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事件 平成 14年 (ネ) 6392号 不正競争行為差止等請求控訴事件
平成 15年 (ネ) 1339号 同附帯控訴事件
控訴人(附帯被控訴人) 株式会社ベルーナ
訴訟代理人弁護士 中村勲
被控訴人(附帯控訴人) 株式会社シムリー
訴訟代理人弁護士 小林 十四雄
同 佐藤水暁
同 生天目 麻紀子
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/05/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の,附帯控訴費用は被控訴人(附帯控訴人)の各負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
(控訴の趣旨) 1 原判決中,控訴人(附帯被控訴人,以下「控訴人」という。)敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人(附帯控訴人,以下「被控訴人」という。)の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(附帯控訴の趣旨) 1 原判決を次のとおり変更する。
2 控訴人は,原判決別紙「商品目録」の被告商品@,A,CないしE,G,H,J及びK記載の各商品を製造,譲渡し,譲渡のための広告をしてはならない。
3 控訴人は,被控訴人に対し,926万0005円及びこれに対する平成14年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。
事案の概要
本件は,カタログによる通信販売を行う被控訴人が,同じくカタログによる通信販売を行う控訴人に対し,被控訴人の発行するカタログに掲載し,販売した商品について,控訴人がその形態を模倣した商品を製造,販売した行為は,不正競争防止法(以下「法」という。)2条1項3号に規定する不正競争行為に該当すると主張して,製造,販売等の差止め及び損害賠償の請求をした事案である。原判決は,原審で審理の対象となった原判決別紙「商品目録」の原告商品@ないしK記載の各商品及び被告商品@ないしK記載の各商品(以下,目録記載の番号に従って「原告商品@」,「被告商品@」のように略称し,これらを総称して「本件各原告商品」,「本件各被告商品」のようにいう。)のうち,7品目(被告商品@,A,C,E,G,J及びK)に係る製造,販売等の差止め請求及び8品目(被告商品@,A,C,E,G,IないしK)に係る損害賠償請求を認容した。これに対し,控訴人は,原判決中,上記各認容部分の取消しを求めて控訴し,被控訴人は,原審において敗訴した2品目(被告商品D及びH)に係る製造,販売等の差止め及び損害賠償を求めて附帯控訴した。
なお,被控訴人は,当審において,被告商品B及びFに係るすべての請求(差止め及び損害賠償)並びに損害賠償請求のうち附帯控訴の趣旨第3項に係る額を超える部分について請求を減縮するとともに,被告商品Iに係るすべての差止め請求並びに被告商品@,A,CないしE,G,H,J及びKに係る貸渡し及び貸渡しのための広告の差止め請求について不服の申立てをしていないため,以上の各請求は当審における審理の対象となっていない。
本件の前提となる事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」中,被告商品@,A,CないしE,GないしKの関係部分のとおりであるから,これを引用する。
1 控訴人の当審における主張 (1) 争点2(同種の商品が通常有する形態)について 原告商品@,A,C,E,G,IないしKは,いずれも通常の生活において,ありふれた婦人用の被服類にすぎない形態のものであり,その形態が,格別に開発費用を要したとか,開発リスクを生じたとか,在来の物と比較して特異なものであるとはいえないから,法2条1項3号括弧書きにいう「同種の商品が通常有する形態」に該当する。
原判決は,以下のとおり,本件各原告商品に見られる微細な装飾に属する点を特徴ないし個性ととらえて,その形態が「同種の商品が通常有する形態」に該当しないと判断しているが,個々の商品の微細な点を殊更に重視するものであって不当である。
ア 原告商品@の形態について 原判決は,原告商品@(ロングスカート)の形態の特徴として,「ボトム丈長めのマーメイドラインのシルエットで,裾部分に二段レースが施され,その上部にスパンコールが施された」との点を挙げている。しかし,同商品のボトム丈90センチメートル前後という寸法は,我が国の女性用のロングスカートとしては一般的なものであるし,マーメイドラインのシルエットの点も一般的なシルエットラインであり,裾の二段レースとその上のスパンコールについても,そうした装飾を施すのは近時の流行であって,いずれも原告商品@の形態の特徴というべきものではない。
イ 原告商品Aの形態について 原判決は,原告商品A(婦人用カーディガン)の形態の特徴として,「ラメの入った金色を基調として前あきから首周りまでを金色のスパンコールで囲み,裾と袖の端に波形のメロー始末を施した」との点を挙げている。しかし,同商品の形状は,婦人用カーディガンの普通の形状シルエットであり,襟等の部分にスパンコール材を使うことや袖部分をメロー始末とすることは一般的なことであって,原告商品Aの形態の特徴というべきものではない。
ウ 原告商品Cの形態について 原判決は,原告商品Cの形態の特徴として,「襟ぐりを縁取ったカギ針編み部分,胸元及び襟ぐりの両側に枝状にみえる刺繍などが施された」との点を挙げている。しかし,原告商品Cは袖なしのチョッキ風のものであるのに対し,被告商品Cは婦人用の長袖のプルオーバーであって,そもそも商品が基本的に異なる上,原判決指摘のカギ針編み部分や刺繍を施すことはごくありふれたことであって,原告商品Cの形態の特徴というべきものではない。
エ 原告商品Eの形態について 原判決は,原告商品E(婦人用カーディガン)の形態の特徴として,「襟ぐりや前合わせ部分,袖にパイピングレースの施された」との点を挙げている。しかし,同商品は,婦人用カーディガンとして極めてありふれた商品形態のものであり,カーディガン等の被服類の前合わせ,襟,袖口の部分にパイピングレースを施すのも極めてありふれたことであって,原告商品Eの形態の特徴というべきものではない。
オ 原告商品Gの形態について 原判決は,原告商品G(婦人用ワンピース)の形態の特徴として,「原告商品Gのようなシルエットで,かつ,前合わせの胸元部分のカシュクールデザイン及び裾のイレギュラーヘムがあるデザイン」であるとの点を挙げている。しかし,婦人用ワンピース類の襟元・胸元部分にカシュクールデザインを,裾部分にイレギュラーヘムを施すのもありふれたことであって,原告商品Gの形態の特徴というべきものではない。
カ 原告商品Iの形態について 原判決は,原告商品I(ブラジャーとショーツの組み合わせ)の形態の特徴として,ブラジャーが「3本の編み込み式の紐の途中にリボンが付され,そこから3本の別々の紐になっている構成の肩紐を有する」との点,また,ブラジャー及びショーツが「ピンクの花びら3枚と緑色の葉からなる刺繍を付けた」との点を挙げている。しかし,これらの商品は,大局的に見て,ありふれた形態であって,原判決指摘の点は,原告商品Iの特徴というべきものではない。
キ 原告商品Jの形態について 原判決は,原告商品J(婦人用カーディガン)の形態の特徴として,「襟,首まわりにレースが施され,胸元で通しリボンを結ぶことができるもの及び七分袖丈の袖口部分のフリル,裾部分のメロウ仕上げがあるもの」との点を挙げている。しかし,同商品は,婦人用カーディガンとしてありふれた形態のものであり,原判決指摘の点もありふれた仕上げであって,原告商品Jの特徴というべきものではない。
ク 原告商品Kの形態について 原判決は,原告商品K(キャミソールとスカートの組み合わせ)の形態の特徴として,「キャミソール,スカートを総レースの2枚重ねとし,レースには柄を点在して施し,スカートの全体形状をマーメイドラインとして裾をイレギュラーヘムとした」との点を挙げている。しかし,裾にレースを施したもの,マーメイド形状のもの,裾にイレギュラーヘムを施した商品はありふれており,原判決指摘の点は,原告商品Kの特徴というべきものではない。
(2) 争点3(損害額)について 被控訴人は,その基本方針として,一度販売した商品は再び同じ形態の商品として販売せず,定められた販売時期を過ぎて余った在庫品も処分して市場に出さないこととしているのであり,他方,控訴人が本件各被告商品を販売した時期はいずれも被控訴人の販売時期を過ぎていたのであるから,控訴人の販売利益をもって被控訴人の損害額とされるべき関係にない。にもかかわらず,原判決は,控訴人の販売金額から仕入金額を控除し,更に販売費及び一般管理費として15パーセント相当額を差し引いた額をもって被控訴人の損害額としており,不当である。
2 被控訴人の当審における主張 (1) 控訴人の上記主張はすべて争う。
(2) 附帯控訴に係る請求について ア 原告商品Dと被告商品Dの同一性について 原判決は,原告商品D(婦人用ショート丈ジャケット)と被告商品Dの形態につき,「原告商品Dと被告商品Dは,襟にファーが付けられている点はほぼ同一であるが,襟の大きさが異なること,原告商品Dの色彩はスモーキーピンク,被告商品Dの色彩はベージュであることから,原告商品Dと被告商品Dとは,需要者にかなり異なる印象を与える」として,その実質的同一性を否定する。
しかし,原告商品Dの形態において特徴的な点は,全体のシルエット,前身の両サイドの切り返しと胸の部分のダーツ,ファーの襟の形状,細いウエストリボンとその位置,若干光沢のある淡い色調であるところ,被告商品Dは,そのすべての点において原告商品Dと同一である。また,原判決は,上記のとおり,襟の大きさが異なる旨を判示するが,実際には大きさも形も同一である。
したがって,原告商品Dと被告商品Dの形態は,実質的に同一というべきであり,これを否定した原判決は不当である。
イ 原告商品Hと被告商品Hの同一性について 原判決は,原告商品H(スカート)と被告商品Hの形態につき,「原告商品Hと被告商品Hは,裾部分のレース模様自体は類似するものの,原告商品Hでは,レースが二段であるが,被告商品Hはこれが一段であること,被告商品Hは原告商品Hよりも17センチほど丈が長く,ゴアでまちが形成されたシルエットは,裾のイレギュラーヘムが同じではあっても,需要者にかなり異なる印象を与える」として,その実質的同一性を否定する。
しかし,原告商品Hの特徴は,両サイドよりも中央部分の丈が短くなるような前部分のイレギュラーヘム,中央よりやや下部分に絞りを入れた両サイドのライン等のシルエット,裾部分のレース,及び全体の濃い色調にあるところ,被告商品Hは,前部分のイレギュラーヘムの形も同一であるし,両サイドのラインも中央よりやや下部分に絞りを入れている点で同一であり,全体のシルエットがほぼ同一である。また,裾部分のレースの柄も同一であり,その段数も,前部分においては原告商品Hが二段,被告商品Hが一段と異なるものの,後部分においては両者とも一段である点で同一であるし,全体の濃い色調も同一である。
したがって,原告商品Hと被告商品Hの形態は,実質的に同一というべきであり,これを否定した原判決は不当である。
ウ よって,被告商品D及びHについても,被控訴人の差止請求は認容されるべきであるし,損害賠償額は,原判決の認容額に,控訴人が上記両商品を販売したことによって得た利益額(各商品の販売金額から仕入金額を控除した額の合計)248万3380円を上乗せした926万0005円とすべきである。
当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の控訴人に対する請求は,原判決が認容した限度で理由があるが,その余は失当であると判断する。その理由は,次のとおり訂正,付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」中,被告商品@,A,CないしE,GないしKの関係部分のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の訂正 原判決23頁23行目の「同一である」を「同一であり,その襟の大きさ自体もほぼ同一である」に,同頁25行目から末行の「被告商品Dの方が,立て襟が原告商品のものよりも大きい点が相違する」を「被告商品Dは,襟内側及び前合わせ部分だけでなく背中部分を含めた裏地全面にファーが付けられている点,また,そのため,ファーの付された襟部分と背中部分とに連続性があり,襟の折り方次第では,襟が原告商品Dのものよりも大きいとの印象を与える点,被告商品Dのファーの質感が原告商品Dのそれに比べ剛である点が相違する」に,24頁8行目の「襟にファーが付けられている」から同頁10行目の「ベージュであること」までを「襟にファーが付けられており,その襟の大きさ自体もほぼ同一であるが,襟に付されたファーの質感や襟の大きさに関する印象が異なること,原告商品Dの色彩はスモーキーピンク,被告商品Dの色彩はベージュであり,被控訴人自身,自らのカタログ(甲2)においては,原告商品Dの色彩の特色をセールスポイントとして相当に強調していること」に,同頁14行目の「被告商品B」を「被告商品D」に,「原告商品B」を「原告商品D」に改める。
2 控訴人の当審における主張について (1) 争点2(同種の商品が通常有する形態)について 控訴人は,原告商品@,A,C,E,G,IないしKは,いずれも通常の生活において,ありふれた婦人用の被服類にすぎない形態のものであるから,法2条1項3号括弧書きにいう「同種の商品が通常有する形態」に該当する旨主張し,これを否定した原判決は,本件各原告商品に見られる微細な装飾に属する点を特徴ないし個性ととらえて,殊更に重視するものであって不当であるとして論難する。
しかしながら,本件各原告商品は,被控訴人が原告カタログに掲載し通信販売の方法により販売した婦人用の服飾品であるところ,このような商品にあっては,デザインや装飾,更にはその組み合わせの優劣が需要者にとって重大な考慮要素となることは取引上の経験則に照らし明らかであるから,上記引用に係る原判決が,原告商品@,A,C,E,G,IないしKにつき,その形状,模様,色彩ないしこれらの結合等において特徴的な形態であると認定した点は,上記観点から需要者に訴えるために独自に選択使用されたものと認めて妨げはなく,同種の商品であれば当然有しているようなありふれたものであるということはできない。したがって,上記原告商品の形態が法2条1項3号括弧書きにいう「同種の商品が通常有する形態」に該当しないとした原判決の判断は是認するに足り,控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 争点3(損害額)について 控訴人は,被控訴人は,定められた販売時期を過ぎれば余った在庫品も処分して市場に出さないこととしているのであり,他方,控訴人が各係争商品を販売した時期はいずれも被控訴人の販売時期を過ぎていたのであるから,控訴人の販売利益をもって被控訴人の損害額とされるべき関係にない旨主張する。
しかしながら,本件各原告商品及び本件各被告商品の形態上の実質的同一性,当事者双方ともカタログを利用した通信販売の方法によって商品を販売し,顧客層類似していること,本件各原告商品が原告カタログに掲載されて販売された後,それほど時期をおかずに本件各被告商品が被告カタログに掲載されて販売されていることなどにかんがみると,控訴人の主張事実だけでは,法5条1項による推定を覆すに足りないというべきであるから,上記主張は,それ自体失当というほかはない。
3 附帯控訴に係る請求について 原告商品Dと被告商品Dとの間及び原告商品Hと被告商品Hとの間にその形態の実質的同一性を認めることができないことは,上記1のとおり訂正して引用する原判決の判示(原告商品Dと被告商品Dの同一性につき,原判決23頁15行目ないし24頁13行目,原告商品Hと被告商品Hの同一性につき,同28頁8行目ないし29頁12行目)のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,被控訴人の附帯控訴に係る請求は,いずれも理由がない。
4 結論 以上のとおり,被控訴人の控訴人に対する請求は,原判決が認容した限度において理由があるが,その余は失当であるから,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも理由がない。
よって,本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 早田尚貴
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