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事件 平成 13年 (ワ) 12434号 不正競争行為差止等請求事件
原告 PCフレーム協会
原告 株式会社ピー・シー・フレーム
原告ら訴訟代理人弁護士 安原正之
同 佐藤治隆
同 小林郁夫
同復代理人弁護士 鷹見雅和
同補佐人弁理士 福田武通
同 福田賢三
同 福田伸一
被告 斜面受圧板協会
被告 日本ゼニスパイプ株式会社
被告 吉佳株式会社
被告 株式会社エスイー
被告ら訴訟代理人弁護士 吉武賢次
同復代理人弁護士 宮嶋学
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/12/19
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告日本ゼニスパイプ株式会社,同吉佳株式会社及び同株式会社エスイーは別紙製品目録2記載の受圧板を製造又は販売してはならない。
2 被告らは,前項記載の受圧板の製造・販売のために同受圧板を展示してはならない。
3 被告らは,第1項記載の受圧板に「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」又は「スクエアタイプ」の名称を付してはならない。
4 被告日本ゼニスパイプ株式会社,同吉佳株式会社及び同株式会社エスイーは,連帯して,原告株式会社ピー・シー・フレームに対し,2896万2000円を支払え。
5 訴訟費用は,被告らの負担とする。
6 仮執行宣言
事案の概要
本件は,原告らが,原告らが製造しているプレストレストコンクリート(圧縮軸力を付与した高強度コンクリート)製斜面受圧板であるPCフレーム(別紙製品目録1記載の製品。以下,これら製品を「原告製品」と総称する。)の3つのタイプである,クロスタイプ,スクエアタイプ,セミスクエアタイプの名称及び形状が,原告らの著名又は周知な商品等表示であり,被告らが,同名称と同一の名称を使用し,かつ,同形状と類似した形状の別紙製品目録2記載の製品(以下「被告製品」と総称する。)を製造・販売等しているとして,被告らに対し,不正競争防止法2条1項1号及び2号に基づき,被告製品の製造・販売等の差止め及び損害賠償を求めている事案である。
1 争いのない事実等(末尾に証拠を付記した事実以外は,当事者間に争いがない。) (1) 当事者 ア 原告PCフレーム協会(以下「原告協会」という。)は,昭和61年12月設立され,押圧力により斜面(法(のり)面)を安定化させる斜面受圧板である「PCフレーム」(原告製品)及びこのPCフレームの施工に関するPCフレーム工法の普及を目的とする,企業を構成員とする権利能力なき社団である。原告協会は,原告協会所属の会員企業により運営されている(甲37)。
原告株式会社ピー・シー・フレーム(以下「原告会社」という。)は,プレストレストコンクリート製の斜面受圧板である原告製品を開発し,原告協会の設立当時から,原告製品を使用し斜面の工事を行ってきた。(弁論の全趣旨)。
イ 被告斜面受圧板協会(以下「被告協会」という。)もまた,企業を構成員とする権利能力なき社団であり,平成11年2月ころ設立された。被告協会は,被告協会に所属する会員企業と共にグループを構成して,被告協会に属する会員企業が製造・販売及び施工するコンクリート製の「PUC受圧板」(被告製品)の製造・販売及び施工のための宣伝活動を専ら行っている。被告製品は,原告製品同様,押圧力により斜面を安定化させるプレストレストコンクリート製の斜面受圧板である。
被告日本ゼニスパイプ株式会社(以下「被告ゼニス」という。)は,コンクリート製品の製造・販売を目的とする会社であり,被告協会設立後の平成11年2月ころから,被告製品を製造して被告協会所属の会員企業に販売している。
被告株式会社エスイー(以下「被告エスイー」という。)は,土木建築材料の販売を目的とする会社であり,平成11年2月ころから被告製品の施工に関する設計及び被告製品の販売を行っている。
被告吉佳株式会社(以下「被告吉佳」という。)は,被告協会所属の会員企業であり,被告製品により施工する者から,工事施工高に応じロイヤリティーを得ている会社である。
(2) 原告会社が開発し,販売してきた原告製品の形状は,別紙製品目録1記載のとおりであり,その名称は,「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」である。
(3) 被告ゼニス,同エスイー,同吉佳が販売している被告製品の形状は,別紙製品目録2記載のとおりであり,その名称は,「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」である。
2 争点 (1) 「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」というコンクリート製斜面受圧板の名称は,原告らの周知又は著名な商品等表示といえるか(争点1)。
(2) 別紙製品目録1記載のコンクリート製斜面受圧板の形状は,原告らの周知又は著名な商品等表示といえるか(争点2)。
(3) 原告らの損害(争点3)
争点に関する当事者の主張
1 争点1及び2について (1) 原告らの主張 ア 原告協会及び原告会社の位置づけ 原告協会は,原告製品及びこれを使用したPCフレーム工法の宣伝活動を行うため,原告製品に「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の3つの名称を付したカタログ(甲15ないし20)及び冊子等を作成・配布し,原告製品の施工者を対象とした技術説明会を開催するなどの活動を行ってきた。原告協会所属の会員企業各社は,原告協会が作成したカタログ,上記各冊子等を配布し,また原告製品を使用して切取り斜面を施工してきた。原告会社は,法面に押圧力を付与して斜面の安定化を図るプレストレストコンクリート製の斜面受圧板である原告製品を世界で初めて開発し,原告協会の設立当時から原告製品を使用し斜面の施工工事を行ってきた。また原告会社は,原告製品並びにPCフレーム工法に関し,意匠権及び特許権を有し,原告協会設立後はこれらを原告協会所属の会員企業のみに実施させ,同会員が施工した工事施工高に応じ一定の実施料を得ている。
従来,切取り斜面を養生する場合には,現場打ちコンクリート枠工法(鉄筋コンクリート製法枠を用いる。)やフリーフレーム工法(吹付けモルタル法枠工法)で施工されていたが,コンクリートやモルタルが硬化するまで,斜面を切り崩した状態が続き,工期に長期間を要していた。原告製品は,プレストレストコンクリート製で,複数の原告製品を上方から数段又は横方向に隣接して施工することで,斜面・法面の安定化を容易に図ることができる(逆打工法という。)。原告製品は,今までにない特徴ある形状と相まって施工期間の短縮化,受圧板の軽量化による作業性の簡素化と安全性を実現できるため,官庁及び業界の内外から絶賛を受け,原告協会が設立された昭和61年12月以後全国的に展開してきた。原告製品の形状及び3つのタイプの名称は,平成6年当時には,既に原告協会及び原告協会所属の会員のグループを表す商品等表示として共に周知,著名となっていた。
イ 原告らの普及活動 原告協会は,次のカタログ及び冊子を作成するなどの原告協会所属の会員企業の普及活動により,これらを全国の原告協会所属の会員企業,ゼネコン,施工業者,施主,役所及びコンサルタント等に配布するなどしてきた。@カタログ「PCフレーム工法」は,特徴ある原告製品の形状が記載されており,平成7年から平成9年ころまで配布したものであるが,現在まで年間4000ないし5000部配布されている。A「PCフレームアンカー工法設計・施工の手引き」は,昭和62年に初版を発行して以来,数度の改訂を行ってきたが,平成10年に大改訂を行った。その内容は原告製品の取扱説明及び原告製品の形状及び名称などである。
B「PCフレーム工法標準積算資料」は,昭和62年に初版を発行して以来改訂を重ね,平成10年,「建設省土木工事積算基準」の公表に伴い大幅な改訂を行って,同年10月,大改訂初版を発行した。Cまた原告協会は,上記冊子の発行に加えて,1年に数回各地で原告製品の取扱についての技術講習会・シンポジウムを開催するほか,PCフレーム工法に関するビデオの配布を行ってきた。
雑誌及び書籍における原告協会の広告や原告製品に関する記事等の掲載状況は,別紙「PCフレーム協会発表一覧」のとおりである。(ア)雑誌「基礎工」は昭和62年2月から平成10年12月までの広告掲載であるが,実際に施工した現場写真によりクロスタイプの形状が掲載されている。(イ)雑誌「土木施工」には,セミスクエアタイプの形状が掲載され,(ウ)雑誌「土木技術」にもセミスクエアタイプの施工状況が掲載され,(エ)雑誌「土と基礎」は,平成2年5月から平成11年11月までクロスタイプ又はセミスクエアタイプの施工状況の掲載が行われている。(オ)「日経コンストラクション」には施工現場写真が,(カ)雑誌「地すべり技術」には,セミスクエアタイプの施工状況が掲載されている。新聞掲載に関しては,(キ)「日刊建設工業新聞」には平成7年5月から平成12年5月の間,原告製品に関する記事が掲載され,また(ク)「環境新聞」及び(ケ)「日本工業新聞」にも同様の記事が掲載されている。なお原告協会が発行したカタログ,設計・施工の手引き等の冊子,技術講習会,新聞掲載についても,別紙「PCフレーム協会発表一覧」に記載されているとおりである。また,原告協会所属の会員企業による原告製品の施工実績である甲36によれば,原告製品を用いた工事が全国にわたって施工されていることが分かる。
以上によれば,原告製品の名称及び形状は,原告協会及び所属の会員企業を含むグループの商品等表示として,遅くとも平成6年には既に業界関係者の間において周知性及び著名性を獲得している。
ウ 被告らの行為 被告協会は,被告協会に属する会員企業のため,被告製品に関するカタログ及び冊子を作成し,直接又は会員企業を通じてこれらを業界関係者に配布している。また被告協会は,被告協会名及び所属の会員名で被告製品及び被告製品の名称「クロスタイプ」「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」を,新聞に掲載している。上記の被告らの冊子には,被告製品の形状及び上記3つの名称が記載されている。さらに被告協会は,インターネット上の同被告のホームページに上記名称を付した被告製品を掲載し宣伝している。被告協会所属の会員企業は,カタログ及び上記冊子を配布するとともに,被告製品を使用し法面の工事を実施している。ところで被告協会所属の会員企業は,もと原告協会所属の会員であったところ,原告協会を脱退した上で平成11年2月,被告協会を設立し,原告製品と同一形状である被告製品に原告製品と同一の「クロスタイプ」「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称を付して被告製品を製造・販売している。その販売方法は,原告の冊子に似せた冊子を作り,被告製品が原告製品と同じ製品であることを宣伝文句として,施主等に説明し販売攻勢を行っている,というものである。
エ 被告らの不正競争行為 被告製品の名称は,原告製品のそれと全く同一であり,被告製品の形状は原告製品のそれと類似する。このように被告らが,原告らグループの周知,著名となった商品等表示である原告製品の名称と同一の名称を被告製品に付し,同じく周知・著名商品等表示である原告製品の形状と類似する形状の被告製品を製造・販売し,これを用いた工事を施工することは,不正競争防止法第2条1項1号,2号所定の不正競争行為に該当する。また被告らが,被告製品の製造・販売及びこれを用いた工事の施工のため新聞・雑誌に被告PUC受圧板を掲載することは被告製品の展示に当たるものである。
(2) 被告らの主張(反論) ア 原告製品の名称について 原告らが商品等表示と主張する「クロスタイプ」「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称は,いずれもプレストレストコンクリート製の斜面受圧板という製品の形状を示すものとして一般に用いられている名称であり,出所識別機能を有していないから,これらの名称は不正競争防止法2条1項1号,2号にいう商品等表示に該当するものではなく,これらの名称を原告らが使用しても,原告らの出所を表示するものとして受け取られることはない。
被告らは,形状を示すものとして一般に慣用されているこれらの名称を被告製品の形状を示すものとして一般に用いられている方法で使用しているので,不正競争防止法12条1項1号により不正競争行為に当たらない。
イ 原告製品の形態の特徴について そもそも商品の形態は,その目的とする機能をよりよく発揮させ,あるいは美観的効果を高めるという見地から選択されるのであって,その商品の出所を表示することを目的とするものではなく,あくまでその形態が同種商品の中で特異性を有し,それに宣伝等が加わるなど,種々の条件が満たされたとき,商品の形態自体が,取引上,二次的に出所表示機能を獲得する場合があるにすぎない。
原告製品と同種の商品は多数あり(後記(3)イ掲記の「KKE受圧板」,「FFU受圧板」等。詳細は平成13年12月21日付け被告ら準備書面(3)参照。),同種商品の中にあって原告製品が二次的に出所識別機能を有するためには,その形態に特徴(特異性)がなければならない。しかし,軸線直交型で交点部を頂点とし,四方になだらかな傾斜を有し,該交点部にはロックボルト穴を配してなる側面視山型のクロスタイプ,及び正方形状の基盤と前記クロスタイプを合体した形態の商品は,原告らのみが有するものではなく,他にも原告製品とほぼ同じ形態を有する商品があるため,原告製品の形態には特異性がなく,ありふれた形態となっている。このように原告製品の形態には特異性がなく,したがって原告製品の形態は二次的に出所識別機能を有しているとはいえない。原告製品の形態は不正競争防止法上保護される商品等表示に当たらないというべきである。
ウ 原告製品の形態は機能必然的なものであること (ア) 従前の斜面及び法面保護工事では,現場で鉄筋・型枠等を組み,それにコンクリート等を打設する工法が採用されていた。そして,その出来上がりの形態は,ほとんどが面形状(擁壁等)又は格子状であった。しかし,熟練技術者の不足,作業員の高齢化等により,現場での作業が少なくなる工法,及び,現場管理,品質管理等が容易にできる工法が重要視され始めた。そこで,現場で施工した出来上がりの法面の形状をバラバラに切り取った形態,すなわち出来上がりが面形状であるときはスクエアタイプ,格子状であるときはクロスタイプの形態のプレキャスト製(あらかじめ工場で製造されたコンクリート製品の意)の受圧板を,あらかじめ品質管理の行き届いた工場で製造して,現場に運搬し,設置するという施工方法が採用されるようになった。そして,現場打ちの出来上がりの形状をバラバラに切り取ったブロックの形状である,クロスタイプ及びスクエアタイプの形状は,力学的に有利な形状であり,単体でも力学的な機能があり,なおかつ景観と経済性を考慮した形状であったので,この形状のブロックが採用されるようになったのである。このように,従前は現場で打設して施工されていた出来上がりの形態を,バラバラに切り取った形で工場で製造しようとすると,必然的にクロスタイプ又はスクエアタイプのような形態にならざるを得ない。
(イ) また,出来上がりの形態をどのようにするかは,設計アンカー力(アンカーがプレキャスト製の受圧板を引っ張る力)と地山の許容地耐力との関係で決まる。例えば,設計アンカー力が同一の場合,許容地耐力が大きければ,地面に接する面積の小さいクロスタイプで足り,逆に許容地耐力が小さければ,地面に接する面積の大きいスクエアタイプが必要となる。そして,コンクリートの量が少なくコストが低くなり,地表を露出させることで植栽等が可能となって出来上がりの外観等で優れるクロスタイプの方が好まれるところ,上記の2タイプしか存在しないとすると,クロスタイプでは地面に接する面積が足りないために受圧板が地面に沈み込んでしまう場合には,スクエアタイプしか使用できず,地表を全く露出させられなくなってしまう。そこで,地面に接する面積が,クロスタイプとスクエアタイプの中間であるものが必要とされ,セミスクエアタイプが生まれたのである。
なお,受圧板にかかるひずみ力は,受圧板の外枠が,受圧板とアンカーとの接合部分から離れれば離れるほど強くなるので,結局,受圧板の耐久力の基準は,アンカー接合部から最も離れた部分を基準とせざるを得ない。そうであれば,設計アンカー力等の受圧板の形状以外の条件が同一の場合,受圧板の形状を上下左右対称な形状にして,アンカーを中央に接続すれば,最も面積の大きい受圧板を使用でき,経済的であることは明らかである。よって,長方形等の上下左右が非対称の形状は,原則として採り得ないのである。
(ウ) 上記のように,左右上下対称な形状で,コンクリート内の鉄筋の加工がしやすく,鉄筋が密集せず構造上の問題を生じないような形状となると,結局,受圧板は,クロスタイプ,スクエアタイプ,セミスクエアタイプの形状を採らざるを得ず,上記3種の形状は,技術的機能に由来する必然的な結果であるから,原告製品の形状は不正競争防止法2条1項1号,2号による保護の対象となるものではない。
エ 被告製品の形状について (ア) 別紙製品目録2記載の被告製品のクロスタイプは,登録第1089865号の意匠の実施品であり,その形態は,具体的構成態様において,別紙製品目録1記載の原告製品のクロスタイプの形態とは非類似である。すなわち,原告製品のクロスタイプは登録意匠第908639号の実施品であり,この登録意匠と非類似のものとして登録された登録第1089865号の意匠の実施品である被告製品のクロスタイプは,当然のことながら原告製品のクロスタイプと非類似ということになり,両製品の形状が類似するとの原告らの主張は誤っている。
また,被告らは,上記登録第1089865号の意匠を適法に実施している。現行不正競争防止法は,平成5年法律第47号による改正前の不正競争防止法6条のように,工業所有権の行使と認められる行為に対し不正競争防止法を適用しない旨の明文の規定を置いていないが,このことは当然のことと解すべきである。したがって,被告らの行為は,意匠権の行使と認められるべきものであるから,不正競争行為に該当しない。
(イ) 別紙製品目録2記載の被告製品のスクエアタイプは,登録第1102372号の意匠の実施品であり,その形態は上記製品目録1記載の原告製品のスクエアタイプの形態とは具体的構成態様において非類似のものである。また,被告らは上記意匠権を適法に実施しており,被告らの行為は意匠権の行使として,不正競争行為に該当しない。
(ウ) 上記製品目録2記載の被告製品のセミスクエアタイプの形状は,上記製品目録1記載の原告製品のセミスクエアタイプの形状とは,具体的構成態様において非類似である。
誤認混同のおそれがないこと (ア) 原告製品,被告製品の使用するアンカー工法について 原告製品は,KTBアンカー工法とのセットで販売されている。一方,被告製品では,使用するアンカー工法は限定されず,現場状況により自由に選択できる。上記のとおり,原告製品はKTBアンカーとセットで販売されているところ,被告協会会員企業がライバルメーカーの製品であるKTBアンカーを販売することは,考えられない。そして,受圧板には,アンカーが必需品である。そうであれば,選択できるアンカー工法の違いからも,原告製品と被告製品との間に,誤認混同のおそれは生じない。また,被告製品は「テーパーコーン」(アンカー頭部が収まる受圧板のくぼみ部分に構造体の圧縮応力付与構造として採用された円錐台状のプレート)を採用しているが,この構造は,原告製品には存在せず,被告ら独自のものである。この構造は,アンカーと受圧板の接続部分に関するものであるところ,このテーパーコーンにアンカーを適合させるために,アンカー頭部を被告製品用に手直しする必要がある。よって,原告製品と被告製品でアンカーの兼用はできず,かつ,アンカーメーカーに「PUC用」であることを明示する必要があり,結局,両者の間に誤認混同など生じない。
(イ) 被告らの宣伝広告の態様について 被告製品の特長として,独自のテーパーコーンを採用したことによる受圧板の軽量化が挙げられる。また,アンカー工法が限定されず,現場状況により自由に選択できることも,原告製品には見られない,被告製品の長所である。被告らの宣伝広告は,このような原告製品との違いを長所として強調しているので,原告製品との間に誤認混同は生じない。
(ウ) 受圧板の取引の実情について 被告製品は,被告協会会員企業にのみ販売され,また,被告協会会員企業は各種工法の知識を十分に有する専門家であり,各種工法を十分に比較検討した上で被告協会の会員になっているのであるから,他の協会の製品との間に誤認混同が生じることなどあり得ない。また,仮に,原告らが主張するような工事施主である役所の担当者,設計コンサルタント,業者,又は工事受注業者であるゼネコンがどの受圧板を選択するか,という点を問題とするとしても,これらの者も各種受圧板工法についての専門家であるので,これらの者に対する関係でも誤認混同が生じることはあり得ない。さらに,上記の者らによる受圧板の選択に際し,各受圧板施工業者は,自らの協会の受圧板に関する文書等を配布し,役所,設計コンサルタント,ゼネコン等の担当者に,自己の取り扱う受圧板の構造及び形状等の特徴を説明し,施工現場の見学会も開くなど,まさに熾烈な営業合戦を繰り広げている。この中で,各受圧板施工業者は,自己の受圧板の長所を,他者との比較においてアピールするのであり,被告らもそのような営業活動を行っている(このような営業活動は公正な競争に他ならない。)。このような取引の状況からすれば,施主や受注業者は,各種受圧板に関して十分な情報を与えられているし,各受圧板施工業者がそれぞれ別の協会に属していることも十分認識しているものである。そもそも,受圧板の取引は,購買者が小売店で並べられた製品の中から,どれを買うか選択する際に,周知な製品の形態に似ているからという理由で,あまり注意を払うことなく周知な製品と間違って買ってしまう,というものではない。前記のような専門家が,十分な情報の下,各種製品の機能,コスト等を十分比較検討した上で選択するのであって,やはり誤認混同など生じない。
なお,原告らは,設計段階において設計図面で原告製品が採用されたとしても,ゼネコンの段階において原告製品が被告製品に変更される場合があるとし,このことをもって両製品の間に誤認混同が生じている一例としているが,この主張は失当である。@まず,施主の役所が,工事を発注する段階で原告製品を指定して発注することはあり得ず,あくまで同等品であればよいのである。A次に,旧建設省が発注した設計図面である乙14の1の設計図面には,テーパーコーンが用いられており,専門家が見れば,この図面は被告製品を元に作成されたものと分かるが,この図面にもかかわらず,ゼネコンの段階で原告製品が採用されたとしても,両製品の間に誤認混同が生じたとはいえない。また,原告製品が被告製品に変更される場合も同様である。なぜなら,被告らが,前述のような誤認混同を生じさせないような宣伝広告態様で,被告製品が原告製品を始めとする他協会の製品よりも優れていることをゼネコンにアピールした結果,ゼネコンが被告製品を採用することになったのであれば,これは公正な競争に他ならず,不正競争防止法上の誤認混同が生じているとはいえないからである。むしろ,発注図面が原告製品を元に作成されているにもかかわらず,ゼネコンが,設計図面の引き直しという余計な手間をかけてまで,わざわざ被告製品を採用するということは,両製品の性能,コスト,施工のしやすさ等と,設計図面を引き直すことなどに要する手間等とのバランスを検討し,意図的に変更しているのである。つまり,ゼネコンが,あまり両者の違いを深く検討せずに,両製品の形態や「クロスタイプ」等の名称から,被告製品も,原告らの製造販売している製品なのだろう,などと間違って(誤認混同して),被告製品を採用してしまった,などということは,およそあり得ないのである。
(3) 原告らの再反論 ア 原告製品の名称について 平成8年度の建設省土木工事積算基準(甲118)には,「PCフレーム据付工」に関する積算が掲載されていたが,平成9年度の同基準(甲119)では,「PCフレーム」という文言が「プレキャストコンクリート板」という文言に変更された。これは,「PCフレーム」の名称が,原告協会の特定の受圧板を指す名称であったからである。しかしその他の記載をみるに,甲118の「クロスタイプ」「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の3つのタイプの文言は,そのまま平成9年度版(甲119),平成13年度版(乙2)に引き続き掲載されているので,この3つのタイプの名称及び形態が原告製品の3つのタイプの製品を指していることが明らかである。加えて前記平成8年度版には「本工種は,特許工法となっているので,積算にあたっては留意する。」と記載されており,これはPCフレームが特許工法であることを指している。この文言はそのまま前記平成9年度版,平成13年度版(乙2)に,変更されることなくそのまま引き続き記載されている。平成9年度版の上記「本工種」というのは,この当時は原告製品のみを指しているのであるから,甲119(719頁)に記載されているクロスタイプ,セミスクエアタイプ,及びスクエアタイプの3名称は,原告製品固有の名称を表示しており,一般的な名称として使用されてはいない。被告協会が設立された平成11年2月の前後を通じ上記建設省土木工事積算基準の3つのタイプの記載は,特定製品である原告製品の名称及び形態を指していることが明らかで,一般名称化している事実はない。むしろ原告製品の3つのタイプの名称及び形態が,甲118の掲載により建設省から認知され,さらに3つのタイプの名称及び形態が一段と周知・識別性が増したと理解すべきである。
イ 原告製品の形状が機能必然的なものであるとの主張について 法面工事の現場での施工形態として,法面を帯状,格子状及び面状を切り取るとしても,切り取る方法は数多く考えられ必然的に原告商品の形態となることはない。加えて面の形状又は脚の本数,長さ,太さ,厚さ,平面及び断面形状をどのようにするかにより多数の形状を選択することが可能である。例えば,バータイプ(長方形状。甲124,125),原告製品のクロスタイプの変形として左右の長さが異なるタイプ(甲126,乙8)及び中心部分が八角形のタイプ(乙11),段差を設けたタイプ(乙9)及び受圧板の脚が直角にクロスしていないタイプ(甲127)の受圧板がある。スクエアタイプの変形としては,「KKE受圧板」(乙8),「FFU受圧板」(乙9),「RCクロアブロック」の「スクエアタイプ」(乙11)等がある。また受圧板の脚が,3本のタイプも存在する(甲128)。上記の実際の形状のほか,十字形状においても受圧板の脚の長さ,幅,厚さ等において様々な形状を想定することが可能であり,そのほか,面形状を正三角形状,円形状,四角形状としても各端部に枠部を設けるタイプも考えられ,十字形状あるいは四角形状としても原告製品と類似する形態となる必然性はない。また,上記のように左右対称でない受圧板も存在しているから,実際の受圧板を左右対称にしなければならないということはなく,左右対称にするとしても,左右対称の形状は種々の中から選択可能であるから,必ずしも原告製品の形状となることはない。
ウ 被告製品の形状について (ア) 被告製品のクロスタイプについて 被告らは,被告製品のクロスタイプの形状は登録第1089865号の意匠の実施品であることを理由に,原告製品のクロスタイプの形状とは非類似であると主張する。しかし,被告製品のクロスタイプは,上記登録意匠の形状と同一ではない。上記登録意匠の形状において四方に延びた脚の上面は,中央部から先端方向に緩やかに傾斜している。これに対し被告製品のクロスタイプは,中央円形状の蓋部分から四方に延出した脚の上面は先端方向へ向けて傾斜を強くしているが,脚の先端部分は傾斜ではなく平坦となっている(甲109の3枚目の写真)。なお中央部の蓋の形状は,円形状に加え八角形状のものもあるが(甲107の2枚目),この八角形の蓋の形状は原告製品の各タイプと同一である。原告製品のクロスタイプは,四方に延びた脚の上面も先端方向に向けて傾斜を強くし,その先端部分の上面はやはり平坦である(甲38)。このように,実際に流通している被告製品の形状は,PCフレームとほぼ同一の形状である。
また,被告らは,被告らが被告製品を製造・販売することが,登録意匠権の実施で不正競争行為に当たらないと主張するが,上記登録意匠権は,創作者らが勤務する企業が原告協会に所属していた時に原告協会に無断で出願したものであるから,原告らとの関係では同主張は権利の濫用に当たり許されないというべきである。
(イ) 被告製品のスクエアタイプについて 被告らは,被告製品のスクエアタイプの形状は登録第1102372号の意匠の実施品であることを理由に,原告製品のスクエアタイプの形状と非類似であると主張する。被告製品のスクエアタイプの形状(甲110の4枚目の写真)は,被告製品のクロスタイプの形状と四角形状が組み合わされた形状であるが,上記登録意匠の形状と若干異なっている。その違いは被告製品のクロスタイプの形状の違いによるものである。被告製品のスクエアタイプが登録第1102372号の意匠と異なるのはクロスしている脚と脚の各角部に跨る隅切状の模様が現れていないことである。しかし上記(ア)と同様に原告製品のスクエアタイプ(甲38の3及び4枚目の写真)と被告製品のスクエアタイプの形状の違いは微細であり,両者の類似性は否定できない。
(ウ) 被告製品のセミスクエアタイプについて 被告らは,被告製品のセミスクエアタイプの形状は,クロスタイプとスクエアタイプが非類似であるのと同じ理由で非類似であると主張する。しかし被告らは,クロスタイプについては登録第1089865号の意匠,スクエアタイプについては登録第1102372号の意匠の存在により,原告製品の形状と異なると主張するが,セミスクエアタイプについては意匠登録されていないから,同主張は根拠を欠く。被告製品のセミスクエアタイプの形状(甲110の3枚目の写真)は,原告製品のセミスクエアタイプの形状(甲40の3枚目の写真)と類似する。
被告製品のセミスクエアタイプは,クロスタイプの脚部が矩形の板の角部方向に延びた形状であるが,被告製品のクロスタイプの形状が原告製品のクロスタイプと若干異なっていても,被告製品のセミスクエアタイプが原告製品のセミスクエアタイプと類似するのは明らかである。
(エ) 以上のように被告製品のクロスタイプ及びスクエアタイプの実際の製品としての形状は,それぞれの登録意匠と異なっており,実際の被告製品のクロスタイプ,スクエアタイプ及びセミスクエアタイプの各形状は,上記のように原告製品の各タイプの形状に類似する。
誤認混同のおそれについて (ア) 受圧板を使用する工事は公共事業であるが,実務的には事実上設計会社が受圧板を選択しており,その際,被告製品は原告製品と同一材料及び同一形状のため原告製品の代わりに使用することができることを宣伝文句に販売している。被告らの「PUC受圧板工法設計・施工マニュアル」(甲104,105)の記載内容は原告らの「PCフレームアンカー工法設計・施工の手引き」(甲30ないし35)の内容に似せているし,「PUC受圧板工法積算資料」(甲106)は原告らの「PCフレームアンカー工法標準積算資料」(甲2ないし6)とほほ同じである。この場合設計者は,原告製品と被告製品とは機能計算,積算及び美観が同一であるためこれらについて別途検討する必要がない。また施工業者が,現場において当初予定されていた受圧板を他の受圧板に変更する場合があっても,原告製品と被告製品との間では条件を検討する必要がないため容易に変更することが行われている。このように受圧板は,事実上設計会社及び施工業者が需要者となっており,これらの者の間で混同を招いているのが実情である。
(イ) 被告らは,PUC受圧板を会員企業に限って販売しているのでPCフレームとの間に誤認混同を生じないと主張する。
受圧板採用による工事の施主は,公共事業を行う国又は県等の各地方公共団体(以下,単に「役所」という。)であり,また工事施工業者は公共工事を入札したゼネコンである。さらに役所又はゼネコンから依頼された設計コンサルタント業者も関わっている。各受圧板施工業者は,工事施主である役所の担当者,設計コンサルタント業者又は工事を受注するゼネコンに対し自己の受圧板を採用してもらうため積極的な受注活動を行う。この際に,受圧板施工業者は,受圧板に関する文書等を配布し,役所,設計コンサルタント業者及びゼネコンの担当者に対し自己が取り扱う受圧板の構造及び形状等の特徴を説明する。また,役所,設計会社及びゼネコンに対し実際の施工現場の見学会を通じ受圧板を宣伝したりする。このような受圧板施工業者の営業活動は,特に受圧板の構造及び形状等の特徴が共通している原告製品と被告製品の場合,相互に融通可能なため更に競争関係は熾烈である。設計段階において設計図面中に原告製品が採用されたとしても,ゼネコンの段階において被告製品に変更される場合がある。これは両者の構造がプレストレストコンクリートで同じである上,形状が類似するため同一の積算資料が適用されるからである。したがって原告協会内又は被告協会内の会員に対する流通過程では,原告製品と被告製品が競合することはないが,工事施主である役所及び工事元請けであるゼネコンにおいて両者は誤認混同を生ずる。
なお,被告らの主張するように,原告らの工法はKTBアンカーしか選択できないものではなく,施主は選択した受圧板により適宜のアンカー工法を選ぶことが可能である。しかも,受圧板は,まず法面の形状及び環境に適した形態が選択され,アンカーはその後の問題であるから,アンカー工法が受圧板の選択に影響することはない。
被告らは,被告製品採用についての営業活動において,被告製品は原告製品と形状及び構造において共通であるため,積算資料も共通していることを最大のセールスポイントとして販売攻勢を行っており,誤認混同を生じさせている。
3 争点3について (1) 原告らの主張 原告会社は,被告らの不正競争行為により以下の損害を被った。
ア 被告ゼニスは,平成11年3月から平成12年9月までの間,被告製品であるNPCタイプ(クロスタイプ)603基,NPSSタイプ(セミスクエアタイプ)510基及びNPSタイプ(スクエアタイプ)341基を製造した。上記被告ゼニスが製造した被告製品は,被告エスイーに販売され,さらに被告エスイーより被告協会所属の会員企業に販売され,同会員企業により下記の工事高で施工されている。
@NPCタイプ603基×50万円/基=3億0150万円 ANPSSタイプ510基×70万円/基=3億5700万円円 BNPSタイプ341基×90万円/基=3億0690万円 上記合計9億6540万円 イ 被告吉佳は,上記の工事施行高の3%を実施料として被告協会所属の施工業者から得ている。
被告吉佳の利益額は,以下のとおりである。
9億6540万円×0.03=2896万2000円 被告吉佳が受けた上記利益額は,原告会社の受けた損害の額と推定されるところ,被告らの外には,原告会社の類似商品の販売・施工を行う者はない。そこで原告会社は,被告らの被告製品の販売等により得べかりし利益である金2896万2000円の損害を被ったので,当該金員を原告会社の損害として,被告ゼニス,同エスイー及び同吉佳に対し連帯して支払うよう求める。
(2) 被告らの主張 原告らの主張は,これを争う。
争点に対する判断
1 争点1(「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」というコンクリート製斜面受圧板の名称は,原告らの周知又は著名な商品等表示といえるか)について (1) 本件における事実関係について 前記の当事者間に争いのない事実に証拠(甲1ないし6,甲11ないし20,甲22ないし27,甲30ないし101,甲123,甲143)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の各事実が認められる。
原告会社は,押圧力により斜面(法面)を安定化させるプレストレストコンクリート製の斜面受圧板である「PCフレーム」(原告製品)を開発し,原告協会所属の他の会員企業と共に,原告協会の設立当時から原告製品を使用して斜面安定化工事を行ってきた。また,原告協会は,昭和61年12月に設立され,原告製品及びこれを用いたPCフレーム工法の普及を目的とした権利能力なき社団として設立され,原告協会所属の会員企業により運営されている。
原告会社を始めとする原告協会所属の会員企業は,別紙製品目録1記載の製品を使用して上記工事を行ってきており,それにそれぞれ,(1)「クロスタイプ」,(2)「セミスクエアタイプ」及び(3)「スクエアタイプ」の名称を付している。原告会社及び原告協会所属の会員企業は,同協会設立のころからこれら製品を使用して工事を行うようになった。上記名称については,遅くとも平成4年ころ,まずクロスタイプ及びスクエアタイプの名称を使用するようになった。これら原告製品は,他の商品に先駆けて販売されたもので,この原告商品の発売時には,市場に同種商品は存在しなかった。
原告協会は,設立後から,次のカタログ及び冊子を作成するなどの原告協会所属の会員企業の普及活動により,これらを全国の原告協会所属の会員企業,ゼネコン,施工業者,施主,役所及びコンサルタント等に配布するなどしてきた。@カタログ「PCフレーム工法」は,平成7年から平成9年ころまで配布したが,現在まで年間4000ないし5000部配布されている。A「PCフレームアンカー工法設計・施工の手引き」は,昭和62年に初版を発行して以来,数度の改訂を行い,平成10年に大改訂を行った。その内容は,原告製品の形状及び名称はもちろん,原告製品の取扱説明などが記載されている。B「PCフレーム工法標準積算資料」は,昭和62年に初版を発行して以来改訂を重ね,平成10年,「建設省土木工事積算基準」の公表に伴い大幅な改訂を行って,同年10月,大改訂初版を発行した。Cまた原告協会は,上記冊子の発行のほか,1年に数回各地で原告製品の取扱についての技術講習会・シンポジウムの開催に加えPCフレーム工法に関するビデオの配布を行ってきた。
雑誌及び書籍への広告掲載等は,別紙「PCフレーム協会発表一覧」のとおりである。(ア)雑誌「基礎工」には昭和62年2月から平成10年12月まで広告や記事が掲載され,実際に施工した現場写真等が掲載されている。(イ)雑誌「土木施工」には,広告でセミスクエアタイプの形状が掲載され,(ウ)雑誌「土木技術」にも広告でセミスクエアタイプの施工状況が掲載され,(エ)雑誌「土と基礎」は,平成2年5月から平成11年11月まで広告でクロスタイプ又はセミスクエアタイプの施工状況の掲載が行われている。(オ)「日経コンストラクション」には広告で施工現場写真が,(カ)雑誌「地すべり技術」には,広告でセミスクエアタイプの施工状況が掲載されている。新聞掲載に関しては,(キ)「日刊建設工業新聞」は平成7年5月から平成12年5月の間,原告製品に関する記事や広告が掲載され,また(ク)「環境新聞」及び(ケ)「日本工業新聞」にも同様の記事や広告が掲載されている。原告協会所属の会員企業は,全国にわたり多数の工事実績を残している。
(2) 原告らは,原告製品の各タイプに付された名称「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」が,原告らの周知又は著名な商品等表示であると主張するので,この点につき検討する。
原告らの主張する,「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」は,別紙製品目録1記載のとおり,コンクリート製で,クロスタイプは十字型の受圧板であり,セミスクエアタイプは上記クロスタイプの4本の脚部が四角の対角線となるような形状にその脚部を正方形の板で結び,4つの角を隅切りした形状の受圧板であり,スクエアタイプは,上記クロスタイプの4本の脚部が直角に交わって四辺の中央に垂直に降りるようにこれと正方形の板を組み合せた形状の受圧板である。したがって,クロスタイプの「Cross(十字)」及びスクエアタイプの「Square(正方形)」は,まさにその形状をそのまま英訳し,これに「型」を表す英単語「type」を組み合せたにすぎないものである。また,「セミスクエアタイプ」は,「スクエアタイプ」に,「部分的な」とか「不完全な」の意を表す(新英和辞典5訂版,研究社刊)英語の接頭辞「Semi」を付加したものである。これらはいずれも,その形状をほとんどそのまま英訳したものにすぎず,その名称に特異性は見られない。もともとこれらの名称は,「PCフレーム」という個性ある名称の下に付加して,その商品の中でその型を形状により識別するために付されたものであり,前記のような名称の内容に照らしても,それ自体で他から出されている商品との識別力を与えようとしたものとは認められない。
(3) 上述のとおり,「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称は,原告製品の中でその型を形状により識別するために付されたものであり,その名称の内容も形状を誰にでも分かるような文言で表したものであって,他の商品との識別力を与えることを目的とするものとは認められない。このように,上記の3つの名称については,その内容上,出所表示機能をもともと有さないか,極めて乏しいものといわざるを得ない。そこで,次に,これら名称につき,使用を積み重ねることにより出所表示機能を獲得するなどの事情が生じているか検討する。
(4) 「建設省土木工事積算基準」への掲載について ア 証拠(甲118,甲119,甲123,甲143,乙2,乙6)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
平成8年度版「建設省土木工事積算基準」(建設大臣官房技術調査室監修,土木工事積算研究会編。甲118)には,「PCフレーム設置工」との見出しが記載された項において,「適用範囲」として,「本資料は,グラウンドアンカーとPCフレーム(プレキャスト・プレストレストコンクリート板)を緊結することにより,斜面等の安定化を図る工法に適用する。なお,PCフレームは,クロスタイプ,セミスクエアタイプ,スクエアタイプとする。」と記載され(同書713頁),「PCフレーム据付工」の小項目の下においても「PCフレーム」の種類を表す名称として「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称が用いられている(同書714頁以下)。
ところが,平成9年度版の「建設省土木工事積算基準」(甲119)には,「プレキャストコンクリート板設置工」との見出しが記載された項において,「適用範囲」として,「本資料は,グラウンドアンカーとプレキャストコンクリート板を緊結することにより,斜面等の安定化を図る工法に適用する。なお,プレキャストコンクリート板は,クロスタイプ,セミスクエアタイプ,スクエアタイプとする。」と記載され(同書717頁),「プレキャストコンクリート板据付工」の小項目の下においても「プレキャストコンクリート板」の種類を表す名称として「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称が用いられている(同書718頁以下)。すなわち,「PCフレーム」という文言が「プレキャストコンクリート板」という文言に変更されているが,上記3つの名称の記載はそのまま残されている。このように「プレキャストコンクリート板」の種類を表す名称として「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称が用いられている記載は,その後の「建設省土木工事積算基準」においても継続されており(乙2,乙6),平成13年度版の「建設省土木工事積算基準」(乙2)を見ても,これと同様の記載となっている(同書671頁以下)。
イ 上記のように,工事方法の名称が「PCフレーム設置工」「PCフレーム据付工」から「プレキャストコンクリート板設置工」「プレキャストコンクリート板据付工」に変更され,部材の名称が「PCフレーム」から「プレキャストコンクリート板」に変更された趣旨につき,原告協会の担当者(宮川良一事務局長,鈴木哲夫顧問)は,陳述書(甲143)において,「PCフレーム」の名称が,原告協会の特定の受圧板を指す名称であったため,後発の業者から同基準の改定要請があり,市場に新たに出てきたコンクリートブロック製の他の受圧板商品にも,同基準の本来の目的である「工事歩掛」を適用できるようにするために,建設省が変更したものである旨を述べている。
ウ 上記によれば,「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称は,当初は,プレキャスト・プレストレストコンクリート板に該当する部材として,原告協会の「PCフレーム」(原告製品)しか市場に存在しなかったことから,「PCフレーム」の形状別の種類を表す名称として使用されていたところ,プレキャスト・プレストレストコンクリート板の分野において原告製品以外の商品も市場に現れるに伴って,プレキャスト・プレストレストコンクリート板に該当する部材一般について,その形状別の種類を表す普通名称として使用されるに至ったものと認めるのが相当である。
(5) 以上によれば,「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称は,もともと出所表示機能の乏しいものであるところ,原告らの使用や宣伝広告等により出所表示機能を取得したような事情も認めることができず,かえって,プレキャスト・プレストレストコンクリート板に該当する部材一般について形状別の種類を表す名称として,普通名称化しているというべきである。
したがって,これら3つの名称については,原告らの主張するようにこれらが原告協会及びその会員企業のグループの商品を示す商品等表示として周知ないし著名となっていると認めることはできない。
したがって,これらの名称が不正競争防止法2条1項1号,2号の商品等表示に該当することを前提とする原告らの請求は,理由がない。
2 争点2(別紙製品目録1記載のコンクリート製斜面受圧板の形状は,原告らの周知又は著名な商品等表示といえるか)について (1) 商品の形態は,商品の機能を発揮したり,商品の美感を高めたりするために適宜選択されるものであり,本来的にはその商品の出所を表示する機能を有するものではないが,特定の商品形態が同種の商品と識別し得る独自の特徴を有し,かつ,それが長期間にわたり継続的にかつ独占的に使用されたり又は短期間であっても強力に宣伝されるなどして使用されたような場合には,結果として,商品の形態が商品の出所表示の機能を有するに至り,かつ,商品表示としての形態が需要者の間で周知になり,不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「他人の商品等表示」として保護されることがあり得るというべきである。ただし,商品の形態が,当該商品の機能ないし効果と必然的に結びついている場合には,その形態は,上記規定にいう「他人の商品等表示」ということはできず,これについて同規定による保護は及ばないというべきである。けだし,上記のような商品の機能ないし効果と必然的に結びつく形態は,本来,発明ないし考案として,特許法等の工業所有権法により一定の要件の下に独占的地位を保障されることにより保護を与えられるべきものであるところ,仮にこのような形態について不正競争防止法上の保護を与えるならば,同法が目的とする出所の混同の防止を超えて,当該商品に利用されている技術思想そのものについて,工業所有権法上の保護を超えた独占的・排他的支配を認めることになり,技術の自由な利用によりもたらされる産業の発展や商品の自由な流通を阻害する結果となるからである。
(2) 原告製品の形態について 前記の当事者間に争いのない事実に証拠(甲123,乙12の1ないし3)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることができる。
原告製品が登場する以前は,斜面を安定化する工事を施すには,現場で鉄筋・型枠等を組み,それにコンクリート等を打設する工法,すなわち,現場打ちコンクリート枠工法(鉄筋コンクリート製法枠を用いる。)やフリーフレーム工法(吹付けモルタル法枠工法)等で施工されていた。そして,法面の出来上がりの形態は,ほとんどが面形状(擁壁等)又は格子状であった。これらの工法では,コンクリートやモルタルが硬化するまで,斜面を切り崩した状態が続き,工期が長期間必要であるうえ,その間崩落の危険もあった。加えて,熟練技術者の不足,作業員の高齢化等により,現場での作業が少なくなる工法,及び現場管理,品質管理等が容易にできる工法が重要視され始めた。そこに登場した原告製品は,プレストレストコンクリート製の受圧板を,あらかじめ品質管理の行き届いた工場で製造して,現場に運搬し,設置するという施工方法が可能なことから,前記のような需要に沿うもので,工事現場において好評を博し,前記1(1)において認定したとおり多数の工事実績を挙げることになった。
原告製品を用いた工事は,前記1(2)において認定したような形状をした複数の原告製品を斜面の上方から順次数段又は横方向に隣接して施工するものである。原告製品は地中にアンカーを埋設し,これと緊結されたコンクリート製の受圧板を強力に斜面に押し付けることにより,斜面・法面の安定化を短期間でかつ容易に図ることができるようになっている。上記のような経緯から誕生した原告製品の形状は,必然的に従前の工法で施工された面形状又は格子状の斜面を1つずつのブロックに切り取った形態となる。すなわち,景観(受圧板の間を植栽し,自然な外観の斜面とすることを含む。)や経済性,受圧板の据え付けやすさ等も考慮して,格子状を切り取った形状であるクロスタイプの形態を原則的なものとするが,地山に許容地耐力がなく,受圧板が沈み込んでしまうようなときは,表面積を広く取らざるを得ないので,面形状を切り取った形態であるスクエアタイプが用いられることになる。原告製品ではこの2種がまず開発された。さらに,後発的に,この中間タイプとして,受圧板の間に植栽もできるなどの双方の長所を兼ね備えたセミスクエアタイプが開発され,採用されるようになった。
(3) 上記のように,プレストレストコンクリート製の受圧板の形状は,そもそも当該製品が開発された経緯等に照らすと,前記のような事情から基本的に原告製品の3つのタイプとすることが考えられる。また,受圧板にかかる圧力が等しく受圧板全体にかかるように,受圧板の形状を上下左右を対称にするのが最もバランスがよく,合理的であると考えられる。このことと,可能な限り受圧板の表面積を広く取ることや,受圧板内部の鉄筋の配設がしやすい形状であることを要することなどを考慮すると,この種の受圧板の形状は,必然的に原告製品の3つのタイプに見られる基本的構成を備えたものとならざるを得ないものと認められる。原告らが提出する証拠(甲124ないし139等)の中には,上下左右が非対称な形状であるものも見受けられるが,景観上の理由などからあえて特異な形を取ったものもあると考えられ,中には実際に施工されている例があるのか明らかでないものもあるなど,例外的なものというほかない。
本件において,原告製品の形状と被告製品の形状を比較すると,その具体的な構成態様においては相違点が少なからず存在するものの,その基本的な構成態様において共通するものであるところ,原告製品と被告製品との間で共通する上記の3つの基本的な構成態様は,その機能と必然的に結びついたものといわざるを得ないから,そもそも不正競争防止法2条1項1号,2号にいう商品等表示に当たらないものというべきである。
(4) また,前記1において認定したとおり,建設大臣官房技術調査室の監修に係る「建設省土木工事積算基準」において,プレストレストコンクリート製の受圧板に該当する部材一般について,その形状別の種類を表す名称として,「クロスタイプ」,「セミスクエアタイプ」及び「スクエアタイプ」の名称が用いられており,これらの語がこの種の部材一般について形状別の種類を表す名称として普通名称化していることに照らせば,これらの語に対応する基本的形状についても,この種の部材における一般的な形状として需要者の間に広く認識されているものと認められる。したがって,いずれにしても,原告製品と被告製品との間で共通する3つの基本的な構成態様が,原告らの主張するように原告協会及びその会員企業のグループの商品を示す商品等表示として周知ないし著名となっていると認めることはできない。
3 結論 以上によれば,原告らの主張する原告製品の名称,形状については,これらが原告協会及びその会員企業のグループの商品を示す商品等表示として周知ないし著名となっていると認めることはできない。
したがって,不正競争防止法2条1項1号,2号に基づき,被告製品の製造・販売等の差止め及び損害賠償を求める原告らの請求は,いずれも理由がないものというべきである。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 村越啓悦
裁判官 青木孝之
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