取消」と異なり,当初から当然に効力が生じないことが確定していることを説明するものであって,審判等の手続が一切不要であるとの趣旨ではない。このことは,文書1の文面上,「既に無効審判の請求をしている」との記載があることからも分かるはずである。
以上のとおり,記載B及びCは,事実に反するものではない。
2 争点(2)(仮に上記の記載@ないしDに虚偽のものがある場合,このような記載を含む文書1〜4を送付した行為は,原告西澤との関係で,不正競争行為に該当するか。また,原告インディアン及び原告サンライズとの関係で,不法行為に該当するか)について (原告らの主張) ア 文書1〜4における記載@ないしDが,いずれも客観的に虚偽の記載であることは,前記のとおりである。このような記載を含む書面を取引先に送付する行為が,被告東洋と競争関係にある原告西澤との関係において,その「営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」(不正競争防止法2条1項14号)に該当することは明らかである。
イ そもそも,被告らによる文書1〜4の送付行為は,原告らが企業努力により築いた「Indian」のネーム・ブランドへの只乗りを継続する目的から出たものである。被告らは,文書1の送付は,客観的な事実関係の説明のためと主張するが,そもそも,事実に反する記載をした文書が説明のための文書であるはずがなく,かかる主張は詭弁である。
被告Aは,被告東洋の代表取締役として,「インディアン(INDIAN)」なるブランドの使用を巡る紛争の経緯(第2,3(4)以下)を熟知しており,かつ,文書1〜4のような書面を取引先に送付する行為が,原告らに深刻な打撃を与えることを知っていたか,あるいは,少なくとも容易に知り得た。
また,文書2〜4の送付先は,被告商標の指定商品の範囲外の商品を扱っているところ,被告東洋は,送付先の三竹産業等がいかなる商品を扱っているか,原告インディアンからいかなる商品についてサブライセンスを受けていたかについて,知っていたか,あるいは,少なくとも容易に知り得た。
ウ 以上によれば,被告Aが文書1を送付した行為及び被告東洋が文書2〜4を送付した行為は,いずれも,原告サンライズ及び原告インディアンの営業上の信用を害して業務を妨害する違法性の高い行為であるとともに,文書1の送付については被告Aに,文書2〜4の送付については被告東洋に,それぞれ少なくとも過失が認められる。したがって,いずれの行為についても,不法行為が成立する。
(被告らの主張) ア そもそも,文書1は,原告サンライズが被告東洋の取引先に対して警告書面(乙8,9)を送付した(第2,3(9))ことに端を発し,客観的な事実関係を説明するため,被告らがいわば自衛手段としてその取引先に送付したものである。したがって,同書面の送付は正当な行為であり,原告らの営業を妨害する行為ではない。
イ また,被告東洋が文書2〜4を送付したのは,原告インディアンが行った繊研新聞上の広告(第2,3(10))に,三竹産業などの名前がサブライセンシー又は正規のディストリビューターとして掲載されていたことから,被告商標の登録番号などを明示した上,客観的な説明を試みようとしたからである。その内容も,無用な紛争を予防するための注意喚起であり,そのことは,同文書における,「『インディアンモーターサイクル』又はこれと類似する『INDIAN MOTOCYCLE』等の商標が付された衣料品等(商標法旧第17類に属する商品全般)の製造・販売・宣伝等,商標の使用にあたる行為は一切行われないようお願い申し上げる次第です。」,「貴社がどのような商品に本件侵害商標をご使用になる予定であるのかは存じませんが,事情を知らないサブライセンシーやディストリビューターに対してまで法的対応をとることは当社の本意ではありませんので,本書をもって予めご注意申し上げることとした次第です。当社の意をお汲み取りいただければ幸甚です。」との各記載に明瞭に示されている。同記載においては,禁止される行為の範囲が明確に限定されており,仮に,文書2〜4を受け取った会社が,そこに記載された以外の商品についてライセンスを受けているにすぎないのであれば,同書面が自社商品と無関係であることが容易にわかる体裁になっている。したがって,原告らが主張するような信用の毀損や業務の妨害などは起こりようがない。
ウ 原告らは,文書2〜4の送付先の3社について,これらの会社がいかなる商品についてサブライセンスを受けていたか,被告東洋は少なくとも容易に知り得たはずであると主張する。
しかし,これら3社と原告らとの間にどのようなサブライセンス契約が存在していたか,被告東洋において知り得るすべなどなく,また,多くの会社が多角化を目指し,従前取り扱った商品以外の商品の製造販売を開始している現状下においては,これら3社が,被告商標の指定商品に該当する商品の販売を企画することも十分に予測される。原告ら主張のように,具体的な商品の発売計画を確認した上で注意喚起の警告をしなければならないとすることは,望ましいことであるかも知れないが,それをしなかったからといって,非難される筋合いのものではない。
3 争点(3)(原告らの損害額)について (原告らの主張) ア 原告西澤の損害 @ 逸失利益 原告西澤は,平成7年から平成8年にかけての秋冬シーズンに,皮革製ジャケット及びパンツの販売を開始し,7429万2000円の利益(売上数量6667枚,売上高1億6527万円)を上げた。
平成8年から平成9年にかけての秋冬シーズンには,7184万4000円の利益(売上数量1万0270枚,売上高2億8866万5000円)を見込んだが,文書1〜4の配布により取引先が原告西澤の商品の取り扱いを拒んだため,1050万6000円(売上数量1735枚,売上高4322万9000円)の利益しか上げられなかった。
よって,その差額6133万8000円が原告西澤の逸失した利益である。
A 滞留在庫販売損 原告西澤は,前記のとおり,平成8年から平成9年にかけての秋冬シーズンに1万0270枚の売上を見込んでいたが,文書1〜4の配布により予定した販売ができなくなり,委託製造元からの輸入を4175枚に減らした。そのうち1735枚が売れたが,残りの2440枚は翌年以後に販売せざるを得なくなり,シーズン遅れのため値崩れを起こして,その結果,1608万4000円の損害を被った。
B 滞留在庫金利倉敷料 原告西澤は,前記2440枚の滞留在庫にかかる金利及び倉敷料(倉庫料)として,422万3000円の損害を被った。
C 信用毀損による損害 200万円。
D 小括 原告西澤は,上記@ないしCの合計8364万5000円の損害を被っているところ,その一部である8000万円を請求する。
イ 原告サンライズの損害 @ 売上減による逸失利益の損害 原告サンライズは,マスターライセンシーとして,予定小売価格の30%で商品を買い,40%で売り戻すことにより,25%の利益率{(小売価格の40%-同30%)÷同40%}を上げるバイセル方式に基づき,カット・アンド・ソー及びニット商品を販売する交渉に入り,平成8年秋から1年間の売上8000万円(小売価格合計2億円の40%),平成9年秋から1年間の売上1億2000万円(小売価格合計3億円の40%)の成約が確実になっていた。
しかるに,文書1〜4が配布された結果,平成8年秋から1年間は全く成約ができず,平成9年秋から1年間は小売価格合計で1億4000万円しか成約できなかった。このため,8000万円+6400万円(3億から1億4000万円を差し引いた1億6000万円の40%)=1億4400万円の売上減となり,その25%である3600万円の利益を失った。この3600万円から,原告インディアンにロイヤリティーとして支払う576万円(小売価格合計1億4400万円の4%)を差し引いた3024万円が,カット・アンド・ソー及びニットについての原告サンライズの損害である。
A ライセンス商品の売上減少から生じるロイヤリティー収入減による損害 原告サンライズは,下着等量販店,コンビニエンスストアー向けのインナーに関し,平成8年秋からの1年間で2億円,平成9年秋からの1年間で3億円,合計5億円(小売価格合計)の成約見込額を有していた。しかるに,文書1〜4が配布されたことにより,これらの商品の成約ができず,その5%(ロイヤリティーレート)に相当する2500万円のロイヤリティー収入を失った。
また,デニム,ブルゾン,帽子等についても,平成8年秋からの1年間で3億円,平成9年秋からの1年間で4億5000万円の小売価格合計7億5000万円の成約見込額を有していたが,前記各書面の配布により,これらの成約ができず,その5%に相当する3750万円のロイヤリティー収入を失った。
これらの合計額6250万円のうち,原告インディアンの取り分は35%であるから,残り65%に相当する4062万5000円が原告サンライズの被った損害ということになる。
B 原告西澤の売上減に伴う損害 原告サンライズは,原告西澤と,ロイヤリティーレート2.5%,ミニマム売上(小売価格ベース)保証付きの条件で,ライセンス契約を結んでいた。
ところが,文書1〜4の配布により,原告西澤の平成8年秋冬物の売上実績が予定を大幅に下回ったため,平成9年度から平成10年度にかけての秋冬シーズンにつき,ミニマム売上の保証額を6億8700万円から4億2500万円に,ロイヤリティーレートを2.5%から2%へとそれぞれ減額せざるを得ず,結局,1717万5000円(6億8700万円の2.5%)と850万円(4億2500万円の2%)の差額である867万5000円のロイヤリティー収入を失った。
そのうち,原告インディアンの取り分は35%であるから,原告サンライズは,残り65%に相当する563万8750円を損害として被ったことになる。
C 信用毀損による損害 200万円。
D 小括 原告サンライズは,上記@ないしCの合計7850万3750円の損害を被っているところ,その一部である3000万円を請求する。
ウ 原告インディアンの損害 原告インディアンは,原告サンライズからロイヤリティーとして受領すべきであった576万円(前記イ@記載),2187万5000円(同A記載。6250万円の35%)及び303万6250円(同B記載。867万5000円の35%),並びに,信用毀損による損害金200万円の合計金3267万1250円を損害として被っている。同原告は,その一部である1000万円を請求する。
(被告らの主張) 損害に関する原告らの上記主張は,いずれも争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)(記載@ないしDが,事実に反する虚偽のものといえるか)について (1) 記載@及びDについて 前記のとおり,文書1の記載@は,「(株)サンライズ社や(株)西澤等は,当社の警告を無視して侵害を継続している」というものであり(第2,3(11)),文書2〜4の記載Dは,「かかる事情を承知の上で当社の商標権の侵害行為を継続している(株)サンライズ社,(株)西澤社等」というものである(第2,3(12))。
原告らは,上記記載@及びDが事実に反する虚偽のものであることを前提に,不正競争行為ないし不法行為の成立を主張するところ,原告らが,被告東洋からの警告を受けた後も,原告商標に関するライセンスビジネス等を継続したこと(第2の3(5))については争いがないから,被告商標権が侵害されたことを内容とする記載@及びDの記載が虚偽であるか否かは,結局,原告らが標章1及び2を使用した行為が,被告商標を侵害する行為であるか否かに帰着することになる。そこで,以下,被告商標とこれら標章の類否について検討する。
被告商標は,別紙被告商標目録記載のとおり,片仮名横書きで一連に「インディアンモーターサイクル」と表記した構成からなり,そこからは,「インディアンモーターサイクル」の称呼が生じるとともに,「インディアン(北米原住民)+モーターサイクル(オートバイ・自動二輪車)」の観念が生じる。
他方,標章1は,欧文字筆記体「Indian」が大きく配され,その下段に前記「Indian」より幾分小さく細い字で欧文字活字体「MOTORCYCLE」の英文字が配された構成からなる。「Indian」と「MOTORCYCLE」の文字の大きさにそれほど違いがない上に,これらの文字は上下2段に近接して配され,横の長さもほぼ同じで,一体としてみることも可能であるから,標章1からは,「インディアン」のほか,「インディアンモーターサイクル」の称呼が生じ,また,「インディアン(北米原住民)」のほか,「インディアン(北米原住民)+モーターサイクル(オートバイ・自動二輪車)」の観念が生じる。
また,標章2は,長方形の中央部に欧文字筆記体「Indian」が大きく配され,その下段に「Indian」に比べるとかなり小さく細い字で欧文字筆記体「Indian Motorcycle Co.,Inc.」が,さらにその下段に欧文字活字体「MADE IN UNITED KINGDOM」が配された構成からなる。最下段の「MADE IN UNITD KINGDOM」は「英国製」という意味を示すのみで,識別力を持たない部分であり,下段の「Indian Motorcycle Co.,Inc.」のうち,「Co.,Inc.」の部分についても,一般に法人を示す略号であって商品の識別とは関係ない部分と認められるが,「Indian Motorcycle」の部分は,かなり小さな字体ではあるものの,横一連に表記されており,とりわけ大きな上段の「Indian」と同じ文字を含むことも相まって,標章全体の中で,無視し得ない印象を見る者に与えるということができる。そうすると,同標章からは,「インディアン」のほか,「インディアンモーターサイクル」の称呼が生じるとともに,「インディアン(北米原住民)」のほか,「インディアン(北米原住民)+モーターサイクル(オートバイ・自動二輪車)」の観念が生じるというべきである。
以上によれば,標章1及び2は,称呼及び観念において被告商標に類似しており,これら標章が欧文字で構成されている一方で被告商標は片仮名であり,外観上の違いはそもそもさほどの意味を持たないことなどを併せ考えると,これら標章は,いずれも被告商標に類似するものと認められる。
上記のとおり,標章1及び2が被告商標に類似すると認められる以上,原告らが被告東洋の警告を無視して被告商標権の侵害を継続した旨の記載@及びDが,事実に反する虚偽のものということはできない。
(2) 記載Aについて 前記のとおり,文書1の記載Aは,「何等の権限もないサンライズ社(商標権者でも登録専用使用権者でもない。)名によって,当社関係先に対して脅迫に近い書面を発送する暴挙に及んだ」というものであるが,この記載は,平成8年5月から6月にかけて,原告サンライズ社営業部部長代理D名下の文書(乙8,9)が被告東洋の取引先を含む数社に送付された(前記第2,3(9))ことを受けてなされたものである。そこで,記載Aの内容が虚偽であるかどうかを判断する前提として,まず,上記各文書の内容を検討する。
これらの文書には,第2,3(9)に摘示したとおり,「最近,当該商標に類似の商標を使用し革製のジャンパーやパンツを製造販売している他の第三者の企業がありますが,その様な企業に対しては,インディアン・モトサイクル・カンパニー・ジャパンより法的な訴えを起こしておりますので,展示や仕入れ及び販売など一切行わない様,お願い致します。もしその様なことがあれば,それを行った方に対しても同様の訴えを起こす事もありますので,ご理解ご了承下さい。」(乙8),「最近,当方のインディアン製品の類似品が出回っており,この度,当社はこれら侵害品の製造元,問屋及び小売店に対し,東京地方裁判所に訴訟を提起いたしました。当社は当方のインディアン商標を守りながら,本物のインディアン製品をご提供すべく最善を尽くす所存でございます。」(乙9)などの記載がある。
これらの各記載は,「ご理解ご了承下さい」,「最善を尽くす所存でございます」などと,それ自体は丁寧な表現・文体を用いている部分も存するが,素直に通読すれば,被告東洋の取引先を含む業者の中に,被告商標を使用するものがあれば,原告商標の商標権者として法的措置に訴える意思のあることを,明確に表示したものとみるのが自然である。しかも,前記第2,3記載の事実経過から明らかなとおり,出願人Cから原告インディアンに原告商標権が譲渡されたのが平成8年5月27日のことであり,乙8及び乙9を送付した時点においては,原告らはいまだ権利者ではなく,法的措置を取り得る状況になかったのであるから,上記各記載のうち,原告インディアンが東京地方裁判所に訴えを提起した旨の部分は,客観的事実に反するというほかない。原告らは,原告サンライズは,原告インディアンが権利の譲渡を受けて提訴の準備中であることを知っていたから,これらの文書が送付先で検討されるころには,原告インディアンにより訴えが提起されているであろうと予想して,このような記載をしたものである旨主張するが(平成12年12月25日付け準備書面(原告第6)6〜7頁),両者の本店所在地が同じであることなどからすれば,原告サンライズと原告インディアンは緊密な関係にあるものと推測されるところであり,この点からすれば,訴訟提起の有無及びその予定は,わずかな事実調査により,直ちに知り得たはずである。また,すでに訴訟の提起がなされたのと,これから提起することもあり得るというのでは,これら文書を読む者(取引先)に与える印象が異なるといわざるを得ない。
以上によれば,記載Aのうち,「何等の権限もないサンライズ社(商標権者でも登録専用使用権者でもない。)名によって」との部分が,事実に反する虚偽のものでないことは明らかである上に,上記のとおりの乙8及び乙9の各文書の記載内容・態様等に照らせば,被告らが,これら各文書の送付を指して,「脅迫に近い書面を発送する暴挙」と表現した部分についても,一概に,事実に反する虚偽のものということはできない。よって,記載Aが事実に反する虚偽のものであると認めることはできない。
(3) 記載B及びCについて 前記のとおり,文書1の記載Bは,「(株)サンライズ社が示す商標は,当社所有の商標権(平成6年3月31日登録)より後の登録(平成7年9月29日)であり,先願先登録が優先される法律(商標法)の下にあっては,当該商標の登録は明らかに過誤によるものであり,当然無効であります。」というものであり(第2,3(11)),文書2〜4の記載Cは,原告商標を指して,「先願先登録を優先する商標法上は,特許庁の過誤によりなされた無効な登録であること明かであります。」というものである(第2,3(12))。
原告らが指摘するとおり,いったん登録された商標権は,しかるべき手続を経て無効であることが確定するまでは有効な権利として尊重されるべきものである。その意味において,上記の各記載は,当該部分だけをみると,表現にいささか穏当を欠く面がないではない。
しかしながら,記載B及びCの前後をみると,文書2〜4においては,これらの記載のほか,「弊社において既に特許庁に無効審判の請求をしております。」との記載も存する。そうすると,これらの書面は,全体としてみると,何らの手続も要せずに無条件に原告商標権が無効になることを記載したものではなく,無効審判等の手続を経て無効になるべきものである旨を説明したものと,受け取ることができる。また,原告商標からは「インディアンモトサイクル」(及び「インディアン」)の称呼が,被告商標からは「インディアンモーターサイクル」の称呼がそれぞれ生じるところ,これらの称呼は類似するといわざるを得ず,電話等による口頭の取引も少なくない実情にかんがみると,原告商標と被告商標は類似すると認められるから,原告商標は,先願の被告商標との関係で,商標法4条1項11号に違反して登録された無効なものというほかない。そのことは,特許庁が,原告商標は先願の被告商標と少なくとも称呼において類似し,電話等による口頭の取引も少なくない取引社会の実情からすると,外観及び観念を考慮しても,類似する商標といわざるを得ないとして,その登録を無効とする旨の審決をしたこと,そして,この審決が,審決取消訴訟における東京高等裁判所の棄却判決(乙14)及び最高裁の上告不受理決定(乙15)を経て,既に確定していることに照らしても,明らかというべきである。
以上によれば,記載B及びCが,事実に反する虚偽のものということはできない。
2 結論 以上のとおり,記載@〜Dは,いずれも事実に反する虚偽の記載であるとは認められない。
したがって,被告東洋の代表取締役である被告Aが,原告西澤及び三竹産業の各取引先に文書1を送付した各行為,並びに,被告東洋が,同被告代理人弁護士伊藤真名下に,(ア) 三竹産業に文書2を,(イ) 元林に文書3を,及び,(ウ) 兼松日産農林に文書4を送付した各行為が,原告西澤との関係において,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽事実を告知し,又は流布する行為(不正競争防止法2条1項14号)に当たるということはできない。また,原告インディアン及び原告サンライズとの関係において,不法行為(民法709条)に当たるということもできない。
そうすると,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 青木孝之
裁判官 吉川泉
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