• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  需要者 /  商品等表示 /  類似性(類似) /  混同のおそれ(混同) /  誤認混同 /  商品の形態(商品形態) /  差止請求(差止) /  代理人 /  代表者 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 15年 (ネ) 2104号 不正競争行為差止等請求控訴事件
控訴人 株式会社クラスター・アキ
同訴訟代理人弁護士 寺内從道
被控訴人 サンキ眼鏡株式会社
同訴訟代理人弁護士 鈴木和夫
同 鈴木きほ
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/09/29
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,原判決別紙商品等表示目録(2)記載の眼鏡レンズを使用した眼鏡を譲渡し,引き渡し,譲渡もしくは引渡しのために展示し,又は輸出してはならない。
(3) 被控訴人は,被控訴人の所持する原判決別紙商品等表示目録(2)記載の眼鏡レンズを使用した眼鏡を廃棄せよ。
(4) 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成14年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(6) 仮執行宣言 2 被控訴人 主文同旨
事案の概要
1 本件は,眼鏡類一式の販売等を目的とする控訴人会社が,眼鏡等の卸販売等を目的とする被控訴人会社に対し,被控訴人は,控訴人の周知な商品等表示である原判決別紙商品等表示目録(1)記載の眼鏡レンズ(以下「本件レンズ」という。)に類似する同商品等表示目録(2)記載の眼鏡レンズ(以下「イ号レンズ」という。)を使用した眼鏡を販売し,控訴人の商品と混同を生じさせている旨主張して,不正競争防止法2条1項1号,3条,4条に基づき,イ号レンズを使用した眼鏡の譲渡等の差止め及びその廃棄を求めるとともに,損害金合計8000万円の内金1000万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成14年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,控訴人の本訴請求をいずれも棄却したのに対し,控訴人はその取消しを求めて本件控訴を提起した。
2 本件の争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり当審における追加的な主張の要点を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点及び当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決2頁12行目の「特定されているどうか。」を「特定されているかどうか。」と,14行目の「認められるどうか。」を「認められるかどうか。」と,16行目の「類似しているどうか。」を「類似しているかどうか。」とそれぞれ訂正し,同3頁14行目の「明らかであり,」の次に「本件レンズの形態は,」を,21行目から22行目にかけての「周知の技術であり,」の次に「そのようなカットが施された眼鏡レンズは,」をそれぞれ加え,同4頁3行目から4行目にかけての「需要者は限られた消費者及びその取引者を対象にして判断すれば足りる。」を「そのような高級品の消費者及び取引者という限られた需要者層を対象として周知性を判断すれば足りる。」と,同5頁6行目の「類似」を「同一又は類似」とそれぞれ訂正する。)。
3 当審における控訴人の追加的な主張の要点 (1) 本件レンズの周知商品等表示性について ア 原判決は,本件レンズ以外の「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」の具体例として,「@1988年(昭和63年)2月11日に公開されたDE 3626905 A1 ドイツ公開特許公報に記載されたレンズ(乙7,17),A遅くとも平成6年10月には販売されていた株式会社ポラリスジャパンのFacetタイプのレンズ(乙9ないし13,17),B昭和57年9月から有限会社めがねレンズ工房で行われていたスリムカットによって加工されたレンズ(乙14,15,17,検乙1,2)がある。」とするが,誤りである。
すなわち,上記@のレンズは,レンズ円縁部の裏面のみのカットではなく,周縁部の表面から裏面にかけて周縁部の形状に合わせてテーパー状のカット部を設けたにすぎず,本件レンズの有する「レンズを正面方向から見るとき多面カットの一部が他の部分より暗色調の色または着色レンズではその色が濃く現出し,レンズの周縁を際立たせ,かつレンズを薄く見せるので使用者のルックスを向上させることができ,また多面カットであるのでレンズを異なる位置から見てもいずれかの多面カットが色を現出することになる等の効果」(甲10)が生じないし,このレンズが日本国内で販売されたこともない。上記Aのレンズも,裏面カットではなく,単にレンズの表面から裏面にかけて種々の形態にカットしたにすぎず,上記効果が生じないし,フレームがあるように見せるためにレンズの側面に溝を入れてそこに色彩を塗るだけであるから,本件レンズと全く形態が異なる。このことは,控訴人が入手した株式会社ポラリスジャパン製レンズ(検甲3)からも明らかである。上記Bのレンズは,単に顧客の指示に合わせてレンズをカットする業者により作成されたレンズにすぎないから,このような形態のレンズが継続的に製造販売されているわけではない。
イ 原判決は,「原告が主張する商品等表示は「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」という抽象度の高いもので,それ以上にカットの方法や数等を特定しているわけではないし,また,そのような製品を製造することに特段技術的な問題などの難しい点があるとも認められない。さらに,原告が販売を開始する以前から,上記形態のレンズは知られており,原告による販売開始後も,上記形態のレンズは,他社からも販売されるなどしていた。そうすると,上記形態のレンズは,形態それ自体としては,格別特徴的なものとは認められない。」と判示するが,これは誤りである。
すなわち,@本件レンズは,レンズの表面はそのままにして裏面のみに多面カット部を設けたという他に類を見ない独特のものであって,その形態により前記作用効果を有するものである。控訴人は,昭和58年に控訴人が本件レンズの販売を開始してから,平成12年ころに被控訴人がこれに類似する形態のイ号レンズの販売を開始するまでの約17年間の長期間にわたり,継続的かつ独占的に上記形態のレンズの製造販売を行ってきたものである。Aこのように,本件レンズの形態は画期的なものであるから,前記のように商品等表示を特定すればこれで十分であり,決して抽象度の高いものということはできない。B本件レンズの形態は多くの工夫により生み出されたものであるし,そもそも,技術的な難易度は,商品等表示性とは無関係である。
ウ さらに,原判決は,「原告の本件レンズは,発売当初に眼鏡専門誌に数回広告されただけで,それ以外には外商催事等に際して小売店が広告した事実が認められるのみであり,しかも,外商催事等においては原告の眼鏡のみが販売されるものではない。本件レンズを使用した眼鏡の販売量は昭和63年から毎年500ないし1300程度にすぎず,最も販売量の多かった平成6年でも2587であって,全国の一般的な眼鏡販売量からすれば,販売量は極めて少ないといわざるを得ない。」として,結局,「原告の本件レンズが,原告の商品等表示として,一般消費者に広く認識されていたと認める余地はなく,眼鏡業界の取引業者(卸売業者,小売業者)についても,広く認識されていたとまでは認められない。」とするが,誤りである。
すなわち,@前記のとおり,本件レンズは,長期間継続的かつ独占的に控訴人の商品に使用されてきたものであるから,その形態の周知商品等表示性の判断に際して,宣伝活動や営業活動の規模の大きさは必ずしも重視されるべきではない。A本件レンズのような高級品については,販売量が少なくとも周知性が認められるべきである。B本件レンズは,一般のレンズとは異なった独特の形態であり,優れた意匠性,ファッション性を有するものであるから,小売店の店頭で本件レンズを使用した眼鏡を見ただけの顧客や,本件レンズを使用した眼鏡の着用者を目にしたにすぎない者等,実際に本件レンズを使用した眼鏡を購入した者以外の者でも,必ず本件レンズを認識するはずであるので,本件レンズの販売量のみに基づいて周知性を判断すべきではない。C本件レンズを使用した眼鏡は,レンズカット方法及びレンズ止め方法の2か所について特許権を取得したという過去に例がないものであるから,当然周知性がある。D同業他社も,本件レンズの周知性を認めている。Eそもそも,周知性の程度は,必ずしも高度でなくても足り,類似商品等表示が使用された場合に混同が生じるか否かの観点から柔軟に判断すべきである。以上の諸事情を考慮すれば,本件レンズの周知商品等表示性は優に認められる。
(2) 本件レンズとイ号レンズの類似,混同について 原判決は,「仮に本件レンズが原告の商品等表示として眼鏡業界の取引業者(卸売業者,小売業者)に広く認識されていたということができるとしても,原告は「クラスターアキ」又は「CLUSTER AKI」の標章を使用しているのに対し,被告は「S.Pro-logue」又は「エス・プロローグ」の標章を使用していること,原告のレンズも被告のレンズも完成した眼鏡として販売されているところ,原告の眼鏡は,レンズの上部にフレームが設けられているのに対し,被告の眼鏡は,レンズの周りにフレームはなく,各レンズにつき2個のビスで止めてあるのみであること,以上の事実が認められるから,通常商品の違いを注意深く観察するものと考えられる取引業者が原告の商品と被告の商品を誤認混同するとは認められない。」とするが,誤りである。
すなわち,本件レンズは,フレームとは別個独立に,控訴人の商品等表示として需要者広く認識されているものであるから,誤認混同の有無についてもレンズのみについて判断すべきであり,そうすれば,本件レンズとイ号レンズとの間に誤認混同が生じることは明らかである。また,被控訴人が独自の標章を付してイ号レンズを使用した眼鏡を販売しているとしても,イ号レンズが用いられていれば,需要者は,控訴人と被控訴人とが系列関係にあると誤認するおそれがある(広義の混同)。
4 当審における被控訴人の追加的な主張の要点 (1) 本件レンズの周知商品等表示性を否定した原判決の判断は正当である。
控訴人は,原判決が本件レンズと同様の形態のものとして挙げたレンズについて,本件レンズの形態との差異を主張するが,いずれも些細なものにすぎない。また,控訴人は,原判決の挙げた有限会社めがねレンズ工房でのスリムカットによって加工されたレンズについて,単に顧客の指示に合わせてカットされたものであるにすぎない旨主張するが,これは被控訴人が同社から既に作成済みのレンズを借りてきたのであって,被控訴人の指示により作成されたものではない。さらに,我が国における眼鏡小売市場は,平成7年ないし12年において,年間5600ないし6000億円程度の大規模な取引市場であるから(乙19),控訴人による本件レンズを使用した眼鏡の販売量は,僅少であるといわざるを得ない。
(2) 本件レンズとイ号レンズとの混同を否定した原判決の判断は正当である。
控訴人が販売する本件レンズを用いた眼鏡は,大型の眼鏡レンズの上部内側に段差を設け,この段差にフレームをはめ込み,さらにフレームとレンズをねじ止めしているもので,極めて特殊な形態である。これに対し,被控訴人が販売するイ号レンズを用いた眼鏡は,レンズの周囲にフレームを用いず,「つる」とレンズを各2個のビスで止めるのみであり,小型レンズの裏面周辺部を縁に沿って緩やかにカットすることにより,あたかもフレームが存在するように見えるものである。
したがって,両者は全く形態を異にするから,需要者が両者を混同することはない。
当裁判所の判断
1 認定事実 当裁判所の認定した事実は,次のとおり補正付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の「1 認定事実」のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決6頁4行目冒頭から22行目末尾までを「(1) 控訴人会社代表者は,昭和58年にレンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ及び同レンズ専用のフレームを開発し,その意匠及び考案につき有限会社メガネサロン橋本(同社は平成3年10月に組織変更及び商号変更に伴い控訴人会社となった。)において意匠権(昭和62年11月17日登録第726565号)及び実用新案権(平成元年12月25日登録第1800573号,平成2年7月11日登録第1822196号)を取得した(甲1,2,10,47,弁論の全趣旨)。上記意匠権の意匠は原判決別紙図面(1)記載のものに極めて類似の意匠であり,上記前者の実用新案権の実用新案登録請求の範囲は,「眼鏡レンズの外形を多角形に形成すると共に,レンズの周縁部の裏面に,隣接する小面の方向を変えて多面かつト部を設けたことを特徴とする眼鏡レンズ。」であり,上記後者の実用新案権は「眼鏡フレームと眼鏡レンズの締結構造の改良」に関するものである。」と改める。
(2) 同6頁23行目の「昭和58年」を「昭和59年ころ」と改め,同末行の「56,」の次に「検甲1」を加える。
(3) 同7頁24行目の「300社」を削る。
なお,控訴人は,「@ドイツ公開特許公報に記載されたレンズは,レンズ円縁部の裏面のみのカットではなく,周縁部の表面から裏面にかけて周縁部の形状に合わせてテーパー状のカット部を設けたにすぎず,本件レンズ特有の作用効果が生じないし,このレンズが日本国内で販売されたこともない。A株式会社ポラリスジャパンのFacetタイプのレンズも,裏面カットではなく,単にレンズの表面から裏面にかけて数々の形態にカットしたにすぎず,上記効果が生じないし,フレームがあるように見せるためにレンズの側面に溝を入れてそこに色彩を塗るだけであるから,本件レンズと全く形態が異なる。B有限会社めがねレンズ工房で行われていたスリムカットによって加工されたレンズは,単に顧客の指示に合わせてレンズをカットする業者により作成されたレンズにすぎないから,このような形態のレンズが継続的に製造販売されているわけではない。」旨主張する。
しかしながら,上記@のレンズについては,証拠(乙7,17)によれば,これが「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」の形態を有することが認められる(仮に,控訴人の主張するように,これが上記形態と多少形態を異にするものであったとしても,その差異は極めて些細なものにすぎないから,少なくともこれが上記形態のレンズに極めて類似するものであることは明らかである。)。確かに,上記レンズが日本国内で販売されたことを認めるに足りる証拠はないが,そうであっても,これを,本件レンズの形態が独特の特徴を有するか否かの判断の上で参酌することは許されるというべきである。なお,商品等表示周知性の有無の判断に当たり,控訴人主張の作用効果の有無は関係がなく,その対象にはならないというべきである。上記Aのレンズについても,証拠(乙9ないし13,17)によれば,これが上記形態を有するレンズであることが認められる(少なくともこれが上記形態のレンズに極めて類似するものであることが明らかなことは,上記@のレンズと同様である。)。控訴人は,眼鏡小売店である株式会社イワキ新宿京王店では本件レンズと同じ形態のレンズを使用した株式会社ポラリスジャパン製眼鏡を販売していなかった旨の陳述記載のある控訴人代理人作成の報告書(甲61)及び上記店舗で入手した眼鏡(検甲3)を提出してこの点を争うが,特定の店舗において上記形態のレンズと同じ形態のレンズを使用した株式会社ポラリスジャパン製眼鏡を販売していなかったとしても,そのことは上記認定の事実と矛盾するものではないから,上記認定を左右するものでない。上記Bのレンズについては,証拠(乙15)によれば,むしろこのレンズが継続的に販売されていることが認められる。したがって,控訴人の前記主張はいずれも理由がない。
2 争点(1)ないし(3)について (1) 商品の形態は,必ずしも商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが,他の商品と識別し得る独特の特徴を有し,かつ,長期間継続的かつ独占的に特定の営業主体の商品に使用されるか,又は短期間でも強力に宣伝されたような場合などには,商品等表示として需要者の間に広く認識されることがあり得るというべきである。そこで,原判決別紙商品等表示目録(1)の(2),(3)記載の「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」が控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されていたかどうかについて検討する。
(2) まず,上記目録の(2)記載のレンズについては,この具体的な形態のレンズがどの程度の数量販売されたか,また,それについての宣伝広告がどの程度されたかを認めるに足りる的確な証拠はないから,これが控訴人の商品等表示として,一般消費者及び眼鏡業界の取引業者(卸売業者,小売業者)等の需要者の間に広く認識されていたとは認められない。
(3) 次に,上記目録の(3)記載のレンズについて検討すると,控訴人が主張する商品等表示は,「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」というものであり,それ以上に具体的なカットの方法や数等を特定しているわけではないから,具体的な形態としては多数の眼鏡レンズが含まれる筋合いであり,その意味で,抽象度が高く,元来商品等表示周知性の認定には困難を伴うといわざるを得ない。
また,前記認定のとおり,控訴人が原判決別紙図面(2)記載のレンズ等の販売を開始する以前から,「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」(ないしこれに極めて類似したレンズ)は既に周知となっており,控訴人による上記販売開始後も,このような形態の眼鏡レンズ(ないしこれに極めて類似したレンズ)は,他社からも販売されるなどしていたものである。
これらの事情を考慮すると,「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」は,格別特徴的な形態を有するものとは認められない。
なお,控訴人は,「昭和58年に控訴人が本件レンズの販売を開始して以来,平成12年ころに被控訴人がこれに類似する形態のイ号レンズの販売を開始するまでの約17年間の長期間にわたり,控訴人は,継続的かつ独占的に上記形態のレンズの製造販売を行ってきたものである。このように,本件レンズの形態は画期的なものであるから,前記のように商品等表示を特定すればこれで十分であり,決して抽象度の高いものということはできない。」旨主張する。しかしながら,前記認定事実に照らせば,「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」(ないしこれに極めて類似したレンズ)を控訴人のみが独占的に製造販売してきた事実は認められないから,控訴人の上記主張はその前提を欠き理由がない。
(4) 前記認定のとおり,控訴人は,昭和59年ころ以来,原判決別紙図面(2)記載のレンズを含む約50種類の「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」を使用した眼鏡の製造販売を行ってきているが,これが独占的なものでないことは上記のとおりであるし,控訴人による上記レンズを使用した眼鏡の販売量は,平成6年を除き,昭和63年以降毎年500ないし1300本程度にすぎず,最も販売量の多かった平成6年でも2587本であって,我が国における眼鏡市場の規模(なお,証拠(乙19)によれば,平成7ないし12年における我が国の眼鏡小売市場の規模は,年間5600ないし6000億円程度であることが認められる。)に照らせば,上記販売量はごく少量にとどまるものというべきである。
また,前記認定のとおり,控訴人の製造販売する上記形態のレンズは,発売当初に眼鏡専門誌に数回広告されただけで,それ以外には外商催事等に際して小売店が広告した事実が認められるのみであり,しかも,外商催事等においては控訴人の眼鏡のみが販売されるものではないから,上記形態のレンズについての宣伝広告活動は限定されたものといわざるを得ない(外商催事に際しては,控訴人の眼鏡が売上額の40パーセントないし45パーセント又は50パーセント以上を占める旨記載された陳述書又は事情聴取書(甲48,49の1・2,50,51)が存するが,控訴人の眼鏡の上記販売量からすると,これらの記載は直ちに信用することができず,これらの記載が事実であったとしても,それは一部の小売店についての記載であると考えざるを得ない。)。
(5) 以上の事実からすると,控訴人による昭和59年ころからの上記形態のレンズについての営業活動を十分考慮しても,原判決別紙商品等表示目録(1)の(3)記載の「レンズの周縁部の裏面に隣接する小面の方向を変えて多面カット部を設けた眼鏡レンズ」が控訴人の商品等表示として,一般消費者及び眼鏡業界の取引業者(卸売業者,小売業者)等の需要者の間に広く認識されていたとは認められない(これに反する陳述記載(甲18ないし45,49の1・2,50)は,根拠に乏しく採用することができない。)。
(6) これに対し,控訴人は,「控訴人の眼鏡は高級品であるので,需要者は限られた消費者であるから,その販売量が少なくとも周知性が認められるべきである。」旨主張し,控訴人代表者の陳述書(甲48,58)には,控訴人の上記レンズは,フレーム付きで14万円以上であるので,価格の高い高級品であり,販売量によって判断すべきではない旨の記載がある。
しかしながら,証拠(甲3,16,55)によれば,昭和62年当時,控訴人の上記レンズは,小売価格がフレーム付きで3万6000円のものがあったこと,被控訴人は平成8年に控訴人から単価2万6000円で控訴人の上記レンズを買い受けたことがあったこと,現在でも卸売価格は,フレーム2万2000円,ノーマルレンズ及び中・高屈折レンズのカット料金1万4000円,累進・二重焦点レンズのカット料金1万6000円,平面ハードマルチコートレンズのサングラス2万9000円であること,以上の事実が認められる。このようなそれほど高額とはいいがたい価格のものが含まれる商品を,需要者が極めて限定された高級品として,わずかの販売量でも周知性が認定できるものということは到底できない。また,前記のとおり,控訴人の製造販売する前記形態のレンズは,その販売量が極めて少ないのみならず,格別特徴的な形態を有するものではなく,この形態のレンズを控訴人のみが独占的に製造販売してきたわけでもなく,それについての宣伝広告活動も限定されたものというのであるから,これらの事情を総合すると,上記レンズの価格帯が通常の眼鏡よりもある程度高いものであることを十分考慮しても,前記結論を左右するものではない。したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
また,控訴人は,「@前記のとおり,本件レンズは,長期間継続的かつ独占的に控訴人の商品に使用されてきたものであるから,その形態の周知商品等表示性の判断に際して,宣伝活動や営業活動の規模の大きさは必ずしも重視されるべきではない。A本件レンズは,一般のレンズとは異なった独特の形態であり,優れた意匠性,ファッション性を有するものであるから,小売店の店頭で本件レンズを使用した眼鏡を見ただけの顧客等,実際に本件レンズを使用した眼鏡を購入した者以外の者でも,必ず本件レンズを認識するはずであるので,本件レンズの販売量のみに基づいて周知性を判断すべきではない。B本件レンズを使用した眼鏡は,レンズカット方法及びレンズ止め方法の2か所について特許権を取得したという過去に例がないものであるから,当然周知性がある。C同業他社も,本件レンズの周知性を認めている。Dそもそも,周知性の程度は,必ずしも高度でなくても足り,類似商品等表示が使用された場合に混同が生じるか否かの観点から柔軟に判断すべきである。以上の事情を考慮すれば,本件レンズの周知商品等表示性は優に認められる。」旨主張する。
しかしながら,上記@Aについては,前記のとおり,前記形態のレンズを控訴人のみが独占的に製造販売してきたものということはできず,また,上記形態のレンズは格別特徴的な形態を有するものでもないから,上記主張はその前提を欠き理由がない。上記BCについては,そのような事実があったとしても,前判示の事情を総合すれば,前記結論を左右するものではない。上記Dについては,一般論自体はそのとおりであるが,前記結論はそのような観点からの検討を経た上でのものである。したがって,控訴人の上記主張はいずれも理由がない。
3 結論 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,控訴人の被控訴人に対する本訴請求はいずれも理由がない。よって,同請求をいずれも棄却すべきものとした原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 北山元章
裁判官 青蜉]
裁判官 沖中康人
  • この表をプリントする