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事件 平成 14年 (ワ) 19714号 商号使用禁止等請求事件
原告 株式会社大禄
同訴訟代理人弁護士 小宮清
同 松田雄紀
同 小宮圭香
同訴訟復代理人弁護士 常川知久
被告 アフトシステム株式会社
被告 有限会社綾南
上記両名訴訟代理人弁護士 田村佳弘
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2003/06/27
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告アフトシステム株式会社は,その自動車運送取扱,自動車のリース業その他これらに付帯する一切の営業に別紙目録記載の各標章を使用してはならない。
2 被告アフトシステム株式会社は,東京都大田区(以下略)所在の本店,埼玉県北本市(以下略),東京都江東区(以下略),東京都大田区(以下略)及び横浜市神奈川区(以下略)各所在の営業所の各店舗内,営業用運送トラック及び社員使用に係る名刺に付された営業表示から,前項記載の各標章を抹消せよ。
3 被告アフトシステム株式会社は,「アフトシステム株式会社」の商号を使用してはならない。
4 被告アフトシステム株式会社は,「アフトシステム株式会社」の商号の抹消登記手続をせよ。
5 被告らは,原告に対し,連帯して金1000万円及びこれに対する平成11年8月3日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は被告らの負担とする。
事実及び理由
請求
主文同旨
事案の概要等
1 争いのない事実等 (1) ユニオンフード販売株式会社(以下「ユニオンフード」という。)は,その羽田事業部において,「AFTO」の文字標章(以下「原告標章」という。)を使用して,水産物及び青果物等の集荷,配送業務等を行っていた。原告は,食料品等の売買及び輸出入業等を目的とする株式会社であるが,平成12年3月,ユニオンフードから営業譲渡を受けて,主に集荷,配送業を扱うための原告羽田事業部AFTO(以下「原告アフト事業部」という。)という事業所を設立し,原告標章を使用して,水産物及び青果物等の集荷,配送業務等を行っている。
(2) 被告有限会社綾南(以下「被告綾南」という。)は,一般区域貨物自動車 運送業,自動車運送取扱業等を目的とする有限会社である。
(3) 被告アフトシステム株式会社(以下「被告アフト」という。)は,平成11年8月3日,自動車運送取扱業,自動車のリース業及びこれらに付帯する一切の事業を目的とし,本店を埼玉県北本市(以下略)として,設立された株式会社である(甲35)。なお,被告アフトの代表取締役であるAは,被告綾南の代表取締役であるBの妻である。
被告アフトは,平成14年7月17日,本店所在地を肩書地に変更する旨の登記を行った(甲36)。
(4) 被告アフトは,平成11年8月3日以降,「アフトシステム株式会社」の商号(以下「被告アフト商号」という。)を使用するとともに,営業用運送トラックや社員の名刺等に別紙目録@ないしF記載の各標章(以下「被告標章」という。)を使用して,水産物及び青果物等の集荷,配送業務等を行っている。被告綾南は,従来ユニオンフードないし原告アフト事業部との間で,その車両本体に別紙目録@,A,E及びF記載の「AFTO」を含む標章が表記された営業用運送トラックをリースしていたが,同リース契約が解除された平成14年7月1日以降,原告アフト事業部がそれまでリースを受けていた上記営業用運送トラックを上記「AFTO」を含む標章が表記されているままの状態で,被告アフトに使用させた(甲25ないし27)。
2 事案の概要 本件は,原告が,被告アフトに対し,原告アフト事業部が使用している原告標章が取引関係者間に広く認識されていたにもかかわらず,被告アフトが被告アフト商号を使用し,被告標章を使用して営業をしたことから,第三者をして原告の営業と被告アフトの営業を混同させ,原告の営業上の利益侵害したと主張して,不正競争防止法2条1項1号,3条に基づき,(1) 被告標章の使用差止め,(2) 被告標章の抹消,(3) 被告アフト商号の使用差止め,(4) 被告アフト商号の抹消を請求するとともに(なお,予備的に,商法21条に基づき,上記(3)及び(4)を請求する。),被告らに対し,被告綾南の行為が,被告アフトとの間で共同不法行為が成立すると主張して,不正競争防止法4条,民法719条に基づき,原告が被った営業上の損害の賠償として,1000万円の支払を請求する事案である。
3 本件の争点 (1) 原告標章の周知性の有無 (2) 原告標章と被告標章及び被告アフト商号との類似性の有無 (3) 誤認混同の有無 (4) 原告の同意の有無 (5) 原告の請求主体性の有無 (6) 被告らの故意の有無及び共同不法行為の成否 (7) 損害の発生及び数額 (8) 商法21条に基づく請求の成否 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)について 〔原告の主張〕 ア ユニオンフードは,平成8年12月19日,関東運輸局から第一種利用運送事業の許可を受けて羽田事業部を設立し,原告標章を使用して営業を開始したものであるところ,平成9年7月ころには同羽田事業部の営業は全国的に知られるようになり,原告標章は全国に広まった。したがって,遅くとも平成9年7月ころには,ユニオンフード羽田事業部において使用されていた原告標章は周知性を獲得した。そして,原告は,平成10年4月,ユニオンフードの経営権を買い取り羽田事業部を実質的に傘下に納めていたが,平成12年3月,ユニオンフードから営業譲渡を受けた以降は,現在まで原告標章を原告アフト事業部の営業上の表示として使用している。
イ 原告は,原告アフト事業部の営業として,冷蔵庫の設備を具備し空港から直接海産物の流通を全国展開させているが,原告アフト事業部と同様の業務を行う業者は,東京都内には原告外10社程度しかなく,埼玉県や千葉県に至ってはそれぞれ1社しか存在しない。そして,原告アフト事業部のエリア別のシェアは,競争率の高い東京都内でも約3割から5割,埼玉県では約5割,千葉県では約9割,静岡県では8割,東北地方に至っても3割程度を占めている。したがって,原告標章の周知性は,現在においても認められる。
〔被告らの主張〕 原告標章は,特定の者の商品又は営業であることを示す表示であることが相当範囲の需要者の間に広く知られている客観的な状態になく,周知性を欠く。すなわち,原告による原告標章の利用は名刺の印字による使用等にとどまり極めて限定的であるし,原告が本件標章を使用して積極的に宣伝広告した形跡はなく,「AFTO」の名称が原告のインターネットホームページにも掲載されていない。
(2) 争点(2)について 〔原告の主張〕 被告アフト商号は,原告アフト事業部の名称の主要部分を構成する「アフト」を使用しているし,被告標章は,いずれも全体的な印象としては原告標章と外観が極めて類似している。
〔被告らの主張〕 原告標章と被告標章との類似性は争う。
(3) 争点(3)について 〔原告の主張〕 被告アフトは,平成11年8月3日以降,被告標章を使用して営業したことから,原告の取引先が原告に対して発行する運送明細書及び請求書等に被告アフトが行った運送も含めて記載するなど,第三者をして原告の営業と被告アフトの営業とを混同させており,誤認混同のおそれがある。
〔被告らの主張〕 農作物,水産物等の売買及び輸出入業,食料品の製造等を業とする原告と運送業を営む被告アフトとでは業種が異なり,被告アフトの行為は,他人の営業混同を生じさせる行為とはいえない。また,平成14年11月27日以降は,混同の事例が生じていない。
(4) 争点(4)について 〔被告らの主張〕 ア 被告アフトは,平成11年8月ころ,ユニオンフードの取締役であるC(以下「C」という。)から被告アフト商号及び被告標章の使用について同意を得ていた。
すなわち,原告標章を使用していたユニオンフード羽田事業部に常駐していた者はCのみであり,同人が同羽田事業部の営業に関してすべて意思決定していたのであるから,同人は,同羽田事業部の営業に関して包括的な代理権を与えられていた支配人であった。
イ 仮に,Cが支配人ではないとしても,同人は,平成11年8月当時,ユニオンフード羽田事業部の所長の地位にあったところ,同人が用いた所長という肩書きは営業の主任者たることを示す名称に当たるから,商法42条の表見支配人に該当する。そうすると,Cは,ユニオンフードの羽田事業部の営業に関する一切の裁判外の行為をなす権限を有するものとみなされるから,Cの同意をもってユニオンフードから被告アフトに対して被告アフト商号及び被告標章の使用について有効な同意があったということができる。
〔原告の主張〕 ア Cは,被告に対し,被告アフト商号及び被告標章を使用することについて同意していない。
イ 仮に,Cが同意していたとしても,Cは標章の使用を第三者に許可する等のユニオンフードないし原告の重要な意思決定に関する決裁権限を有していないから,Cの同意は有効なものとはいえない。
(5) 争点(5)について 〔被告らの主張〕 不正競争防止法は,公正なる競業秩序の維持を目的とするものであるから,法令違反の営業まで保護されるものではない。原告は,ユニオンフードから営業の譲渡を受けたにもかかわらず,貨物運送取扱事業法17条の認可を得るまでの期間は無許可営業を営んでいたものであって,その間の原告の営業は不正競争防止法の保護対象とはならず,この間の被告らの行為が原告に対する不正競争行為となる余地はない。
法律で認可が要件とされていながら,認可を受けないで行われた契約等は効力を生じない。そうすると,原告が主張する本件標章の使用権限の移転も,原告とユニオンフードとの間の営業譲渡の一環として行われたものであるから,同法17条の認可があるまでは原告に移転しないことになり,原告が原告標章に関する権利主張をすることは失当である。
〔原告の主張〕 ア 原告は,平成12年3月1日,ユニオンフードから,第一種利用運送事業の許可を得て貨物運送取扱事業を行っている同羽田事業部の営業をすべて譲り受け,現在まで同羽田事業部の営業を承継して貨物運送取扱事業を行っている。そして,平成14年10月11日,関東運輸局に対し,第一種貨物運送事業の譲渡譲受の認可の申請を行い,認可された。
イ 貨物運送取扱事業法17条1項によると,「利用運送事業の譲渡し及び譲受けは,国土交通大臣の認可を受けなければ,その効力を生じない。」と規定されているところ,国土交通大臣の認可には遡及的な効力があり,認可を受けた時点で無認可営業の瑕疵は消滅すると解されるので,原告が認可を受けたことによりそれまでの法律行為は有効となり,不正競争防止法の請求主体となり得る。
ウ 仮に,国土交通大臣の認可には遡及効がないとしても,貨物運送取扱事業法に違反する行為は罰則により処罰すれば足り,私法上の効力に何ら影響を及ぼさないから,原告が利用運送事業の譲渡譲受後,運輸大臣の認可を受けるまでの間に行った法律行為の効力も当事者間では有効である。
そして,不正競争防止法に関しては,少なくとも私法上有効な行為を行い得る事業者であれば請求主体性は肯定されるものと解すべきである。同法3条差止請求権及び4条損害賠償請求権の文言上も,他人の不正競争によって「営業上の利益侵害され,又は侵害のおそれのある者」であれば請求主体性が認められることからも,不正競争防止法との関係においては請求主体性が認められる。
(6) 争点(6)について 〔原告の主張〕 ア 被告らの故意 ユニオンフード羽田事業部は,平成10年3月ころから,被告綾南と取引関係を有し,原告標章を使用していたところ,原告がユニオンフードから営業権の譲渡を受け原告アフト事業部を設立した直後の平成11年8月3日,被告綾南の代表取締役であるBが取締役,被告綾南の取締役であるAが代表取締役となって,被告アフトが設立された事実に鑑みれば,被告アフトは,被告標章を使用する以前から原告が原告標章を使用していたことを十分知悉していたといえるから,被告アフトには原告に対する不正競争行為につき故意がある。
被告綾南は,平成10年3月ころから,ユニオンフード羽田事業部と取引関係を有しており,原告がこれを承継した以降は,原告アフト事業部と継続して取引を行い,平成11年8月当時,原告アフト事業部が「AFTO」又はそれを含む標章を原告の営業を示すものとして使用していたことを十分知悉していたといえるから,被告綾南には原告に対する不正競争行為につき故意がある。
イ 被告らの共同不法行為 被告綾南は,原告アフト事業部との契約解除直後に被告アフトに対し,「AFTO」を含む標章が記されている運送用貨物トラックを使用させていること,被告アフトと同綾南の本店は同一であること,被告アフトと同綾南の代表取締役は夫婦であり,互いに両社の役員として名前を連ねていること,被告アフトは,ユニオンフードから原告アフト事業部を含む営業権の譲渡を受けた直後に設立されたこと,以上の事実を総合考慮すると,被告らの原告に対する不正競争行為には,主観的にも客観的にも強い関連共同性がある。よって,被告らの各不正競争行為について共同不法行為が成立する。
〔被告らの主張〕 否認ないし争う。
(7) 争点(7)について 〔原告の主張〕 被告アフトは,平成13年度に5000万円,平成14年度に1億3000万円の収入があり,これらの収入は,いずれも同被告が被告標章を使用して得たものであり,被告らの不正競争行為により原告が被った損害は,少なくとも1億円を下らない。
〔被告らの主張〕 否認する。被告アフトの活動が原告の売上高に影響を及ぼしたとは到底考えられない。
(8) 争点(8)について 〔原告の主張〕 被告アフトは,原告の営業と現に誤認させている「アフト」という文字を含んだ被告アフト商号を不正の目的で使用しており,それにより原告の営業上の利益が害されるおそれがあることは明らかである。
〔被告らの主張〕 否認する。被告アフトは,設立した時も現在も不正な目的があったわけではなく,被告アフト商号の使用により原告の営業上の利益侵害するおそれもない。
当裁判所の判断
1 争点(1)(原告標章の周知性の有無)について (1) 上記争いのない事実等に証拠(甲1ないし24,37ないし41,42の1及び2,43ないし46,47の1及び2,50,51,55,63,64)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア ユニオンフードは,平成8年12月,羽田事業部を開設し,第一種利用運送事業について貨物運送取扱事業法3条所定の許可を得て,以後,水産物等の集荷,配送業務を行っていた。ユニオンフード羽田事業部は,その社員の名刺や取引先に対する請求書に「AFTO」の標章を使用していた。
イ 「ANA CARGO」平成9年(1997年)7月号のインターネットホームページでは,「ANAの翼に載り,日本全国サカナが飛び交 う!!」というタイトルで,ユニオンフード羽田事業部が「AFTO」の名称で紹介されている。同記事には「こうした市場の動きを敏感に察知して,需要の最も多いスーパーなどの量販店等への輸送を行い注目されている流通専門の会社があります。AFTO(Air Fresh Freight Transport Operations)は,航空便の特性であるスピード,安全性,確実性に経済性を加味した高品質なサービスの提供を目指して設立。
具体的には各産地で加工したサカナを主に生鮮品の輸送(中略)を行っていますが,その生産から輸送そしてお店への配送までの管理・コントロールを行っています。(中略)現在は関東一円と新潟,静岡の一部大手量販店とすべてオンラインで結ばれ毎日オーダーが入ってきています。今,鮮魚は加工されて直接店頭へ空輸されるケースと丸ごと市場へ陸送される2つのゾーンで動いていますが,最近の消費者の動きや量販店などの経営効率化により加工した鮮魚がますます増えそうです。
そうすると航空便での輸送はさらに拡大することが予測され,その動きには目が離せません。」との記載がある。
ウ 平成10年4月に原告の当時の常務取締役がユニオンフードの代表取締役に就任し,その後ユニオンフードの事務所が原告の本店所在地に移転するなどして,原告は,ユニオンフードの営業権を取得した。原告は,平成12年3月1日,ユニオンフードから営業譲渡を受ける旨の契約を締結し,ユニオンフード羽田事業部を承継する形で原告アフト事業部を開設し,ユニオンフードと同様に水産物及び青果物等の集荷,配送業務を行ってきた。なお,ユニオンフード羽田事業部と原告アフト事業部の所在地は同一である。
エ ユニオンフード羽田事業部は,取引書類に「AFTO」を使用し,原告アフト事業部は,「株式会社大禄羽田事業部AFTO」の名称を取引先に対する請求書等に使用していた。
また,ユニオンフード羽田事業部ないし原告アフト事業部は,被告綾南から運送用貨物トラックのリースを受け,その車両本体に原告標章を表記し,水産物及び青果物等の集荷,配送業務を行っていた。
オ ユニオンフード羽田事業部ないし原告アフト事業部の平成11年3月から平成14年9月までの売上高は別紙のとおりであり,当初は月間3000万円前後,その後は月間5000万円前後で,ユニオンフードから営業譲渡を受けた後の売上高は,年間5億円ないし6億円である。そして,平成11年8月から現在に至るまでの間,ユニオンフード羽田事業部ないし原告アフト事業部の取引先や配送先も,東北地方及び関東地方一円並びに静岡県を中心に全国に及んでおり,同種の業者は東京都内では原告の外10社程度,埼玉県及び千葉県にはそれぞれ1社存在するのみであり,地域別シェアも,ユニオンフード羽田事業部ないし原告アフト事業部が東京都内で約3割から5割,埼玉県で約5割,千葉県で約9割,静岡県で8割,東北地方で約3割を占めている。
(2) 以上の認定事実によれば,原告標章である「AFTO」の文字標章は,水産物及び青果物等の集荷,配送業務を行っていたユニオンフード羽田事業部の営業表示として,遅くとも平成11年8月ころまでには,関東地方の取引者ないし需要者に周知となっていたものということができる。そして,上記事実によると,営業譲渡の後は原告アフト事業部が原告標章を使用しているところ,ユニオンフード羽田事業部と原告アフト事業部とは,水産物及び青果物等の集荷,配送業務を行うという点で営業形態が同一であり,事務所の所在地も同一であって,営業活動の継続性が認められるから,原告は,ユニオンフードから営業譲渡を受けることによって上記周知性を承継し,その後も売り上げを伸ばして,原告標章は,原告の営業表示として現在に至るまで周知であるということができる。
2 争点(2)(原告標章と被告標章及び被告アフト商号との類似性)について (1) 被告標章のうち,別紙目録@,E及びF記載の各標章は,いずれも「AFTO」という文字表示そのものであり,同A及びB記載の各標章は,「AFTO」という文字表示の背景にデザインがあるもので,いずれも原告標章と同一又は類似であると認められる。同C及びD記載の各標章は,「AFTO」という文字表示を大きく表示し,「アフトシステム株式会社」等の文字が小さく付されているものであって,「AFTO」という部分が最も目立つことからすると,いずれも原告標章と類似であるということができる。
(2) 被告アフト商号のうち,「株式会社」という部分は,会社の種類を示す部分であるから識別力がなく,また,「システム」という部分は,組織,系統ないし仕組みを意味するから(岩波書店「広辞苑」第5版1171頁),同様に識別力がなく,その余の「アフト」という部分が,識別力を有するものということができる。そうすると,この部分は原告標章と称呼及び観念において同一であるから,被告アフト商号は,原告標章と類似するものということができる。
3 争点(3)(誤認混同の有無)について (1) 前記争いのない事実等に証拠(甲29,30,31の1ないし42,32,48,49)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告アフト事業部も被告アフトも水産物及び青果物等の集荷,配送業務等を業として活動していること,取引先から原告アフト事業部の住所に対し被告アフトあての挨拶状が送付されたり,原告アフト事業部の取引先が原告に対して発行する運送明細書に被告アフトが行った運送も含めて記載したものがあること,被告アフトは,原告アフト事業部の所在地と同一の所在地や,原告アフト事業部の電話番号等と極めてよく似た電話番号を記載した封筒を作成したこと,以上の事実が認められる。
(2) そうすると,被告アフト商号又は被告標章が被告アフトの営業表示として使用されることにより,原告の取引先又は需要者は,同被告と原告を同一の営業主体と誤信するか,又は両者間に系列関係など密接な営業上の関係が存在するものと誤信するおそれがあるものと認められる。
したがって,被告アフトが被告アフト商号で営業活動を行い,被告標章を使用する行為は,不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に当たり,原告の営業上の利益侵害しており,今後も侵害するおそれがあるものというべきである。
4 争点(4)(原告の同意の有無)について 被告らは,当時ユニオンフード羽田事業部所長としてユニオンフードから包括的代理権を与えられた支配人又は表見支配人に当たるCが被告アフト商号及び被告標章の使用に同意したので,被告らの行為は不正競争行為に当たらないと主張し,これに沿うCの陳述書(乙7)を提出している。
上記陳述書(乙7)は,本文がワープロで記載され,それにCの署名押印がされた体裁のものである。しかし,全文が手書きの体裁のCの陳述書(甲53)の記載によると,同人は被告アフトの存在を知らなかったなどとして同意の事実を否定している。他に原告の同意を認めるに足りる証拠はないから,乙第7号証のみをもって,被告アフト商号及び被告標章の使用に原告の同意があったということはできない。なお,証拠(甲1,2,54,乙5,7)及び弁論の全趣旨によると,Cは,原告がユニオンフードの営業権を取得した平成10年4月以降,ユニオンフード羽田事業部の所長という肩書きであり,その後原告アフト事業部所長という肩書きであったことが認められるものの,ユニオンフード羽田事業部ないし原告アフト事業部自体,ユニオンフードないし原告の一事業部にすぎず,Cは,原告の組織上は課長待遇を受けていたにすぎないのであって,「AFTO」の営業表示やそれを含む標章の使用を第三者に許諾するという重要な業務執行事項についての決定権限を有していたことを認めるに足りる証拠はない。
5 争点(5)(原告の請求主体性の有無)について (1) 証拠(甲52,56)及び弁論の全趣旨によると,原告は,ユニオンフードから営業譲渡を受け,本訴提起後の平成14年10月11日に第一種利用運送事業の譲渡譲受認可申請をし,同年11月27日に関東運輸局長から認可を受けたことが認められる。
(2) そして,貨物運送取扱事業法17条1項は「利用運送事業の譲渡し及び譲受けは,国土交通大臣の認可を受けなければ,その効力を生じない。」と規定しており,上記事業の譲渡の効力を認可の有無にかからしめているから,原告が上記認可を受けてはじめてその効力が生じるものと解される。
同法は,貨物運送取扱事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,貨物運送取扱事業の健全な発展を図るとともに,貨物の流通の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応した貨物の運送サービスの円滑な提供を確保し,もって利用者の利益保護及びその利便の増進に寄与することを目的とするものである(同法1条)。このような同法の趣旨からすると,上記認可に関する規定も,利用者の利益の保護を図るためのいわゆる取締規定と解するべきであり,上記認可を受けずに行った運送契約の締結等の取引行為の私法上の効力が直ちに否定されるものではない。
(3) 他方,不正競争防止法は,事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため,不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ,もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものである(同法1条)。そして,他人の不正競争によって営業上の利益侵害された者は,差止請求権及び損害賠償請求権を有するところ(同法3条,4条),上記のとおり,原告は,貨物運送取扱事業法所定の許可を得て事業を行っていたユニオンフードから営業譲渡を受け,その後第一種利用運送事業の譲渡譲受認可を受けたものであって,営業譲渡の後上記認可を受けるまでの間に取引行為を行ってきたことの一事をもって,不正競争防止法上の請求主体性を欠くということはできない。
6 争点(6)(被告らの故意の有無及び共同不法行為の成否)について (1) 原告標章は,原告アフト事業部の前身であるユニオンフードの営業表示として,遅くとも平成11年8月ころには関東地方を中心に周知となっており,営業譲渡後は原告の営業表示として周知であることは,前記1(1)で認定したとおりである。
前記争いのない事実等に証拠(甲6ないし25,35,36)及び弁論の全趣旨を総合すると,被告綾南は,ユニオンフードと平成9年ころから取引関係にあり,ユニオンフードの営業譲渡後は原告とも取引関係にあり,その際「椛蝌\羽田事業部AFTO」を名宛人とする請求書を使用していたこと,平成11年8月に被告アフトが設立され,被告綾南の代表取締役であるBが同アフトの取締役になったこと,被告綾南の代表取締役と同アフトの代表取締役とが夫婦であること,当初被告綾南と同アフトの本店所在地が同一であったこと,被告綾南は,平成14年6月30日,原告アフト事業部から継続的取引関係を解約されたところ,被告アフトに対し,原告アフト事業部が標章を付して営業上使用していた営業用運送トラックを,上記標章が付されたままの状態で,営業活動に使用させたこと,以上の事実が認められる。
(2) 以上の事実によると,被告アフト及び同綾南は,いずれも原告標章が周知であることを知っていたものと認められる。また,被告アフトと同綾南との間に主観的にも客観的にも関連共同性が認められるから,被告綾南は,同アフトの行為によって原告に生じた損害について,被告アフトとともに共同不法行為責任を負うものというべきである。
7 争点(7)(損害の発生及び数額)について 証拠(甲57,61,62)及び弁論の全趣旨によると,被告アフトの平成13年1月期の収入が5000万円であり,平成14年1月期の収入が1億3000万円であり,平成14年12月ころまで取引行為を継続していたことが認められる。そして,被告アフトは,当裁判所が平成15年3月11日に発令した文書提出命令により,平成12年2月から平成15年1月までに対応する各決算書のうち,各貸借対照表,損益計算書及び利益処分・損失処理案の提出を命ぜられたにもかかわらず,同文書は作成しておらず存在しないと主張して,同文書を提出せず,同文書の提出を拒むことについての正当な理由があるとの事情は存しない。以上の事実に,上記売上高に原告標章の顧客吸引力が寄与した程度その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告アフトの不正競争行為によって同被告が得た利益は,1000万円と認めるのが相当であり,それをもって原告の損害と認める。
8 結論 以上の次第であるから,原告の請求は,その余の争点について判断するまで もなく,理由がある。
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 上田洋幸
裁判官 浅香幹子
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