関連ワード | 代理人 / 代表者 / 品質誤認惹起表示(2条1項13号) / 競争関係 / 損害賠償 / |
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事件 |
平成
12年
(ワ)
10237号
損害賠償等請求事件
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原告 有限会社クラフトスクエア 訴訟代理人弁護士 赤羽健一 被告 有限会社坂東商会 訴訟代理人弁護士 加藤博史 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2001/05/29 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
1 被告は,原告に対し,金500万円及びこれに対する平成12年4月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告は,株式会社三栄書房発行の「オプション2」に別紙記載の謝罪広告を1回掲載せよ。 |
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事案の概要
1 争いのない事実等 (1) 原告は,ドアミラー,ヘッドライト等の自動車部品の設計,製作,販売を目的とする会社であり,被告は,自動車部品等の卸販売等を目的とする会社である。 (2) 原告は,「TC-F」ドアミラー(以下,「本件ドアミラー」という。)を開発し,平成10年11月ころ,販売を開始した。 (3) 原告は,被告に対し,平成11年4月8日ころ,本件ドアミラー及びその付属部品の卸販売を依頼し,価格や支払方法を定めた。 (4) 原告は,同年5月及び同年8月に,被告からの注文を受けて,本件ドアミラーを,アリタスピードことA(以下,「アリタスピード」という。)宛に出荷した。 (5) 株式会社三栄書房発行の雑誌「オプション2」の平成11年10月号(以下「本件雑誌」という。)の「イケてるパーツ’99OPT2」という自動車部品に関する記事において,本件ドアミラーが,「アリタスピードレーシングソウルドアミラーVer.U」との名称で紹介された(以下,上記記事のうち,本件ドアミラーに関する部分を「本件記事」という。)(甲2)。 2 本件は,原告が,被告に対し,本件記事の掲載は,不正競争防止法2条1項13号の「虚偽事実を告知し,又は流布する行為」に当たるか又は民法709条の不法行為に当たると主張して,これによる損害の賠償及び謝罪広告の掲載を求める事案である。 |
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争点及びこれに関する当事者の主張
1 争点 (1) 本件記事の掲載が被告による「虚偽事実を告知し,又は流布する行為」に当たるか (2) 原告と被告が競争関係にあるか (3) 本件記事の掲載は,被告による不法行為に当たるか (4) 損害の発生及び額 2 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)について (原告の主張) ア 本件記事の「アリタスピードレーシングソウルドアミラー」との記載は,本件ドアミラーがアリタスピードの開発,製作にかかるものか,又は,OEM製品であることを意味している。このことは,例えば,「ホンダ〇〇〇」という記載が,当然に,ホンダが開発又は製作した製品であることを意味するのと同様である。 しかしながら,本件ドアミラーはアリタスピードが開発,製作したものではないし,また,原告は,アリタスピードに対し,本件ドアミラーをOEM製品として取り扱うことの承諾を与えていないから,本件記事は虚偽である。 イ 本件記事は,記事の体裁をとっているが,アリタスピードの掲載依頼によるものであるから,実質的にはアリタスピードの広告に他ならない。 被告は,アリタスピードに対し,原告から本件ドアミラーをアリタスピードが開発した製品として広告販売することにつき同意を得ている旨を伝えたため,アリタスピードは,上記のような広告を掲載した。 このように,被告は,事情を知らないアリタスピードに虚偽事実を伝え,その結果,アリタスピードが上記広告を掲載したのであるから,上記広告の掲載は,アリタスピードを介して被告が行ったものである。 また,仮に,本件記事が広告ではないとしても,本件記事は,被告及びアリタスピードの積極的行為によって作成,掲載されたものであるから,被告による告知又は流布といえる。 (被告の主張) ア 本件記事がアリタスピードの広告であることは否認する。 本件記事は,株式会社三栄書房の編集者の記事であって,その掲載行為はアリタスピードの行為でも被告の行為でもない。 イ 本件記事の「アリタスピードレーシングソウルミラー」との部分は,せいぜい,アリタスピードがそのような名前で当該商品を売っているという意味にすぎない。同部分には,それ以上の意味は含まれていないから,本件記事に何ら虚偽性はない。 ウ 原告は,被告に対し,本件ドアミラーの拡販のための売込みを依頼したが,その方法については,他社ブランドによって販売する場合も含めて,被告に一任した。したがって,これにより,原告は,被告に対し,他社ブランドによる販売の代理許諾権を付与したものである。 そこで,被告は,アリタスピードに対し,本件ドアミラーをOEM製品としてアリタスピードのブランド名で販売することを依頼したのであるから,本件ドアミラーをOEM製品としてアリタスピードのブランド名で販売することについては,原告の許諾があるというべきである。 (2) 争点(2)について (原告の主張) 原告は,自動車部品を直接小売店等に販売することも多いから,被告と競争関係にある。 (被告の主張) 被告は,自動車部品の卸販売業者であって,ドアミラーの製造販売を行う原告とは競争関係にない。 (3) 争点(3)について (原告の主張) 上記(1)の原告の主張のとおり,被告は,アリタスピードを介して,上記広告を掲載したが,その結果,原告の取引先に,本件ドアミラーは原告が開発したものではなく,他社の製品を自社で開発したかのように装って販売したとの疑念を抱かせ,原告の製品開発能力や販売方法についての名誉,信用が毀損された。 また,本件記事の掲載後,原告やその顧客には苦情や問合せが相次ぎ,健全な営業活動が妨げられた。 (被告の主張) 原告の上記主張は否認する。 本件記事に,原告の社会的評価を低下させる記述はない。 (4) 争点(4)について (原告の主張) 被告による本件記事の掲載行為は,原告の取引先,業界に対する信用,名誉を毀損するものであって,これによって原告が被った損害は500万円を下らない。 (被告の主張) 損害の発生及び額は争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点(1)について (1) 前記第2の1の事実に証拠(甲3,甲4の1ないし3,甲5の1ないし3,甲8,9,乙7,原告代表者,被告代表者)と弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア 原告は,被告に対し,平成11年4月8日ころ,本件ドアミラー及び付属部品の卸販売を依頼し,価格や支払方法を定めたが,その際,販売先のブランド名を付して販売するか否かについては話題にならなかった。 イ 被告は,アリタスピードに対し,同月末ころ,本件ドアミラーの販売を持ちかけたところ,同人が,自己のブランドであるレーシングソウルの名称で販売することを求めてきたため,被告代表者は,「大丈夫と思うよ。」と返答した。被告代表者は,アリタスピードが本件ミラーをレーシングソウルのブランドで販売する場合には,正式にその旨の話があるであろうから,原告には,そのような話があった際に伝えることで十分であろうと考え,アリタスピードから上記のような話があったことやその際における被告代表者の返答を,原告に対しては伝えなかった。 ウ 原告は,同年5月,被告からの注文により,アリタスピードに対し,本件ドアミラーと特注の付属部品を1セット出荷した。付属部品の寸法が合わなかったため,アリタスピードは,同年6月に,原告に対して,その旨申し入れ,以後,原告とアリタスピードは,この件に関して,直接交渉した。 原告は,同年8月,被告の注文により,アリタスピードに対し,本件ドアミラーを1セット出荷した。 エ 同年9月ころ,本件記事が掲載された本件雑誌が発売されたが,原告及び被告は,本件記事が掲載されることを知らなかった。 原告は,取引先から本件記事を知らされて,本件記事の掲載を知り,同月17日ころ,アリタスピードに対し,内容証明郵便で,本件ドアミラーをレーシングソウルのブランドで発売することを停止することなどを求めた。 被告は,アリタスピードから,上記内容証明郵便で送付された書面のことを聞き,本件記事を読んだが,上記イのアリタスピードとの話を原告に伝えていなかったことから生じた誤解と考え,原告に対し,このような誤解を生じさせたことについて謝罪した。 (2) 証拠(甲2,8)によると,本件記事は,自動車部品の特集記事の中で,本件ドアミラーを紹介するものであるが,本件ドアミラーに特注の付属部品が装着されたものの写真が掲載され,その下に,「アリタスピード」「レーシングソウルドアミラー」「Ver.U」との三段の見出しの後,「愛車に別売の専用ブラケットを装着するだけで,ボッテリとしたノーマルミラーからおさらばっ!ミラー本体はカーボンを使った一級品で,専用ブラケットはアルミ削りだし。で,この価格なら文句ナシでしょ!?」との記載がされ,さらにその下に,「●ミラー本体(汎用) 3万8000円 専用ブラケット 2100円〜(各車種あり)」との記載,さらにその下に「●アリタスピード」との記載とアリタスピードの電話番号の記載があることが認められる。 (3) 以上の事実によると,アリタスピードは,本件ドアミラーをレーシングソウルのブランドで販売することを計画し,株式会社三栄書房にその旨の情報を提供したところ,同社によって本件記事が作成,掲載されたものと認めることができる。アリタスピードが,そのような情報提供をしたことについては,前記(1)イ認定のとおり,被告代表者が,「大丈夫と思うよ。」と返答したことがきっかけとなっていると認められるが,被告が,それ以上に本件記事の作成,掲載に関与したことを認める証拠はなく,前記(1)エ認定のとおり,被告は,本件記事が掲載された雑誌が発売された後に初めて本件記事の存在を知ったものである。そうすると,本件記事の掲載が,被告の行為,すなわち,被告による「虚偽事実を告知し,又は流布する行為」ということはできない。 (4) 前記(1)認定の事実によると,被告には,原告の意向を確認することなく,アリタスピードに対して,アリタスピードが本件ミラーをレーシングソウルのブランドで販売することを許諾する権限があったとは認められないから,原告が,アリタスピードが本件ミラーをレーシングソウルのブランドで販売することについて許諾したとは認められない。 前記(2)認定の事実によると,本件記事は,アリタスピードが本件ドアミラーをレーシングソウルのブランドで取り扱う旨を記載したものと認められるが,本件ドアミラーがアリタスピードの開発,製作にかかるものであることまで示しているとは認められない。また,上記(3)認定のとおり,アリタスピードは,本件ドアミラーをこのブランドで販売する計画があったうえ、自動車部品のOEM供給は珍しいものではなく,原告自身,本件ドアミラーを,他の会社にOEM供給していること(甲7の1及び2,甲8,乙7,原告代表者、被告代表者)からすると、アリタスピードが,本件記事の掲載前に原告から本件ドアミラーについてレーシングソウルのブランドで販売することの許諾を得る可能性がおよそなかったとも認められない。そうすると、本件記事が虚偽であるとまでは認められない。 (5) 以上によると,本件記事の掲載が,被告による虚偽事実の告知又は流布に当たるとは認められない。 2 争点(3)について (1) 上記1のとおり,本件記事の掲載が,被告の行為であるということはできないから,原告の不法行為による損害賠償請求は,既にこの点において理由がない。 (2) また,上記認定のとおり,本件記事は,アリタスピードが,本件ドアミラーをレーシングソウルのブランドで取り扱っていることを記載しているにすぎないから,これによって,原告の名誉や信用が害されたとは認められない。 この点について,原告は,本件記事によって,原告の取引先に,本件ドアミラーは原告が開発したものではなく,他社の製品を自社で開発したかのように装って販売したとの疑念を抱かせたと主張し,原告代表者は,本件記事が掲載された後,取引先等から,原告の商品と本件記事に掲載された商品のどちらがオリジナルであるか,実際のレースで使われているのは,原告の商品と本件記事に掲載された商品のどちらであるかという問合せがあったり,「おたくの商品一度コピーされましたよね。」と言われたりしたと供述する。 しかし,一部の取引先等について,これらの事実が存するとしても,上記認定のとおり、自動車部品のOEM供給は珍しいものではなく,原告自身,本件ドアミラーを,他の会社にOEM供給していることをも考慮すると,一般に,本件記事の内容から,原告が主張するような疑念が生じると認めることはできないし,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。 (3) 以上によると,本件記事の掲載が,被告による不法行為であるとは認められない。 3 以上によると,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。 |
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追加 | |
別紙有限会社坂東商会代表取締役Bは,有限会社クラフトスクエア製「ツーリング・コンペティションドアミラーTC-F」の卸販売を有限会社クラフトスクエア殿より依頼されました。しかし,弊社は,有限会社クラフトスクエア殿の承諾を得ることなく,私どもと取引関係にある小売商C社殿に対し,このTC-FミラーをC社製としてその名を付し販売することを許諾した結果,当雑誌に,「ツーリング・コンペティションドアミラーTC-F」がC社製として別な名称と価格設定がなされ,広告掲載されました。 弊社は,弊社の行為により,有限会社クラフトスクエア殿に,取引上,信用上,多大の迷惑をおかけしたことをお詫び致します。 弊社は,この度の行為を深く反省しております。 東京都町田市(以下略)代表TEL(以下略)有限会社坂東商会代表取締役B |
裁判長裁判官 | 森義之 |
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裁判官 | 岡口基一 |
裁判官 | 男澤聡子 |