審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17ワ10073損害賠償請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成18ワ13013不正競争行為差止請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成18ネ10080債務不存在確認等請求控訴事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成17ワ2535損害賠償請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
平成17ワ3056損害賠償等請求事件 | 判例 | 不正競争防止法 |
関連ワード | 特段の事情 / 信義則 / 差止請求(差止) / 既判力 / 逸失利益 / 侵害 / 競業関係 / 代理人 / 得べかりし利益 / 営業誹謗行為(2条1項14号) / 虚偽の事実 / 他人に損害を加える目的(加害目的) / 損害賠償 / 損害額 / 営業上の信用 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
16年
(ワ)
9743号
損害賠償請求事件
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原告 株式会社SNKプレイモア 原告 株式会社SNKネオジオ 原告ら訴訟代理人弁護士 高橋悦夫 同 西島佳男 同 目方研次 同 駒井慶太 同 芦住敦史 同 妻鹿直人 被告 アルゼ株式会社 被告 P1 被告ら訴訟代理人弁護士 中村信雄 同 佐藤文彦 |
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裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2005/10/31 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの連帯負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告らは、各自、原告株式会社SNKプレイモアに対し、17億1985万円及びこれに対する被告アルゼ株式会社は平成16年9月11日(同被告に対する訴状送達の日の翌日)から、被告P1は平成16年9月12日(同被告に対する訴状送達の日の翌日)から、いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは、各自、原告株式会社SNKネオジオに対し、16億2993万5000円及びこれに対する被告アルゼ株式会社は平成16年9月11日(同被告に対する訴状送達の日の翌日)から、被告P1は平成16年9月12日(同被告に対する訴状送達の日の翌日)から、いずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
本件は、被告らが、原告らが開発・販売を予定していた回動式遊技機(パチスロ機)に関する文書を、被告アルゼ株式会社(以下「被告アルゼ」という。)が開設しているインターネット上のウェブサイトに掲示したことが、原告らに対する不法行為であると主張して、損害賠償を請求した事案である。 なお、原告らは、訴えの当初は、一般の不法行為のみを請求原因としていたが、審理の途中で、不正競争防止法に基づく請求を請求原因として追加する旨の主張をした(その許否については後述する。)。 1 前提となる事実(証拠により認定した事実は末尾に証拠を掲げた。その余は争いがない事実である。) (1) 当事者 ア 原告株式会社SNKプレイモア(以下「原告プレイモア」という。)は、パチスロ機の製造及び販売等を業とする株式会社である。 原告株式会社SNKネオジオ(以下「原告ネオジオ」という。)は、原告プレイモアとの間で、同原告が製造するパチスロ機について、総販売代理店契約を締結している(甲7)。 イ 被告アルゼは、パチスロ機の製造等を業とする株式会社である。 被告P1は、被告アルゼのオーナー社長として、被告アルゼの業務全般を統括していた。 ただし、被告P1は、平成16年9月22日に、被告アルゼの代表取締役を辞任し、同年10月6日に退任登記がされた(弁論の全趣旨)。 (2) 本件パチスロ機の開発 原告プレイモアは、平成15年末ころまでに、パチスロ機「メタルスラッグ」(以下「本件パチスロ機」という。)を開発した(弁論の全趣旨)。 原告ネオジオは、パチスロ機についての原告プレイモアの総販売代理店として、平成15年12月ころから、本件パチスロ機の営業活動を行い、平成16年1月13日には東京都において、同月15日には大阪府において、本件パチスロ機の発表会も行った(弁論の全趣旨)。 また、原告ネオジオは、同年2月8日から、本件パチスロ機のパチスロホールへの納品を開始した(弁論の全趣旨)。 (3) 別件仮処分申立てと別件訴訟の提起 ア 被告アルゼは、別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)を有している(乙8ないし10)。 イ 被告アルゼは、平成16年2月6日、本件パチスロ機が本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属すると主張して、原告プレイモアを相手として、 本件特許権に基づき、本件パチスロ機の製造販売の差止めを求める仮処分を、東京地方裁判所に申し立てた(同裁判所平成16年(ヨ)第22009号。以下「別件仮処分申立て」という。)。 ウ 被告アルゼは、同月23日、原告プレイモアを相手として、別件仮処分申立事件の本案となる、本件特許権に基づく、本件パチスロ機の製造販売の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求める訴えを、東京地方裁判所に提起した(同裁判所平成16年(ワ)第3905号。以下「別件訴訟」という。)。 (4) 本件掲示 ア 被告アルゼは、平成16年2月6日、別件仮処分申立てに関して、別紙掲示文書目録記載の題名及び本文からなる文書を、同被告がインターネット上に開設している同被告のウェブサイトに掲載した(以下「本件掲示」という。)。 イ 被告アルゼは、同月23日ころ、本件掲示を、同被告の上記ウェブサイトから削除した(弁論の全趣旨)。 (5) 別件訴訟の判決 別件訴訟について、東京地方裁判所は、平成17年7月7日、本件パチスロ機は本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属しないとして、被告アルゼの請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した(甲14。以下「別件判決」という。)。 ただし、上記判決は未だ確定していない(弁論の全趣旨)。 2 争点 (1) 本件掲示の一般不法行為の成否 〔原告らの主張〕 ア 本件掲示が行われた当時、被告P1は、いわゆるワンマン経営者として被告アルゼの業務全般を統括していたのであるから、被告P1が、被告アルゼをして、本件掲示を行わせたものであることは明らかである。 イ(ア) 被告アルゼによる別件仮処分申立ては、本件パチスロ機の製造販売が本件特許権の侵害にあたることの根拠が薄弱なまま、もっぱら、原告らによる本件パチスロ機の販売を妨害する目的で行われたものである。 被告らは、後記〔被告らの主張〕イのとおり、平成16年1月13日に東京都で行われた本件パチスロ機の発表会(前記「前提となる事実」(2)。以下「本件発表会」という。)において、被告アルゼの従業員が実機を動作させることによる調査を行ったと主張する。 しかし、わずか1時間程度の実機調査によって、本件パチスロ機の構成を確認し、被告アルゼが有するどの特許のいかなる構成要件に抵触するかを特定することは到底不可能である。 しかも、本件発表会は、3時間にわたって行われたが、来場者は1182名と極めて多く、会場に設置された本件パチスロ機の実機50台が、1台として空くこともなく、試遊を希望する来場者の列ができている状況にあったから、被告アルゼの従業員が、1時間もの長時間にわたって本件パチスロ機の実機を独占して動作させ、調査を行うこと自体が不可能である。 また、被告アルゼが、別件仮処分申立事件及び別件訴訟事件において、その提起当初、十分に申立原因ないし請求原因を特定することができず、相当の期間経過後に、主張の構成を変更したことも、被告アルゼが、別件仮処分申立ての当時、十分な調査を行っていなかったことを示すものである。 (イ) 被告らは、上記(ア)のとおり、本件パチスロ機の製造販売が本件特許権の侵害にあたることの根拠が薄弱であることを知っていたにもかかわらず、原告らに対する加害意思をもって、あるいは、漫然と、本件掲示を行ったものである。 (ウ) 本件掲示には、「株式会社SNKプレイモアは、かかる経緯があるにもかかわらず、当社保有の特許権を尊重せず、これを無断で実施した」などと、 断定的表現が用いられており、これを閲読した者をして、原告プレイモアが本件特許権を確実に侵害しており、かつ、別件仮処分申立てが直ちに認容されるものである旨誤信させるものである。 このように、被告らが、根拠に基づかずに本件掲示を行ったことは、 違法性の高いものであり、本件パチスロ機が本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属するか否かと関わりなく、不法行為が成立するものである。 ウ(ア) 本件掲示には、「当社は、株式会社SNKプレイモアの前身である株式会社SNK(現在破産手続中)に対して、その破綻直前に多額の資金援助を行い、約51%の株式を保有して子会社化するとともに、経営再建策としてパチンコ・パチスロ開発のノウハウ等をいちから伝授してパチンコ・パチスロ製造販売事業に参画させておりました。株式会社SNKプレイモアは、かかる経緯があるにもかかわらず、当社保有の特許権を尊重せず」との記載がある。 (イ) 上記(ア)の記載部分は、これを閲読した者をして、原告プレイモアが、被告アルゼに対して恩を仇で返す態度をとったと誤信させるものであり、上記イ(ウ)の記載とは独立して、原告プレイモアの経済的信用を著しく毀損するものである。 また、上記記載部分は、被告アルゼが原告プレイモアに対して警告行為を行うに際して、全く不必要な記載である。 (ウ) 被告らは、上記記載部分に関しては、積極的な反論を一切行っておらず、よって、上記記載部分を含む本件掲示が行われたことによって原告プレイモアが経済的信用を毀損されたことの損害の賠償額に係る判断に際しては、被告らは原告らの主張を争わないものとされることは当然である。 〔被告らの主張〕 ア 上記〔原告らの主張〕アは否認する。 イ(ア) 被告アルゼによる別件仮処分申立ては、本件発表会において、同被告の特許部所属の従業員3名が行った調査、及び、本件パチスロ機が紹介されている雑誌記事(乙13)等の調査と、被告アルゼと弁護士らの検討に基づくものである。 本件発表会は、ホテルの大ホールを借り切って行われたもので、そこでは、本件パチスロ機が20台から25台程度展示されており、誰でも実機に触れ、動作させることが可能となっていた。 本件発表会における調査は、上記被告アルゼ従業員らが、本件パチスロ機を実際に動作させ、さらに、そのビデオ撮影をすることによって行ったものである。 被告アルゼは、上記調査及びこれに基づく検討により、本件パチスロ機が、本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属するとの結論を得て、別件仮処分申立てを行ったものである。 したがって、別件仮処分申立ては、根拠が薄弱なまま行ったものではなく、また、もっぱら、原告らによる本件パチスロ機の販売を妨害する目的で行ったものでもない。 (イ) 上記〔原告らの主張〕イ(イ)(ウ)はいずれも否認ないし争う。 ウ 上記〔原告らの主張〕ウ(イ)は否認ないし争う。 なお、上記〔原告らの主張〕ウ(ア)の記載部分については、本件の審理の過程の中で、原告らは問題としてきておらず、被告らもその前提で訴訟活動を行ってきたところ、平成17年8月29日付け原告ら準備書面(5)で初めて問題とされたものである。 それにもかかわらず、この時点に至って初めて上記記載部分を問題とし、被告らの主張立証がされていないと論難することは、著しく信義則に反する訴訟活動である。 上記記載部分については、必要とされるのであれば、被告らにおいても主張立証を行う用意がある。 (2) 不正競争防止法2条1項14号に基づく主張 〔原告らの主張〕 ア 本件パチスロ機の製造販売は、本件特許権を侵害するものではない。 したがって、「株式会社SNKプレイモアは、かかる経緯があるにもかかわらず、当社保有の特許権を尊重せず、これを無断で実施した」などという記載を含む本件掲示の内容は、虚偽である。 被告らは、上記のとおり虚偽の内容を含む本件掲示を行った。 したがって、本件掲示は、被告らが原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を流布するものであり、不正競争防止法2条1項14号に定める不正競争行為である。 イ 不正競争行為に基づく上記請求原因の追加は、前記「前提となる事実」(5)のとおり、別件判決が言い渡されたため、行うに至ったものである。 本件掲示の内容が虚偽であるということは、原告らの損害額を判断するに際して、極めて重要な判断要素となることは当然であるから、別件訴訟において判決が言い渡された以上、原告らが請求原因を追加することは至極当然である。 もとより、民事裁判は権利侵害を受けた被害者が被害の回復を求める場であり、原告らは、本件掲示によって甚大な損害を被った被害者であるから、本件訴訟の遂行中に、訴訟提起後の重大な事情変更として、別件訴訟において判決が言い渡された以上、真の被害回復を求めるべく請求原因の追加を行うことは、原告らの正当な権利の行使以外の何ものでもない。 確かに、別件判決は、被告アルゼが控訴したため、未だ確定していないから、原告らは、本件において、本件掲示の内容が虚偽であることを主張立証する必要がある。しかし、この主張立証活動は原告らの真の被害回復のために必要不可欠であり、かつ、人証の取り調べが未だ一切行われていないという本件の審理状況下で上記請求原因の追加をし、原告らが主張立証活動をしても、著しく訴訟活動を遅滞させることなど到底あり得ないことは明らかである。 なお、別件判決が、本件パチスロ機が、本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属しないことを理由として被告アルゼの請求を棄却したことからしても、本件掲示の内容が虚偽であることは明らかである。 〔被告らの主張〕 本件訴訟においては、その初期の段階において、裁判所の求釈明を受けた原告らが、不正競争防止法違反を問題としない旨明確に述べ、これを前提として審理が進行してきたものである。それにもかかわらず、原告らが、上記釈明を覆し、 本件において不正競争防止法違反を問題とすることは、著しく信義則に反する訴訟活動である。 また、仮に上記請求原因の追加を認めれば、結局、別件訴訟の判決の確定を待つ必要が生じ、訴訟遅延が生じることは明らかである。 以上の状況に照らせば、原告らによる上記請求原因の追加を認めることは明らかに不適法であるから、これを許さない旨の決定を求める。 (3) 損害額 〔原告らの主張〕 ア 逸失利益 (ア) 平成16年1月上旬当時、パチスロホールによる本件パチスロ機の購入意向を集計したところ、2万7450台の販売が確実に見込まれた。 しかし、本件掲示が行われたため、本件パチスロ機の購入を予定していたパチスロホールの中には、これを取り止めたものがあり、平成16年8月25日現在で、本件パチスロ機の販売実績は1万4605台にとどまる。 すなわち、これらの台数の差である1万2845台は、本件掲示によって売上げが減少したものであり、この台数分の本件パチスロ機の販売によって得べかりし利益は、本件掲示という不法行為による逸失利益である。 (イ) 原告プレイモアの逸失利益 本件パチスロ機の製造原価は1台当たり14万5000円であり、原告ネオジオへの販売価格は1台当たり27万5000円である。 したがって、本件パチスロ機の販売により、原告プレイモアは、1台当たり13万円の利益を得ることができる。 よって、原告プレイモアの逸失利益は、下記の計算式のとおり、16億6985万円となる。 ○ 130,000円×12,845台=1,669,850,000円 (ウ) 原告ネオジオの逸失利益 本件パチスロ機の仕入価格は上記(イ)のとおり1台当たり27万5000円であり、パチスロホールへの販売価格は1台あたり39万8000円である。 したがって、本件パチスロ機の販売により、原告ネオジオは、1台あたり12万3000円の利益を得ることができる。 よって、原告ネオジオの逸失利益は、下記の計算式のとおり、15億7993万5000円となる。 ○ 123,000円×12,845台=1,579,935,000円 イ 経済的信用毀損 本件掲示が行われたことにより、原告らの経済的信用は大いに失墜した。 本件においては、当事者の公平の観点からの損害の十分な回復、及び、 被告らが今後同様の不法行為を行うことに対する抑止のため、単なる填補賠償にとどまらず、懲罰的損害賠償が認められるべきである。 したがって、原告らは、それぞれ、被告らに対し、5000万円の損害賠償請求権を有する。 〔被告らの主張〕 否認ないし争う。 なお、懲罰的損害賠償を求める主張は、我が国の不法行為制度は、これを認めないと解されることから、主張自体失当である。 |
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当裁判所の判断
1 争点(1)について (1) 〔原告らの主張〕イについて ア 原告らが被告らの不法行為として主張する行為は、被告アルゼが本件掲示を行ったことである。 本件掲示の内容は、別紙掲示文書目録記載のとおりであって、題名は、 「メタルスラッグ製造販売差止仮処分の申立について」とするものであり、本文は、概ね、@被告アルゼが、原告プレイモアに対して、本件特許権に基づき、本件パチスロ機の製造販売等の差止めを求める仮処分を申し立てたこと(別件仮処分申立て)、A本件特許権の概要の説明、B被告アルゼと株式会社SNKとの関係、C原告プレイモアが、上記「特許権を…無断で実施した為」、仮処分申立てをしたこと、の4点を内容とするものである。 そこで検討するに、本件掲示では、その結論部分に、「株式会社SNKプレイモアは、…当社保有の特許権を尊重せず、これを無断で実施した」との表現がされている。原告らは、この表現部分について、原告プレイモアが本件特許権を侵害しているという確定的事実を述べていると主張するものと解される。 しかしながら、上記表現部分の直後には、「為、この度、差止め仮処分の申立に及んだものです。」との記載が続いているものである。そして、民事仮処分事件を含む民事裁判は、当事者双方の主張が食い違い、紛争が生じているときに、当事者双方の主張と証拠ないし疎明から、裁判所が事実認定を行い、紛争の解決を図るというものであることは広く国民に認識されているところである。このことを前提とすれば、本件掲示の閲読者が当該文全体を読んだとき、その趣旨が、 「被告アルゼが仮処分申立てをした理由は、被告アルゼが原告プレイモアに本件特許権を侵害されたと考えたからである」というものであることは、容易に読みとることができるというべきである。 加えて、上記のとおりの本件掲示の題名及び本文全体の内容からすれば、本件掲示は、その閲読者をして、被告アルゼが、原告プレイモアに対して、本件特許権に基づいて、本件パチスロ機の製造販売等の差止めを求める仮処分を申し立てたこと及びその理由(被告アルゼの見解)を述べているものであると理解させるものというべきである。 以上検討したところによれば、本件掲示の閲読者が、本件掲示を読んだときに、原告プレイモアが本件特許権を確実に侵害しており、かつ、別件仮処分申立てが直ちに認容されるものである旨を信じるものと認めることはできない。 イ ところで、一般に、ある者が仮処分を申し立てた場合に、その事実と申立ての理由となった見解を公表すること自体は、仮処分を申し立てることが市民の正当な権利である以上、直ちにこれをもって違法な行為ということはできない。 もっとも、その仮処分申立て自体が、仮処分によって裁判手続による救済を受けようとする目的ではなく、仮処分申立ては口実にすぎず、真実は専ら加害目的で相手方の信用を害する事実を公表する目的であったなどの特段の事情がある場合には、仮処分を申し立てた事実等の公表行為も、違法性を帯び得るものと解される。 ウ もし、原告らが主張するように、被告アルゼにおいて、本件パチスロ機の製造販売が本件特許権の侵害にあたることの調査を十分にせず、その根拠が薄弱なまま、別件仮処分申立てに及んだのであれば、そのような仮処分申立ては、仮処分によって裁判手続による救済を受けようとする目的ではなかったものと疑う余地があるので、検討する。 (ア) まず、本件特許権の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり分説することができる。 A 複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、 B 種々の図柄を複数列に可変表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄の組み合せを前記各列に停止表示する可変表示装置と、 C この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と、 D 遊技者が操作可能な停止ボタンからなり、 E この停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない可変表示停止手段と、 F-@ 前記可変表示開始手段からの信号に基づいて行われる、配当のある複数の異なる入賞態様に共通して現れる、複数の効果音の中から選択された効果音による報知、 -A および前記可変表示停止手段からの信号に基づいて行われる、 前記可変表示装置の複数種類の停止表示態様の中から選択された停止表示態様による報知 -B により形成される演出態様組合せを、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に基づいた報知情報として遊技者に報知する報知手段 G とを備えて構成される遊技機。 (イ) 別件仮処分申立事件の本案訴訟である、別件訴訟において提出された訴状、答弁書及び各準備書面(甲9、10、15〔各枝番を含む。〕。なお、別件訴訟の訴状〔甲9、15の1〕の内容と、別件仮処分申立書〔甲6、乙7〕の内容は、訴訟及び仮処分にそれぞれ特有の部分を除き、同一である。)によれば、別件訴訟の当初から、本件パチスロ機が上記構成要件のAないしEを充足することは当事者間に争いがなく、最終的には、当事者間の争点は、上記構成要件F(特に@の「効果音」の意義及びAの「停止表示態様」の意義)の充足性並びに本件特許権(請求項1)の無効理由の有無(特許法29条違反及び同法36条違反)にあったことが認められる。 (ウ) そこで、本件パチスロ機の構成要件F充足性について、被告アルゼがあらかじめどのような調査を行ったか検討する。 乙第1ないし第5号証及び弁論の全趣旨によれば、被告アルゼの従業員が、平成16年1月13日に東京都で行われた本件パチスロ機の発表会に赴いたことを認めることができる。 そして、被告アルゼと原告プレイモアは競業関係にあることからすれば、上記発表会に赴いた被告アルゼの従業員が、本件パチスロ機の実機を調査したことも、容易に推認することができる。 また、別件仮処分申立書(甲6、乙7)において、「パチスロ必勝本平成16年3月号」(乙13)の記載を援用し、これを疎明資料として申立書と共に提出していることからすれば、被告アルゼが、別件仮処分申立て前に、上記雑誌の記事による調査を行っていたことも認めることができる。 (エ) また、別件仮処分申立書(甲6、乙7)及び別件訴訟の被告アルゼの平成16年4月12日付け準備書面(1)(甲15の3)によれば、被告アルゼは、 別件仮処分申立ての当初、上記構成要件F-@について、「効果音による報知が、 配当のある複数の入賞態様すなわちメダルを獲得可能な入賞役の複数のものに共通して現れるもの」であり、「配当のある複数の入賞態様に共通して現れる効果音であるならば、換言すれば、複数の入賞態様ごとにそれぞれ異なる効果音が選択されるものでなければ」上記構成要件F-@を充足するものと解していたこと、上記構成要件F-Aについて、「複数列のリールの停止時における表示態様による報知」を意味し、「リールのバックライトの点消灯による表示態様」もこれに含まれるものと解していたことが認められる。 (オ) ここで、上記のとおりの本件特許権の特許請求の範囲の請求項1の記載や、本件特許権の特許公報(乙9)及び異議決定(乙10)の記載に照らしても、被告アルゼの上記(エ)の各解釈が、文理上あり得ないものとまでいうことはできない(事実、別件訴訟の第1審判決〔甲14〕は、上記構成要件F-Aについて、本件特許の明細書の記載を詳細に検討した上でその意味内容を判断している。)。 したがって、被告アルゼによる上記(ウ)の調査によって、本件パチスロ機が、被告アルゼの上記(エ)の各解釈を前提とした上記構成要件F-@及びAを充足する蓋然性が十分にあるという見解に達することができないものであれば、被告アルゼにおいて、本件パチスロ機の製造販売が本件特許権の侵害にあたることの調査を十分にしないまま、本件仮処分申立てに及んだものと認めることができる。 (カ) そこで検討するに、上記発表会においては、原告プレイモアの主張によっても、3時間にわたって行われ、会場に50台の本件パチスロ機の実機が設置されて、来場者が試遊することができたというものであるから、これに参加した被告アルゼ従業員の調査は、一定時間にわたり、本件パチスロ機の実機を自ら試遊し、あるいは他者が試遊するのを観察することによって行われたものと推認される。 そうすると、構成要件F-@及びAについての上記(エ)の解釈を前提とすれば、上記発表会に参加した被告アルゼの従業員による調査が、本件パチスロ機が上記構成要件F-@及びAを充足する蓋然性が十分にあるという見解に至ることができないものであると認めることはできない。 加えて、「パチスロ必勝本平成16年3月号」(乙13)に、「消灯演出」として、「ストップボタン停止毎にリールが消灯」、「STOPボタンに連動してリール消灯を伴った場合は、消灯数に応じて対応役が存在」と記載されていることに照らせば、構成要件F-Aについての上記(エ)の解釈を前提とすれば、上記雑誌記事による調査によって、被告アルゼが、本件パチスロ機が上記構成要件F-Aを充足する蓋然性が十分にあるという見解に至ることができたものと認めることができる。 (キ) この点につき、原告らは、わずか1時間程度の実機調査によって、 本件パチスロ機の構成を確認し、被告アルゼが有するどの特許のいかなる構成要件に抵触するかを特定することは到底不可能であると主張する。しかし、被告アルゼの見解による本件特許権の構成要件の充足性に関して、1時間程度の実機調査ではそれが不可能であるとは認めがたいから、原告らの主張は採用できない。 また、原告らは、本件発表会において、被告アルゼの従業員が、1時間もの長時間にわたって本件パチスロ機の実機を独占して動作させ、調査を行うこと自体が不可能であると主張するが、上記のとおり、被告アルゼの従業員が長時間本件パチスロ機の実機を独占することは必要ではないから、これも上記結論を左右するものではない。 (ク) また、原告らは、被告アルゼが、別件仮処分申立事件及び別件訴訟事件において、その提起当初、十分に申立原因ないし請求原因を特定することができず、相当の期間経過後に、主張の構成を変更したことも、被告アルゼが、別件仮処分申立ての当時、十分な調査を行っていなかったことを示すものと主張する。 しかしながら、被告アルゼが、別件仮処分申立ての当時、十分に申立原因ないし請求原因を特定することができなかったと認めるに足りる証拠はない。 かえって、別件仮処分申立書(甲6、乙7)並びに別件訴訟で提出された訴状、答弁書及び各準備書面(甲9、10、15〔各枝番を含む。〕によれば、被告アルゼは、同被告が必要と考える範囲で、申立原因ないし請求原因を特定して主張していたと認めることができるところである。 また、上記各証拠及び甲第11号証によれば、被告アルゼが、別件訴訟において、平成16年10月15日付け被告アルゼ準備書面(4)に至って、原告プレイモアの主張を受けた再度のROM解析及び実機による確認の結果として、演出表示態様の主張を変更し、さらに、同月25日に行われた別件訴訟の第3回弁論準備手続において、被告アルゼ代理人が、「被告製品において、一般遊技における『04H』音と液晶部からの音の組合せによる効果音は、本件特許発明に特許請求の範囲の『効果音』に該当すると主張する。」旨陳述したことが認められる。 しかしながら、一般に、特許権侵害訴訟において、訴訟の進行に伴い、相手方の主張立証や自らの再検討・再調査に基づいて、主張を変更することはしばしば見られることであり、これをもって、訴訟の提起時に十分な調査を行っていなかったことを示すものとはいえない。 したがって、原告らの上記主張は、採用することができない。 (ケ) そして、他に、被告アルゼにおいて、本件パチスロ機の製造販売が本件特許権の侵害にあたることの調査を十分にせずに、その根拠が薄弱なまま、別件仮処分申立てに及んだものと認めるに足りる証拠はない。 エ 上記ウのとおり、被告アルゼが、本件パチスロ機の製造販売が本件特許権の侵害にあたることの調査を十分にしないまま、別件仮処分申立てを行ったと認めることはできない。 そして、他に、別件仮処分申立てが、仮処分によって裁判手続による救済を受けようとする目的ではなく、専ら加害目的で原告らの信用を害する事実を公表する目的でされた等の特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって、本件掲示も、違法なものということはできない。 (2) 〔原告らの主張〕ウについて ア 原告らは、本件掲示中の、〔原告らの主張〕ウ(ア)の記載を捉え、これを閲読した者をして、原告プレイモアが、被告アルゼに対して恩を仇で返す態度をとったと誤信させるものであると主張する。 しかしながら、「原告プレイモアが、被告アルゼに対して恩を仇で返す態度をとったと誤信させる」内容は、結局、原告プレイモアが、本件パチスロ機の製造販売により、被告アルゼの特許権を侵害したということに帰着する。 そして、上記(1)アで検討したとおり、本件掲示を閲読したものが、原告らが主張するように信じるものとは認められないから、この点についての原告らの主張は理由がない。 イ なお、原告らは、「被告らは、上記記載部分に関しては、積極的な反論を一切行っておらず、よって、上記記載部分を含む本件掲示が行われたことによって原告プレイモアが経済的信用を毀損されたことの損害の賠償額に係る判断に際しては、被告らは原告らの主張を争わないものとされることは当然である。」と主張するので念のため付言する。 本件の訴訟経過において、原告らが、〔原告らの主張〕ウの主張をしたのは、平成17年9月1日の第8回弁論準備手続で陳述された同年8月29日付け原告ら準備書面(5)において主張したのが初めてであり、それまでの間は、一般不法行為としては、〔原告らの主張〕イに係る記載部分についてのみを問題とした主張をしていたことは、当裁判所に明らかである。 したがって、上記原告ら準備書面(5)が提出されるまで、被告らにおいて、原告らの上記主張について特段の反論をしないことは当然である。 しかるに、原告らは、上記原告ら準備書面(5)において初めて上記主張を行った上で、直ちにこれに続けて、被告らが積極的な反論をしていないから、「被告らは原告らの主張を争わないものとされることは当然である。」と主張したにすぎないものであるから、上記主張は採用することができない。 (3) 以上のとおりであるから、一般の不法行為に基づく原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 2 争点(2)について (1) 原告らによる不正競争行為に基づく請求原因の追加の許否について検討する。 本件の審理が以下のとおりの経過を辿ったことは、当裁判所に明らかである。 ア 原告らは、平成16年8月26日、訴状を提出し、同年10月18日に第1回口頭弁論期日が開かれた。 イ 同年11月2日に開かれた第2回口頭弁論期日において、当裁判所は、 原告らに対し、被告らのいかなる行為をもって不法行為として主張する趣旨か釈明を求めた。 これに対し、原告らは、同月17日に提出し、同年12月16日に行われた第1回弁論準備手続期日において陳述した原告ら準備書面(1)において、「原告らは、被告らが本件掲示…を行ったことを、被告らの不法行為として主張するものである。」、「原告らは、メタルスラッグが被告アルゼの保有する特許権を侵害するか否かという結果如何にかかわらず、被告らが、本件掲示を行った時点において、根拠にもとづかず本件掲示を行ったことを問題とするものである。」と釈明した。 ウ その後、原告らと被告らは、平成17年6月16日に行われた第6回弁論準備手続期日までの間、被告アルゼが、別件仮処分申立てを行い、本件掲示を行うまでに、本件パチスロ機についてどのような調査を行ったか、また、被告アルゼが、真実本件パチスロ機が本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属すると考えたか否かについて、主張立証を行った。 この間、本件パチスロ機が本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属するか否かについては、原告らが、結論として属していない旨主張することはあったが、具体的な主張はされておらず、当然、この点についての審理もされていない。 エ 原告らは、同年7月19日、同日付原告ら準備書面(4)を提出し、これによって、本件掲示は虚偽の内容を含むものであり、被告らによる本件掲示は不正競争にあたるとの請求原因を追加しようとした。 当裁判所は、従前主張立証がされてきた、不法行為に基づく請求については、既に判決に熟していると考えたため、同月21日に行われた第7回弁論準備手続期日において、原告らによる上記請求原因の追加の許否については、被告らの意見を聴いた上で、次回弁論準備手続期日までに検討することとし、上記準備書面については陳述を留保させて、弁論準備手続を続行した。 オ 同年9月1日に行われた第8回弁論準備手続期日において、当事者双方の意見を聴いた上、当裁判所としては、原告らによる上記請求原因の追加の許否については、判決において示すこととして、原告らに、上記準備書面を陳述させた上で、弁論準備手続を終結し、即日、第3回口頭弁論期日を開いて、口頭弁論を終結した。 (2)ア 原告らが当初から主張した不法行為に基づく請求原因(以下「請求原因@」といい、これによって特定される訴訟物を以下「訴訟物@」という。)は、本件パチスロ機が本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属するか否かと関係なく、被告らが本件掲示をしたことが不法行為であるとするものである。 そのため、本件においては、本件パチスロ機が本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属するか否かについては、何らの具体的な審理も行っていない。 したがって、仮に、原告らが平成17年7月19日付け原告ら準備書面(4)によって追加しようとする、虚偽事実の告知流布という不正競争行為に基づく請求原因(以下「請求原因A」といい、これによって特定される訴訟物を以下「訴訟物A」という。)の追加を許し、原告らが主張するように、本件掲示が、本件パチスロ機が本件特許権の侵害品であるという虚偽事実の告知を含むものであるか否かについて審理を行うとすれば、全くの最初から、本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲の解釈、本件パチスロ機の構成の特定及び本件パチスロ機の上記発明の技術的範囲への属否について審理を遂げ、かつ、別件訴訟において本件特許権について無効理由があるか否かも争点とされている(甲14)ことに照らせば、場合によってはこの点についても審理を遂げて、判断を行う必要がある。 仮に、本件においてこのような審理を行うとすれば、被告アルゼと原告プレイモアが別件訴訟を遂行していることにより、ある程度の審理期間の短縮は図られるとしても、なお、相当の期間を要することは明らかである。 そして、上記(1)のとおり、原告らが請求原因Aを追加しようとした時点で、請求原因@については、既に判決に熟していたのであるから、この請求原因の追加によって、本件訴訟手続を著しく遅滞させることは明らかである。 イ なお、原告らは、別件判決が、本件パチスロ機が、本件特許権(請求項1)の発明の技術的範囲に属しないことを理由として被告アルゼの請求を棄却したことからしても、本件掲示の内容が虚偽であることは明らかであると主張する。 しかし、別件判決の理由中の判断には既判力は生じない(そもそも被告P1は別件訴訟の当事者ですらない。)が、仮にそのことをさておくとしても、そもそも別件判決は確定していないのであるから、別件判決が原告らに有利な証拠となるかはともかく、これのみをもって本件掲示の内容が虚偽であることを認めるには足りない。したがって、原告らの上記主張は採用の限りでない。 また、原告らは、人証の取り調べが未だ一切行われていないという本件の審理状況下で請求原因Aの追加をし、原告らが主張立証活動をしても、著しく訴訟活動を遅滞させることなど到底あり得ないと主張する。 しかしながら、上記のとおり、請求原因@については、請求原因Aを追加しようとした原告ら準備書面(4)(平成17年7月19日付け)を提出した直後である平成17年7月21日の第7回弁論準備手続期日が行われた時点で、審理は判決に熟していたのであり、人証調べが行われていないからといって、請求原因Aの主張立証によって著しく訴訟手続を遅滞させないということはできない。 事実、上記(1)のとおり、平成17年9月1日に行われた第8回弁論準備手続期日において、弁論準備期日を終結し、即日、第3回口頭弁論期日を開いて、 原告らの証人申請をいずれも却下し、人証調べを行わずに口頭弁論を終結したという本件の審理経過に照らせば、請求原因Aについての審理を行うとすれば、相当の期間が必要となり、本件訴訟手続を著しく遅滞させることとは明らかである。したがって、原告らの上記主張も採用することができない。 (3)ア なお、原告らは、本件掲示の内容が虚偽であるということは、原告らの損害額を判断するに際して、極めて重要な判断要素となることは当然であるから、 別件訴訟において判決が言い渡された以上、原告らが請求原因を追加することは至極当然であると主張する。 しかし、訴訟物@と、訴訟物Aとは異なるものである。したがって、別件判決は、訴訟物@の損害額の算定において考慮要素となることは格別、請求原因Aを追加することを当然とするものではない。 イ また、原告らは、民事裁判は権利侵害を受けた被害者が被害の回復を求める場であり、原告らは、本件掲示によって甚大な損害を被った被害者であるから、本件訴訟の遂行中に、訴訟提起後の重大な事情変更として、別件訴訟において判決が言い渡された以上、真の被害回復を求めるべく請求原因の追加を行うことは、原告らの正当な権利の行使以外の何ものでもないとも主張する。 しかしながら、上記アのとおり、訴訟物@と訴訟物Aは異なるものである以上、原告らとしては、本件において請求原因Aを追加せずとも、請求原因Aを主張する新たな訴訟の提起を妨げられるものではない。そして、上記(2)のとおり、 本件において請求原因Aの追加を許すならば、これによって本件の訴訟手続を著しく遅滞させることとなるのであることに照らせば、請求原因Aを追加することは、 原告らの正当な権利行使ということはできない。 (4) 以上のとおり、原告らによる請求原因Aの追加は、これにより本件の訴訟手続を著しく遅滞させることとなるものであり、不当であるから、民事訴訟法143条4項により、これを許さないこととする。 3 結論 以上のとおりであるから、原告の請求はいずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 |
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追加 | |
(別紙)特許権目録発明の名称遊技機出願日平成10年11月25日(特願平11-261848号)公開日平成12年5月16日(特開2000-135305号)登録日平成12年4月14日特許番号第3056742号異議決定平成14年2月14日(異議2000-74578号)異議決定による訂正後の特許請求の範囲の請求項1複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し、抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき、その属した入賞態様の当選フラグを成立させる入賞態様決定手段と、種々の図柄を複数列に可変表示し、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄の組み合わせを前記各列に停止表示する可変表示装置と、この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と、 遊技者が操作可能な停止ボタンからなり、この停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが、前記当選フラグが成立していても、前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されないと、前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない可変表示停止手段と、前記可変表示開始手段からの信号に基づいて行われる、配当のある複数の異なる入賞態様に共通して現れる、複数の効果音の中から選択された効果音による報知、および前記可変表示停止手段からの信号に基づいて行われる、前記可変表示装置の複数種類の停止表示態様の中から選択された停止表示態様による報知により形成される演出態様組合せを、前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に基づいた報知情報として遊技者に報知する報知手段とを備えて構成される遊技機。 (別紙)掲示文書目録題名:メタルスラッグ製造販売差止仮処分の申立について本文:当社は、平成16年2月6日、所有特許第3056742号(発明名称「遊技機」)に基づき、株式会社SNKプレイモアに対して、同社の製造販売するパチスロ機「メタルスラッグ(METALSLUG)」の製造販売等を差し止める仮処分を東京地方裁判所に申し立てました。上記特許権は、内部抽選によって決定された入賞態様が遊技の進行に従い、入賞態様に対応して遊技者に報知する事を内容とするものです。当社は、株式会社SNKプレイモアの前身である株式会社SNK(現在破産手続中)に対して、その破綻直前に多額の資金援助を行い、約51%の株式を保有して子会社化するとともに、経営再建策としてパチンコ・パチスロ開発のノウハウ等をいちから伝授してパチンコ・パチスロ製造販売事業に参画させておりました。株式会社SNKプレイモアは、かかる経緯があるにもかかわらず、 当社保有の特許権を尊重せず、これを無断で実施した為、この度、差止め仮処分の申立に及んだものです。 以上 |
裁判長裁判官 | 山田知司 |
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裁判官 | 高松宏之 |
裁判官 | 守山修生 |