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関連ワード 周知表示混同惹起行為(2条1項1号) /  周知性 /  商標登録 /  需要者 /  信義則 /  同一の表示 /  商品等表示 /  普通名称 /  出所表示性(出所表示) /  特定性 /  類似性(類似) /  外観 /  観念 /  印象 /  記憶 /  連想 /  混同のおそれ(混同) /  表示の使用 /  適用除外 /  一般名称(一般的名称) /  普通に用いられる方法 /  誤認混同 /  差止請求(差止) /  因果関係 /  利益額(利益の額) /  デザイン /  侵害 /  特別顕著性 /  代理人 /  代表者 /  識別力 /  混同のおそれ(混同) /  品質誤認惹起表示(2条1項13号) /  営業誹謗行為(2条1項14号) /  品質等誤認表示(誤認) /  虚偽の事実 /  損害賠償 /  損害額 /  営業上の信用 / 
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事件 平成 13年 (ネ) 198号 損害賠償等,売買代金,同請求各控訴事件
199号事件控訴人・198号事件被控訴人 (第1事件1審原告) マイタケプロダクツインコーポレーテッド (以下「原告マイタケプロダクツ」という。)
同代表者代表取締役 A199号事件控訴人・198号事件被控訴人(第1事件1審原告・第2事件 1審原告兼反訴被告) 株式会社サン・メディカ (以下「原告サン・メディカ」という。)
同代表者代表取締役 B
同2名訴訟代理人弁護士 苗村博子
同 岩谷敏昭
同 国谷史朗
同 若林元伸
同 長澤哲也
同 畑郁夫198号事件控訴人・199号事件被控訴人 (第1事件1審被告,第2事件1審被告兼反訴原告) 株式会社ベルダ (以下「被告」という。)
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 岩坪哲
同 井上裕史
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2001/09/27
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 198号事件控訴に基づき,原判決主文一,二項を次のとおり変更する。
(1) 被告は,原告らに対し,金1137万7475円及びこれに対する平成12年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 原告らのその余の請求を棄却する。
2 199号事件控訴に基づき,原判決主文五項を次のとおり変更する。
(1) 原告サン・メディカは,被告に対し,金39万9449円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被告の原告サン・メディカに対するその余の請求を棄却する。
3 198号事件及び199号事件のその余の各控訴をいずれも棄却する。
4 訴訟の総費用は,これを10分し,その1を被告の,その余を原告らの各負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
(198号事件) 1 被告 (1) 原判決中,被告敗訴部分を取り消す。
(2) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも原告らの負担とする。
2 原告ら (1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は,被告の負担とする。
(199号事件) 1 原告ら (1) 原判決中,第1事件のうち損害賠償請求に係る原告ら敗訴部分並びに第2事件本訴のうち原告サン・メディカ敗訴部分及び第2事件反訴部分を取り消す。
(2) 被告は,原告らに対し,金8855万4894円及びこれに対する平成12年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被告は,原告サン・メディカに対し,金238万5656円及びこれに対する平成9年11月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(4) 被告の第2事件反訴請求を棄却する。
(5) 訴訟費用は,第1,2審とも被告の負担とする。
(6) 仮執行宣言 2 被告 (1) 本件控訴をいずれも棄却する。
(2) 控訴費用は,原告らの負担とする。
(以下「原判決別紙表示目録」を「別紙表示目録」,「原判決別紙印刷物目録」を「別紙印刷物目録」という。)
事案の概要
1 第1事件は,原告らが,被告に対し,@被告による別紙表示目録二ないし五記載の表示(以下,順次「イ号表示」ないし「ニ号表示」,又はこれを総称して「被告表示」という。)の使用は,不正競争防止法(以下,「法」というときは同法を指す。)2条1項1号に該当する,A被告による別紙印刷物目録一,二記載の広告チラシ(以下「本件印刷物」という。)の配布は,原告らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布する行為として法2条1項13号に該当する,B被告は,イ号及びロ号表示の使用を開始する前1年以内に原告らの代理人等であったものであり,被告によるイ号ないしニ号表示の使用は法2条1項14号に該当するとして,イ号ないしニ号表示の使用差止め及び本件印刷物中の記載の抹消等を求めるとともに,被告商品の販売等により被った損害の賠償として金1億0050万円及びこれに対する平成12年4月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
第2事件本訴は,原告サン・メディカが,被告に対し,売掛残代金342万4946円及びこれに対する平成9年11月1日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,第2事件反訴は,被告が,原告サン・メディカに対し,同原告代表取締役の不法行為に基づく損害賠償請求権のうち上記売掛残代金との相殺に供した後の残額金318万4554円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
2 これに対し,原判決は,第1事件のうち損害賠償請求を一部認容し,第2事件のうち本訴請求の一部と反訴請求の全部をそれぞれ認容したので,被告は,原判決中,第1事件のうち損害賠償請求及び第2事件本訴請求の各認容部分につき,他方,原告らは,原判決中,第1事件のうち損害賠償請求の棄却部分につき,また,原告サン・メディカは,原判決中,第2事件の本訴請求の棄却部分及び反訴請求の認容部分につき,それぞれこれを不服として控訴を提起した。
3 争いのない事実等,争点,当事者の主張は,次のとおり付加,訂正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」の一,二,「第三 争点に関する当事者の主張」の《第1事件》の一〜四,同《第2事件》の一,二にそれぞれ記載のとおり(ただし,第1事件に係る原告らの被告に対する損害賠償請求以外の請求のみに関する部分は除く。)であるから,これを引用する。
4 原判決の訂正等 原判決10頁末行の「被告事件」を「被告商品」と,同13頁2行目の「販売により」を「販売及び本件印刷物の配布により」と各改め,同17頁10行目の「あるか」の次に「。」を加え,同48頁4行目の「加盟点」を「加盟店」と,同66頁2行目の「争点5」を「争点4」と各改める。
5 当審における当事者の主張 【第1事件】 (1) 被告の主張 ア 争点1(一)(原告表示の周知性の有無)について 原告表示は,次のとおり,出所表示機能を獲得しておらず,したがって周知ともいえない。
(ア) 本件で提出された原告表示に係る周知性の認定資料のうち,最も一般消費者に対する訴求力を有するTBSのテレビ番組「スペースJ」(平成8年9月11日放映),写真週刊誌「フライデー」の本件商品の紹介記事(平成8年11月1日号),週刊現代「日本人が開発して世界が認めた『がんに効くクスリ』3」と題する記事(平成9年3月15日号)は,いずれも,化学物質たる「Dフラクション」の発見者であるD教授の功績の紹介を中心に同物質の効能・用途の説明を行ったもので,原告表示自体の取扱いは極めて小さく(乙11の2・6),これらによって一般消費者が原告の出所を表示するものとして原告表示を印象づけられることはない。また,その余の紹介記事や宣伝広告においても,多くは記事中の囲み広告等の小さな取扱いのもので,一般読者にとって格別注意を引くものではなく,その宣伝広告等の期間も長期にわたるものではないから,原告表示が,原告の出所を示すものとしての出所表示機能を獲得したものとはいえない。
(イ) 原告表示を構成する「Dフラクション」の語は,遅くとも被告商品が販売開始された平成9年10月ころには,健康食品に関心のある需要者等の間では,「マイタケから熱水抽出され,免疫活性化機能を有する物質」を示す普通名称(物質名称)として認識されていたものであり,「Dフラクション」の称呼及び観念自体は,健康食品の原材料を示すものとして,当初から特定事業者の出所を表示する機能を持ち得なかったものである。
(ウ) また,仮に原告表示が何らかの出所表示機能を有していたとしても,原告らが商品等表示周知性を獲得したと主張する時期の約半年前には,競合商品である雪国まいたけの商品が「MDフラクション」なる商品名の下に多大な訴求力をもって宣伝広告されていたから,これと同時期に原告表示が使用されたとしても,これが原告のみの出所表示として一般消費者に認識されていたものとは解されず,その意味で,原告表示の出所表示機能は大いに減殺されていたか,又は失われていたものである。
イ 争点1(二)(原告表示とイ号及びロ号表示との類似性判断)について イ号及びロ号表示は,次のとおり,原告表示に類似しない。
(ア) 原告表示における「Dフラクション」のデフォルメは,@活字調の「D」を,A縦方向に圧縮し,B縦線と曲線中央部分を太く強調し,C赤文字としたものであるのに対し,イ号表示は,@'筆書き状の「D」を,A'縦方向に圧縮することなく,B'縦線を細く,曲線部分を太く強調し,C'赤文字とし,D'「D」の縦中央部にかかるように黒字の細ゴシック体の「SUPER」との記載を施したものである。
原告表示とイ号表示とは,@@'の点で異なり,AA'についても,「D」の部分の縦横比につき,原告表示が1:3.7であるのに対し,イ号表示のそれが1:0.85であるから全く異なる。また,BB'についても,縦線の強調の有無で異なるし,また,イ号表示の縦線は曲線下端より更に下部より始まり,縦線白体もやや曲線部分とは逆方向にたわんで,上端に達しないまま途中で途切れている点でも相違する。しかも,曲線中央部分の強調について,原告表示では,曲線部上端から中央部に至るまでと下端から中央部に至るまでの太さの増加率が同一であり,全体に幾何学的なデザインであるのに対して,イ号表示は,曲線部上端は当初より太く,曲線部中央で更に太くなった後に,曲線部下端で細くなっており,曲線部分の上半分が全体的に太く,下半分が全体的に細く両者は相違している上,全体に筆書き状の優しい感じのデザインになっている。なお,D'「D」の縦中央部にかかるように配された黒字の細ゴシック体の「SUPER」なる記載は,デフォルメされた「D」との関係で看者の目に必ず留まるものであるから,その存在を軽視することはできない。
(イ) また,「D」の下に記載された「フラクション」の記載についても,原告表示では,E「D」の幅にほぼ収まる範囲で,F黒字の,Gイタリック体で,H「fraction」と記載されているのに対して,イ号表示の記載は,E'「D」の幅にほぼ収まる範囲で,F'黒字の,G'細ゴシック体で,H'「FRACTION」と記載し,I'その下に下線を配置し,J'更にその下に極小文字で「EXTRACT」との記載がある。すなわち,イ号表示は,G'H'I'J'の点では,原告表示と全く異なっている。さらに,E'の点では,両者の「D」のデフォルメは全く異なり,イ号表示の「D」の幅は,原告表示に比し割合的に小さくなっているから,「FRACTION」との記載は原告表示の「fraction」より際立って小さく記載されている。
(ウ) そうすると,原告表示とイ号表示との類似点は,AA'デフォルメされた「D」の記載が赤文字であり,FF'「フラクション」の記載が黒文字であるとの点にすぎず,かかる色使いは極めて一般的なものであり,それ故に一般消費者が両者を誤認混同することは考えられない。
(エ) また,不正競争防止法上の類似は,取引の実情のもとに判断されるべきところ(最高裁昭和58年10月7日判決・民集37巻8号1082頁,同昭和59年5月29日判決・民集38巻7号920頁),本件商品に実際に付されている表示は,更に被告商品等表示との違いを際立たせるものである。すなわち,本件商品にあっては,商品等表示の一連の文字の上側ラベル上辺は,青色の帯となり,白抜きで「Grifron-pro」と表され,その下部の「D」との間に「MAITAKE」の細身の赤色文字が大書され,「MUSHROOM」の青色文字と2段書きに表されている。ラベルの下辺は赤色の帯であり,内容量が欧文字で白抜きで表されている。背景部分は白色である(乙54)。これに対し,被告商品における表示では,ラベルの上下端は細幅の白色の帯であり,上記各文字図形グループの背景色は,やや濃いめの肌色である。なお,上記各文字図形の上部には黒色の極小のゴシック体で内容量が示されている(乙54)。その結果,両表示から看者が受ける印象が全く異なるものとなることは明らかである。
(オ) さらに,原告マイタケプロダクツは,原告表示と同一の構成を有する商標の出願審査過程において,原告表示の特徴につき「該『D』状図形のように,『D』状図形の下部に沿って円弧状に配されている『fraction』の文字とほぼ同じ程度に幅広く,かつ上下方向に圧縮したように書されることは一般的であるとは言い難く,一種独特のデザインであると認められる。」と述べている(乙38の5・4頁4行〜6行)。ところが,本件においては,翻って原告ら表示の特徴を抽象化し,単に「デフォルメされた『D』の赤文字とその下の『フラクション』の黒文字であるのみである」と主張することは許されない。
(カ) そして,ロ号表示は,「FRACTION」の下の小文字が「TABLET」である点以外はイ号表示と同一の外観を有しているから,同様に,原告表示と類似しないことは明らかである。
(キ) なお,「Dフラクション」の称呼及び観念は,上記のとおり,普通名称として,出所表示機能を有する部分とは認められないから,称呼及び観念類似性を本件の類似性判断の基礎とすることはできない。けだし,「普通名称」に特殊なロゴを施す等により,商品等表示が特に出所表示の機能を獲得した場合でも,当該特殊なロゴを離れて,普通名称の称呼や観念類似性判断の基礎とすることは,他に特殊なロゴを用いて当該「普通名称」を使用する者を排除する結果となり,最初に用いた者に当該「普通名称」の独占を許すという不合理な結果を帰結することになるからである。
ウ 争点1(四)(「普通に用いられる方法」)について 原告らが特殊なロゴをもって普通名称を使用したり付加語を使用している場合には,被告も同じロゴを使用したり同じ付加語を使用している場合は法11条1項1号にいう「普通に用いられる方法」での使用に当たらないとして適用除外から除かれるが,原告らの表現形態が何ら特殊でない場合や,原告らが特殊なロゴや付加語を用いている場合には,適用除外の対象となると解すべきところ,上記のとおり,原告表示とイ号及びロ号表示の外観類似しないのみならず,原告表示自体,活字調の「D」の文字とイタリック体の「fraction」とを近接させ,一見して「Dフラクション」と読めるものであって,何ら特殊なロゴではなく,その意味でも使用態様の特殊性が否定されるものであるから,イ号及びロ号表示は法11条1項1号所定の適用除外の対象となる。
エ 争点4(損害額)について 被告商品は,当該期間中(平成9年10月1日から平成10年3月31日まで)の被告の主力商品であり,売上高の39%を占めていたのであるから,被告商品の販売をやめれば被告の事業は立ち行かなくなり,役員報酬や給料が支出されることもなくなるという意味で,これらの販売費及び一般管理費の支出と被告商品の売上高の獲得との間には相当因果関係が存在する。
したがって,法5条1項の「利益の額」の算定上,固定費であっても控除の対象とされるべきである。
(2) 原告らの主張 ア 争点1(二)(原告表示とハ号及びニ号表示との類似性判断)について ハ号及びニ号表示は,本訴が提起されてから数か月後に,被告において,急きょ,イ号及びロ号表示に替えて使用するようになったもので,イ号及びロ号表示が付されていた商品と同一の商品に用いられ,これらの表示にアルファベットの「M」の大文字に「aitake」の小文字を小さく加えて外観,称呼の類似性を若干減じさせたにすぎず,イ号及びロ号表示を見慣れた者にはこれらの表示と極めて強い類似性を有するものであるから,その使用は,需用者等の原告表示との混同のおそれを払拭するものではない。
イ 争点1(三)(「Dフラクション」の普通名称性)について 「Dフラクション」は,出所表示機能を備えた商品名に他ならず,これが特定物質を示すものとして普通名称化している事実はない。
(ア) A-fraction,B-fraction等は,一般に科学論文中で抽出物や分離物を指す際の仮称として用いられるもので,F教授も「4度目に抽出された画分」の意味で仮称として「Dフラクション」との語を使用したにすぎない。その後,これが「D画分」と和訳されたり,F教授がこれをMDフラクションと称し始めた事実にかんがみても,同教授が,マイタケから抽出された免疫機能増強作用を有する特定の化学物質を「Dフラクション」と名付けたものでないことは明らかである。
(イ) 上記化学物質については,「MT-1」,「MT-2」等の仮称が用いられたことがあり,その後「Dフラクション」なる仮称が用いられたが,化学文献の中では平成12年の時点でも「MDフラクション」あるいは「MD分画」なる仮称が用いられた例もある(甲63,64等)。このように,使用される仮称自体が変遷しており,現時点でも一定した使用がなされておらず,当該仮称に託された概念内容も広狭変遷し,あるいは特定性を欠いている。「Dフラクション」の語は,用語としての概念が特定されるに至っておらず,普通名称となるまでには成熟していない。
(ウ) 「D-Fraction」などという語は,まさに造語ですらあり,この用語を本来の意味の「D画分」とか,ある特定の構造を有する物質名であると理解するのは極めて少数の専門家だけである。「Dフラクション」なる語は,普通人には声に出すと極めて響きのよい造語であり,語感からして出所表示機能を十分備えた語であって,原告らは,これをロゴ化し,原告らの出所を表示するものとして周知化させるのに,多額の宣伝費を投入して商品名として熟成させたのである。
このように原告らの宣伝広告により,商品等表示の周知化が認められるに至った場合には,その宣伝広告費の出捐者である原告らに独占適格が生ずるのは当然である。法11条1項1号適用除外とされている「普通名称等」とは,商品を自他識別する力のないありふれた普通名詞を指しており,もともとは普通名詞であったとしても,それが商品等表示として使用し,工夫されることによって出所表示機能を獲得したような場合まで適用除外とする趣旨ではない。
(エ) 商品名を半ば成分表示を連想させるように表し,その有効性を強調するのは,本件商品に限らず,健康食品業界においては,ごく常識的なことである(甲65,66,68の1・2,69,70)。そうであるからといって,これを読む者がその商品名をその商品を離れて,かくなる有効性を有する成分だと理解するわけでなく,当該商品につき,かくなる有効性をもつ健康食品だとして認識してこれを購入するにすぎないから,本件商品の宣伝広告において,「Dフラクション」を特定成分であるかのように表示した事実があるからといって,需要者・取引者が「Dフラクション」を普通名称として認識するに至ることはあり得ない。
また,「Dフラクション」が一般記事中で取り上げられ,その際にマイタケから抽出された免疫機能増強作用を有する化学物質名として紹介されたことや,他の会社が行った宣伝広告において「Dフラクション」物質の効用に重点が置かれた等の事実もあるが,これらは,いわゆるパブリシティ記事と言われるもので,宣伝広告の一部をなすものであり,それらの記事の中で成分表示としての記載があるからといって,読者は,「D-フラクション」を商品名を離れて,成分名として認識するものではない ウ 争点2(一)(法2条1項14号の「一年以内」の意味)について 法2条1項14号の「行為」は,特定の商標権を侵害する商標を商品に付すという継続的な行為がその前提になっており,日々新たに行われると捉えるべきではないから,「行為の日前一年以内」とは,一連の継続的行為の開始日から1年以内と解されるべきであり,また,代理人又は代表者でなくなった時点から1年以内に開始された侵害行為が継続して行われている場合は,これが継続する限り,上記行為は同号に違反するものと解すべきところ,本件において,被告が原告らの代理店でなくなったのは平成9年10月1日,ハ号及びニ号表示の使用が開始されたのは平成10年3月ないし4月であり,その後,1審の口頭弁論終結時ころまでこれらの表示を継続的に使用してきたものであるから,その全期間にわたって原告マイタケプロダクツの商標上の権利を侵害してきたものというべきである。
エ 争点2(二)(本件米国商標とハ号及びニ号表示との類似性判断)について (ア) 本件米国商標は,MAITAKE D-FRACTIONの文字を横一列に並べたいわゆる文字商標といわれるもので,このような商標にあっては,文字が呼び起こす称呼,観念を無視することはできないところ,本件米国商標が「マイタケディーフラクション」なる称呼を有するのに対し,ハ号表示は「マイタケスーパーディーフラクションエクストラクト」,ニ号表示は「マイタケスーパーディーフラクションタブレット」の称呼を生じ,一般名称の部分を除いた要部である「マイタケディーフラクション」の部分において両者の称呼は同一であり(両表示中「Maitake」は一体的に構成されているから,「M」のみが別に認識され,「Dフラクション」と結合して,「エムディーフラクション」との称呼が生じることはない。),また,観念についても一致している。
(イ) 商品等表示類似性判断に当たっては,外観,称呼,観念の三要素のいずれか一つが類似すれば,原則として,全体としても類似すると解すべきであり,称呼,観念が同一または類似であれば,外観が多少異なるからといってその類似性が否定されるべきではない。
(ウ) 「Dフラクション」は前記のとおり普通名称ではないが,普通名称か否かということと類似性の判断は格別関係のないはずのことであり,原告表示が原告の商品等表示として自他識別力を認められる以上,その全体が類似性判断の対象となるべきである。
(エ) また,法2条1項14号代理人等としての信義則違反を不正競争行為とするものである以上,本件米国商標とハ号及びニ号表示との類比判断についても,被告のハ号及びニ号表示の使用が代理店としての信義則に反するか否かという観点からも判断されるべきところ,本件では,原告マイタケプロダクツの代理店であった被告は,原告らが本件米国商標をロゴ化して使っていたことを熟知していたにもかかわらず,突如,代理店をやめて,イ号,ロ号表示を用いて同種の被告商品を販売し,本件米国商標が付された本件商品との誤認混同のおそれを生じさせた。そして,それに対し,原告らが差止請求訴訟を提訴すると,被告は,数か月で,被告商品の商品等表示としてアルファベットの「M」の大文字と小文字「aitake」の文字をイ号,ロ号表示に加えただけのハ号及びニ号表示に変更したもので,このような違反行為を行うことは著しく信義にもとるものであるとともに,本件米国商標が使用された本件商品との誤認混同のおそれは何ら解消されていない。
なお,いわゆる「小僧寿し」事件の上告審判決(最高裁平成9年3月11日判決・民集51巻3号1055頁)も,外観が著しく相違していたとしても,取引の実情から誤認混同のおそれがある場合にまで類似性を否定する趣旨のものではないと解される。
【第2事件】 (1) 原告サン・メディカの主張(争点1(詐欺等の成否)について) ア 被告代表者(C)の供述は,次のとおり不自然で信用できず,原告マイタケプロダクツ代表者(A)の供述に基づく事実認定がなされるべきである。
(ア) 本件商品及びグリフロンの仕入価格決定の経緯につき,当時は近く放映予定の「スペースJ」の反響に対する対応に迫られていた時期で,Cの供述のように仕入価格を改定する時間的余裕などなかったし,仕入価格を小売価格の35%に決定した時期についても,Cの供述は陳述書(乙18)と相違している。他方,Aは,当初から仕入価格について販売価格の40%で決まった旨一貫して供述しており,当該パーセンテージも他の卸先の仕入価格割合と同一である。
(イ) コンサルタント料決定の時期について,Cは,それと「スペースJ」の放映日との前後関係ですら明確に答えていないし,仕入価格について,Aから販売価格の40%を提示された際に断ったとしておきながら,Aから子供の生活費のために2.5%を要求されてそれに応じるというのも不自然である。他方,Aは,Cに対し当初から仕入価格について販売価格の40%を提示しているのであり,これに対して,CがAに対するコンサルタント料5%,仕入価格35%をそれぞれ支払うことを提案したとしても,被告の支払額に変化がない以上,何ら不自然ではない。
(ウ) F教授に100万円を渡した経緯につき,Cは,1回目の面談の際にはAに任せてわざわざ席を外したとしながら,2回目の面談である翌週には自ら手渡したと供述しているところ,かかる短期間の間にF教授に対する金員手交の方法を変えられるだけの関係の変化があったことの合理的な説明は一切なされておらず,また,F教授から1回目の時には企業からの謝礼は受け取らないとの理由で金員受領を拒否されたにもかかわらず,Cは,Aを通してであれ,企業である被告からのコンサルタント料をF教授に支払うつもりであったと供述しているのであって,その供述内容は到底信用し難い。
(エ) 平成9年7月中旬にF教授からのたった一本の電話のみで,CがAに対して何らの確認も行うことなくこれを信じたというのも,さほど前でない時点でF教授の営業妨害問題についてAに法律事務所を紹介するなどしていたそれまでのCの態度からして,不自然という他ない。
イ 平成9年1月1日付コンサルティング契約書にはF教授の名前が全く表れていないが,F教授の名前を表したとしても,被告の経理処理には何らの影響を与えないのであり,コンサルタント料がAの口座を通じてF教授に支払われることとなっていたというのであれば,F教授に対する支払に確実性を持たせるためにも,何らかの形でこれにF教授の名前を入れ込んでおく必要があった。それにもかかわらず,コンサルティング契約書にF教授の名前が一切表れていない以上,被告が主張するようなF教授に対するコンサルタント料支払に関する話自体がなかったことは明らかである。
(2) 被告の主張(争点2(債務不履行に基づく代金返還請求権の存否)について) ア 原告サン・メディカが被告に売却した本件商品に不良品があったことは,平成9年10月8日,消費者からコープこうべに対し,同年9月末に購入した本件商品がネバネバで異様に甘く,スポイトで吸えないという苦情があり,当該商品を回収する事態に発展していること(乙12)からして,少なくとも原告サン・メディカからコープこうべに直接納入された商品については,品質に不良があったことは明らかであること,上記不良品を消費者が購入したのは平成9年9月末であり,コ一プこうべが当該商品を原告サン・メディカから購入した時期は,被告が本件商品を購入した日(平成9年7月29日及び同年9月1日)と極めて近接した時期であること,被告が購入した商品についても,当該不良品と同様の徴候,すなわち,粘度と味が濃くなっている旨の苦情が報告されていたこと(乙30)から,十分推認できる。
イ そして,本件売買契約にあたっては,原告がF教授の指導のもと,信頼に足りる品質の商品を製造することが契約の基礎となっていたのであり,それ故にこそ,被告は,商品代金以外にもF教授へのコンサルタント料を支払ってきたのである。したがって,原告には,本件商品を製造するにあたっては,D数授のアドバイスの下にその品質を確保する義務が存在した。
ウ しかし,実際には,Aは,本件商品の原材料を中国産のものに切り替えるに際してAがF教授のアドバイスを無視するなど,本件商品の品質の確保に支障が生じていた。被告は,平成9年7月ころから,ようやくF教授からAとの確執を聞き及ぶようになり,「Aが中国産の原材料に切り替えたい旨の意向が示された際に,F教授は,@中国産マイタケからはDフラクションが得難い,A活性値が低いことを調べ,その旨Aにアドバイスしたにもかかわらず,Aは原材料の切り替えを強行し,F教授のもとにも『効果が乏しくなった』等の苦情が来ている」(乙13)との事実を知るに至り,本件商品の品質に関しては,F教授のアドバイスがなされていない事実を知った。
エ Aの行為は,F教授のアドバイスの下に商品を製造するとの義務に反している点及びAがF教授のアドバイスを無視した結果,品質不良の商品を出荷したという点において,いずれも債務不履行が存在する。
当裁判所の判断
【第1事件について】 当裁判所は,第1事件の原告らの損害賠償請求は,被告に対し,金1137万7475円及びこれに対する平成12年4月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。
その理由は,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第四 当裁判所の判断」(原判決75頁9行目〜121頁9行目)に記載のとおり(ただし,原告らの被告に対する損害賠償請求以外の請求のみに関する部分は除く。)であるから,これを引用する。
1 原判決の訂正等 (1) 原判決82頁4行目の「あった」の次に「(原告マイタケプロダクツ代表者)」を加える。
(2) 同84頁10行目の「いう記載」の前に「と」を加える。
(3) 同87頁10行目の「多糖体で」を「多糖体によるもので」と改める。
(4) 同89頁5行目の「抽出する」を「抽出し,精製する」と改める。
(5) 同118頁3行目の「乙四一」の次に「,42」を,同頁6行目の「二八〇九万三八一七円」の次に「(ただし,消費税5%を含む。)」を各加える。
(6) 同頁末行から同119頁1行目にかけての「前記1のとおり、この間における被告商品1、2の売上高は、金二八〇九万三八一七円」を「消費税額控除後の売上高は,金2675万6016円」と,同頁3行目の「三九・〇パーセント」を「37.14%」と,同頁7行目から同8行目にかけての「三九・〇パーセントである金九四四万二三三七円」を「37.14%である金899万2010円」と各改める。
(7) 同121頁1行目の「合計金」の次に「の2分の1である」を加え,同頁3行目の「三九・〇パーセントである金六七〇万六三七四円」を「37.14%である金638万6531円」と改める。
(8) 同頁5行目から同8行目の「認められる。」までを「5 以上によれば,平成9年10月から平成10年3月までの被告商品1,2に係る利益の額は,少なくとも,消費税額控除後の売上高金2675万6016円から,売上原価金899万2010円及び販売費・一般管理費金638万6531円を控除した金1137万7475円を下らないものと認められる。」と改める。
2 当審における当事者の主張に対する判断 (1) 争点1(一)(原告表示の周知性の有無)について 被告は,原告表示が出所表示機能を獲得しておらず周知ともいえないと主張し,(ア)宣伝広告によっては原告表示が出所表示機能を獲得していないこと,(イ)「Dフラクション」の語は普通名称であるから,その称呼,観念出所表示機能がないこと,(ウ)競合商品の宣伝広告により出所表示機能が減殺され又は失われていたこと等の点を指摘する。
しかしながら,まず,(ア)の点については,時期的に最も早いTBSのテレビ番組(検甲1)の内容は,F教授の功績の紹介をした上,米国でF教授発見の「まいたけ抽出物質Dフラクション」が注目されているが,この度,米国で売られている商品が逆輸入されるとして,番組の最後に原告表示及び本件商品が紹介されたもので,なるほど,原告表示等の紹介時間こそ短いものの,上記のような番組の構成や流れに照らし,原告表示等が視聴者の注意を強く引いたことは疑いがなく,その宣伝効果が絶大であったことは,その放映翌日から視聴者からの問い合わせの電話が殺到し,売上げが10倍近く跳ね上がるとともに,需要に供給が追いつかない状態が相当期間続いたこと(甲14,原告マイタケプロダクツ代表者)からも窺われるところ,少なくとも,そのころは日本国内に競合品がなかったこともあって,その後の宣伝広告とも相まって,原告表示が一定の出所表示機能を獲得したことは明らかというべきである。
また,(イ)の点については,「Dフラクション」の語から生じる称呼,観念は,被告主張のとおり物質名称として出所表示機能に乏しいとしても,原告表示がその特殊ロゴ化された外観と相まって一定の出所表示機能を発揮していたことまで否定されるものではない(なお,乙38の1ないし6によれば,原告表示とほぼ同一の表示について原告らの行った商標登録出願手続において,特許庁の拒絶理由通知に対する答弁書中で原告らが外観の特殊性ないし特別顕著性を強調したにもかかわらず,特許庁はこれを認めず拒絶査定をした経緯が認められるが,商標登録の査定段階における判断と不正競争防止法上の判断とでは,具体的事情の考慮の程度等の点で異なるから,そのことを理由に原告表示の出所表示機能を否定することはできない。)。
そして,(ウ)の点についても,雪国マイタケの「MDフラクション」の発売が開始されたのは上記テレビ番組の放映後6か月近くたってからであること,上記表示の称呼等は「Dフラクション」と一部共通する部分はあるとしても,「MDフラクション」自体が8文字の短い構成からなり,「MD」は「エムディー」と一体的に称呼され,外観も相当異なることからすると,これによって原告表示の自他識別力周知性を喪失させる程度に減殺されたとまでは認め難い したがって,上記被告の主張は採用できない。
(2) 争点1(二)(原告表示とイ号及びロ号表示との類似性判断)について ア 被告は,第2の5【第1事件】(1)イ(ア)ないし(ウ)において,原告表示の外観上の構成とイ号及びロ号表示の外観上の構成を詳細に摘示した上,双方の相違点を列挙し,両表示が類似しない旨主張している。
しかしながら,現実に商品を購入する場合には,一つの商品に付された商品等表示と他の商品に付された商品等表示とを対比した上で購入するか否かを決めるものではなく,過去において異なる場所で購入し,あるいは広告等により知った記憶とイメージを手がかりに取引をするのが通常であるから,その類似性判断に当たっても,時と所を異にした場合に,商品等表示に接する者がこれを取り違えるか否かという前提に立って観察すべきである。このような観点からすれば,被告が指摘する相違点は,いずれも装飾的部分や付加的部分に関するもので,要部に属さないものといわざるを得ず,また,先に引用した原判決(95頁3行目〜98頁3行目)の認定する構成によれば,原告表示は文字の形状,その配置及び各部の色彩の配合等に特徴があり,主としてこれらの点が看者の注意を引くものというべきであり,原告表示とイ号及びロ号表示との相違点が,これらの点の共通点を凌駕して,看者に全体として異なる印象を与えるものとまでは認められないから,この点に関する被告の主張も採用し難い(この点は,被告が前同(エ)で指摘する背景等の相違点を考慮しても異ならない。)。
なお,被告は,前同(キ)において,「Dフラクション」の称呼及び観念は,普通名称として出所表示機能を有する部分とは認められないから,称呼及び観念類似性を本件の類似性判断の基礎とすることはできない旨主張するが,称呼及び観念が同一であることは,これが異なる場合と比較すれば全体としての類似性を高めることは明らかであり,その限りにおいて,類似性判断の一要素として考慮することは当然許されるものと解される。また,そのように解したとしても,ロゴ等において両者が著しく相違するときは,両者が必ずしも類似することにはならないと解されるから,被告主張のような不合理をもたらすことはない。
また,被告は,前同(オ)において,原告らの商標登録出願手続における主張に触れ,本訴と矛盾した主張をしていたことを問題にしているが,本件における不正競争防止法上の類似性判断は,原告らの従来の主張の有無,内容いかんによって直ちに左右されるものではないから,この点に関する被告の主張も採用できない。
イ 原告らは,ハ号及びニ号表示はイ号及びロ号表示の一部を急きょ変えて使用されるに至ったものであり,原告表示とハ号及びニ号表示との類似性判断に当たっては,その事情が考慮されてしかるべきである旨主張するが,仮にその点を考慮するとしても,原告表示とハ号及びニ号表示とが類似するものとは認められず,そうである以上,被告によるハ号及びニ号表示の使用が法2条1項1号に該当するものということはできない。
(3) 争点1(三)(「Dフラクション」の普通名称性)について 原告らは,「Dフラクション」は特定のマイタケ抽出物を指す普通名称ではないとして,第2の5【第1事件】(2)イ(ア),(イ)において,F教授もこれを仮称として用いたにすぎず,また同教授を含め他の仮称を用いる例もあり,仮称自体も変遷し内容においても特定していない,同(ウ)において,「Dフラクション」は語感のよい造語であり,原告らはこれをロゴ化し,投資することによって出所表示機能と周知性を獲得したものであり,これによって原告らが独占適格を取得するのは当然であるなどと主張する。
しかしながら,前同(ア),(イ)の点については,引用に係る原判決(75頁10行目〜93頁2行目)の認定事実によれば,「Dフラクション」は,商品の品質,原材料,用途等の商品の特性を表示するいわゆる記述的商標として需要者・取引者に認識されていたことが容易に推認できるところであって(一般消費者に対する訴求力の極めて大きな前記テレビ番組や日本テレビの番組(平成9年6月2日放映の「おもいっきりテレビ」・検甲1)においても,「Dフラクション」なる語が 「マイタケから熱水抽出され,免疫活性化機能を有する物質」を示す名称として繰り返し紹介されている。),そうであるとすると,F教授がその語を仮称として用いたか否かの点は重要な事実とはいい難く,また,他にも「MDフラクション」等の使用例が若干数現れたとしても(甲63,64),いわゆる別称が生じたにすぎないということができ,必ずしも「Dフラクション」なる語の普通名称性が損なわれることにはならない(むしろ,両者の表示に接した者は,「MDフラクション」の「M」はマイタケの頭文字を意味するもので,マイタケから作られた「Dフラクション」と理解するものも多いと考えられる。)。
また,原告らは,「Dフラクション」が何を指すかについて特定性を欠いているとも主張するが,取引者・需用者が,当該名称により,「マイタケから熱水抽出され,免疫活性化機能を有する物質」を想起できることは既にみたところからも明らかであり,この点を覆すに足りる証拠はない。
さらに,前同(ウ)についてみるに,原告らは,「Dフラクション」なる語の響きや語感の点を指摘しているが,出所表示機能の有無は,当該名称により取引者・需用者が一定の出所を想起できるか否かによって決せられるから,これを想起できない以上,響きや語感によって,この点の判断が左右されることにはならず,また,原告らがロゴ化等によって一定の出所表示機能を獲得したとしても,普通名称であることと一定の出所表示機能を有することとはその限りにおいて併存するから,そのことにより「Dフラクション」なる語の普通名称性が失われるものではなく,まして,原告らに対して独占適格が認められることにもならない。
また,原告らが前同(エ)において主張するように,「商品名に半ば成分表示を連想させるような語を用いて有効性を強調することは,健康食品業界や薬品業界にあってはごく普通のことである」としても,その故に普通名称性が失われることはなく,これに関する宣伝広告が原告ら主張のようなパブリシティ記事によるものであったとしても,この点の判断を何ら左右しない。 なお,原告らは,甲72,73を提出することにより「Dフラクション」が健康食品を取り扱う業者の間で普通名称化していなかったとも主張しているが,上記書証に係る事例はいずれも平成13年ころのもので,本件で問題とされている被告表示が使用されなくなったころ以降の事情を示すものにすぎないことが窺われる上,その詳細も必ずしも明らかではないから, この点も上記の認定判断を左右するに足りない。
(4) 争点1(四)(「普通に用いられる方法」)について 仮に被告主張の見解によるとしても,原告表示のロゴが特殊性を欠くものということはできないし,また,原告表示のロゴとイ号及びロ号表示のロゴとが類似するものであることは既にみたとおりである以上,イ号及びロ号表示が法11条1項1号所定の適用除外の対象となるものと解することはできない。
(5) 争点2(一)(法2条1項14号の「一年以内」の意味)について ハ号及びニ号表示について原告表示との類似性を認めることができない以上,この点の判断によって結論が左右されるわけではない(ただし,原告らの主張は現行法の文言から乖離していることは否めず,「開始」なる文言が除かれた以上,引用に係る原判決(108頁5行目〜109頁2行目)説示のように解する方が自然であって,原告らの主張に直ちに左袒することはできない。)。
(6) 争点2(二)(本件米国商標とハ号及びニ号表示との類似性判断)について 原告らは,本件米国商標とハ号及びニ号表示とが外観において相違することを認めながら,(ア)称呼及び観念が同一であること及び(イ)ハ号及びニ号表示がイ号及びロ号表示に一部変更を加える形で行われたこと等を考慮すれば,両者の類似性は肯定されるべきである旨主張する。
しかしながら,仮に原告ら主張のように,両者から同一の称呼,観念が生じ得るとしても,「Dフラクション」の語自体は,既にみたように,需要者・取引者には普通名称(いわゆる記述的商標)として認識されていたものと認められるから,これによる出所表示力は微弱であり,原告表示の出所表示機能は,これに特殊なロゴ化等が施されることにより,主として外観の点で発揮されているものと判断されるから,引用した原判決(109頁3行目〜110頁末行)の認定判断のとおり,両者の外観が著しく相違するものと認められる以上,称呼等の同一性から本件米国商標とハ号及びニ号表示とが類似していると認めることはできない。
この点に関し,原告らは,類似性判断にあっては普通名称か否かとか,出所表示力の有無は考慮されるべきでないと主張するが,一般に普通名称需要者等の注意を引きにくいし(逆に注意を引きやすいところが出所表示機能を発揮することが多いともいえる。),ある語が普通名称であるとともに出所表示機能を有する商品等表示として使用されている場合に,需要者等がその語を耳で聞くなどした場合に,称呼だけでは果たしていずれを指すのか不明であって,結局は外観を見ることによって区別を付けざるを得ないことも多いと考えられることからしても,当該商品等表示の要部を判断するに当たっては,これを考慮することが許されるものと解すべきである。
また,仮に,原告らの主張するハ号及びニ号表示が使われるに至った事情を考慮に入れるとしても,本件米国商標とハ号及びニ号表示との類似性を肯定することはできない。
(7) 争点4(損害額)について 被告主張のように被告商品が被告の売上げの4割近くを占める主力商品であったとしても,その販売を停止したからといって直ちに被告の事業が立ち行かなくなることを認めるに足りる証拠はない。また,被告提出の乙56等によっても,被告の売上高と被告主張の固定費との間の相当因果関係を認めるに足りず,他にこの点を認める得る証拠はない。
【第2事件について】 当裁判所は,第2事件のうち,原告サン・メディカの本訴請求(売掛残代金請求)は,原判決主文三項記載の限度で理由があり,その余は理由がなく,被告の反訴請求(不法行為に基づく損害賠償請求)は,原告サン・メディカに対し,金39万9449円及びこれに対する平成9年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。
その理由は次のとおりである。
1 争点1(詐欺等の成否)について (1) 被告がAの口座に平成8年9月分から平成9年6月分までのコンサルタント料名義で合計557万0210円を入金したこと,同金員が上記期間中の被告の本件商品の売上高の5%に相当すること,同金員がAからF教授に交付された事実のないことは,いずれも当事者間に争いがない。
(2) 上記送金の趣旨につき,被告は,F教授にコンサルタント料として支払ってもらうためにAに預託したものである旨主張し,原告サン・メディカは,A自身に対するコンサルタント料の支払である旨主張している。
(3) そこで検討するに,証拠(甲51,乙13,18,20,33,被告代表者,原告マイタケプロダクツ代表者〔後記採用しない部分を除く。〕)によれば,次の事実が認められる。
ア 原告マイタケプロダクツ代表者(原告サン・メディカの代表取締役)のAは,平成8年9月6日,被告代表者のC及び被告取締役兼コスモメディカル専務取締役のEと赤坂東急ホテルで面談したが,その際,同人らに対し,本件商品を取り上げたTBSの報道番組「スペースJ」の放映が同月11日に決定したことを伝えるとともに,上記番組に対する視聴者からの反響により本件商品の注文が急増することが予想されるが,原告サン・メディカでは商品販売の態勢が整っていないので,コスモメディカルに個人消費者向けの直販を扱うための代理店になってほしいと提案した。また,Aは,Cに対し,日本への輸入許可を持つ原告サン・メディカを通して商品を卸すことを希望したので,本件商品の売買契約は被告と原告サン・メディカとの間で締結されることになった。Aは,面談当日,EとともにTBSを訪ね,TBSの担当者にEを日本の代理店として紹介し,同月10日には,商品の問い合わせ先として被告の電話番号をTBSに知らせた。
イ その間,CとAとの間で,被告が原告サン・メディカから購入する際の本件商品及びグリフロンの仕入価格を被告の小売価格の30%とすることでいったんは合意したが,「スペースJ」の放映時までには,当初,本件商品及びグリフロンとも7800円であった小売価格を,本件商品1万2000円,グリフロン9800円に値上げするとともに,原告サン・メディカからの仕入価格を被告の小売価格の35%にすることになった。
ウ Cは,その後,Aから受けた仕入価格を40%にできないかとの申入れを断ったものの,Aから,本件商品等については,「これまで海外で事業展開をしてきたが,F教授にロイヤリティを払っている。今度,日本でも展開するのだから,これを被告の方で負担してくれないか。」と言って,F教授へのコンサルタント料として,別途,小売価格の5%相当額を負担してほしい,また,その具体的な支払方法としては,被告からF教授に直接コンサルタント料を支払った場合には,同教授の所得税として総合課税されるが,アメリカ在住のAの口座を通せば,被告が小売価格の20%を源泉徴収すれば,それ以上課税されることがないので,いったんAの口座に振り込んだ上で,AがこれをF教授に支払う形を採りたいとの要請があった。Cは,Aからの上記要請をもっともだと思い,これに応じることにした。さらに,その翌日ころ,Cに対し,Aから,「息子が慶応大学に入学して日本でいろいろ金がかかる。アメリカからの送金でなく日本の金で生活費が出れば一番いいので,F教授の5%をおれが半分もらってもいいか。」との話があったので,Cはこの点も一応了承した。
エ CとAは,平成8年9月17日,神戸薬科大学のF教授の研究室を訪れた。Cは,F教授への謝礼として300万円を持参したが,Aが自分からF教授に渡すと言うので,教授室の外に出て待機していたところ,Aから,F教授は企業からの謝礼は受け取らないが,個人から大学への100万円の寄付であれば後日受け取ると伝えられた。そこで,Cは,翌週,A,Fとともに神戸薬科大学を訪れ,大学への寄付としてF教授に100万円を渡した。
オ 被告は,平成8年9月分から,コンサルタント料として仕入価格の5%相当額をAの口座に振り込み,平成9年1月1日,経理処理のため,Aとの間で,コンサルティング契約書(甲51)を作成した。
カ F教授とAとの関係は,平成9年3月ころ,Aが,F教授の反対にもかかわらず本件商品の原材料を日本産から中国産に切り替えたことや,神戸薬科大学からジョージタウン大学への研究員の派遣及び共同研究の計画が順調に進捗しなかったこと等から悪化し,絶縁状態となった。Aは,平成9年5月,F教授の講演中の発言等が営業妨害行為に当たるので,同教授に対し法的措置を取りたいとして,Cに日本の弁護士の紹介を依頼し,C同行の上,Cの紹介した被告の顧問弁護士の事務所で数回打ち合わせをした。その際,Aは,「ベルダさんもF先生に個人的にお金を払っているのに,F先生が裏切るのはひどい。」と発言し,被告がF教授への接待費,学会の渡航費用,ホテル代を負担した話をした。
キ Cは,平成9年7月中旬ころ,F教授からの電話を受け,同教授がAと絶縁状態になった事情を聞いた。その際,CがF教授に対し,被告からのコンサルタント料が支払われているかどうか尋ねたところ,同教授が,1円も受け取っていないと答えたので,Cは,Aへの信頼を完全に失った。Cは,1週間後,F教授の研究室を訪ねて同教授と協議し,F教授から,雪国まいたけを紹介するから新しい商品を作ったらどうかと提案され,自社商品を製造,販売する方が良いと判断した。
ク 被告は,Aに対し,平成9年7月分以降のコンサルタント料の送金を停止し,同年10月8日,原告サン・メディカあて,同原告からの買掛金と送金済みの平成8年9月分から平成9年6月分までのコンサルタント料の2分の1とを相殺する旨をファクシミリで通知した。
(4) もっとも,原告サン・メディカは,被告から送金を受けたコンサルタント料名義の金員は,Aが被告に対してアドバイス,資料作成,資料提供等の業務を提供することへの対価として,Aに支払われたものであり,Aと被告の間には,F教授に対するコンサルタント料提供の約束は一切なかった旨主張し,原告マイタケプロダクツ代表者(A)もほぼこれに沿う供述をしている。そして,同原告代表者の供述によると,Aに対するコンサルタント料支払の件は,AとCが初めて面談した平成8年9月6日にCとの間で被告の原告サン・メディカからの仕入価格を被告の小売価格の40%と決定した際に,Cからそのうち5%相当額をAに対するコンサルタント料として支払いたいとの申し出があったというのであるが,金員を支払う側であるCとしては,被告が支払うべき金額が低い方が望ましいのが通常である上,税務上も,仕入価格35%十コンサルタント料5%とすると仕入価格40%の場合より,消費税の課税売上の計算上,控除分が減少し不利であるから,Cの方から自発的にA個人へのコンサルタント料の支払を申し出るのは不自然であること,あえてCがそのような申し出をした理由について,Aは謝礼の意味があったのではないかとの推測を述べるのみであること,加えて,上記(3)カの弁護士事務所での会話内容について,Aは,「コンサルタント料」との言葉を出したことまでは認めていないものの,概ねCが供述するようなニュアンスの話をしたことは認めており,被告がF教授にお金を払っていると考えた理由について,100万円の件の後の支払が続いているのではないかなどとあいまいな供述に終始している。これに対し,被告代表者の供述は,具体的かつ詳細であって,同供述と対比すると,原告マイタケプロダクツ代表者の供述中,上記認定に反する部分はにわかに採用し難い。
(5) 以上認定の事実によれば,Aは,被告から入金されたコンサルタント料の半額につき,少なくともその委託の趣旨に反してこれを着服したものといわざるを得ず,これにより被告に同額の損害を与えたものと認められる。
そして,コンサルタント料のその余の半額については,上記(3)ウの事実によれば,CはAがこれを受領することを承諾していたことが認められるところ,その際にAがした説明は,Aが上記金員を受領したい理由を述べたにすぎず,実質的にはAに対するコンサルタント料ないしリベートの趣旨であったことは明らかであり,Cもそのことを容易に理解し得たものと推認され,F教授に対する5%相当額のコンサルタント料の範囲内ではあるが,これとは別個のものとしてその交付を承諾したものと認められるから,この点の支払についてAの不法行為を認めることはできない。
(6) なお,原告サン・メディカは,被告代表者の供述が不自然で信用できないなどとしてるる主張するが,被告代表者の供述は,時間の前後関係の点では若干の混乱がみられるものの,基本的な事実の流れについては,具体的,詳細であって,格別の矛盾もみられず,また,F教授に対する100万円の交付の経緯についても,被告代表者の供述によればAとも打合せの上のことと認められるから特に異とするに足りないし,F教授に対するコンサルタント料の支払についても,上記(3)ウでみたように,Aから,Aが従来からF教授にコンサルタント料を支払ってきた話を聞いた上であるから,コンサルタント料についてはF教授が受け取ると考えたとしても特に不自然とはいえないなど,いずれの指摘も被告代表者の供述の信用性を排斥するに足りない。
また,同原告は,平成9年1月1日付コンサルティング契約書(甲51)が,被告とAを当事者として締結されており,条項中にF教授の名前が表われていない点を問題にするが,上記(3)ウの事実によれば,Aのいう税金対策は,同人が外国居住者であることを利用してダミーとなることにより,F教授に対する総合課税を回避しようとする点にあったのであるから,甲51がこれに関する経理処理上の書面として作成されたものである以上,これにF教授の名前を表さないのは当然のことであって,その理由も必要も認められず(別途,実体を証するための書面を作成しておいた方がよかったか否かの点は別論である。),この契約書の存在も上記認定判断の妨げとはならない。
(7) そして,原告サン・メディカと被告との継続的売買契約締結の交渉に当たり,売買代金額を定める過程において,Cにコンサルタント料支払の話を持ち出したものであり,Aは会社の代表取締役としての職務を行うにつき被告に損害を加えたということができるから,原告サン・メディカは,被告に対し,商法261条3項,78条2項,民法44条1項に基づき,被告がAに支払ったコンサルタント料合計金557万0210円の半額である金278万5105円の損害賠償義務を負っていたところ,上記原判決第二,一,【第二事件】3(14頁8行目〜15頁6行目)のとおり,同金員のうち金238万5656円を自働債権として被告が相殺をしたことにより,上記相殺後の金額である金39万9449円について損害賠償義務を負うことになったものというべきである。
2 争点2(債務不履行に基づく代金返還請求権の存否)について この点に関する当裁判所の認定判断は,次に当審における被告の主張に対する判断を付加するほかは,原判決131頁10行目〜135頁7行目と同じであるから,これを引用する。
「 被告は,原告サンメディカが被告に売却した本件商品中に不良品があったことを推認すべき旨主張するが,この種の商品に何らかの個別的,偶発的な事情で不良品が混入することもあり得ないではないから,原告サン・メディカのコープこうべに対する納入品につき,平成9年10月に苦情と回収の例(乙12)があったからといって,直ちに,当該商品に係るロットの全商品が不良品であったと断定することはできないことはもとより,そのころの原告サン・メディカからの被告に対する納入品にも不良品が混入していたと推認することもできない(乙30に係る被告に対する顧客からの苦情は平成9年4月以前のことにすぎず,また,その後苦情が引き続いた形跡もない。)。
また,被告は,原告サン・メディカにはF教授のアドバイスの下に商品を製造すべき義務があったとも主張するが,上記のように被告がAの口座にF教授に対するコンサルタント料名義の入金をしていた事実を考慮に入れても,かかる内容が原告サン・メディカと被告との間の契約条件をなしていたとまでは認めるに足りず,他にこの点を認め得る証拠はない。」 【その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審及び当審で提出,援用された全証拠を精査しても,引用に係る原判決を含め,当審の認定,判断を覆すほどのものはない。】
結論
以上によると,原判決のうち第1事件及び第2事件の反訴請求に関する部分は一部不当であるから,198号事件及び199号事件の各控訴に基づき,主文1,2項のとおり変更し,その余の点では原判決はいずれも相当であるから,その余の本件各控訴をいずれも棄却し,主文のとおり判決する。
(平成13年8月23日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 山田陽三
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