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事件 平成 13年 (ワ) 15047号 損害賠償等請求事件
平成 14年 (ワ) 3003号 同請求事件
原告(反訴被告) 萬基商事株式会社
同訴訟代理人弁護士 水谷彌生
同 田中圭助
同 喜多村 勝徳
被告(反訴原告) 株式会社栄光商事
同訴訟代理人弁護士 二宮征治
同 根岸隆
被告 株式会社エヌ.ジー.シー
同訴訟代理人弁護士 遠藤義一
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/10/29
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告(反訴被告)の請求をいずれも棄却する。
2 反訴被告(原告)は,反訴原告(被告株式会社栄光商事)に対し,金300万円及びこれに対する平成12年3月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 反訴原告(被告株式会社栄光商事)のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用については,本訴反訴を通じ,原告(反訴被告)に生じた費用の6分の5と被告株式会社栄光商事(反訴原告)に生じた費用の5分の4と被告株式会社エヌ.ジー.シーに生じた費用を原告の負担とし,原告(反訴被告)に生じた費用の6分の1と被告株式会社栄光商事(反訴原告)に生じた費用の5分の1を被告株式会社栄光商事(反訴原告)の負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
(本訴) 1 被告らは,別紙被告ら標章目録記載の標章を付した暖房器具を,製造し,譲渡し,引渡し,譲渡又は引渡しのために展示し,輸出してはならない。
2 被告らは,別紙物件目録(1)記載の暖房器具を製造し,譲渡し,引渡し,譲渡又は引渡しのために展示し,輸出してはならない。
3 被告らは,第1項及び第2項記載の暖房器具を廃棄せよ。
4 被告らは,原告に対し,各自金4000万円及びこれに対する平成13年7月27日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(反訴) 反訴被告は,反訴原告に対し,金1713万5000円及びうち金300万円に対する平成12年3月24日から支払済みまで,うち金1413万5000円に対する平成14年2月19日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで,各年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 争いのない事実 (1) 原告(反訴被告。以下「原告」という。)は,ファインセラミックスの製造及び販売等を目的とする会社である。被告株式会社栄光商事(反訴原告。以下「被告栄光商事」という。)は,健康衣料の企画開発及び卸・小売業等を目的とする会社である。被告株式会社エヌ.ジー.シー(以下「被告NGC」という。)は,紳士服等の製造加工業及び卸売業並びに開発業務・販売企画の業務と輸出入業及び販売業を目的とする会社である。
(2) 原告は,昭和59年以降,自社が特許権及び実用新案権を有するセラミック製面発熱体を使用した遠赤外線暖房器具を,他社に委託して製造し,「サンラメラ」という商品名で販売している。原告は,当初1200W型と800W型のものを販売していたが,平成9年から,別紙物件目録(2)記載の暖房器具(以下「本件物件」という。)を「サンラメラ600」という商品名で販売するようになった。
(3) 原告は,平成10年7月6日,被告栄光商事との間で継続的売買契約(以下「本件契約」という。)を締結した。そして,「サンラメラ600」は,原告から被告栄光商事,被告栄光商事から関連会社である有限会社協和電機(以下「協和電機」という。),協和電機から被告NGCへと販売され,被告NGCが通信販売により一般消費者に販売していた。
(4) 被告栄光商事は,上記本件契約を締結するに当たり,原告との間で,原告に対し保証金として300万円を預託すること及び本件契約終了時に原告は上記保証金を返還することを約し,同年9月1日,300万円を原告に預託した。
(5) 被告らは,平成12年8月ころから,原告以外の者に別紙物件目録(1)記載の暖房器具(以下「イ号物件」という。)を製造させ,それを「サンルーム550」という商品名で,別紙被告ら標章目録記載の標章(以下「被告ら標章」という。)を付して販売している。
(6) 原告は,別紙原告商標目録記載の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件商標」という。)を有している。
2 本訴における原告の主張 (1) 不正競争防止法2条1項1号違反 本件物件の名称及び形態は,全国紙の広告欄及び著明な通信販売カタログに多数回掲載され,販売台数も1年間に1万台を超え,遠赤外線暖房器具業界で大きなシェアを占めていることから,遅くとも平成12年8月ころまでには,全国の消費者の間で原告の商品を示す表示として広く知られるようになった。
本件物件とイ号物件は,いずれも面発熱体を使用した暖房器具であり,その名称は,「サン」という文字と3桁の算用数字を使用している点において極めて類似しており,別紙物件目録(1)及び(2)のとおり,その形態はほぼ同一であって,需要者たる一般消費者が両製品を混同するおそれは高い。
被告らは,かつて本件物件を販売していながら,イ号物件を販売しており,故意又は過失により,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為を行ったものである。
(2) 不正競争防止法2条1項3号違反 イ号物件は,別紙物件目録(1)及び(2)のとおり,色調及びキャスター部分が若干異なる点において,競争上意味のない変更を加えている他は,本件物件の形態と同一であるから,形態が実質的に同一である。
被告らは,イ号物件が平成9年10月29日から販売を開始した本件物件の模倣商品であることを知りながら,イ号物件を販売したものであり,故意又は過失により,不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為を行ったものである。
(3) 不正競争防止法2条1項13号違反 イ号物件の販売広告には,特殊セラミックパネルを使用し,それにより遠赤外線が室内にくまなく放射されるとの記載があるが,イ号物件は,セラミックパネルを使用していないから,これは,商品の品質,製造方法を誤信させるものである。
被告らは,故意又は過失により,不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為を行ったものである。
(4) 不法行為 被告栄光商事は,本件契約に基づき,本件物件を継続的に販売していたのであるから,たとえこの契約関係を継続しない場合でも,本件契約に基づき取得した情報を濫用することなく,原告に不測の損害を与えてはならない信義則上の義務がある。
しかし,被告栄光商事は,本件物件の販売に関与していたことによって知り得た情報を利用して,本件物件を模倣し又はそれと類似したイ号物件を製造販売し,かつ,消費者に本件物件と誤認混同を生じさせるような宣伝広告活動を行っている。これは,上記信義則上の義務に違反する不法行為である。
被告NGCは,原告と直接の契約関係はないが,本件物件の取引は,実質的には,原告と被告NGCの取引と同視しうるものであり,しかも,被告NGCは,イ号物件の販売による原告の損害について認識していたか又は認識することができた。したがって,被告NGCがイ号物件を販売した行為も,被告栄光商事と同様に,信義則上の義務に違反する不法行為であるということができる。
また,被告らは,平成12年度の本件物件の販売について,原告及び鳴海製陶株式会社(以下「鳴海製陶」という。)との契約準備段階に入っており,信義則上相手方に損害を与えないようにすべき義務があったところ,製造業者である群馬アールシーエス工業株式会社(後に株式会社アールシーエスに商号変更。以下「RCS」という。)において試作品が完成し,注文があれば製造可能な状態であることを熟知しながら,RCSを教唆し又は共謀の上,同社に受注を拒否させた上,試作品を自らイ号物件として販売したのであるから,信義則上の義務に違反する不法行為があったものということができる。
(5) 被告栄光商事の債務不履行 被告栄光商事は,平成10年7月6日,原告と本件契約を締結したことにより,本件物件と使用目的を同じくする他社の製品を購入又は販売してはならない義務を負った。しかし,被告栄光商事は,平成12年8月ころから,本件物件と使用目的を同じくする暖房器具であるイ号物件の販売を始めたのであるから,これは本件契約の債務不履行に該当する。
原告は,被告らと販売ルート変更の協議は行っていたが,本件契約を合意解約したことはない。本件契約は,平成12年8月7日,被告栄光商事が解約の申入れをしたことから,6か月後の平成13年2月7日をもって終了したものである。したがって,平成12年度分(平成12年の秋と冬。以下「年度」については同様の意味である。)の被告栄光商事のイ号物件販売行為は,債務不履行となる。
(6) 商標権侵害 イ号物件は,本件商標の指定商品「電子応用機械器具」に含まれ,被告らがイ号物件に付している標章は,本件商標と外観,観念,称呼において類似する上,イ号物件自体も本件物件と同一の外観であり,広告宣伝方法も酷似し,価格も同一であるなど,消費者に出所の混同を生じさせる取引の実情があることからすると,被告ら標章は本件商標と類似しているといえ,イ号物件の販売は,本件商標権を侵害するものである。
(7) 損害 ア 逸失利益 原告は,本件物件の平成12年度分の販売数量を合計1万6000台と見込んでいたが,同年8月ころから被告らがイ号物件を発売したため,実際には4320台しか売れなかった。原告は平成12年度は1台当たり4000円のロイヤリティを得ていたから,(1万6000台-4320台)×4000円=4672万円の得べかりし利益を失った。
イ 商標法38条1項 被告らは,平成12年度にイ号物件を1万7500台販売したが,原告は,上記のとおり1台当たり4000円の利益を得るはずであったから,4000円×1万7500台=7000万円が原告の損害となる。
ウ 商標法38条2項,不正競争防止法5条1項 被告らは,平成12年度にイ号物件を1万7500台販売したところ,被告らの利益は,1台あたり各自2000円を下らないから,4000円×1万7500台=7000万円を下らない。これが原告の損害と推定される。
エ 商標法38条3項,不正競争防止法5条2項 被告らは,平成12年度にイ号物件を1万7500台販売したが,原告は平成12年度は1台当たり4000円のロイヤリティを得るはずであったから,これが使用料相当額であり,原告の損害は,4000円×1万7500台=7000万円となる。
オ 前4項の損害の外,原告は,本件物件と似ているが品質が劣るイ号物件が需要者混同を生じさせ,その結果原告が長年培ってきた「サンラメラ」の信用が毀損されたことによる無形損害500万円,弁護士費用300万円の損害を被った。
(8) よって,原告は,被告らに対し,不正競争防止法3条,商標法36条に基づき侵害行為の差止め及びイ号物件の廃棄を求めるとともに,不正競争防止法4条,民法709条,同415条に基づき,前項の損害のうち金4000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年7月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
3 本訴における被告らの主張 (1) 不正競争防止法2条1項1号違反について ア 平成12年度分については,本件物件の製造販売者は鳴海製陶であって,原告は本件物件の製造者でも販売者でもなく,単に鳴海製陶から特許料を得るだけの立場であった。したがって,原告は,本件物件につき,「営業上の利益」を有する者とはいえず,不正競争防止法に基づく請求をすることはできない。
イ 本件物件は,販売期間はわずか3年,全国での合計販売台数は1万7500台程度であるから,本件物件の名称及び形態が全国の需要者の間で広く認識されていたとはいえない。
ウ 本件物件とイ号物件の両商品名に「サン」の文字があるが,これは広汎に使用される太陽を意味する一般名詞であって,呼称の枢要部ではなく,3桁の算用数字は消費電力600W又は550Wを示したにすぎないから,両者の相違は明白である。両商品の形態は,部分的に似ている箇所もあるが,これは電力による暖房器具一般に共通し,機能的・技術的要請に由来する必然的な結果である。また,両商品は,面発熱体を使用していても,面の素材,構成を全く異にし,発熱方法も全く異なる。
したがって,名称及び形態について,本件物件とイ号物件の類似性はなく,消費者が両製品を混同するおそれもない。
エ 本件物件は,専ら被告栄光商事の発想,考案により開発に入り,デザイン考案,試作品製作,性能実験,製品化,広告,宣伝,販売のすべての段階を通じて,被告栄光商事が担ったものであるから,被告栄光商事にとっては,「他人の商品」ではない。
(2) 不正競争防止法2条1項3号違反について ア 前記(1)アに同じ。
イ イ号物件の形態が本件物件と実質的に同一であることは否認する。前記(1)ウのとおりである。
ウ 本件物件は,遅くとも平成9年5月10日ころには,販売のためのサンプル出荷がされている。したがって,原告は,それから3年を経過した遅くとも平成12年5月中旬以降については,不正競争防止法2条1項3号違反を主張することはできない。
エ 前記(1)エに同じ。
(3) 不正競争防止法2条1項13号違反について イ号物件は,セラミック製パネルこそ使用していないが,アルミニウム製の板の表面にセラミックコーティングがされたものを使用しており,そのセラミックが遠赤外線を発するのであるから,これをセラミックパネルと称するのは,商品の品質,製造方法を誤信させるものではない。
(4) 不法行為について 原告の主張は,否認又は争う。
(5) 被告栄光商事の債務不履行について 本件契約は,平成12年3月23日,合意により解約された。したがって,被告栄光商事は,平成12年度分に関する行為については,本件契約に拘束されず,債務不履行は存在しない。
(6) 商標権侵害について 被告らは,「サンルーム」につき商標権を有しており,被告ら標章は,本件商標に類似していないから,原告の商標権を侵害していない。
(7) 損害について 原告の主張は,争う。
4 反訴における反訴原告(被告栄光商事)の主張 (1) 不正競争防止法2条1項14号違反及び不法行為 ア 原告は,被告栄光商事がイ号物件を製造販売する行為が不正競争防止法に違反するとして本訴を提起し,さらに商標権侵害の請求原因を追加し,被告栄光商事の重要な取引先である被告NGCに対しても同様の主張をして共同被告としている。しかし,前記3記載のとおり,不正競争防止法違反及び商標権侵害の事実はないから,原告の主張はいずれも虚偽である。
したがって,原告の被告栄光商事に対する本訴提起行為及び商標権侵害の主張追加行為は,いずれも公開される民事裁判において虚偽の事実の主張をして,不特定多数の者に対して流布伝播する行為であるから,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」(不正競争防止法2条1項14号)に該当する。また,原告の被告NGCに対する本訴提起行為及び商標権侵害の主張追加行為は,被告栄光商事の取引先である被告NGCに対して,被告栄光商事の「営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為」(不正競争防止法2条1項14号)に該当する。
さらに,被告らに対する上記本訴提起行為及び商標権侵害の主張追加行為は,いずれも,原告の故意又は過失に基づくもので,不法行為を構成する。
イ 被告栄光商事は,原告の上記アの行為により,営業上の信用を毀損された。これによる無形損害は500万円を下らない。また,本訴に応訴を余儀なくされたことによる弁護士費用は630万円,反訴提起に伴う弁護士費用は283万5000円であり,被告栄光商事は,合計1413万5000円の損害を被った。
よって,被告栄光商事は,原告に対し,不正競争防止法4条又は不法行為による損害賠償として金1413万5000円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成14年2月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2) 本件契約終了に基づく預託保証金返還請求 本件契約は,平成12年3月23日,合意により解約され,終了したから,被告栄光商事は,原告に対し,本件契約に基づく預託保証金300万円の返還及びこれに対する本件契約終了の日の翌日である平成12年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
5 反訴における反訴被告(原告)の主張 (1) 不正競争行為及び不法行為について 本訴において主張するとおり,不正競争防止法違反及び商標権侵害の事実があるから,原告は虚偽の事実を告知したものではない。
(2) 預託保証金返還請求について 本訴において主張するとおり,本件契約は合意解除されていない。
当裁判所の判断
1 認定事実 証拠と弁論の全趣旨によると,次のとおりの事実が認められる。
(1) 原告は,昭和59年以降,セラミック製のパネルを使用した遠赤外線暖房器具を,他社に委託して製造し,「サンラメラ」という商品名で販売していた。この製品は,1200W型と800W型があり,原告が有する特許権及び実用新案権が使用されていた。原告は,同商品を,新聞や雑誌で広告したり,通信販売のカタログに掲載したりして,販売していた。(甲5ないし10,46,50) (2) 被告栄光商事代表者A(以下「被告栄光商事代表者」という。)は,原告代表者B(以下「原告代表者」という。)に対し,平成9年2月に,従来のサンラメラの発熱体を生かして,ワット数の小さい小型の新商品を開発することを提案し,その新商品の販売を行う旨の申入れをした。原告は,サンラメラの製造を行っていた株式会社大西ライト工業所(以下「大西ライト」という。)に新商品の開発についての検討を開始させ,大西ライトにおいて,従来のサンラメラをもとに新商品の図面を作成した。原告代表者,被告栄光商事代表者らが出席して平成9年3月11日に大西ライトにおいて打合せが行われ,この打合せに基づいて,大西ライトにおいて手作りの試作品が製作された。同年4月14日に,原告代表者,被告栄光商事代表者らが出席して,大西ライトにおいて打合せが行われ,この試作品が検討されて,更に改善すべき点が指摘された。その後,試作品が改善されて本件物件となった。この検討過程で,被告栄光商事代表者は,キャスターを付けること,右側と左側にほぼ同じ幅の枠を設けること,四隅の角を丸くすることなどを提案し,受け入れられた。本件物件は,平成9年10月28日から出荷され,「サンラメラ600」という商品名で,販売された。被告栄光商事は,上記出荷に先立って,上記手作りの試作品を受け取り,取引先に持ち込んで営業活動を行ったり,カタログに載せる写真撮影のために貸したりした。(甲2,4,32ないし35,50,乙16の1,2,乙21,22,丙1の1ないし5,丙2の1,2,丙6,原告代表者,被告栄光商事代表者) なお,従来のサンラメラの1200W型は,横長で柵の方向が横向きであり,800W型は,縦長で柵の方向が縦向きであり,いずれもキャスターは付いておらず,右側に比べて左側の枠が狭く,四隅の角がほぼ直角であるところ,本件物件は,横長で,柵の方向が縦向きであり,キャスターが付いており,右側と左側にほぼ同じ幅の枠が設けられており,四隅の角が丸いといった違いがある。(甲5ないし8,11。なお,甲9,10は,平成10年のものであるので,証拠としない。) (3) 本件物件の販売ルートは,平成9年度は,主として原告から株式会社アイエフ(以下「アイエフ」という。),被告栄光商事,被告NGCへと流通するルートであり,平成10年度及び11年度は,原告からアイエフへの販売ルートのほか,原告から被告栄光商事,被告NGCへと流通するルート及び原告から被告栄光商事,協和電機,被告NGCへと流通するルートができた。本件物件の販売に際しては,新聞広告がされたほか,通信販売のカタログに掲載された。(甲4,11,13,34,35,50,乙14,15,22,丙2の1,2,原告代表者) 本件物件の製造委託ルートは,平成9年度が原告から大西ライト,合資会社オリエンタルへと委託するルートであり,平成10年度が原告から大西ライト,RCSへと委託するルートであり,平成11年度が原告から鳴海製陶,大西ライト,RCSへと委託するルートであった。(甲2,3,13,33,50,乙22) 本件物件は,平成9年度には,2000台製造され,約1600台販売された。平成10年度には,3500台製造され,すべて販売された。平成11年度には,1万2000台製造され,すべて販売された。(甲50,乙22) (4) 原告は,平成10年度には,被告栄光商事と直接本件物件の取引をすることとしたため,平成10年7月6日,被告栄光商事との間で本件契約を締結した。
本件契約第5条には,被告栄光商事は,原告の書面による承諾なくして,本件物件と使用目的を同じくする他社製品を購入又は販売してはならない旨,第11条には,本件契約の期間はあらかじめ定めず,原告又は被告栄光商事は,相互に6か月前に書面により通知することにより,本件契約を解除できる旨が規定されている。
(甲28) (5) 平成12年度の本件物件の製造については,原告と鳴海製陶は,大西ライトへの委託を止め,それまで同社の下請であったRCSに直接製造委託することとした。しかし,大西ライトが金型の引渡しを拒否したため,平成11年11月ころから,RCSに平成12年度用の新型機を試作させ,平成12年1月ころに,手作りの試作品が完成した。(甲20ないし22,49,50,原告代表者) (6) 平成12年度の本件物件の販売については,被告NGCの親会社である「そごう」の信用不安が発生したため,被告NGCの信用を補完する必要があった。また,原告は,販売に関してリスクを負担することに難色を示した。そのため,鳴海製陶が製造販売者となって日本電気オフィスシステム株式会社(以下「NECオフィス」という。)に販売し,原告は,この販売ルートからはずれてライセンス料を受け取るのみとする方向で話が進められた。平成12年3月23日に,NECオフィスの担当者C,鳴海製陶の担当者D,原告代表者及び被告栄光商事代表者が,会合を持った。被告栄光商事代表者は,協和電機の取締役でもあり,実質的には協和電機の代表者としても行動していた。上記4者は,この会合において,平成12年度分の本件物件の製造販売について,本件物件は,鳴海製陶が製造販売するものとし,本件物件の販売ルートを鳴海製陶からNECオフィス,協和電機,被告NGCへと流通するルートに移行することに合意した。この合意の後に,原告が本件物件を被告栄光商事に販売することは予定されていなかったし,実際にも販売されていない。(甲12,26,49,50,乙20,22,D証人,C証人,原告代表者,被告栄光商事代表者) (7) 上記合意に基づき本件物件の製造販売を行うことになった鳴海製陶は,平成12年4月19日,協和電機に対して,平成12年度の販売目標を1万6500台とすること,9月末日までに7000台を製造し,うち5000台は協和電機が販売保証し,残り2000台は鳴海製陶のリスクとすること,8月に2500台,9月に2500台製造販売することを内容とする申入れを行った。また,鳴海製陶は,RCSに本件物件の製造を委託することとして,交渉していたが,RCSは,平成12年4月28日付けで鳴海製陶宛てに製造拒否の通知を行った。(甲49,50,乙17,18,22,D証人)。
(8) 他方,被告栄光商事,協和電機,NECオフィス,被告NGCらは,平成12年5月ころから,本件物件とは異なる発熱体(アルミニウム製の板の表面にセラミックコーティングがされたもの)を使用した遠赤外線暖房機(イ号物件)を開発して,販売することを計画し,それをRCSに委託して製造させた。同社には,本件物件の平成12年度用の試作品があり,それをもとにイ号物件の金型が製作された。(甲21,22,甲25の1ないし3,乙1,22,C証人,被告栄光商事代表者) 被告らは,平成12年8月ころから,イ号物件を製造し,「サンルーム550」という名称で販売を開始し,同年度に約1万7500台を販売した。(甲14,19,27,39,41ないし44,乙22) 被告栄光商事は,原告に対し,平成12年8月7日,本件契約を解約する旨の通知をした。(甲29) (9) 鳴海製陶は,中日本鋳工株式会社に,本件物件の下請製造をさせることとし,同社は,同年7月17日付けで本件物件の図面を作成した。そして,同社は,この図面をもとに金型を製作して,本件物件を製造し,鳴海製陶は,同年10月ころから,本件物件の販売を開始した。平成12年度の本件物件の販売数量は,平成13年1月24日の時点で,鳴海製陶からNECオフィス,協和電機,被告NGCへと流通するルートで販売されたものが4320台,鳴海製陶からNECオフィス,協和電機へと流通するルートで販売されたものが865台,鳴海製陶から原告,アイエフへと流通するルートで販売されたものが925台であった。鳴海製陶からNECオフィス,協和電機,被告NGC又は鳴海製陶,NECオフィス,協和電機へと流通するルートで販売されたものの数は,最終的には5787台になった。(甲17,23,49,50,乙22,D証人,原告代表者) 2 不正競争防止法2条1項1号違反について (1) 前記1(1)認定のとおり,原告は,昭和59年以降長年にわたって「サンラメラ」という名称の遠赤外線暖房器具を製造販売してきたのであり,本件物件についても,平成9年から,製造販売してきたものである。
前記1(6)認定のとおり,平成12年度からは,本件物件の製造販売者は,鳴海製陶となったのであるが,原告は,鳴海製陶に対し,特許権のみならず,本件商標権や後記3(1)認定のとおり原告が開発した形態についても使用を許諾して,ライセンス料を受け取る立場にあったものと認められるのであり,前記1(9)認定のとおり自らアイエフに本件物件を販売しており,「サンラメラ」1200W型も製造販売していた(原告代表者)のであるから,「サンラメラ」という名称は,平成12年8月当時においても,原告の商品表示であったものということができる。そして,上記のとおり「サンラメラ」という名称が長年にわたって使用されてきたことからすると,原告の商品表示として周知であったものと認める余地がある。
(2) しかしながら,本件物件の形態については,前記1(2)認定のとおり,本件物件と従来のサンラメラでは,形態に異なる点が多く,その印象は大きく異なるものと認められるところ,本件物件は,平成9年10月28日から出荷が開始されたものであり,平成12年8月ころにイ号物件が発売されるまでの期間は3年間足らずにすぎないこと,前記1(3)認定のとおり,販売台数は,平成9年度は約1600台,平成10年度は3500台と多くなく,平成11年度分に1万2000台と増えたものであること,証拠(乙3,乙4の1,2)によると,ヒーターが横長の白色で,そこに縦長の柵が設けられており,その周りに枠があり,下枠に前後に張り出した取付脚が2個を設けられ,そこにキャスター4個が取り付けられている薄型の暖房器具は,本件物件の発売された以前から複数のものが知られており,その中には,角が丸いものや右側の枠にスイッチがあるものが存したことが認められるから,本件物件の基本的な形態は既に知られていたものであったことを総合すると,いまだ,本件物件の形態が,平成12年8月ころまでに,商品表示として周知となったとは認められない(もっとも,上記(1)で述べたところからすると,商品表示として周知となっていたとすると,原告の商品表示ということができる。)。
(3) 本件物件の名称のうち「サンラメラ」とイ号物件の名称のうち「サンルーム」が類似しているかどうかについては,後記7認定のとおり,これらが類似していると認めることはできない。また,本件物件においては,「600」,イ号物件においては,「550」という3桁の算用数字が使用されているが,証拠(甲11,14,24,27,39,41,42)と弁論の全趣旨によると,これらはワット数を指すものであって,そのことは広告においても明らかであると認められる上,数値も異なっているから,ともに3桁の算用数字が使用されているからといって,本件物件の名称とイ号物件の名称が類似していると認めることはできない。
別紙物件目録(1)の本件物件と同目録(2)のイ号物件を対比すると,後記3(2)認定のとおり,形態に違いが認められるが,これらはいずれもそれほど目立つ部分ではないから,本件物件の形態とイ号物件の形態は類似しているものと認められる。しかし,後記3(2)認定のとおり,これらの形態の基本的な形態は,既に知られていたものと認められるのであり,上記認定のとおり,本件物件の形態が周知であったとは認められない。また,証拠(甲11,14,24,27,39,41,42,乙14,15)によると,本件物件とイ号物件の広告では,ともに外国人の写真が用いられており,同一の図が用いられているほか,宣伝文言や説明にも似た部分があること,価格が同一であること,以上の事実が認められるが,上記証拠によると,外国人の写真や説明は同一のものではないし,宣伝文言も必ずしも同じでないと認められるし,ともに遠赤外線暖房機であるからこれらが同一又は似たものになることはやむを得ない面がある。価格が同一である点は,特に表示の類似性の認定に当たって考慮すべきである点とは考えられない。さらに,証拠(甲43ないし45)によると,インターネット上において,本件物件とイ号物件がまとめて紹介されているもの及び本件物件の代わりにイ号物件を扱う旨記載しているものがあることが認められるが,これらは,本件物件とイ号物件があることを,その名称をあげて区別して述べており,誤認混同しているものとはいえない。
なお,原告は,イ号物件の広告(甲14,27,39,41,42)に出ている推薦者は,本件物件を使用しているにもかかわらず,イ号物件の推薦をしていると主張しているが,そうであるからといって,直ちにこれらの者が本件物件とイ号物件を誤認混同しているということはできない。なぜならば,誤認混同していないとしても上記のような推薦文を掲載することを承諾することがあり得ると考えられるからである。
以上を総合すると,いまだ,本件物件の名称とイ号物件の名称が類似しているとは認められない。
(4) したがって,不正競争防止法2条1項1号違反を理由とする請求は理由がない。
3 不正競争防止法2条1項3号違反について (1) 不正競争防止法2条1項3号の保護を受けるべき者であるかどうかは,当該商品を商品化して,市場に置くに際し,費用や労力を投下した者ということができるかどうかによって決せられるところ,本件物件の図面を作成し試作品を製作したのは,原告から依頼された大西ライトであり,その費用は,原告が負担したものと認められる(甲32,50,乙22,原告代表者)から,本件物件を商品化して,市場に置くに際し,費用や労力を投下した者は,原告であるというべきであり,原告は,不正競争防止法2条1項3号の保護を受けるべき者ということができる。
被告栄光商事代表者は,前記1(2)認定のとおり,本件物件の企画やデザインに関与しており,本件物件の形態は,被告栄光商事代表者の提案による部分も大きいのであるが,これは,販売者の立場から意見を述べたものと認められ,被告栄光商事が上記のような本件物件の商品化に至る費用を負担したことを認めるに足りる証拠もない(乙22には,被告栄光商事が金型代金100万円負担したとの記載があり,被告栄光商事代表者は,同旨の供述をするが,アイエフからの本件物件の買取価格を2万6000円から2万7000円にしたというものであり,この記載及び供述のみでは,被告栄光商事が金型代金を負担したとは認められない)ことからすると,被告栄光商事が,本件物件について,不正競争防止法2条1項3号の保護を受けるべき立場にあるとは認められない。
被告栄光商事は,本件物件の販売促進のため,自己の費用で,本件物件の性能を測定する実験,有識者への推薦文の依頼,キャッチコピーの発案等を行ったものと認められる(乙12ないし15,22,被告栄光商事代表者)が,これらの事実は,本件物件の販売のために労力と費用をかけたということはできても,本件物件の商品化に労力と費用をかけたということはできないから,上記認定を左右するものではない。
(2) 不正競争防止法2条1項3号にいう「模倣」とは,他人の商品の形態をまねて,その商品と同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい,双方の商品を対比して観察したときに,形態が同一であるか又は実質的に同一といえる程に酷似していることを要する。
前記1(5),(7)ないし(9)認定の事実によると,本件物件とイ号物件では,金型が異なるものと認められる。そして,証拠(甲16,検甲1,2,被告栄光商事代表者)と弁論の全趣旨によると,本件物件とイ号物件では,次のような違いがあるものと認められる。すなわち,本件物件は厚み(奥行き)が50oであるのに対し,イ号物件は厚みが60oであり,正面ガード面格子も本件物件は中央部が窪んでいるのに対し,イ号物件は平坦であり,補強杆の位置とスイッチ枠の形状,キャスターの形状も異なる。また,イ号物件は,正面の金型と背面の金型を合わせ型にし,正面,背面一体構造の外殻体を有し,正面と背面の上下部に金型の継ぎ目が表れないようになっているのに対し,本件物件は,両側枠の上下部に角丸コーナー枠を有し,それが上枠に連設しているため,正面と背面の上下部に金型の継ぎ目が表れている。さらに,背面部においては,換気口の数,形態,位置がそれぞれ異なり,本件物件には中央に長円台形の突出部があるのに対し,イ号物件にはそれがなく,横長角形の背面開口蓋があるという違いがあり,本件物件の底面部には,多数の長楕円形の換気スリットが開口されているのに対し,イ号物件は1つの横長の換気スリットとなっているという違いがあり,電気コードが出ている位置も異なる。
他方,証拠(甲16,検甲1,2,被告栄光商事代表者)と弁論の全趣旨によると,本件物件とイ号物件は,ヒーターが横長の白色で,そこに縦長の柵が設けられており,その周りに角が丸い枠があり,右側の枠にスイッチが設けられ,下枠に前後に張り出した取付脚が2個を設けられ,そこにキャスター4個が取り付けられているという基本的な形態が同じであると認められるが,上記2(2)認定のとおり,これらの形態は,本件物件の発売開始当時既に知られていたものと認められる。
そうすると,本件物件とイ号物件は,全体としてみると一見して金型が異なることが分かり,形態が同一であるか又は実質的に同一といえる程に酷似しているとまではいうことができない。
(3) したがって,不正競争防止法2条1項3号違反を理由とする請求は理由がない。
なお,前記1(2)認定のとおり,本件物件が最初に出荷されたのは,平成9年10月28日であるから,本件物件が「最初に販売された日」は,同日であると認められる。前記1(2)認定のとおり,被告栄光商事は,同日より前に,手作りの試作品を取引先に持ち込んで営業活動をしたり,写真撮影に貸したりしていたことが認められるが,これらの事実があるからといって,「販売された」ということはできない。
4 不正競争防止法2条1項13号違反について 被告NGCによる平成12年10月9日付け新聞広告には,イ号物件について「特殊セラミック遠赤パネルから・・・遠赤外線を放射する」と記載されており(甲14),また,被告NGCの通販カタログvol.50(2001年冬)にもイ号物件について同様の記載があることが認められる(甲27)。
前記1(8)認定のとおり,イ号物件の発熱体は,アルミニウム製の板の表面にセラミックコーティングがされたものであって,セラミックを使用した製品であるから,直ちにこのような製品は「セラミックパネル」ではないと認めることはできない。また,「セラミックパネル」という語が,セラミックだけで作られた製品にのみ使用される語であると認めるに足りる証拠もない。
したがって,イ号物件のパネルに関して,被告らが,その商品の品質,製造方法について誤認させるような表示をしたとは認められないから,不正競争防止法2条1項13号違反を理由とする請求は理由がない。
5 不法行為について 原告は,被告栄光商事は,本件物件の販売に関与していたことによって知り得た情報を利用して,本件物件を模倣し又はそれと類似したイ号物件を製造販売し,かつ,消費者に本件物件と誤認混同を生じさせるような宣伝広告活動を行っていることが不法行為に当たると主張している。しかし,原告の主張によっても,本件物件の販売に関与していたことによって知り得た情報が何を意味するかは明らかではなく,それが営業秘密に当たるとの主張もない。それが営業秘密に当たらないとすると,それを利用することが違法になるとは認められない。また,本件物件を模倣し又はそれと類似したイ号物件を製造販売し,かつ,消費者に本件物件と誤認混同を生じさせるような宣伝広告活動を行っているとの点は,その行為が不正競争防止法2条1項1号又は3号違反にならないことは,既に判示したとおりであって,このような同法違反に当たらない行為が不法行為となるとは認められない。
また,原告は,被告NGCの行為も,被告栄光商事と同様に不法行為に当たると主張しているが,被告栄光商事の行為が上記のとおり不法行為に当たるとは認められないのと同様に,被告NGCの行為も,不法行為となるとは認められない。
さらに,原告は,被告らは,平成12年度の本件物件の販売について,原告及び鳴海製陶との契約準備段階に入っており,信義則上相手方に損害を与えないようにすべき義務があったところ,信義則上の義務に違反する不法行為があったと主張しているが,後記6認定のとおり,本件契約は平成12年3月23日に解除されており,同日以降,原告と被告栄光商事との間で取引をすることは予定されていなかったのであり,前記1認定のとおり,被告NGCは,被告栄光商事を経るルートで鳴海製陶と取引していたことからすると,同日以降,原告と被告NGCとの間で取引をすることも予定されていなかったのであるから,原告が,平成12年度の本件物件の販売について,被告らと契約準備段階に入っていたというようなことはない。したがって,それに伴う信義則上の義務も生じる余地はない。なお,前記1認定の事実からすると,被告らは,製造業者であるRCSを教唆し又は共謀の上,同社に,鳴海製陶に対する受注を拒否させたものとは認められず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。
よって,不法行為を理由とする請求は理由がない。
6 被告栄光商事の債務不履行について (1) 本件契約の契約書(甲28)には,対象となる製品が明示されていないが,前記1(4)認定のとおり,本件契約は,原告が被告栄光商事と直接本件物件の取引をすることとしたため,作成されたものと認められ,当事者の認識としても,本件物件を対象とするものであったと認められる(原告代表者,被告栄光商事代表者)から,本件物件を対象とするものであったと認められる。
(2) 前記1(6)認定のとおり,鳴海製陶が製造販売者となって本件物件をNECオフィスに販売し,原告は,この販売ルートからはずれてライセンス料を受け取るのみとする方向で話が進められ,平成12年3月23日に行われた会合で,平成12年度分の本件物件の製造販売について,販売ルートを鳴海製陶からNECオフィス,協和電機,被告NGCへと流通するルートに変更することが合意され,以後,本件物件を原告から被告栄光商事に販売するということは,予定されておらず,実際にも販売されていないものと認められる。
(3) 甲50(原告代表者の陳述書)には,原告代表者は,上記合意について,NECオフィスから鳴海製陶に対して注文書を発行すること,鳴海製陶は,NECオフィスの出荷依頼が出るまで在庫し,出荷依頼の都度指定場所まで配達すること,鳴海製陶,NECオフィス及び被告栄光商事が話し合って契約書を作成し,これを原告が承認すること,以上の3点を条件とすると発言し,了承されたとの記載があり,原告代表者は,尋問においても,同旨の供述をする。しかし,直接の当事者である鳴海製陶及びNECオフィスの各担当者であって,上記会合に出席していたDやCは,上記記載及び供述に沿う証言を全くしていないこと,原告代表者は,尋問において,上記会合以前に,NECオフィスを販売ルートに入れ,原告が引くことで,下話は全部できていたと供述していること,上記会合の前日に,被告栄光商事から原告へファックスし,それを原告が鳴海製陶にファックスした文書には,「販売ルートの確認,通販,インターネットの独占販売」「日本電気オフィスシステムに販売要請」との記載があること(甲12),上記合意が早く発効することは,原告にもリスクの負担を回避できるという利点があるものと考えられることを総合すると,原告代表者が上記発言をし,上記条件を付すことが了承された旨の上記記載及び供述は,直ちに信用することができない。
(4) 上記会合時に,本件契約の解除が話題にのぼったかどうかについて,C証人は,被告栄光商事代表者から,「原告と被告栄光商事の契約は解消して,NECオフィス経由の販売ルートになる。」という発言があり,原告代表者は特に反論しなかったと証言しており,被告栄光商事代表者も,原告代表者に,「これで原告と被告栄光商事の契約はなくなりますね。」という話をし,原告代表者の返事はなかったが,理解を示したと思っていたと供述する。上記(1)認定のとおり,上記会合の後においては,原告と被告栄光商事との本件物件に関する取引はなくなるのであるから,本件契約の解除が話題にのぼることは自然なことであって,これらの供述(証言)は信用することができ,これらに反するD証人の証言及び原告代表者の供述は信用できない。
(5) 以上述べたところを総合すると,本件契約は,平成12年3月23日に行われた会合において,黙示的に合意解除されたものと認められる。
なお,前記1(8)認定のとおり,被告栄光商事は,後から本件契約解約の申入れをしているが,これは念のため重複して行ったものと認められ,上記認定を覆すに足りるものではない。
(6) したがって,平成12年8月ころからイ号物件を製造販売した被告栄光商事の行為は,本件契約の債務不履行には該当しないから,債務不履行を理由とする請求は理由がない。
7 商標権侵害について 本件商標の構成は,別紙商標目録記載のとおり,欧文字の「SUNLAMELLA」と,これを片仮名文字で表記した「サンラメラ」を2段に併記して構成されており,本件商標からは,「サンラメラ」との称呼が生じる。「SUN」及び「サン」からは,「太陽,日光」という観念を生じ(広辞苑第5版1100頁,新英和大辞典第6版2462頁),「ラメラ」及び「LAMELLA」からは,日本においては,特段観念を生じない。
被告ら標章は,別紙被告ら標章目録記載のとおり,片仮名文字で「サンルーム」と横書き表記したものであり,一連のものとして認識され,「サンルーム」との称呼を生じ,「日光を多く取り入れるように,特に設備されたガラス張りの部屋」という観念を生じる(広辞苑第5版1126頁)。また,欧文字の「SUN ROOM」と,これを片仮名表記した「サンルーム」を2段に併記して構成されたものは,商標登録されている(乙1)。
以上を前提に本件商標と被告ら標章を対比すると,本件商標と被告ら標章は,「サン」の部分が同一であるほかは,外観,称呼及び観念のいずれも異なっているものと認められる。「サン」は,上記認定のとおり「太陽,日光」という観念を生じ,暖房器具の名称としては容易に着想し得る単語であること,「サン・・・」又は「SUN・・・」という登録商標は,300余り存在すること(乙6)からすると,「サン」の部分が同一というだけで,本件商標と被告ら標章の類似性を肯定することはできない。したがって,本件商標と被告ら標章が類似しているとは認められない。
原告は,イ号物件自体の外観,広告宣伝方法,価格等,取引の実情からすれば,被告ら標章は本件商標と類似していると主張する。しかし,これらについては,上記2(3)で認定したとおりであって,取引の実情から,被告ら標章が本件商標と類似していると認めることはできないものというべきである。
よって,商標権侵害を理由とする請求は理由がない。
8 反訴(不正競争防止法2条1項14号違反及び不法行為)について (1) 訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。なぜならば,訴えを提起する際に,提訴者において,自己の主張しようとする権利等の事実的,法律的根拠につき,高度の調査,検討が要請されるものと解するならば,裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でないからである(最高裁判所第3小法廷昭和63年1月26日判決・民集第42巻第1号1頁参照)。そして,以上述べたところは,訴えの提起が不法行為(民法709条)となるかどうかはもとより不正競争防止法2条1項14号違反になるかどうかについても当てはまるものというべきである。
(2) 原告による不正競争防止法2条1項1号違反の主張について 前記2(1)認定のとおり,本件物件の名称については,原告の商品表示として周知であったと認められる余地があるが,イ号物件の名称と類似しているとは認められないものである。しかし,本件物件の名称とイ号物件の名称は,「サン」の部分が同一である上,前記2(2)で認定したような本件物件とイ号物件の形態が類似するなどという事情もあったのであり,これらによって本件物件の名称とイ号物件の名称が類似するものと認められれば,原告の被告らに対する不正競争防止法2条1項1号違反の主張は認められる可能性が高いということができるから,名称についての不正競争防止法2条1項1号違反の主張は,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認めることはできない。
前記2(2)認定のとおり,本件物件の形態については,原告の商品表示として周知であったとは認められないが,前記2(3)認定のとおり,本件物件の形態とイ号物件の形態は類似している。そして,本件物件は,3年間にわたって約1万7100台販売されている上,新聞広告がされたり通信販売のカタログに掲載されたりしているのであるから,これらによって本件物件の形態について原告の商品表示として周知であったと認められれば,原告の被告らに対する不正競争防止法2条1項1号違反の主張は認められるから,形態についての不正競争防止法2条1項1号違反の主張は,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認めることはできない。
(3) 原告による不正競争防止法2条1項3号違反の主張について 前記3(2)認定のとおり,本件物件の形態とイ号物件の形態は,同一であるか又は実質的に同一といえる程に酷似しているということができないのであるが,似ている部分は多く,これらによって実質的に同一であると認められれば,原告の被告らに対する不正競争防止法2条1項3号違反の主張は認められるから,不正競争防止法2条1項3号違反の主張は,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認めることはできない。
(4) 原告による不正競争防止法2条1項13号違反の主張について 前記4認定のとおり,イ号物件のパネルに関して,被告らが,その商品の品質,製造方法について誤認させるような表示をしたとは認められないが,「セラミックパネル」をセラミック製のパネルと解した場合には,イ号物件のパネルに関して,その商品の品質,製造方法について誤認させるような表示をしたということになるから,原告による不正競争防止法2条1項13号違反の主張は,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認めることはできない。
(5) 商標権侵害について 前記7認定のとおり,本件商標と被告ら標章が類似しているとは認められないが,本件商標と被告ら標章では,「サン」の部分が同一である上,前記2(3)で認定したような本件物件とイ号物件の形態が類似するなどという事情もあったのであり,これらによって本件商標と被告ら標章が類似するものと認められれば,原告の被告らに対する商標権侵害の主張は認められるから,商標権侵害の主張は,提訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認めることはできない。
(6) したがって,原告が,被告栄光商事がイ号物件を製造,販売する行為は不正競争防止法に違反するとして本訴を提起し,さらに商標権侵害の請求原因を追加し,被告NGCに対しても同様の主張をして共同被告としたことは,不正競争防止法2条1項14号の個々の要件を検討するまでもなく,同号に違反するということはできないし,また,不法行為であるということもできない。
9 反訴(保証金返還請求)について 被告栄光商事が原告に対し,保証金として300万円を預託したこと及び原告は本件契約終了時に上記保証金を返還する旨を約したことに争いはない。そして,前記6で認定したとおり,本件契約は平成12年3月23日付けで合意解除されて終了しているから,原告には上記保証金を全額返還する義務が生じている。したがって,被告栄光商事の預託保証金返還請求は理由がある。
10 結論 以上のとおり,原告が本訴請求の根拠とする各不正競争防止法違反,不法行為,債務不履行,商標権侵害の主張はいずれも理由がないから,原告の本訴請求を棄却することとする。
また,被告栄光商事の反訴請求のうち,預託保証金返還請求は理由があるから,これを認容することとし,その余の請求は理由がないから,これを棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 東海林保
裁判官 瀬戸さやか
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