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関連ワード 他人の営業 /  差止請求(差止) /  過失 /  共同不法行為 /  因果関係 /  弁護士費用 /  侵害 /  競業関係 /  代理人 /  営業誹謗行為(2条1項14号) /  競争関係 /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  損害額 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 11年 (ワ) 6249号 損害賠償請求事件
原告 株式会社ヤマキチ
訴訟代理人弁護士 大森 鋼三郎
被告 株式会社ホーメックス
被告X
上記両名訴訟代理人弁護士 窪田 英一郎
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/04/24
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告らは,原告に対して,各自150万円及びこれに対する平成11年1月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
4 この判決は,原告の勝訴部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
被告らは,原告対し,各自1億1615万円及びこれに対する平成11年1月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,原告の取引先に警告状を発した被告株式会社ホーメックス(以下「被告ホーメックス」という。)の行為が不法行為を構成するとして,被告らに対して不法行為に基づき損害賠償請求をしている事案である。
1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾に当該証拠を摘示した。) (1)ア 原告は,建具及び建材販売,建設工事及び土木工事請負等を主たる業とする株式会社である。
イ 被告ホーメックスは,土木建築工事並びに建築用骨格材の製造,加工及び販売等を主たる業とする株式会社である。被告Xは,弁理士を業としている。
(2) 被告ホーメックスは,以下の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい,その考案を「本件考案」という。)を有していた。本件実用新案登録については,平成10年9月28日,原告から異議申立てがされ,特許庁長官は,平成12年6月15日,進歩性欠如を理由として,本件実用新案登録を取り消す旨の異議決定をし,東京高裁は,平成14年2月7日,同異議決定の取消しの請求を棄却し(乙43,73),同判決は確定した(弁論の全趣旨)。
実用新案登録番号 第2569914号 考案の名称 木造家屋の外壁下地構造 出願日 平成5年6月16日 登録日 平成10年2月6日 実用新案登録請求の範囲 別紙実用新案登録公報写しの該当欄記載のとおり(以下,同公報掲載の明細書を「本件明細書」という。) (3) 本件考案の構成要件を分説すると,次のAないしCのとおりとなる。
A@ 外壁を形成する柱により枠作りした枠体と, A この枠体内に嵌着されるパネル体とからなり, B このパネル体は, @ 上下方向に延びる一対の同じ高さの第1の板材及び左右方向に延び,第1の板材と同一高さの一対の第2の板材が矩形状に連結された壁枠体と, A 壁枠体の室内側に止着された壁板と, B 壁板の屋外側に付設された,第1及び第2の板材よりも高さの低い硬質発泡ウレタン板とからなり, C 土台上に枠体を形成し,この枠体内にパネル体を嵌着した場合において, @ 枠体内に1枚のパネル体を嵌着した場合には,枠体とパネル体の壁板との継合部を覆うように,また, A 枠体内に複数枚のパネル体を嵌着した場合には,枠体とパネル体の壁板との継合部及び隣接するパネル体の壁板同士の継合部を覆うように 室内側から気密テープが貼着されていること を特徴とする木造家屋における外壁下地構造 (4)ア 被告ホーメックスは,本件考案の外壁下地構造に基づく木造家屋の建設工事についてのフランチャイズシステムを構築して,フランチャイジーに本件考案の技術を供与し,その使用を許諾し,また,上記技術を自ら実施している。
イ 他方,原告は,平成8年ころから,別紙イ号構造目録記載の構造(以下「原告構造」という。)に基づく木造家屋の建設工事についてのフランチャイズシステム(以下「原告システム」という。)を構築して,全国各地において,販売代理店を募り,販売,施工網の拡充に努めている。原告システムによると,フランチャイジーを製作代行店と工務店とに分け,フランチャイジーたる製作代行店に対しては,別紙ロ号物件目録記載のパネル(以下「原告パネル」という。)を製造し,工務店に販売することを許諾し,フランチャイジーたる工務店に対しては,製作代行店又は原告から供給を受けた原告パネル等を用いて木造家屋を施工することを許諾するというものである。
(5) ところが,被告らは,平成10年8月11日ころ,原告システムの製作代行店13社に対して,被告Xを代理人として,「原告のSSパネルの家屋施工用壁下地パネルは,被告ホーメックスの有する実用新案権に係る『木造家屋の外壁下地構造』において使用するパネル体と同一であり,被告ホーメックスの実用新案権を侵害する。よって,SSパネルの製造・販売を速やかに中止することを要求する。
要求を受け入れないと差止請求訴訟,損害賠償請求訴訟,その他の法的手続を開始するし,刑事告訴も検討する。」という内容が記載された警告書(以下「本件警告」ないし「本件警告書」という。)を送付した。
2 争点 (1) 本件警告を発した被告らの行為は不法行為を構成するか。
(2) 損害額は幾らか。
3 争点に対する当事者の主張 (1) 本件警告を発した被告らの行為は不法行為を構成するか(争点(1))。
(原告の主張) ア 被告ホーメックスは原告と競業関係にあるところ,被告Xを代理人として,原告に警告することなく,前記争いのない事実等(5)のとおり,原告の取引先に対して,本件警告をした。ところが,本件警告の内容は虚偽であり,原告は,これにより,多大な損害を被った。したがって,本件警告書を送付した行為は,不正競争防止法2条1項14号の「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布した行為」に該当し,また,信用毀損,名誉毀損,業務妨害行為にも当たる。
イ 本件実用新案登録は新規性,進歩性欠如を理由として取り消されたが,本件実用新案登録は,出願してから登録されるまでに5年も要しており,2回もの拒絶理由通知が発せられていること,本件考案が新規性及び進歩性を有していないことは明白であることから,被告らは本件実用新案登録が取り消され,又は無効となることを予測することは容易であったといえる。
ウ また,以下のとおり,原告構造は本件考案の技術的範囲に属さないことも明らかであって,このことは被告らも認識し得たはずである。
(ア) 原告構造は,本件考案の構成要件BBを文言上充足しない。すなわち,本件考案の構成要件BBは「壁板の屋外側に付設された,第1及び第2の板材よりも高さの低い硬質発泡ウレタン板とからなり」と記載されている。これに対して,原告構造では,「遮音シートと発泡ポリスチレンとを有機的に一体化したものとベニヤ合板」とが金具により固定されている。原告構造は,発泡ポリスチレンを用いている点において,本件考案の構成BBの「硬質発泡ウレタンとからなり」を充足しない。
(イ) 原告構造は,以下のとおり,本件考案の構成と均等ではなく,本件考案を充足しない。
a 本件考案の構成要件BBの「硬質発泡ウレタン」は,本件考案の必須の要件であり,本質的部分である。
b 原告構造における「ポリスチレン板に遮音シートを貼着して有機的に一体化させた材料」と本件考案における「硬質発泡ウレタン」とを比較すると,前者は,気密性と断熱性に加え,遮音性及び強度に優れた特性を有するものであるから,両者に置換可能性はない。仮に,原告構造における「ポリスチレン板」と本件考案における「硬質発泡ウレタン」とを比較すべきであるとした場合であっても,両者は,断熱性,易燃性,吸水性,価格等で異なるから,置換可能性はない。
c 気密住宅にする場合に,パネル間の継ぎ目に気密テープを貼着することは,住宅金融公庫が指導するところであり,公知の技術である。
d 本件実用新案登録出願の時点で,断熱材としては,硬質発泡ウレタンのほかポリスチレンやグラスウール等多種類の素材が存在することは周知であった。それにもかかわらず,被告ホーメックスは,本件考案において使用する断熱材を,あえて「硬質発泡ウレタン」としたのであるから,本件考案における断熱材を「硬質発泡ウレタン」に意識的に限定したというべきである。
エ このように,被告らが行った本件警告は原告の営業活動を妨害する違法なものであり,かつ,被告らには,本件警告を行ったことについて過失がある。したがって,被告らは,同行為に対して,共同不法行為責任を負うというべきである。
(被告らの反論) ア 本件警告の際には,本件実用新案登録は有効に存続しており,公の機関たる特許庁が審査を経て有効と判断した実用新案権に基づく権利行使が違法とされることはない。
また,被告らは,本件警告を行った後に初めて実願昭60-129734号(実開昭62-38308号)のマイクロフィルムに接した。被告らが本件実用新案登録の無効理由を精査するために徹底的に調査したとしても,被告らは,上記マイクロフィルムを発見できる状況にはなかった。
以上の事情によれば,被告らが本件実用新案登録が有効であることを前提として本件警告を発したことについて,故意,過失はなかったというべきである。
イ 本件考案の構成要件BBでは,パネル体の一部を形成する板材として「硬質発泡ウレタン」が使用されているのに対し,原告構造では「ポリスチレン」が使用されている点において相違がある。しかし,原告構造における「ポリスチレン」は,以下のとおり,本件考案の構成要件BBにおける「硬質発泡ウレタン」と均等である。
(ア) 断熱材の材料として「硬質発泡ウレタン」を用いることは本件考案の本質的な要素ではない。
(イ) 「硬質発泡ウレタン」と「ポリスチレン」は,断熱性,扱いの簡易さ等において同じ性能を有し,当業者が本件考案の「硬質発泡ウレタン」を「ポリスチレン」に置き換えることは極めて容易である。
したがって,仮に本件実用新案登録が有効であれば,被告らのその権利行使に違法はない。
ウ 以上のとおり,被告らは,本件警告を行ったことに対して不法行為責任を負わない。
(2) 損害額は幾らか(争点(2))。
(原告の主張) ア 製作代行店拡大を妨害されたことによる損害 平成9年10月から平成10年8月までの11か月の間に,原告システムに加入した製作代行店の数は23社であったが,本件警告がされた同月以降,新規に加入する者はいなくなった。このように原告システムへの加入者がなくなったのは,本件警告に起因する。本件警告がなければ,原告システムへの新たな加入者は少なくとも12社は増加したものと推測される。
原告は,原告システムに加入させる際に,1社当たり,契約金として550万円,保証金として100万円の合計650万円を受領していたから,本件警告がなければ,少なくとも,7800万円(650万円×12)の利益を得ていた。
イ 業務妨害,信用失墜,名誉毀損による損害 本件警告によって,提携先に対して不安と動揺を引き起こし,原告パネルの販売に重大な支障を来した。また,本件警告によって,建築業界内外で,原告の信用,名誉は毀損され,丸紅建材株式会社からは取引契約を解除され,株式会社丸増ベニヤ商会からは与信月額を1000万円から200万円に減じられた等の損害が発生した。
上記の損害は,少なくとも2815万円を下らない。
ウ 被告らの不法行為と因果関係のある弁護士費用は,1000万円が相当である。
エ 以上のとおり,原告が本件警告によって被った損害は,1億1615万円となる。
(被告らの反論) 争う。原告の主張する損害と本件警告との間の因果関係は存在しない。
当裁判所の判断
1 不法行為の成否 (1) 虚偽事実の陳述流布行為の存否について ア 前記争いのない事実等のとおり,原告は,平成8年ころから,原告構造に基づく木造家屋の建設工事について,原告システムを構築して,全国各地に販売代理店を募り,原告システムの拡大を図ってきた。原告システムによると,フランチャイジーである製作代行店に対しては,原告パネルを製造し,これを工務店に販売することを許諾し,フランチャイジーである工務店に対しては,製作代行店又は原告から供給を受けた原告パネル等を用いて木造家屋を施工することを許諾するものである。
平成10年8月11日ころ,被告ホーメックスは,被告Xを代理人として,原告の製作代行店13社に対して,本件警告書を発送した。本件警告書には,「原告のSSパネルの家屋施工用壁下地パネルは,被告ホーメックスの有する実用新案権に係る『木造家屋の外壁下地構造』において使用するパネル体と同一であり,被告ホーメックスの実用新案権を侵害する。よって,SSパネルの製造・販売を速やかに中止することを要求する。要求を受け入れないと差止請求訴訟,損害賠償請求訴訟,その他の法的手続を開始するし,刑事告訴も検討する。」との趣旨が記載されていた。
ところで,本件実用新案登録については,平成10年9月28日,原告から異議申立てがされ,平成12年6月15日,進歩性欠如を理由として取り消された。さらに,平成14年2月7日,同異議決定に対する取消訴訟も棄却され,同判決は確定した。
イ 前記争いのない事実等によれば,原告構造は,本件実用新案権の技術的範囲に属さない。
まず,原告構造は,本件考案の構成要件BBを文言上充足しない。すなわち,本件考案の構成要件BBは「壁板の屋外側に付設された,第1及び第2の板材よりも高さの低い硬質発泡ウレタン板とからなり」と記載されているのに対して,原告構造では,発泡ポリスチレンを用いている点において,本件考案の構成BBの「硬質発泡ウレタンとからなり」を充足しない。
また,原告構造は,本件考案の実用新案登録出願時における公知技術から当業者が極めて容易に推考できたものであるから,本件考案の構成と均等なものとはいえない(その理由は,別紙「均等に関する判断」記載のとおりである。)。
ウ そうすると,被告らが,「原告のSSパネルの家屋施工用壁下地パネルは,被告ホーメックスの有する実用新案権に係る『木造家屋の外壁下地構造』において使用するパネル体と同一であり,被告ホーメックスの実用新案権を侵害する。」旨が記載された本件警告書を原告のフランチャイジー13社に送付したことは,不正競争防止法2条1項14号所定の「虚偽の事実を流布した行為」に該当する。
(2) 被告らの過失の有無について 一般的に,実用新案権等の知的財産権を有する者が,当該知的財産権に基づいて権利行使をしたり,その前提として警告書を発することが許されるのは当然である。しかし,権利行使をしようとする者は,その基礎となる権利について,明らかな無効理由がないか否か,また,対象製品等が当該権利の技術的範囲等に属するか否かを,あらかじめ十分に調査,検討すべき義務があるものというべきである。原告のフランチャイジーに対して本件警告を発した被告らの行為についてみると,@本件実用新案登録は進歩性欠如を理由として取り消され,当該実用新案権はさかのぼって効力が消滅したこと,A別紙「本件実用新案登録の有効性欠如に関する判断」記載のとおり,本件考案は進歩性が欠如していることは明白であると解すべきであること,B原告構造は,本件考案の構成を文言上充足しないのみならず,均等ともいえないことに照らすならば,被告らは,原告構造が本件実用新案権を侵害していたか否かについて,十分な調査,検討をすべき義務を尽くしていないということができる。したがって,被告ホーメックスは本件警告を発するに当たり,また,被告Xは,弁理士として被告ホーメックスから依頼を受けて警告書の発送を代理するに当たり,過失があるというべきである。したがって,本件警告書を発した被告らの行為は不法行為を構成する。
2 損害の発生の有無及び損害額 (1) 製作代行店拡大を妨害されたことによる損害について 原告は,本件警告がなければ,原告システムへの新たな加入者は少なくとも12社は増加したものと推測されると主張する。しかし,本件警告は既に原告システムに加入している製作代行店に対してされたものであり,それ以外の同業者に対してされたものではないこと,本件全証拠によっても,本件警告の内容が,本件警告を受けた者から他の同業者へ流布されたと認めるに足りないことに照らすならば,本件警告を発したことが原告システムにおける新たな加入者数に影響を与えたとは考え難い。
したがって,本件警告によって,原告システムへの加入者が減少したと認めることはできず,原告の上記主張は理由がない。
(2) 業務妨害,信用失墜,名誉毀損による損害について ア 原告は,本件警告が原因となって,原告パネルの販売数が減少し,また,丸紅建材株式会社から取引契約を解除された旨主張をするが,本件全証拠によっても,上記主張に係る因果関係の存在を認めることはできない。
イ 本件警告書は,原告パネルを製造,販売することは被告ホーメックスの有する実用新案権を侵害するから,上記製造及び販売を中止するよう求めるという趣旨が記載されたものであり,このような記載がされた本件警告が原告の製作代行店13社に対して行われたのであるから,原告の営業上の信用,名誉が毀損されたことは明らかである。
そして,上記の信用,名誉の毀損により原告に生じた損害は,前記の原告の営業内容,営業態様等一切の事情を考慮するならば,120万円と解するのが相当である。
(3) 弁護士費用について 原告が本件訴訟の提起及び遂行を原告訴訟代理人に委任したことは当裁判所に顕著な事実であるところ,本件訴訟の難易度,本件訴訟での認容額その他諸般の事情を斟酌すると,弁護士費用として賠償されるべき額としては30万円が相当である。
(4) したがって,本件警告によって原告が被った損害額は150万円である。
3 以上より,原告の請求は,被告らに対して,損害賠償金として各自150万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成11年1月22日から年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し,主文のとおり判決する。
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イ号構造目録別紙イ号構造説明書に記載された木造家屋における外壁下地構造イ号構造説明書1図面の説明第1図は,パネルの斜視図である。
第2図は,遮音シートが付されたパネルの斜視図である。
第3図は,外壁下地構造の斜視図である。
第4図は,パネルとパネルの継合部の拡大図である。
2外壁下地構造の構成(1)パネルの構成アパネルは,壁枠体を備えている。この壁枠体は,左右の骨桟1,2と,これら左右の骨桟1,2の中央に配された中骨桟3と,左右の骨桟1,2と同じ幅Lを有し,左右の骨桟1,2及び中骨桟3を連結する上下の骨桟4,5とからなる。
壁枠体は,全体として長方形状のフレームであり,その内部には矩形状の空間6が二つ形成されている。
イ壁枠体の片側面には,壁枠体の外形寸法と同じ大きさのベニヤ合板7が固着されている。
ウ空間6には,空間6と同じ大きさで,Lよりも小さい厚みを有する発泡ポリスチレン板8が嵌め込まれており,この発泡ポリスチレン板8はベニヤ合板7に着接されている。
(2)枠体Rの構成枠体Rは,土台11,土台上に立てられた柱10及び柱を連結する胴差し12からなる。
(3)構造の構成ア外壁下地構造の枠体Rには,パネルが1枚又は複数枚,パネルのベニヤ合板7が室内側になるようにして嵌め込まれている。
イパネルとパネルの継合部,又はパネルとそれに隣接する土台11,柱10若しくは胴差し12との継合部には,室内側から気密テープ13が貼り付けられている。
第1〜4図ロ号物件目録別紙ロ号物件説明書に記載されたパネルロ号物件説明書1図面の説明第1図は,パネルの斜視図である。
第2図は,遮音シートが付されたパネルの斜視図である。
2パネルの構成(1)パネルは,壁枠体を備えている。この壁枠体は,左右の骨桟1,2と,これら左右の骨桟1,2の中央に配された中骨桟3と,左右の骨桟1,2と同じ幅Lを有し,左右の骨桟1,2及び中骨桟3を連結する上下の骨桟4,5とからなる。壁枠体は,全体として長方形状のフレームであり,その内部には矩形状の空間6が二つ形成されている。
(2)壁枠体の片側面には,壁枠体の外形寸法と同じ大きさのベニヤ合板7が固着されている。
(3)空間6には,空間6と同じ大きさで,Lよりも小さい厚みを有する発泡ポリスチレン板8が嵌め込まれており,この発泡ポリスチレン板8はベニヤ合板7に着接されている。
第1、2図別紙「均等に関する判断」1原告構造は,当業者が,本件実用新案登録の出願時における公知技術(刊行物1ないし4)から出願時に極めて容易に推考できたものといえるか否かを判断する。
2刊行物の記載(1)本件実用新案登録の出願前に刊行された実願昭60-129734号(実開昭62-38308号)のマイクロフィルム(乙26,以下「刊行物1」という。)には,実用新案登録請求の範囲の欄に,「木製の枠(2)の片面に厚さが7.5o以上の合板(3)を貼着した箱状の壁体(1)を,柱(5),(5)および横架材(6),(6)の内側面に枠(2)および合板(3)の外側面が密着するように挟持せしめ,かつ,該壁体(1)の周囲の枠(2)を柱(5),(5)および横架材(6),(6)の内側面に釘などで固定せしめることを特徴とする木造建築物の壁体」と,考案の詳細な説明欄に,「枠(2)を組立て,片面に同じ寸法に,正確に方形に切断した7.5o以上の合板を釘などを用いて貼着せしめる。」(4頁6ないし8行),「建築される木造家屋の設計単位(1Pという。)」(4頁8ないし9行),「枠(2)の中央に縦方向に桟(4)を設けるとよく,その間隔は1/2Pとなる。」(4頁13ないし14行)と各記載されている。そして,第1図及び第2図では,壁体(1)は,左右の枠(2)と,同枠(2)と同じ幅を有し各枠(2)及び桟(4)を連結する上下の枠によって形成された長方形状のフレームであり,その内部には矩形状の空間が二つ形成されている。また,第2図面では,壁体(1)は,柱(5)及び横架材(6)によって形成された長方形状の枠体に,合板(3)を室内側として嵌め込まれている。
上記の各記載からすれば,刊行物1には,@壁体(1)は,左右の枠(2)と,左右の枠(2)の中央に配された桟(4)と,左右の枠(2)と同じ幅を有し,左右の枠(2)及び桟(4)を連結する上下の枠(2)とから形成され,その内部には矩形状の空間が二つ形成された長方形状のフレーム,及び長方形状のフレームの片側面に固着された長方形状フレームの外形寸法と同じ大きさの合板(3)から成ること,A壁体(1)は,柱(5)及び横架材(6)によって形成された長方形状の枠体に,合板(3)を室内側として嵌め込まれることが記載されていることが認められる。
(2)本件実用新案登録の出願前に刊行された実願平1-67849号(実開平3-8211号)のマイクロフィルム(乙74,以下「刊行物2」という。)には,実用新案登録請求の範囲の欄に,「木造家屋の軸組を構成する軸部材によって形成される各空洞部の方形寸法に合わせて方形状の枠体(3)を形成し,この枠体(3)の一面側に,枠体(3)の方形よりも一回り大きな方形状の構造合板(1)を,その周縁部(2)を張出して固着し,枠体(3)の中に適数本の補強桟(4)を架設すると共に,この補強桟(4)によって分割する枠体(3)内の各区画に断熱材(5)を埋め込んだことを特徴とする断熱パネル」と,考案の詳細な説明欄に,「補強桟4によって分割された枠体3内の各区画には,プラスチック系板状の断熱材5が隙間なく離脱不能に埋め込んである。」(4頁14ないし16行)と各記載されており,また,第1図では,断熱材の厚さは枠体の幅よりも小さくなっている。
上記各記載からすれば,刊行物2には,枠体(3),補強桟(4),構造合板(1)とで形成された空間に,枠体の幅よりも小さい厚みの断熱材が嵌め込まれ,同断熱材は,構造合板(1)に着接される考案が記載されていることが認められる。
(3)本件実用新案登録の出願前である平成2年3月31日に日本住宅新聞社が刊行した「住宅建築新工法全集」(乙75,以下「刊行物3」という。)には,「気密性を確実にするため,柱に接するパネル枠には軟質ウレタンシールが張設されている。さらに柱とパネルが接するラインには,室内側よりアルミテープをはり,二重に気密性の確保をはかっている。」(33頁右欄7ないし11行)と各記載されており,同記載からすれば,刊行物3には,柱とパネルが接するラインには,室内側より気密性確保のためのアルミテープを貼り付ける技術が記載されていると認められる。
(4)本件実用新案登録の出願前である平成3年1月に社団法人北海道リフォームセンターが刊行した「高性能住宅の設計」(乙76,以下「刊行物4」という。)には,「3-3断熱材の種類と特徴」の項目に押出し発泡ポリスチレン板が記載されている(34頁)ことから,刊行物4には,断熱材として発泡ポリスチレンが利用されることが認められる。
3原告構造と上記各刊行物記載の技術との比較(1)刊行物1に記載された考案との比較刊行物1の記載からすると,刊行物1の壁体(1)は原告構造のパネルに,枠(2)は骨桟1,2,4及び5に,合板(3)はベニヤ合板7に,桟(4)は中骨桟3に,柱(5)は柱10に,横架材(6)は土台11及び胴差し12にそれぞれ対応することが認められる。
そこで,原告構造と刊行物1に記載された考案とを比較する。原告構造と刊行物1に記載された考案とは,以下の各点において一致する。すなわち,@壁枠体は,左右の骨桟1,2と,これら左右の骨桟1,2の中央に配された中骨桟3と,左右の骨桟1,2と同じ幅Lを有し,左右の骨桟1,2及び中骨桟3を連結する上下の骨桟4,5とからなり,全体として長方形状のフレームであり,その内部には矩形状の空間6が二つ形成されている点,A壁枠体の片側面には,壁枠体の外形寸法と同じ大きさのベニヤ合板7が固着されている点,B枠体Rは,土台11,土台上に立てられた柱10及び柱を連結する胴差し12からなる点,C外壁下地構造の枠体Rには,パネルが,パネルのベニヤ合板7が室内側になるようにして嵌め込まれている点の各点において一致する。他方,原告構造と刊行物1とは,以下の各点において相違する。すなわち,@原告構造においては,空間6には,空間6と同じ大きさで,Lよりも小さい厚みを有する発泡ポリスチレン板8が嵌め込まれており,この発泡ポリスチレン板8はベニヤ合板7に着接されているのに対し,刊行物1に記載された考案にはこのような構成は含まれない点,A原告構造においては,枠体Rに嵌め込まれるパネルは複数枚であることもあるのに対し,刊行物1に記載された考案にはこのような構成は含まれない点,B原告構造においては,パネルとパネルの継合部,又はパネルとそれに隣接する土台11,柱10若しくは胴差し12との継合部には,室内側から気密テープ13が貼り付けられているのに対し,刊行物1に記載された考案にはこのような構成は含まれない点において相違する。
(2)そこで,上記各相違点について検討する。
まず,証拠(乙26,74,75,76)によれば,刊行物1には木造建築物の壁体に関する考案,刊行物2には木造家屋の壁面等の断熱パネルに関する考案,刊行物3には木造断熱パネル工法に関する技術,刊行物4には木造家屋の断熱工法に関する技術がそれぞれ記載されており,いずれも同一の技術分野に属するものである。
ア相違点@について前記2(2)で判示したように,刊行物2には,枠体(3),補強桟(4),構造合板(1)とで形成された空間に,枠体の幅よりも小さい厚みの断熱材が嵌め込まれ,同断熱材は,構造合板(1)に着接される構成が記載されているところ,刊行物2の記載からすると,刊行物2の枠体(3)は原告構造の骨桟1,2,4及び5に,補強桟(4)は中骨桟3に,構造合板(1)はベニヤ合板7にそれぞれ対応するものと認められる。また,前記2(4)で認定したように,刊行物4には断熱材として発泡ポリスチレンを使用するという技術が記載されており,このように,断熱材として発泡ポリスチレンを使用することは慣用手段に過ぎない。したがって,刊行物1記載の考案に刊行物2記載の上記構成及び刊行物4に例示されている上記慣用手段を適用して,空間6には,空間6と同じ大きさで,Lよりも小さい厚みを有する発泡ポリスチレン8を嵌め込み,この発泡ポリスチレン板8はベニヤ合板7に着接するという構成を付加することは当業者であれば極めて容易に想到できたといえる。
イ相違点Aについて枠体の大きさの変化に対応するために,枠体内に取り付けるパネルの大きさを変えるか,同じ大きさの複数枚のパネルを取り付けることにするかは,当業者であれば,適宜選択できる程度の設計事項に過ぎず,刊行物1記載の考案に,枠体内に複数枚のパネルを嵌着することを選択できる構成を付加することは当業者であれば極めて容易に想到できたといえる。
ウ相違点Bについて前記2(3)で判示したように,刊行物3には,気密性を確実にするために,柱とパネルが接するラインに室内側からアルミテープを貼るという技術が記載されており,刊行物1記載の考案に,刊行物3記載の上記技術を適用して,枠体とパネル体の壁板との継合部,隣接するパネル体の壁板同士の継合部(前記bで判示したように,枠体内に複数枚のパネルを嵌着する構成を付加することは当業者であれば極めて容易に想到できたといえる。)に室内側から気密テープを貼着する構成を付加することは当業者であれば極めて容易に想到できたといえる。
4以上により,原告構造は,当業者であれば,本件実用新案登録の出願時における公知技術(刊行物1ないし4)から出願時に容易に推考できたものといえるから,原告構造は本件考案の構成と均等ということはできない。
別紙「本件実用新案登録の有効性欠如に関する判断」1刊行物の記載(1)刊行物1には,実用新案登録請求の範囲の欄に,「木製の枠(2)の片面に厚さが7.5o以上の合板(3)を貼着した箱状の壁体(1)を,柱(5),(5)および横架材(6),(6)の内側面に枠(2)および合板(3)の外側面が密着するように挟持せしめ,かつ,該壁体(1)の周囲の枠(2)を柱(5),(5)および横架材(6),(6)の内側面に釘などで固定せしめることを特徴とする木造建築物の壁体」と記載されていること,第2図面では,壁体(1)は,柱(5)及び横架材(6)によって形成された長方形状の枠体に,合板(3)を室内側として嵌着されていることからすると,刊行物1には,「柱(5)と横架材(6)により枠作りした枠体と,この枠体内に嵌着される箱状の壁体(1)とからなり,この箱状の壁体(1)は,上下方向に延びる一対の同じ高さの第1の板材及び左右方向に延び,第1の板材と同一高さの一対の第2の板材が矩形状に連結された木製の枠(2)と,木製の枠(2)の室内側片面に貼着され,該枠と同一の大きさを有する合板(3)とからなる木造建築物の壁体」という考案が記載されていることが認められる。
(2)刊行物2には,実用新案登録請求の範囲の欄に,「木造家屋の軸組を構成する軸部材によって形成される各空洞部の方形寸法に合わせて方形状の枠体(3)を形成し,この枠体(3)の一面側に,枠体(3)の方形よりも一回り大きな方形状の構造合板(1)を,その周縁部(2)を張出して固着し,枠体(3)の中に適数本の補強桟(4)を架設すると共に,この補強桟(4)によって分割する枠体(3)内の各区画に断熱材(5)を埋め込んだことを特徴とする断熱パネル」と,考案の詳細な説明欄に,「壁面に嵌め込んで固着する本案の断熱パネルは,壁面の外側ばかりでなく,壁面の内側にも取り付けてもよい」(7頁11ないし14行)と各記載されており,同記載と刊行物2の第1図からすると,刊行物2には,「木造家屋における外壁下地構造に使用される断熱パネルにおいて,木造家屋の軸組を構成する軸部材によって形成される空洞部の方形寸法に合わせて形成した方形状の枠体(3)内に,枠体(3)の板材より高さの低い断熱材を枠体の一面側に固着した構造合板(1)の屋外側に付設した断熱パネル」という考案が記載されていることが認められる。
(3)刊行物3には,「断熱材としての硬質発泡ウレタンは,現在最もすぐれた断熱性を有するものである。これをパネル木枠内に注入発泡することにより,パネル内に組み込まれている下地材・筋違いを包み込み,厚さ100oの硬質発泡ウレタンパネルが一体形成される。」(32頁左欄14行ないし同右欄2行),「気密性を確実にするため,柱に接するパネル枠には軟質ウレタンシールが張設されている。さらに柱とパネルが接するラインには,室内側よりアルミテープをはり,二重に気密性の確保をはかっている。」(33頁右欄7ないし11行)と各記載されており,上記各記載からすると,断熱材として硬質発泡ウレタンを使用すること,気密性を確実にするために,柱とパネルが接するラインに室内側からアルミテープを貼ることの技術が記載されていることが認められる。
2進歩性の有無(1)本件明細書及び図面並びに刊行物1の記載からすると,刊行物1の壁体(1)は本件考案のパネル体に,刊行物1の枠(2)は本件考案の板材から成る壁枠体に,刊行物1の合板(3)は本件考案の壁板に,刊行物1の柱(5)及び横架材(6)は本件考案の柱及び土台にそれぞれ対応することが認められる。
そこで,本件考案と刊行物1に記載された考案とを比較する。両考案は,以下の点で一致する。すなわち,外壁を形成する柱により土台上に枠作りした枠体と,この枠体内に嵌着されるパネル体とからなる点,上記パネル体は,少なくとも,上下方向に延びる一対の同じ高さの第1の板材及び左右方向に延び,第1の板材と同一高さの一対の第2の板材が矩形状に連結された壁枠体と,壁枠体の室内側に止着された壁板とからなる点では一致する。他方,両考案は以下の点で相違する。すなわち,本件考案の構成要件BB,C@,CAに関して,@本件考案は,壁板の屋外側に,壁枠体の板材よりも高さの低い硬質発泡ウレタン板を付設した構成を有するのに対し,刊行物1記載の考案は同構成を有さない点,A本件考案は,枠体内に複数枚のパネル体を嵌着する場合もあり得る構成を有するのに対し,刊行物1記載の考案は同構成を有さない点,B本件考案は,枠体内に1枚のパネル体を嵌着した場合には,枠体とパネル体の壁板との継合部を覆うように,また,枠体内に複数枚のパネル体を嵌着した場合には,枠体とパネル体の壁板との継合部及び隣接するパネル体の壁板同士の継合部を覆うように室内側から気密テープを貼着する構成を有しているのに対し,刊行物1の考案は同構成を有さない点の各点で相違する。
(2)そこで,上記各相違点について検討する。
まず,証拠(乙26,74,75)によれば,刊行物1には木造建築物の壁体に関する考案,刊行物2には木造家屋の壁面等の断熱パネルに関する考案,刊行物3には木造断熱パルプ工法に関する技術がそれぞれ記載されており,いずれも同一の技術分野に属する記載がされている。
ア相違点@について前記認定したように,刊行物2には,構造合板(1)の屋外側に,枠体(3)の板材よりも高さの低い断熱材(5)を付設するという構成が記載されており,刊行物2の記載からすると,刊行物2の構造合板(1)は本件考案の壁板に,刊行物2の枠体は本件考案の壁枠体にそれぞれ該当するものと解される。また,刊行物3に例示されているように,断熱材として硬質発泡ウレタンを使用するという技術は慣用手段と認められる。したがって,刊行物1記載の考案に刊行物2記載の上記構成及び上記慣用手段を適用して,壁板の屋外側に,壁枠体の板材よりも高さの低い硬質発泡ウレタン板を付設した構成を付加することは当業者であれば極めて容易に想到できたといえる。
イ相違点Aについて枠体の大きさの変化に対応するために,枠体内に取り付けるパネル体の大きさを変えるか,同じ大きさの複数枚のパネル体を取り付けることにするかは,当業者であれば,適宜選択できる程度の設計事項にすぎず,刊行物1記載の考案に,枠体内に複数枚のパネル体を嵌着することを選択できる構成を付加することは当業者であれば極めて容易に想到できたといえる。
ウ相違点Bについて前記認定したように,刊行物3には,気密性を確実にするために,柱とパネルが接するラインに室内側からアルミテープを貼るという技術が記載されており,刊行物1記載の考案に,刊行物3記載の上記技術を適用して,枠体とパネル体の壁板との継合部,隣接するパネル体の壁板同士の継合部を室内側から気密テープを貼着する構成を付加することは当業者であれば極めて容易に想到できたといえる。
3以上より,本件考案は,刊行物1,刊行物2及び刊行物3の記載に基づき当業者が極めて容易に発明することができたものということができ,実用新案法3条2項の無効理由を有することは明らかである。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 佐野信
裁判官 谷有恒
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