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事件 平成 12年 (ワ) 27258号 不正競争行為差止等請求事件
原告 株式会社永谷園
訴訟代理人弁護士 勝田裕子
補佐人弁理士 鈴江武彦
同 西村雅子
被告 浦島海苔株式会社
訴訟代理人弁護士 中村稔
同 松尾和子
同 渡辺光
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/06/15
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,その製造するふりかけの販売,宣伝に際し,別紙被告パッケージ目録記載の外装パッケージを使用してはならない。
2 被告は,原告に対し,金105万円及びこれに対する平成13年1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を,表題並びに原被告の社名を4号活字とし,その他を6号活字として,朝日新聞(全国版),読売新聞(全国版),日本食糧新聞に各1回掲載せよ。
事案の概要
1 争いのない事実 (1) 原告は,お茶漬け食品類,ふりかけ食品類,即席みそ汁,吸い物類の製造販売等を業とする株式会社であり,被告は,海苔,海藻等の加工,販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告は,品名「ふりかけ」について,「納豆さまさま」,「塩鮭さまさま」,「おかかさまさま」,「梅干しさまさま」,「玉子さまさま」の各商品(以下「原告商品」という。)を「ふりかけさまさまシリーズ」というシリーズ名で製造販売している。
原告商品の外装パッケージの表側のデザイン(以下「原告パッケージ」という。)は別紙原告パッケージ目録(1)ないし(5)のとおりである。
(3) 被告は,平成12年9月ころから,品名「ふりかけ」について「健やか御膳」というシリーズ名で,「鮭と鯛」,「のり高菜」,「緑黄色野菜」,「鰹といわしとさば」の各商品(以下,「被告商品」という。)を製造販売している。被告商品に使用されている外装パッケージの表側のデザイン(以下「被告パッケージ」という。)は,別紙被告パッケージ目録(1)ないし(4)のとおりである。
2 本件は,原告が,被告に対し,需要者に広く知られている原告パッケージと類似したデザインを被告パッケージに使用する被告の行為は,需要者に被告商品を原告商品と誤認させ出所の混同を生じせしめるおそれがある行為であり,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当すると主張して,被告パッケージの使用の差止め及び上記行為による損害の賠償等を求める事案である。
争点及びこれに関する当事者の主張
1 争点 (1) 原告パッケージが原告の商品等表示として周知か (2) 被告パッケージが原告パッケージと類似しているか (3) 混同のおそれの有無 (4) 損害の発生及び額 2 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)について (原告の主張) ア 原告パッケージには,これまでのふりかけパッケージに無かった極めてシンプルでわかりやすいデザインが採用されている。
白色を基調とする御飯茶碗を,パッケージの約半分を占める大きさで,かつ,側面視で高台をも含めた全形が見えるように配し,御飯茶碗の高さの約2倍の高さまでこんもりと上方に盛り上げた白飯の上にふりかけの具が載っている写真を用いた大胆なデザインを採用し,このようなデザインを際立たせるため,赤,青又は緑等の濃い単色を基調としたシンプルな背景を配している。
従来のふりかけ商品において,原告パッケージのように,側面視からの茶碗全形をパッケージの中心においたデザインや,パッケージに使用される色の数を極力控え,シンプルさに徹したパッケージは存在しなかった。
原告パッケージは,消費者にインパクトを与え,他のふりかけ商品と区別可能なこれまでにない斬新なデザインとして話題を呼んだ。
イ 原告商品は,平成10年3月に「納豆さまさま」が,同年10月に「塩鮭さまさま」,「おかかさまさま」,「梅干しさまさま」が,それぞれ「さまさまふりかけシリーズ」として発売され,平成11年度の売上げは約20億円に達した。
平成12年には,「玉子さまさま」が発売され,「さまさまふりかけシリーズ」は,原告のふりかけの主力商品となった。
原告商品は,全国の8割以上のスーパーで販売され,全国の小売店で販売されている。
原告は,全国放送において,原告商品のテレビコマーシャルを行い,原告パッケージを数秒間大写しにして,そのパッケージデザインを需用者に強く印象づけてきたが,このような原告商品の宣伝広告費用は年間8億円にも及ぶ。
原告パッケージは新聞等のマスメディアにおいて,「素材感あふれるパッケージの斬新さ」「ロゴと写真のみを配したインパクトのあるデザイン」などと評され,原告による購入者調査においても,「パッケージが大胆」などの意見が寄せられている。
原告は,原告商品のヒットにより,平成12年2月に日本食糧新聞社制定の平成11年度優秀ヒット賞を受賞したのを始め,数々の賞を受賞した。
原告が,原告パッケージから商品名や原告の会社名を隠したものを用いて,それが,どこのメーカーのふりかけかを尋ねるアンケート調査をしたところ,回答者の8割以上が,原告のふりかけと回答した。
したがって,原告パッケージは,少なくとも平成12年当初には,ふりかけ食品業界はもとより,直接の需要者である主婦,子供等の一般消費者にも,原告商品の外装パッケージとして広く知られるようになっていた。
(被告の主張) ア 「白色を基調とする御飯茶碗を,パッケージの約半分を占める大きさで,かつ,側面視で高台をも含めた全形が見えるように配し,御飯茶碗からこんもりと上方に盛り上げた白飯の上にふりかけの具が載っている写真」,「赤,青,緑等の濃い単色を基調としたシンプルな背景」は,従来から多くのふりかけのパッケージに用いられていたものであり,原告パッケージに特徴的なものではない。
イ 原告商品がヒットしたのは,「さまさま」というユニークなネーミング,ふりかけの品質,大袋タイプの割安感(価格),テレビコマーシャル,店頭における積極的販売等が相乗的に効を奏したからであって,パッケージのデザインは,これらに付加された付随的なヒット要因にすぎない。
ウ したがって,原告商品が人気商品であるとしても,原告パッケージが周知ということにはならない。
(2) 争点(2)について (原告の主張) 被告パッケージは,白色を基調とする御飯茶碗をパッケージの約半分を占める大きさに,かつ,側面視で茶碗の高台をも含めた全形が見えるように配し,御飯茶碗からこんもりと上方に茶碗の高さの約2倍の高さまで盛り上げた白飯の上にふりかけの具が載っている写真を用いた大胆なデザインを採用している点,上記写真を際立たせるように,赤,青,緑等の濃い単色で,原告パッケージと極めて近い色を基調としたシンプルな背景が配されている点において,原告パッケージの特徴的部分と極めて類似している。
原告は,「玉子さまさま」のパッケージにおいて,ふりかけをのせた白飯から白い湯気が立ち上っているデザインを採用しているところ,被告パッケージはこの点においても原告パッケージと類似している。
原告が,被告パッケージから商品名や被告の会社名等を隠したものを見て,それがどこのメーカーのふりかけかを尋ねるアンケート調査をしたところ,回答者の半数近くが,原告のふりかけと回答した。
(被告の主張) 原告パッケージの特徴は,「さまさま」というユニークな商品名,それをパッケージの縦いっぱいに記載した点,ふりかけの素材を白飯に載せた写真を使用した点,商品コピーの記載が無い点,背景が1色のみで構成されている点にある。
このことは,原告パッケージが,新聞等のマスメディアにおいて,独特のネーミングを全面に押し出したこと,素材感が出るような写真を用いたこと,ロゴと写真しか表示されていないことを評価されていることからも明らかである。
しかるところ,被告パッケージは原告パッケージのこれらの特徴を備えていない。
被告パッケージは,原告パッケージとは,次のような違いがあり,類似していない。
ア 原告パッケージは,「〇〇さまさま」という商品名を大きく記載しているが,被告パッケージは,「健やか御膳」という商品名を,右上に3センチメートル程度に小さく記載し,中央やや下に内容物の風味を具体的に記載しているにとどまる。
イ 原告パッケージの写真は,ふりかけの素材をイメージして白飯に載せているが,被告パッケージの写真では,ふりかけを白飯に載せて湯気を立たせ,暖かいイメージを出している。被告パッケージの写真は,一般的な手法によって,内容物をわかりやすく直接的に表示したものであって,原告パッケージのようなイメージ的なものではない。
ウ 原告パッケージには商品コピーがないが,被告パッケージには具体的な商品コピーがある。
エ 原告パッケージの写真自体には背景が無く,御飯茶碗,素材,白飯の部分のみが用いられ,単色からなる背景を貼り付けたようなものである。これに対し,被告パッケージでは,その下から3分の1弱及び上部約2センチメートルに,被告の商品に従来から使用してきた素材のイメージカラーを使用し,その間の中央部分に,写真を使用している。写真の背景は,手前が白,奥が黒で,その間は,白から黒へのグラデーションが施されている。
オ 原告パッケージの社名ロゴは,オレンジの目立つ色に白抜きで右上に配されているが,被告パッケージでは,青と緑を用いた比較的小さなロゴを左上に配している。
カ 被告パッケージの御飯茶碗は,原告パッケージのものと異なり,しかも,風味毎にデザインが異なっている。
(3) 争点(3)について (原告の主張) 原告商品と被告商品は,共に全国のスーパー等の同一の売場で販売されている。場合によっては,同一の陳列棚の同一段に,双方の商品が陳列されている場合もある。
原告商品と被告商品は,パッケージの大きさはほぼ同じであり,価格も原告商品は130円,被告商品は150円と近接している。
原告パッケージは紙製であるが,その表面にPET(ポリエステル)のフィルムを張り合わせて光沢のあるパッケージとなっているところ,被告パッケージも,アルミ蒸着ポリプロピレンを用いており,この点でも両者は類似している。
原告商品と被告商品は,店頭において,紙器箱に収納されて陳列されることが多いが,被告パッケージは,その下部に記載されている商品名や会社名が,紙器箱の前面の下部によって隠され,御飯茶碗を主体とした写真部分のみが露出するため,上記原告パッケージの特徴部分に,より一層類似する。また,被告商品の紙器箱は,その前面の上部,左右上部にそれぞれ白色を配している点,中心部及び下部が青,赤又は緑の背景の上に白色で縁取りされた黒い文字で商品名が記載されている点,紙器箱の天面及び側面が切り取られた前面下部の端が白色で縁取りされている点で,原告商品の紙器箱と共通性を有する。
(被告の主張) 原告パッケージは,素材が紙製であるのに対し,被告パッケージの素材は,アルミ蒸着ポリプロピレンである。
原告商品は,1袋の中を4ないし5つの小袋に小分けしているが,被告商品は,このような小分けはしておらず,そのかわり,開封した後でもチャックを閉じることで密閉を可能にしている。
被告パッケージは,原告パッケージと比較して,横幅が2センチメートル小さく,また,背景が白,黒のグラデーションの写真をパッケージ中央に,パッケージの3分の2程度の大きさで採用したことにより,数値以上に小さく見える。原告商品と被告商品のパッケージの大きさは近似しているが,小売店での陳列の関係で,そうならざるを得ない。
価格についても,市販されているふりかけの多くが,130円ないし150円を希望小売価格としている。
紙器箱は,搬送,陳列に用いるものにすぎず,一般消費者に訴えかけるようなものではないから,一般にそのデザインは極めて単純であり,その形状,色彩は,必然的に似ざるを得ない。また,被告商品は,陳列する際に,紙器箱を一切用いない場合もある。
(4) 争点(4)について (原告の主張) 被告は,平成12年9月から同年12月20日までに,被告商品を定価150円で少なくとも10万個販売した。被告の売上総額は,小売額の70パーセントと推定されることから,被告の売上総額は1050万円となる。また,被告商品の利益率は10パーセントを下ることはない。したがって,被告が上記期間に被告商品を製造販売したことによって得た利益は,105万円となり,これが,不正競争防止法5条1項により原告の損害と推定される。
(被告の主張) 損害の発生及び額については争う。
当裁判所の判断
1 争点(2)について (1) 証拠(甲7の1,検乙1の1ないし5)と弁論の全趣旨によると,原告パッケージは次のようなものであると認められる。
ア 背景に濃い単色が用いられている。その色は,「納豆さまさま」が赤,「塩鮭さまさま」が緑,「おかかさまさま」が青,「玉子さまさま」が紺,「梅干しさまさま」が茶である。
イ パッケージの下半分の中央に,側面から撮られた,高台をも含めた全形が見える白色を基調とした模様のない無地の御飯茶碗に,白飯が上方に盛り上げられて盛られ,その上にふりかけの素材が載せられた写真が大きく配され,「玉子さまさま」については,ふりかけの素材である炒り玉子の上に白い湯気が立ち上っている。
ウ パッケージの左側4分の1程度の大きさに,縦に大きく,白色で縁取りされた黒文字の明朝体で,「〇〇さまさま」と原告商品の名称が記載され,パッケージの右上には,「納豆さまさま」については,縦書きで2行にわたって白い文字で,「永谷園の」「ふりかけ」と記載され,その余のふりかけについては,縦書きで3行にわたり,白い文字で「味ひとすじ」,赤地に白抜きで「永谷園」,白い文字で「ふりかけ」と記載されている。また,「納豆さまさま」については,パッケージの右下に,白い文字で,「4袋入」と横書きで記載され,その余のふりかけについては,上記3行の真下に,白い文字で「5袋入」と横書きで記載されている。
原告パッケージの下方には,横書きで小さく,「※写真はイメージで,実際のふりかけとは異なります」との記載がある。
エ パッケージの大きさは,縦が約19センチメートル,横が約15センチメートルである。
(2) 証拠(検乙2の1ないし4)と弁論の全趣旨によると,被告パッケージは次のようなものであると認められる。
ア 下から3分の1弱程度及び上から約2センチメートルの部分には,単色の背景が用いられている。その色は,「鮭と鯛」が赤,「のり高菜」が緑,「緑黄色野菜」が黄緑,「鰹といわしとさば」が青である。赤,緑,青の各色は,原告パッケージの赤,緑,青とは,微妙に色が異なっている。その間の中央部分には,大きく御飯茶碗の写真が配されており,その背景は,上方が黒,下方が白で,その間は,黒から白へのグラデーションが施されている。また,パッケージの左右には,2ミリほどの幅で,銀色の縁がある。
イ パッケージの中央部分の御飯茶碗の写真は,側面よりやや斜め上方から撮られた写真で,高台が見える,上記単色の背景の色に合わせた色の模様が入った白を基調にした御飯茶碗に白飯が上方に盛り上げられて盛られ,その上にふりかけが載せられ,白い湯気が立ち上っている写真である。御飯茶碗の高台は,その前方の一部が隠れている。また,御飯茶碗は,原告パッケージのものよりも底が浅く,横に広がった印象を与える。
ウ 写真の背景の右上に商品名である「健やか御膳」の白文字の記載,左上に被告会社のロゴ,左下に「調理例」との黒文字の記載が配され,パッケージの下半分の中央には,被告商品の素材名が,黒文字に白色で縁取りされた明朝体で縦書きに記載され,その右上と左下に括弧が配されている。パッケージの上部の背景色部分には,切取線があり,その上に,小さく「ここから切ってご利用して下さい。
開封後は,チャック部分を押さえ閉めて下さい。」と記載され,その下の右方に,黒色の矢印の絵に「チャック」という文字が書かれたものが配されている。パッケージの下部の背景部分には,右側に「有明海産の極上のりと阿蘇高菜の風味を活かした天然の味わい。魚骨粉入りで,カルシウムも強化しました。」などといった商品のコピーが記載され,左側には,「ふりかけ」と縦書きで記載され,さらに,その左側に「浦島海苔」との黒文字の記載が縦書きでされ,その下に「浦島謹製」の印影が赤色で配されている。
エ 被告パッケージの大きさは,縦が約19センチメートル,横が約13センチメートルである。
(3)ア 以上の事実によると,被告パッケージは,赤,緑,青といった単色の背景を用いている点,高台が見え,白飯が盛り上がっている,白を基調にした御飯茶碗の写真を大きく配置している点,明朝体で縦書きに記載され白色で縁取りされた黒文字を配置している点,白い湯気が立ち上っている点で,原告パッケージと類似点があることが認められる。
イ しかしながら,原告パッケージが単色の背景に御飯茶碗と上記認定の文字のみを配したシンプルなデザインになっているのに対し,被告パッケージは,上記認定のとおり商品のコピーが記載されるなどしているため,シンプルなデザインとはいえず,そのため,全体的な印象が異なっている。
ウ また,上記類似点については,次のような相違点等があるものと認められる。
(ア) 単色の背景を用いている点について 原告パッケージの背景色が全て単色であるのに対し,被告パッケージの背景色は,パッケージの中心部分において,上記認定のとおり変化に富んだものとなっている。また,被告パッケージには,背景色に,原告パッケージで用いられていない黄緑色を用いたものがあるほか,赤,緑,青の各色も,原告パッケージとは,微妙に異なっている。さらに,原告パッケージと被告パッケージを対比した場合,各色に対応するふりかけの素材は,鰹節を除いては,全く異なっている。
(イ) 御飯茶碗の写真について 証拠(甲16の1ないし12,乙2の1ないし3,乙3ないし7,乙10の1ないし3,乙14ないし17,乙18の1ないし4,乙19,検乙10ないし13,検乙14の1ないし4,検乙15の1ないし5)と弁論の全趣旨によると,白飯の上にふりかけをかけた御飯茶碗の写真を大きく配することは,ふりかけのパッケージでは,広く用いられているデザインであり,それらは,白を基調にした御飯茶碗を用いているものが多く,上方又は斜め上方から撮られた写真が用いられているものと認められる。そうすると,原告パッケージの御飯茶碗の写真は,側面から撮った,高台をも含めた全形が見える写真を用いていること,白飯が盛り上がっていること,ごはんの上に載せられているものがふりかけではなく,ふりかけの素材であることに特徴があるものと認められる。
被告パッケージの御飯茶碗の写真は,やや斜め上方から撮られたものであって,高台の前方の一部が隠れているから,高台が見えるような方向から撮影したという点では,原告パッケージの写真と共通点があるものの,原告パッケージの写真とは同じではなく,受ける印象が異なっている。また,被告パッケージの写真では,上記で認定した広く用いられているデザインと同様に,ごはんの上にふりかけが載せられているから,この点において,原告パッケージの写真とは決定的に異なっている。さらに,原告パッケージと被告パッケージでは,御飯茶碗の写真における御飯茶碗の形や模様が同じではない。そうすると,被告パッケージの御飯茶碗の写真は,原告パッケージの写真と,白飯が盛り上がっているという共通点があるとしても,全体として見ると,原告パッケージの写真と類似しているということはできない。
(ウ) 明朝体で縦書きに記載され白色で縁取りされた黒文字 原告パッケージと被告パッケージでは,明朝体で縦書きに記載され白色で縁取りされた黒文字は,その記載位置,大きさ,記載内容が全く異なっている。
(エ) 白い湯気が立ち上っていること 原告商品では,白い湯気が立ち上っているのは,「玉子さまさま」のみであるうえ,証拠(検乙1の5,検乙2の1ないし4)と弁論の全趣旨によると,原告パッケージと被告パッケージでは,湯気の形や濃さが異なっていることが認められる。
エ さらに,被告パッケージは,原告パッケージと,たての長さはほぼ等しいが,横の長さは約2センチ短く,全体として原告パッケージよりもスリムな印象を受ける。
オ 以上述べたところを総合すると,被告パッケージは,全体として,原告パッケージと類似しているとは認められない。
(4) 証拠(甲12の1ないし5,甲19,検乙3の1,2,検乙4の1ないし4,検乙5の1ないし4)と弁論の全趣旨によると,ふりかけは,紙器箱に入れて販売されることがあること,紙器箱に入れられた場合には,パッケージの下の部分が見えなくなること,以上の事実が認められるが,上記(3)認定のとおり原告パッケージと被告パッケージには相違点が存することからすると,紙器箱に入れて販売されることを考慮したとしても,原告パッケージと被告パッケージとが類似しているとは認められない。
(5) 証拠(甲14)によると,日本インフォメーション株式会社が,被告パッケージから被告の会社名を隠したもの及び被告パッケージから御飯茶碗の写真以外の記載を全て隠したものを見せて,それがどこのメーカーのふりかけか尋ねるアンケートをしたこと,このアンケートにおいて,前者については回答者の28パーセント,後者については回答者の45パーセントが,原告のふりかけと回答したこと,以上の事実が認められるが,証拠(甲8の15)によると,原告のふりかけの販売額は,被告のふりかけの販売額の10倍以上であると認められるから,上記のようなアンケートをした場合には,原告と答える者が多くいたとしても,そのことが,必ずしも両者の類似性を基礎づけるものということはできない。したがって,この事実が上記認定を左右するものということはできない。
また,原告が主張するように,「さまさまふりかけシリーズ」は,原告の主力商品で,平成11年度の売上げは約20億円に達し,全国の8割以上のスーパーで販売されていること,原告は,年間8億円の費用をかけて原告商品の宣伝広告をしていること,原告パッケージは新聞等のマスメディア等において好評であること,原告商品は,数々の賞を受賞したことといった事実があるとしても,上記(3)認定のとおり原告パッケージと被告パッケージには相違点が存する以上,原告パッケージと被告パッケージとが類似しているとは認められない。
2 以上によると,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。
裁判長裁判官 森義之
裁判官 岡口基一
裁判官 男澤聡子