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関連ワード 信義則 /  類似性(類似) /  呼称 /  印象 /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  逸失利益 /  弁護士費用 /  不当利得 /  ライセンス /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  正当な理由 /  秘密管理(秘密管理性) /  秘密として管理 /  営業秘密 /  営業誹謗行為(2条1項14号) /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 13年 (ワ) 15075号 損害賠償等請求事件
原告 日本オリジナルサービス株式会社
訴訟代理人弁護士 鈴木理子
同 吉野 正三郎
被告 ディー・ジー・イー株式会社
被告 エム・ジー・アイ・ジャパン株式会社
被告A
被告B
被告ら訴訟代理人弁護士 小中信幸
同 上野 攝津子
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/10/11
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告らは,原告に対し,連帯して金1億円及びこれに対する平成13年8月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告ディー・ジー・イー株式会社は,原告に対し,金4042万2580円及びこれに対する平成13年8月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告らは,原告の営業上の信用を害する別紙虚偽事実目録記載の各事実を第三者に告知し,または流布する行為をしてはならない。
4 被告ディー・ジー・イー株式会社及び被告エム・ジー・アイ・ジャパン株式会社は,別紙商品目録記載の商品を販売することを目的とする営業を行ってはならない。
5 被告ディー・ジー・イー株式会社は,原告に対し,「JOSプラスパワー」の不良品1121個と引換えに,金383万4239円を支払え。
事案の概要
1 争いのない事実 (1) 当事者 原告は,水道管に固着させて水道水を活性化させる商品を「JOSプラスパワー」という商品名により,ネットワークビジネス方式で販売することを主たる業務とする会社である(以下,上記商品を「本件原告商品」という。)。
被告ディー・ジー・イー株式会社(平成8年2月21日まではディー・ジー・イー有限会社,以下,この前後を問わず「被告DGE」という。)は,平成5年から,アメリカ合衆国の法人であるザ・マグネタイザー・グループ・インコーポレイテッド(以下「MGI」という。)の製品に関し,日本における総販売代理店として営業活動をしている会社である。
被告エム・ジー・アイ・ジャパン株式会社(以下「被告MGIJ」という。)は,平成12年10月24日に被告DGEとMGIの合弁により設立された会社であって,MGIが製造する磁気活水器を「オールパワー」という商品名でネットワークビジネス方式で販売している。
被告A(以下「被告A」という。)は,被告DGE及び被告MGIJの代表取締役である。
被告B(以下「被告B」という。)は,平成8年2月,原告に就職したが,その後原告を辞め,現在は被告MGIJの従業員である。
(2) 本件三者間契約の締結 ア 平成7年2月,原告は,被告DGEの販売代理店となった。
イ 平成9年4月1日,MGIを製造業者,被告DGEを日本における総輸入業者,原告を日本における独占総販売代理店とする三者間契約(以下「本件三者間契約」という。)が締結され,原告は,同契約に基づいて,本件原告商品をネットワークビジネス方式で消費者に販売してきた。
(3) 原告による弁護士費用の支出 ア 被告DGEは,平成8年1月30日,株式会社ヨシダ(以下「ヨシダ」という。)とMGIの製品の継続的供給契約を締結した。
イ 平成8年3月7日,被告DGEは,ヨシダと上記契約を解消する旨の和解契約を締結したところ,原告は,この和解に要した弁護士費用327万4420円を支払った。
(4) 原告から被告DGEに対する前渡金等の支払 ア 原告は,被告DGEに対し,平成12年3月から同年6月までの間,毎月4万ドルをライセンス料の名目で支払った。
イ 原告は,被告DGEに対し,以下の支払日において,代金の半額を前渡金(合計1866万8160円)として支払ったが,現時点においても支払の対象となった本件原告商品は,被告DGEから原告に納入されていない。
平成11年4月5日 24個 8万3160円 平成11年12月6日 2000個 693万円 平成12年1月7日 2000個 693万円 平成12年2月8日 1200個 427万5000円 2 請求の内容 本件における原告の被告らに対する請求の内容は,以下のとおりである。
【請求第1項】 (1) 被告DGEに対して ア 別紙商品目録記載の商品(以下「本件MGI商品」という。)を販売することが,本件三者間契約の独占販売条項に違反することを理由とする損害賠償請求 イ 別紙虚偽事実目録記載の各事実(以下「本件虚偽事実」という。)を告知,流布したことを理由とする不正競争防止法2条1項14号,4条に基づく損害賠償請求 ウ 被告Bに開示させた,原告の販社名簿,組織図,顧客名簿,販売実績表等の営業秘密が記載された資料(以下「本件営業秘密資料」という。)を使用して営業していることを理由とする不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求 エ 以上の一連の行為が原告の営業権を侵害したことを理由とする不法行為による損害賠償請求 (2) 被告MGIJに対して ア 被告DGEの上記(1)アの契約違反を共同して行っていることを理由とする損害賠償請求 イ 本件虚偽事実を告知,流布したことを理由とする不正競争防止法2条1項14号,4条に基づく損害賠償請求 ウ 本件営業秘密資料を使用して営業していることを理由とする不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求 エ 以上の一連の行為が原告の営業権を侵害したことを理由とする不法行為による損害賠償請求 (3) 被告Aに対して ア 被告DGE及び被告MGIJの代表取締役として,上記(1),(2)の行為を行ったことを理由とする,商法266条の3に基づく損害賠償請求 イ 上記(1),(2)の行為を行ったことを理由とする,不正競争防止法4条又は不法行為に基づく損害賠償請求 (4) 被告Bに対して ア 本件虚偽事実を告知,流布したことを理由とする不正競争防止法2条1項14号,4条に基づく損害賠償請求 イ 本件MGI商品を販売することが,原告との雇用契約における競業避止義務に違反したことを理由とする損害賠償請求 ウ 本件営業秘密資料を開示したことが,原告との雇用契約における企業秘密守秘義務に違反したことを理由とする損害賠償請求 エ 以上の一連の行為が原告の営業権を侵害したことを理由とする不法行為による損害賠償請求 【請求第2項】 (1) 327万4420円 前記1(3)の弁護士費用の立替金請求(主位的請求)又は同弁護士費用不当利得返還請求(予備的請求) (2) 1848万円 前記1(4)アのライセンス料名目の金員合計についての不当利得返還請求 (3) 1866万8160円 前記1(4)イの前渡金についての不当利得返還請求 【請求第3項】 本件虚偽事実の告知,流布についての不正競争防止法2条1項14号,3条に基づく差止請求 【請求第4項】 (1) 被告DGEに対して ア 本件MGI商品を販売することが,本件三者間契約の独占販売条項に違反することを理由とする差止請求 イ 被告Bに開示させた本件営業秘密資料を使用して営業していることについての不正競争防止法3条に基づく差止請求 (2) 被告MGIJに対して ア 被告DGEの上記(1)の契約違反を共同して行っていることを理由とする差止請求 イ 被告Bに開示させた本件営業秘密資料を使用して営業していることについての不正競争防止法3条に基づく差止請求 【請求第5項】 不良品の代金相当額を清算金として返還する旨の合意に基づく清算金請求 3 本件の主な争点 (1) 被告ら全員の関係 ア 本件三者間契約が有効に存続しているかどうか。
イ 被告らによる本件虚偽事実の告知,流布行為の存否及び虚偽性の有無等 ウ 本件営業秘密資料に記載されていてる事項が不正競争防止法2条4項に規定する「営業秘密」に該当するかどうか。被告Bが本件営業秘密資料を開示し,他の被告らが,これを使用して営業をしているかどうか。
エ 被告らの一連の行為が原告の営業権を侵害する不法行為となるか。
オ 原告の損害 (2) 被告DGE関係 ア 原告が支出した弁護士費用に関する請求の成否 イ ライセンス料名目の金員の返還請求の成否 ウ 前渡金返還請求権の存否及び同請求権と被告DGEの原告に対する補償金債権等との相殺の成否 エ 不良品の代金相当額を清算金として返還する旨の合意の有無及び原告に対する返還義務の有無(商法526条が適用されるかどうか。) (3) 被告B関係 ア 被告Bは原告に対し競業避止義務を負うかどうか(競業避止義務規定の有効性を含む。)。
イ 被告Bは原告に対し企業秘密守秘義務を負うかどうか。
主な争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(本件三者間契約が有効に存続しているかどうか。) 【原告の主張】 (1) 本件三者間契約における当初の契約期間は,平成9年4月1日から3年間(平成12年3月31日)であり,契約期間の満了前の少なくとも30日前までに文書による更新拒絶の通告がない限り,3年ごとに更新されることになっている。
(2) 平成12年3月1日までにいずれの当事者からも更新拒絶の通告はされなかったから,本件三者間契約は,平成15年3月31日まで更新された。
(3) 被告ら主張のとおり,平成12年3月31日で本件三者間契約が終了したというのであれば,重要な事項であるから,被告DGEは,この時点でネットワークメンバーにも説明を行うはずであるが,何らの説明をしていない。これは,被告DGE自身がこの時点では本件三者間契約が終了していないという認識を有していたからにほかならない。
(4) 平成12年3月13日付け覚書(乙5の1,2。以下「本件覚書」という。)に係る話をした際に,本件三者間契約の終了について話題に出たことはなく,合意にも至っていない。被告ら主張に係る独占販売権の維持,標章使用継続,優先交渉権についても重要な取決めであるにもかかわらず,本件覚書には何らの記載もない。
【被告らの主張】 (1)ア 平成12年1月ころ,原告の本件原告商品在庫が,これまでの販売高の1年分程度にまでなり,そのままでは平成9年7月に削減された毎月500セットの注文を継続することも不可能な状態となった。そのため,MGI及び被告DGEと原告の間で,対処方法が検討され,被告DGEが,MGIと原告の間に入って調整した結果,@原告が被告DGEを通じてMGIにライセンス料として月額4万ドルを支払うこと,A被告Aが原告の社長に就任すること,B当時の原告代表者C(以下「C」という。)が,自己の所有する原告の株式のうち,55%を被告Aに贈与すること,C被告Aが原告の経営権を取得し,原告と被告DGEとを実質上合併させることという内容の合意が,被告Aと原告代表者Cとの間でされ,本件覚書が作成された。
イ 他方,平成12年2月29日には,被告DGEとMGIとの間で,本件三者間契約を更新することが不可能であることが確認され,これを前提として,上記合意の内容は,被告DGEとMGIとの二者間契約に違反しない旨の合意がされた。
ウ 以上のとおり,上記アの合意により,本件三者間契約の基礎が変更されるため,本件三者間契約を更新せず,3年間の契約期間が満了する平成12年3月31日で終了することが三者間で合意された。
(2) 三者間取決め及びその解消 ア 本件三者間契約終了後の期間について,当分の間,@原告が被告DGEを通じてMGIにライセンス料を支払っている間においては,被告DGEは,実質的に原告の独占販売権を維持すること,A本件三者間契約終了後のMGI及び被告DGEの商標,商号及びこれに類する標章の使用中止義務を規定した本件三者間契約18条の規定にかかわらず,原告は,これらの標章の使用を継続できること,B原告の在庫及び経営状況が改善されて一定の月額最低購入量の購入が可能になった場合は,再度,新たな独占販売代理店契約を締結するための優先交渉権を原告が保持することを内容とする取決めが三者間で合意された。
イ ところが,原告は,平成12年5月末日に6月分のライセンス料を支払ったものの,それ以後のライセンス料を支払わなかったため,この三者間における取決めは,同年6月末日で終了し,原告は,同取決めに基づく諸権利を失った。そして,その後,原告と被告DGE及びMGIとの間には何らの契約関係は存在しない。
(3) 本件三者間契約終了を前提とする原告の行為の存在 ア 原告は,平成12年6月7日付けで,MGIに対し,被告DGEを排除して,MGIが原告と直接の取引をするように提案する書簡を送付した。原告とMGIの交渉は,2か月継続されたが,その間原告は,再三再四,本件原告商品の取引から被告DGEを排除し,原告が総輸入元兼総販売代理店となることを提案していた。仮に,本件三者間契約が継続していたとするならば,原告の当該行為は,本件三者間契約2条に違反することになるが,上記事実からすると,原告は,平成12年6月7日時点で,本件三者間契約が終了していたと考えていたことは明らかである。
イ 本件三者間契約において,原告は,本件原告商品について,日本における独占的販売代理権を付与される条件として,年間最低4万8000個(1万2000セット)を購入する義務が課せられている(本件三者間契約11条。ただし,最低購入義務は,上記三者間の合意でその後月500セットに減少された。)ところ,原告は,平成12年3月以降,本件原告商品を全く注文していないし,同年7月分以降のライセンス料も支払っていない。
2 争点(1)イ(被告らによる本件虚偽事実の告知,流布行為の存否及び虚偽性の有無等) 【原告の主張】 (1) 被告Bは,被告MGIJの従業員である。また,被告Aは,被告DGE及び被告MGIJの代表者である。
(2) 平成12年9月中旬ころ,被告B及び被告Aは,原告のネットワークビジネスの参加メンバー(以下「原告ネットワークメンバー」という。)であるD,E,F等に対し,電話やFAXにより,本件虚偽事実を告知した。
(3) また,同じころ,被告Bと被告Aは,鹿児島市において,原告ネットワークメンバーを集めて,本件虚偽事実を告知した。
(4) さらに,平成12年12月ころから,被告Bと被告Aは,原告ネットワークメンバーであるG,H,I等多数の者に対し,本件虚偽事実を告知,流布した。
(5) 本件三者間契約は終了していないのであるから,これが終了したという事実は,虚偽である。
被告Aが用いた具体的な表現は,原告が「多額の借金を抱えている」というものである。このような表現を一般人が聞けば,おのずと「原告の経営状態がよくない」という意味に感じる。このような印象を与える表現は,虚偽というべきである。
(6) 本件虚偽事実の告知,流布は,原告ネットワークメンバーを,被告MGIJに勧誘するためにされたものである。
【被告らの主張】 (1) 被告Aについて ア 被告Aが,原告ネットワークメンバーからの依頼に基づいて,同人らに対して述べた事実は,以下の事実であり,これらの事実は,何ら虚偽ではない。
(ア) 原告とMGI及び被告DGEの本件三者間契約は終了したということ (イ) 原告には多額の銀行ローンがあるということ イ 被告Aが原告ネットワークメンバーに対し,被告MGIJへの参加を勧誘したことはない。
(2) 被告Bについて 被告Bは,平成12年9月30日に原告を退職するまでの間,被告MGIJの製品については全く知らされておらず,したがって,同製品に関して,原告ネットワークメンバーに連絡したことはない。
被告Bは,平成12年10月中旬ころ,原告ネットワークメンバーに電話やファックスで連絡をとった。原告ネットワークメンバーの電話番号は,原告を脱退して被告MGIJの販売組織に加入した者から知らされ,かつ,連絡するように依頼された。
被告Bが,依頼を受けて原告ネットワークメンバーに連絡した際,個々の相手方によって具体的な内容は異なるが,被告Bは,@MGIの製品を大事にしない原告の管理職に失望して原告を退社したこと,A契約が終了して原告には商品の入荷してこない状況であることを伝えた。しかし,虚偽の事実を告げたことはなく,また,被告MGIJへ移籍するように勧誘したことはない。
3 争点(1)ウ(本件営業秘密資料に記載されている事項が不正競争防止法2条4項に規定する「営業秘密」に該当するかどうか。被告Bが本件営業秘密資料を開示し,他の被告らが,これを使用して営業をしているかどうか。) 【原告の主張】 (1) 本件営業秘密資料は,いずれも秘密として管理されていた。組織図等は,コンピュータ管理されており,担当者のIDパスワードでのみ引き出すことができる。原告従業員は,原告ネットワークメンバーから要求があっても,自身の傘下の組織図しか開示しない取扱いとなっている。また,原告ネットワークメンバーの名簿類は,社内用として机に設置しているが,写しをとって外部に配布することは禁止されている。さらに,販社名簿は,原告の内勤の事務職及び営業職に携わる従業員が持っているが,従業員以外への開示は禁止されている。
(2) 被告B及び被告Aから原告ネットワークメンバーへの集会参加呼びかけ,本件虚偽事実の告知等からすると,被告Bが,本件営業秘密資料を開示し,他の被告らがこれを使用したとしか考えられない。
【被告らの主張】 (1) 本件営業秘密資料は,いずれも秘密として管理されていなかった。
原告ネットワークメンバー全体の名簿や組織図等は原告のコンピュータに保存されていたが,これらを印刷した文書は,会社内の机等に無造作に放置されている状態であって,原告の従業員及び原告を訪問するネットワークメンバーはこれらを何時でも入手できた。また,原告ネットワークメンバーは,何時でも自己の傘下のメンバーの名簿及び組織図を原告から取得することができた。さらに,原告の営業部員は,全員原告ネットワークメンバー全体の名簿や組織図を所持しており,営業部員が原告を退職した後に,これらの書類を使用して原告ネットワークメンバーを自己の所属する別の会社のネットワークに勧誘している例が多数存在する。
(2) 被告Bが,本件営業秘密資料を開示し,他の被告らがこれを使用した事実は否認する。
4 争点(1)エ(被告らの一連の行為が原告の営業権を侵害する不法行為となるか。) 【原告の主張】 被告Aは,被告DGEの代表者として,原告との契約条件について交渉し,平成12年8月末には,ほぼ条件がまとまっていたにもかかわらず,その裏で,原告のネットワークを乗っ取る計画を画策し,実行した。具体的には,@被告B及び被告Aは,平成12年9月ころ,原告ネットワークメンバーに対し,本件虚偽事実を告知し,設立準備中の被告MGIJとの取引に参加するように勧誘し,A被告Aは,同年11月には,原告のネットワークメンバーを利用して本件MGI商品を販売することを業とする被告MGIJを設立して,代表者となり,B被告Aは,同社の設立準備中より,原告の従業員であった被告Bから本件営業秘密資料を入手して,これを使用し,さらに,被告Bを被告MGIJの従業員として雇用し,本件営業秘密資料の使用を継続して,被告Bとともに,原告ネットワークメンバー(特に商品販売優秀者)に電話やファックス等で接触し,本件虚偽事実を告知して,商品を一方的に送り付ける等するとともに,原告のネットワークから脱退して被告MGIJとの取引に参加するように勧誘した。これらの一連の行為は,原告の営業権を侵害する不法行為となる。
【被告らの主張】 (1) 被告Aの方から,原告ネットワークメンバーに対し,被告MGIJへの参加を勧誘したことはない。
(2) 被告DGE及びMGIは,本件三者間契約が終了し,その後の原告の被告DGE及びMGIに対する対応をみて,今後原告を通じてMGIの製品を販売することは困難であると考え,日本での新たな販売ルートを開発するために被告MGIJを設立することとした。被告MGIJは,当初量販店での小売り,通信販売及びインターネットによる販売を計画していたが,将来に不安を覚えた原告ネットワークメンバーから強く要請されたため,ネットワークによる販売を行うこととしたものである。
5 争点(1)オ(原告の損害) 【原告の主張】 原告が受けた損害は,売上減少7500万円,原告が築いてきたネットワークの崩壊による損害2500万円の合計1億円を下らない。
【被告らの主張】 原告の損害の主張を争う。
6 争点(2)ア(原告が支出した弁護士費用に関する請求の成否) 【原告の主張】 (1) 被告DGEは,平成8年1月30日,本件三者間契約に違反してヨシダとMGIの製品の継続的供給契約を締結したところ,同年3月7日,被告DGEとヨシダは当該契約を解消するため,和解したが,原告は,当該和解契約締結に関し合計327万4420円の弁護士費用を被告DGEのために立て替えて支払った。
(2) この立替払に関しては,原告と被告DGEとの間で覚書等を交わしてはいないが,両者間には,黙示的に被告DGEにゆとりができた時には同金員を支払う旨の合意があった。そして,被告DGEは,平成8年6月ころからゆとりができ,上記立替金を支払うことができる状態になった。
(3) また,原告と被告DGEとの間には,本件三者間契約に基づく協調関係・信頼関係が失われたときには,上記弁護士費用の立替金を支払う旨の合意があった。被告DGEを含む被告らの営業妨害行為により本件三者間契約の継続が不可能となった現在では,被告DGEは,原告に対し,上記立替金を支払う義務がある。
(4) 仮に,上記立替金に関する合意がないということであれば,被告DGEは,法律上の原因なくして原告の損失において弁護士費用相当額の利得を得ているのであるから,被告DGEは,原告に対し,不当利得として返還する義務がある。
【被告DGEの主張】 (1) 被告DGEは,MGIの了解を得て,ヨシダと代理店契約を締結した。当該契約に基づいて被告DGEがヨシダに提供するのは,青色のマグネパワーと呼ばれる製品であり,当該製品の販売については,平成7年11月29日に締結した被告DGEと原告との間の契約(以下「平成7年契約」という。)に違反するものではなかった。
(2) 原告と被告DGEは,平成8年2月26日付けで,家庭用のマグネタイザー製品を日本で組織販売するための独占的権利を原告に付与する契約を締結した(以下「平成8年契約」という。)。平成8年契約には,@原告がより広範な独占的販売権を取得する代わりに,平成8年の1年間で製品を最低8万個(2万ユニット)購入する義務を負うこと,A原告は,被告DGEがヨシダと契約したことに何ら異議を述べないこと(5条),B被告DGEとヨシダの取引終了により,被告DGEに生ずる損害及び法的費用を原告が支払うこと(6条)等を内容とするものである。平成8年契約に基づいて,原告は,自己の名前のもとに,自己の費用負担により弁護士を依頼してヨシダと交渉し,被告DGEとヨシダ名義の和解契約書を締結するに至った。
(3) 以上のとおり,原告は,平成8年契約において,被告DGEがヨシダとの代理店契約を解約する内容の和解契約を締結するための弁護士費用を負担することに同意し,その支払をしたものであって,被告DGEが同金員について支払義務を負うことはない。
【原告の反論】 (1) 被告DGEとヨシダとの代理店契約は,平成7年契約に違反するものである。平成8年契約5条の規定は,被告DGEとヨシダの代理店契約が,平成7年契約に違反することを前提とする規定である。
(2) 平成8年契約6条には,法的費用を原告が負担する旨の規定があるが,これは,立替払を約束しただけのものである。
7 争点(2)イ(ライセンス料名目の金員の返還請求の成否) 【原告の主張】 (1) 原告は,本件三者間契約の不継続を解除条件として,被告DGEに対し,平成12年3月から6月までの4か月間にわたり,毎月4万ドル,合計1848万円を支払った。被告DGEを含む被告らの営業妨害行為により,本件三者間契約の継続が不可能となった現在,解除条件は成就し,被告DGEは,法律上の原因なくして,原告の損害の下に,1848万円の利得を得ている。
(2) 被告DGEがMGIに対して,上記金員を全額支払済みであることは否認する。MGIに対して支払っていない部分がある。
【被告DGEの主張】 (1) 本件三者間契約終了後,原告は,ライセンス料を支払うことによって,最低限度の商品を購入しなくても,独占的販売権を確保することができた。原告は,ライセンス料を支払った平成12年3月から6月までの4か月間,被告DGEに対し,本件原告商品を全く注文していないが,被告DGEは,本件原告商品及びこれに類似する家庭用マグネタイザー製品を第三者に販売していない。したがって,当該ライセンス料の支払は,本件三者間契約の継続を解除条件とするものではない。
(2) 上記ライセンス料は,上記の趣旨により支払われたものであるから,被告DGEは,上記金員をすべてMGIに支払済みである。したがって,被告DGEに利得はない。
8 争点(3)ウ(前渡金返還請求権の存否及び同請求権と被告DGEの原告に対する補償金債権等との相殺の成否) 【原告の主張】 (1) 原告は,上記第2の1(4)イ【争いのない事実】記載のとおり,被告DGEに対し,前渡金合計1866万8160円を支払ったが,現時点においても支払の対象となった本件原告商品は,被告DGEから原告に納入されていない。
(2) 本件三者間契約の継続が不可能となった現在,被告DGEは,法律上の原因なくして原告の損害の下に不当に上記金員の利得を得ている。
(3) したがって,原告は,被告DGEに対し,上記前渡金返還請求権を有している。
【被告DGEの主張】 (1) 前渡金返還請求権の不存在 次の(2)アのとおり,原告は,本件原告商品の個別購入契約締結に伴い前渡金を支払ったものであり,原告は,当該個別購入契約を解除又は取り消す正当な理由を有しないから,当該個別購入契約の解除又は取消しを前提とする前渡金の返還請求をすることはできない。
(2)ア 仮に,原告が前渡金返還請求権を有するとしても,以下述べるとおり,被告DGEが原告に対して,本件原告商品の個別購入契約の正当な理由のない取消し又は解除に伴う損害賠償請求権を有している。
(ア) 原告の主張に係る前渡金は,平成11年4月から平成12年2月までに本件三者間契約に基づいて原告が被告DGEに発注した本件原告商品5224個(1306セット)の代金の50%相当額である。平成12年6月18日付けの書面によって,原告から,上記商品のうち,2600ユニットのみを引き取り清算したい旨の要請があったのに対し,被告DGEは,平成12年7月27日付け書面において,上記商品全部の引取りと残金の支払を要求した。しかし,これに対しては,原告から何の回答もなかった。
(イ) したがって,原告は,上記発注を正当な取消事由又は解除事由を有しないにもかかわらず,取消し又は解除したものであるから,被告DGEが被る損害を賠償する責任がある。
(ウ) 被告DGEは,それまで,本件原告商品を原告に販売することにより本件原告商品の代金の40%相当額の利益を得ていたから,被告DGEは,原告に対し,当該商品の代金合計3733万6320円の40%に当たる1493万4528円の損害賠償請求権を有している。
イ 被告DGEの原告に対するその他の債権 (ア) 被告DGEの原告に対する補償金債権 a 本件覚書は,「平成12年6月30日までに,A氏が甲(原告)の社長とならなかった場合,C氏から甲の株を受け取らないが,甲は乙(被告DGE)に4か月分(3月から6月)の補償金として1500万円を支払うこととする。」と規定している。
被告Aは,平成12年2月下旬に開催された原告の役員会に出席し,被告Aが社長にならなかった場合の補償金1500万円を含む本件覚書の内容を原告役員に説明し,Cを含む役員全員が賛成した。
したがって,被告Aが原告の役員にならなかった場合には,被告DGEは,原告に対して,1500万円の補償金債権を有する。
b 被告Aは,平成12年5月2日,原告の代表取締役に選任されたが,約1か月後の6月6日代表取締役を解任されたものであって,実質的には,原告の代表取締役に就任したとはいえない。
そうすると,被告DGEは原告に対し,1500万円の補償金債権を有していることになる。
(イ) 信義則上の義務違反に基づく損害賠償請求権 a 上記本件三者間契約及び本件三者間取決めからすると,原告は,これらの契約関係が終了した後においても,信義則上,被告DGEとMGIの契約関係を妨害することなく尊重し,これを毀損しないようにする義務を負うというべきである。
b 原告は,平成12年6月7日から同年8月初めまでの間,MGIに対し,被告DGEを排除して直接取引を行うことを申し入れた書簡を再三再四送付し,その中で,被告DGE及び被告Aを誹謗中傷した。これは,上記信義則上の義務に違反する行為である。
c 上記義務違反行為の結果,被告DGEは,以下の損害を被った。
@ 弁護士費用 84万0129円 原告の上記書簡に対し,MGIが原告との直接取引を検討するようになったため,被告DGEは,アメリカの弁護士を依頼して,MGIと交渉しなければならなくなった。
A 逸失利益 250万円 本件三者間取決めが平成12年6月末日で終了したので,同年7月以降,被告DGEは,MGIと協議の上,直ちに新会社を設立し,家庭用を含めたMGIの製品を販売することにより,利益を得ることが可能であった。しかし,原告による上記行為によって,平成12年10月末まで被告MGIJを設立することができなかった。そして,平成12年11月から平成13年3月までの被告DGEの被告MGIJに対する販売利益は,250万円であったから,平成12年7月から同年10月までの4か月間に被告DGEが得ることができた利益は250万円となり,被告DGEは,原告の上記行為によって,同額の損害を被った。
d したがって,被告DGEは,原告に対し,334万0129円の損害賠償請求権を有している。
(ウ) 被告Aから譲渡を受けた損害賠償請求権 a 被告Aは,原告の株主であるところ,平成12年度定時株主総会の招集通知及び営業報告書の送付を受けていない。これに対し,被告Aは,抗議をし,平成13年度定時株主総会の招集通知を送付するよう求めたが,同招集通知も送付されなかった。この原告の違法行為により,被告Aは,精神的損害を被り,その額は,100万円が相当である。
b 被告Aは,平成14年1月25日,被告DGEに対し,上記損害賠償請求権を譲渡した。 ウ 被告DGEの原告に対する相殺の意思表示 被告DGEは,本件における弁論準備手続期日(第3回,第5回)において,原告に対する上記各債権と,原告が被告DGEに対する有する前渡金返還請求権1866万8160円を対当額で相殺する旨の意思表示をした。
【被告の主張(相殺の抗弁)に対する原告の反論】 (1) 商品購入契約の正当な理由のない取消し又は解除に伴う損害賠償請求権について 平成12年3月にされた原告と被告DGEとの合意において,契約条件変更の交渉をする間,原告は本件原告商品を購入する必要はないこと,原告はライセンス料名目で被告DGEに支払をすることという取決めがあった。この取決めの中には,平成11年4月から平成12年2月までに本件三者間契約に基づいて原告が被告DGEに発注した本件原告商品についての納入延期に関する合意も含まれていたというべきである。実際に,被告DGEは,その後上記商品について,早く受け取るように催促したことはなかった。したがって,被告DGEは,商品購入契約を正当な理由なく取消し又は解除したということはない。
(2) その他の債権について ア 補償金債権について (ア) 本件覚書は,原告代表者と被告Aとの間で,通訳を介さず不十分な語学力の会話で話し合われていた内容を被告Aが自分の都合のいいように取決めがされたものと解釈して,文書化したものである。原告代表者Cは,これを検討すると言って預かっただけであり,署名押印もしていない。したがって,本件覚書の記載内容そのままの合意があったということはない。
(イ) 以上のとおり,1500万円の補償金支払については,原告と被告DGEとの間で合意されていない以上,被告DGEは同補償金債権を有していない。
信義則上の義務違反に基づく損害賠償請求権について 原告がMGIに対して直接取引をするよう交渉すること自体は,社会通念上許される自由競争の範囲内の行為であって,被告DGEに対する義務違反になることはない。
ウ 被告Aから譲渡を受けた損害賠償請求権について 被告Aは,原告の営業妨害を継続している者であるから,原告は,被告Aが株主総会を営業妨害に利用することを防ぐための自衛手段として,被告Aに対し,株主総会の招集通知等を送付しなかったのであって,それについては,違法性が阻却されるというべきである。
9 争点(2)エ(不良品の代金相当額を清算金として返還する旨の合意の有無及び原告に対する返還義務の有無(商法526条が適用されるかどうか。)) 【原告の主張】 (1) 平成9年5月ころ,本件原告商品に関し,バックプレートが曲がっているという欠陥が明らかになり,原告は,被告DGE及びMGIと対処を協議した。
(2) 同年10月ころ,原告と被告DGEとの間で,以下の不良品の処理に関する合意(以下「不良品処理合意」という。)が成立した。
ア 原告は,被告DGEより入荷した製品の全数検査を,株式会社小野包装に委託して行い,不良品は,仕分けして別に保管する。
イ 上記方法により,ある程度不良品が蓄積したら,原告がこれを被告DGEに通知し,被告DGEが不良品を確認して,清算する。
(3) 以後,不良品については,不良品処理合意により,処理されてきた。
(4) 原告は,被告DGEに対し,平成13年10月31日,不良品処理合意に基づいて,平成11年6月21日仕分け分から平成13年10月9日仕分け分までの1121個の蓄積された不良品(価格総額383万4239円)について,清算するように求めたが,被告DGEは,商法526条を理由として,清算金の支払を拒んだ。
(5) 以上により,原告は,被告DGEに対し,不良品処理合意に基づき,上記1121個の不良品の代金相当清算金として,383万4239円を,同不良品と引替えに支払うように求める。
【被告DGEの主張】 (1) 平成13年10月31日付けで原告が被告DGEに対し不良品1121個の精算を求めたこと,被告DGEが商法526条を理由としてこれを拒否したことは,認める。
(2) 被告DGEは,原告との間で不良品を蓄積した後に通知して精算するという不良品処理に関する合意や買主の商品検査義務を免除する合意をしたことはない。
(3) 被告DGEが,原告に本件原告商品を最後に納品したのは,平成12年3月3日である。原告は,平成13年10月31日まで不良品の通知をしなかったのであるから,被告DGEは,原告に対し,商法526条により,代金を返還する義務を負っていない。 10 争点(3)ア(被告Bは原告に対し競業避止義務を負うかどうか(競業避止義務規定の有効性を含む。)。) 【原告の主張】 (1) 原告の企業秘密管理規程15条は,社員について,退職後2年間の競業避止義務を定めている。原告は,同規程制定当時,各規定について全社員に詳細に説明した。したがって,被告Bは原告に対し競業避止義務を負っていた。
(2) 被告Bの原告における業務内容は,以下のとおりであって,ネットワーク,顧客管理を担当していた。
ア 商品購入申込書の受付,チェック,入金確認 イ 普及員登録申請書の受付,チェック,入金確認 ウ 販売促進用品の申込みの受付,入金確認,発送 エ クレジット契約書の受付,チェック,審査申込,各種連絡 オ 商品購入者の紹介者とその直上販社との各種連絡 カ 原告ネットワークメンバー組織図への入力,チェック キ 配分金(紹介料)明細書の作成,チェック ク 昇格基準の組織図チェック ケ 相談,クレームの受付及び処理(組織内の人的トラブル,不平不満等) コ 発注,在庫等の資料管理 原告のようなネットワークビジネスにおいて,その根幹が,顧客及びネットワーク組織にある以上,上記のような業務を担当していた被告Bに対して2年の競業避止義務を負わせても,相当な制限であるというべきである。
【被告Bの主張】 (1) 原告の企業秘密管理規程は,被告Bが原告に入社してから3年以上経過した平成11年9月1日に制定されているところ,被告Bは,このような企業秘密管理規程が制定されたことを原告から知らされておらず,同規程15条における退職後の競業禁止義務について知らなかった。仮に,原告が主張するように,同規程制定当時,全社員に詳細に説明したというのであれば,秘密遵守義務を認めた誓約書と同様に,企業秘密管理規程に添付された競業避止義務を誓約する誓約書についても,被告Bが署名押印しているはずであるが,現実には,被告Bは,そのような誓約書に署名押印していない。したがって,被告Bは,原告が主張する競業避止義務を負っていない。
(2) 被告Bは,単なる一般事務職で,原告の企業秘密を知る立場になく,競業禁止に対する何らの対価も得ていないから,上記規程15条を被告Bに適用することは,憲法で保障された職業選択の自由を不当に侵害するものである。したがって,同規定は,被告Bに対して無効である。
11 争点(3)イ(被告Bは原告に対し企業秘密守秘義務を負うかどうか。) 【原告の主張】 原告の企業秘密管理規程9条は,社員について,企業秘密守秘義務を定めている。また,被告Bは,原告との間で,秘密保持契約を締結している。したがって,被告Bは,原告に対し,企業秘密守秘義務を負っている。
【被告Bの主張】 原告の主張は争う。
当裁判所の判断
1 前記第2の1【争いのない事実】に,証拠(甲1ないし7,11ないし15,17,18,20ないし28,乙2ないし27,30(以上の書証については枝番をすべて含む。),証人Jの証言,被告B本人尋問の結果,被告A本人尋問の結果)と弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
(1) 被告DGEは,MGIの製品に関する日本における総販売代理店として活動をしていたところ,平成7年2月6日に,原告との間において,代理店契約を締結し,原告に対して「JOSマグネタイザー家庭用装置」を販売することになった。この契約において,被告DGEは,「JOSマグネタイザー家庭用装置」を原告以外の第三者に販売しないことを約した。
原告と被告DGEは,平成7年11月29日に,原告を,家庭用に使用される「JOSプラスパワー」との名称を有する商品の日本における独占的販売代理店とし,被告DGEは,この商品を原告以外の第三者に販売しないこと,原告は,平成8年にこの商品を最低5000ユニット購入することを目標として,あらゆる努力をすること等を内容とする代理店契約(平成7年契約)を締結した。
(2) 被告DGEは,平成8年1月30日,ヨシダとの間で,MGIの製品「マグネパワー・エス・エス」の継続的供給契約を締結したところ,原告が,この契約は,平成7年契約に違反するものである旨主張したため,原告と被告DGE間で協議した。被告DGEの主張は,ヨシダとの契約の対象製品は,原告に販売している製品そのものではないから,平成7年契約の違反にならないというものであった。
協議の結果,原告と被告DGEは,平成8年2月26日に,再度代理店契約(平成8年契約)を締結した。この契約は,MGI家庭用マグネタイザー製品を日本で組織販売するための独占的権利を原告に付与すること,原告は,平成8年に製品を8万個(2万ユニット)購入すること,原告は,被告DGEがヨシダと契約したことに何ら異議を述べないこと,被告DGEとヨシダの取引終了により,被告DGEに生ずる可能性のあるすべての損害及び法的費用を原告が支払うこと,独占権は,原告が,平成8年に最低購入量8万個を達成しその後最低購入量が各年に15%ずつ増加することに同意すること及び従業員とメンバーにつき競業禁止の方針を保持することを条件として年単位で自動的に更新されること等を内容とする。
他方,同年3月7日,被告DGEとヨシダは,和解契約を締結して,上記継続的供給契約を解消したが,原告は,その弁護士費用327万4420円を,上記契約に従って負担した。
(3) 平成9年4月1日,MGIを製造業者,被告DGEを日本における総輸入業者,原告を日本における独占総販売代理店とする三者間契約(本件三者間契約)が締結された。この契約は,原告は,「JOSプラスパワー」を,被告DGEのみから購入すること,「JOSプラスパワー」は,マグネタイザーM1-Cと呼称するMGIのOEM製品であるので,被告DGEとMGIは,マグネタイザーM1-C,その関連製品,他のOEM製品などを,原告の販売市場に損害を与える訪問販売,通信販売,組織販売,システム販売などの販売方法で,日本国で販売しないこと,原告は,被告DGEから,製品を毎年最低4万8000個購入すること,契約期間は,平成9年4月1日から3年間であり,原告又は被告DGEのいずれかが契約期間満了前の少なくとも30日前までに文書による更新拒絶の通告をしない限り,3年ごとに更新されること等を内容とする。
(4)ア 平成9年5月ころから,本件原告商品のバックプレートが曲がっているとの苦情が寄せられるようになり,原告は,被告DGEと,この問題について協議した。
イ 原告が平成11年4月5日に発注し代金を支払った本件原告商品が24個不足していた。
ウ 平成11年5月に原告,MGI,被告DGEの間でされた合意により,最低購入数量は,6か月間に限り1か月当たり2000個に変更された。
同年10月に,原告,MGI,被告DGEの間でされた合意により,最低購入数量は,更に6か月間1か月当たり2000個に変更された。
エ 原告は,被告DGEに対し,本件原告商品を発注し,以下の各支払日において,代金の半額を前渡金として支払った。
平成11年12月6日 2000個 693万円 平成12年1月7日 2000個 693万円 平成12年2月8日 1200個 427万5000円 (5) 上記(4)ウのとおり最低購入数量を半分に減らしたにもかかわらず,平成12年1月ころには,原告の本件原告商品の在庫が,これまでの販売高の1年分程度にまでなり,本件三者間契約に従って,製品を購入することができなくなった。
そこで,原告と被告DGEとの間で,協議が行われ,その結果,平成12年2月ころ,@原告が被告DGEを通じてMGIにライセンス料として月額4万ドルを支払うこと,A被告Aが原告のシニアマネージャーに就任し,更に後に社長に就任することが合意された。これらは,原告がライセンス料名目で金員を支払い,被告Aが原告の社長に就任して,被告DGEと一体として原告の経営に当たることによって,原告は,販売の独占権を維持するが,本件三者間契約に従って製品を購入する義務を免れるというものであった。Aと関連して,B当時の原告代表者Cが,自己の所有する原告の株式のうち,55%を被告Aに贈与することも話し合われたが,高額の贈与税がかかることから,直ちに実行されなかった。そして,後記のとおり,被告Aが原告の代表取締役を解任されるなどしたことによって,結局は実行されなかった。
被告Aは,上記@ないしB,及びC平成12年6月30日までに,被告Aが原告の社長とならなかった場合,Cから原告の株を受け取らないが,原告は被告DGEに4か月分(3月から6月)の補償金として1500万円を支払うことを記載した同年3月13日付けの覚書と題する書面を作成し,原告代表者Cに渡したが,Cは署名押印することなく,そのまま放置した。
(6) 原告は,被告DGEに対して,平成12年2月から5月の各末日ころに,3月分から6月分までの各ライセンス料を支払い,その合計額は1848万円であった。また,被告Aは,同年3月1日に,原告のシニアマネージャーになり,同年5月2日の取締役会で,原告の代表取締役社長に選任された。しかし,原告の被告A以外の取締役は,上記ライセンス料の支払を停止し,MGIから商品の供給を停止された場合には,他社の類似の商品を扱うことを検討し始め,被告Aは,これに反対した。被告Aは,平成12年6月6日の取締役会で,原告の代表取締役社長を解任された。
(7) 原告は,平成12年6月7日,MGIに対して,被告DGEとのビジネスの関係を廃止する結論を出したこと,MGIと直接取引する時期が来たこと等を内容とする申入れをした。MGIは,同年7月13日,原告に対して,契約書案を送付したが,その最低購入量はきわめて大きく,原告には受け入れられないものであった。MGIは,同年8月1日,原告に対して,原告,MGI,被告DGE,3社の協力関係を期待している旨申し入れた。原告は,同月2日,MGIに対し,直接取引を希望すること,上記提案のあった最低購入量は受け入れられないが,交渉の継続を希望すること等を内容とする申入れをした。
原告は,同年6月18日,被告DGEに対し,ライセンス料を1か月2万ドルに引き下げること,平成11年12月から平成12年2月までに原告が被告DGEに発注し代金の50%に当たる前渡金を支払った上記(4)の商品5200個については,原告が2600個のみを引き取り清算すること,平成11年4月に原告が被告DGEに発注した上記(4)の商品24個については,納品されていないので,納品又は返金が必要であることを申し入れた。これに対し,被告DGEは,平成12年7月27日,上記商品5200個の引取りと残金の支払を要求した。それに対して,原告は,翌年2月まで待つことを求めた。
原告と被告DGEは,同年8月に3回にわたって協議したが,合意に至らなかった。
(8) 原告は,平成12年7月分以降の上記ライセンス料を支払っていない。また,原告は,同年3月以降は,本件原告商品の発注をしていない。
被告DGEは,本件三者間契約において他社に供給しないことを約束した商品を,後記のとおり被告MGIJが設立されるまでは供給していないが,遅くとも同年8月ころには,被告DGEとMGIは,原告との契約の継続を断念し,新会社を設立して,MGIの製品の販売を行うことにした。
(9) 原告が本件原告商品を販売する方法は,ネットワーク販売といわれるもので,ネットワークの参加者(原告ネットワークメンバー)が商品を販売する仕組みになっており,メンバーの最上位の者は,「理事」,次に上位の者は「販社」と言われていた。
(10) 被告Aは,同年9月中旬と同年10月9日に,鹿児島市において,原告ネットワークメンバーに対し,原告には,多額の借金があり,経営内容が悪いこと,契約が切れたので,原告にはMGIの製品は入らなくなること,被告DGEは,新会社を設立して,MGIの製品の販売を行うことを話した。
その後,平成13年にかけて,被告Aは,原告ネットワークメンバーに対し,同様の話をした。
(11) 平成12年10月24日,被告MGIJが設立され,同社は,原告と同様の方法で,MGIの製品の販売を始めた。
(12) 被告Bは,平成8年2月に原告に入社し,最初のころは,現金による商品購入の事務処理等を担当していたが,その後,クレジットによる商品購入の事務処理(クレジットに関するクレーム処理を含む。)を担当し,平成9年6月ころからは,ネットワーク組織に関する業務を担当していた。
被告Bは,平成12年9月14日,原告に退職届を提出し,同年30日限りで退職した。
被告Bは,平成12年10月中旬から,被告MGIJの設立準備の仕事を行うようになり,同社が設立されると,同社に入社した。
(13) 被告Bは,平成12年10月中旬ころ,原告ネットワークメンバーであったKとLに電話をし,契約が切れたので,原告にはMGIの製品は入らなくなること,被告MGIJを設立して,MGIの製品の販売を行うことを話し,同人らに,被告MGIJで扱う製品を送った。
原告は,平成12年11月12日,被告Bに対し,同年9月14日にさかのぼって懲戒解雇する旨通知した。
2 争点(1)アについて (1) 前記1(5)で認定した事実からすると,原告と被告DGEは,被告DGEが本件三者間契約の最低購入義務を履行することが困難になったことから,原告が被告DGEを通じてMGIにライセンス料として月額4万ドルを支払うこと及び被告Aが原告の社長に就任することが合意され,実行されたこと,これによって,原告は,販売の独占権を維持しながら,本件三者間契約で義務づけられていた購入義務を免れることになったこと,以上の事実が認められる。しかし,それ以外に,平成12年3月までに,原告と被告DGE及びMGIとの間において,本件三者間契約を更新しない旨の申入れがされたとか,その更新についての合意がされたとかといった事実を認めることはできないから,本件三者間契約は,暫定的に,上記のとおり一部変更された上で,平成12年3月以降も継続されたものと認めることができる。
しかし,前記1(6)(8)で認定した事実からすると,同年6月には,原告は,被告Aを原告の社長から解任し,同年7月分以降のライセンス料も支払わなくなったことが認められる。これは,上記のとおり変更された主要な契約内容について,原告が自ら履行を拒否したものというべきである。なお,上記のとおり,原告が本件三者間契約で義務づけられていた購入義務を免除されていたのは,原告が被告DGEを通じてMGIにライセンス料として月額4万ドルを支払うこと及び被告Aが原告の社長に就任することによるものであるから,これらが行われなくなった以上,本件三者間契約が存続していれば,原告は,本件三者間契約で義務づけられていた本件原告商品の購入義務があったものとも解されるが,前記1(8)で認定したとおり,原告は,同年7月以降も本件原告商品の購入をしていない。また,前記1(7)で認定した事実からすると,原告は,平成12年6月以降,MGIに対して,被告DGEとのビジネスの関係を廃止する結論を出したことを告げて,MGIとの直接取引を求めていることが認められる。他方,前記1(8)で認定した事実からすると,被告DGEは,同年6月以降も,原告の商品販売の独占権を維持させていたが,同年8月ころには,被告DGEとMGIは,原告との契約の継続を断念し,新会社を設立して,MGIの製品の販売を行うこととしたものと認められる。これらの事実からすると,本件三者間契約は,遅くとも同年8月ころには,合意解除されたものと認められる。
(2) 原告は,原告の経営が不振になったことについては,被告DGEの側に原因があると主張し,証拠(甲20,25,26,27)には,その旨の記載があるほか,証人Jは,その旨を証言する。しかし,上記のとおり,原告と被告DGE及びMGIの間において,本件三者間契約が合意解除されたものと認められる以上,原告の経営不振について,原告が主張しているような事実があったとしても,合意解除に関する上記認定が左右されるものではない。
(3) したがって,被告DGEに対する,本件MGI商品を販売することが本件三者間契約の独占販売条項に違反することを理由とする損害賠償請求,被告MGIJ及び被告Aに対する,被告DGEの上記契約違反を共同して行っていることを理由とする損害賠償請求,被告DGEに対する,本件MGI商品を販売することが本件三者間契約の独占販売条項に違反することを理由とする差止請求,被告MGIJに対する,被告DGEの上記契約違反を共同して行っていることを理由とする差止請求は,いずれも理由がない。
3 争点(1)イについて (1) 前記1(10)認定のとおり,被告Aは,同年9月中旬以降に,原告ネットワークメンバーに対し,原告には,多額の借金があり,経営内容が悪いこと,契約が切れたので,原告にはMGIの製品は入らなくなること,被告DGEは,新会社(被告MGIJ)を設立して,MGIの製品の販売を行うことを話したこと,以上の事実が認められる。そして,その話の内容からすると,被告MGIJへの参加を求める趣旨が含まれていたものと認められる。もっとも,証拠(甲18の1ないし24,甲22,26,27)によると,被告Aが上記の話をして,被告MGIJへの参加を求めた事実が具体的に認められるのは,前記1(10)認定の鹿児島市におけるもの,平成13年1月の大昌有限会社に対するもの,平成13年2月のMに対するものくらいであり,他は,具体的な事実としては認められない。
(2) 前記1(13)認定のとおり,被告Bは,平成12年10月中旬ころ,原告ネットワークメンバーであったKとLに対し,契約が切れたので,原告にはMGIの製品は入らなくなること,被告MGIJを設立して,MGIの製品の販売を行うことを話したこと,以上の事実が認められ,その話の内容や前記1(13)認定のとおり,上記K及びLに対して被告MGIJで扱う製品を送っていることからすると,被告MGIJへの参加を求める趣旨が含まれていたものと認められる。証拠(甲18の6,甲22,26,27)には,被告Bは,他の者に対しても同様の話をした旨の記載が存するが,いずれも被告Bと被告Aが区別されておらず,話の内容も特定されていないなど具体性が乏しいうえ,被告Bは,本人尋問において,この事実を否定する供述をしていることからすると,上記各証拠は直ちに信用できるものではない。
(3) 証拠(乙3の1,2)によると,原告は,平成9年10月1日から平成10年9月30日までの第7期に,1億2171万2000円の損失を,平成10年10月1日から平成11年9月30日までの第8期に,1億3798万1000円の損失を出していたこと,平成11年9月30日当時金融機関に対する債務が約2億1000万円あったこと,以上の事実が認められるうえ,前記1(5)認定のとおり,本件三者間契約に基づく最低購入数量を半分に減らしたにもかかわらず,平成12年1月ころには,原告の本件原告商品の在庫が,これまでの販売高の1年分程度にまでなり,本件三者間契約に従って,製品を購入することができなくなったのであるから,上記被告Aの発言のうち,「原告には,多額の借金があり,経営内容が悪い。」との発言は,直ちに虚偽であると認めることはできないものというべきであり,原告の経営状態がよかった旨の証拠(甲16,28,証人J)は,この認定を覆すに足りるものではない。また,前記2のとおり,本件三者間契約は,遅くとも同年8月ころには,合意解除されたものと認められるから,被告A及び被告Bの「契約が切れたので,原告にはMGIの製品は入らなくなる。」との発言も,何ら虚偽ではないと認められる。
(4) その他,被告A又は被告Bが,原告について虚偽の事実を告知,流布したことを認めるに足りる証拠はない。
(5) したがって,被告らに対する,本件虚偽事実を告知,流布したことを理由とする不正競争防止法2条1項14号,4条に基づく損害賠償請求及び同理由による不正競争防止法2条1項14号,3条に基づく差止請求は,いずれも理由がない。
4 争点(1)ウについて (1) 原告は,被告B及び被告Aから原告ネットワークメンバーへの集会参加の呼びかけ,本件虚偽事実の告知等からすると,被告Bが,本件営業秘密資料を開示し,他の被告らがこれを使用したとしか考えられないと主張する。
しかし,被告Bが,本件営業秘密資料を開示し,他の被告らがこれを使用したことを認めるに足りる直接的な証拠は何ら存しない。被告Bは,本人尋問において,KとLの電話番号を他の原告ネットワークメンバーから聞いた旨供述しており,証拠(乙24)にも同旨の記載があるから,被告Bが,本件営業秘密資料を用いて,これらの者に電話をかけたと認めることはできない。また,被告Aの原告ネットワークメンバーに対する働きかけの態様も,前記3認定のとおり具体的に認められるものは少なく,これらが本件営業秘密資料を用いないと不可能であるとまでは認められない。さらに,証拠(証人Jの証言)と弁論の全趣旨によると,原告ネットワークメンバーの間で働きかけや情報交換がなされていたことが認められるから,このような関係を利用すれば,必ずしも本件営業秘密資料を用いる必要はないとも考えられる。
(2) したがって,被告Bが本件営業秘密資料を開示し,他の被告らが,これを使用して営業していることを認めることはできないから,このことを理由とする,被告Bを除く被告らに対する不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求並びに被告DGE及び被告MGIJに対する同法3条に基づく差止請求は理由がない。また,被告Bに対する,原告との雇用契約における企業秘密守秘義務に違反したことを理由とする損害賠償請求も理由がない。
5 争点(1)エについて (1) 上記2ないし4で述べたとおり,被告DGEが本件MGI商品を販売することは,本件三者間契約に違反するものではなく,原告の信用を害する虚偽の事実を告知し,流布したものと認めることはできず,被告Bが本件営業秘密資料を開示し,他の被告らがこれを使用して営業していると認めることもできない。
(2) 被告DGEと原告との契約が終了した以上,被告DGE及び被告Aが被告MGIJを設立して,MGIの製品の取引を行うこと自体は,何ら違法ではなく,それに,原告ネットワークメンバーが被告Aらから勧められて参加することも,それ自体としては直ちに違法とされるものではない。したがって,原告が主張する一連の行為が,原告の営業権(営業上の利益)を侵害する不法行為となるとは認められないから,被告らに対する当該不法行為を理由とする損害賠償請求は理由がない。
6 争点(2)アについて (1) 前記1(2)認定のとおり,原告と被告DGEは,平成8年2月26日に,代理店契約(平成8年契約)を締結し,この中で,原告は,被告DGEがヨシダと契約したことに何ら異議を述べず,被告DGEとヨシダの取引終了により,被告DGEに生ずる可能性のあるすべての損害及び法的費用を原告が支払うことを約し,ヨシダとの和解契約に要した弁護士費用327万4420円を,上記契約に従って負担したものと認められるから,原告が負担した上記弁護士費用相当額が,被告DGEとの間で不当利得になることはないものというべきである。
(2) 原告は,原告と被告DGEとの間では,被告DGEにゆとりができた時には上記弁護士費用相当額を支払う旨の合意があったとか,本件三者間契約に基づく協調関係・信頼関係が失われたときには,上記弁護士費用相当額を支払う旨の合意があったと主張し,証拠(甲23,27)には,これに沿う記載があるが,それを裏付ける他の証拠は全くなく,前記1認定の経過に照らしても,上記記載は到底信用することができない。そして,この事実を認めるに足りる他の証拠はない。
(3) したがって,被告DGEに対して上記弁護士費用相当額の返還を求める請求は理由がない。
7 争点(2)イについて (1) 前記1(5)(6)認定のとおり,原告と被告DGEとの間で,平成12年2月ころ,原告が被告DGEを通じてMGIにライセンス料として月額4万ドルを支払う旨の合意が成立し,原告は,この合意に基づいて,被告DGEに対して,平成12年2月から5月の各末日ころに,3月分から6月分までの各ライセンス料(合計額1848万円)を支払ったことが認められるから,このライセンス料相当額が,被告DGEとの間で不当利得になることはないものというべきである。
(2) 原告は,本件三者間契約の不継続を解除条件として,上記金員を支払ったと主張するが,この事実を認めるに足りる証拠はない。前記1(5)(8)認定のとおり,原告は,上記ライセンス料を支払うことによって,平成12年3月から6月まで,販売の独占権を維持しながら,本件三者間契約で義務づけられていた購入義務を免れたのであるから,後にその返還を求める理由はない。
(3) したがって,被告DGEに対して上記ライセンス料相当額の返還を求める請求は理由がない。
8 争点(2)ウについて (1) 前記1(4)認定の事実からすると,平成11年12月から平成12年2月までに本件三者間契約に基づいて原告が被告DGEに発注し代金の50%に当たる前渡金を支払った商品5200個及び平成11年4月に本件三者間契約に基づいて原告が被告DGEに発注した商品24個については,すでに売買契約が締結されており,2624個に相当する代金は既に支払われているものと認められる。そうすると,原告は,上記契約が解除されない限り,その商品の引渡しを求めることはともかく,代金の返還を求めることはできないというべきである。
(2) 前記2のとおり,本件三者間契約は合意解除されたのであるが,それ以前にされた個別の売買契約は,本件三者間契約とは別のものであるから,本件三者間契約は合意解除されたからといって,当然に解除されるものではないと解される。
また,前記1(5)認定のとおり原告が被告DGEを通じてMGIにライセンス料として月額4万ドルを支払うこと及び被告Aが原告の社長に就任することが合意された際に,平成11年12月から平成12年2月までに本件三者間契約に基づいて原告が被告DGEに発注し代金の50%に当たる前渡金を支払った商品5200個について引取り及び残代金の支払が猶予されたとしても,それは,ライセンス料が支払われ,被告Aが原告の社長である限り,猶予されていたものにすぎず,まして上記5200個についての売買契約を解除するものとは解されない。現に,前記1(7)認定のとおり,原告は,同年6月18日,平成11年12月から平成12年2月までに原告が被告DGEに発注し代金の50%に当たる前渡金を支払った商品5200個については,原告が2600個のみを引取り清算すること,平成11年4月に原告が被告DGEに発注した商品24個については,納品又は返金が必要であることを申し入れ,これに対し,被告DGEは,平成12年7月27日,上記商品5200個の引取りと残金の支払を要求しているが,このことは,当事者が,個別の売買契約は依然として有効であるとの認識を有していたことを示しているということができる。
そして,他に,上記個別の売買契約が解除されたというべき事実を認めるに足りる証拠はない。
なお,現時点まで,上記2624個の本件原告商品は原告に引き渡されていないが,前記1(7)認定の上記の事実に前記1(7)認定のとおり被告DGEからの上記要求に対して原告が翌年2月まで待つことを求めたことを総合すると,原告が商品を引き渡していないからといって,債務不履行があるということもできない。
(3) したがって,被告DGEに対する上記2624個の本件原告商品に関する前渡金の返還請求は理由がない。
9 争点(2)エについて (1) 前記1(4)認定のとおり,平成9年5月ころから,本件原告商品のバックプレートが曲がっているとの苦情が寄せられるようになり,原告は,被告DGEと,この問題について協議したことが認められるが,原告が主張するように,平成9年10月ころ,原告と被告DGEとの間で,不良品の処理に関する合意が成立したことについては,証拠(甲23【原告代表者の陳述書】,27【証人Jの陳述書】)に記載があり,証人Jが証言するのみで,それ以上にこれを証する契約書等の書証が存在するわけではないうえ,証拠(乙4)によると,本件三者間契約でも,不良品があった場合の措置として良品と交換することが定められているのみで,返金に関する定めがないことをも併せ鑑みると,上記合意が成立したとは認められない。
(2) したがって,被告DGEに対する上記合意に基づく清算金の請求は理由がない。
10 争点(3)アについて (1) 証拠(甲8,9,甲10の1,2,証人Jの証言)によると,次の事実が認められる。
ア 被告Bが原告に入社した当時,原告の就業規則には,従業員が退職した後の競業避止義務についての規定はなかった。
イ 原告は,平成11年9月1日,企業秘密管理規程を制定した。同規程15条には,「社員および役員は,退職後2年間は,会社と競合する事業を行い,または競業他社に就職してはならない。」との規定がある。
原告では,企業秘密管理規程の写し(就業規則,育児休暇,給与規程等の規程類が入った小冊子の中に含まれたもの)を従業員に配布した。
ウ 原告では,同年11月に,従業員に対して,誓約書及び秘密保持誓約書の提出を求め,被告Bも,同月8日,これらを原告に提出した。
被告Bが提出した誓約書には,「会社の定めた社規社則を遵守すること」という文言はあるが,退職後の競業避止義務について記載した文言はない。また,秘密保持誓約書にも,退職後の競業避止義務について記載した文言はない。 (2) 以上のとおり,原告が被告Bが入社した後に制定した企業秘密管理規程には,退職後の競業避止義務についての規定があるものの,原告が,被告Bに提出を求めた誓約書等には,退職後の競業避止義務についての記載はなく,「会社の定めた社規社則を遵守すること」という抽象的な文言があったのみであること,原告は,被告Bら従業員に対し,企業秘密管理規程の写しを配布したものの,同写しは,各種規程類が含まれた小冊子の中の1つにすぎないものであったこと,以上の事実が認められ,他方,原告が,被告Bら従業員に対して,誓約書等の提出を求める際やその他の機会に,退職後の競業避止義務について特に具体的に説明したことを認めるべき的確な証拠はない(なお,証人Jは,その証言において,個別に説明した旨証言するが,その具体的内容は明らかではないことや証人J自身が説明したというものではないことからして,同証言をもって,直ちに上記事実を認めることはできない。)。以上の事実に,上記したとおり企業秘密管理規程15条は,すべての従業員に退職後2年間の競業避止義務を課していて,従業員に重い負担を課すものであることをも併せ鑑みると,原告と被告Bの間で,退職後の競業避止義務を内容とする契約が成立したとまで認めることはできない。
(3) したがって,原告の被告Bに対する,本件MGI商品を販売することが,原告との雇用契約における競業避止義務に違反したことを理由とする損害賠償請求は理由がない。
11 結論 以上の次第で,原告の被告らに対する各請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)虚偽事実目録1原告は,MGI及び被告ディー・ジー・イー株式会社との契約関係が切れて,原告が保有している在庫商品以外の供給ができなくなっている。原告は現在のビジネスを続けられなくなっている。
2原告は,多大な債務を抱えており,経営状態が危なくなっている。
(別紙)商品目録米国法人ザ・マグネタイザー・グループ・インコーポレイテッド製造に係る水道管に取り付けることにより水質を変える等の製品マグネタイザー(燃料活性化製品を含む。)及びそのOEM製品(家庭用サイズのもの)
裁判長裁判官 森義之
裁判官 内藤裕之
裁判官 上田洋幸
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