関連ワード | 広く認識 / 商標登録 / 商品等表示 / 出所識別機能 / 類似性(類似) / 印象 / 差止請求(差止) / 過失 / 因果関係 / 弁護士費用 / 著名表示冒用行為(2条1項2号) / 代理人 / 著名表示冒用行為(2条1項2号) / 損害賠償 / 損害額 / |
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事件 |
平成
14年
(ワ)
8104号
不正競争行為差止等請求事件
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原告 三菱地所株式会社 原告 三菱地所ホーム株式会社 原告ら代理人弁護士 大野聖二 同 中道徹 補佐人弁理士 中村仁 被告 株式会社三菱ホーム |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2002/07/18 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 被告は,その営業上の施設又は活動に,「株式会社三菱ホーム」その他の「三菱」の文字を含む商号,標章又は別紙目録2記載の標章を使用してはならない。 2 被告は,「三菱」の文字及び別紙目録2記載の標章を看板,インターネット上のウェブサイトその他の営業表示物件から抹消せよ。 3 被告は,商号「株式会社三菱ホーム」の抹消登記手続をせよ。 4 被告は,原告らそれぞれに対し,15万円及びこれに対する平成14年4月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は,被告の負担とする。 6 この判決のうち,第1項,第2項及び第4項は,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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原告の請求
主文同旨 |
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事案の概要
本件は,「三菱」の名称及び別紙目録1記載の商標(いわゆる「スリーダイヤ」のマーク。以下「三菱標章」という。)の営業表示を使用する原告らが,被告による「株式会社三菱ホーム」の商号及び別紙目録記載2の標章等の使用は不正競争防止法2条1項2号所定の不正競争行為に該当すると主張して,同法3条に基づき上記の名称及び標章の使用の差止め並びに損害賠償を求めている事案である。 1 争いのない事実 (1) 原告らは,いずれも,旧三菱財閥に由来するいわゆる「三菱グループ」に属する会社であって,その社名中に「三菱」の名称を含むことにおいて共通する(なお,原告三菱地所ホーム株式会社は,原告三菱地所株式会社の100%子会社である。)。 三菱グループは,明治初頭に創業者岩崎彌太郎が起こした海運事業に始まり,石炭,造船,製糸業,銀行業等に多角的に事業展開し,三菱財閥を形成して,我が国における主要な企業グループとなった。第二次大戦後,財閥解体を経て,グループ各社は再び結集し,我が国の産業界における中核的な企業グループを形成している。同グループに属する企業の大半は,その営業表示として,三菱の名称と三菱標章を使用している。 (2) 他方,被告は,平成3年4月9日に設立された熊本県熊本市所在の株式会社であるが,平成8年5月3日に,「中九州ライトハウス株式会社」から「株式会社三菱ホーム」に商号を変更し,かかる商号の下で,不動産事業,賃貸事業及び建築事業を営んでいる。 被告は,その開設するウェブサイト(ホームページ)において,被告会社の名称である「株式会社三菱ホーム」(以下「被告名称」という。)及び別紙目録2記載の標章(以下「被告標章」という。)を表示し,不動産部では九州全般の土地建物の仲介・買い取り・販売を,賃貸部ではマンション・アパート・テナント・一戸建ての斡旋や管理を,建築部では注文住宅・アパート・テナントのリフォーム工事をそれぞれ行っていることなどを紹介している。 2 争点 (1) 「三菱」の名称及び三菱標章(スリーダイヤのマーク)は,原告ら三菱グループ企業の営業表示として著名か(争点1)。 (2) 被告名称(「株式会社三菱ホーム」)は「三菱」の名称と類似するか。また,被告標章が三菱標章と類似するか(争点2)。 (3) 原告の損害額(争点3)。 |
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当事者の主張
1 争点1について (原告らの主張) 「三菱」の名称及び三菱標章は,第二次世界大戦以前から現在に至るまで,一般に広く認識されており,全国的に著名である。 (被告の主張) 原告の上記主張は,争う。 2 争点2について (原告らの主張) 被告が使用する被告名称(「株式会社三菱ホーム」の名称〔商号〕)は,「三菱」の名称と同一又は類似である。また,被告が使用する被告標章は,三菱標章と同一又は類似である。 (被告の主張) 原告の上記主張は,争う。 3 争点3について (原告らの主張) 被告による被告名称及び被告標章の使用行為は,故意又は過失に基づいて行われたものであり,同行為に起因する本件紛争の解決のため,原告らが要した弁護士費用は,原告両名につきそれぞれ15万円を下らない。したがって,原告らは少なくとも各15万円ずつ(合計30万円)の損害を被った。 (被告の主張) 原告の主張の損害額は,争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点1について 前記当事者間に争いのない事実に証拠(甲1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 ア 三菱グループは,創業者岩崎彌太郎が明治3年に海運業を営む九十九商会を創立したのを出発点とする。「三菱」の名称は,明治6年に三菱商会と名称を変更した際に初めて名乗ったもので,三菱本社及び関連各企業は,コンツェルンを形成し,海運事業に始まり,石炭,造船,製糸業,銀行業等の各部門にわたり多角的に事業展開して,富国強兵の国策に乗って財閥の1つとして成長した。第二次世界大戦後の財閥解体により,グループ各社は,別個の独立した会社として発足したが,依然として企業グループとしての一体性を維持しながら,共通の経営理念の下に事業を進めている。 イ 三菱標章(スリーダイヤのマーク)は,創業者岩崎彌太郎の出身である土佐藩の藩主山内家の家紋である「三つ柏」と岩崎家の家紋である「三階菱」を組み合せたものであり,創業の端緒となった海運業で,汽船の船旗として使われ始め,以来三菱のシンボルマークとして,三菱グループ各社で用いられている。三菱標章が商標登録されたのは,大正3年のことである。 ウ 原告三菱地所株式会社は,前記三菱商会が改組した三菱合資会社に,明治44年に地所部を設立したのを出発点とし,昭和12年に三菱地所株式会社となって現在に至っている。同原告は,原告三菱地所ホーム株式会社を初めとする20以上の連結子会社と三菱地所グループを形成し,わが国有数の総合デベロッパーとして,ビル賃貸事業,住宅開発事業,設計監理事業,資産開発運用事業,注文住宅請負事業等を営んでおり,その事業領域は,国内にとどまらず,欧米の主要都市にまで広がっている。 エ 三菱グループにおいては,不動産事業における原告三菱地所株式会社のように,各事業分野ごとに,「三菱」の名を冠した大企業が中核となるグループ企業を形成しており,さらに,これらのグループが集まって三菱グループを形成している。 三菱グループには,多方面にわたり事業を展開する数多くの企業があり,各企業は全国各地に本店,支店を有する。また,同グループは,長年にわたって多大の広告宣伝費を費やし,パンフレット等に三菱標章を表示しているほか,「三菱」の名称及び三菱標章について,国内外でほぼすべての商品及び役務の分野において商標登録を受けている。また,国内外のマスコミ等においても,三菱グループに属する企業が,「三菱」もしくはMitsubishiの名称又は三菱標章と共に頻繁に採り上げられている。 上記認定事実によれば,「三菱」の名称及び三菱標章(スリーダイヤのマーク)は,企業グループである三菱グループ及びこれに属する原告らをはじめとする企業を表すものとして著名であり,不正競争防止法2条1項2号にいう著名な商品等表示に該当するということができる。 2 争点2について ア 被告が使用する被告名称(「株式会社三菱ホーム」という名称〔商号〕)のうち,「株式会社」及び「ホーム」という事業分野を示す一般名詞部分に商品ないし役務の出所識別機能がないことは明らかであるから,類否判断の上で意味のある要部は「三菱」の部分というべきところ,これは原告らの商品等表示である前記「三菱」と同一である。 したがって,被告名称(「株式会社三菱ホーム」)は,「三菱」の名称と類似するものと認められる。 イ 原告らの商品等表示として著名な三菱標章(スリーダイヤのマーク)は,3つの黒地の菱形を,中心点のまわりにそれぞれ120度の角度で均等に開いて配置した構成からなる。これに対し,被告標章は,最上位にある黒地菱形の下2辺に,上半分が白地,下半分が黒地である菱形をそれぞれ接するように配した構成からなるが,見るものに強い印象を与える黒地部分は,1つの点を中心に120度の角度で均等に開いた構成になっている。 以上によれば,被告標章は,三菱標章(スリーダイヤのマーク)と基本的構成を共通にするものであって,三菱標章に類似するものと認められる。 ウ 以上のとおり,被告名称(「株式会社三菱ホーム」)は「三菱」の名称と類似し,被告標章は三菱標章(スリーダイヤのマーク)と類似するものと認められる。 3 争点3について 証拠(甲4,5)及び弁論の全趣旨によれば,被告が故意又は過失に基づいて,原告の著名な商品等表示に類似する被告名称(「株式会社三菱ホーム」)及び被告標章を使用した事実が認められる。そして,原告の請求の内容,訴訟手続の経緯,訴訟追行の難易度,訴訟期間等の事情を考慮すると,被告の不正競争行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害としては,原告両名につきそれぞれ15万円と認めるのが相当である。また,記録によれば,被告に対する訴状送達の日は,平成14年4月26日である。 4 結論 以上によれば,原告らの本訴請求はいずれも理由がある。なお,仮執行宣言は,主文第1項,第2項及び第4項についてこれを認めるのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 三村量一 |
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裁判官 | 村越啓悦 |
裁判官 | 青木孝之 |