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事件 平成 12年 (ワ) 12838号 不正競争行為差止等請求事件
原告 矢崎化工株式会社
訴訟代理人弁護士 海老原 元彦
同 竹内洋
同 田路至弘
同 吉原朋成
同 筬島 裕斗志
被告 スペーシア株式会社
被告 積水樹脂株式会社
被告 タキロン株式会社
上記3名訴訟代理人弁護士 那須弘平
同 酒井正之
同 伊従寛
同 横田高人
同 阪口春男
同 今川忠
同 中川裕茂
訴訟復代理人弁護士 山岸正和
補佐人弁理士 小谷悦司
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2002/01/30
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告らは,別紙製品目録のスペーシア欄各記載の製品を製造し,販売し,貸し渡し又は展示してはならない。
2 被告らは,前項記載の各製品及びこれらの製品の金型その他製造設備を廃棄せよ。
3 被告らは,原告に対し,連帯して金5136万円及びこれに対する被告積水樹脂株式会社及び被告タキロン株式会社については平成12年7月13日から,被告スペーシア株式会社については同年7月14日から,各支払済みまでいずれも年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 本件は,原告の製造販売するパイプ及びジョイントの形態が原告の周知な商品等表示であり,これと類似するパイプ及びジョイントを被告らが製造,販売することは,原告の商品と誤認混同を生じさせるとして,原告が被告らに対し,不正競争防止法2条1項1号,3条1項,民法709条に基づき,その製造販売等の差止め,廃棄及び損害賠償を求めた事案である。
2 前提となる事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨より認められる事実) (1) 当事者 ア 原告は,合成樹脂成型品及び合成樹脂製品の製造販売等を業としている株式会社である。
イ 被告積水樹脂株式会社(以下「被告積水樹脂」という。)は,合成樹脂製品及び関連複合製品の製造,加工,売買等を業とする株式会社である。
被告タキロン株式会社(以下「被告タキロン」という。)は,合成樹脂及び同製品並びに合成樹脂被膜金属製品の製造,加工,販売等を業とする株式会社である。
被告スペーシア株式会社(以下「被告スペーシア」という。)は,組立パイプ,継手,キャスター,棚板等の製造・加工及び販売等を業とする株式会社であり,被告積水樹脂及び被告タキロンの合弁会社として設立された。
(2) 原告の製品 原告は,昭和42年ころ,別紙製品目録矢崎化工欄各記載の,パイプ及びプラスチック並びに金属製のジョイント(以下これらを総称して「原告製品」という場合がある。)の販売を開始し,現在に至るまで,「イレクター」という商品名で上記製品を製造販売している。
原告製品は,別紙製品目録矢崎化工欄各記載の個々の製品を,需用者において自由に組み合わせることで,需用者が意図した完成品(棚,机,台車など)の製作を可能にするものである。
(3) 被告らの行為 被告らは,平成10年1月ころから,「スペーシア」の商品名で,被告積水樹脂及び被告タキロンの製造に係る別紙製品目録スペーシア欄各記載の製品(パイプ,プラスチック製ジョイント及び金属製ジョイント。以下,これら製品を総称する場合に,「被告製品」という場合がある。)を製造販売している。
3 争点 (1) 原告製品の形態等の商品表示性 (原告の主張) 原告製品及びその展示形態は,以下のとおりの形態的特徴を有し,その特徴によって,原告の商品であるという出所表示機能を有している。
ア 原告製品の形態 原告製品の形態は,商品形態として出所表示機能を有する。原告製品の形態上の特徴は別紙製品目録の「周知形状の主張」欄各記載のとおりである。共通の特徴を要約すれば,以下のとおりである。
(ア) パイプ 外径28ミリメートルの薄肉スチール製円筒管の外周面に接着剤を塗布し,合成樹脂を(2重構造に)被覆して成型した形状 (イ) プラスチック製ジョイント パイプを接続する1つ又は複数の円筒形状あるいは一部が欠けた円筒形状のプラスチック製ソケットが用途に応じた向きに配置され,各ソケットの内径をパイプ外径と略等しく形成している形状 (ウ) 金属製ジョイント パイプを接続する金属製ソケットを本体部分とともに複数に分割し,各分割片をボルト,ナットで締結する形態であって,各ソケットの内径をパイプ外径と略等しく形成している形状 イ 原告製品の組合せ形態 原告製品においては,購入する需用者が創意工夫をこらしその企図する完成品を製作できるようパイプやジョイント等の各製品(部品)を購入していくものであり,需用者の企図した完成品に至るまでの,各製品の組合せにより生ずる中間形態は,出所表示機能を有する。
ウ 店頭での展示形態 原告製品は,昭和52年以降,現在に至るまで,個々のパイプ,ジョイント等の陳列を,販売店側の陳列方法にまかせるのではなく,ほぼ一定の形式に従って展示販売している。
具体的には,原告製品で製作されたケースの中に,パイプを長さ別に分類して収納し,その横に原告製品で製作された5段から10段程度の棚を設置し,この棚の上に,各棚ごとに数個から10個程度の専用の箱を手前が下がる形で斜めに置き,その箱の中に,ジョイント,キャスター及び接着液やハンドパイプカッター(パイプ切断工具)などの付属品を,品番ごとにまとめて収納して陳列展示し,さらに,この棚の上部のスペース等に,製品の完成写真やジョイントの選択方法等を示したパネルを設置するとともに,場合によっては原告製品で製作されたテーブル,藤棚等の完成品を展示し,あわせて,カタログ等を,パイプ等が置かれたケースや棚の側に並べる方法で展示販売している。
このような,店頭での展示形態は,原告製品の特徴を端的に現すものであり,原告の商品であるという出所表示機能を有する。
(被告らの反論) ア 原告製品の形態 原告が主張する原告製品の特徴部分は,いずれも原告製品の材質,機能,又は製造方法であって,原告製品の形態的な特徴とはいえない。機能に係る部分は,いずれもありふれたものであり,また,そもそも機能に由来する必然的な形態については,独占を許すと自由な競争を阻害することになるから,不正競争防止法2条1項1号による保護は及ばないと解すべきである。
イ 原告製品の組合せ形態 組合せによる商品形態については,極めて多様かつ無限定なものであること,原告は各製品を組み合わせた完成品あるいは中間的な製品を販売しているのではないことに照らして,出所表示機能を有する商品の形態とはなり得ない。
ウ 店頭での展示形態 店頭での展示形態については,そもそも,出所表示機能を有する商品形態となるものではないのみならず,原告の主張する展示形態は,何らの特徴もない。
(2) 原告製品の商品形態等の周知性 (原告の主張) 原告製品等の形態は,昭和42年に原告製品の製造販売を始めた当初から,その多くにおいて現在製造販売されている原告製品と同一のものであり,被告らが被告製品の販売を開始するまでは,原告製品等の形態は,原告が独占的に使用してきた。さらに,以下の事実により,原告製品等の形態は,原告の出所を示すものとして周知となった。
ア ホームセンター店頭での展示 原告は,昭和52年ころから,全国のホームセンターにおいて,パイプ及びジョイント等の付属品その他接着液,ハンドパイプカッターなどを原告製品で製作された専用の棚に収納し,かかる販売コーナーに,完成品の写真やカタログを設置するという原告製品の展示形態を採用して,全国的にDIY商品の需用者に対する広告宣伝活動を展開してきた。また原告は,ホームセンター店頭において,原告製品の完成品を展示するなどして,需用者に対する直接的な広告宣伝活動も実施している。
イ カタログ・パンフレットの配布 原告は,原告製品の商品説明・組立方法・完成品の例などを掲載したカタログ・パンフレットを作成し,ホームセンター等で需用者に配布してきた。その発行部数は,平成2年から平成11年までの累計で約742万部に上る。
ウ ホームセンターでの講習会 原告は,昭和52年ころから,全国のホームセンターにおいて,原告製品の説明,部分品の選び方,完成品の例やその製作方法などの講習会を定期的に行っている。
これに対して,被告らは,当該講習会が一般消費者向けではないことを理由に,広告宣伝活動に当たらないと主張する。しかし,原告製品のようなDIY商品においては,販売時において,当該ホームセンターの担当者が需用者に対してその使用方法等を説明することにより,当該商品の販売が促進される面があるから,担当者に対して使用方法の講習会を行うことは,広く一般消費者に対する広告宣伝活動といえる。
エ キャラバン活動 原告は,原告製品を搭載した宣伝車で全国各地を巡り,製作実演や展示活動も行っている。当該キャラバン活動は,平成10年度だけでも,延べ稼働日数2033日,延べ稼働人員3800名以上,延べ走行距離29万キロ以上,費用約5500万円にも上っている。
オ DIYショウへの出展 原告は,昭和53年以降開催されているDIYショウにおいて,毎年原告製品を出展し,完成品の展示,その製作方法の説明などを行ってきている。平成10年度だけの出展費用でも約535万円を要している。
前記のとおり,原告製品のようなDIY商品においては,販売時におけるホームセンター担当者の説明により販売が促進される面があるから,直接の対象者がホームセンター業者等であるDIYショウへの出展も,需用者に対する広告宣伝活動の意義を有している。
カ 雑誌・テレビ番組での紹介 前記の原告による各広告宣伝活動に加え,原告製品は,DIY商品の需用者向けの雑誌やテレビ番組で紹介された実績も存在する。これにより,需用者に対する原告製品の周知性が一層高まっている。
キ イレクター大賞の実施 原告は,広告宣伝活動の一環として,原告製品の需用者に対し,原告製品により製作した作品を出品してもらい,その中から優れた作品を選出し,大賞等の表彰を行う「イレクター大賞」というコンテストを実施した。これにより需用者に対する原告製品の周知性がより一層高まっている。
(被告らの反論) 原告は,講習会やキャラバン活動,雑誌やテレビでの紹介などを周知性獲得の理由として主張する。しかし,これらの活動は,いずれも商品形態の特徴に関する宣伝活動ではない。
また,研修会やDIYショウは一般消費者向けではないし,雑誌等にとりあげられた回数も極めて少なく,キャラバン活動もメディアを利用した宣伝に比べると範囲は狭いので,一般消費者向けの宣伝活動とはいえない。
(3) 原告製品と被告製品の類似性,混同のおそれについて (原告の主張) 以下のとおり,被告製品の形態は原告製品の形態と同一又は類似であり,需用者は,原告製品と被告製品とを混同するか,又は混同するおそれがある。
ア 各製品の形態における同一性,類似性 被告製品と原告製品との製品形態における比較は,別紙商品形態比較表各記載のとおりである。被告製品は,原告製品において周知性を獲得している部分を含め,基本的な形態が同一ないしほぼ同一である。
イ 個々の製品の組合せにおける同一性,類似性 個々の製品の形態が同一又はほぼ同一であり,これらを組み合わせて完成品を作成するという製品の販売意図が同一であることから,製品の組合せにおける形態においても,被告製品と原告製品は同一又は類似である。
ウ 店頭での展示形態における同一性,類似性 被告製品の店頭での販売時の展示形態は,店頭の1コーナーに原告製品展示用の棚と酷似した専用の棚を設置し,ここに合成樹脂で被覆されたスチール製パイプを縦に陳列し,合成樹脂製及び金属製のジョイント等の附属品及びこれらのパイプとジョイントを接着するための接着液やハンドパイプカッター等を,棚に陳列し,販売用に展示している。
被告製品と原告製品は,店頭での展示形態において類似する。
(被告らの反論) 被告製品の商品形態等は,以下のとおり,原告製品の商品形態等と類似していない。また,商品の出所についても,誤認混同を生じさせない。
ア パイプ 原告製品のパイプには,形態的な特徴はない。外径約28ミリメートルというサイズも,1インチ(25.4ミリメートル)の鋼管に合成樹脂の被覆をした場合の当然のサイズであり,同一サイズの他社製品も数多く存在する。また,外観上の相違点として,原告製品のパイプが3色しか存在しないのに対して,被告製品のパイプは4色存在し,色彩面の品揃えがよいし,色彩についてはほとんど類似していない。また,原告製品のパイプの表面は艶があるのに対して,被告製品のパイプの表面は,質感をよりよく向上させるため,艶を消している。
イ プラスチック製ジョイント 被告製品のプラスチック製ジョイントは,原告製品と外観上も異なるばかりでなく,仮止め突条(リブ)及びフラット面が存在することにより,機能上及び外観上の差異がある。
(ア) 仮止め突条(リブ) 被告製品には,ソケットの内部に,パイプと接続するときに接着剤を使用せずに仮に固定できる仮止め突条(リブ)が付けられており,使用者は,パイプと合成樹脂製ジョイントを仮に固定して完成品の状態まで組み立てることができ,完成品が所望の形になるかどうかを確認してから,接着剤を順次注入して固定することができる。
(イ) フラット面 被告製品には側面にフラット面が存在する。フラット面は外観上,被告製品に独得の商品形態を付与するとともに,組み立て時において,作業性・安定性・正確性を高め,天板がそのまま安定的に設置できるなどの優れた機能を付与している。
(ウ) 商標の明示 被告製品では,商品名である「スペーシア」の商標が明記されているのに対して,原告製品には「yazaki」の商標が明示されている。
ウ 金属製ジョイント 被告製品と原告製品とは,以下の点で相違する。
(ア) つかみシロ 被告製品のうち,T字型の金属製ジョイントにおけるパイプのつかみシロ(パイプを把握する部分)の面積は,原告製品のI字型の金属製ジョイントよりも大きく,外観も異なる。パイプを把握するつかみシロの面積が大きければ,パイプを把握する強度も高く,かみ合わせのツメ部分も安定感が大である。
(イ) つかみシロの溝 被告製品の短辺側つかみシロには数本の溝が刻まれているのに対して,原告製品の短辺側つかみシロには存在せず一見して明らかに異なる。
(ウ) 噛合せツメの形態 被告製品の噛合せツメは,凸部3箇所,凹部3箇所であるのに対して,原告製品の噛合せツメは,凸部2箇所,凹部2箇所であり,一見して明らかに異なる。
(エ) 商標の明示 被告製品には,「スペーシア」の商標が明示されているのに対して,原告製品には「yazaki」の商標が明示されている。
(4) 損害額 (原告の主張) 原告は,被告らの不正競争行為により,以下の損害を被った。
逸失利益 被告らが,被告製品を製造,販売することにより,原告製品の販売額が減少した。販売額の減少は,被告らの不正競争行為と因果関係のある損害である。
被告らの不正競争行為により,販売が中断された原告製品の販売店からの売上額を,平成10年度の年間売上額から算出すると,平成12年3月までで総額約7121万円であり,被告らの不正競争行為がなければ,販売店は,少なくとも従前の売上と同程度の売上を見込めたものである。
そして,原告製品の売上げに対する平均利益率は,少なくとも3割を下ることはない。
被告らの不正競争行為と因果関係のある損害は,2136万円となる。
弁護士費用 原告は,被告らの不正競争行為に対処するため,本件訴訟提起を原告代理人らに依頼し,着手金及び報酬金として,3000万円の支払を約した。
ウ まとめ よって,原告は,被告らに対し,民法709条に基づき,不法行為による損害賠償請求として5136万円及び遅延損害金の支払を求める。
(被告らの反論) 争う。
争点に対する判断
1 争点1及び2(原告製品の形態の商品表示性及び周知性)について (1) 前提となる事実,証拠(各認定部分に表記した。枝番号の記載は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
ア 原告製品の販売の経緯等 (ア) 原告は,昭和42年ころから,パイプとプラスチック製ジョイントなどを,需用者において組み合わせることにより様々な実用品(棚,ガレージなど)を製作することができる製品を,「イレクター」の商品名で発売した。これら商品は,発売当初においては,現在の原告製品のようなバリエーションの豊富な多種のジョイント類で構成されていたものではないが,パイプには合成樹脂を被覆し,ジョイントにはパイプを接続する1つ又は複数の円筒形状のプラスチック製ソケットが用途に応じた向きに配置され,各ソケットの内径をパイプ外径と略等しく形成する形状とした。上記基本形状は,現在製造販売している原告製品に受け継がれている(甲5)。原告はこれらジョイントについて,意匠登録を受けるなどしていた(甲3)。その後,原告はジョイント等について品揃えを拡充し,昭和58年ころには,パイプ,プラスチック製ジョイント,金属製ジョイントからなる現在の原告製品の品揃えのうちの多くのものが製造販売されるようになった(甲5)。
(イ) 原告は,昭和52年ころから,これら製品を店頭で販売する際,ケースの中に,パイプを長さ別に分類して収納し,その横に5段から10段程度の棚を設置し,この棚の上に,各棚ごとに数個から10個程度の専用の箱を置き,その箱の中に,ジョイントなどを,品番ごとにまとめて収納して陳列展示するという方法を採用し,さらに,この棚の上部のスペース等には,完成写真やジョイントの選択方法等を示したパネルを設置した。また,原告製品で製作されたテーブル等の完成品を展示するなどの例もある。平成3年ころには,上記ジョイントなどを置く箱を,手前が下がる形で斜めに置くようになった(甲4)。
(ウ) 原告は,原告製品の販売促進のため,昭和52年ころからホームセンターなどでの展示販売を実施したり(甲7),昭和53年ころからDIYショー(需用者の創意工夫により部品を組み合わせるなどして需用者の意図する品を完成するという,DIY活動を促進する企画)にも出展したり(甲9,10),昭和58年ころからホームセンターの原告製品販売担当者に対する研修会を行ったり(甲6),製作の実演や展示を行うキャラバン活動も行うなどし(甲8),需用者の製作した作品を募集し,優れた作品には,イレクター大賞等として賞品を出すなどの活動も行っている(甲26ないし29)。また,原告製品は,平成9年にはプランターを自作するための製品としてテレビに(甲12),平成10年ころには収納ボックス等を自作するための製品として雑誌に,それぞれ紹介された(甲11)。
(エ) 原告の製品カタログには,「パイプとジョイント(継手)を組合せていろいろな物が作れます。」「パイプは鉄ノコギリで簡単に切ることが出来,加工しやすく考えられています。」「原告製品パイプは,鋼鉄パイプに,プラスチックを接着被覆してありますので,丈夫で軽く,さらにパイプ内面には塗装が施してあるため,錆びに強く,清潔さを長く保つことができます。」「ジョイントは,プラスチック製と金属製があり様々な用途に使用できるよう豊富な種類を揃えてあります。」「金属製ジョイントは,ボルト・ナットによる締付け固定ですので組立分解が可能です。」「自在ジョイントは,角度を自由に設定することができるもので,2つの部品を組合わせて,1つのジョイントの機能を発揮する新しいタイプのジョイントです。」などの説明がされている(甲5)。
イ 被告製品の販売の経緯等 被告らは,平成10年1月ころから,被告製品を「スペーシア」の商品名で製造販売を始めた。被告製品も,パイプと各種ジョイントの組合せにより,需用者の意図する完成品を自由に製作することができることを特徴としている。被告製品のジョイントのうちの一部については,意匠登録を受けたものもある(乙30,32ないし42,44ないし47)。
ウ 同種製品等の販売状況 被告タキロン株式会社は,遅くとも昭和49年ころには,鋼管に塩化ビニル(合成樹脂)を被覆したパイプと,アルミダイキャスト製ジョイントを販売しており,これは,パイプとジョイントを組み合わせることで,需用者の意図する完成品の製作を可能とするものであった。ただし,上記ジョイントは,パイプを接続する1つ又は複数の接続部分が用途に応じた向きに配置されているものの,各接続部分の外径の最大寸法をパイプ内径と略等しく形成している(乙3)。なお,遅くとも昭和36年ころには,金属パイプの外周に合成樹脂を被覆することは技術的には公知となっており(乙2),そのころには,パイプを接続する1つ又は複数の円筒形状のソケットが用途に応じた向きに配置され,各ソケットの内径をパイプ外径と略等しく形成するという形態の金属製継手(ジョイント)の存在及び形状も知られていた(乙5)。また,被告製品が発売されるころには,上記形態を有するプラスチック製ジョイントも,パイプと組み合わせて物干しやタイヤラックを製作するパーツの一部として,あるいはパイプ手すりの取り付け道具等として単体で,販売されていた。これらジョイントには,三角形状等のリブを有するものも存在する(乙5)。
(2) 上記認定した事実を基礎として,原告製品の商品形態等が,周知な商品等表示となったか否かについて検討する。
商品の形態は,必ずしも商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが,商品の形態が他の商品と識別し得る独特の形態を有し,かつ,商品の形態が,長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は,短期間であっても商品形態について強力な宣伝等が伴って使用されたような場合には,商品の形態商品等表示として需用者の間で広く認識されることがあり,そのような場合には,商品の形態が不正競争防止法2条1項1号により保護されるのが相当である。そこで,この点について,以下検討する。
ア 原告製品の形態的特徴について パイプ1種,プラスチック製ジョイント65点,金属製ジョイント23点の原告製品につき,その形態的特徴部分により,出所表示機能を有しているか否かについて,個別的に検討する(各製品の形態は,それぞれ,別紙製品目録矢崎化工欄に各図示されているとおりである。)。
(ア) パイプ 原告は,原告製品のパイプは,外径28ミリメートルの薄肉スチール製円筒管の外周面に接着剤を塗布し,合成樹脂を(2重構造に)被覆して成型した形状が,原告の製品として周知である旨主張する。
しかし,外径や合成樹脂製の被覆については何ら需用者に印象を与える特徴的な形態とはいえないのみならず,前記(1)ウで認定したとおり,これらの特性を有する製品は被告製品の販売以前にも存在したのであるから,原告主張の形状は原告製品に特徴的な形態とはいえない。
(イ) プラスチック製ジョイント 原告は,各プラスチック製ジョイントの形状のうち,共通の特徴として,パイプを接続する1つ又は複数の円筒形状あるいは一部が欠けた円筒形状のプラスチック製ソケットが用途に応じた向きに配置され,各ソケットの内径をパイプ外径と略等しく形成している形状が,原告の製品としての特徴的な形態であると主張する。
a 原告製品のうち,別紙製品目録のプラスチック製ジョイントの番号1ないし12,15ないし29,31ないし36,44ないし50,52ないし55,62については,原告が主張するような共通の形態を有している(各製品ごとにソケットの数やパイプを接続させる方向等によりそれぞれ個々の形状のものに分かれ,ソケット間に垂直方向や三角形状等のリブがあるものも存在する。)。
しかし,上記形態は,パイプを数種類のジョイントによって需用者の思うように組み合わせるという,原告製品の機能や目的に由来するものであって,需用者に強い印象を与えるような特徴的な形態とはいえない。また,前記(1)ウで認定したとおり,このような形態を有するジョイントは,被告製品が発売されるころには既に存在していたから,これらが原告製品の特徴的な形態であるとはいえない。また,上記製品のうち,三角形状のリブ(原告製品の番号1,2,5ないし7,9ないし12,15,17,21,27ないし29,31ないし34,36,48,49,52)及び水平,直角方向及びその他の形状のリブ(同23ないし26,35,47ないし50,53ないし55,62)があるものについても,これらのリブの存在は需用者に強い印象を与えるような形状とはいえず,また,全体形状もありふれたものであるといえる。
b 番号13については,パイプを接続するソケットの孔の中央部に行き止まり壁が配置され,両側のソケットの外径と内径を同一とし,合成樹脂で一体成形した形状が,また,番号14においてはパイプを接続するソケットの孔が貫通して配置され,前記ソケットの外径と内径を同一とし,合成樹脂で一体成形した形状が,それぞれ原告製品としての特徴的形態であると主張するが,これらはいずれも外観上は単なる円筒状の形状にすぎず,何ら特徴的な形態ではない。
c 番号30については,パイプを接続する垂直方向の円筒形状ソケットが平らに閉じた上端から上向きに立上る一対のヒンジ片を,他方水平方向のソケットは下底面部に下向きに突き出される一対のヒンジ片をそれぞれ有し,前記2つのソケットのヒンジ片を嵌め合せて傾動自在に連結した配置とされ,水平方向ソケットは前記2つのソケットを連結した連結点を中心として,偏位して配置し,水平方向ソケットの円筒壁の一部がパイプを嵌め込める幅でやや斜め上向き位置に欠け,各ソケットは外径と内径を同一とし,合成樹脂で一体成形した形状,及び角度可変状態であっても,その可変的形状が,原告製品としての特徴的形態であると主張するが,これについてもパイプを角度可変可能につなぐためのジョイントのごく通常有する形態であるということができ,外観上は何ら特徴的な形態を有してはいない。
d 番号37については,円筒壁の一部がパイプを嵌め込める幅で欠け,合成樹脂で一体成形した形状が,また,番号38においてはパイプの端部の外周へ嵌める有底筒状体であり,合成樹脂で一体成形した形状が,それぞれ原告製品としての特徴的形態であると主張するが,これらの形態も,外観上単に円筒の一部が欠けた形状にすぎず,特徴的な形態とはいえない。
e 番号39及び40はパイプの端部の内周へ嵌める有底筒状体あるいはパイプを接続する円筒形状ソケットと組み合わされたキャップであり,合成樹脂で一体成形した形状が,また,番号41ではジョイントの端部の内周へ嵌める,やや大径の円形板部と,その片面に同心円状に筒部を配置し,前記筒部の中空部内に十字形状にリブを配置してなり,合成樹脂で一体成形した形状が,それぞれ原告製品としての特徴的形態であると主張するが,これらの形態もキャップのごく通常有する形態であり,番号41の十字形状のリブも,ありふれたもので特徴的な形態とはいえない。
f 番号42,43,51についても,これらはいずれも外観上単なる円筒形,円筒を組みあわせた形,あるいは円筒に一部突起のある形であり,特徴的な形態とはいえない。
g 番号56ないし61はいずれもパイプを壁等に取り付けるためのものであり,壁への取り付け部とソケットから構成されているものであるが,これも何ら特徴的な形態とはいえない。
h 番号63はパイプを接続するソケットと略J字形のパイプ受け部からなるもの,番号64,65はいずれも円筒壁の一部がパイプを嵌め込める幅に欠け,これに正方形のボスを設けた形状のものであるが,これらも何ら特徴的な形態を有するものではない。
(ウ) 金属製ジョイント 原告は,金属製ジョイントの形状のうち,原告製品としての共通の特徴として,パイプを接続する金属製ソケットを本体部分とともに複数に分割し,各分割片をボルト,ナットで締結し,各ソケットの内径をパイプ外径と略等しく形成している形状を有することであると主張する。そして,原告製品のうち,別紙製品目録の金属製ジョイントの番号1ないし5,7ないし21,23(ただし番号8,11については凹部のみで締付け部はない。)のように,ボルト頭,ナットを沈める深さの凹部を有し,ソケットの円周方向にパイプ締付け部を成形した形状のものがあり,また,番号7,23のように,パイプの接続角度が可変な形状のものがあり,これらの形状は,原告製品としての特徴的形態であると主張する。
しかし,これら共通の形状,凹部及びパイプ締付け部は,いずれもジョイントによってパイプを需用者の希望するように組み合わせ,ボルト・ナットによる締付け固定をすることで,組立分解可能にするという,金属製ジョイントがごく通常有する形態であるといえる。また,可変的形状についても,パイプを角度可変可能につなぎ合わせるというジョイントがごく通常有する形態であるということができ,外観上も何ら特徴的な形態を有してない。金属製ジョイントの全体の形態についても,需用者に強い印象を与えるようなものでもない。
イ 原告の主張する他の形態的特徴について 原告は,原告製品の組合せによる商品形態,原告製品の店頭における展示形態についても,原告製品としての特徴的形態であると主張する。
しかし,原告製品の組合せによる商品形態は,需用者が所望の完成品を製作する過程で現れる形態であって,購入する際に商品の形態として需用者に認識されるものではない。また,原告製品の店頭における展示形態は,本件全証拠によっても,原告製品の個別の形態とあいまって,商品の出所表示機能を有するに至っているものとは到底認められない。
ウ 小括 以上によれば,原告の主張に係る原告製品の形態的特徴のうち,原告の商品であるという出所表示機能を有するものは存しないというべきである。
2 結論 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 今井弘晃
裁判官 石村智
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