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関連ワード 営業地域 /  商業登記 /  補助参加 /  利益額(利益の額) /  侵害 /  代理人 /  代表者 /  営業誹謗行為(2条1項14号) /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  損害額 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 21248号 不正競争損害賠償請求事件
原告 破産者株式会社日創破産管財人高山満
原告補助参加人 株式会社日創 補助参加人訴訟代理人弁護士 富永赳夫
同 竹之内 明
同 伊達俊二
被告 住友大阪セメント株式会社
被告 スミセ建材株式会社
被告A
被告B
被告C
上記5名訴訟代理人弁護士 苅野浩
同 西舘勇雄
同 高木 権之助
被告D
訴訟代理人弁護士 平松敏則
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/04/24
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告らは,原告に対し,各自金20億2878万0497円及びこれに対する平成11年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
原告は,被告らが共謀の上,補助参加人(以下「日創」という。)の経営を支配して日創を倒産させ,日創の生コン商社としての営業権を奪い取ったことなどが不法行為,不正競争行為に当たると主張して,被告らに対して損害賠償を請求した。
1 前提となる事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より認定できる事実) (1) 当事者等 日創は,昭和51年に設立され,主として東京地区及び隣接県の建設工事現場で使用する生コンクリート(以下「生コン」という場合がある。)等を大手の総合建設会社(以下「ゼネコン」という。)等に販売する商社である。日創は,東京周辺地域では被告住友大阪セメント株式会社(以下「被告住友大阪セメント」という。)のいわゆる系列会社であった。
Eは,その妻であるFと共に日創の株式の大半を保有し(両名が全株式を保有してるかについては争いがある。),長い間,代表取締役として同社を経営していたが,平成11年5月に取締役を辞任した。
被告住友大阪セメントは,セメント等の製造,販売を主たる業務とする会社である。被告スミセ建材株式会社(以下「被告スミセ建材」という。)は,セメントや生コンを販売する商社であって,被告住友大阪セメントの100パーセント子会社である。
被告Aは,平成11年12月まで被告住友大阪セメントの取締役東京支店長,被告Bは,同年6月まで同社の東京支店副支店長の地位にあった。
被告Cは,平成10年12月1日から平成11年7月23日までの間,日創の総務,経理業務を担当した。
被告Dは,Eと共に日創の設立に関与し,平成10年9月30日まではその専務取締役,同年10月1日以降その代表取締役の地位にあったが,平成11年7月5日に代表取締役を解任された。
(2) 本件基本契約締結の経緯 日創は,平成10年1月初旬ころ,同社の受け取っていた約束手形(額面合計約5800万円)が不渡りとなって売掛代金に焦げ付きが生じ,また,このころ,ゼネコンに対する信用不安があったため,生コンの代金として受領した約束手形の割引が得られなくなり,資金繰りに窮し,生コンを仕入れられない状態となった。
平成10年2月ころ,当時日創の代表取締役であったEと専務取締役であった被告Dは,被告住友大阪セメント東京支社を訪れ,日創の資金繰り及び仕入の確保等について協力を要請した。被告住友大阪セメントは,被告A及び被告Bに上記の件を担当させることにし,訴外ミユキリサーチサービス株式会社に日創の資産内容を調査させるなどした。
平成10年8月ころ,被告A及び被告Bは,日創の資金繰りを改善するために,被告スミセ建材が生コンを卸協同組合等から仕入れ,日創が被告スミセ建材から生コン等を仕入れてゼネコン等に販売する方式,すなわち,日創が被告スミセ建材の「二次店」あるいは「下店」にする方式に切り替えることなどを提案した。
平成10年10月1日,被告住友大阪セメントの意向を受けて,被告Dが日創の代表取締役社長に就任して,再建を担当することになり,Eは日創の代表取締役会長となった。被告Dと被告スミセ建材は,同年11月,生コンの仕入先である各組合等に対し,同年12月1日をもって取扱商品の仕入業務を被告スミセ建材に一本化することなどを連絡し,同日以降,被告スミセ建材が,日創に代わって各組合等からの仕入れを行った。また,日創は,同年11月30日,営業の拠点を,被告スミセ建材の本店所在地に移し,被告Cは,同年12月1日付けで,被告スミセ建材から日創に出向して,日創の総務,経理業務を担当した。
被告スミセ建材,日創,E及び被告Dは,同年12月28日,被告住友大阪セメントを立会人として,日創の役員報酬の削減,不良資産の処分,担保の差替え,銀行取引印の保管その他に関して,同年11月30日付けの確認書(以下「本件確認書」という。)を作成した。また,被告スミセ建材,日創,被告D,E,F,G及び被告住友大阪セメントは,同じく同年12月28日に,被告スミセ建材が日創にセメント及び生コンクリートその他を卸売りし,日創はこれを買い受けることなどを内容とする,同月1日付け取引基本契約書(以下「本件基本契約書」という。)を作成した(以下本件確認書及び本件基本契約書における合意内容を「本件基本契約」という。)。
(3) 本件基本契約の解消 平成11年1月6日,被告A及び被告Bは,本件基本契約の趣旨に反して,Eが日創の銀行取引印を同被告らに引き渡さないため,日創の銀行取引印を直ちに引き渡すよう求めた。Eは,同月18日,被告D及び当時の日創の取締役Hから日創の経営方針に関しての誓約書を作成させた上,銀行取引印を被告Dに交付した。
Eは,平成11年2月から5月に掛けて,日創が金融機関に対して負っていた債務に関するEの連帯保証契約の解除を求め,同契約は解除された。
日創の商業登記簿には,同年5月31日,Eが日創の取締役を辞任し,同年6月5日,訴外Iが日創の代表取締役に就任した旨の,また,同月5日は,被告Dが日創の代表取締役を解任された旨の記載がある。
被告スミセ建材は,同年7月21日付文書により,日創に対し,本件基本契約を将来に向かって解除する旨を通知し,被告Cは,Iに約束手形,定期預金通帳等を返還した。
(4) 破産宣告 日創は,被告スミセ建材に振り出した約束手形について,支払資金を準備することができず,平成11年8月2日,第1回の手形不渡りを出した。
被告スミセ建材の代表者らは,同月3日,日創の取引先であるゼネコン各社を回り,日創が手形の不渡りを出したことなどの説明をし,当時日創の取締役だった被告Dも,これに同行した。
被告スミセ建材は,同月9日,日創の破産を申し立てた。日創は,同月末,2回目の手形の不渡りを出し,平成12年2月4日,破産宣告を受けた。日創に対する実質的な破産債権者は被告スミセ建材1社であり,その届出債権額は27億0909万3621円であった。
(5) 日創の利益等 日創の平成5年10月1日から平成10年9月30日までの5年間の粗利益の合計額は,19億7964万7104円であり,平成10年9月期決算の時点では,日創の年商は120億円を超えていた。
2 争点及び当事者の主張 (1) 不法行為の成否(その1-背任による利益の不正取得) (原告及び補助参加人の主張) ア 以下のとおりの事実を総合すると,被告らは,日創の経営を平成10年9月30日までと同様の状態で維持し,3年ないし5年後には,優良会社にして元に戻すべき義務を負ったにもかかわらず,これに違反して日創の利益率を大幅に低下させ,その利益分を日創の競争会社である被告スミセ建材に移し替え,日創に損害を与えた。
被告住友大阪セメント及び被告スミセ建材両社(以下「被告両社」という。),被告A,被告B,被告D及び被告Cの上記行為は不法行為を構成する。
イ 被告らの作為義務等の根拠 被告らは,10年12月ころまでに,日創の資金繰りに協力する名目で,日創を被告両社の傘下に入れた。被告両社が,日創を傘下に入れたのは,本来,日創の経営に協力するためであり,3年ないし5年で優良会社にして元に戻すことを予定していたのであるから,被告らは,当時の日創の代表取締役であるEと協議しながら営業活動を行い,日創の経営状態を平成10年9月30日までと同様の水準で維持する義務を負担していた。
この点は,以下の経緯から明らかである。
(ア) 平成10年8月下旬,被告A及び被告Bは,日創を被告スミセ建材の二次店とすることを提案する際に,その措置は暫定的なものであり,短ければ3年,長くとも5年で,日創の現状の利益の中から不良資産をなくすことが目的であり,決して日創の経営権を奪ったり,日創を潰したりはしない旨を説明した。
(イ) 同年9月,被告Bは,被告Dを通じ,日創に対し,資金繰りの面倒を見るので受取手形を全部持参するよう要求し,被告両社が全面的な支援態勢を採ることを明らかにした。
(ウ) 同月末,日創を代表するE及び被告Dと,被告両社を代表する被告A及び被告Bとは,口頭で業務提携契約を締結した。同契約の内容は以下のとおりである。
a 被告両社は,日創の不良資産を解消するため,早ければ3年,遅くとも5年,経営協力及び資金協力を行い,そのために,日創は被告スミセ建材の二次店となること,これは,日創の不良資産が解消し,銀行の貸し渋りがなくなるまでの暫定的な措置であり,その後は,日創を優良会社にし元の状態に戻すこと b 日創の代表取締役社長を被告Dとすること c 日創は,被告スミセ建材から生コンを仕入れ,ゼネコン等建設会社に小売販売すること d 日創は,東京生コンクリート卸協同組合を脱退し,組合における販売シェアを,業務提携期間の間,被告スミセ建材に無償で移転すること,日創は,各組合等に差し入れている担保を,被告スミセ建材に移転すること e 被告スミセ建材は,東京生コンクリート卸協同組合より毎月受領する共同販売口銭のうち,日創のシェアに見合う分を日創に支払い,日創はこれを取引保証金として被告スミセ建材に積み立てること f 被告スミセ建材は,日創の同被告に対する卸売代金の支払を,各ゼネコンから生コン売買代金として交付された約束手形に裏書きしたもので行うことに応じ,卸売代金の支払については資金協力をすること g 日創は,営業部門を,被告スミセ建材と同じ事業所内に移し,被告スミセ建材は日創の総務及び経理を統括するため,総務部長を日創に派遣すること h 被告両社は,日創が従来出荷数に応じて得ていた利益はそのまま保証し,利益を維持しつつ不良資産を解消すること i 日創が金融機関や取引先等に負っている債務についてのEの個人保証はすべて解除すること ウ 不法行為の具体的内容 ところが,被告らは,前記業務提携契約の趣旨に反して,共謀の上,日創の経営を支配し,故意に利益操作を行って日創の粗利益率を大幅に低下させ,日創の利益分を被告スミセ建材に移し変えて,日創に損害を与えた。そして,被告らは,利益の領得が発覚することを防ぐため,営業内容や経理内容をEに報告をせず,これを隠蔽した。
被告らの不法行為の具体的内容は,以下のとおりである。
(ア) 被告D及び被告スミセ建材は,Eに何の相談もせず,生コンの仕入先である各組合に対し,平成10年12月1日をもって取扱商品の仕入業務を被告スミセ建材に一本化することなどを連絡した。
(イ) その後,Eが,被告Dに金融機関等に対する連帯保証人の交替を要請したところ,被告Dはこれを渋り,Eが保証人の交替が社長交替の条件であったことを指摘したところ,被告DはEを避けるようになり,被告両社,被告A及び被告Bの指示に基づいて,日創の経営を行うようになった。
(ウ) 日創の経理帳簿については,被告スミセ建材から日創に派遣された被告Cが管理し,日創の事務所使用に関する契約書等も,Eの了解なく,被告らが勝手に日創の銀行印を使用して作成した。
(エ) 平成11年1月に,Eが被告Dらに誓約書を作成させた上で,銀行取引印を交付した後は,被告Dは,Eと顔を合わせようとせず,業務報告も行わず,経理を被告Cにまかせるようになった。
(オ) Eは,被告Dに対し,日創の利益率を平成10年9月30日以前の水準から下げないよう厳しく忠告指導した。しかし,被告らは,経理関係の報告を求められてもこれに応じず,日創の損失を隠蔽した。日創の代表者に選任されたIが,経理関係書類の開示や手形類の引渡しを求めたが,被告D,被告Cはこれを無視した。
(カ) 平成11年7月,被告Dらは,手形を不法に領得するなどの目的で,郵便局や取引先に対し,日創宛の郵便物や手形を被告スミセ建材内所在の日創の事務所に送付するよう求めた。
(被告らの認否,反論) ア 原告及び補助参加人(以下「原告ら」という。)の主張のア,イ記載部分は否認する。
(ア) 日創の再建は,日創自身が行うべきことであって,日創の利益率を従前同様に保つ,あるいは3ないし5年後に日創を元の状態にして戻す等の約束は存しない。被告らがこのような義務に違反したとの主張は,前提を欠くので,主張自体失当である。
(イ) 生コン取引においては,経験を積んだ営業社員の存在が極めて重要であるが,日創においては,平成10年1月から3月までの間に,ベテランの営業社員3名が,Eと折り合いを欠くことを理由に退社した。このことが理由となって,日創の信用は急速に悪化し,生コン販売商社からの生コンの仕入れが不可能な状態となった。また,当時日創は債務超過状態であり,平成9年9月期,平成10年9月期と連続して経常損失を計上していた。
そこで,被告らは,日創の資金調達手段を活用しつつ,信用不安のために行き詰まっている日創の生コンの仕入れ及び日創の資金繰りの問題を解決するための方策として,日創を,被告スミセ建材の下店とし,同被告から生コン,セメント,建材のすべてを仕入れる方式を提案した。
(ウ) 本件基本契約書及び本件確認書については,平成10年12月28日に調印されるまでの間,内容についての協議が重ねられており,これらに記載のない内容について,同年9月に口頭で業務提携契約が成立した事実はない。
イ 原告らの主張のウ記載部分は否認する。
被告DがEを避けた事実はない。被告Dが日創の経営に関して報告をしようとしても,Eがこれを避けるようになった。またEは,被告D及び被告Cに対し,日創の経理内容を,当時他社に在籍していたIに説明するよう指示した。そこで,被告Cは,平成11年1月から4月に掛けてIにこれを説明したが,同年5月以降はIがこれを拒絶したため,Iにファクシミリを送信した。
(2) 不法行為の成否(その2-倒産による営業権奪取行為) (原告らの主張) ア 以下のとおりの事実を総合すると,被告らは,日創の取引先を被告スミセ建材に移転する目的で,日創を故意に倒産させて,その営業権を奪った。被告らの上記行為は不法行為を構成する。
イ 不法行為の具体的内容 被告らは,共謀の上,日創の生コン商社としての営業権を奪い取るために,経営協力の名の下に日創との間で本件基本契約を締結し,平成10年10月1日から平成11年7月30日までの間,日創の経営を支配し,経理帳簿等を秘匿した上で債権者申立てによる破産手続を準備し,同年8月4日,被告スミセ建材において保有していた日創振出しの手形を取立てに回すことで手形を不渡りにさせ,日創を破産に追い込むことによって日創の営業権を喪失させ,その取引先を被告スミセ建材に不正に移転し,日創に損害を与えた。
被告らの不法行為の具体的内容は,以下のとおりである。
(ア) 被告らは,日創の資金繰りに協力すると見せかけて,各生コン卸協同組合に対する日創のシェアを被告スミセ建材に移転させた。
(イ) 被告らは,被告Dらを,被告スミセ建材内に移転した日創の事務所内で執務させることにより,日創の営業を支配した。
(ウ) 被告らは,日創に経営不安のあった会社との取引をさせることで,日創の利益率を低下させ,日創の資金繰りを悪化させた。
(エ) 被告らは,Eらに被告らの行為を察知されないよう,Eらに営業報告をせず,E及びIに対して,手形決済日の直前になっても,経理内容を知らせなかった。
(オ) 被告らは,経理関係書類を複写するなどして日創に対する破産申立てを準備した上,手形決済日の直前である平成11年7月21日付で,本件基本契約を解除する旨を日創に通知し,同月23日付で,被告D外1名は日創の取締役を辞任する旨を通知したが,約束手形や会計帳簿等の返還を引き延ばした。
(カ) 被告スミセ建材は,日創の資金繰りに協力すべき義務を負っているにもかかわらず,日創からの約束手形の書換えの要請を拒んで約束手形を取立てに回し,同年8月2日,手形の不渡りを生じさせた。前記各約束手形は,被告Dが代表取締役就任後,日創が被告スミセ建材の建物内で営業を行っていた時期に振り出され,被告Cが管理していたものである。
(キ) 被告スミセ建材の代表者らは,前記不渡の翌日,日創の取引先であるゼネコン各社を回り,日創が手形の不渡りを出し,今後は被告スミセ建材が日創に代わって生コンを納入するので,被告スミセ建材と取り引きするよう要請するとともに,日創は倒産したため,日創に対する支払は停止するよう触れ回った。また被告Dもこれに同行し,日創の取締役の名刺を示して,取引先の移転等が日創の意向であるかのような誤解を与えるような行動をした。その結果,ゼネコン各社は,従前の取引を被告スミセ建材に移した。
(ク) 被告らは,日創を破産に追い込むため,未だ2回目の不渡りが出ていないにもかかわらず,同年8月9日,被告スミセ建材の名で日創の破産を申し立て,ゼネコン各社に同申立ての事実を触れ回った。
ウ 日創の営業権の内容 日創等の生コン商社は,各営業地域の生コンクリート卸協同組合に組合員として加入するか,生コンクリート協同組合の登録業者となって生コンを仕入れ,建設会社に販売する。生コンの卸販売価格は,独禁法による合法的な価格カルテルが結ばれており,小売価格が卸売価格を下回る場合も存するが,その場合には,生コン製造業者から,地下水と呼ばれる調整金が支払われた。また,東京生コンクリート卸協同組合おいては,同組合から,過去の出荷シェアに応じ,1立米当たり350円の共同販売口銭が支払われた。このシェアは過去の実績で決められており,ほとんど変動せず,東京生コンクリート卸協同組合での日創のシェアは約3パーセントであった。また,生コン販売業界においては,単純に卸価格と小売価格との差益が利益となるのではなく,売上やシェアに応じたリベートや口銭等の複雑な入金システムが存在し,生コンを販売すれば,日創は1立米当たり300円から400円の粗利益を得るよう調整されていた。このように生コン販売業界においては,一旦確保した販売シェアが利益を生み出す構造となっており,シェアそのものが利権としての営業権を構成していた。
当時,日創は,取引先が確保できる限り,確実に利益が得られる状況であった。前記のとおり,被告らは,日創を破産させることによって日創の営業権を喪失させ,その取引先を被告スミセ建材に不正に移転し,日創に損害を与えた。
(被告らの認否,反論) ア 原告らの主張のア,イ記載部分は否認する。日創が倒産したのは,被告らの行為が原因ではなく,日創の内在的な原因,Eの放漫経営等によるものである。
(ア) 日創は,ベテラン営業社員の退社によって,その営業力は低下しており,被告スミセ建材の「下店」とすることによっても回復することができなかった。Eは,むしろ,このことを察知して,平成11年2月以降,取引銀行に対し,Eの個人保証の解除を求めた。その結果,日創は取引銀行の信用を低下させた。
(イ) Eは,取締役会を開催することなく,Iを日創の代表者に就任させ,被告Dが日創の代表取締役を解任された旨の登記を行った。Iは,平成11年6月下旬,被告Cの職責であった受取手形の回収権限を同人から奪って,自らこれを実施しようとし,被告スミセ建材に対する対決姿勢を明白にした。被告スミセ建材は,平成11年7月21日付け内容証明郵便により,日創が本件基本契約に違反したことを理由に,同契約を解除する旨の意思表示をした。
(ウ) 日創は,平成11年8月2日,被告スミセ建材に対して振り出した約束手形合計7通額面合計4億2612万9084円を不渡りとして,被告スミセ建材に対する生コン代金の支払を停止した。被告スミセ建材は,支払停止金額が高額であって,再建は不可能であると判断し,日創との個別の取引契約についても解除した上,破産の申立てを行った。
イ 原告らの主張のウ記載部分は否認する。
一般に,生コン販売商社の営業は薄利多売で,営業社員の営業活動いかんにかかっているのであり,決して安定した経営といえるものではない。日創に,利権性を有する営業権なるものは存在しない。
(3) 不正競争行為の有無 (原告らの主張) 被告らは,日創の経理を操作して利益率を下げさせ,手形の不渡りを出させた上で破産申立てを行いながら,各取引先に対し,日創がすぐに破産宣告を受けるかのような虚偽事実を告知し,売掛金の回収を困難にした。被告らの上記行為は,不正競争防止法2条1項14号に該当する。
(被告らの認否,反論) ア 原告らの主張は否認する。
イ 被告スミセ建材は,平成11年7月21日に本件基本契約を解除し,同年8月2日に日創が被告スミセ建材に対して振り出した約束手形を不渡りとした後,個別の取引契約についても解除した。また各ゼネコンも,日創の支払停止を理由に,日創との個別契約を解除した。被告Dは,Iに対し,生コンを納入できなくなったことをゼネコンに説明し,対応策を採るよう進言したが,Iはこれを無視した。そこで,被告スミセ建材の代表者らは,各ゼネコンに対し,日創が被告スミセ建材から仕入れて納入する生コンについては,被告スミセ建材が代わって納入できる旨を申し出た。
なお,ゼネコンのうち熊谷組外2社からは,現場の混乱を避けるため,従来どおり日創経由の生コンを納品するよう要請された。被告スミセ建材はこれに応じた。
(4) 損害額について (原告,原告補助参加人の主張) ア 背任による不法行為に基づく損害 日創は,平成10年9月30日までは,仕入高に対し最低2.65パーセントの粗利益を得ていた。ところが,被告らが日創の経営を掌握した平成10年10月1日から,経理書類を日創に返還した平成11年7月30日までの期間,日創の仕入高に対する粗利益率は0.82パーセント(仕入高69億8745万8900円に対する粗利益5740万9768円)に止まった。
被告らは,背任の不法行為によって,日創の利益額を低下させ,その分を被告スミセ建材に利得させた。その損害の額は,仕入高69億8745万8900円に利益率の低下分1.83パーセントを乗じた1億2787万0497円である。
イ 倒産による営業権奪取行為に基づく損害 日創は,企業評価でいう「確定独占企業」に該当し,その将来の収益の継続期間は7年間と見るのが相当である。
日創の1事業年度の平均の粗利益は約3億9592万9000円であり,これに7年の継続年数を乗じた27億7150万3000円が,簡便な年買法による日創の営業権の評価額である。また収益還元法により日創の企業評価をした場合は,21億3771万7000円となる。 したがって,被告らの不法行為によって,日創が失った営業権相当の損害額は19億円を下ることはない。
ウ よって,原告は,被告ら各自に対し,上記アの背任による不法行為に基づく損害賠償1億2787万0497円,及び倒産による営業権奪取行為に基づく損害賠償19億円の合計20億2787万0497円及び不法行為以降の日である平成11年11月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告らの認否,反論) 損害に関する主張はすべて否認する。
粗利益率の下落が損害であるとの原告らの主張は,根拠がなく,失当である。
日創の平成5年10月1日から平成10年9月30日までの5年間の財務状況によれば,経常利益の合計はマイナスであり,当期利益もマイナスである。また,調査結果によれば,日創には約5億円の含み損があった。
営業権を5年間の粗利益の総額により算定する原告らの主張は,経費,損失を考慮していない点等において根拠がなく,失当である。
争点に対する判断
1 事実認定 原告らは,@被告らは,日創の経営を平成10年9月30日までと同様の状態で維持し,3年ないし5年後には,優良会社にして元に戻すべきであったにもかかわらず,これに違反して日創の利益率を大幅に低下させ,その利益分を日創の競争会社である被告スミセ建材に移し替え,日創に損害を与えたこと,A被告らは,日創の取引先を被告スミセ建材に移転する目的で,日創を故意に倒産させて,その営業権を奪ったこと,B被告らは,計画的に日創に手形の不渡りを出させた上で破産申立てを行いながら,各取引先に対し,日創がすぐに破産宣告を受けるかのような虚偽の事実を告知したことが,不法行為を構成すると主張する。
以下,これらの主張事実の存否について,一括して検討する。
前記争いのない事実,証拠(甲1ないし34,39,40,55ないし58,乙1,4ないし18,丙4,5,証人E,被告A,被告B,被告D。書証の枝番号の表記は省略する。後記排斥する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定することができ,これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 日創の業務内容等 ア 日創は,Eや被告Dらが昭和51年に設立した,主に工事現場で使用する生コンを大手のゼネコン等に販売する商社であり,昭和55年に被告住友大阪セメントとの間でセメントの売買取引に関して,基本契約を締結した。以降,日創は,東京生コンクリート卸協同組合に対する買掛金債務を同被告の子会社に保証してもらう関係が生じたことから,同被告の系列に属する販売店に位置付けられるようになった。
イ 日創が販売する生コンの仕入方法としては,平成10年以前は,以下の方法があった。すなわち, @ 他の生コン販売店らと構成する東京生コンクリート卸協同組合を通じて,生コン製造会社らが構成する東京生コン協同組合から仕入れる方法 A 生コン製造会社らが構成する各地区の生コン協同組合から仕入れる方法 B 同業の生コン商社等,他の生コン販売店から仕入れる方法 C 生コン協同組合に加入していない生コン製造会社から仕入れる方法があった。
ところが,平成10年1月以降,建設業界の不況により生コンの販売店の信用力が低下したため,東京生コンクリート卸協同組合では,生コンの販売先を大手の生コン販売商社のみとし,大手の生コン販売商社がゼネコンに生コンを販売するという共同販売方式を採用することになった。この方式においては,日創などの生コン販売店は,東京生コンクリート卸協同組合から生コンを仕入れることはできないが,実際には生コンの取引をしなくとも,同組合におけるシェアに応じた「通り口銭」の支払を受けることができ,また,大手の生コン販売商社から生コンを購入することも可能であった。
生コン仕入代金については,日創が振り出した約束手形によって支払うという与信の方法が利用されたが,前記@の場合,日創は,被告住友大阪セメントの子会社であるエスオーシー保証有限会社に,ゴルフ会員権等を含む担保を差し入れ,日創の東京生コンクリート卸協同組合に対する買掛金債務について,同社の保証を得ることによって生コンを仕入れた。上記担保額は,与信枠の20パーセントであった。同社が日創に提供する与信枠は約20億円であった。また,前記Aの場合,日創は,各地の生コン協同組合に与信枠の3割に相当する保証金を差し入れ,さらに生コン製造会社の保証を得ることによって,生コンを仕入れた。この方法による与信枠の合計は約10億円であった。なお前記B及びCの方法については,前記@及びAの方法のような保証金や与信枠の制度がない反面,仕入れの可否については,日創の信用に依存していた。
ウ 決算報告書によれば,日創は,平成6年9月期から同10年9月期(平成5年10月1日から平成10年9月30日)までの間,各期の売上高として141億4735万円(千円の位を四捨五入,以下同じ。),157億5402万円,151億円8671万円,141億5357万円,121億2985万円を得ており,平成9年から平成10年に掛けての東京生コンクリート卸協同組合における出荷実績でも,おおむね上位10位以内にいることが多く,東京地区における住友系列の販売店の中では,最上位に位置付けられていた。
他方,日創等の生コン販売店が,東京生コンクリート卸協同組合その他から仕入れた生コンをゼネコンに販売する場合,仕入価格以下の価格で販売する,いわゆる逆ざやの状態になることが少なくなかった。この場合,生コン製造会社から販売手数料等の名目で「地下水」と称する金員の返戻を受けたり,東京生コンクリート卸協同組合から共同販売口銭の支払を受けることによって調整していた。もっとも「地下水」が支払われるか否かは事後の交渉次第であり,必ず支払われるとの保証があるわけではなかった。特に,平成6年以降は,トラックの過積載規制が厳しくなった影響で生コンの原材料価格が上昇し,生コン製造会社に「地下水」を出す余裕がなくなった。
日創は,受注を確保する目的で,ゼネコンから不動産やゴルフ会員権を購入するということを行ったが,これらの購入に当てた資金等により,経営を圧迫していた。
日創の利益については,平成6年9月期から同10年9月期まで間,各期の営業利益は,それぞれ4863万円,3481万円,3122万円,2855万円,3400万円にとどまり,営業外費用を控除した経常収支は,平成6年9月期から同8年9月期までは,それぞれ127万円,192万円,1409万円であったが,平成9年9月期と同10年9月期にはそれぞれ1967万円と183万円の損失を計上し,平成9年9月期は,貸倒引当金2500万円の戻入によって当期利益51万円を計上したが,平成10年9月期には当期損失2989万円を計上するなど,その業績は悪化する傾向にあった。
(2) 日創の財務状況 ア 平成9年7月ころから,一部ゼネコンの倒産等によって,建設業界及び生コンリート業界に対する与信不安が生じ,同年12月ころから,日創がその主要な取引先である熊谷組,佐藤工業,飛島建設等の大手ゼネコンから受領した約束手形について,銀行がその割引を制限したり,あるいは拒否するようになった。日創は,ゼネコンからの受取手形の割引を拒否されたために,支払資金に不足を来すようになった。
また,平成10年1月初旬には,日創がセメントの販売先から売掛金の支払のために受け取った約束手形額面合計約5800万円が不渡りとなったこと,同年2月ころ,日創のベテラン営業社員3名が相次いで退職したことなどから,同業者における日創の信用が低下し,前記(1)イのB及びCの方法によって,他の生コン販売店等から生コンを仕入れることも困難となった。
日創は,生コン製造会社に対して,前記「地下水」の支払を繰り上げるよう求めたり,被告住友大阪セメントの子会社である保証会社に差し入れた与信取引のための担保の取り崩しを求めたり,被告スミセ建材に対し,同被告に振り出した約束手形の決済資金が不足しため,その手形を,日創が所持する受取手形のうち,銀行に割引を拒まれた約束手形と差し替えるよう求めたりした。
イ 日創の専務取締役であった被告Dは,このままでは日創は倒産すると考え,平成10年2月ころ,代表取締役社長であったEと協議の上,被告住友大阪セメントに対し,日創の資金繰りと生コンの仕入れについての協力を求めた。
被告住友大阪セメントは,同被告及び被告スミセ建材が日創に対し売掛代金債権を有しており,子会社が日創の債務保証をしていることから,日創が倒産すると,全体で20億円程度の損失を蒙ることを危惧し,これを回避するためには,抜本的な対策を検討する必要があると判断し,日創の資金収支,資産及び債務の現況調査を行うことを申し出た。Eらはこれを承諾し,これに基づいて,調査会社が日創の資産内容を調査し,同年4月付けで「株式会社日創に関する調査報告書」を取りまとめた。
同報告書によれば,日創は,調査時点で57億3399万円の負債があり,時価51億4095万円の資産があることから,5億9304万円の含み損を有するとされた(なお,関連会社を含むグループ全体としても5億5483万円の含み損があるとされた。)。また,約束手形の支払期日の到来等を考慮し,平成10年4月以降の日創の資金繰表を作成したところ,同年9月には資金が払底すると判断された。
被告住友大阪セメントは,前記調査報告により日創が債務超過とされたことから,日創を同被告の子会社とする方法を選択できず,日創を同被告の特約販売店の下店とする方法,あるいは日創を同被告の特約販売店である住友石炭鉱業株式会社の子会社とする方法などを検討したが,いずれも実現するには至らなかった。
(3) 本件基本契約の締結 ア 前記のとおり,東京生コンクリート卸協同組合において共同販売方式が採用されたため,日創は,同組合から直接生コンを仕入れることができず,同組合に加盟している大手販売商社から仕入れなければならなくなった。ところが,日創は,信用力が低下し,大手商社が日創との取引を避け,また,他の中小の生コン販売店や生コン製造業者も日創への販売を避けるようになったため,日創が仕入れることのできる生コンの量は激減し,日創は存続が危ぶまれる状況になった。
そこで,被告Aと被告Bは,同年8月下旬,Eと被告Dに対し,日創が,生コンの仕入れに困難を来していることを解消して,再建を図るため,日創が生コン卸協同組合等から仕入れた生コンをゼネコン等に販売する従来の方式を改め,被告スミセ建材が組合等から生コンを仕入れた生コンをゼネコン等に販売する下店(二次店)方式を提案した。この方式にすると,日創は,被告スミセ建材に対し多額の売掛代金債務を負担することになることから,被告AらはEらに対し,被告住友大阪セメント側が日創に協力するためには,@日創の経営体質の改善を図ること,A被告スミセ建材からの出向者により経理面の管理をすること,B不良資産の償却による資金運用の効率化を図ること,C経営責任の観点から,Eが社長を退任し,被告Dが社長に就任すること等の条件を充たすことが必要である旨を伝えた。Eは,被告Aらの上記の社長交代の提案に対して強く反対し,このような提案をした被告Aらに不信感を抱いたが,結局,上記提案を受け入れた。
日創は,前記下店方式によって日創の再建を進めることを基本的に了承し,平成10年10月1日に,被告Dが日創の代表取締役に就任して同社の社長となり,Eは代表権のある会長となった。また,同年11月には,日創と被告スミセ建材との連名で,取引先に対し,営業強化及び事務の効率化を目的として,同年12月1日をもって業務提携契約を締結することを知らせると共に,取扱商品の仕入業務を被告スミセ建材に集約,一本化するので,同日以降は,既契約物件も含め,売上先を被告スミセ建材に変更するよう求める旨の挨拶状を送付した。そして,同年11月30日には,日創の営業の拠点を,登記簿上の本店所在地(東京都千代田区〈以下略〉)から,被告スミセ建材の本店所在地(東京都千代田区〈以下略〉)に移転し,同年12月1日以降,被告スミセ建材が,日創に代わって生コン卸協同組合等からの仕入れを行った。また,被告Cが被告スミセ建材から日創に出向して,日創の経理業務等を担当した。
イ 被告住友大阪セメントは,平成10年11月,本件基本契約書及び本件確認書の原案をEに送付した。Eは,同月から同年12月に掛けて,被告住友大阪セメント東京支店を訪れ,本件基本契約書及び本件確認書の内容について,被告A及び被告Bと協議を重ねた。協議において,Eは,被告Dが社長になったことに対する不満,取締役報酬の削減に対する不満,株主権の行使制限に対する不満,日創の印鑑の取扱い及び取締役会の招集方法その他に対する不満を述べ,さらに,日創の債務に対してEが負担した個人保証を解除し,個人資産に対する担保権設定を解除するよう繰り返し求めた。これに対し被告Aらは,Eの株主としての地位を維持しつつ,個人保証を解除することについては,金融機関の理解が得られないことなどを説明した(なお,甲55ないし58,乙11ないし14は,Eと被告Aらとの協議の録音反訳文である。録音には不鮮明な部分が多く,反訳文も相違するところがあるが,反訳文の一致する範囲において,前記内容を認定することができる。)。
前記協議を重ねた結果,被告住友大阪セメント,被告スミセ建材側と,日創,E側は,同年12月下旬,本件基本契約書及び本件確認書を作成したが,既に日創の営業の拠点が被告スミセ建材の本店所在地に移転し,被告スミセ建材を介する生コンの仕入れも始まっていたことから,その作成日について,本件確認書は同年11月30日付け,本件基本契約書は同年12月1日付けとした。
ウ 本件確認書は,形式上,被告スミセ建材,日創,E,被告Dが当事者であり,被告住友大阪セメントが立会人である。本件確認書において,日創がその取扱商品であるセメント,固化材及び生コン等の仕入先を被告スミセ建材に一本化して資金繰り面の協力を依頼するに当たり,以下の事項が合意された。
(ア) Eの日創における役員報酬を年間1200万円に削減すること,取締役であるJ(Eの長男)及び監査役であるF(Eの妻)は平成10年12月に辞任すること,日創は,Fに退職慰労金を支払うこととし,これを同人に対する貸付金と相殺すること,日創は,平成11年7月分以降のEの住居費用を負担しないこと,セメント輸送業務及びその要員は関連会社に移管し,日創については,代表取締役以下13名の必要最小限の人員配置をすること,不要資産の処分を行い,維持経費の削減を図ること。
(イ) 被告Dは,日創の被告スミセ建材に対する債務を連帯して保証すること,日創は,エスオーシー保証有限会社及び各協同組合に差し入れている担保の返還を受け,日創の被告スミセ建材に対する債務の担保として被告スミセ建材にこれを差し入れること,日創は,東京生コンクリート卸協同組合を脱退し,日創の有する共同販売シェアを被告スミセ建材に無償で譲渡すること,被告スミセ建材は,東京生コンクリート卸協同組合より受領する共同販売口銭のうち,日創のシェアに見合う分を日創に販売手数料として支払い,日創は,これを取引保証金として被告スミセ建材に積み立てること。
(ウ) 日創は,毎期,期間利益の範囲内で不良資産の処分を行うこと,日創は,関連会社に対する平成10年9月30日時点の未収入金を目的とする消費貸借契約を締結し,返済計画を明確にすること,関連会社間の債権債務の不一致については適正な会計処理を施すこと。
(エ) 被告Dは,平成10年12月1日以降,日創の銀行取引印を保管すること,日創の代表社印は,日創の長期借入金の返済完了まではEが管理し,日創の代表者印を必要とする契約行為等がある場合,Eは被告スミセ建材と事前に協議すること,日創の取締役会はEが招集すること,被告スミセ建材は日創に監査役を派遣し,日創は,被告スミセ建材が派遣する出向者を総務部長として受け入れ,日創の経理,総務に関する業務を担当させること。
エ 本件基本契約書は,形式上,被告スミセ建材,日創,被告D,E,F,G及び被告住友大阪セメント(本項において「契約当事者」という。)が当事者であり,被告Dは日創の連帯保証人兼株主として,E,F及びGは日創の株主としてその作成に関与した。本件基本契約書において,要旨以下の事項が合意された。
(ア) 被告スミセ建材は,日創に,セメント,生コンその他の取扱商品を卸し売りする。
(イ) 日創は,前記売買代金を,現金,日創が発行した約束手形又は日創の取引先が発行し日創が裏書きした約束手形で支払う。
(ウ) 日創が,差押を受けたり,破産申立を受けたりする等,所定の事由に該当する場合,被告スミセ建材は,日創に対する通知,催告なしに,本契約及び個別の売買契約を解除し,日創の被告スミセ建材に対するすべての債務について期限の利益を失わせることができる。
(エ) 被告D,E,F及びGは,日創に対する株主権の行使について,被告スミセ建材及び被告住友大阪セメントと協議する。
(オ) 被告D,E,F及びGは,その保有する日創の株式を,被告スミセ建材の承諾なしに第三者に譲渡しない。
(カ) 日創は,日創の販売先及び取引限度額を含む取引条件などについて,被告スミセ建材及び被告住友大阪セメントと相談の上,決定する。
(キ) 契約当事者は,本契約の内容及び本契約の係わる一切を秘密として守り,第三者に開示しない。
(ク) 被告D,E,F又はGが上記(エ)ないし(キ)のいずれかに違背したときは,被告スミセ建材は,日創に対する通知,催告なしに,本契約及び個別売買契約を解除し,日創の被告スミセ建材に対するすべての債務について期限の利益を失わせることができる。
(ケ) 被告スミセ建材が日創に対し債務を負担しているときは,被告スミセ建材は,本契約による債権の弁済期の到来すると否とを問わず,当該債権と被告スミセ建材の日創に対する債務とを対当額で相殺することができる。
(コ) 日創が,合併,営業譲渡その他企業としての重大な変更をしようとする場合には,あらかじめ被告スミセ建材に通知する。
(サ) 日創は,被告スミセ建材より要求を受けたときは何時にても,経理内容及び営業状況等に関する報告書を提出する。
(シ) 被告Dは,日創が被告スミセ建材に対し現に負担し,又は将来負担する一切の債務につき,日創と連帯してその支払の責めに任ずる。
(ス) 本契約の有効期間は,締結の日から1年間とする。ただし,有効期間満了の日の1か月前までに,契約当事者のいずれからも解約又は改訂に関する文書による意思表示がないときは,さらに1年間延長され,以後も同様とする。
(4) 本件基本契約締結後の状況 ア 本件基本契約に基づいて,被告スミセ建材は,東京生コンクリート卸協同組合における日創の販売シェア分を承継し,日創は,被告スミセ建材の下店として生コンを仕入れ,ゼネコン等に対する販売を行った。しかし,Eは,本件基本契約が合意されたにもかかわらず,日創の銀行取引印を被告Dに交付しようとしなかったので,被告A及び被告Bは,平成11年1月6日,Eに対し,日創の銀行取引印を被告Dに渡すよう求めた。
これに対しEは,被告D及び当時の日創の取締役Hに対し,Eに対する誓約書と題する書面に署名,押印すれば,引き渡しに応ずると回答した。同誓約書は,日創の経営方針については常にEに相談し,同人の意向を最優先すること,被告スミセ建材及び被告住友大阪セメント等からの日創に対する要求事項については,常にEに相談し判断を仰ぐこと,被告スミセ建材からの派遣社員及び監査役に対し,手形,小切手,預貯金通帳,銀行取引印等,日創の重要な資産を預けないこと,日創の経理内容,業務内容については,Eに常に正確に報告すること,日創に対する忠実義務等を守り,相手方が被告スミセ建材等であっても,日創の利益に反する行為はしないこと,銀行印の使用は事前にEの承諾を得ること,日創の支出行為については事前に承諾を得ることなどを内容とするものであった。被告Dは,Eの求めに応じると,日創の代表者の職責を果たすことができなくなると考えたが,他方,銀行取引印の引渡しを受け,本件基本契約の趣旨に沿って日創の再建に努めることを優先すべであると判断して,同月18日,Hと共に前記誓約書に署名押印し,Eから銀行取引印の交付を受けた。
イ 被告Dらは,被告スミセ建材本店所在地に設けた事務所において日創の経営を行い,Eに月次決算の内容や日創の現状を報告しようとした。しかし,Eは被告Dらに会おうとせず,当時別会社に在籍していたIに対して報告するよう指示した。そのため,被告CやHは,I方に赴いて直接報告をしたり,ファクシミリで送信したりした。
ウ 日創の商業登記簿には,平成11年5月31日に,Eが代表取締役を,Eの長男であるKが取締役を,それぞれ辞任した旨,同年6月5日に,I及び訴外Lが取締役に選任された旨,Iが日創の代表取締役に就任した旨が,いずれも同月14日付けでされている。なお,同月5日の株主総会については,総会の招集を決する取締役会及び株主に対する招集通知はいずれもなく,出席した株主はE1名であった。
また,Eは,同年7月5日,日創の取締役である被告D,H,Iらが出席した会合において,被告Dに対して,日創の代表取締役を解任する旨を通告した。日創の商業登記簿には,被告Dが同日代表取締役を解任された旨の登記が同月9日付けでされている。Eは,この時期に至り,日創の再建をあきらめ,自己の利益を確保しようと考え,役員退職慰労金として3億円を受領することにして,同月5日付けで日創の取締役を辞任し(同月9日に同辞任の登記がされた。),その後日創から同額の支給を受けている。
(5) 本件基本契約の解消 ア Eは,平成11年2月以降,日創の取引銀行に対し,日創の債務に対するEの個人保証を解除するよう強く要求し,被告住友大阪セメントが強く反対したにもかかわらず,最終的には,個人保証の解除を受けた。Eの個人保証の解除を受けたため,各取引銀行は,日創の手形割引枠を縮小したり,手形割引を拒否したりしたため,日創は,受取手形を現金化することが著しく困難となった。日創の信用低下に伴い,日創が裏書きした手形を,被告スミセ建材の手形割引枠を利用して現金化することも困難となった。
また,Eは,同年6月7日以降,被告住友大阪セメントに対し,Eの住宅に設定した根抵当権を解除し,ゴルフ会員証を返還するよう求める文書を送付すると共に,被告D及び被告Cに対し,前記誓約書の内容を遵守し,日創の伝票類を開示するよう求める旨の文書を繰り返し送付した。
Iは,同年7月5日ころから,日創から生コンを買い受けたゼネコン等に対し,支払手形を日創の登記簿上の本店所在地に送付するよう要請した。他方,被告Cも,同月7日付けで,日創の取引先に対し,郵便配達区域内に同名の会社があり,誤配を防止する必要があるとして,約束手形等を送付する際には,被告スミセ建材内日創Cあてとするよう依頼する旨の文書を送付した。実際に,日創が営業の拠点を移した被告スミセ建材の本店所在地付近には,公害防止機器の販売等を行う「株式会社日創」が存在した。
イ 被告住友大阪セメントは,同年6月ころから,本件基本契約における合意事項が遵守されていないし,また,今後も遵守されることはないと判断した。被告スミセ建材は,同年7月21日付けで,日創の代表者であるIに対して,Eが取引銀行に個人保証の解除を申し入れ,代表取締役及び取締役を一存で選任したために,手形割引が拒否され,受取手形の早期現金化ができなくなり,本件基本契約を今後継続することは不可能になったとして,本件基本契約を将来に向かって解除する旨の意思表示をした。さらに,同被告は,日創が被告スミセ建材に振り出した約束手形を期日に決済できなかった場合には,日創に対し破産の申立てを行う旨も通告した。
被告D及びHは,同月23日付けで,日創代表者Iあてに,何ら招集がないのに株主総会及び取締役会が開かれ,Iらが取締役,代表取締役に選任された旨の登記がされたこと,及び被告Dが何ら理由を示されずに代表取締役社長を解任されたことから,取締役としての職務を遂行することはできなくなったとして,日創の取締役を辞任する旨の文書を送付した。そのころ,被告Cは,約束手形,預金通帳及び会計帳簿をIに返還した。
(6) 日創に対する破産申立て及び破産宣告 ア 日創は,生コン仕入れ代金支払のために被告スミセ建材に振り出した約束手形のうち,同月31日を満期とする額面合計4億2612万9084円について,決済資金の都合がつかないことから,被告スミセ建材に支払期日の延期を要請した。しかし,同被告は手形を取立てに回したため,前記約束手形は,同年8月2日,不渡りとなった。
イ 被告Dは,同月3日,被告スミセ建材の代表者らと共に,日創が生コンを販売したゼネコン各社を回って,以下のような説明をした。すなわち,@日創が手形の不渡りを出したこと,A日創が被告スミセ建材から生コンを仕入れてゼネコンに納入することはできなくなったこと,B日創と既に契約をしている生コンについては,被告スミセ建材が代わって納入する意思があること,C日創から納入するか,被告スミセ建材から納入するかはゼネコン側の判断にゆだねたいこと,D今後の生コンの発注契約は被告スミセと締結して欲しいことなどを説明した。
ゼネコンの多くは,日創に代わって被告スミセ建材が生コンを納入することを選んだ。しかし,一部のゼネコンは,日創と既に契約した分について,日創からの納入を選択したため,被告スミセ建材は,一部のゼネコンに対しては,本件基本契約解除後も,日創を経由して生コンを納入した(甲42ないし53によれば,日創から直接の納入分の大部分は,熊谷組へのものであり,また,日創が不渡りを出した直後の同月3日ないし5日に納入されたものである。)。
なお,被告Dについては,同月4日に日創の取締役を解任された旨の登記が,同月5日付けでされた。
ウ 被告スミセ建材は,手形不渡り後の同年8月9日,日創の破産申立てをした。日創は,同月末に2回目の手形不渡りを出し,平成12年2月4日,破産宣告を受けた。合計4者が破産債権の届出をしたが,被告スミセ建材1社のみが実質的な破産債権者であり,同被告の届出債権額は,27億0909万3621円であった。
日創は,平成10年10月1日から平成11年7月31日までの期間,日創が営業収支,経常収支共に損失を計上した。
また,平成8年9月1日の時点では,東京生コンクリート卸協同組合における日創の保証限度額は12億5000万,被告スミセ建材のそれは7億0100万円であったが,平成12年4月1日の時点では,日創の枠はゼロであり,被告スミセ建材の枠は28億6800万円となった。
2 不法行為の成否 以上認定した事実を基礎として,原告らの主張について判断する。
(1) 不法行為(その1-背任による利益の不正取得)について ア 原告らは,被告らが,日創の経営を平成10年9月30日までと同様な状態で維持し,3年ないし5年後には,優良会社にして元に戻すべき作為義務があったにもかかわらず,これに違反して日創の利益率を大幅に低下させ,その利益分を日創の競争会社である被告スミセ建材に移し替え,日創に損害を与えた点において,被告らの行為は不法行為を構成する旨主張する。
しかし,原告らの上記主張は,以下のとおり失当である。
イ 被告らには,原告らが主張するような作為義務を負担していたとすることはできない。その理由は次のとおりである。
(ア) 前記1で認定したとおり,日創は,平成6年から平成10年に掛けて,その業績が悪化する傾向にあり,平成9年,10年には経常損失を計上し,また,主要な取引先であるゼネコンの信用不安のために,受取手形の割引を受けることができず,日創が振り出した手形の支払資金に窮する状態であり,さらに,日創自身の信用不安から,生コンの仕入れにも困難を来す状態であった。日創は,このままでは,倒産に陥る可能性が高いと判断して,被告住友大阪セメント側に協力を求めた。また,被告住友大阪セメントは,日創を被告スミセ建材の下店とすることで,生コンの仕入れに困難を来している状態が解消されれば,日創が倒産した場合に発生する20億円程度の損失を回避することができるとの判断の下に,日創の再建に協力しようとした。
そうすると,このような状況の中で,被告住友大阪セメントないし被告被告スミセ建材が,日創のために,日創の経営状態を従前と同様の水準で維持する,あるいは日創を優良会社にし元の状態に戻すことを,約束する旨の合意をしたと認めることは到底できない。
(イ) また,前記1で認定したとおり,Eと被告A及び被告Bは,平成10年11月から12月までの間,協議を重ねた上で本件基本契約の内容を確定した。本件基本契約は,Eの報酬削減,Eの妻及び息子の役員退任,Eの住居費の制限,人員整理,不良資産の処分,関係会社間の貸借等の整理,被告スミセ側からの経理担当者の派遣等について定め,日創の契約違反があった場合や被告スミセ建材の権利を侵害されるおそれがある場合には,被告スミセ建材は本件基本契約を解除して,直ちに日創に対する債権を行使し得る旨定めるなど,日創に対し多額の売掛代金債権を取得することになる被告スミセ建材の利益を擁護するための規定が設けられている。これに対し,日創のために,一定の利益率を確保するような定めは設けられていない。原告らの主張に沿うような内容は存在しない。
(ウ) 以上のとおりであり,原告らの主張に係る趣旨の合意がされたと認めることはできない。
ウ 原告らは,被告らの一連の具体的行為が不法行為を構成すると主張するが,失当である。その理由は次のとおりである。
(ア) 原告らは,被告らの具体的な行為,すなわち,@仕入業務を被告スミセ建材に一本化することなどを,Eに何の相談もせず通知したこと,A被告DはEを避け,被告両社,被告A及び被告Bの指示に基づいて,日創の経営を行ったこと,B日創の経理帳簿については,被告スミセ建材から派遣された被告Cが管理し,被告らが,Eの了解なく,日創の銀行印を使用して事務所使用の契約書等を作成したこと,CEが被告Dらに銀行取引印を交付した後は,被告Dは,Eと顔を合わせようとせず,業務報告も行わず,経理を被告Cにまかせるようになったこと,D被告らは,Eが経理関係の報告を求めてもこれに応じず,日創の損失を隠蔽し,Iが経理関係書類の開示等を求めても無視したこと,E平成11年7月,被告Dらは,手形を不法に領得するなどの目的で,郵便局や取引先に対し,日創宛の郵便物や手形を被告スミセ建材内所在の日創の事務所に送付するよう求めたことなどが,不法行為を構成すると主張する。
(イ) しかし,A被告DがEを避けたこと,C被告DがEと顔を会わせないようにしたこと,及びE経理関係の報告をせず損失を隠蔽したこと,手形を不法に領得する目的で郵便物の送付先を指示したことについては,前記1で認定したとおり,これに沿う事実はなく,また,その他@,B及びDの行為は,平成10年8月から12月に掛けて,Eや被告A,被告Bらが協議を重ねた上,合意の趣旨に沿って行われた行為であり,違法な行為と評価できるものではないから,これらの行為が不法行為を構成することはない。
エ 以上のとおり,被告らが日創に対して,3年ないし5年で日創を優良会社にし元の状態に戻す,あるいは日創が従来得ていた利益はそのまま維持するとの義務を負っていたと認めるに足りる証拠はなく,このような義務の存在を前提に,被告らの行為が背任に当たるとする原告らの主張については,主張自体失当であり,また,その他,原告らの主張に係る被告らの前記具体的行為が不法行為に当たるとすることはできない。
(2) 不法行為(その2-倒産による営業権奪取行為)について ア 原告らは,被告らが,日創の取引先を被告スミセ建材に移転する目的で,日創を故意に倒産させて,その営業権を奪った点において,被告らの行為は不法行為を構成する旨主張する。
しかし,原告らのこの主張も,以下のとおり失当である。
イ 原告らは,被告らの一連の具体的行為が不法行為を構成すると主張するが,失当である。その理由は次のとおりである。
(ア) 原告らは,被告らの具体的行為,すなわち,@経営不安のあった会社と取引させるなどの方法で,日創の資金繰りを悪化させたこと,A資金繰りに協力するとして日創を被告スミセ建材の下店とし,東京生コンクリート卸協同組合における日創のシェアを被告スミセ建材に移転させたこと,B日創の営業を支配して利益率を低下させ,資金繰りをさらに悪化させたこと,C経営内容の悪化を察知されないよう,Eらに営業報告をせず,手形決済日直前まで,経理内容をE及びIに知らせなかったこと,D日創の資金繰りに協力すべき義務を負っているにもかかわらず,手形のジャンプ要請を拒んで約束手形を取立てに回し,手形の不渡事故を生じさせたこと,Eゼネコン各社に,日創は破産になるため,日創に対する支払は停止するよう触れ回り,被告スミセ建材と取り引きするよう持ちかけ,取引先を獲得したなどと説明したことなどが,日創を破産に追い込み,その営業権を奪取する目的で,計画的に行われた不法行為であると主張する。
(イ) 本件基本契約が締結された後,平成10年10月1日から平成11年7月31日までの期間,日創が営業収支,経常収支共に損失を計上したことは前記1認定のとおりである。しかし,本件基本契約締結以前から既に,日創の資金繰りが極端に悪化し,生コンの仕入れにも困難を来していたこと,被告らが日創を救済する目的で本件基本契約を締結して日創を下店化したにもかかわらず,Eが協力的であったとはいえなかったこと等の事実経緯に照らすと,被告らが日創の再建を果たせなかったからといって,日創を倒産させる目的で,被告らが日創の利益率をことさらに低下させたと認めることは到底できない。
前記1で認定したとおり,被告スミセ建材は,本件基本契約によって,日創に対し多額の売掛代金債権を新たに負担し,日創が資金繰りに行き詰まって手形の不渡りを出したことによって,約27億円の破産債権の届出をせざるを得なくなったのであるから,被告らが,その利益を図る目的で,前記1で認定した一連の経緯を計画的に進めたと認定することは到底できない。
ウ 以上によれば,被告らが,日創の営業権を奪い取る目的で本件基本契約を締結し,故意に日創を破産に追い込んでその営業権を不正に取得したとする原告らの主張については,採用することができない。
(3) 不正競争行為の有無について ア 原告らは,被告らが,計画的に日創に手形の不渡りを出させた上で破産申立てを行いながら,各取引先に対し,日創がすぐに破産宣告を受けるかのような虚偽の事実を告知したことは,日創の営業権を奪うためにされた不正競争行為に当たり,不法行為を構成する旨主張する。
イ しかし,原告らの上記主張は,以下のとおり,失当である。
すなわち,前記認定のとおり,被告Dと被告スミセ建材の代表者らが,平成11年8月3日,日創の取引先に対し,日創が手形の不渡りを出したこと,被告スミセ建材から生コンを納入することも可能であるが,その判断はゼネコン側にゆだねたい旨を説明したが,そのころ日創は支払不能状態であり,破産宣告を受けることは必至であった状況に照らすならば,被告Dらがこのように説明した行為が,不正競争防止法2条1項14号にいう虚偽の事実の陳述行為に当たるということはできない。
したがって,不正競争防止法違反についての原告らの主張も失当である。
3 結語 以上のとおり,被告らに不法行為(背任による利益の不正取得,倒産による営業権の奪取行為)又は不正競争に当たる不法行為があるとする原告らの主張は,いずれも失当であって採用することができない。
原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 佐野信
裁判官 谷有恒
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