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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13ワ967不正競争行為差止等請求事件 判例 不正競争防止法
平成7ワ3920 判例 不正競争防止法
平成11ヨ22125不正競争仮処分事件 判例 不正競争防止法
関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  広く認識 /  需要者 /  営業規模 /  信義則 /  同一の表示 /  商品等表示 /  出所表示性(出所表示) /  他人の商品 /  類似性(類似) /  外観 /  混同のおそれ(混同) /  商品の混同 /  出所の混同 /  先使用 /  自他商品識別力 /  一般名称(一般的名称) /  誤認混同 /  商品の形態(商品形態) /  模倣 /  技術的機能 /  技術的形態 /  意匠登録 /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  逸失利益 /  因果関係 /  利益額(利益の額) /  無形損害 /  弁護士費用 /  ただ乗り(フリーライド) /  代理人 /  商品表示性 /  識別力 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) /  損害賠償 /  損害額 /  推定 /  販売数量 / 
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事件 平成 12年 (ネ) 276号 不正競争行為差止等請求控訴事件
控訴人 ネグロス電工株式会社
訴訟代理人弁護士 松尾和子
同 中山慈夫
同 男澤才樹
同 中島英樹
被控訴人 松下電工株式会社
訴訟代理人弁護士 小野昌延
同 小松陽一郎
同 池下利男
同 村田秀人
訴訟復代理人弁護士 福田あやこ
同 宇田浩康
補佐人弁理士 川瀬幹夫
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/05/31
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は、別紙被控訴人製品目録一ないし七記載の電路支持材を製造し、譲渡し、引き渡し、譲渡又は引渡しのために展示してはならない。
3 被控訴人は、控訴人に対し、1459万0093円及び内金671万9396円に対する平成9年3月4日から、内金787万0697円に対する平成10年8月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 控訴人のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は、第1、2審を通じこれを10分し、その9を控訴人の、その余を被控訴人の負担とする。
6 この判決は、第2、第3項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決中、後記(2)の差止請求及び後記(3)の金員支払請求を棄却した部分をいずれも取り消す(原判決の当該部分以外は不服申立ての範囲外)。
(2) 被控訴人は、別紙被控訴人製品目録一ないし七及び同十ないし十八記載の電路支持材を製造し、譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入してはならない。
(3) 被控訴人は、控訴人に対し、3億5318万4000円及びこれに対する平成9年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 訴訟費用は、第1、2審を通じ被控訴人の負担とする。
(5) 仮執行宣言 2 被控訴人 (1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。
事案の概要
本件は、控訴人の製造販売する別紙控訴人製品目録一ないし七記載の電路支持材(以下「第1グループ控訴人製品」という。)及び同十ないし十八記載の電路支持材(以下「第2グループ控訴人製品」といい、第1グループ控訴人製品と併せ「控訴人製品」という。)の商品形態が、控訴人の商品を表示するもの(以下「商品表示」という。)として需要者の間に広く認識されており、被控訴人の製造販売する別紙被控訴人製品目録一ないし七記載の電路支持材(以下「第1グループ被控訴人製品」という。)及び同十ないし十八記載の電路支持材(以下「第2グループ被控訴人製品」といい、第1グループ被控訴人製品と併せ「被控訴人製品」という。)の商品形態が、控訴人製品のものと同一であり、被控訴人が被控訴人製品を製造販売して、控訴人製品と混同を生じさせた結果、不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為が成立しているとして、控訴人が、被控訴人に対し、同法3条1項4条及び5条1項に基づき、被控訴人製品の製造販売等の差止め及び損害賠償を求めるとともに、被控訴人による被控訴人製品の製造販売等の行為が民法709条所定の不法行為に当たるとして、損害賠償を請求する事案である。
原判決は、被控訴人の行為は上記不正競争行為に該当せず、不法行為も構成しないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。
1 争いのない事実 (1) 控訴人は、電設資材器具の製造販売等を業とする株式会社であり、被控訴人は、各種機械器具、建築材料、電路支持材等の配管機材、情報機器の製造販売等を業とする株式会社である。
(2) 控訴人は、控訴人製品に「パイラック」の商標を付して製造販売し、被控訴人は、被控訴人製品を製造販売している。
(3) 控訴人製品の形態は、第1グループ控訴人製品は別紙控訴人製品目録一ないし七、第2グループ控訴人製品は同十ないし十八記載のとおりであり、被控訴人製品の形態は、第1グループ被控訴人製品は別紙被控訴人製品目録一ないし七、第2グループ被控訴人製品は同十ないし十八記載のとおりである。
2 争点 (1) 控訴人製品の形態の商品表示としての周知性の有無 (2) 控訴人製品と被控訴人製品の形態の同一性 (3) 控訴人製品と被控訴人製品が混同を生ずるおそれの有無 (4) 被控訴人の被控訴人製品の形態に係る先使用権の有無 (5) 被控訴人製品の製造販売等を差し止める必要性の有無 (6) 被控訴人による被控訴人製品の製造販売等の行為の不法行為該当性 (7) 被控訴人製品の製造販売等により控訴人が被った損害の額 3 争点についての当事者の主張 (1) 争点(1)(控訴人製品の形態の商品表示としての周知性の有無)について (控訴人の主張) ア 控訴人製品は、別紙控訴人製品目録記載のとおり、独自の形態を有するが、その形態は、以下の理由により、遅くとも昭和58年には、控訴人の商品表示として周知になった。
(ア) 製造販売 控訴人は、Aが昭和22年6月に創業した個人企業を発展させた会社であり、同人が、昭和33年5月、「パイラック」の商標を付した一般形鋼用管支持金具を完成し、昭和34年8月、我が国において初めて電路支持材の製造販売を開始し(以下、パイラックの商標を付した電路支持材を「パイラック製品」という。)、パイラック製品の一種である控訴人製品も、発売以来、控訴人の主力製品として、全国で広く販売、利用されてきた。昭和38年以降における各控訴人製品の販売開始時期は、別紙(一)販売開始時期一覧表記載のとおりであり、昭和46年から平成10年8月までの間における控訴人製品の販売数は、別紙(二)控訴人製品販売数量一覧表記載のとおりであって、平成4年から平成10年8月までの間における控訴人製品の売上額は、別紙(三)控訴人製品売上額一覧表記載のとおりである。
控訴人製品の販売先は、全国の電設資材業界の卸売業者約250社であり、控訴人製品は、これらの卸売業者等を通じ、全国の需要者に販売されてきた。全日本電設資材卸業協同組合連合会の組合員である多数の主要な卸売業者が、
控訴人製品を扱い、その周知性を認めている。
パイラック製品の電路支持材市場におけるシェアは、販売開始から現在まで、ほぼ95%である。
(イ) 広告宣伝 控訴人は、昭和38年以来、電路支持材の総合カタログを作成し、その冒頭には、常に、パイラック製品を掲載していたが、上記カタログは、電気設備業界及び空調衛生業界の工事業者、電設資材の卸売業者、設計事務所、官公庁、総合建設業の電気設備担当者等に広く配布され、その数は、過去10年間だけでも、
総数194万7400部に達している。
また、控訴人は、パイラック製品の販売30周年には、記念キャンペーンを実施し、10万部のちらしを作成して、全国の電気工事業者、電設資材の卸売業者に配布し、1万1629名から景品の応募があった。
(ウ) 試験問題等 控訴人製品目録一及び四記載の製品の形態は、特に早くから知られており、電気工事関係の雑誌にしばしば取り上げられ、第二種電気工事士試験などの試験問題に使用されている。また、上記控訴人製品は、電気工事に関する資材の解説、マニュアルのほか、教科書においても、早いものでは昭和36年から取り上げられている。
(エ) 表彰等 控訴人製品は、その形態、機能が優れているため、昭和40年に社団法人日本電設工業会の技術奨励賞、昭和49年に渋沢賞を受賞し、また、昭和40年代には社団法人日本電設工業会の推奨資材及び東京都建築局の指定資材となっていた。
(オ) 模造品の新聞報道等 控訴人のパイラック製品が空前のヒット商品になったため、昭和51年ころ、その模造品が製造販売され、模造品の製造販売業者が逮捕されたとの新聞報道があった。
イ 第1グループ控訴人製品の形態 (ア) 形態的特徴 第1グループ控訴人製品の形態的特徴は、概要、以下のとおりである。
@ 一枚の鋼板で構成されている。
A 左側面から見て、中央部が大きい曲率半径をもって湾曲を有し、両縁部がより小さい曲率半径をもつ湾曲を有する形状(以下「C字形」という。)を形成する。
B C字形の文字幅は、製品の大きさにより異なり、約10ないし14mm程度である。
C C字形の上辺が下辺より4.5ないし10mm程度短い。
D C字形の下辺の前部から縁部にかけ、歯状の小切り込みが複数個ある。
E 正面から見て、締め付けねじを除外した基本形状は、左右及び上下が対称であり、上面、背面及び底面の両側に、連続する7ないし12mm程度の顕著なビードがある。
F C字形の上部に締め付けねじがあり、背面及び底面部の左右ビードを除いた幅一杯に大きく丸い取付孔が存在する。
(イ) 他社製品の形態 雑誌「エレクトリカル コンストラクション アンド メンテナンス」1951年4月号(乙第7号証)202頁掲載の製品は、C字形を形成すること、上辺が下辺より短いこと、上下左右が対称であること、上面、背面及び底面の両側に連続するビードがあること、底面及び背面の孔を有することにおいて、第1グループ控訴人製品と共通する。
しかしながら、上記製品は、第1グループ控訴人製品のC字形に相当する部分がU字形により近いこと、上辺が下辺より顕著に短いこと、上辺及び下辺の前面が斜めに、かつ、直線的に切り落とされていること、下辺に歯状の小切り込みがないこと、底面及び背面の孔が小さいねじ孔であることにおいては、第1グループ控訴人製品の形態と異なっている。上記雑誌1960年6月号(乙第9号証)202頁掲載の製品も、その形態は同様である。
南電機株式会社のカタログ(乙第12号証の1、2)に掲載された製品は、控訴人製品の模倣品であり、市場における流通量がごく少数である。沼田金属工業株式会社の電路支持材カタログ(乙第13号証)の製品は、背面及び底面の取付孔が小さい上、すぐ市場から姿を消した。株式会社昭和コーポレーションの配管支持金具のカタログ(乙第14号証)に掲載された製品は、空調衛生関係で使用され、控訴人製品とは分野が異なる。また、上記乙号証に記載されたいずれの製品も、控訴人製品が周知性を獲得した後に販売されたものである。
ウ 第2グループ控訴人製品の形態 (ア) 形態的特徴 第2グループ控訴人製品の形態的特徴は、概要、以下のとおりである。
@ 正面から見て左右同形の縦長の頭部と、楕円形状にふくらみをもつ胴部があり、その下には、左右に張り出した2本の脚部があり、頭部の丈は脚部の丈よりやや高い。
A 頭部には、ねじとナットが取り付けられている。
B 外側面から見て、頭部と胴部の両縁には連続して2ないし3mm程度のリブがある。
C 外側面から見て、脚部は胴部より小さい曲率半径をもって湾曲を有し、脚片の幅は胴部より数mm程度狭いが(別紙控訴人製品目録十四のものは9mm程度狭い。)、脚部の先端部は半円形である(別紙控訴人製品目録十四及び十五のものは同半円形の先が更に平らに切られている。)。
(イ) 他社製品の形態 南電機株式会社のカタログ(乙第12号証の1、2)に掲載された製品は、控訴人製品の模倣品であり、市場における流通量がごく少数である。
1928年(昭和3年)7月発行のドイツ特許公報第462115号(乙第21号証、以下「ドイツ公報」という。)の製品は、第2グループ控訴人製品のものと明らかに外観が異なる。すなわち、控訴人製品は、正面から見て、頭部は両掌を上部で合わせた縦長の形状をしているのに対し、ドイツ公報の製品は、手首を突き合わせただけで、掌は離したままの形状をしている。また、第2グループ控訴人製品は、正面から見て、左右の足首の踵を付け、下部の先端部は半円形に広げているのに対し、ドイツ公報の製品では、脚部の先端部と平行した根本が張り出して段部を形成している。
他の乙号証に記載されたいずれの製品も、その形状は、第2グループ控訴人製品と異なっている。
技術的機能に由来する形態 (ア) 商品形態の一部を抽出し、又は抽象的な上位概念でとらえて、形態的特徴のすべてが技術的機能に由来するということは、誤りである。すなわち、第1グループ控訴人製品の形状に即して述べるならば、以下のとおりである。
@ C字形は、上面と下面の間に構造材を挟み込むための形態であり、
また、1枚の金属板を曲げるとC字形となる。しかしながら、C字形の側面から見た、中央部の大きな曲率及び両縁部の小さな曲率により形成される丸やかな湾曲の形態、C字形の文字幅は、単なるC字形の形態としてとらえるべきではない。
A 歯状の小切り込みが複数個あるのは、構造材等を強く挟持固定するためであるが、歯状の小切り込みが存在しない他社製品もある。
B ビードは、金具全体の強度を補強するものであるが、その幅によって、形成される形態が相違するから、単にビードが存在するととらえるべきではない。
C 背面及び底面の丸い取付孔は、クリップ金具を方向自由に取り付けるためのものであるが、丸い孔の大きさ及び形状を無視すべきではない。
(イ) 第2グループ控訴人製品の形状についても、同様に、形態的特徴のすべてが技術的機能に由来するということは、誤りである。
(ウ) 製品には使用目的ないし機能があるから、製品の形態は、この使用目的ないし機能による制約を多かれ少なかれ受けざるを得ない。したがって、製品の使用目的ないし機能を念頭に置いて、その視点から製品の形態を判断するならば、そのすべてが機能に由来すると判断されてしまうが、このような理解は失当である。製品の形態が、その使用目的ないし機能に由来する制約を受けるとしても、
形態全体は、なお、取引者、需用者の好み等を考慮して製造者が選択し得る一定の幅がある。
電路支持材において、開口部、上辺と下辺、ビード、取付孔等の寸法などは、製造者が自由に選択し決定し得る性質のものである。現に、電路支持材で、控訴人製品の模倣品として一時市場に出たもの以外は、控訴人製品と同一の形態的特徴を有するものはなかった。
(被控訴人の主張) ア 商品形態の特異性 (ア) 商品形態出所表示機能を取得するためには、その形態に、同じ存在目的を達成する同種の製品のものとは異なる相対的特異性がなければならない。
控訴人製品については、古くから、同業他社により同種形態のものが複数販売されているから、控訴人製品の形態は相対的特異性を有しない。
また、仮に、製品の発売当初、その形態に特異性があったとしても、
その後、同一又は類似の形態のものが複数の業者により複数の同種製品に使用され、そのような状態が長期間経過した場合には、希釈化(ダイリューション)により、当該商品の形態を特定の出所表示として認識することができなくなり、周知の商品表示といえなくなることがあるところ、控訴人製品については、既に、同一又は類似する形態が複数の業者によって複数の同種製品について使用されているから、仮に、その発売当初、形態の特異性があったとしても、商品表示としての周知性は既に失われている。
(イ) 第1グループ控訴人製品について 控訴人は、沼田金属工業株式会社の電路支持材カタログ(乙第13号証)に掲載された製品について、背面及び底面の取付孔の半径が小さい上、すぐ市場から姿を消したこと、株式会社昭和コーポレーションの配管支持金具のカタログ(乙第14号証)に掲載された製品が空調衛生関係でのみ用いられること、南電機株式会社のカタログ(乙第12号証の1、2)に掲載された製品の市場における流通量がごく少数であったことを主張するが、いずれも根拠を欠く。
(ウ) 第2グループ控訴人製品について ドイツ公報(乙第21号証)の製品は、@正面から見て左右同形に、
小さい縦長の頭部と、環状にふくらみを持つ胴部があり、その下には、左右に張り出した2本の脚片がある、A頭部にはねじとナットが取り付けられている、B外側面から見て、脚片は胴部より小さい曲率半径を持った湾曲を有し、脚片の幅は胴部より狭いという、第2グループ控訴人製品の形態的特徴をすべて備えている。
技術的機能に由来する形態 (ア) 形態的特徴が技術的機能に由来する場合には、不正競争防止法上の商品表示としての保護を与えない方向の裁判例が確立している。技術的機能を実現するための機能的制約に基づく形態をとっているにすぎない場合には、この種の形態を特定の者に独占させることは、製品や技術の独占につながり、同法の趣旨に反することとなるからである。また、ある製品がいくつかの基本的構成要素から成るとき、各構成要素の組合せには一定の限度があるから、各構成要素の具体的な形態を離れて、その組合せ自体が商品表示として保護を受けることはできないと解するのが相当である (イ) 第1グループ控訴人製品について 第1グループ控訴人製品の形態的特徴は、以下のとおり、いずれも、
電路支持材としての技術的機能に由来するものであるから、商品表示としての周知性を獲得したということはできない。
@ 第1グループ控訴人製品は、鉄骨、アングル材等の構造物に電線管等を固定するための電路支持材であって、上板、下板及びこれらの一端片に介在する側板とから成り、側面略コ字形に形成されている。
A 第1グループ控訴人製品は、上板、下板、側板の両縁から内側に向けて金属板を屈曲して製造されるため、側板と上板、下板の境界部は、丸みをもって構成されている。
B 上板、下板、側板の両縁に折曲片及びビードが設けられ、金具本体の強度を補っている。
C 電線管を挟持固定するためのクリップ金具が選択自在に取り付けられるように、下板、側板の両方に取付孔が穿設されている。
D 上板には、締め付けねじが螺設され、下板には鋸歯状部が形成されており、上板と下板の間に鉄骨等の片を挟み、締め付けネジを締め付けてねじ先端のくぼみ先と下板の鋸歯状部により鉄骨等の構造材の片を強固に挟持固定するようになっている。
控訴人は、第1グループ控訴人製品の形態的特徴がすべて技術的機能に由来するということはできないと主張するが、以下のとおり、失当である。
@ 両縁部が中央部よりも小さい曲率になるようにC字形の形態を呈することは、1枚の金属板を屈曲して形成することから必然的に生じ、技術的機能に由来する形態であって、控訴人の主張するC字形かU字形かという点は、微細な差異にすぎない。
A 下辺の方が長いという特徴については、同様の商品の例に枚挙にいとまがなく、また、複数の歯状を持たない製品が存在するからといって、歯状の存在が構造材のずれ防止に役立つものである以上、機能的形態というべきである。
B ビードは、第1次的には補強の役割を果たしているのであって、これが付け加わることによって外観が多少変化するのは、副次的作用である。
C 第1グループ控訴人製品の孔の形状や大きさは、特段、特徴的なものではない。確かに、ビードを付けず、又は取付孔を小さくしても製品として成り立ち得るかもしれないが、ビードの有無、取付孔やねじの形状等が機能面と密接に結びついている以上、各部分の形態が技術的機能に由来することは明らかである。
(ウ) 第2グループ控訴人製品について 第2グループ控訴人製品は、鉄骨等の構造物に固定された取付金具に取り付けられ、電線管等を固定するための配管用クリップ金具である。
この配管用クリップ金具は、二つの金属主片から成る。金属主片は、
電線管を挟むための湾曲部を持ち、その上端には、鉄骨等の構造物用の取付金具のクリップ取付孔に挿入係止するための外向きの屈曲部が形成され、下端には、他方の金属主片と係合するための締め付けボルト挿着孔が穿設されている。
この配管用クリップ金具は、一対の金属主片の上端の外向き屈曲部を取付金具のクリップ取付孔に挿入係止し、相対向する湾曲部に電線管を緩く挟んだ状態で、下端の締め付けボルト装着孔にボルトを装着し、ナットを螺合して緊締することにより、取付金具に取り付け固定される。
この場合、締め付けボルト挿通孔に挿着されたボルトをナットで締め付けるに従って、湾曲部が電線管を強固に挟持し、かつ、電線管の反発力により、
てこの原理で外向きの屈曲部が外方へ作用し、取付金具のクリップ取付孔への取付固着も強固に行われる。
確かに、第1グループ控訴人製品については、全体的な形状等について、需要者の目にも明らかな差異を設けることは可能であったかもしれないが、第2グループ控訴人製品の形態は、第1グループ控訴人製品と比べて単純そのものであり、その形態的特徴は、いずれも技術的機能に由来するものである。競業他社が同種製品を製造するに当たり、同じ目的を達するために他の形態を選択することは、極めて困難であったということができる。
ウ 第1グループ控訴人製品の形態に係る控訴人の意匠登録は、昭和54年9月に無効となっているから(乙第16号証の22)、このような形態による商品表示としての周知性獲得の主張は、信義則上許されない。
(2) 争点(2)(控訴人製品と被控訴人製品の形態の同一性)について (控訴人の主張) 被控訴人製品の形態は、その細部まで控訴人製品と同一形態である。
(被控訴人の主張) 争う。
(3) 争点(3)(控訴人製品と被控訴人製品が混同を生ずるおそれの有無)について (控訴人の主張) ア 不正競争防止法2条1項1号所定の混同を生ずるおそれとは、二つの商品表示間に、経済的又は組織的に何らかの関連があると誤認させることをも含むと広く解されているところ、被控訴人製品の形態は、周知の商品表示である控訴人製品の形態と実質的に同一であるから、被控訴人が被控訴人製品を製造販売するならば、控訴人と被控訴人との間に、被控訴人が控訴人から正当な許諾を受けているなど特別な法律関係があるかのように誤認され、商品出所について混同が生ずることは必至である。
イ 被控訴人製品の一部は、控訴人を商標権者とするパイラックの商標が付され、大手ホームセンターにおいて販売されている。このことは、一般需要者以上に知識を有するはずの販売店であっても、控訴人製品と被控訴人製品を誤認混同していることを示している。
電設資材卸売業者及び電気工事業者においても、控訴人製品と被控訴人製品との誤認混同が現に生じている。
ウ 被控訴人製品には「National」のブランド名が刻印されているが、電気工事関係者が控訴人製品及び被控訴人製品を使用するに当たり、商品に付された刻印を一つ一つ確認することは、現実的にあり得ない。また、被控訴人製品は、ホームセンターなど小売店を通じて需要者にばら売りされる場合があるが、この場合、
社名及び品番が貼付された価格ラベルに覆われ、その結果、控訴人製品と区別することが不可能な状態で販売されている。また、製品の購入が箱単位で行われ、その箱に社名及び品番が明記されている場合もあるが、被控訴人製品が梱包されるのは取引の最終段階であるから、その時点で上記のような箱に梱包されても、商品出所の混同を防止し得るものではない。
(被控訴人の主張) ア 不正競争防止法2条1項1号所定の混同を生ずるおそれとは、両者間に親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為を包含すると解されるが、控訴人の主張のように、単に許諾を受けていると誤信させる場合までは含まれない。
そして、本件では、控訴人と被控訴人との営業規模の違いから、上記のような混同が生ずることはあり得ない。
イ 被控訴人製品は、すべて、被控訴人の代理店を通じて販売され、その後、代理店から電気工事業者に販売されるのが通常である。代理店から購入する電気工事業者は、通常、代理店の店頭で製品を購入するのではなく、自分の知っている品番や社名を特定した上で代理店に電話等で注文を出し、それを受けた代理店が倉庫等に保管している商品を箱ごと配送又は店頭渡しをする。代理店が被控訴人製品を控訴人製品と誤認混同するはずはなく、電気工事業者などの有資格者が上記のような入手方法をとるときには、パンフレット等を参照しながら品番を特定するから、誤認混同を生ずるおそれはない。
なお、被控訴人製品及び控訴人製品は、有資格者でなければ使用しないものであり、一般消費者が購入することはない。
ウ 控訴人製品及び被控訴人製品は、1件の工事において多量に使用される性質のものであるから、一般に箱単位で取引されるところ、両製品の梱包される箱は、形状、模様、色彩が全く異なっている上、社名及び品番が目立つ態様で記載されており、外観上明らかに異なっているから、商品の出所に関する混同のおそれは、抽象的にも存在しない。
また、控訴人製品には「NGRS」又は「NEGUROSU」と、被控訴人製品には「National」と、それぞれ商標が刻印されているところ、被控訴人の商標は被控訴人の著名ブランドである。このような自他商品の混同防止手段が付されている控訴人製品と被控訴人製品とが混同を生ずることはあり得ない。また、現在、被控訴人製品は、表面色に銀色を採用し、控訴人製品の金色とは異なる。
エ 控訴人は、いわゆるホームセンターの一部において、被控訴人製品に控訴人製品の品番が付され販売されているという事実を指摘し、これをもって誤認混同のおそれがあるというが、ホームセンターのような小売店を通じてばら売りされるのは、被控訴人製品の全販売額における0.01ないし0.09%程度で、非常に少ない。被控訴人製品がホームセンターで販売されていたことはあるが、極めてわずかな数量である上、被控訴人が直接販売したものではなく、また、被控訴人製品のみが陳列されていたのであって、控訴人製品と混然と並べられていたわけではない。
被控訴人製品中には、「パイラック止め金」との表示が付されていたものもあるが、「パイラック」は既に一般名称化しており、上記表示も一般名称としての表示にすぎない。
(4) 争点(4)(被控訴人の被控訴人製品の形態に係る先使用権の有無)について (被控訴人の主張) 被控訴人は、被控訴人製品を平成6年から製造販売してきた。控訴人は、
平成4年以降の販売実績を主張しているところ、仮に、控訴人製品の形態に商品表示性が認められるとしても、平成6年までの2年間で周知性を獲得することはあり得ないから、被控訴人は、被控訴人製品の形態について先使用権を有する。
(控訴人の主張) ア 被控訴人の先使用権の抗弁は、控訴審の口頭弁論終結直前に突如主張されたものであって、時機に後れた攻撃防禦方法として却下されるべきである。
イ 控訴人が平成4年以降における控訴人製品の販売実績を主張しているのに対し、被控訴人は、被控訴人製品を平成6年から製造販売していたとして、先使用権を主張する。しかしながら、控訴人は、昭和38年以降における控訴人製品の販売開始時期も明らかにしている。控訴人製品は、昭和46年以降、安定した成長を遂げ、特に、昭和59年以降、平成3年まで顕著な伸びを示しており、その形態は、平成6年よりはるか以前に商品表示としての周知性を獲得していたから、被控訴人の上記主張は失当である。
(5) 争点(5)(被控訴人製品の製造販売等を差し止める必要性の有無)について (控訴人の主張) 被控訴人は、被控訴人製品の仕様変更を行い、平成13年12月から順次新しい仕様の製品に切り替え、平成14年1月中には、営業所に旧仕様の在庫があってもすべて引き上げるというが、被控訴人は、かつて、平成12年初めに、代理店及び控訴代理人らに対し、同様の連絡をしたにもかかわらず、いまだに変更後の仕様で販売をしていない。
また、被控訴人が変更を予定する商品形態は、控訴人製品のものに類似しており、従前の金型を利用し得る範囲で仕様変更するものであるから、商品形態の変更には限度がある。形態変更後の被控訴人製品は、単に、控訴人製品の形態中ごく一部の微細な点及び見えない点について変更を行うにすぎない。さらに、その仕様変更の内容は、控訴審における和解の席上で控訴人が断ったものであって、口頭弁論終結の直前に至って一方的にこのような仕様変更をすることは、許されるべきではない。
したがって、本訴において、被控訴人製品の製造販売等の差止めの必要性が存在することは明らかである。
(被控訴人の主張) 被控訴人は、本訴にかんがみ、被控訴人製品の仕様変更を行うこととし、
金型変更を平成13年11月中に完了した上、その性能について試し打ち等の工程を経て、同年12月から順次新しい仕様の製品に切り替え、平成14年1月中には、営業所に旧仕様の在庫があってもすべて引き上げることとする。したがって、
被控訴人製品について製造販売等を差し止める必要性が喪失した。
(6) 争点(6)(被控訴人による被控訴人製品の製造販売等の行為の不法行為該当性)について (控訴人の主張) 控訴人製品は、形態の主要部分が技術的機能に由来するものではなく、類似する同種製品は存在していなかった。そのような状況下において、被控訴人は、
他の形状、寸法等を採用して電路支持材を製造、販売することができたにもかかわらず、控訴人製品と形状、寸法、素材の色等の外観において実質的に同一というべき被控訴人製品を製造し、控訴人製品との品番対比表及び価格対比表を作成して電設資材業者に配布し、かつ、販売価格を控訴人製品よりも大幅に下げるなど、不公正な方法で被控訴人製品を販売している。
このような被控訴人の行為は、控訴人が全技術と能力を傾注して作り上げた、営業努力の結果蓄積した控訴人の無形の財産である商品形態を、故意に、取引における公正かつ自由な競争として許される限度を逸脱した不当な手段によって横取りしたものであって、民法709条所定の不法行為を構成する。
(被控訴人の主張) 控訴人製品の形態的特徴は、いずれも技術的機能に由来するものであるから、控訴人は法的保護に値する営業上の利益を有しない。また、被控訴人による被控訴人製品の製造販売等の行為は、取引界における公正かつ自由な競争として許される範囲内のものであり、不法行為としての違法性を欠く。今日では、商品形態を意匠法、不正競争防止法2条1項等によって保護する制度が採られているから、他者と同一形態の製品を製造販売しても、よほど違法性が高い行為でない限り、不法行為には当たらないというべきである。
(7) 争点(7)(被控訴人製品の製造販売等により控訴人が被った損害の額)について (控訴人の主張) ア 不正競争防止法に基づく請求 (ア) 値引きによる損害 被控訴人が、被控訴人製品を控訴人製品よりも大幅に安い価格で販売しているため、控訴人は、控訴人製品を値引きして販売せざるを得なかったところ、平成6年9月から平成9年3月までの値引きによる控訴人の損害額は、別紙(四)値引額一覧表記載のとおり、3億4318万4000円(同表の平成6年度分ないし平成8年度分の合計額)である。控訴人製品の電路支持材市場におけるシェアが90ないし95%という独占に近い状態にあること、被控訴人製品が控訴人製品と酷似し同一目的に使用されるものであること、両製品が取引者、需要者を同一にしていること、両製品の販売領域が競合していること、被控訴人が利益率がマイナスになるほどの廉売をしたことなどに照らすと、被控訴人が被控訴人製品を製造販売した行為と控訴人の上記値引きによる損害との間には、相当因果関係が認められる。
(イ) 不正競争防止法5条1項により推定される損害額 平成6年度以降の被控訴人製品の売上額(値引き後)は、別紙(五)電路支持材営業利益一覧表記載のとおり、平成6年度(平成6年7月ないし11月)1049万8000円、平成7年度(平成6年12月ないし平成7年11月)6431万6000円、平成8年度(平成7年12月ないし平成8年11月)2281万9000円、平成9年度(平成8年12月ないし平成9年11月)2859万1000円、平成10年度(平成9年12月ないし平成10年8月)2084万2000円である。控訴人製品の販売による利益率は、平成6年度10.43%、平成7年度8.51%、平成8年度12.84%、平成9年度11.18%、平成10年度7.57%であり、被控訴人製品の販売による利益率は、控訴人の上記利益率を下らないものと推認される。そうすると、被控訴人製品の販売により被控訴人が得た利益の額は、平成6年度109万4941円、平成7年度547万3292円、平成8年度292万9960円、平成9年度319万6474円、平成10年度157万7739円であり、以上の合計1427万2406円は、控訴人の被った損害の額と推定される。
被控訴人の試算によれば、被控訴人が得た利益額は、第1グループ被控訴人製品がマイナス175万4000円、第2グループ被控訴人製品中、別紙被控訴人製品目録十ないし十五のもの(以下「第2グループ被控訴人製品1」という。)が762万4000円、上記目録十六ないし十八のもの(以下「第2グループ被控訴人製品2」という。)が8万7000円であるが、被控訴人の試算によっても、第2グループ被控訴人製品の利益率は毎年同程度で推移しているのに対し、
第1グループ被控訴人製品の平成6年度及び平成7年度の利益率がマイナスとなっているのは不自然であって、仮に、真実マイナスが生じたとすれば、被控訴人が廉売により故意に招いたものであって、本件損害賠償額の算定の基礎とすることはできない。したがって、損害賠償額の算定に当たって、第1グループ控訴人製品の平成6年度及び平成7年度の利益額を控除すると、被控訴人が得た利益額は、第1グループ被控訴人製品234万円、第2グループ被控訴人製品1が762万4000円、同2が8万7000円であり、合計1005万1000円となる。
被控訴人の金型の耐用年数は、少なくとも10年程度あり、税法上の償却期間とは異なる。また、控訴人は、金型の原価償却を実質的に既に完了しており、その後も営業努力を継続し、周知の商品形態に蓄積された営業成果に依拠して、当該製品を製造販売している。一方、被控訴人は、少なくとも控訴人と同じような販売収支実績を挙げることが可能であるとの予測の下に、控訴人の努力にフリーライドして、控訴人の周知の商品形態を細部まで模倣した商品を製造販売しているのであるから、このような不正競争行為の実行に当たり、商品の金型を製造したからといって、その減価償却費を控除して控訴人の逸失利益を算定することは、不当かつ不合理である。したがって、不正競争防止法5条1項により推定される控訴人の逸失利益は、製造販売のための変動経費のみを控除した販売利益と見るのが正当である。
(ウ) 無形損害 控訴人は、被控訴人による被控訴人製品の製造販売等により、顧客の減少に恐怖を感じ企業としての存立が脅かされたことなど無形の損害を被ったところ、上記損害額は500万円を下らない。
(エ) 弁護士費用 控訴人は、本訴提起に当たり、本件訴訟代理人に対し、弁護士報酬として500万円を支払ったので、同額の損害を被った。
イ 不法行為に基づく請求 被控訴人の不法行為は、日々継続的に行われていることから、控訴人が被った損害の額は、上記アと同額である。
(被控訴人の主張) ア 不正競争防止法による損害 (ア) 値引きによる損害 控訴人製品の中には、平成6年以降、販売数を伸ばしているものが多いが、この販売数の増加は、値引きによって販売数が増加したことを意味しており、被控訴人製品の販売によって控訴人製品の市場が奪われたという因果関係は認められない。
(イ) 不正競争防止法5条1項により推定される損害 被控訴人製品の売上額(値引き後)及び控訴人製品の販売による利益率が控訴人主張のとおりであることは認める。
被控訴人の営業利益は、別紙(五)電路支持材営業利益一覧表記載のとおり、被控訴人製品全体で595万6000円(「合計」欄)、第1グループ被控訴人製品に限るとマイナス175万4000円(「パイプセッター」欄)となる。
また、被控訴人は、金型費用として6223万円余りを投資し、金型の減価償却は終わっているので、損害額の算定に当たっては、その減価償却費を利益額から控除すべきである。
イ 不法行為による損害 上記アと同旨である。
争点に対する判断
1 争点(1)(控訴人製品の形態の商品表示としての周知性の有無)について (1) 控訴人は、第1グループ控訴人製品の形態が、遅くとも昭和58年には、
控訴人の商品表示として周知になったと主張するので、この点について判断する。
ア 製造販売等について (ア) 製造販売 控訴人は、Aが昭和22年6月に創業した個人企業を発展させた会社であり、同人が、昭和34年、我が国において初めて電路支持材であるパイラック製品を製造販売し、その一種である控訴人製品も順次販売され、、今日まで販売されてきた(甲第37号証)。昭和46年から平成10年8月までの間における控訴人製品の販売数量は、別紙(二)控訴人製品販売数量一覧表記載のとおりであり(甲第60号証)、平成4年から10年までの間における控訴人製品の売上額は、別紙(三)控訴人製品売上額一覧表記載のとおりである(甲第44号証)。
平成9年当時における控訴人製品の販売先は、全日本電設資材卸業協同組合連合会の卸売業者約1090社中428社、工事業者772社である(甲第19号証の1〜3、第20号証の1〜1957)。控訴人製品は、これらの卸売業者等を通じ、全国の需要者に販売されてきた。
(イ) 広告宣伝 控訴人は、昭和38年以来、電路支持材の総合カタログを作成し、その冒頭には、パイラック製品を掲載するのを常としていたが、上記カタログは、電気設備業界及び空調衛生業界の工事業者、電設資材の卸売業者、設計事務所、官公庁、総合建設業の電気設備担当者等に広く配布され、その数は、平成2年から平成9年の間だけでも、総数194万7400部に達している(甲第22〜第33号証[枝番を含む]、第36号証の1、2)。
また、控訴人は、パイラック製品の販売30周年に当たる昭和63年5月から平成2年9月まで記念キャンペーンを実施し、約10万部のちらしを作成して、全国の電気工事業者、電設資材の卸売業者に配布し、1万1629名から景品の応募があった(甲第34、第35、第36号証の1、2)。
(ウ) 試験問題等 パイラック製品ないし第1グループ控訴人製品のうち控訴人製品目録一及び四記載の製品の形態は、特に早くから知られており、早いものでは昭和38年から、特に昭和57年以降は、電気工事関係の雑誌、第二種電気工事士試験などの試験問題、電気工事に関する資材の解説、マニュアルのほか、教科書において広く取り上げられ、その際、これら製品の形態も同時に掲載されることが多く、「パイラック」という名称が使用されることもあった(甲第3〜第16号証[枝番を含む])。
(エ) 模造品の新聞報道等 控訴人のパイラック製品が同種製品で月産70万個、全国で90%近いシェアを有する商品になったため、昭和51年ころ、模造品が製造販売され、その製造販売にかかわった業者が逮捕されたが、これを報ずる同年10月7日付け朝日新聞(甲第17号証)及び同日付け中日新聞(甲第18号証)の紙上に、本物のパイラック製品として、第1グループ控訴人製品の写真が掲載された。
イ 形態的特徴について (ア) 第1グループ控訴人製品の形態が別紙控訴人製品目録一ないし七記載のとおりであることは当事者間に争いがないが、その形態的特徴は、概要、以下のとおりである。
まず、基本的構成として、以下の形態(以下「基本的形態」という。)を有する。
@ 一枚の鋼板で構成されており、左側面から見て、ほぼC字形を形成する。
A C字形の上辺が下辺より短い。
B 正面から見て、締め付けねじを除外した基本形状は、左右及び上下が対称である。
C 上面、背面及び底面の両側に、連続するビードがある。
D C字形の上部に締め付けねじがあり、背面及び底面部に取付孔が存在する。
次に、具体的構成として、以下の形態(以下「具体的形態」という。)を有する @ C字形の文字幅は、約10ないし14mmである。
A C字形の上辺が下辺より4.5ないし10mm程度短い。
B C字形の下辺の前部から縁部にかけ、歯状の小切り込みがほぼ等間隔に3ないし5個ある。
C ビードは連続して7ないし12mm程度の顕著なものである。
D 背面及び底面部の左右ビードを除いた幅一杯に大きく丸い取付孔が存在する。
(イ) 被控訴人は、商品形態出所表示機能を取得するためには、その形態に、同じ存在目的を達成する同種の製品のものとは異なる相対的特異性がなければならないとした上、控訴人製品については、古くから、同業他社により同種形態のものが複数販売されているから、控訴人製品の形態は相対的特異性を有しないと主張する。
確かに、外国において発行され昭和31年11月国立国会図書館受入れの雑誌「エレクトリカル コンストラクション アンド メンテナンス」1951年(昭和26年)4月号(乙第7、第31号証)202頁掲載の製品は、C字形を形成すること、上辺が下辺より短いこと、上下左右が対称であること、上面、背面及び底面の両側に連続するビードがあること、底面及び背面の孔を有すること、すなわち、基本的形態において、第1グループ控訴人製品と共通する。しかしながら、
より子細に観察すると、上記製品は、第1グループ控訴人製品のC字形に相当する部分がU字形により近いこと、上辺が下辺より顕著に短いこと、上辺及び下辺の前面が斜めかつ直線的に切り落とされていること、下辺に歯状の小切り込みがないこと、取付孔が左右ビードを除いた幅一杯に大きいものではないことにおいて、第1グループ控訴人製品の形態と異なっている。昭和35年7月国立国会図書館受入れの上記雑誌1960年(昭和35年)6月号(乙第9、第30号証)202頁掲載の製品も、その形態は同様である。
商品形態出所表示機能を取得するためには、同種商品が一般に有するものとは異なる形態であることが必要であるが、この形態が他の同種商品と比較して特異な形状であるとまではいえなくとも、当該商品の製造販売、広告宣伝等の程度によっては、出所表示機能を取得することができる。また、上記の同種商品一般と異なる形態は、必ずしも、基本的形態において具備する必要はなく、具体的形態におけるものも、当該商品の製造販売、広告宣伝等の程度に加え、その具体的形態が看者の注意をひく程度によって、出所表示機能を取得することができるというべきである。
本件において、第1グループ控訴人製品の形態は、基本的形態において他の同種製品と異なるところはないが、具体的形態においては、他の同種製品と異なっており、上記のとおり、パイラック製品が、昭和38年ころから市場において圧倒的シェア、販売数及び売上高を有し、大量の広告宣伝を継続してきたこと等を総合すると、第1グループ控訴人製品の形態は、遅くとも、被控訴人において被控訴人製品の製造販売を開始したと主張する平成6年までには、その具体的形態が控訴人の商品表示として周知になったということができる。
エ 南電機株式会社のカタログ(乙第12号証の1、2)、沼田金属工業株式会社の電路支持材カタログ(乙第13号証)及び株式会社昭和コーポレーションの配管支持金具のカタログ(乙第14号証)に掲載された製品は、基本的形態のみならず、具体的形態においても、第1グループ控訴人製品とほぼ同一のものであり、株式会社昭和コーポレーションの上記製品の形状については、平成5年9月10日、物品を吊具として意匠登録がされ、同年12月3日、意匠公報によって公開された(乙第43号証の1)。しかしながら、これらの製品の市場におけるシェアは、合計しても数%程度にすぎず(甲第50号証)、仮に、これらの製品がこの程度市場において販売されていたとしても、上記のとおり、市場における控訴人製品のシェアが圧倒的であるという状況が今日まで継続している以上、第1グループ控訴人製品の具体的形態が控訴人の商品表示として周知である事実は、上記乙号証により左右されるものではない。
被控訴人は、製品の発売後、同一又は類似の形態のものが複数の業者により複数の同種商品に使用され、そのような状態が長期間経過した場合には、希釈化により、当該商品の形態を特定の出所の表示として認識することができなくなり、周知の商品表示ということができなくなると主張する。確かに、一般的に、被控訴人主張のような希釈化が生ずることはあり得るが、そのためには、単に同一の商品形態が同種商品に採用されただけでは足りず、同一形態の同種商品が、希釈化を生ずるに足りる程度の数量及び期間、販売されることが必要である。本件においては、第1グループ控訴人製品の基本的形態及び具体的形態の双方を具備する上記製品は、市場におけるシェアがわずかであり、控訴人製品が市場において有する長期的かつ圧倒的なシェアを脅すに至ることはないのであるから、希釈化によって第1グループ控訴人製品の具体的形態の商品表示としての周知性が失われたということはできない。
技術的機能に由来する形態 (ア) 被控訴人は、商品の形態的特徴が技術的機能に由来する場合には、
不正競争防止法2条1項1号所定の商品表示該当性が否定されるべきであるとした上、第1グループ控訴人製品の形態的特徴は、いずれも、電路支持材としての技術的機能に由来するものであると主張する。
(イ) 被控訴人は、第1グループ控訴人製品の下記@ないしDの形態(以下「技術的形態」という。)が、電路支持材としての技術的機能に由来する旨主張するところ、第1グループ控訴人製品がこのような形態を有することは、別紙控訴人製品目録一ないし七から明らかである。
@ 鉄骨、アングル材等の構造物に電線管等を固定するための電路支持材であって、上板、下板及びこれらの一端片に介在する側板とから成り、側面略コ字形に形成されている。
A 上板、下板、側板の両縁から内側に向けて金属板を屈曲して製造されるため、側板と上板、下板の境界部は、丸みをもって構成されている。
B 上板、下板、側板の両縁に折曲片及びビードが設けられ、金具本体の強度を補っている。
C 電線管を挟持固定するためのクリップ金具が選択自在に取り付けられるように、下板、側板の両方に取付孔が穿設されている。
D 上板には、締め付けねじが螺設され、下板には鋸歯状部が形成されており、上板と下板の間に鉄骨等の片を挟み、締め付けネジを締め付けてねじ先端のくぼみ先と下板の鋸歯状部により鉄骨等の構造材の片を強固に挟持固定するようになっている。
(ウ) 第1グループ控訴人製品において、被控訴人の主張する技術的形態を基本的形態と比較すると、技術的形態のほとんどは基本的形態と一致し、具体的形態と技術的形態との相違点は、下板に鋸歯状部が形成されているかどうかという点だけである。そこで、鋸歯状部が技術的機能に由来するものかどうかについて検討するに、電路支持材において、下板の果たす機能は、上板との間に鉄骨等の片を挟み、締め付けねじ先端でねじを締め付けて強固に挟持固定することである。このような機能は、下板の摩擦が十分に確保され、ねじを締め付けることで強固に挟持固定することにより果たされるから、このような摩擦が十分に確保される限り、下板の形状が平板であるか、凹凸を有するか、又は鋸歯状部を有するか、そして、鋸歯状部を有する場合においてこれを何個有するかは、下板の機能に必然的に由来するものということはできない。そうすると、下板に鋸歯状部が形成されていることは、第1グループ控訴人製品の技術的機能に由来する形態ということはできない。
次に、第1グループ控訴人製品の具体的形態は、C字形の下辺の前部から縁部にかけ、歯状の小切り込みがほぼ等間隔に3ないし5個あることに加え、
C字形の文字幅が約10ないし14mmであること、C字形の上辺が下辺より4.5ないし10mm程度短いこと、ビードが連続して7ないし12mm程度の顕著な怒り肩を形成していること、背面及び底面部の左右ビードを除いた幅一杯に大きく丸い取付孔が存在することであるが、これら具体的形態は、いずれも、電路支持材の技術的機能を果たすために必然的に採用せざるを得ないものではなく、その機能を果たしつつ他の具体的形態を採用することも可能である。ビードを例にとれば、その形状を上記のような顕著な怒り肩にする必然性はなく、より緩やかな形状のものでもよいし、さらには、カナフジ電工株式会社の製品(甲第50号証掲載)のように、ビードを設けなくとも商品としての市場性を十分取得できるのである。したがって、これら第1グループ控訴人製品の具体的形態は、技術的機能に由来するものということはできない。
(エ) 被控訴人は、技術的機能を実現するための機能的制約に基づく形態をとっているにすぎない場合には、この種の形態を特定の者に独占させることは、
製品や技術の独占につながり、不正競争防止法の趣旨に反することになると主張する。しかしながら、第1グループ控訴人製品の基本的形態中、下板に小切り込みが形成されているという構成及び第1グループ控訴人製品の具体的形態は、上記のとおり、技術的機能を実現するという機能的制約の下において選択可能な複数の形態の一つを控訴人の意思で選択したものであるから、被控訴人主張のような技術的機能を実現するための機能的制約に基づく形態をとっているにすぎないということはできない。
また、被控訴人は、ある製品がいくつかの基本的構成要素から成る場合において、各構成要素の組合せには一定の限度があるから、各構成要素の具体的な形態を離れて、その組合せ自体が商品表示として保護を受けることはできないと主張する。しかしながら、第1グループ控訴人製品において、上記具体的形態は、
そのそれぞれが技術的機能に由来するものにすぎないということができないばかりか、これらの具体的形態が組み合わさって一つのまとまった商品形態を形成しているから、不正競争防止法2条1項1号により保護される商品表示となり得るというべきである。
(オ) さらに、被控訴人は、第1グループ控訴人製品の形態に係る控訴人の意匠登録が無効となったことから、このような形態による商品表示としての周知性獲得の主張は信義則上許されないと主張する。しかしながら、意匠登録を受けるためには、当該意匠が創作性を有するなど固有の要件が必要とされる一方、不正競争防止法2条1項1号所定の商品表示として同法による保護を受けるためには、上記創作性は必要とされない代り、当該商品等表示周知性を有することが必要である。このように、意匠法と不正競争防止法とは、その目的、保護の要件及び効果が異なるから、第1グループ控訴人製品の形態に係る意匠登録が無効とされたからといって、控訴人において不正競争防止法に基づく権利を主張することが信義則に反するということはできない。
(2) 次に、第2グループ控訴人製品の形態について判断する。
ア 形態的特徴について (ア) 第2グループ控訴人製品の形態が別紙控訴人製品目録十ないし十八記載のとおりであることは当事者間に争いがないが、その形態的特徴は、概要、以下のとおりである。
@ 正面から見て左右同形の縦長の頭部と、楕円形状にふくらみをもつ胴部があり、その下には、左右に張り出した2本の脚部があり、頭部の丈は脚部の丈よりやや高い。
A 頭部には、ねじとナットが取り付けられている。
B 外側面から見て、頭部と胴部の両縁には連続して2ないし3mm程度のリブがある。
C 外側面から見て、脚部は胴部より小さい曲率半径をもって湾曲を有し、脚片の幅は胴部より狭いが、脚部の先端部は半円形である。
(イ) 第2グループ控訴人製品は、鉄骨等の構造物に固定された取付金具に取り付けられ、電線管等を固定するための配管用クリップ金具であり、この配管用クリップ金具は、二つの金属主片から成る。金属主片は、電線管を挟むための湾曲部を持ち、その上端には、鉄骨等の構造物用の取付金具のクリップ取付孔に挿入係止するための外向きの屈曲部が形成され、下端には、他方の金属主片と係合するための締め付けボルト挿着孔が穿設されている。
この配管用クリップ金具は、一対の金属主片の上端の外向き屈曲部を取付金具のクリップ取付孔に挿入係止し、相対向する湾曲部に電線管を緩く挟んだ状態で、下端の締め付けボルト装着孔にボルトを装着し、ナットを螺合して緊締することにより、取付金具に取り付け固定される。
この場合、締め付けボルト挿通孔に挿着されたボルトをナットで締め付けるに従って、湾曲部が電線管を強固に挟持し、かつ、電線管の反発力により、
てこの原理で外向きの屈曲部が外方へ作用し、取付金具のクリップ取付孔への取付固着も強固に行われる。
(ウ) ところで、ドイツ公報(乙第21号証)の製品は、@正面から見て左右同形に、小さい縦長の頭部と、環状にふくらみを持つ胴部があり、その下には、左右に張り出した2本の脚片がある、A頭部にはねじとナットが取り付けられている、B外側面から見て、脚片は胴部より小さい曲率半径を持った湾曲を有し、
脚片の幅は胴部より狭いという、第2グループ控訴人製品の形態的特徴をすべて備えている。
控訴人は、ドイツ公報の製品は、頭部が手首を突き合わせただけで掌は離したままの形状をしているとか、脚部の先端部と平行した根本が張り出して段部を形成していると主張するが、ドイツ公報(乙第21号証)の記載から読み取れる製品の形状は上記のとおりであって、第2グループ被控訴人製品と異なるところはない。
(エ) そうすると、第2グループ控訴人製品のこれらの形態は、これを構成する各部分の形状が、いずれも、上記(イ)の機能上最も適した形状、これと類似した形状及び電路支持材として最もありふれた形態であるばかりか、各部分を組み合わせた全体的形態も、上記のとおりありふれたものであって、現に、昭和3年のドイツ公報に掲載された製品において、既に採用され、その後、我が国において、
南電機株式会社のカタログ(乙第12号証の1、2)に掲載された製品及び沼田金属工業株式会社の電路支持材カタログ(乙第13号証)に掲載された製品においても採用されている形態であって、従来の電路支持材と比べて特徴的形態を有するものではなく、電路支持材として通常予想される形態選択の範囲を全く出ていないから、その形態に自他商品識別性を認めることはできない。
(オ) 商品の形態が他の同種製品にない特徴的なものであって、自他商品識別性を有する場合には、当該商品について広告、宣伝、展示、販売等が繰り返されることにより、商品の形態のみにより自他商品の識別がされるに至ることがあり得るが、第2グループ控訴人製品の形態は、このような特徴的なものではないから、その広告、宣伝、展示、販売等が継続して行われてきたとしても、商品の形態が独立して自他商品識別力を獲得することはなく、商品表示性を欠き、したがって、周知性を獲得する余地もないというべきである。
2 争点(2)(控訴人製品と被控訴人製品の形態の同一性)について 当事者間に争いのない第1グループ控訴人製品及び第1グループ被控訴人製品の各形態を対比すれば、両製品の形態は実質的に同一であることが明らかである。
3 争点(3)(控訴人製品と被控訴人製品が混同を生ずるおそれの有無)について (1) 不正競争防止法2条1項1号所定の「混同を生じさせる行為」とは、他人の周知の商品表示と同一又は類似のものを使用する者が自己の商品と他人の商品との誤信(以下「狭義の混同」という。)を生じさせる行為等をいうところ、上記「混同」とは「混同のおそれ」をもって足りると解すべきである(最高裁昭和44年11月13日第一小法廷判決・裁判集民事97号273頁参照)。本件において、第1グループ被控訴人製品の形態は、控訴人の周知の商品表示である第1グループ控訴人製品の形態と実質的に同一であるから、第1グループ被控訴人製品の販売により、第1グループ控訴人製品との間に狭義の混同を生ずるおそれのあることを認めることができる。
(2) 被控訴人の主張について ア 被控訴人は、不正競争防止法2条1項1号所定の混同のおそれとは、控訴人の主張するような単に許諾を受けていると誤信される場合までは含まれないと主張する。しかしながら、本件においては、上記のとおり、狭義の混同のおそれが生ずるのであるから、広義の混同を前提とする控訴人の上記主張の当否につき判断するまでもなく、第1グループ被控訴人製品の販売が狭義の混同を生じさせるおそれがあると認めることができる。
イ 被控訴人は、控訴人と被控訴人との営業規模の違いも主張するが、第1グループ控訴人製品と同種製品の市場において第1グループ控訴人製品が上記のとおり圧倒的シェアを継続して有している以上、控訴人と被控訴人が営業規模を異にするからといって、狭義の混同を生ずるおそれを否定することはできない。
ウ 被控訴人は、被控訴人製品がすべて被控訴人の代理店を通じて販売され、その後、代理店から電気工事業者に販売されるのが通常であるとか、代理店から購入する電気工事業者が、通常、代理店の店頭で製品を購入するのではなく、自分の知っている品番や社名を特定した上で代理店に電話等で注文を出し、それを受けた代理店が倉庫等に保管している商品を箱ごと配送又は店頭渡しをすると主張した上、代理店が被控訴人製品を控訴人製品と誤認混同するはずはないとか、被控訴人製品及び控訴人製品は、有資格者でなければ使用しないものであり、一般消費者が購入することはなく、電気工事業者などの有資格者が上記入手方法をとるときには、パンフレット等を参照しながら品番を特定するから、控訴人製品と被控訴人製品が誤認混同を生ずるおそれはない旨主張する。
しかしながら、控訴人従業員作成の上申書(甲第40〜第42号証)によれば、被控訴人製品の一部は、大手ホームセンターにおいて販売され、その際、
被控訴人製品は、社名及び品番が貼付された価格ラベルに覆われ、その結果、控訴人製品と区別することが不可能な状態であることが認められる。そうすると、一般消費者が控訴人製品と混同して被控訴人製品を購入するおそれがないとはいい難い。
被控訴人は、被控訴人製品及び控訴人製品が有資格者でなければ使用しないものであり一般消費者が購入することはないと主張するが、このような事実を認めるに足りる証拠はないばかりか、むしろ、上記のとおり、被控訴人製品が大手ホームセンターにおいて販売されているのであるから、一般消費者も購入するものであることが推認されるというべきである。
エ これに対し、被控訴人は、被控訴人製品がホームセンターのような小売店を通じてばら売りされるのは全販売額の0.01ないし0.09%程度で、非常に少ないこと、これらの製品は被控訴人が直接販売したものではないこと、上記販売に際しては被控訴人製品のみが陳列されていたのであって、控訴人製品と混然と並べられていたわけではないと主張する。
しかしながら、被控訴人の主張によっても、被控訴人から譲り受けた取引者がホームセンター等に転売している実情があることとなり、他方、小売店を通じてばら売りされる被控訴人製品が全販売額の0.01ないし0.09%程度で非常に少ないという被控訴人の主張事実を認めるに足りる証拠もない上、被控訴人製品をばら売りしているホームセンターは、本件証拠上認められるだけでも、神奈川県内に2店、千葉県内に1店あり(甲第40〜第42号証)、ばら売りされる被控訴人製品の数量は、狭義の混同を生ずるおそれを判断する際に無視し得るほど少ないということはできない。また、被控訴人製品のみが陳列され控訴人製品と混然と並べられていない場合であっても、需要者がこれを控訴人製品であると誤信して購入するおそれがあれば、狭義の混同を生ずるおそれがあるというべきであるから、被控訴人の主張は失当である。
オ さらに、被控訴人は、控訴人製品及び被控訴人製品は、一般に箱単位で取引され、両製品の梱包される箱は、形状、模様、色彩が全く異なっている上、社名及び品番が目立つ態様で記載されていることを主張し、これに沿う証拠(乙第32号証の1〜18、第33号証、第42号証の1〜5)もあるが、上記のとおり、
被控訴人から譲り受けた取引者がホームセンター等に転売し、無視し得ない数量の被控訴人製品がホームセンターにおいてばら売りされている実情があるのであるから、両製品の梱包される箱の形状等が異なっているとしても、狭義の混同を生ずるおそれを否定することはできない。
カ 加えて、被控訴人は、両製品にそれぞれ商標が刻印され、被控訴人の商標が被控訴人の著名ブランドであることを主張する。しかしながら、上記のとおり、第1グループ控訴人製品の形態は、独立して控訴人の商品表示として周知であるから、取引者、需要者がこれら商標に注目せず、両製品の形態のみに注目して自他商品の識別を行うおそれがある。確かに、両製品に商標の刻印があることにより、取引者、需要者が両製品の形態のみに注目して自他商品の識別を行うことがない場合においては、商標が混同防止手段となり狭義の混同を生ずるおそれが否定されることはあり得るが、本件においては、商標がこのような混同防止手段となっていることを認めるに足りる証拠はない。被控訴人は、両製品の表面色についても主張するが、取引者、需要者が表面色により両製品の識別を行っていると認めるに足りる証拠はなく、両製品の形態に注目して自他商品の識別がされるおそれは否定し得ないから、表面色も商標と同様、混同防止手段ということはできない。
4 争点(4)(被控訴人の被控訴人製品の形態に係る先使用権の有無)について (1) 被控訴人は、被控訴人製品を平成6年から製造販売しており、仮に、控訴人製品の形態に商品表示性が認められるとしても、被控訴人製品の製造販売の開始時までに周知性を獲得することはあり得ないから、被控訴人は、被控訴人製品の形態について先使用権を有すると主張する。
これに対し、控訴人は、被控訴人の先使用権の抗弁は、控訴審の口頭弁論終結直前に突如主張されたものであって、時機に後れた攻撃防禦方法として却下されるべきであると主張するが、本件訴訟の経緯に照らすと、時機に後れた攻撃防禦方法ということまではできない。
(2) 進んで、被控訴人の上記主張について検討するに、控訴人は、本訴において、控訴人が被った損害額を基礎付ける事実としては、平成4年以降の販売実績等を主張しているが、第1グループ控訴人製品の形態が控訴人の商品表示として周知であることを基礎付ける事実としては、昭和33年以降の事実関係を主張立証している。これにより、上記のとおり、第1グループ控訴人製品の形態が控訴人の商品表示として周知性を獲得した時期は、遅くとも、被控訴人において被控訴人製品の製造販売を開始したと主張する平成6年より前であると認められるのであるから、
被控訴人の主張を前提としても、その商品形態について先使用権を有するということはできない。
5 争点(5)(被控訴人製品の製造販売等を差し止める必要性の有無)について (1) 被控訴人は、被控訴人製品の仕様変更を行うこととし、金型変更を平成13年11月中に完了した上、その性能について試し打ち等の工程を経て、同年12月から順次新しい仕様の製品に切り替え、平成14年1月中には、営業所に旧仕様の在庫があってもすべて引き上げることとするから、被控訴人製品について製造販売等を差し止める必要性が喪失したと主張し、上記仕様変更に関する社内連絡文書(乙第48号証の1〜3)を証拠として提出する。
(2) しかしながら、不正競争行為を差し止める必要性が喪失したというためには、不正競争行為を行った者が単に当該行為を中止した事実だけでは不十分であり、当該行為を再開することが事実上困難であると認めるに足りる客観的事情が存在することが必要である。
本件においては、被控訴人は、被控訴人製品の製造に使用していた従前の金型を利用し得る範囲で被控訴人製品の仕様を変更するというのであるから、当該金型を復元して不正競争を再開することが事実上困難であるということはできない。また、被控訴人は、被控訴人製品に係る従前の販路により仕様変更後の製品を販売するものと推認されるから、同一の販路により第1グループ被控訴人製品の販売を再開することが可能な状況はなお維持されているというべきである。
(3) したがって、控訴人が、被控訴人に対し、第1グループ被控訴人製品の製造、譲渡、引渡し、譲渡又は引渡しのための展示を差し止める必要性は、依然として存在しているというべきである。
他方、控訴人は、第1グループ被控訴人製品の輸出及び輸入の差止めも請求するが、被控訴人が第1グループ被控訴人製品の輸出又は輸入をした事実は認められず、そのおそれを認めるに足りる証拠もないから、輸出及び輸入を差し止める必要性は認めることができない。
6 争点(6)(被控訴人による被控訴人製品の製造販売等の行為の不法行為該当性)について (1) 第1グループ控訴人製品については、被控訴人に不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為が成立するから、民法709条所定の不法行為の成否については判断を要しないので(弁論の全趣旨によれば、前者に基づく損害賠償請求と後者に基づく損害賠償請求とは選択的併合の関係にあるものと解される。)、以下、第2グループ控訴人製品について、被控訴人に上記不法行為が成立するかどうかについて判断する。
(2) 控訴人は、第2グループ被控訴人製品の形態の主要部分は技術的機能に由来するものではなく、形態の類似する同種製品は存在しないとした上、そのような状況下において、被控訴人が第2グループ控訴人製品と同一形態の第2グループ被控訴人製品を製造し、控訴人製品との品番対比表及び価格対比表を作成して電設資材業者に配布し、かつ、値段を控訴人製品よりも大幅に下げるなど、不公正な方法で被控訴人製品を販売した行為が、営業努力の結果蓄積した控訴人の無形の財産を、故意に、取引における公正かつ自由な競争として許される限度を逸脱した不当な手段によって横取りしたものであって、不法行為を構成すると主張する。
(3) しかしながら、上記のとおり、第2グループ被控訴人製品の形態は、ありふれたものであって、従来の電路支持材と比べて特徴的形態ではなく、電路支持材として通常予想される形態選択の範囲を全く出ていないから、その形態に自他商品識別性を認めることはできない。そうすると、第2グループ控訴人製品については、控訴人を法的に保護すべき営業上の利益が存在しないし、また、被控訴人の行為が取引界における公正かつ自由な競争として許される範囲を超えるものであるとも認められないから、第2グループ被控訴人製品の製造販売行為は、民法709条所定の不法行為には当たらないというべきである。
7 争点(7)(被控訴人製品の製造販売等により控訴人が被った損害の額)について (1) 値引きによる損害 ア 控訴人は、被控訴人が被控訴人製品を控訴人製品よりも大幅に安い価格で販売しているため、控訴人製品を値引きして販売せざるを得なかったとして、値引額相当の損害を被ったと主張する。
しかしながら、一般に、多数の同種製品を多数の企業が販売しているような場合においては、当該製品の販売に係る各企業の行為が、他の複数の企業の販売に係る製品の販売数に影響を及ぼし、各企業の行為が複雑な相互作用の様相を呈するから、被控訴人製品の販売が控訴人製品の価格にどのような影響を及ぼしたかを確定することは甚だ困難である。また、被控訴人製品の販売とは無関係に、同種製品全体の需要が景気等の影響により低下し、製品価格の下落を招くことも、一般にあり得ることである。特に、本件においては、控訴人製品中、平成6年以降、販売数を伸ばしているものもあり、控訴人が値下げをしなかった場合、控訴人製品の販売数がどのような経過をたどったかは、証拠上全く不明であるというほかはない。
イ したがって、控訴人が控訴人製品の価格を値引きしたことが、被控訴人製品の販売を原因とするものであるとか、上記値引きによる売上の減少が被控訴人製品の販売と相当因果関係を有する損害であると認めることはできない。
ウ 控訴人は、控訴人製品が電路支持材の市場において圧倒的なシェアを有することなどを主張するが、このことから、直ちに控訴人製品の値引きが被控訴人製品に対抗するためにやむを得ない措置であったとか、上記値引きが被控訴人製品の販売を原因とするものであると認定することはできない。
(2) 不正競争防止法5条1項により推定される損害額 ア 平成6年度以降の第1グループ被控訴人製品の売上額(値引き後)が、
別紙(五)電路支持材営業利益一覧表の「パイプセッター」欄記載のとおり、平成6年度(平成6年7月ないし11月)657万9000円、平成7年度(平成6年12月ないし平成7年11月)4153万4000円、平成8年度(平成7年12月ないし平成8年11月)1946万円、平成9年度(平成8年12月ないし平成9年11月)2294万5000円、平成10年度(平成9年12月ないし平成10年8月)1724万5000円であることは、当事者間に争いがない。また、控訴人製品の販売による利益率が、平成6年度10.43%、平成7年度8.51%、平成8年度12.84%、平成9年度11.18%、平成10年度7.57%であることも、当事者間に争いがないところ、被控訴人製品は、先発製品である控訴人製品と実質的に同一の形態を有し、かつ、取引者、需要者を同じくするから、その製造販売に当たっては、控訴人製品に比べ、製品の研究開発、販路の開拓等に必要な経費の支出を節約することができたものと認められることなどにかんがみると、その販売による利益率は、
控訴人製品の上記利益率を下らないものと推認するのが相当である。
そうすると、被控訴人製品の販売により被控訴人が得た利益の額は、平成6年度68万6189円、平成7年度353万4543円、平成8年度249万8664円、平成9年度256万5251円、平成10年度130万5446円となることが計算上(小数点未満切捨て)明らかであるから、不正競争防止法5条1項により、以上の合計1059万0093円が被控訴人製品の製造販売により控訴人が被った損害の額と推定される。
イ 被控訴人は、被控訴人が第1グループ被控訴人製品の販売により得た利益額は、マイナス175万4000円であると主張する。しかしながら、被控訴人の主張自体、平成6年度ないし平成10年度において、第2グループ被控訴人製品1の利益率が18ないし24%、同2の利益率が13ないし19%と、毎年、控訴人製品の販売に係るものを大きく上回る利益率で推移しているのに対し、第1グループ控訴人製品の販売に係る利益率は、平成6年度がマイナス7%、平成7年度がマイナス9%と突出してマイナスとなっており、かつ、平成8年度ないし平成10年度においても、3ないし6%と、控訴人製品及び第2グループ被控訴人製品のものに比べて著しく低い利益率となっている。そして、このような利益率を招来すべき特殊事情について、被控訴人は何ら主張立証をしていないから、被控訴人製品の利益率に係る被控訴人の主張は、全体として裏付けを欠き、採用することができない。
ウ 被控訴人は、さらに、金型の減価償却費を上記利益額から控除すべきであると主張する。しかしながら、上記減価償却費算出の基礎となるべき金型の耐用年数は、経済的に使用できる現実の見積年数であって、税法上の償却期間とは異なるところ、被控訴人の主張自体、一方で、金型の減価償却は終わっているとしながら、他方では、第1グループ被控訴人製品の金型を変更して、仕様変更した電路支持材を製造する予定であるというのであるから、上記金型は、現時点においてなお相当の耐用年数を有していることが推認される。また、本件全証拠によっても、被控訴人製品の金型について、減価償却費算出の基礎となるべき上記耐用年数、したがってまた減価償却費の額を確定することはできない。そうすると、不正競争防止法5条1項による逸失利益額の算定上、金型の減価償却費を売上額から控除すべきかどうかはさておき、本件においては、売上額から控除すべき減価償却費の額を確定することができないのであるから、いずれにせよ、被控訴人製品の販売による利益率は、金型の減価償却費に係る被控訴人の主張によって左右されるものではない。
(3) 無形損害 被控訴人は、その主張によれば平成6年以降、第1グループ控訴人製品と形態が実質的に同一である第1グループ被控訴人製品を製造販売するに際し、価格を名目上第1グループ控訴人製品のものと同額に設定し、第1グループ被控訴人製品と実質上同一形態の第1グループ控訴人製品の品番を記載した品番対比表及び注文書用紙を作成して、電設資材卸業者に配布するなどの行為を行った(甲第46号証)。こうした行為は、それ自体が独立の不法行為としての違法性を帯びるとまではいえないとしても、上記のとおり、控訴人は、昭和38年以来、大量の広告宣伝を継続するなどして、パイラック製品及びその一種である第1グループ控訴人製品の圧倒的なシェア、販売数及び売上高を保持し、第1グループ控訴人製品の形態の商品表示性については、その周知性を遅くとも平成6年までには獲得し、現在に至っているものである。これらの事実によれば、控訴人は、第1グループ控訴人製品の製造販売による利益を維持するため、被控訴人の上記行為に対抗して種々の営業上の防衛手段を講ずることを余儀なくされたこと、それにもかかわらず、控訴人の取引先や消費者一般の中には、現実に第1グループ被控訴人製品を第1グループ控訴人製品と混同するなど、混乱を生じた者も少なからず存在することを推認することができる。そうすると、上記の状況により、控訴人は、被控訴人による第1グループ被控訴人製品の製造販売行為により、被控訴人の得た利益相当の損害にとどまらず、信用毀損による無形の損害を被ったと認められるところ、本件における上記認定の諸事情を総合勘案すれば、その損害額は、200万円と認めるのが相当である。
(4) 弁護士費用 控訴人は、本訴提起に当たり、本件訴訟代理人に対し訴訟委任をしたところ、本件事案の内容、訴訟の経緯、請求の認容部分等の諸般の事情に照らせば、被控訴人による第1グループ被控訴人製品に係る不正競争行為と相当因果関係を有する弁護士費用は、200万円と認めるのが相当である。
8 以上のとおり、控訴人の第1グループ被控訴人製品に係る製造、譲渡、引渡し、譲渡又は引渡しのための展示の差止請求は理由があり、同被控訴人製品に係る損害賠償請求は、1459万0093円及び内金671万9396円(平成6年度分ないし平成8年度分の損害額の合計)に対する控訴人主張の平成9年3月4日から、内金787万0697円(平成9年度分及び平成10年度分の損害額並びに無形損害及び弁護士費用損害額の合計)に対する損害が遅滞に陥った平成10年8月31日から支払済みまで民法所定年5分の割合による金員の支払を求める限度において理由があるからいずれも認容し、控訴人のその余の請求は理由がないから棄却すべきである。
よって、原判決を上記のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項64条本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 石原直樹
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