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関連ワード 他人の商品 /  類似性(類似) /  外観 /  印象 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  技術的思想 /  意匠登録 /  差止請求(差止) /  非類似 /  侵害 /  代理人 /  商品形態模倣行為(2条1項3号) /  損害賠償 / 
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事件 平成 14年 (ワ) 142号 不正競争行為差止請求事件
原告 株式会社鶴弥
同訴訟代理人弁護士 鶴見恒夫
同 鶴見秀夫
同 垣内幹
同補佐人弁理士 西山聞一
被告 近畿セラミックス株式会社
同訴訟代理人弁護士 白波瀬 文夫
同補佐人弁理士 濱田俊明
裁判所 名古屋地方裁判所
判決言渡日 2002/06/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙被告商品目録記載の瓦を販売等譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。
2 被告は,別紙被告商品目録記載の瓦を廃棄せよ。
3 被告は原告に対し,560万円及びこれに対する平成13年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,瓦を製造販売する原告から,同業者である被告に対し,被告が販売・展示等する別紙被告商品目録記載の瓦が,原告商品の形態模倣したものであるとして,不正競争防止法2条1項3号,3条に基づき,その譲渡,貸渡し,譲渡若しくは貸渡しのための展示の差止めと,同法4条に基づき損害賠償を求めた事案である。
1 当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実 (1) 原告及び被告は,いずれも瓦を製造販売する株式会社である。
(2) 原告は,平成11年7月30日,「スーパートライ110」の商品名を持つ防災平板瓦(以下「原告商品」という。)を新商品として発表し,同年9月8日から販売を開始した(甲4の1)。原告商品には,別紙写真DないしGで示されるタイプTと同HないしKで示されるタイプUがあり,それぞれ以下の形態を有する「ゆう薬F形粘土がわら」である。
ア 原告商品タイプT (ア) 瓦本体は,長さ350ミリメートル,幅344ミリメートル,重さ3.5キログラムの略正方形である。
(イ) 瓦の左側に,幅40ミリメートルの差込部が形成されている。
(ウ) 瓦の右側に,幅50ミリメートルの桟部が形成されている。 (エ) 瓦の尻部(上端)に,上面30ミリメートル,法面15ミリメートル幅の水返しが形成されている。
(オ) 尻部水返しの2か所に,釘穴を有している。
(カ) 瓦の頭部(下端)に,垂れが形成されている。
(キ) 尻部水返し中央やや左部分に,係止突起を有している。
(ク) 差込部頭部側寄りに 〕(かぎ括弧形)の形状の係止受部を有している。
(ケ) 瓦表面の中央部は平坦で,左右の端に沿って高さ13ミリメートルの隆起を有し,桟部側隆起の中央に上下方向に溝を有する。
(コ) 瓦の裏面に,上下方向に同一の長さの2本の力骨を有している。
(サ) 瓦裏面の尻部水返しに対応する位置に,底面20ミリメートル,法面25ミリメートル幅の尻側が開放されたくぼみを有している。
イ 原告商品タイプU (ア) 瓦本体は,長さ356ミリメートル,幅347ミリメートル,重さ3.5キログラムの略正方形である。
(イ) 瓦の左側に,幅41ミリメートルの差込部が形成されている。
(ウ) 瓦の右側に,幅50ミリメートルの桟部が形成されている。 (エ) 瓦の尻部(上端)に,上面43ミリメートル,法面7ミリメートル幅の水返しが形成されている。
(オ) 尻部水返しの2か所に,釘穴を有している。
(カ) 瓦の頭部(下端)に,垂れが形成されている。
(キ) 尻部水返し中央やや左部分に,係止突起を有している。
(ク) 差込部頭部側寄りに 〕(かぎ括弧形)の形状の係止受部を有している。
(ケ) 瓦表面は平坦である。
(コ) 瓦の裏面に,上下方向に同一の長さの3本の力骨を有している。
(サ) 瓦裏面の尻部水返しに対応する位置に,底面35ミリメートル,法面15ミリメートル幅の尻側が開放されたくぼみを有している。
(3) 被告は,遅くとも平成13年11月23日から,「スーパーセラブライト」の商品名を持つ防災平板瓦(以下「イ号商品」という。)を販売し,また販売のために展示している(甲5)。イ号商品は,別紙写真@ないしCで示されるとおり,以下の形態を有する「ゆう薬F形粘土がわら」である。
(ア) 瓦本体は,長さ345ミリメートル,幅345ミリメートル,重さ3.8キログラムの略正方形である。
(イ) 瓦の左側に,幅40ミリメートルの差込部が形成されている。
(ウ) 瓦の右側に,幅35ミリメートルの桟部が形成されている。 (エ) 瓦の尻部(上端)に,10ミリメートル幅のリブ状の水返しが形成されている。
(オ) 瓦表面の尻部側水返しをやや頭部方向に出っ張らせた部分2か所に,釘穴を有している。
(カ) 瓦の頭部(下端)に,垂れが形成されている。
(キ) 瓦表面の尻部側中央やや左部分に,係止突起を有している。
(ク) 差込部頭部側隅に (かね形)の形状の係止受部を有している。
(ケ) 瓦の表面中央部に,長さ約240ミリメートル,幅約80ミリメートルの長方形の凸模様を有している。
(コ) 瓦の裏面に,長さ方向に長短交互に4本の力骨を有している。
(サ) 瓦裏面の係止突起に対応する位置に,長さ34ミリメートル,幅38ミリメートル,深さ8ミリメートルの略正方形のくぼみを有している。
2 争点 イ号商品は,原告商品の形態模倣した商品に該当するか(イ号商品の形態は,原告商品のそれと実質的に同一か。また,原告商品の形態は,同種の商品が通常有する形態か。)。
3 当事者の主張の要旨 (1) 原告 商品の形態は,一般的には,視覚的判断を第一義とせざるを得ないけれども,原告商品の形態の独自性及び特徴は,瓦上部に隣接する瓦を固定するための係止突起(以下「アーム」ともいう。)が取り付けられていて,そのアームと係止受部(以下「ロック部」ともいう。)がかみ合う構造,形態になっている点にある。
ところで,原告商品とイ号商品の形態が全体として実質的に同一か否かを判断するについては,消費者が商品として平板瓦を見たときに,一体どこに注意をひくかの検討が重要であるが,瓦は建築用材であるため,その消費者は,屋根工事店,建築業者,建材店などの専門的判断をする者を指すというべきである。これらの業者は,従前の平板瓦のバリエーションを見慣れていたところ,初めて突起を有する原告商品を目にしたのであるから,突起の存在,その形状に対する注目の度合いは,エンドユーザーのそれを上回るものである。被告主張に係る両商品の形態上の相違点は,平板瓦の種々のバリエーションの範囲内のものにすぎず,突起の存在に比して,その印象は小さい。そして,突起の位置は,原告商品,イ号商品のいずれにおいても,瓦本体表側の上端重合部(それが水返し部分の上に位置するか否かの違いは,原告商品の水返し部分の幅が広く,イ号商品のそれは狭いという些細な差異の反映にすぎない。)の中央やや左側にある点で共通し,その突起の形状もいずれも先端が右側に指向した略鉤状をしているから,全体の形状は,ほぼ同じである。したがって,原告商品とイ号商品は,同一の形態を有し,差異があったとしても,些細なものにすぎないというべきである。
このことは,原告商品(タイプT)についての意匠登録の経緯からも裏付けられる。すなわち,原告が,平成12年1月15日に原告商品(タイプT)について意匠登録の出願をしたところ,同年9月8日に拒絶理由通知を,同年11月6日に拒絶査定をそれぞれ受けたので,同月29日に審判を請求した結果,平成14年3月18日に意匠登録すべきものとの審決がなされた。その際,類似であるとして拒絶理由に引用された訴外宮政瓦工業株式会社製の瓦が,突起のない従来型の平板瓦であったことに照らせば,特許庁が突起の存在を意匠の要部として重視したことが容易にうかがい知れるというべきである。
そして,原告は,イ号商品が発売される前から原告商品を市場において流通させ,広告宣伝を行っており,さらに,被告は,平成12年4月から平成13年11月まで,原告から継続的に現商品を購入してきたものであるから,主観的要件においても,イ号商品は原告商品の形態模倣したものというべきである。
(2) 被告 ア 不正競争防止法2条1項3号にいう「形態」とは,商品の外観,形状を意味し,同号は技術的思想を保護するものではない。原告が,原告商品の特徴としてアームとロック部がかみ合う「構造」を挙げる点は,特許権侵害ならぬ本件訴訟においては,問題外である。そこで,外観,形状をみると,イ号商品の形態は,以下のとおり,原告商品のそれと相当に異なっている。
(ア) 共通点 @ 瓦本体は,略正方形である。
A 瓦の左側には,差込部が形成されている。
B 瓦の右側には,桟部が形成されている。
C 瓦の尻部(上端)に,水返しが形成されている。
D 2か所に,釘穴を有している。
E 瓦の頭部(下端)に,垂れが形成されている。
F 係止突起を有している。
G 係止受部を有している。
H 瓦の裏面に,力骨を有している。
I 瓦裏面に,くぼみを有している。
(イ) 相違点 @ 瓦本体のサイズ(長さ,幅)及び重さが異なる。
A 瓦の左側に形成されている差込部の幅が異なる。 B 瓦の右側に形成されている桟部の幅が異なる。
C 瓦の尻部(上端)に形成されている水返しの形状及び幅が,原告商品では上面と法面からなる合計45ミリメートル(タイプT)か,50ミリメートル(タイプU)の幅広の部材であるのに対し,イ号商品ではリブ状の10ミリメートルの部材となっている。
D 釘穴は,原告商品では尻部水返しに存するのに対し,イ号商品では瓦表面の尻部側に存する。
E 係止突起は,原告商品では尻部水返しに存するのに対し,イ号商品では瓦表面の尻部側に存する。
F 係止受部は,原告商品では差込部頭部側寄りに存在し,〕(かぎ括弧形)の形状であるのに対し,イ号商品では差込部頭部側隅に存在し, (かね形)の形状である。
G 瓦の表面は,原告商品では,中央部が平坦で左右の端に沿って高さ13ミリメートルの隆起を有し,桟部側隆起の中央に上下方向に溝を有している(タイプT)か,表面全体が平坦である(タイプU)のに対し,イ号商品では瓦の表面中央に長さ約240ミリメートル,幅約80ミリメートルの長方形の凸模様を有している。
H 瓦の裏面にある力骨は,原告商品では同一の長さの2本である(タイプT)か,3本である(タイプU)のに対し,イ号商品では長短交互に4本である。
I 瓦裏面のくぼみが,原告商品では尻部水返しに対応する位置に底面と法面を合わせて幅50ミリメートルの尻部側が開放された形状で存在するのに対し,イ号商品では係止突起に対応する位置に略正方形の形状で存在する。
イ 原告は,原告商品の構成を有する防災瓦の係合構造について特許出願をし,拒絶査定を受けているところ,そこに記載されている引用例1(訴外有限会社かわら技研の出願に係る公開特許公報)の文献には,実施例1として,尻部水返しほぼ中央に係止突起を有し(原告商品と同じ。),差込部の頭部側隅に係止受部を有する(イ号商品と同じ。)瓦が記載され,さらに,実施例2として,瓦表面の尻部側中央やや左部分に係止突起を有し(イ号商品と同じ。),差込部の頭部側隅に係止受部を有する(イ号商品と同じ。)瓦が記載されている。また,訴外野安製瓦株式会社の発行するパンフレットには,尻部水返し中央やや左に係止突起を有し(原告商品と同じ。),差込部の頭部側寄りに係止受部を有する(原告商品と同じ。)瓦が記載されている。このように,原告商品の形態は,その発売前から公知となっており,通常の構造であったということができる。
当裁判所の判断
1(1) まず,不正競争防止法2条1項3号にいう商品の「形態」の意義について検討するに,他人の商品の形態をそのまま模倣することにより,他人が費用,労力をかけて開発した成果である商品の形態を許諾なく利用して,開発のコストを節約する一方で,商品の開発につきものの失敗の危険を小さく抑えつつ,当該商品を開発した他人と,同じ商品について市場で競争しようとすることは,競争のあり方として不当な行為であると考えられるので,同号は,そのような行為を不正競争とすることにより商品を開発して市場に置いた者の先行利益を一定期間保護しようとする趣旨のものであること,及び「形態」という文言に照らせば,同号にいう「形態」とは,物の外観に着目した概念であり,その形状,模様,色彩,質量感,光沢感など専ら視覚によって認識することができる要素によって構成されるものであると解される。
この点について,原告は,原告商品の形態上の特徴は,瓦上部に隣接する瓦を固定するためのアームが取り付けられていて,そのアームとロック部がかみ合う構造,形態になっている点にあり,イ号商品は原告商品の形態模倣したものであると主張する。
しかしながら,前記の「形態」の意義に照らせば,商品の機能及び性能並びにこれらを実現するための構造それ自体は,「形態」に当たらず,それらが外観上認識し得る限りにおいて,同号の保護の対象となり得るにすぎないと解される。
そうすると,原告が原告商品の形態上の特徴として挙げるアームとロック部に関する主張のうち,その機能及び性能に関わる部分は,同号による保護の対象とならず,それが外観上認識し得るものに限り,商品の形態の要素となり得るにすぎないというべきである。
(2) そこで,イ号商品が原告商品を模倣した商品に当たるかについて検討するに,不正競争防止法2条1項3号の前記趣旨に照らせば,模倣に当たるためには,すでに存在する他人の商品と訴えの対象とされた商品の外観を対比し,その観察の結果が酷似ないし実質的に同一といい得ることを要するところ,実質的に同一というためには,両者の間に若干の相違点が存在するとしても,当該商品全体からすると些細であり,商品全体として観察すれば,無視し得る程度のものにとどまることが必要というべきである。
これを本件についてみると,前記第2の1に記載のとおり,原告商品とイ号商品のそれぞれの形態を対比すると,いずれも尻部中央付近に,先端が右側に指向した略鉤状の係止突起を有し,突起の先部分の下方の設置部分は平坦であることは共通している(そのほか,前記第2の3(2)ア(ア)の@ないしE及びH,Iの各点が共通することは,被告の自認するところであるが,甲7によれば,これらは通常のF型の桟瓦一般に備わる形態であることが認められる。)ものの,その位置は,原告商品では瓦上端に設けられた尻部水返しに存するのに対し,イ号商品では水返しに存せず,これよりやや下方の瓦表面に位置していること(その結果,瓦の尻部から数センチメートルほど下がった付近から塗布されているゆう薬は,原告商品においては突起部分に塗られていないのに対し,イ号商品においては突起部分にも及んでいる。),さらに,@瓦本体のサイズ(長さ,幅)が異なること,A瓦の右側に形成されている桟部の幅が異なること,B瓦の尻部(上端)に形成されている水返しの形状及び幅が,原告商品では上面と法面からなる合計45ミリメートルから50ミリメートルの幅広の部材であるのに対し,イ号商品ではリブ状の10ミリメートルの部材となっていること,C釘穴は,原告商品では尻部水返し上に存するのに対し,イ号商品では瓦表面の尻部側水返しをやや頭部方向に出っ張らせた部分に存すること,D係止受部は,原告商品では差込部頭部側寄りに存在し,〕(かぎ括弧形)の形状であるのに対し,イ号商品では差込部頭部側隅に存在し, (かね形)の形状であること,E瓦の表面は,原告商品では,中央部が平坦で左右の端に沿って高さ13ミリメートルの隆起を有し桟部側隆起の中央に上下方向に溝を有している(タイプT)か,瓦表面全体が平坦である(タイプU)のに対し,イ号商品では瓦の表面中央に長さ約240ミリメートル,幅約80ミリメートルの長方形の凸模様を有していること,F瓦の裏面にある力骨は,原告商品では,同一の長さ2本(タイプT)か,3本(タイプU)であるのに対し,イ号商品では長短交互に4本であること,G瓦裏面のくぼみが,原告商品では尻部水返しに対応する位置に底面と法面を合わせて,タイプTでは幅45ミリメートル,タイプUでは幅50ミリメートルの尻部側が開放された形状で存在するのに対し,イ号商品では係止突起に対応する位置に略正方形の形状で存在すること等,多数の相違点が認められ,これらを全体として観察すると,両商品の形態上の違いは,些細なものであって無視し得るものとは到底いえない。したがって,イ号商品は,客観面において原告商品の形態模倣したものとは認め難い。
(3) この点に関し,原告は,屋根工事店,建築業者,建材店などの業者が消費者に当たることを前提として,突起を有する平板瓦は原告商品が初めてであるから,注目をひく点は突起の存在及びその形状であるところ,突起の位置は,原告商品,イ号商品のいずれにおいても,瓦本体表側の上端重合部の中央やや左側にある点で共通し,その突起の形状もいずれも先端が右側に指向した略鉤状をしている点で同じである旨主張する。
しかしながら,不正競争防止法2条1項3号は,前記「形態」のうち「同種の商品が通常有する形態」を除く旨規定しているところ,法が,このように同種商品が通常有する形態を保護の対象から除外したのは,同種の商品であれば通常有するような形態は,その開発に特段の費用や労力の投下及びリスクの負担が行われたわけではないのが通常である上に,そのような形態は,その商品の機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない商品形態である場合が通常であろうから,この種の形態を特定の者に独占させることは,商品の形態ではなく,同一の機能及び効用を奏するその種商品そのものの独占を招来することになり,同種の商品間における発展的な競争を阻害することになり,不正競争防止法の趣旨に反することになるからであると解される。これを本件についてみると,前記第2の1の事実に証拠(乙3,4,5の1及び2,6)を総合すると,原告は,平成11年7月29日,防災瓦の係合構造に係る発明について,特許出願した(出願公開日平成13年2月13日)のに対し,特許庁は,平成13年5月23日,拒絶査定しているところ,その拒絶査定に記載されている引用例(訴外有限会社かわら技研の出願に係る平成8年4月9日付けの公開特許公報)には,尻部側に係止突起を,頭部側に係止受部をそれぞれ有し,葺き合わせたときに斜め下段側瓦の係止突起が斜め上段側瓦の係止受部を抑止し振れ止め係止することによって,瓦のずれ,浮きを防止する発明が記載され,さらに実施例1として,尻部水返しのほぼ中央に係止突起を有し,差込部の頭部側隅に係止受部を有する瓦や,実施例3として,尻部水返しのさらに尻部側の中央やや左部分に,先端が右側に指向した立上部と水平部からなる係止突起を有し,頭部左側に係止受部を有する瓦が記載されていること,訴外野安製瓦株式会社の発行するパンフレットに記載されている「セラ・フラット防災瓦」は,尻部水返しの中央やや左に,先端が右側に指向し,略鉤状となっている係止突起を有し,差込部の頭部側寄りに係止受部を有すること,以上の事実が認められる(もっとも,仔細に観察すれば,上記各実施例及び訴外野安製瓦株式会社の「セラ・フラット防災瓦」における係止突起先部分の下方設置部分は,凹面又は開放された形状になっており,同部分が平坦な形状となっている原告商品のそれと異なっているが,瓦全体に占める係止突起の大きさはわずかなものであり,その下方設置部分の形状を原告商品のようなものにするか,上記の実施例等のようなものにするかによって,視覚上顕著な差異をもたらすものとはいえない。)。
そうすると,原告商品の特徴のうち,少なくとも,水返し上面若しくは瓦頭部の中央部付近に,係止受部を抑止するための隙間部分を有する係止突起を設けること及び頭部に係止突起の隙間部分の方向に対応した形状の係止受部を設けること自体は,そのような機能構造を有する防災瓦としての通常有する形態であり,係止突起の先端が右側に指向し,略鉤状となっていることも,瓦の左側に係止受部が設置されている構造を反映したものにすぎないと解されるから,この点の類似性を根拠にイ号商品が原告商品の形態模倣したものである旨の原告の上記主張は採用できない。
(4) さらに原告は,原告商品(タイプT)についての意匠登録の過程で,いったんなされた拒絶査定の理由において,突起のない従来型の平板瓦が引用されていたことを理由に,突起の存在が原告商品の形態上の重要な特徴である旨主張するが,意匠法は,物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをその保護対象としており,不正競争防止法2条1項3号と趣旨を異にする上,上記拒絶査定に対する審判請求(甲8の4)においても,原告は,後端の水返し形状,鉤状の係合凸部の有無,差込部の突条の有無,差込突条前端の括弧状の屈曲形状の有無,差込部の前方の鉤状切込みの有無,桟の形状及び凹溝の有無等の多数の相違点を指摘し,これらの要素が組み合わさった全体形状が非類似であることを主張していることが認められるから,特許庁が突起の存在を決定的な要素として意匠登録の審決をしたとまでは推認できず,原告の上記主張も採用できない。
2 よって,その余について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 加藤幸雄
裁判官 舟橋恭子
裁判官 富岡貴美
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