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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ワ14527損害賠償等請求事件 平成18ワ15947マニュアル使用差止請求事件 判例 不正競争防止法
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平成14ワ3162損害賠償等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 印象 /  記憶 /  差止請求(差止) /  過失 /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  営業秘密 /  2条1項4号 /  2条1項7号 /  営業誹謗行為(2条1項14号) /  保有者 /  不正取得行為 /  品質等誤認表示(誤認) /  競争関係 /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  損害額 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 15年 (ネ) 1791号 営業秘密使用差止等,損害賠償請求控訴事件
控訴人 和興商事株式会社
訴訟代理人弁護士 田辺信彦
同 加野理代
被控訴人 A
被控訴人 株式会社ラディクス
両名訴訟代理人弁護士 伊藤芳朗
同 山枡幸文
被控訴人 有限会社ミライコーポレーション
被控訴人 有限会社ヤマダパッケージ
両名訴訟代理人弁護士 田中千草
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/09/29
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人らは,原判決別紙目録1,2及び9記載の文書を使用してはならない。
3 被控訴人らは,前項記載の各文書を廃棄せよ。
4 被控訴人Aは,控訴人に対し,1406万3860円及びこれに対する平成12年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人株式会社ラディクスは,控訴人に対し,1500万円及びこれに対する平成12年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被控訴人有限会社ミライコーポレーションは,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成12年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被控訴人有限会社ヤマダパッケージは,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成12年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 被控訴人ラディクスの控訴人に対する請求を棄却する。
9 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
事案の概要
控訴人は,食肉包装用ネット等の包装資材の輸入,卸売販売等を主たる目的とする会社である。被控訴人A(以下「被控訴人A」という。)は,もと控訴人の代表取締役であった者であり,被控訴人株式会社ラディクス(以下「被控訴人ラディクス」という。)は,被控訴人Aが控訴人を退社後に設立した会社である。被控訴人ラディクス,被控訴人有限会社ミライコーポレーション(以下「被控訴人ミライ」という。)及び被控訴人ヤマダパッケージ(以下「被控訴人ヤマダ」という。)は,控訴人と同種の事業を目的とする会社である。
原審甲事件において,控訴人は,被控訴人Aが在職中控訴人の営業秘密である本件情報1ないし9(原判決別紙目録〔以下「別紙目録」という。〕1ないし9記載の各文書に記載された情報)を不正取得行為により取得し,被控訴人ラディクス,同ミライ及び同ヤマダがこれを利用して営業活動を行っていると主張して,被控訴人らに対し,被控訴人Aについては,不正競争防止法2条1項4号に基づき,その余の被控訴人らについては,同項5号ないし7号に基づき,別紙目録1,2及び9記載の文書の使用差止めを求め,同法5条1項に基づき,別紙目録1ないし9記載の文書の不正取得行為及び不正取得行為により取得した上記営業秘密の使用を理由に損害賠償を求める(第1請求)とともに,被控訴人Aが自動車の架空リース契約名下に控訴人から金員を詐取したとして,同被控訴人に対し,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を求めている(第2請求)。
原審乙事件において,被控訴人ラディクスは,控訴人が被控訴人ラディクスの取引先に対して,同被控訴人の販売する食肉包装用ネットにはカビが生えやすい旨を告知し,その旨記載した文書等を配布したことは,競争関係にある被控訴人ラディクスの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,流布する不正競争に当たるとして,控訴人に対し,不正競争防止法2条1項14号,4条に基づき,損害賠償を求めている。
原審は,原審甲事件について,本件情報1ないし3,7及び8は,秘密として管理されていたとは認められず,本件情報4ないし6及び9は,秘密として管理されていたと認められるが,被控訴人Aの不正取得行為を認めることはできず,そうである以上,その余の被控訴人らの不正競争は成立せず,また,被控訴人Aに詐取の事実は認められないとして,第1請求及び第2請求をいずれも棄却し,原審乙事件について,控訴人の被控訴人ラディクスに対する不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争を認め,損害賠償請求の一部を認容した。
当事者の主張は,次のとおり当審における主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」及び「第3 争点に関する当事者の主張」のとおりである(ただし,原判決5頁3行目の「12のの」を「12の」に改める。)から,これを引用する。
1 控訴人の主張 (1) 甲事件第1請求について ア 本件情報1ないし3,7及び8の秘密管理性 本件情報1について,控訴人は,関連会社を含め従業員数が16名,うち営業担当従業員が7名という小さな会社であり,本件情報1の機密性に関するBの注意は当然営業担当従業員以外の従業員にも認識されていたこと,本件情報1が就業規則において守秘義務を課せられるべき営業秘密であること,本件情報1が控訴人の営業活動の基礎となる重要な情報である一方で,その性質上日々の営業において頻繁に使用されるものであり,その使用の便宜と秘密管理とのバランス,必ずしもそれが保管されていた営業担当従業員の机に施錠が必要とまではいえないことなどを考慮すれば,控訴人においては,そのアクセスは制限されていたと認められるし,また,その保管者以外の者も,営業秘密であることが認識できる状態にあったというべきである。
本件情報2について,控訴人の会社の規模及び同情報が控訴人の業務上使用頻度の高いものであったことなどを考慮すれば,控訴人においては,そのアクセスは制限されていたと認められ,また,その保管者以外の者も,営業秘密であることが認識できる状態にあったというべきである。
本件情報3,7及び8についても,控訴人の会社の規模を考慮すれば,控訴人においては,そのアクセスは制限されていたと認められ,また,その保管者以外の者も,営業秘密であることが認識できる状態にあったというべきである。 イ 被控訴人Aの不正取得行為 被控訴人Aが本件各情報を控訴人から窃取したことは,被控訴人ラディクスらが本件各情報を使用して営業活動等を行っていることから明らかである。
また,被控訴人Aは,控訴人の業務の電子化,効率化のために「データイータ」を購入した旨主張しているが,当該機械は他のコンピュータとの接続ができず,専用のプリンターを用いなければ読み取らせたデータの印刷もできないなど,全く所期の目的を達していない。しかも,当該機械はその記憶媒体にMDを使用しているが,平成9年当時,控訴人において,MDを記憶媒体とした機械は全く使用しておらず,当該機械と控訴人が使用していた機械との間に互換性がないことは,被控訴人Aが当該機械を購入する前から明らかであった。したがって,被控訴人Aが,控訴人の業務の電子化,効率化を目的としたのであれば,このような機械を購入することはあり得ず,その目的は,本件各情報を窃取するためというほかはあり得ない。
ウ 被控訴人らの共謀ないし共同関係の存否 被控訴人Aが,控訴人から取得した本件各情報を被控訴人ラディクスのみならず,被控訴人ミライ及び同ヤマダに対しても開示したこと,そして被控訴人ミライ及び同ヤマダはこれを使用した上,被控訴人ラディクスと共謀ないし共同して営業を行ったことは,被控訴人ミライの設立の経緯,展示会における食肉用ネットのチラシ(甲22),ポリネットの安全性に関する文書(甲47),倉庫業者との業務委託契約及び「受注書/出荷指示書」(甲35,36),Cの営業活動及び被控訴人Aによる控訴人取引先の被控訴人ヤマダへの付け替えの事実等により明らかである。
(2) 甲事件第2請求について 原判決は,被控訴人Aが,従前と同じく社用車を個人で購入し,これに対して控訴人が車両費を支払うこととしたいとBに対して相談したところ,Bからリース形式であればよいとの回答を得たと認定したが,控訴人は,社用車をホンダリース等からのリースによって賄っていたのであり,上記認定はあり得ない。
被控訴人Aは,「たまたま手近にあった」湘南リース申込書(甲15)を利用したと主張し,原判決もこれに沿う認定をしたが,控訴人と湘南リースとの間には全く取引がなかったのであるから(甲16),このような申込書がたまたま手近にあったなどということはあり得ない。
控訴人から湘南商事名義の口座に対する自動送金の手続については,自動送金依頼書(甲24)が用いられているところ,被控訴人Aが湘南リースが湘南信用金庫の子会社であることからリース料は湘南信用金庫に送金すると述べていたこと,上記自動送金依頼書の振込先銀行はいずれも湘南信用金庫とされていたこと,受取人は湘南商事と記載されていたが,湘南リースと同じ「湘南」との名称が使用されていたことから,Bは,湘南リースに対するリース料の送金依頼であると誤認していたのであり,湘南商事を偽装した被控訴人Aに対する送金であることを承認していたことはない。
被控訴人Aは,当初,控訴人を本件車両の名義人にしたのは株式会社ホンダクリオ新東京(以下「ホンダクリオ」という。)の過誤であり,その後ホンダクリオに依頼して名義人を同社に変更してもらったと述べているが,控訴人からホンダクリオへの名義変更は移転登録として行われており,これを行うためには控訴人からホンダクリオへの譲渡証明書が必要となるはずである。したがって,リースという外見を整えるためだけにホンダクリオへの名義変更が行われることはあり得ない。しかも,リース申込書は湘南リースあてになっているにもかかわらず,名義人をホンダクリオにしたのでは,税務対策上何の意味もないことは明らかである。税務対策上リースを利用するというのであれば,控訴人が被控訴人Aからリースを受けてこれを湘南リースからのリースに偽装するという方法を採らなくとも,控訴人がリース会社からリースを受ければ足りるはずである。なお,そもそもリースを利用することは,何らの税務対策にもならない(甲52)。
以上のとおり,被控訴人Aが自動車の架空リース契約名下に控訴人から金員を詐取したことは明らかである。
(3) 乙事件について ア 控訴人の行為について 控訴人が本件告知文書(原審における併合前の乙事件の甲3)等を作成したのは,あくまで被控訴人ラディクスの行為によって失墜させられてしまったジェットネットに対する信用を回復するとともに,食肉用ネット全体に対する衛生管理の重要性に対する注意を喚起しようとする趣旨に出たものであり,何ら被控訴人ラディクスに対する誹謗や中傷を意図したものではない。この点につき,原判決は,平成11年夏ころまでに被控訴人ラディクスが食肉用ネット市場においてそのシェアを伸ばしてきたことから,控訴人がこれに対抗するために本件告知文書等を作成したかのように認定しているが,被控訴人ラディクスの虚偽事実告知について重大な事実誤認がある。
本件告知文書に記載された内容は,いずれもジェットネットの安全性の高さと食肉用ネットの衛生管理等に関する一般的な事実に触れたものにすぎず,被控訴人ラディクスやデリネットに直接言及した部分などは存在しないし,それを想起させるような表現もされていない。
本件写真(甲39)を含む試験報告書(原審における併合前の乙事件の乙1)は,デリネットであっても,一定の条件のもとではカビが生えることもあるということを実験の結果によって明らかにしたものにすぎず,それ以上にデリネットにはカビが生えやすいなどと述べたものではない。そして,デリネットであっても,カビが生えることがあるというのは真実であるから,本件写真は,デリネットについて虚偽の事実を告知ないし流布するものではない。なお,控訴人がデリネットを実験に用いたのは,デリネットには芽胞菌の心配がなく,衛生的に安全であると広く宣伝されていたからであり,そのようなデリネットでさえ,一定の条件の下ではカビが生えること,したがって,食肉用ネットの衛生管理には十分注意する必要があることを取引先等に告知する必要があったからである。その上で,ジェットネットは衛生管理に十分な配慮がされており,安全性が高いということを認識してもらおうとしたにすぎない。
控訴人は,被控訴人ラディクスの取引先に対して本件告知文書等を配布するとともに,その趣旨を説明しているが,その際には,本件告知文書の記載に関連して,デリネットが,衛生管理の不十分な工場で製造されたり,再加工糸を使用していたり,ポリ糸に有毒なオイルを使用していたりといった,衛生的に問題のある食肉用ネットであるなどと説明したことはない。また,本件写真を提示するに際しては,デリネットであってもカビが生えることがあること,これに対し,ジェットネットでは非常に厳格な衛生管理が行われており,また滅菌処理も行われていることから,そのような心配はないとの説明を行ったにすぎず,デリネットにはカビが生えやすいとか,衛生的に危険であるなどといった説明は一切していない。
以上のとおり,控訴人は,被控訴人ラディクスの虚偽事実告知によって侵害されたジェットネットの安全性に対する信頼を回復するために,本件告知文書等の配布を行ったものであり,本件告知文書等の内容に虚偽は存在しないし,その配布に際しての説明も適切な内容にとどまっているのであるから,控訴人の行為は,デリネットに関する虚偽事実を告知し,流布するものではない。
イ 被控訴人ラディクスの損害について 仮に,控訴人に不正競争が認められるとしても,被控訴人ラディクスの売上の減少がそのまま損害となることはあり得ない。食肉用ネット販売における利益は,粗利益でも売上の20%程度,経常利益であれば売上の1〜2%程度にしかならない。したがって,被控訴人ラディクスの売上の減少額が500万円であれば,現実の同社の損害額は5〜10万円程度であり,被控訴人ラディクスに3900万円の売上減少があったと仮定しても,それによって生じた損害は,その2%の78万円にすぎない。
信用毀損による損害についても,上記営業上の損害との割合から15万円程度が相当である。
過失相殺の主張 仮に,控訴人に不正競争が認められるとしても,控訴人がこのような行為に出たのは,被控訴人ラディクスによる虚偽事実告知が存在したからであり,控訴人は,被控訴人ラディクスへの対抗上やむを得ず上記行為を行ったものにすぎない。また,控訴人による上記行為後も,被控訴人ラディクスは,ジェットネットにカビが生えた写真を付した「JETNET5LNS12 カビ試験報告」(甲60)を控訴人の取引先に回覧したり,デリネットとジェットネットの比較表(甲61)を作成し,その中でジェットネットが使用している糸は強度が弱く,切れやすいため,不良品の発生率が高くなるなどと記載して,これを,控訴人の取引先に配布し,ジェットネットに対する信用を毀損する行為に出ている。これらの点に照らせば,被控訴人ラディクスには,本件損害の発生につき過失が存在するというべきである。そして,これらの各行為が,競業者間における相互の営業活動の応酬という性質を有することにかんがみれば,被控訴人ラディクスの過失は5割を下回ることはなく,損害額について,少なくとも5割の過失相殺がされるべきである。
2 被控訴人ラディクス及び同Aの反論 (1) 甲事件第1請求について ア 本件情報1ないし3,7及び8の秘密管理性について 控訴人の会社の規模及びその従業員数は認めるが,これらの事実は秘密管理性とは無関係である。本件情報1ないし3,7及び8について,控訴人においてそのアクセスが制限され,その保管者以外の者も営業秘密であることが認識できる状態にあったとする主張は争う。
イ 被控訴人Aの不正取得行為について 互換性を求める場合とは,手書きをそのまま画像データとして保存するような機器ではなく,文書データとして保存するような機器であるが,「データイータ」は,手書きのメモが散逸するので,手書きの文書をスキャナーで読み込み,画像データとして保存するものであるから,そもそも他のOA機器との互換性は最初から求めていない。
ウ 被控訴人らの共謀ないし共同関係の存否について 控訴人の主張は争う。
(2) 甲事件第2請求について 自動送金依頼書に控訴人の訂正印があることから,湘南商事名義の口座への月々の自動送金により被控訴人Aが車両費を受け取ることについて,契約締結時に控訴人代表者であるBの了承を得ていたことは明らかである。
(3) 乙事件について ア 控訴人の行為について 一定の条件の下でカビが生えることもあるということを明らかにする実験であったならば,控訴人は自社商品を実験台にすれば済むはずである。ところが,控訴人は,当該実験に被控訴人ラディクスの商品であるデリネットを用い,わざわざデリネットであることを明示している。これは,明らかに被控訴人ラディクスの商品に対する虚偽事実の告知に当たる。
イ 被控訴人ラディクスの損害について 控訴人の主張は争う。
過失相殺の主張について 甲60は,正に控訴人による虚偽事実の告知に対する釈明のために配布したものであり,何ら問題はない。ジェットネットの試験を行った動機も「多くの皆様から先方のネットについても同様の試験をすべきであるとの御意見をいただきました」(甲60の1頁)と明記され,控訴人からの攻撃に対するものであることが明らかである。また,末尾(同3頁)にも,「私たちは,この試験の結果をもって同社のネットを批難するつもりはありません」と断っており,本件が控訴人のジェットネットに対する攻撃にならないような配慮までされ,控訴人が行った虚偽の告知文書及びその宣伝行動とは大いに異なっている。
甲61のデリネットとジェットネットの比較表については,特定の取引先から比較表の作成を頼まれたものにすぎず,控訴人の商品ジェットネットに対する信用を毀損する目的で作成したものでもなければ,不特定の者に配布した事実もない。比較表の内容も,両製品についての客観的事実を羅列しただけであって真実であり,控訴人の商品ジェットネットに対する信用を不当に毀損するものではない。
3 被控訴人ミライ及び同ヤマダの反論 控訴人の甲事件第1請求についての主張は争う。
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の被控訴人らに対する甲事件第1請求及び被控訴人Aに対する甲事件第2請求は,いずれも失当として棄却すべきであり,被控訴人ラディクスの控訴人に対する乙事件請求は,原判決の認容した限度において理由があり,これを正当として認容すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正,付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正 (1) 原判決48頁9行目ないし10行目の「読み取られせた」を「読み取らせた」に改める。
(2) 同53頁17行目から56頁16行目までを削り,同頁17行目の「(3)」を「3」に改める。
(3) 同57頁22行目ないし23行目の「自動送金依頼書(甲24)」を「自動送金依頼書(甲24,乙12,13)中,平成6年4月8日付けのもの(甲24の1枚目,乙12)及び同年7月7日付けのもの(甲24の2枚目,乙13)」に改める。
(4) 同58頁23行目の「行為には」を「行為に」,26行目の「に関する」を「の」に改め,同「乙1,2,」の次に「38,」を加える。
2 控訴人の当審における主張に対する判断 (1) 甲事件第1請求について ア 本件情報1ないし3,7及び8の秘密管理性について 控訴人は,本件情報1について,控訴人が関連会社を含め従業員数が16名,うち営業担当従業員が7名という小さな会社であり,本件情報1の機密性に関するBの注意は当然営業担当従業員以外の従業員にも認識されていたこと,本件情報1が就業規則において守秘義務を課せられるべき営業秘密であること,本件情報1が控訴人の営業活動の基礎となる重要な情報である一方で,その性質上日々の営業において頻繁に使用されるものであり,その使用の便宜と秘密管理とのバランスなどを,本件情報2について,控訴人の会社の規模,情報の使用頻度を,本件情報3,7及び8について,控訴人の会社の規模を,それぞれ考慮すれば,秘密管理性が肯定されると主張し,控訴人主張の,控訴人の会社の規模及びその従業員数は,控訴人と被控訴人ラディクス及び同Aとの間に争いがない。しかしながら,不正競争防止法2条4項所定の秘密管理性が肯定されるためには,@書類に「部外秘」と記載するなど,当該情報にアクセスした者にこれが営業秘密であることを認識できるようにしていること,A当該情報にアクセスできる者が制限されていることが必要であることは,上記(原判決43頁第4段落)のとおりである。そして,本件情報1ないし3,7及び8の管理の状態は,上記認定(本件情報1につき同38頁下から第2段落〜39頁第2段落,同2につき同頁下から第3段落〜40頁第1段落,同3につき同頁第2段落〜第3段落,同7につき同42頁第2段落〜第3段落,同8につき同頁第4段落〜第5段落)のとおりであり,控訴人主張に係る控訴人の会社の規模,就業規則,情報の重要性及び使用頻度等を考慮しても,いずれも保管者以外の者に営業秘密であることを認識できるような措置が採られていたと認めることはできず,また,これらの情報にアクセスできる者が制限されていたと認めることもできない。したがって,本件情報1ないし3,7及び8について,不正競争防止法2条4項所定の秘密管理性を肯定することはできない。
イ 被控訴人Aの不正取得行為について 控訴人は,被控訴人Aが本件各情報を控訴人から窃取したことは被控訴人ラディクスらが本件各情報を使用して営業活動等を行っていることから明らかであると主張する。しかしながら,被控訴人ラディクスらの営業活動から,被控訴人Aの本件情報1,2及び9の不正取得行為を認めることができないことは,上記説示(原判決48頁最終段落〜53頁第2段落)のとおりであり,控訴人が当審で提出した証拠によっても,上記認定を左右しない。
また,控訴人は,「データイータ」と控訴人が使用していた機械との間に互換性がないことは購入前から明らかであり,被控訴人Aがこれを購入した目的は本件各情報を窃取するためというほかはあり得ないと主張するが,同主張は,控訴人の主観的な疑いの域を出ないものというほかなく,被控訴人Aが「データイータ」に本件各情報を読み込ませたとの事実を認めることはできないことは,上記説示(原判決47頁第4段落〜48頁第3段落)のとおりである。
ウ 以上のとおり,本件情報1ないし3,7及び8について,不正競争防止法2条4項所定の秘密管理性を肯定することはできず,また,被控訴人Aの本件情報1,2及び9の不正取得行為を認めることができないから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の被控訴人らに対する甲事件第1請求は理由がない。
なお,控訴人は,被控訴人ラディクス,同ミライ及び同ヤマダに対し,不正競争防止法2条1項7号に基づく請求をしているが,同号は,営業秘密の正当な保有者から示された情報を,不正目的で使用又は開示する行為について規定するものであるところ,控訴人の主張によれば,被控訴人ラディクスらは,営業秘密の不正取得者である被控訴人Aの取得した営業秘密を利用して営業活動をしているというのであるから,被控訴人ラディクスらの行為が同号に該当しないことは明らかである。したがって,控訴人の被控訴人ラディクスらに対する上記請求は,主張自体失当というほかない。
(2) 甲事件第2請求について 控訴人は,甲事件第2請求について,原判決の認定をるる非難する。しかしながら,上記「湘南商事」名義の口座への自動送金依頼書(甲24,乙12,13)中,平成6年4月8日付けのもの(甲24の1枚目,乙12)及び同年7月7日付けのもの(甲24の2枚目,乙13)については,いずれも,その成立に争いがなく,その送金者欄にはBの氏名が記載され,控訴人の代表者印による訂正印が押捺されていることは上記(原判決57頁下から第2段落)のとおりである。そして,控訴人代表者は,原審における代表者尋問において,「湘南商事」名義の口座に送金することは聞いていなかった旨を繰り返し供述しているが,同供述は,上記書証に明らかに反し,採用することができないことも上記(原判決58頁第1段落〜第2段落)のとおりであり,ほかに被控訴人Aに詐取の事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,控訴人の被控訴人Aに対する甲事件第2請求も理由がない。
(3) 乙事件について ア 控訴人の行為について 控訴人は,控訴人が本件告知文書(原審における併合前の乙事件の甲3)等を作成したのは被控訴人ラディクスの行為によって失墜させられてしまったジェットネットに対する信用を回復するとともに,食肉用ネット全体に対する衛生管理の重要性に対する注意を喚起しようとする趣旨に出たものであり,何ら被控訴人ラディクスに対する誹謗や中傷を意図したものではないと主張する。しかしながら,控訴人が,被控訴人ラディクスが綿ネットに芽胞菌の危険があることを告知,流布するのに被控訴人ラディクスらが使用した文書として当審において提出した,被控訴人ラディクス作成の「デリネットpタイプ」と題する文書(甲47-1)及び被控訴人ミライ作成の同内容の文書(甲47-2)には,ジェットネットないし綿ネットに関する記載は全くなく,何ら控訴人の主張を裏付けるものということはできない。そして,上記の点に関する,原審における証人Dの証言及び控訴人代表者Bの供述は,被控訴人ラディクスが控訴人主張の行為を行ったことについて,これを裏付けるに足りる的確な証拠がなく,採用することができず,ほかに控訴人主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
また,控訴人は,本件告知文書に記載された内容は,被控訴人ラディクスやデリネットに直接言及した部分など存在しないし,それを想起させるような表現もされておらず,本件写真(甲39)を含む試験報告書(原審における併合前の乙事件の乙1)は,デリネットであっても,一定の条件のもとではカビが生えることもあるということを実験の結果によって明らかにしたものにすぎない,被控訴人ラディクスの取引先に対して本件告知文書等を配布した際に,デリネットが問題のある食肉用ネットであるなどと説明したことはないと主張する。しかしながら,控訴人による本件告知文書及び本件写真等の配布の状況は,上記認定(原判決59頁第2段落〜60頁第2段落)のとおりであるところ,本件写真は,デリネットと明示されたネットにカビが生えた状態が撮影されているものであり,控訴人の従業員等による口頭の説明とあいまって,相手方である被控訴人ラディクスの取引先に,被控訴人ラディクスの販売するデリネットは,カビが生えやすいとの印象を抱かせるものであると認められるから,控訴人の上記行為は,被控訴人ラディクスに対する不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該当するというべきである。
イ 被控訴人ラディクスの損害について 控訴人は,被控訴人ラディクスの売上の減少がそのまま損害となることはあり得ず,食肉用ネット販売における利益は,粗利益でも売上の20%程度,経常利益であれば売上の1〜2%程度にしかならないと主張して,原判決の損害の認定を非難する。しかし,原判決は,被控訴人ラディクスの売上の減少をそのまま損害として認定したものではなく,また,控訴人主張の上記事実を認めるに足りる証拠はない。そして,被控訴人ラディクス代表者作成の平成14年7月21日付け陳述書(乙32)及び弁論の全趣旨により,被控訴人ラディクスが契約を受注できなかったこと等による損害の額を,被控訴人ラディクスと上記取引先との間の取引の規模,食肉包装用ネットという商品の性質,市場の動向等に照らし,500万円を下らず,また,本件告知文書及び本件写真の配布等により害された被控訴人ラディクスの信用についての損害を100万円を下らないと認めた原判決の損害の認定は,相当というべきである。
過失相殺の主張について 控訴人は,控訴人が上記行為に出たのは,被控訴人ラディクスによる虚偽事実告知が存在したからであり,また,控訴人による上記行為後も,被控訴人ラディクスは,ジェットネットにカビが生えた写真を付した「JETNET5LNS12 カビ試験報告」(甲60)を控訴人の取引先に回覧したり,デリネットとジェットネットの比較表(甲61)を作成し,その中でジェットネットが使用している糸は強度が弱く,切れやすいため,不良品の発生率が高くなるなどと記載して,これを,控訴人の取引先に配布し,ジェットネットに対する信用を毀損する行為に出ていること等にかんがみれば,損害額について,少なくとも5割の過失相殺がされるべきであると主張する。しかしながら,被控訴人ラディクスによる控訴人主張の虚偽事実告知を認めることができないことは,上記のとおりである。また,被控訴人ラディクスによる甲60及び甲61の控訴人の取引先への回覧ないし配布が,控訴人による不正競争後の行為であることは控訴人の自認するところであるから,これを過失相殺の根拠とすることはできないものであることが明らかである上,甲60及び甲61の記載内容自体から,その回覧ないし配布が,控訴人ないし控訴人の販売するジェットネットの信用を毀損するものと認めることもできない。
したがって,控訴人の過失相殺の主張も理由がない。
3 結論 以上のとおり,原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴
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