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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13ワ8983不正競争防止法に基づく差止等請求事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  需要者 /  商品等表示 /  出所表示性(出所表示) /  類似性(類似) /  混同のおそれ(混同) /  表示の使用 /  誤認混同 /  差止請求(差止) /  過失 /  利益額(利益の額) /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) /  損害賠償 /  損害額 /  推定 /  販売数量 / 
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事件 平成 10年 (ワ) 11572号 不正競争行為差止等請求事件
原告 株式会社大景
原告訴訟代理人弁護士 雨宮眞也
同 小幡葉子
同 板垣眞一
同 本山健
原告訴訟復代理人弁護士 大久保 敦
被告 株式会社ラックス
被告 ラックス工業株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士 田原昭二
同 北河隆之
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/10/22
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告らは,その販売するハンガー及びその広告に,別紙表示目録記載の表示(ただし,JS−898を除く。)を使用し,又は,その表示を使用したハンガーを譲渡し,譲渡のために展示してはならない。
2 被告らは,被告らが製造販売するハンガーに付された別紙表示目録記載の表示(ただし,JS−898を除く。)を抹消せよ。
3 被告株式会社ラックスは,原告に対し,金5048万0018円及びこれに対する平成10年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告ラックス工業株式会社は,原告に対し,金672万4182円及びこれに対する平成10年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告のその余の請求を棄却する。
6 訴訟費用については,原告に生じた費用の12分の5と被告株式会社ラックスに生じた費用の3分の1と被告ラックス工業株式会社に生じた費用の2分の1を原告の負担とし,原告に生じた費用の3分の1と被告株式会社ラックスに生じた費用の3分の2を被告株式会社ラックスの負担とし,原告に生じた費用の4分の1と被告ラックス工業株式会社に生じた費用の2分の1を被告ラックス工業株式会社の負担とする。
7 この判決の第1項ないし第4項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 被告らは,その販売するハンガー及びその広告に,別紙表示目録記載の表示を使用し,又は,その表示を使用したハンガーを譲渡し,譲渡のために展示してはならない。
2 被告らは,被告らが製造販売するハンガーに付された別紙表示目録記載の各表示を抹消せよ。
3 被告らは,原告に対し,各自金1億4106万6230円及びこれに対する平成10年6月6日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 本件は,「JS」「RK」との表示が付された流通用ハンガーを販売している原告が,同じく「JS」「RK」との表示が付された流通用ハンガーを被告製品として製造販売している被告らに対し,「JS」「RK」という表示は流通用ハンガーにおける原告の周知な商品表示であるとして,不正競争防止法に基づき,差止め及び損害賠償を求めている事案である。
2 争いのない事実等(証拠を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。) (1) (当事者) 原告は,株式会社三景(以下「三景」という。)を中心とする三景グループに属し,衣料の包装資材及びハンガー等の製造販売を主たる業とする株式会社である。
被告株式会社ラックス(以下「被告ラックス」という。)はハンガーの製造販売を主たる業とする株式会社であり,被告ラックス工業株式会社(以下「被告ラックス工業」という。)は,ハンガーの製造販売,フィルム包装資材の加工販売及び婦人服付属品の加工販売等を業とする会社である。
(2) (原告による流通用ハンガーの販売とその表示内容) 原告は,流通用ハンガーを洋服製造業者等(以下「アパレルメーカー」という。)に販売しており,自己の販売するハンガー及びその広告に別紙表示目録記載の表示(ただし,JS-898を除く。以下JS-898を除く表示を「本件表示」という。)を使用している。
(3) (被告らによる流通用ハンガーの製造販売とその表示内容) 被告らは,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,これらをアパレルメーカーに販売し,また,自社の広告に本件表示を使用している。
(4) (原告が本件表示を付した流通用ハンガーを販売するに至った経緯) ア 昭和55年2月,三景グループの関連会社として,株式会社三景ハンガー(以下「三景ハンガー」という。)が設立され,流通用ハンガー及び包装資材の販売を主たる業として営業を開始した。三景ハンガーは,昭和56年3月,社名を株式会社東京ジョイナー(以下「東京ジョイナー」という。)に変更した(甲68)。
イ 昭和56年3月ころ(原告主張),昭和58年5月ころ(被告主張),東京ジョイナーと被告ラックスとの間で,被告ラックスが東京ジョイナーに対し,流通用ハンガーを継続的に製造して供給することを内容とするハンガーの継続的供給契約(以下「本件供給契約」という。)が締結された。東京ジョイナーは本件供給契約に基づき,被告ラックスが製造する流通用ハンガーを購入して,これを株式会社レナウン(以下「レナウン」という。),株式会社レナウンルック(以下「レナウンルック」という。)等のアパレルメーカーに販売していた。
ウ その後,東京ジョイナーは,昭和59年1月,三景グループの関連会社の1つである株式会社サン企画に吸収合併された。さらに,平成7年4月,株式会社サン企画は三景に吸収合併されて三景のサン企画事業部として事業を行うことになった(以下「株式会社サン企画」と「三景のサン企画事業部」を総称して,「サン企画」という。)が,平成8年12月,三景はそのサン企画事情部の取扱業務のうち,ハンガー及び包装資材関係の営業を,自社グループの原告に営業譲渡した。
上記の経過により,本件供給契約における東京ジョイナーの契約上の地位(債権を含む)及び流通用ハンガーの販売は,サン企画を経て,原告に引き継がれた。
(5) (原告による本件供給契約の解除通知) 原告は,被告ラックスに対し,平成9年4月16日到達の内容証明郵便をもって,本件供給契約を解除する旨通知した(甲26)。
争点及び当事者の主張
1 本件の争点 (1) 本件表示が不正競争防止法2条1項1号商品等表示に該当するか ア 本件表示の「JS」「RK」という記号は,商品識別機能ないし出所表示機能を有する原告の商品表示といえるか。
イ 本件表示の周知性誤認混同のおそれの有無 (2) 原告は,被告らに対し,本件表示を付した流通用ハンガーの第三者への販売を許諾していたか。
(3) 被告らは,平成2年ころから株式会社富士商事(以下「富士商事」という。)等のアパレルメーカーに対して,「JS-898」と表示されたハンガーを販売していたか。
(4) 損害の発生及びその額 2 当事者の主張 (1) 争点(1)アについて (原告の主張) 本件表示の「JS」「RK」という記号は,商品識別機能ないし出所表示機能を有する原告の商品表示である。すなわち,流通用ハンガーはアパレルメーカーがその製造した洋服を出荷するに当たり使用するハンガーであるが,その商品の特質から,商品の形状に固有の名称を付けることができない。そのため,ハンガーの販売業者は,自社製品と他社製品を識別するために,それぞれに独自の記号・番号を付してそれを商品表示とするのが業界慣行である。そして,本件表示のうち「JS」のJは東京ジョイナーの頭文字,Sはサン企画の頭文字であり,また,「RK」は原告の得意先であるレナウン喜多方工場の頭文字であるから,原告製品の表示であることは明らかであり,原告は,流通用ハンガーの売買において,本件表示を付したハンガーを,遅くとも東京ジョイナー時代の昭和56年ころから使用している。
(被告らの主張) 否認する。「JS」は被告らがサン企画を通じて販売する一般向け商品に付した流通経路を示す記号であり,「RK」はレナウン喜多方工場から注文を受けて同工場に販売する特注品に付したエンドユーザーを示す記号であって,このように本件表示にある「JS」「RK」という記号は,いずれも商品管理のためにエンドユーザー又は流通経路を示すものとして付された記号にすぎないものであるから,これには,商品表示としての商品識別機能ないし出所表示機能はない。また,本件表示が商品表示であるとしても,本件表示を考案したのは被告ラックスであり,かつ本件表示を付したハンガーを実際に製造していたのも被告ラックスであるから,本件表示の「JS」「RK」という記号は,被告ラックスの商品表示であり,原告の商品表示ではない。
(2) 争点(1)イについて (原告の主張) 被告らが,遅くとも本件表示を付した流通用ハンガーの販売を開始した平成7年3月の時点以前において,本件表示の「JS」「RK」という記号は,原告の商品表示としてアパレル業界に広く認識されていた。すなわち,東京ジョイナーは,昭和56年3月から,カタログ,パンフレット,業界紙における広告等に本件表示を掲載し,本件表示を付した流通用ハンガーの販売努力を積み重ねてきた。また,原告が属する三景グループは,その年商が2000億円に達する日本最大の服飾副資材の総合商社であり,本件表示を付した流通用ハンガーの販売には,三景グループの販売力が大きな影響力を持っていた。平成4,5年当時の東京地区における流通用ハンガーの販売量は年間約1億本と推定されるところ,そのうち本件表示を付したハンガーの販売量は年間約1200万本に達していたのであり,当時,流通用ハンガーの普及率は東京が82パーセントであったのに対して,大阪では25パーセントであったから,このような販売量に基づく東京地区での周知性は全国レベルのものであるということができる。さらに,東京ジョイナーの社名変更や営業譲渡の際には,その度ごとに挨拶状等でアパレルメーカーに対しその旨通知してされていた。なお,「RK」記号については,原告の営業努力により,レナウン喜多方工場向けのみならず,他のアパレルメーカーに対しても,広く販売されていた。
したがって,本件表示は原告の商品表示としてアパレル業界に広く認識されていた。
(被告らの主張) 本件表示の「JS」「RK」という記号には商品識別機能ないし出所表示機能がないのであるから,それらの記号が原告の商品表示としてアパレル業界に広く認識されていたという事実はない。 また,三景は裏生地のメーカーとしては大きなシェアをもっているが,ハンガー業者としてのシェアはわずかであり,アパレル業界においてその知名度も低いのであるから,三景グループの影響力によって本件表示が原告の商品表示としてアパレル業界に広く認識されていた事実はない。
さらに,原告のカタログには,本件表示にある「JS」「RK」以外の記号・番号が多数掲載されているが,そのうち,「JS」「RK」という記号以外のものは,原告が販売代理店として販売している他社のハンガーであって,カタログ上は自社商品と他社商品の区別は全く付けられていない。したがって,需要者がこのカタログをみて,「JS」「RK」という記号のハンガーが原告のハンガーであると識別するはずがない。
(3) 争点(1)ウについて (原告の主張) 流通用ハンガーの売買は,一般にその受発注において製造者名を表示することなく,ハンガーの記号・番号のみで行われているから,被告らが被告らの商品に本件表示を使用すると,アパレルメーカーは,被告らの販売する商品が原告の商品であると誤認混同するおそれがある。また,流通用ハンガー業界ではどことどこが販売代理店契約をしているかは一般に明らかになっていないため,本件表示が付された流通用ハンガーであれば,それがどの業者のパンフレットに掲載されていても,原告の商品であると認識されるおそれが十分にある。
(被告らの主張) 本件表示を付した流通用ハンガーは一般消費者に対して店頭で展示販売される商品ではなく,アパレルメーカーが各社の商品カタログに基づき購入する商品であるから,原告のカタログに掲載されている本件表示を付した流通用ハンガーと被告ラックスのカタログに掲載されている同様のハンガーを混同して購入することはない。また,アパレルメーカーが,販売代理店から購入する場合であっても,被告らと取引関係にある販売代理店は独自のカタログを作成せず,被告ラックスのカタログを使用して販売しており,アパレルメーカーは被告ラックスのカタログに掲載されているハンガーを注文するのであるから,アパレルメーカーが混同する可能性はない。
(4) 争点(2)について (被告らの主張) 原告は,被告らに対し,次のとおり,本件表示を付した流通用ハンガーの第三者への販売を許諾していた。
被告らの代表者(以下「A」という。)は,昭和58年9月末から10月初めころ,サン企画の常務であったBから,東京ジョイナー時代の不良在庫(約2500万円分)の半分(約1200万円)を被告ラックスの負担で処理できないかとの相談を受けた際,それへの協力を申し出た。そうすると,BはAに感謝し,「この金(前渡金)で作ったハンガーはうちだけではなく,被告ラックスのお客にも今までどおり自由に売ってもいいよ」と述べた。また,昭和58年11月もしくは同年12月ころ,AがBと共にレナウンルックの担当責任者であったCとJSイカリR金型に関して話し合った際,Cも「レナウンルック向け金型で製造するハンガーを他社にも売ったらよいのではないか」と発言し,被告らが本件表示を付した流通用ハンガーを第三者へ直接販売することを承諾していた。そして,被告ラックスは,昭和61年6月からは株式会社カトレアへ,昭和61年9月から株式会社ロコへ,平成5年3月からは株式会社ジョイ企画へ,平成5年12月からは東京ハンガーへ,それぞれ本件表示を付した流通用ハンガーを直接販売してきたが,上記取引先はいずれもサン企画と下札等の衣料副資料の取引があったことから,サン企画の業務部長や営業課長は被告ラックスが上記取引先に本件表示を付した流通用ハンガーを直接販売していたことを十分承知していたにもかかわらず,何ら異議を述べなかった。
また,被告ラックスは,本件表示を付した流通用ハンガーを製造するための金型費用を賄うためにサン企画から「前渡金」名目で金型費用を借り受け,その返済のために金型代金返済償却進行表を作成してサン企画に提示していたが,被告ラックスは,前渡金返済のために,原告のすすめにより,本件表示を付した流通用ハンガーを,サン企画以外の他社へも販売し,その自社販売分を返済進行表の販売数量に含め,サン企画に毎月の請求書と一緒に提出していたのであるから,サン企画は,本件表示を付した流通用ハンガーを他社へ販売することを積極的に勧めていたものである。
さらに,被告ラックス工業は,昭和61年5月ころ,レナウンルックの要請に応じて,レナウンルック及びその関係会社に対しスカート用吊り紐テープを生産して販売することを目的として,A,B,D(当時のサン企画財務部長,以下「D」という。)らが発起人となって設立された会社であったところ(当時の会社名はサンラックス工業有限会社),同社はスカート用吊り紐テープだけでは赤字になることが当初から明らかであったため,流通用ハンガーの販売も想定されており,レナウンルックが被告ラックス工業から本件表示を付した流通用ハンガーを仕入れることを,サン企画のB,Dらは認めていたものである。
(原告の主張) 被告らが主張するような許諾の事実はない。かえって,被告らにおける本件表示を付した流通用ハンガーの製造には東京ジョイナーが被告に無償貸与したハンガー製造用金型が使用されていたところ,本件供給契約の付随合意事項として,東京ジョイナーが被告ラックスに対し,ハンガー製造用金型の無償貸与等を内容とする便宜供与を行うが,それによって貸与された金型は,その趣旨から当然に東京ジョイナーが発注したハンガーの製造のみに使用することにし,被告ラックスが,東京ジョイナーの取引先に対して直接ハンガーを販売することはしないという合意がされていたのであって,その合意によって,被告らが本件表示を付した流通用ハンガーを東京ジョイナーを通さないで直接アパレルメーカー等に販売することは禁止されていたものである。
(5) 争点(3)について (原告の主張) 被告ラックスは,遅くとも平成2年には,被告ラックス工業を通じて,JS-898ハンガーを,富士商事等に対して原告に無断で直接販売していた。被告らが作成したカタログには,明確に「JS-898」と表示されたハンガーが掲載されている。 (被告らの主張) 898ハンガーは,被告ラックス工業が,レナウンルックからの依頼により,スカート用品専用ハンガーとして開発し,被告ラックス工業で製造し,レナウンルックに直接納品していたレナウンルック専用ハンガーであり,商品名「898」もレナウンルックにより命名されたものである。金型とハンガーには「JS」記号は一切刻印されていない。したがって,平成2年ころから,富士商事等に「JS-898」と表示されたハンガーを販売していた事実はない。レナウンルックは平成元年1月から自社婦人服製品のプレス仕上げ加工業者である富士商事に対し,その婦人服に使用するための898ハンガーを供給していたが,平成8年ころから直接富士商事に納入するようレナウンルックから指示があり,被告ラックス工業は以後「JS」記号の付されていない898ハンガーを直接富士商事に販売していたにすぎないものである。また,サン企画から被告ラックスに対し898ハンガーを購入して販売したいという引き合いがあり,被告ラックス工業を通じ2,3回程度のサンプル販売(甲121の1〜4)を行い,その際,途中からJS記号を伝票に記載したことがある。しかし,898ハンガーには使用上の難点があり,レナウンルック及びその関係会社以外での使用が大変難しいためその後継続的な取引は行われていない。 (6) 争点(4)について (原告の主張) 被告らは,本件表示が原告の商品表示として周知であることを知りながら,共同して故意に,本件表示を付したハンガーを,原告に無断でアパレルメーカーに対して販売するという不正競争行為を行った。その不正競争行為により原告が受けた損害額は,不正競争防止法5条1項により,被告らの侵害行為によって得た利益額推定されるところ,同規定に基づく被告らの利益は,別紙1「原告の損害計算書」記載のとおりであり,平成7年度分として5990万5242円,平成8年度分として7589万2942円,平成9年度分として1億0628万2024円であり,合計2億4208万0208円である。よって,原告は,被告らに対し,被告らの不正競争行為により原告が被った損害の賠償として,その内金1億4106万6230円を請求する。
(被告らの主張) ア 原告主張の損害の発生及び額については否認する。
イ 仮に,被告らに原告の主張する不正競争行為があったとしても,被告ラックスが本件表示を付した流通用ハンガーを製造販売したことによる損益の明細は別紙2「平成7,8,9年度 ラックスJS,RKハンガー該当損益明細表W」(以下「損益明細表W」という。)記載のとおりであり,そのうち,本件表示を付した流通用ハンガーの売上金額から差し引かれるべき仕入金額及び技術料等の売上原価の明細は,別紙3「平成7,8,9年度 ラックス売上仕入詳細及び損益明細表」(以下「売上仕入損益明細表」という。)のとおりである。
上記損益明細表W記載のとおり,本件では,上記売上原価の他に,本件表示を付した流通用ハンガーの製造販売に要した経費として,次の各費用が控除されるべきである(各費用の金額は上記損益明細表Wの各該当欄記載のとおりである)。
(ア) 金型償却費 本件ハンガーを製造する金型に限定した金型償却費である。この金型償却費の対象金型は,原告による一方的な取引解消(平成9年4月15日)に至るまで,被告ラックスが原告の注文に応じてそれを使用して,本件表示を付した流通用ハンガーを生産し供給していた金型であって,被告ラックスが自らの費用で製作したものである。
(イ) 研究開発費 本件表示を付した流通用ハンガーのうち,JS-912,JS-913の金型製作の前段階で,数種の商品図,数種の形状サンプル製作のために,フォアフロントに対して支払った研究開発費である。
(ウ) リース料 A 自動取出しロボットのリース料 本件表示を付した流通用ハンガー生産のために下請工場内に設置した自動取出しロボット(成形機械に取り付けて,ハンガーを自動的に金型から取り出す装置で,人手の作業の軽減を図るもの)のリース料である。
B 金型及び射出成形器のリース料 本件表示を付した流通用ハンガー生産のためのJS-411及びJS-951の金型並び射出成形機のリース料である。
(エ) 修繕費 本件表示を付した流通用ハンガーの金型の修繕費である。被告が独自資金により製作した金型はもとより,原告所有金型に関しても,被告においてすべての修繕費を負担している。
(オ) 会議費 一個の金型の開発から完成までには,早くて3か月,複雑な金型になると2年くらいの時間が必要となる。その間,顧客からの要望に対応するハンガーのアイディアについての打合せから始まり,商品図の完成に至るまでの会議,金型製作技術者を交えた会議,完成した金型製作図と工場現場での数回に及ぶ試験結果をふまえた検討会議,射出成形機の選択のための機械メーカーの工場における類似金型による能力テストなどが必要になる。これらの協力工場,金型製作会社,機械メーカー及び機械商社の担当者らとの,本件表示を付した流通用ハンガーの金型製作のための会議費である。
(カ) 通信費 被告ラックスの事務所内には,ハンガー関係専用の電話とファクシミリが備えられており,これにより,被告ラックスの従業員は,金型製作のための関係会社との連絡,流通用ハンガーの生産工場との連絡(指定材料,成型条件,生産コスト等の指示)を行っており,これらの本件表示を付した流通用ハンガーの生産に関わる関係者との通信費である。
(キ) 旅費交通費 本件表示を付した流通用ハンガーの生産のための金型製作の打合せ,射出成形機の能力テストのための機械メーカーの工場への出張,下請工場における生産の立会い等のための出張に要する旅費交通費である。
(ク) 保険料 本件表示を付した流通用ハンガーによる事故が原因で負担する損害賠償責任を填補するための保険と,ハンガー自体の滅失,毀損による損害を填補するための保険の保険料である。
(ケ) 交際費及び販売促進費 交際費は,本件表示を付した流通用ハンガーに関するアパレルメーカーや小売業者との打合せ費用であり,販売促進費は,本件表示を付した流通用ハンガーの販売代理店や卸先関係との打合せ費用である。飲食,ゴルフ等であっても,顧客との円滑な取引のためには必要欠くべからざる経費である。
(コ) 工場家賃 本件表示を付した流通用ハンガーは,下請工場(高橋製作所・エイト化成・富士川プラスチック)に指示して直接アパレルメーカーに出荷するが,そのための生産直後のハンガーを下請工場の倉庫に在庫するための賃借料である。
(サ) 工場出荷配送費 下請工場から出荷した本件表示を付した流通用ハンガーの運賃及び下請工場間のパーツ供給のための運賃である。
(シ) 出向社員人件費 被告ラックスの社員であるE,F,G等が,被告ラックスからサン企画に出向し,レナウン及びレナウンルックに対する本件表示を付した流通用ハンガーの販売供給のための業務に専属的に従事していた。その人件費である。
(ス) ハンガー専従人件費 被告ラックスの社内において本件表示を付した流通用ハンガーの業務に専従していた従業員の人件費である。被告ラックスでは,ハンガー担当者と包装資材のフィルム担当者は,完全に分れている。
以上の諸経費を差し引くと,被告ラックスは全体的に赤字であり利益はなかったものである。 イ 被告ラックス工業が本件表示を付した流通用ハンガーを製造・販売したことによる損益の明細は別紙4「平成7,8,9年度レナウンルック及びその他売上損益明細表[」(以下「損益明細表[」という。)記載のとおりであるが,本件では,売上金額から控除されるべき費用として売上原価の他に,本件表示を付した流通用ハンガーの製造販売に要した経費として,次の各費用が控除されるべきである(各費用の金額は上記損益明細表[の各該当欄記載のとおりである)。
(ア) 通信費及び光熱費 後記(エ)の倉庫にレナウンルックとの連絡用に設置した電話及びファクシミリに関わる通信費並びに同倉庫の光熱費である。
(イ) 保険料 後記(エ)の倉庫に備蓄していたレナウンルック用の本件表示を付した流通用ハンガーにかけた火災保険料である。
(ウ) 運賃 本件表示を付した流通用ハンガーに関する運賃であって,佐川急便及びコイデ運輸に支払った。
被告ラックス工業は,デパート,スーパーマーケットなどで使用済みになった本件表示を付した流通用ハンガーの回収と分別を島エージェントに委託し,分別後に被告ラックス工業が島エージェントから仕入れるという関係にある。
コイデ運輸の運賃はその際のもので,まさに本件表示を付した流通用ハンガーに関する運賃である。
(エ) 家賃 当初,被告ラックス工業とサン企画で合意したハンガー緊急用出荷体制(主に土日祭日の出荷に備えるもの)のための倉庫は,平成元年12月28日付け協定書に明記されているとおり,株式会社キューピー流通システム(以下「キューピー流通システム」という。)から借りた40坪ほどの物件であった。その後,平成4年10月31日付け覚書記載のとおり,レナウンルックに対するハンガー販売数量の増加や同ハンガーのリサイクルの開始に伴い,100坪以上のスペースが必要となり,平成4年10月21日から,キューピー流通システムと被告ラックス工業の間の賃貸借契約によって,新たに本件表示を付した流通用ハンガーの緊急用出荷体制のための倉庫を確保した。その家賃である。
(オ) リース料 レナウンルックのスカート専用ハンガーとして開発した898スライドハンガーの金型製作資金のリース料とフォークリフトのリース料である。
以上の諸経費を差し引くと全体的に赤字であり,利益はない。
(原告の反論) ア 被告ら主張の損益明細表Wの記載のうち,被告らが,被告ラックスの利益を算出するについて,その売上金額に「株式会社大景関係JS/RKハンガー売上」を算入していないのは不当である。
また,損益明細表Wの「売上利益」の額は信用できない。被告ラックスの粗利益率については最低でも40パーセントを下ることはなく,被告ら主張の粗利益率はあまりに低すぎる。
本件表示を付した流通用ハンガーの製造販売に直接必要であったと被告らが主張する売上原価以外の必要経費については,次のとおり,そのほとんどが経費として認められないものである。
(ア) 金型償却費について 本件表示を付した流通用ハンガーの金型の新規製作は,平成5年以降は一時中止しており(ただし,JS-415ハンガーの金型の新規作成のみは,平成6年6月にずれ込んでいる。),損益明細表W添付の「金型減価償却明細T」記載の金型について原告は全く関係していないから,それらの金型は,本件表示を付した流通用ハンガーの金型とは考えられない。仮にそうでないとしても,東京ジョイナーらは,被告ラックスに対し,本件契約の付随する便宜供与として,昭和55年10月から平成6年6月にかけて,金型の大半を無償で貸与しているから,被告らが主張する金型償却費は,被告の経費として認められる理由がない。
(イ) 研究開発費 上記(ア)のとおり金型の新規製作はされていないから,研究開発費が生じる理由がない。なお,原告は,JS-912,JS-913の金型製作費として1100万円,改良費として各100万円,開発費として各150万円の合計1600万円を負担している。
(ウ) リース料 A 自動取出しロボットのリース料 自動取出しロボットのリース料については,平成7年3月以前に投入済みであるから,経費にはならない。
B 金型及び射出成形機のリース料 JS-951の金型リース料については,平成7年3月以前に投入済みである。また,被告ラックスは,ファインモールドから,射出成形機について月額16万円程度の賃貸料を徴収しており,被告ラックス自身は何らの負担もしていない。
(エ) 修繕費 被告ラックスが使用してきた多くの金型は,原告が被告ラックスに対して無償貸与してきたものであるところ,使用貸借されたものについては,借主が修繕費を負担するのが当然である(民法595条1項)。したがって,修繕費は経費にならない。
(オ) 会議費 金型の使用貸借に伴って被告ラックスが負担すべき経費である。また,本件表示を付した流通用ハンガーの生産に使われたのか,社長個人が使ったのか明らかではない。
(カ) 通信費 被告ラックスの通信費に関する平成6年12月分及び平成7年12月分の調査結果によると,前者が2万2708円,後者が2万3467円であるから,1か月分の通信費はせいぜい2万3000円程度であり,1年分としても合計27万6000円である。原告はこの範囲であれば,認めないわけではない。しかし,被告ら主張の通信費はあまりに過大である。
(キ) 旅費交通費 金型の使用貸借に伴って被告ラックスが負担すべき経費である。被告ラックスの出張旅費計算書を調査した結果によると,出張目的は,本件表示を付した流通用ハンガーとは無関係な百貨店統一ハンガーの売込みやゴルフコンペ出席等であり,本件表示を付した流通用ハンガーとの関連性が明らかでない。
(ク) 保険料 製造物責任保険の保険料については,原告も被告ラックスとは別契約により負担していたから,経費とは認められない。
(ケ) 交際費及び販売促進費 被告ラックスの出張旅費計算書の調査の結果は,上記(キ)のとおりであり,本件表示を付した流通用ハンガーとの関連性が明らかでない。
(コ) 工場家賃 原告の本社建物は十分な在庫保管スペースを有していたので,商品倉庫を外部に借りる必要性は全くなかった。被告ラックスが倉庫を賃借していた事実は認めるが,それは被告ラックスが勝手な都合により必要もない倉庫を借りていたにすぎない。
(サ) 工場出荷配送費 損益明細表W添付の「平成7年度〜平成9年度JS,RKハンガーに該当する工場出荷配送費一覧表」記載の佐川急便については,サン企画は平成7年2月までは商品仕入れ単価に上乗せして支払っており,同年3月からは,商品代金とは別にサン企画らが負担していたから,被告ラックスは負担していない。
損益明細表W添付の「平成7年度〜平成9年度JS,RKハンガーに該当する工場出荷配送費一覧表」記載のHについては,原告は被告ラックスに対して,ハンガー改修費及び配送費として毎月定額を支払っている。
被告ら主張の配送費は,すべてが本件表示を付した流通用ハンガーに関するものではない。
(シ) 出向社員人件費 被告ラックスの賃金台帳の調査結果によると,平成7年度分については,総人件費4696万1090円,役員報酬1560万円であり,一般社員への支給総額は3136万1090円となるところ,被告らは,平成7年度の本件表示を付した流通用ハンガー関連の人件費を2791万6810円(出向社員分1304万3930円,専従社員分1487万2880円)と主張しているから,本件表示を付した流通用ハンガー以外の人件費はわずか344万4280円にすぎないことになってしまう。被告らによる人件費の計上は明らかに過大である。
サン企画らは被告ラックスに対して,販売手数料名目で出向社員2名分(1名については平成7年4月分まで,他の1名については平成8年11月まで)の人件費を負担しているところ,被告らは,このサン企画ら負担分について経費から控除していない。
(ス) ハンガー専従人件費 原告の損害計算書記載のとおり,Iについての一部以外,控除すべき経費として認められない。
イ 被告ラックス工業の損益明細表[記載の「売上利益」の額は信用できない。被告ラックスの粗利益率については最低でも40パーセントを下ることはなく,被告ら主張の被告ラックス工業の粗利益率はあまりに低すぎる。
本件表示を付した流通用ハンガーの製造販売に直接必要であったと被告らが主張する売上原価以外の必要経費については,次のとおり,そのほとんどが経費として認められないものである。
(ア) 通信費及び光熱費 本件表示を付した流通用ハンガーとの関連が明らかではなく,控除すべき経費とは認められない。
(イ) 保険料 被告ラックス工業から提出された領収書によっても,本件表示を付した流通用ハンガーとの関連が明らかではなく,控除すべき経費とは認められない。
(ウ) 運賃 被告ラックス工業のコイデ運輸関係の請求書及び送り状を調査した結果,本件表示を付した流通用ハンガー関連の経費は,被告ら主張の額の約8.9パーセントにすぎない。佐川急便分も同様と推定すべきである。
(エ) 家賃 サン企画らは,被告らに対して,平成元年6月以降,最高月額64万円もの倉庫家賃を負担していた。被告ラックス工業は,家賃の負担をしていない。
(オ) リース料 JS-898スライドハンガーについては,遅くとも,平成2年7月には商品化し,販売されていたことからすると,その金型開発時期は平成2年前半であり,平成7年7月までにはリース料の支払は完了していたはずであるから,経費とは認められない。
争点に対する判断
1 争点(1)について (1) 証拠(甲4ないし19,21,24,30ないし34,甲35の1ないし11,甲37の1ないし17,甲38,39,甲40の1ないし5,甲41の1ないし6,甲42の1ないし5,甲43の1・2,甲44の1・2,甲45,46,甲47の1・2,甲48,甲49の1ないし4,甲50ないし52,甲53の1ないし6,甲55の1ないし3,甲57の1ないし6,甲58の1ないし4,甲59の1ないし12,甲60,64ないし68,甲81,84ないし86,89,90,92ないし119,乙2,3,乙4の1・2,乙6,乙7,乙8の1ないし3,乙17ないし26,乙27の1・2,乙28,乙44の1ないし8,乙47,51,乙52の1・2,乙59の1ないし6,証人D,同J,被告ら代表者)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められ,これに反する被告ら代表者尋問の結果は,採用できない。
ア 昭和55年当時,レナウン及びレナウンルックは,ヨシダハンガー株式会社(以下「ヨシダハンガー」という。)から流通用ハンガーを購入していたが,ヨシダハンガーが経営不振となったため,レナウン及びレナウンルックは,三景グループの会社である株式会社三旺(以下「三旺」という。)に対し,流通用ハンガーの継続的供給確保の協力を求めてきた。そこで,三旺らは,三景ハンガーを設立して,レナウン及びレナウンルックに対して,ハンガーの販売を行うこととなった。
イ ヨシダハンガーは,昭和56年5月に倒産したが,その前月の4月に,被告ラックスが,ヨシダハンガーの代表取締役であったJらが中心となって設立された。被告ラックスは,流通用ハンガーの製造販売を行うことになったが,当時,被告ラックス自体には信用力も資金力もなかったことから,独力でレナウン及びレナウンルックなどのアパレルメーカーに対する販売を行うことが困難であった。そこで,被告ラックスは,三景ハンガーが商号変更した東京ジョイナーとの間で本件供給契約を締結して,流通用ハンガーの製造は被告ラックスが行うが,製造した製品のレナウン及びレナウンルック等のアパレルメーカーへの販売は東京ジョイナーが製造販売元となって行うことが合意された。東京ジョイナー及び同社を吸収合併したサン企画は,被告ラックスに対し,本件表示が付された流通用ハンガーを含むハンガーの製造に使用される金型を無償貸与したり,それらの金型製造の資金を,前渡金として3400万円以上融資するなどの便宜を図っていた。本件表示を付した流通用ハンガーのうち,少なくとも約半数については,上記のとおり金型が無償で貸与されていた。
ウ 被告ラックスは,本件表示を付した流通用ハンガーを製造して,本件供給契約に基づき,東京ジョイナー(サン企画)に販売していたが,平成7年以前から本件表示を付した流通用ハンガーを原告以外の第三者に販売していた。また,被告ラックス工業も本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,平成7年3月以前からレナウンルック等の第三者にも販売していた。
エ 流通用ハンガーは,アパレルメーカーが製造した洋服を出荷する際の輸送用にのみ使用するハンガーであり,通常は黒色のプラスチック製である。 流通用ハンガーの大手製造販売業者は,多少の例外はあるものの,社名のイニシャル等を記号として,その記号と番号を組み合わせた表示を自社製品に付することによって,自社商品と他社商品とを識別する表示としており,また,アパレルメーカーも,それらの記号と番号を目印にその流通用ハンガーの製造販売元を識別するという状況が存在していた。
流通用ハンガーの流通経路は,大きく分けると,自社で流通用ハンガーを製造している業者がアパレルメーカーに直接販売する経路と,製造業者から商品を仕入れて販売代理店として商品を販売する経路があるが,いずれの場合でも,流通用ハンガーの売買は,一般にその受発注において製造者名を表示することなく,ハンガーの記号・番号の表示のみで行われている。 オ 本件表示を考案したのは,被告らの代表者であるAであるが,本件表示のうち「JS」の「J」は東京ジョイナーの頭文字を表したものであり,「S」はサン企画の頭文字を表している。また,「RK」は原告の主要販売先であるレナウン喜多方工場のレナウンと喜多方工場の頭文字を表したものである。
カ サン企画は,大手服飾副資材の総合商社である三景の知名度と販売力を背景に,本件供給契約によって被告ラックスから供給された本件表示を付した流通用ハンガーをレナウン及びレナウンルックを初めとするアパレルメーカーに販売してきた。被告ラックスの売上の6割から8割はサン企画に対するものであった。また,サン企画は,被告ラックスに原告の顧客への出荷作業を委託していたため,商品の梱包用段ボールの印刷は被告ラックスにおいて行っていたが,その段ボールには,製造発売元として原告名が明記されているものの,被告らの名は全く表示されていなかった。
キ サン企画は,業界新聞にたびたび広告を掲載し,また,流通用ハンガーの販売のために大型カタログやパンフレットを作成配布して,本件表示を付した流通用ハンガーの宣伝広告に努めてきた。大型カタログについては,昭和59年1月に1000部,昭和63年2月に1000部,平成3年10月に3000部作成してアパレルメーカーに配布し,パンフレットについては,平成4年7月及び平成5年7月にそれぞれ1万部,平成5年9月ころに5000部を作成して,アパレルメーカーに配布した。その結果,平成4,5年当時の東京地区における流通用ハンガーの販売量は年間約1億本と推定されるが,そのうちサン企画を製造発売元とする本件表示を付したハンガーの販売量は年間約1200万本に達していた。
ク 被告ラックスは,本件表示を使用したパンフレットを作成しアパレルメーカーに配布している。 (2) 以上の認定事実を前提に本件争点について判断する。
ア 争点アイについて 前記認定の事実によると,サン企画は,三景の知名度と販売力を背景に,本件表示が付されたハンガーを長年にわたって製造販売元として販売し,新聞広告をしたり,カタログを作成配布したりして宣伝広告をしてきており,その結果,サン企画を製造発売元とする本件表示を付した流通用ハンガーは,業界において一定の占有率を有していたこと,本件表示は,東京ジョイナー及びサン企画又はその取引先の名に由来するものであること,業界において,ハンガーの記号・番号が,製造発売元の識別に用いられていること,以上の事実が認められる。以上の事実を総合すると,本件表示は,遅くとも平成6年ころには,サン企画の商品表示として広く知られていたものと認められ,原告は,その地位を承継したものと認められる。確かに,本件表示を発案したのはAであるが,商品表示の考案者が誰かという問題とその商品表示が誰の商品として商品識別機能ないし出所表示機能を有しているかという問題は別であるから,この事実は,上記認定を左右するものではない。また,証拠(甲4〜11,60)によると,サン企画(原告)のカタログには,本件表示にある「JS」「RK」以外の記号・番号が多数掲載されており,それらはサン企画(原告)が販売代理店として販売している他社製造のハンガーであって,カタログ上は自社商品と他社商品の区別は全く付けられていないことが認められるが,証拠(甲60)によると,それらのほとんどは業界では著名な大手製造業者の製品であるので,アパレルメーカーにとってはその記号・番号から製造業者が識別できることから特に明示されていないものと認められるから,この事実は,上記認定を左右するものではない。
イ 争点ウについて 前記認定のとおり,流通用ハンガーの流通経路は,大きく分けると自社で流通用ハンガーを製造している業者がアパレルメーカーに直接販売する経路と,製造業者から商品を仕入れて販売代理店として商品を販売する経路があるが,いずれの場合でも,流通用ハンガーの売買は,一般にその受発注において製造者名を表示することなく,ハンガーの記号・番号の表示のみで行われているのであるから,被告らがアパレルメーカーに対し,本件表示を付した流通用ハンガーのパンフレットを配布し,このハンガーを販売することにより,販売代理店から購入する場合はもとより,被告らから直接購入する場合であっても,被告らの販売する商品が原告の商品であると誤認混同されるおそれが十分にあると認めることができる。
2 争点(2)について 本件全証拠によっても,原告が被告らに対し,本件表示を付した流通用ハンガーを第三者に販売することを許諾した事実を認めることはできない。以下,これについて述べる。
(1) 本件供給契約が締結された経緯は,前記1(1)イ認定のとおりであって,サン企画(東京ジョイナー)は,被告ラックスに対し,本件表示が付された流通用ハンガーを含むハンガー製造に使用される金型(本件表示が付された流通用ハンガーについては,半数以上の金型)を無償貸与したり,それらの金型製造の資金を前渡金として融資するなどの便宜を図っていたものである。そして,証拠(甲37の1〜17,甲81,84ないし86,89,90,92ないし119)によると,金型の無償貸与に関して,被告ラックスは,「上記物件を貴社の目的以外には使用しない」と記載されている預かり確認書をサン企画に提出していることが認められる(この預かり確認書について,被告ら代表者Aは,代表者尋問で,経理上必要であると言われてそういう趣旨で記名押印したと供述するが,上記証拠及び同尋問によると,Aは,この預かり確認書の「事情のいかんを問わず整備して速やかに」返却するという部分を「双方合意の上」返却すると訂正させたうえで記名押印したことが認められるから,単に経理処理上のものと考えていなかったことは明らかである。)。以上の事実からすると,東京ジョイナーと被告ラックスとの間で締結された本件供給契約においては,被告ラックスが原告から貸与された金型を使用して製造したものを東京ジョイナー(サン企画)を通さないで直接アパレルメーカーに販売することは,予定されていなかったものと認めることができるのであり,同認定に反する乙46(Dの陳述書)の記載,証人Dの証言,被告ら代表者尋問の結果は,採用できない。
(2) 被告らは,被告らの代表者Aは,昭和58年9月末から10月初めころ,サン企画の常務であったBから,東京ジョイナー時代の不良在庫の半分を被告ラックスの負担で処理できないかとの相談を受けた際,それへの協力を申し出たところ,BはAに「この金(前渡金)で作ったハンガーはうちだけではなく,被告ラックスのお客にも今までどおり自由に売ってもいいよ」と述べたと主張し,乙40,乙52の2(Aの陳述書)には,この主張に沿う記載があるほか,被告ら代表者Aは,代表者尋問においても,同趣旨の供述をする。しかし,この点については,それを裏付ける客観的な証拠があるわけでなく,上記(1)認定の事実に照らしても,直ちに採用できない。
被告らは,昭和58年11月もしくは同年12月ころ,AがBと共にレナウンルックの担当責任者であったCとJSイカリR金型に関して話し合った際,Cも「レナウンルック向け金型で製造するハンガーを他社にも売ったらよいのではないか」と発言したと主張するが,これは,レナウンルックの担当者の発言であるから,この事実があったとしても,サン企画が承諾していたことを認めることはできない。
被告らは,被告ラックスは,昭和61年6月からは株式会社カトレアへ,昭和61年9月から株式会社ロコへ,平成5年3月から株式会社ジョイ企画へ,平成5年12月から東京ハンガーへ,それぞれ本件表示を付した流通用ハンガーを直接販売してきたが,上記取引先はいずれもサン企画と下札等の衣料副資料の取引があったことから,サン企画の業務部長や営業課長は被告ラックスが上記取引先に本件表示を付した流通用ハンガーを直接販売していたことを十分承知していたにもかかわらず,何ら異議を述べなかったと主張するが,被告ラックスが本件表示を付した流通用ハンガーを販売していた取引先とサン企画が取引があるからといって,当然に,サン企画が,被告ラックスが本件表示を付した流通用ハンガーを販売していたことを認識していたということはできないし,仮に,認識している事実があったとしても,直ちに異議を述べないだけでは,承諾していたものということはできない。同認定に反する乙43(Eの陳述書)の記載,証人Dの証言,被告ら代表者尋問の結果は採用できない。
被告らは,被告ラックスは,本件表示を付した流通用ハンガーを製造するための金型費用を賄うために原告から「前渡金」名目で金型費用を借り受け,その返済のために金型代金返済償却進行表を作成して原告に提示していたが,被告ラックスは,前渡金返済のために,原告のすすめにより,本件表示を付した流通用ハンガーを,原告以外の他社へも販売し,その自社販売分を返済進行表の販売数量に含め,原告に毎月の請求書と一緒に提出していたのであるから,原告は,本件表示を付した流通用ハンガーを他社へ販売することを積極的に勧めていたものであると主張する。このうち,「原告のすすめにより」という部分については,これに沿う証拠としては,前に述べた昭和58年におけるAとBの話に関する証拠,乙43(Eの陳述書)における「Bから『ラックス独自の営業活動をやって,どんどんハンガーの販売をしてもらいたい。』と言われた」旨の記載,乙46(Dの陳述書)の記載及び証人Dの証言があるが,昭和58年におけるAとBの話に関する証拠が採用できないことは前述のとおりであるし,上記乙43の記載は,本件表示を付したハンガーのことを述べているかどうか明らかではなく,乙46の記載及び証人Dの証言については,これらの記載及び証言はいずれも抽象的なものであるうえ,証人Dは,営業にはタッチしていないので細かいことはわからないと証言するなどあいまいであり,上記(1)認定の事実に照らしても,採用できない。また,証拠(乙53の1ないし3,乙56の1,2,乙57の1,2,乙58の1,2,証人D)によると,被告ラックスがサン企画に提示していた金型代金返済償却進行表に記載された本件表示が付されたハンガーの売上げには,サン企画以外に対する売上げも含まれていたものと認められるが,そのことは,同表に記載されているものではないから,サン企画がこのような金型代金返済償却進行表を提示されていたからといって,直ちに本件表示を付した流通用ハンガーを他社へ販売することを承諾していたものと認めることはできない。
被告らは,被告ラックス工業は,スカート用吊り紐テープだけでは赤字になることが当初から明らかであったため,流通用ハンガーの販売も想定されており,レナウンルックが被告ラックス工業から本件表示の付された流通用ハンガーを仕入れることを,サン企画のB,Dらは認めていたものであると主張し,これに沿う証拠として,乙46(Dの陳述書)及び証人Dの証言があるが,これらは,上記被告ラックスについて述べたのと同様の理由により,採用できない。
なお,仮に,乙46(Dの陳述書)及び証人Dの証言から,サン企画が,被告らに対して,本件表示の付された流通用ハンガーをサン企画以外の者に販売することを黙示的に許諾していたものと認められるとしても,それは,サン企画の取引先と競合しない者にのみ販売する限り,それらの者に販売するものについて,許諾していたにすぎないと認められる。しかるところ,証拠(甲28)と弁論の全趣旨によると,被告らは,平成7年3月以前から,レナウンルックらの原告の取引先に対して,本件表示の付された流通用ハンガーを直接販売し,その結果,平成7年度から平成9年度にかけて,サン企画(原告)のレナウンルックらに対する本件表示の付された流通用ハンガーの売上は大幅に減少した反面,被告ラックスの売上のうち,原告に対する本件表示の付された流通用ハンガーの売上が大幅に減少し,原告以外に対する本件表示の付された流通用ハンガーの売上が大幅に伸び,また,被告ラックス工業についても,レナウンルックに対する本件表示の付された流通用ハンガーの売上が大幅に伸びたものと認められるから,本件において対象となっている不正競争行為についてサン企画(原告)が黙示的に許諾していたとは認められない。
(3) その他,原告が被告らに対し,本件表示を付した流通用ハンガーを第三者に販売すること許諾した事実を認めるに足りる証拠はない。
3 争点(3)について 本件全証拠によっても,被告ラックス工業が「JS」という記号を付した898ハンガーを製造販売していた事実は認められない。かえって,証拠(乙30の1ないし3,乙32の1ないし3,乙33の1ないし3,乙47ないし50,88)及び弁論の全趣旨によると,「898」との番号の付されたハンガーは,昭和63年12月ころ,レナウンルックが直接被告ラックス工業に開発製造を依頼したレナウンルック専用の特殊なスカート用ハンガーであること,したがって,898ハンガーは,当初からサン企画を通さずに被告ラックス工業からレナウンルックへ直接納品されていたこと,「898」という商品名はレナウンルックの担当者が命名し,当初から「JS」という記号は付されていなかったこと,被告ラックス工業はレナウンルックから注文を受けると,下請業者であるファインモールド等に発注し,同社等は被告ラックス工業に納品していたが,それらの受発注の過程で記載された納品書や受注帳には,「898」という番号のみが記載され,「JS」という記号は使用されていないこと,被告ラックス工業は,平成8年ころから,富士商事にこのハンガーを納入するようになったが,同社への売掛けを記載した同被告の売掛帳には「898」と記載されているのみであること,以上の事実が認められるから,以上の事実によると,898ハンガーには「JS」との記号は付されていなかったものと認めるのが相当である。
証拠(甲20,甲121の3,4,乙41,42)によると,被告ラックスのサン企画に対する平成7年の納品書には「JS-898M」と記載されているものがあること,被告ラックスが作成したパンフレットには,「JS-898」ハンガーが掲載されていること,以上の事実が認められる。これらは,「JS-898」を使用したことになるものと認められる。しかし,証拠(甲121の1,2)によると,被告ラックスのサン企画に対する平成7年の納品書には単に「898M」と記載されているにすぎず,「JS」と記載されていないものがあり,上記認定のもの以外に「JS-898M」と記載された取引書類があるとは認められないこと,弁論の全趣旨によると,被告ラックスのJS-898ハンガーが掲載されているパンフレットは,実際にはほとんど使用されなかったものと認められることからすると,以上の「JS-898」の使用によって原告に損害が生じたとまで認めることはできないし,「JS-898」については差止めの必要性も認められない。
4 争点(4)について (1) 不正競争防止法5条にいう「利益」について 以上認定の事実によると,被告らが,その販売するハンガー及びその広告に,本件表示を使用し,本件表示を使用したハンガーを譲渡した行為は,少なくとも過失による不正競争行為に当たるものと認められるところ,原告は,不正競争防止法5条1項に基づき損害賠償を請求している。同項にいう侵害者が「侵害の行為により利益を受けているとき」の「利益の額」とは,粗利益額(売上金額から売上原価を引いたもの)から,侵害者が侵害製品の製造販売を行うために,行わなかった場合に比べて追加的に必要となった他の費用を控除した額を指すものというべきである。
以上を前提に,被告らの利益額を算出する。
(2) 被告ラックスが得た利益額について ア 本件表示を付した流通用ハンガーの売上金額について 被告ラックスの総売上金額については,損益明細表Wの「売上金額」欄記載のとおり,平成7年度(平成6年11月から平成7年10月まで)が5億7981万0707円であり,平成8年度(平成7年11月から平成8年10月まで)が6億2030万7019円であり,平成9年度(平成8年11月から9年10月まで)が3億8962万8553万円であること,そのうち,被告ラックスの原告に対する本件表示を付した流通用ハンガーの売上については,平成7年度が2億4974万4917円であり,平成8年度が1億7752万2860円であり,平成9年度が5415万3991円であること,被告ラックスの原告以外の第三者に対する本件表示を付した流通用ハンガーの売上については,平成7年度が7970万4910円であり,平成8年度が9668万3024円であり,平成9年度が1億3244万8864円であること,以上の事実については当事者間に争いがない。
ところで,被告ラックスが原告に販売したものについては原告が本件表示の使用を許諾しているものと認められるから,不正競争行為とはいえず,損害の計算の基礎として算入することはできない。
したがって,被告ラックスが侵害行為により受けた利益を算定する基礎とすべき売上金額は,被告ラックスの原告以外の第三者に対する本件表示を付した流通用ハンガーの売上金額であるというべきである。
イ 売上金額から控除されるべき売上原価及び粗利益率について 原告は,被告ラックスの粗利益率は40パーセントを下らないと主張し,原告が行った原価計算の結果について主張するが,この計算結果が被告ラックスの実際の原価と一致するものと認めるに足りる証拠はないから,採用することができない。また,原告は,別訴において,被告ラックスは,自らの粗利益率を約39.8パーセントと主張している(甲124)とも主張するが,これは,別訴における一取引先との間における取引についての主張にすぎず,これから,被告ラックスの原告以外に対する本件表示を付した流通用ハンガーの販売全体についての粗利益率を推認することはできない。
一方,被告ラックスが売上原価の計算根拠とする売上仕入損益明細表記載の売上高及び売上原価の金額は,被告ラックスの平成7年度,8年度及び9年度の各決算報告書(乙34,35,36)の記載とは若干異なっているものの,その差は少なく,おおむね同決算報告書に沿った金額であるから,弁論の全趣旨により,上記売上仕入損益明細表の記載の売上利益の金額をもって,被告ラックスの売上金額から売上原価を控除した後の利益額と認める。
ウ 次に,上記売上利益から控除されるべき費用について,以下,検討する。
(ア) 金型償却費について 弁論の全趣旨によると,被告ラックスは,本件供給契約に基づき,原告に対し,金型を使用して本件表示を付した流通用ハンガーを製造し供給していたことが認められるから,本件表示を付した流通用ハンガー製造のための金型は,もともと本件供給契約に基づく製造のために必要であったものと認められる。そうすると,損益明細表W添付の「金型減価償却明細T」記載の金型が本件表示を付した流通用ハンガーを製造するための金型で,その金型代を被告ラックスが負担したとしても,これらの金型の減価償却費は,被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,原告以外に販売したことによって増加した費用ということはできないから,被告ら主張の金型償却費は売上利益額から控除すべき費用とは認められない。
(イ) 研究開発費について 被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーのうち,JS-912及びJS-913ハンガーの金型製作のために,フォアフロントに対して研究開発費を支払ったことがあったとしても,上記(ア)認定のとおり,本件表示を付した流通用ハンガー製造のための金型は,もともと本件供給契約に基づく製造のために必要であったものと認められるから,上記(ア)と同様の理由により,これらの研究開発費用は売上利益額から控除すべき費用とは認められない。
(ウ) リース料について 被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーの生産のために,被告ら主張にかかる自動取出しロボット,JS-411及びJS-951の金型並びに射出成形機について,リース料を支払っていたとしても,弁論の全趣旨によると,上記自動取り出しロボット及び射出成型機は,被告ラックスが本件供給契約に基づき原告に供給していたハンガーの生産に使用されていたものと認められ,また,上記(ア)認定のとおり,本件表示を付した流通用ハンガー製造のための金型は,もともと本件供給契約に基づく製造のために必要であったものと認められるから,上記(ア)と同様の理由により,これらのリース料は売上利益額から控除すべき費用とは認められない。
(エ) 修繕費について 弁論の全趣旨によると,被告ラックスは,本件表示を付した流通用ハンガーの金型の修繕費として損益明細表W添付の「JS,RKハンガー製造原価に該当する諸経費表(平成7年度〜平成9年度)」の修繕費欄記載の金額を支出したことが認められる。このうち,同表の「株式会社大景関係以外のJS,RKハンガー売上」欄に対応する修繕費は,被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,原告以外に販売したことによって要した修繕費であると認められるから,売上利益額から控除すべき費用ということができる。そうすると,その額は,平成7年度は34万8722円,平成8年度は43万3660円,平成9年度は2万4850円となる。この点,原告は,被告ラックスが使用してきた多くの金型は,原告が被告ラックスに対して無償貸与してきたものであるところ,使用貸借されたものについては,借主が修繕費を負担するのが当然であると主張するが,使用貸借において誰が修繕費を負担するかということと,本件の損害額の算定に当たって経費となるかどうかということは,別問題であり,被告ラックスが現実に修繕費を支出している以上,本件の損害額の算定に当たって経費となるというべきである。
(オ) 会議費について 被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーの金型製作のための会議費を支出したとしても,上記(ア)認定のとおり,本件表示を付した流通用ハンガー製造のための金型は,もともと本件供給契約に基づく製造のために必要であったものであるから,上記(ア)と同様の理由により,売上利益額から控除すべき費用とは認められない。
(カ) 通信費について 証拠(乙69の1ないし7,乙70の1ないし14)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックスは通信費として損益明細表W添付の「JS,RKハンガー製造原価に該当する諸経費表(平成7年度〜平成9年度)」の通信費欄記載の金額を支出したことが認められ,被告ら主張の通信費が過大である旨の原告の主張は採用できない。しかし,この通信費の額は,被告ラックスの平成7年度,8年度及び9年度の各決算報告書(乙34,35,36)に記載されている通信費の額とほぼ一致するから,被告ラックスのすべての業務の通信費であると認められる。そこで,まず,上記通信費欄記載の金額に,損益明細表Wの「株式会社大景関係以外のJS,RKハンガー売上」欄の売上金額の「総合計」欄の売上金額に対する割合(平成7年度13.75パーセント,平成8年度15.59パーセント,平成9年度33.99パーセント)を乗じて,被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,原告以外に販売したことに関わる費用を算出すると,平成7年度19万1421円(1円未満切り捨て),平成8年度26万4881円(1円未満切り捨て),平成9年度58万4503円(1円未満切り捨て)となる。そして,弁論の全趣旨によると,通信費の中には,本件表示を付した流通用ハンガーの金型製作のための打合せ費用のように,上記(ア)と同様の理由により,初めから除外されるべきものが含まれているものと認められることを考慮すると,上記算出した金額の2分の1を,通信費として売上利益額から控除するのが相当である。そうすると,その額は,平成7年度は9万5710円(1円未満切り捨て),平成8年度は13万2440円(1円未満切り捨て),平成9年度は29万2251円(1円未満切り捨て)となる。
(キ) 旅費交通費について 証拠(乙71ないし73)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックスが流通用ハンガーの業務に関して旅費交通費を支出したことが認められるが,これらの旅費交通費は,本件表示を付した流通用ハンガーと関連しているのか否か不明のものが多く,仮に関連の認められるものがあったとしても,被告ラックスの主張によると,これらの旅費交通費は,本件表示を付した流通用ハンガーの生産のための金型製作の打合せ,射出成形機の能力テストのための機械メーカーの工場への出張,下請工場における生産の立会い等のための出張に要する旅費交通費であるというのであるから,上記(ア)と同様の理由により,直ちに,被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,原告以外に販売したことによって増加した費用であると認めることができない。したがって,これらの旅費交通費は売上利益額から控除すべき費用とは認められない。
(ク) 保険料について 証拠(乙74の1ないし4)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックスは,本件表示を付した流通用ハンガーによる事故が原因で負担する損害賠償責任を填補するための保険とハンガー自体の滅失,毀損による損害を填補するための保険に加入しており,損益明細表W添付の「JS,RKハンガー製造原価に該当する諸経費表(平成7年度〜平成9年度)」の保険料欄記載のとおりの保険料を支払ったことが認められるところ,同表のうち「株式会社大景関係以外のJS,RKハンガー売上」欄に対応する保険料について,売上利益額から控除されるべき費用と認めるのが相当である。そうすると,その金額は,平成7年度は2万1153円,平成8年度は3万0856円,平成9年度は6万2061円と認められる。この点,原告は,原告も同様の保険契約を締結し別個に保険料を支払っていたから,経費として差し引くべきではない旨主張するが,仮に原告が別個に保険料を支払っていた事実があったとしても,被告ラックスが保険料を支払っていた事実に変わりはないから,それを経費に当たらないとする理由はないというべきである。
(ケ) 交際費及び販売促進費について 証拠(乙71ないし73)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックスは交際費及び販売促進費として損益明細表W添付の「JS,RKハンガー製造原価に該当する諸経費表(平成7年度〜平成9年度)」の交際販促費欄記載の金額を支出したことが認められる。しかし,この交際費及び販売促進費の額は,被告ラックスの平成7年度,8年度及び9年度の各決算報告書(乙34,35,36)に記載されている交際費及び販売促進費の額とほぼ一致するから,被告ラックスのすべての業務の交際費及び販売促進費であると認められる。そこで,上記交際費及び販売促進費の金額に,損益明細表Wの「株式会社大景関係以外のJS,RKハンガー売上」欄の売上金額の「総合計」欄の売上金額に対する割合(平成7年度13.75パーセント,平成8年度15.59パーセント,平成9年度33.99パーセント)を乗じて,被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,原告以外に販売したことに関わる費用を算出すると,平成7年度28万9565円(1円未満切り捨て),平成8年度26万3059円(1円未満切り捨て),平成9年度55万2335円(1円未満切り捨て)となるので,その額をもって,売上利益額から控除すべき費用と認める。
(コ) 工場家賃について 被告ラックスが高橋製作所,エイト化成及び富士川プラスチックから工場の倉庫を賃借していたことについては当事者間で争いがなく,弁論の全趣旨によると,被告ラックスは商品を直接アパレルメーカーに出荷するために,上記倉庫を賃借し,家賃として,損益明細表W添付の「JS,RKハンガーの製造原価に該当する工場家賃一覧表」記載の金額を支出していたことが認められる。これらの家賃と本件表示を付した流通用ハンガーとの関連を明らかにする直接証拠はないが,弁論の全趣旨によると,上記の各社において,本件表示を付した流通用ハンガーが製造されていたものと認められるから,上記倉庫には,本件表示を付した流通用ハンガーも保管されていたものと認められる。以上の事情を考慮すると,損益明細表Wの「原価に該当する工場家賃」欄記載の総合計金額に,同表の「株式会社大景関係以外のJS,RKハンガー売上」欄の売上金額の「総合計」欄の売上金額に対する割合(平成7年度13.75パーセント,平成8年度15.59パーセント,平成9年度33.99パーセント)を乗じたものを,売上利益額から控除するのが相当である。そうすると,その額は,平成7年度は81万1628円(1円未満切り捨て),平成8年度は92万0238円(1円未満切り捨て),平成9年度は200万6344円(1円未満切り捨て)となる。この点,原告は,原告の本社建物は十分な在庫保管スペースを有していたと主張するが,被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,原告以外に販売する場合には,原告の本社建物の倉庫を使用することはできないものと考えられるから,在庫保管スペースに関する原告の上記主張が認められるとしても,工場家賃の控除に関する上記認定を左右するものではない。
(サ) 工場出荷配送費について 証拠(乙76の1・2,乙77の1・2,乙78の1ないし3)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックスが下請工場より出荷した流通用ハンガー等の運賃及び下請工場間のパーツ供給のための運賃として,損益明細表W添付の「平成7年度〜平成9年度JS,RKハンガーに該当する工場出荷配送費一覧表」記載の金額を支出していたことが認められる。しかし,上記証拠によると,サン企画(原告)以外の者に対して出荷した上記運賃には他のハンガー等の商品の配送費用も含まれている他,本件表示を付した流通用ハンガーのための配送費用であることが明らかでないものも含まれており,結局のところ,上記運賃がサン企画(原告)以外の者に対する本件表示を付した流通用ハンガーのための配送費用であるかどうかは必ずしも明らかではないから,損益明細表W添付の「工場出荷配送費」欄記載の総合計金額に,同表の「株式会社大景関係以外のJS,RKハンガー売上」欄の売上金額の「総合計」欄の売上金額に対する割合(平成7年度13.75パーセント,平成8年度15.59パーセント,平成9年度33.99パーセント)を乗じたものを,売上利益額から控除するのが相当である。そうすると,その額は,平成7年度は176万1900円(1円未満切り捨て),平成8年度は172万7410円(1円未満切り捨て),平成9年度は473万0595円(1円未満切り捨て)となる。
上記運賃のうち,佐川急便の運賃に関して,原告は,平成7年2月までは商品仕入れ単価に上乗せして支払い,同年3月からは,別に負担したと主張するが,これらの事実があるとしても,原告に対して出荷されたものについて原告が運賃を負担したということであるから,原告以外に出荷したものについて被告ラックスが運賃を負担したとの上記認定を左右するものではない。また,上記運賃のうち,Hの運賃について,原告は,被告ラックスに定額で支払っていたと主張するが,その事実を認めるに足りる証拠はないから,原告のこの主張は採用できない。
(シ) 出向社員人件費について 証拠(乙5の1・2,乙80,81,乙82の1,乙82の2の1ないし11)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックスは,本件表示を付した流通用ハンガーに関する,サン企画(原告)への出向社員の人件費として,損益明細表W添付の「平成7年度〜平成9年度JS,RKハンガーの直接原価に該当する人件費[出向社員]」一覧表記載の金額を支出していたこと,両会社の約定により,サン企画(原告)は被告ラックスに対し,Eについてはサン企画(原告)のレナウン及びレナウンルックへの1か月分の売上の1.3パーセントを,Fについては毎月定額の12万円を支払うことになっており,その支払額は,平成7年度は671万6029円,平成8年度は380万円,平成9年度は30万円であったこと,以上の事実が認められる。これらの社員は,サン企画(原告)へ出向していたのであるから,被告ラックスとサン企画(原告)との取引がある以上必要であった人件費であると認められるので,これらの人件費は,被告ラックスが,本件表示を付した流通用ハンガーを製造し,原告以外に販売する場合に追加的に必要となった費用であるとは認められない。したがって,これらの人件費は,売上利益額から控除しないこととする。
(ス) ハンガー専従人件費について 証拠(乙82の1,乙82の2の1ないし11)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックスは,人件費として,損益明細表W添付の「平成7年度〜平成9年度JS,RKハンガーの直接原価に該当する人件費[ハンガー営業,業務,商品管理社員]」一覧表記載の金額(被告ラックス工業が支出していたKに対するものを除く。)を支出したことが認められる。これらの社員が本件表示を付した流通用ハンガー関係の業務に専従していたことを認めるに足りる証拠はないが,弁論の全趣旨によると,これらの社員は,本件表示を付した流通用ハンガー関係の業務にも従事していたものと認められるので,上記金額に,損益明細表Wの「株式会社大景関係以外のJS,RKハンガー売上」欄の売上金額の「総合計」欄の売上金額に対する割合(平成7年度13.75パーセント,平成8年度15.59パーセント,平成9年度33.99パーセント)を乗じて,売上利益額から控除すべき人件費の額を算出することとする。そうすると,平成7年度は132万5813円(1円未満切り捨て),平成8年度は143万8041円(1円未満切り捨て),平成9年度が511万1372円(1円未満切り捨て)となる。
原告は,被告ラックスの賃金台帳の調査結果によると,平成7年度分については,総人件費4696万1090円,役員報酬1560万円であり,一般社員への支給総額は3136万1090円となるところ,被告らは,平成7年度の本件表示を付した流通用ハンガー関連の人件費を2791万6810円(出向社員分1304万3930円,専従社員分1487万2880円)と主張しているから,本件表示を付した流通用ハンガー以外の人件費はわずか344万4280円にすぎないことになってしまうと主張するが,上記のとおり,専従社員と被告らが主張する社員について専従していたとは認められないうえ,K(平成7年度の支給額523万0600円)については,被告ラックス工業が支出していたものと認められるから,これらを考慮すると,特に不自然ではない。
(3) 被告ラックス工業の得た利益額について ア 本件表示を付した流通用ハンガーの売上金額について 被告ラックス工業の総売上金額については,損益明細表[の「売上金額」欄記載のとおり,平成7年度(平成7年5月1日から平成8年4月30日まで)が1億9964万8831円であり,平成8年度(平成8年5月1日から平成9年4月30日まで)が2億3445万3868円であり,平成9年度(平成9年5月1日から平成10年4月1日まで)が2億7253万1691円であること,そのうち,被告ラックス工業のレナウンルック関係の販売先に対する本件表示を付した流通用ハンガーの売上については,平成7年度が4013万1797円,平成8年度が6472万0418円であり,平成9年度が8078万9797円であること,被告ラックス工業のレナウンルック以外の者に対する本件表示を付した流通用ハンガーの売上については,平成7年度が1472万3018円であり,平成8年度が1514万8038円であり,平成9年度が1394万6737円であること,以上の事実については当事者間に争いがない。なお,原告は,被告ラックス工業の売上については「JS-898」ハンガーの売上も含めるべきである旨主張するが,前記3で判示したとおり,被告ラックス工業が「JS」という記号を付した898ハンガーを製造販売していた事実は認められず,一部「JS」という記号を使用していた事実は認められるものの,それによる損害は認められないから,ここでは898ハンガーの売上は除外する。
イ 売上金額から控除されるべき売上原価及び粗利益率について 原告は,被告ラックス工業の粗利益率は40パーセントを下らないと主張するが,前記(2)イで被告ラックスについて述べたのと同様に,原告の主張は採用することができない。一方,被告ラックス工業が売上原価の計算根拠とする別紙5「平成7,8,9年度 レナウンルック及びその他売上損益明細表」記載の売上高及び売上原価の金額は,被告ラックス工業の平成8年度,9年度の各決算報告書(乙38,39)の記載とは若干異なっているものの,おおむね各決算報告書に沿った金額であるから,弁論の全趣旨により,上記売上損益明細表の記載の金額に基づいて算出された売上利益をもって,被告ラックス工業の売上利益と認めるのが相当である。そうすると,被告ラックス工業の本件表示を付した流通用ハンガーの売上利益額は,平成7年度が760万2968円,平成8年度が233万3987円,平成9年度が131万0874円となる。
ウ 次に,上記売上利益から控除されるべき費用について,以下,検討する。
(ア) 通信費及び光熱費について 証拠(乙83)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックス工業は通信費及び光熱費として,損益明細表[添付の「一般管理販売費の内限界利益説に基づいた諸経費算出表」記載のとおり,平成7年度は34万7179円,平成8年度は58万1200円,平成9年度は50万3617円をそれぞれ支出したことが認められる。しかしながら,それらの金額の全部が本件表示を付した流通用ハンガーの製造販売に関する費用であることの証拠はないから,上記金額に,各年度の全体の売上に占める,本件表示を付した流通用ハンガーの売上の比率(平成7年度は27.48パーセント,平成8年度は34.07パーセント,平成9年度は34.76パーセント)を乗じた額をもって,売上利益額から控除すべき費用と認めるのが相当である。そうすると,その額は,平成7年度は9万5404円(1円未満切り捨て),平成8年度は19万8014円(1円未満切り捨て),平成9年度は17万5057円(1円未満切り捨て)となる。
(イ) 保険料について 証拠(乙84)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックス工業は火災保険を掛け,損益明細表[添付の「一般管理販売費の内限界利益説に基づいた諸経費算出表」記載のとおり,平成7年度は2万2800円,平成8年度は2万6100円,平成9年度は2万6100円をそれぞれ支出したことが認められる。しかしながら,同保険契約は,すべてが本件表示を付した流通用ハンガーに関するものであるかどうか不明であるので,上記(ア)と同様に,上記金額に,各年度の全体の売上に占める,本件表示を付した流通用ハンガーの売上の比率(平成7年度は27.48パーセント,平成8年度は34.07パーセント,平成9年度は34.76パーセント)を乗じた額をもって,売上利益額から控除すべき費用と認めるのが相当であり,そうすると,その額は,平成7年度は6265円(1円未満切り捨て),平成8年度は8892円(1円未満切り捨て),平成9年度は9072円(1円未満切り捨て)となる。
(ウ) 運賃について 証拠(甲126の5,6,乙87の1・2,乙91の1ないし30)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックス工業が商品の配送のために,損益明細表[添付の「一般管理販売費の内限界利益説に基づいた運賃家賃算出表」記載のとおり,運賃を支出したこと,平成7年度にコイデ運輸に支払われた運賃のうち,53万2100円(コイデ運輸に支払われた運賃の90.44パーセント)は,使用済みとなったハンガーの回収のための運賃であったこと,サン企画(原告)は,ハンガーの回収のための運賃として,平成6年12月から平成8年2月まで毎月30万9000円,平成8年3月から平成9年3月まで毎月25万7500円,平成9年4月に26万2500円を支払ったこと,以上の事実が認められる。コイデ運輸に支払われた運賃のうち,平成7年度については,53万2100円が,サン企画(原告)から支払われたハンガーの回収のための運賃によって填補されたものと認められ,平成8年度については,使用済みとなったハンガーの回収のための運賃の具体的な額が不明であるので,コイデ運輸に支払われた運賃の90.44パーセントの額が,サン企画(原告)から支払われたハンガーの回収のための運賃によって填補されたものと推認されるから,それらを控除することとする。そうすると,平成7年度は,179万6236円,平成8年度は,155万4146円,平成9年度は,253万4307円となる。
上記の運賃のすべてが,本件表示を付した流通用ハンガーに関するものであるかどうか不明であるので,上記(ア)と同様に,上記金額に,各年度の全体の売上に占める,本件表示を付した流通用ハンガーの売上の比率(平成7年度は27.48パーセント,平成8年度は34.07パーセント,平成9年度は34.76パーセント)を乗じた額をもって,売上利益額から控除すべき費用と認めるのが相当であり,そうすると,その額は,平成7年度は49万3605円(1円未満切り捨て),平成8年度は52万9497円(1円未満切り捨て),平成9年度は88万0925円(1円未満切り捨て)となる。
(エ) 家賃について 証拠(甲126の1ないし6,乙75の1ないし4,乙85)及び弁論の全趣旨によると,被告ラックス工業は,キューピー流通システムとの間で倉庫の賃貸借契約を締結し,損益明細表[添付の「一般管理販売費の内限界利益説に基づいた運賃家賃算出表」記載のとおり,平成7年度から平成9年度にかけて,毎月55万2500円,年間合計663万円の家賃を支出したこと,この倉庫は,使用済みハンガーの回収,分別,検査,廃棄等の作業を行うため,レナウンルックに対する緊急出荷用のハンガーを在庫するため等の目的で賃借したものであること,以上の事実が認められる。しかしながら,一方,証拠(甲126の1ないし6,乙75の1ないし3,乙91の1ないし26)によると,サン企画(原告)は,上記倉庫の賃貸料の負担金として,平成7年3月から平成8年2月まで毎月37万0800円,平成8年3月から平成8年12月まで毎月36万0500円支払っていたことが認められる。そうすると,上記家賃のうち,平成7年度は220万1000円,平成8年度は374万6000円,平成9年度は663万円が被告ラックス工業の負担となるということができるが,この家賃のすべてが,本件表示を付した流通用ハンガーに関するものであるかどうか不明であるので,上記(ア)と同様に,上記金額に,各年度の全体の売上に占める,本件表示を付した流通用ハンガーの売上の比率(平成7年度は27.48パーセント,平成8年度は34.07パーセント,平成9年度は34.76パーセント)を乗じた額をもって,売上利益額から控除すべき費用と認めるのが相当であり,そうすると,その額は,平成7年度は60万4834円(1円未満切り捨て),平成8年度は127万6262円(1円未満切り捨て),平成9年度は230万4588円となる。 (オ) リース料について 被告らが主張する金型のリース料は,898ハンガーのリース料であるところ,前記認定のとおり,被告らは,898ハンガーについては,損害の算定の基礎となっている製品ではないから,控除すべき経費とは認められない。
また,証拠(乙86の1)によると,被告ラックス工業がフォークリフトのリース料を支出していることが認められるが,弁論の全趣旨によると,上記フォークリフトは,本件表示を付した流通用ハンガー以外のハンガーの製造販売にも必要であると認められるから,本件表示を付した流通用ハンガーの製造販売のために追加的に必要となった費用ということできず,控除すべき費用とは認められない。
(4) 被告らが原告に支払うべき賠償額について 以上認定の売上金額から控除すべき経費を差し引いて被告らの利益額を算出すると,別紙6「被告らの利益」の該当欄記載のとおり,被告ラックスについては5048万0018円,被告ラックス工業については672万4182円となる。
よって,被告ラックスは,原告に対し,損害賠償金として,5048万0018円を,被告ラックス工業は,原告に対し,損害賠償金として,672万4182円を,それぞれ支払う義務がある。
3 よって,主文のとおり判決する。
追加
表示目録1JS-12025JS-9122JS-13026JS-9133JS-15027JS-9514JS-21028RK-15JS-30529RK-26JS-30630RK-47JS-31031RK-58JS-3159JS-32010JS-33011JS-37012JS-41013JS-41114JS-411B15JS-41516JS-42017JS-43018JS-61019JS-84220JS-848(イカリR)21JS-85622JS-85723JS-86024JS-898
裁判長裁判官 森義之
裁判官 東海林保
裁判官 瀬戸さやか
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