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関連ワード 差止請求(差止) /  営業上の利益 /  組成した物 /  権利濫用(権利の濫用) /  原状回復 /  不当利得 /  ライセンス /  侵害 /  著名表示冒用行為(2条1項2号) /  代理人 /  代表者 /  著名表示冒用行為(2条1項2号) /  損害賠償 / 
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事件 平成 17年 (ワ) 14972号 不正競争行為差止等請求事件
平成 17年 (ワ) 22496号 損害賠償等請求事件
本訴原告・反訴被告 日本マクドナルド株式会社
同訴訟代理人弁護士 鹿児嶋康雄
同 金井高志
同 笹原直和
本訴被告・反訴原告 フルセル株式会社
本訴被告 A
本訴被告 B
上記3名訴訟代理人弁護士 田中克郎
同 中村勝彦
同 長坂省
同 山田健男
同 長井真之
同 宮下央
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/02/21
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社は,別紙標章目録1ないし4記載の各標章を使用してはならない。
2 本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社は,福岡市中央区(以下略)所在のマクドナルド福岡新天町店の店舗内外にある正面看板,袖看板,可動式看板,オーダーボード及び垂れ幕に付されている別紙標章目録1ないし4記載の各標章を抹消せよ。
3 本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社は,別紙標章目録1ないし4記載の各標章を付した別紙FOOD&PAPER一覧表及び別紙消耗品一覧表記載の各物品を廃棄せよ。
4 本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社は,本訴原告(反訴被告)に対し,別紙リース物件目録記載の各物件を引き渡せ。
5 本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社,本訴被告A及び本訴被告Bは,本訴原告(反訴被告)に対し,連帯して,金4965万2829円及び別紙遅延損害金目録記載の金員を支払え。
6 反訴原告(本訴被告)フルセル株式会社の請求をいずれも棄却する。
7 訴訟費用は,本訴について生じた部分は本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社,本訴被告A及び本訴被告Bの負担とし,反訴について生じた部分は本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社の負担とする。
8 この判決は,第1,第4及び第5項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 本訴事件 主文第1ないし第5項と同旨 2 反訴事件 反訴被告(本訴原告)は,反訴原告(本訴被告)フルセル株式会社に対し,金1億7518万3685円並びに内金1185万3685円に対する平成17年11月1日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による金員及び内金1億6333万円に対する同日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 事案の概要 本訴事件は,フランチャイザーである本訴原告(反訴被告。以下「原告」という。)が,@ フランチャイジーである本訴被告(反訴原告)フルセル株式会社(以下「被告会社」という。)に対してはフランチャイズ契約に基づき,本訴被告A(以下「被告A」という。)と本訴被告B(以下「被告B」という。)に対しては連帯保証契約に基づき,ロイヤルティ料等の支払を求め,A 上記契約の解除に伴う原状回復請求権に基づき,被告会社に対し,リース物件の引渡しを求めるとともに,B 上記契約の解除により,被告会社が著名な原告の標章を使用することが不正競争防止法2条1項2号所定の不正競争行為に該当すると主張して,同法3条に基づき,被告会社に対し,原告の標章の使用の差止め等を請求する事案である。
反訴事件は,被告会社が,原告に対し,C 原告の営業政策がフランチャイズ契約の債務不履行に当たると主張して,民法415条による損害賠償請求権に基づき,損害の一部(平成17年1月から6月分)として1185万3685円の支払を請求するとともに,D 原告が受領した営業権の対価のうち,契約解除後の約20年間分については,原告が法律上の原因がなく利得したものであると主張して,不当利得返還請求権に基づき,1億6333万円の支払を請求する事案である。
2 争いのない事実等 (1) 当事者 ア 原告は,飲食店の経営並びにフランチャイズチェーンシステムによる飲食店の加盟店の募集及びその加盟店の指導育成等を目的とする株式会社であって,米国法人マクドナルド・コーポレーションとのライセンス契約に基づき,いわゆるマクドナルド方式による店舗の営業によりハンバーガー類を販売している。
イ 被告会社は,食品の販売等を目的とする株式会社である。
(2) 原告標章 ア 原告は,昭和46年7月20日に,第一号店を開店して以来,店舗数を増加させ,平成16年12月31日現在で,その数は3772店舗(直営店を含む。)となっている。また,同年の売上高は約3959億円であった。
イ 別紙標章目録1ないし4記載の各標章(以下「原告標章」という。)は,上記アの各店舗において使用され,原告の営業を表示するものとして著名である。
(3) フランチャイズ契約等の締結 ア 原告と被告会社は,平成8年6月1日,次に掲げる内容等の約定でフランチャイズ契約(以下「本件契約」という。)を締結した(甲1の1)。
(ア) 原告は,被告会社に対し,福岡市中央区(以下略)所在の店舗(以下「本件店舗」という。)において,マクドナルド方式による店舗の営業を許諾する。
(イ) 原告は,被告会社に対し,本件店舗の営業の表示として,原告標章を使用することを許諾する。
(ウ) 被告会社は,原告又は原告が指定する者から継続的に販売食品及び飲料の原材料(加工原材料を含む。以下同じ。)を購入する。
(エ) 原告は,(ウ)に規定する者のうち原材料の購入先として,富士エコー及びフジパンを指定する。
(オ) 原告は,被告会社に対し,厨房設備器具として,別紙リース物件目録記載の各物件をリースする。
(カ) 被告会社は,原告に対し,ロイヤルティ料(総売上高に一定割合を乗じて算出されたものをいう。)及び広告宣伝費(以下,これらを併せて「ロイヤルティ料等」という。)を,次の各号に掲げる期間の区分に応じ,それぞれ当該各号に定める弁済期までに支払う。
a 毎月1日から15日まで 当月20日(その後25日に変更) b 毎月16日から月末まで 翌月5日(その後翌月12日に変更) (キ) 被告会社が,(カ)に規定する弁済期までにロイヤルティ料等を支払わなかった場合には,次に掲げる額の区分に応じ,それぞれ当該各号に定める割合による遅延損害金を支払う。
a 100万円以下の額 年20パーセント b 100万円を超え500万円以下の額 年18パーセント c 500万円を超え1000万円以下の額 年16パーセント d 1000万円を超える額 年14パーセント (ク) (カ)及び(キ)の規定は,本件契約が解除された後にあっては,ロイヤルティ料等相当額損害金について,なお効力を有する。 (ケ) 被告会社は,機械器具,看板,食品,紙製品の購入その他本件店舗の営業上生じた債務をその弁済期に遅滞なく支払う。
(コ) 被告会社は,以下に掲げる事由等が生じた場合には,本件契約の債務を履行しなかったものとみなすことに同意する。
a 被告会社が,その財産について滞納処分等を受けた場合 b 被告会社が,原告に対して,ロイヤルティ料等を弁済期から30日以上経過しても支払わない場合 c 被告会社が,本件店舗の営業上生じた債務を遅滞なく履行せず,又はその遅滞を繰り返した場合 (サ) (コ)に規定する場合には,原告は,本件契約を無催告で解除することができる。
(シ) 被告会社が本件契約に係る債務を反復して履行しなかった場合には,原告は,本件契約を無催告で解除することができる。
(ス) (サ)又は(シ)の規定により,本件契約が解除された場合には,(オ)の規定によるリース契約は解除される。この場合には,被告会社は,原告又は原告の指定する者に対し,被告会社の費用で(オ)に規定する各物件を速やかに引き渡さなければならない。
(セ) 被告Aと被告Bは,原告との間で,(カ)ないし(ク)の規定による被告会社の債務を連帯保証する。 イ ア(ウ)の規定に基づき,原告と被告会社は,平成8年6月1日,次に掲げる内容等の約定で継続的購入契約(以下「本件原材料購入契約」という。)を締結した(甲1の2)。
(ア) 被告会社は,本件店舗を営業するために,原告又は原告が指定する者のみから,原告が指定する原材料並びに包装用紙又はプラスチック製品(以下「原材料等」という。)を継続的に購入する。
(イ) 被告会社は,原告又は原告が指定した者に対し,(ア)の原材料等の代金をこれらの者が指定した期日に現金で支払う。
(ウ) 被告会社が,(イ)に規定する期日までに(ア)の原材料等の代金を支払わなかった場合には,その翌日から年12パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
(エ) 被告会社が(ア)ないし(ウ)等の本件原材料購入契約の債務を履行しなかった場合には,原告は,本件原材料購入契約を無催告で解除することができる。
(オ) 本件原材料購入契約が解除された場合には,本件契約も同時に解除される。
(カ) 被告Aと被告Bは,原告との間で,(イ)及び(ウ)の規定による債務を連帯保証する。
ウ 被告会社は,原告に対し,本件契約の締結にあたり,本件店舗の営業権として,2億円余を支払った。
(4) 被告会社の行為 ア 被告会社は,その営業の表示として,本件店舗内外にある正面看板,袖看板,可動式看板,オーダーボード及び垂れ幕に原告標章を付して,これを使用している。
イ 被告会社は,原告標章を付した別紙FOOD&PAPER一覧表及び別紙消耗品一覧表記載の各物品を使用している。
ウ 被告会社は,別紙リース物件目録記載の各物件を占有している。
(5) 本件契約解除の意思表示 ア ロイヤルティ料等の未払金 (ア) 被告会社は,平成12年3月から,ロイヤルティ料等の支払を遅滞するようになった。その未払金の額(支払期日を30日以上経過しているものであって,遅延損害金を含むものをいう。後記(7)オ,カ及びキにおいて,単に「未払金」という。)は,平成17年3月23日現在,1745万2769円である。 (イ) 被告会社は,平成16年11月12日支払分から平成17年8月5日時点まで,ロイヤルティ料等の支払を一切していない。また,富士エコー及びフジパンに対する原材料代金の未払金は,別紙原材料代金未払金一覧表のとおりである。
イ 解除の意思表示 原告は,被告会社に対し,平成17年3月23日,上記ア(ア)の未払金を書面の到達の日から7日以内に支払うよう催告し,被告会社がこれを履行しない場合には,原告は本件契約を解除する旨の通知書を送付し,同月25日,被告会社に到達した。
(6) 原告の営業政策 ア 原告は,平成17年ころから,ハンバーガー無料券等のクーポン券を配布したり,値引販売を行った。
イ 原告は,さらに,平成17年4月18日以降,チーズバーガー等の商品を100円で販売している(以下,アと併せて「100円マック政策」という。)。
(7) 解除権の行使に至る経緯 ア 平成12年6月1日付覚書(以下「第1覚書」という。甲14) 被告会社が本件契約の債務を履行しなかったことから,原告は,被告会社との間で,改めて,ロイヤルティ料等の支払等を約する第1覚書を締結した。
イ 平成13年5月31日付覚書(以下「第2覚書」という。甲19) 被告会社が本件契約及び第1覚書記載の債務を履行しなかったことから,原告は,被告会社との間で,改めて,ロイヤルティ料等の支払等を約する第2覚書を締結した。
ウ 平成14年5月31日付覚書(以下「第3覚書」という。甲21) 被告会社が本件契約及び第2覚書記載の債務を履行しなかったことから,原告は,被告会社との間で,改めて,ロイヤルティ料等の支払等を約する第3覚書を締結した。
エ 平成15年5月29日付契約解除通知書(以下「第1通知書」という。
甲24) 被告会社が本件契約及び第3覚書記載の債務を履行しなかったことから,原告は,被告会社に対し,本件契約を解除すること等の内容を記載した第1通知書を送付し,これが平成15年5月30日被告会社に到達した。
原告は,本件契約が解除されたとして,平成15年8月11日,被告会社において本件店舗の営業を終了するよう求める調停を申し立てたものの(甲27),不成立となった。
オ 平成16年12月3日付条件付契約解除通知書(以下「第2通知書」という。甲4の1) 平成16年12月2日時点における未払金は,2045万1696円となった。そこで,原告は,被告会社に対し,平成17年1月3日までに当該未払金を支払わない場合には,翌日午前0時の経過をもって本件契約を解除すること等の内容を記載した第2通知書を送付し,これが平成16年12月4日,被告会社に到達した。
これに対し,被告会社は,原告に対し,平成16年12月30日,当該未払金を支払った。
カ 平成17年1月13日付条件付契約解除通知書(以下「第3通知書」という。甲5の1) 平成17年1月12日時点における未払金は692万3640円,その余のロイヤルティ料等の未払金は220万2801円となった。そこで,原告は,被告会社に対し,平成17年2月13日までにこれらの未払金を支払わない場合には,翌日午前0時の経過をもって本件契約を解除すること等の内容を記載した第3通知書を送付し,これが平成17年1月15日,被告会社に到達した。
キ 平成17年3月23日付条件付契約解除通知書(以下「本件解除通知書」という。甲8の1) 被告会社は,原告に対し,平成17年2月13日までにカの未払金を支払わず,平成17年3月23日時点における未払金は,1745万2769円となった 。そこで,前記(5)イのとおり,原告は,被告会社に対して,本件解除通知書を送付し,もって,本件契約の解除の意思表示をした。
(8) その後の事情 ア 被告会社は,原告に対し,ロイヤルティ料等の未払金の支払として,平成17年8月24日に64万7451円,同年9月30日に62万0237円をそれぞれ支払った。
イ その結果,ロイヤルティ料等の未払金は,別紙遅延損害金目録の「元本(円)」欄1ないし24記載の合計4965万2829円であり,それぞれの支払期日は,同目録の「支払期日」欄記載のとおりである。
ウ 富士エコーは,被告会社に対し,原材料代金3466万2851円の支払を求めて,東京地方裁判所に訴えを提起し,現在訴訟が係属中である。
3 争点 (1) 原告による解除権の行使は,解除権の濫用に当たるか。
(2) 原告の100円マック政策は,本件契約の債務不履行に当たるか。
(3) 営業権の対価の受領は,本件契約の解除により不当利得に当たるか。
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(解除権の濫用)について 〔被告らの主張〕 原告による解除権の行使は,以下のとおり,権利の濫用として許されない。
(1) 権利の濫用を基礎付ける事実 ア 委託販売契約について 平成17年4月1日に本件契約の解除権が発生した当時,被告会社は,原告との間で,委託販売契約の締結に向けた交渉を継続していた。すなわち,第3通知書によれば,被告会社は,原告から,ロイヤルティ料等の未払金を平成17年2月13日までに支払うよう催告されていたものの,被告会社は,原告との間で,契約交渉を続けていた。
このように,委託販売契約の締結に向けた交渉を継続していたことから,原告による本件契約の解除権の行使は,不意打ちであって,不当なものである。
なお,被告会社は,委託販売契約による営業権及び固定資産の売却益をロイヤルティ料等の未払金に充当するつもりであった。 イ 被告会社の損害について 被告会社は,本件店舗の営業に際し,賃借権及び営業権の取得等の初期投資に10億円以上を費やした。被告会社がこのような多額の費用を支出したのは,被告会社が,原告との間で,次のとおりの約束があったものと認識していたからである。したがって,原告が解除権を行使すれば,被告会社の認識とは異なり,これらの費用を回収し得ないことになる。
(ア) 本件契約が終了した場合には,原告が上記営業権を買い取る。
(イ) 本件契約の期間は,投下資本の回収が可能となる30年間とする。
(2) 原告の主張に対する反論 ア 解除権の留保について 被告会社の本件契約に係る債務の不履行は,第1覚書が締結される以前にあっては極めて軽微なものであるから,第1覚書は,本来行使することができない解除権を前提として締結されたものである。したがって,このような第1覚書を前提として,第2覚書及び第3覚書が締結されたことを理由として,原告が,解除権の行使を留保したということはできない。
イ 支払の見込み 平成17年8月現在における本件店舗の収支については,売上の合計額(消費税を含む。)が3327万1190円であるのに対し,支出の合計額は3367万3036円である。したがって,被告会社がロイヤルティ料等を支払えないのは,被告会社の財務状況の悪化によるものであって,被告会社が売上金を他に流用しているからではないことは明らかである。
このような財務状況の悪化は,前記(1)イ記載の初期投資の過大な負担及び原告の過大なディスカウント政策を原因とするものであるが,このような状況であっても,被告会社は,原告に対し,平成17年8月24日,未払金の支払として64万7451円を支払ったのであって,今後も未払金の支払を継続する意思がある。
なお,被告会社は,株式会社親和銀行との間で,被告会社への貸付金元本の半分について支払を猶予することを協議しており,また,中小企業金融公庫との間では,借入金の返済を利息のみとすることを協議している。これにより,被告会社は,原告に対し,将来的にはロイヤルティ料等の支払を継続することが可能となる。
〔原告の主張〕 被告会社の行為は信頼関係を破壊するものであるから,本件契約の解除権の行使は,権利の濫用であるとは認められない。
(1) 信頼関係を破壊する事情 以下のとおり,原告は,本件契約の解除権が発生しているにもかかわらず,その行使を3回にわたり留保して,業務を改善するとの約束の下に,被告会社に営業を継続する機会を与えた。このような恩恵を与えたにもかかわらず,被告会社が業務を改善しなかったことから,原告は,解除権を行使した。しかるに,被告会社は,原告が顧客の利益のために本件店舗の営業の中止措置を決断し得ないことにつけ込んで,被告会社は,本件店舗の営業を継続し続け,しかも,本件契約の最も重要な債務であるロイヤルティ料等の支払を一切しないまでに至った。このような行為は,原告に対する背信行為であって,継続的契約における信頼関係を破壊するに足りるものである。したがって,本件契約の解除権の行使は,権利の濫用とはいえない。
ア 被告会社は,本件契約の4年目から,本件契約の債務を履行しなくなったことから,本件契約の規定に基づいて,解除権が各年ごとに合計3回発生した。
しかし,原告は,解除権を行使する代わりに,被告会社との間で,当該各年ごとに順次第1覚書ないし第3覚書を締結して,改めてロイヤルティ料等の支払を約するなどの合意をした上で,当該合意の遵守状況等を審査して,本件契約を継続するか否かを判断することにした。 イ アの審査の結果を踏まえて,原告は,被告会社に対して,平成15年5月29日,第1通知書を送付して,もって,本件契約を解除する旨の意思表示をした。
ウ それにもかかわらず,被告会社は,本件店舗の営業を継続したことから,原告は,被告会社に対し,本件店舗の営業を終了するよう求めて,平成15年
追加
エこのような状況にあっても,被告会社は,本件店舗の営業を継続した上,ロイヤルティ料等の支払を怠ったことから,原告は,被告会社に対し,平成17年1月3日までに未払金を支払うよう求め,これを怠った場合には,本件契約を解除するなどと記載した第2通知書を被告会社に送付した。
オエの通知を受けて,被告会社は,エの未払金を支払ったものの,その後,なおも,ロイヤルティ料等の支払を怠ったことから,原告は,被告会社に対し,平成17年2月13日までに未払金を支払うよう求め,これを怠った場合には,本件契約を解除するなどと記載した第3通知書を被告会社に送付した。
カしかしながら,被告会社は,オの未払金の支払をしなかったことから,原告は,被告会社に対し,改めて,未払金の支払を求め,これを怠った場合には,本件契約を解除するなどと記載した本件解除通知書を被告会社に再度送付し,もって,本件契約の解除権を行使するに至った。
(2)(1)以外の事情ア本件店舗の営業に係る売上金の流用被告会社は,本件店舗の営業に係る売上金をロイヤルティ料等の支払に充てずに,被告Aが経営する他の事業等に流用していた。
イ未払金の累積ロイヤルティ料等及び原材料代金の未払金は,別紙ロイヤルティ料等未払金一覧表及び原材料代金未払金一覧表のとおり,累積しており,その弁済の見込みがない。
ウ被告らの主張について被告らは,被告会社がロイヤルティ料等を支払えないのは,被告会社の財務状況の悪化によるものであって,被告会社が売上金を他に流用しているからではないと主張する。
しかしながら,このような主張を前提としても,被告会社は,本件店舗の売上金をロイヤルティ料等の支払ではなく,金融機関に対する支払に優先的に充てていることになるから,このような事実は,本件店舗の営業に係る売上金を他に流用していることにほかならない。
このように,被告会社には,本件契約の最も基本的な債務を誠実に履行しようとする姿勢が見受けられないから,被告会社との間の信頼関係は破壊されたものというべきである。
2争点(2)(債務不履行)について〔被告会社の主張〕原告による100円マック政策により,本件店舗の売上高が減少した。これは,以下のとおり,本件契約の債務不履行に当たる。
(1)ロイヤルティ料等は,被告会社の営業利益にかかわらず,売上高に応じて算出される。そうすると,営業利益が減少した場合であっても,売上高が増加したときは,ロイヤルティ料等は,増加することになる。このような算出方法を前提として,100円マック政策を実施すれば,被告会社の犠牲の下において,原告のみが利益を得ることになる。
他方で,本件契約は,フランチャイザーとフランチャイジーが,フランチャイザーの指導の下に協力して,フランチャイジーによる店舗営業により,ともに利益を享受することをその本質とするものである。そうすると,このような100円マック政策は,一方当事者の犠牲の下に,他方当事者の利益を上げるものであって,本件契約の規定には明記されていないものの,本件契約の趣旨に反するものである。
したがって,100円マック政策は,フランチャイズ契約の本質に反するものであるから,本件契約の債務不履行に当たるというべきである。
(2)しかも,本件店舗は,客の入店率が極めて高いことから,客数を増加させる余地がそもそも少ない状態であった。このような状態の中で,100円マック政策を実施すれば,客数はさほど増加しないにもかかわらず,客単価は大幅に減少することになるから,必然的に売上高は減少することになる。したがって,100円マック政策は,売上高を確実に減少させる構造的な問題を有するものであるから,この意味からも,本件契約の債務不履行に当たる。
(3)被告会社の損害原告の100円マック政策により,被告会社は,100円マック政策前である平成16年1月から6月までの営業利益の月平均額と,その後の平成17年1月から6月までの営業利益の月平均額との差額である197万5614円の6か月分である合計1185万3685円の損害を受けた。
〔原告の主張〕原告の100円マック政策は,債務不履行に当たらない。
(1)本件契約について被告会社は,次に掲げる条項のとおり(なお,「甲」は原告,「乙」は被告会社のことをいう。),原告の営業政策に従う義務があり,かつ,これにより利益が保証されるものではないことを前提として,本件契約を締結している。したがって,仮に,被告会社が,100円マック政策によって損害を受けたとしても,これをもって,債務不履行ということはできない。
1条1項「マクドナルドレストランは,このマクドナルド方式を採用し,もって統一された同一形態の営業を営むことを重要な特色とするものであり,乙はこれに従い,これを実現するために,甲が定めた次の基準と営業政策を尊重し,遵守しなければならない。」イ1条2項「この契約所定のレストランの運営は,現に効力を有し,または将来において,甲が修正する基準および営業政策に従い,もって折々の時点において効力を有する,マクドナルド方式に合致するよう行なわれなければならない。」ウ5条2項「乙は,甲により,または事前の甲の同意により,ととのえられた広告および販売促進の方法ないし,企画のみを使用しなければならない。乙の宣伝および販売促進の素材に関し,甲が承諾を与えたこと,または,甲が乙に交付するため上記の素材を準備したことを直接ないし間接の理由として,乙は甲に対し,その広告または販売促進につき,何らの対価も請求しえないものとする。」エ28条4号「甲が,当該レストランの収益性または収益の見込みにつき,何らの保証ないし約束もしなかったことを,乙は承認し,同意する。」(2)100円マック政策の合理性について100円マック政策は,既存の顧客のみならず,新規顧客を開拓することによって,利益を増やすことを目的とするものである。
よって,100円マック政策は合理的なものであり,100円マック政策にもかかわらず,本件店舗において,客数が伸びなかったのは,運営管理上の問題があったことにほかならない。
なお,被告らは,本件店舗において,これ以上来客数を増加させる余地はないと主張しているが,このような主張をすること自体,本件店舗の運営管理上の問題を重視していないことの証左である。
3争点(3)(不当利得)について〔被告会社の主張〕原告は,被告会社に対し,本件契約の期間が30年間であることを約束した。このようなことから,被告会社は,原告に対し,本件契約の締結にあたり,本件店舗の営業権の対価として2億4500万円を支払った。したがって,この営業権は,被告が本件店舗の営業を30年間継続していく権利の対価である。
それにもかかわらず,原告は,本件契約は解除により終了したと主張し,また,本件営業権を買い取る意思がないと述べている。
そうすると,仮に,原告の主張のとおり,本件契約が現時点で解除された場合又は更新されなかった場合には,被告会社は,本件店舗の営業を継続することができなくなるから,残存期間である20年間分の営業権の対価である1億6333万円の損害を受けることになる。これに対し,原告は,この対価を法律上の原因なく利得することになる。
したがって,原告は,本件店舗の営業権の対価のうち20年間分である1億6333万円を,法律上の原因がなく利得したものであるから,これを被告会社に利得金として返還すべきである。
〔原告の主張〕(1)本件店舗の営業権について原告は,被告会社から,本件契約の締結にあたり,本件店舗の営業権として2億1461万6052円を受領した。この営業権とは,営業権に係る売買契約書記載のとおり,得意先又は仕入先関係,営業上の秘訣,販売の機会,経営の内部的組織など多年の営業活動から生じる営業上の価値をいうものであって,そもそも,本件店舗において一定期間営業を継続していく権利の対価ではない。
(2)本件契約について被告会社は,次の内容で本件契約を締結しているから,原告との間で,本件契約を30年間とする合意をしていない。
2条2項「契約期間は平成8年6月1日から10年とし,自動的には更新しない。」イ28条1号「本件契約の有効期間は,10年をもって打ち切りとし,本件契約が乙に対し,何らその更新の保証,根拠,または口実を与えるものではないことを,乙は承認し,同意する。」ウ26条1項「本契約は,付属添付書類ならびに修正文書と共に,本フランチャイズ等に関連する当事者間に於ける完全契約を構成するものである。本契約は,当事者間の最終的な合意である。」エ26条2項「上記契約文書中に含まれる条項は,先行する合意または同時になされた口頭の合意を根拠として,これを否認することはできない。ただし,これを商談の経過または履行の過程,または当事者双方の合意により,追加した条項の成立の過程を証明するために用いることを妨げない。」第4当裁判所の判断1事実関係前記争いのない事実並びに証拠(甲4の1,5の1,6,7の1,8の1,14,16,17,19,21ないし24,27)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)第1覚書ないし第3覚書の締結ア第1覚書(甲14)(ア)覚書締結に至る経緯被告会社は,富士エコーに対し,平成12年3月までにその営業に係る原材料代金の支払を合計3回遅滞した(別紙原材料代金未払金一覧表1ないし3参照)。
(イ)第1覚書の締結(ア)を原因として,本件契約の解除権が発生したものの,原告は,本件契約に規定する事項に加えて,平成12年6月1日,次に掲げる内容等を合意する旨の第1覚書(甲14)を締結した。
a被告会社が,原告に対し,ロイヤルティ料等の支払又はその営業に係る原材料代金の支払を2回にわたり2日以上遅滞した場合には,本件契約は2回目に遅滞した日に解除される。
b原告は,平成13年5月31日までの適正な時期において,フランチャイジーとしての被告会社の姿勢,売上動向,担保資産処分状況及び金融機関の支援状況等を勘案して本件契約及び第1覚書の継続について審査する。この場合において,被告会社は,原告の審査結果に異議なく従うことを予め約諾するものとする。
(ウ)第1覚書に係る審査の結果a平成12年9月21日に実施された審査の結果には,次のとおりの記載等がある(甲16)。なお,「Aオーナー」とは,被告Aのことをいう。
「鞄栄からの借入金を4年前から報告されていませんが何故報告されなかったのですか?」「返せると思い,報告しませんでした。(Aオーナー)」「銀行並びに当社はフルセル轄ト建の為,金利軽減やロイヤリティ軽減措置を実行しています。資金が鞄栄に流れる事態は不本意であり,必ず避けていただかねばならないと考えます。又,今回のビジネスレビューで会社の資金の流れ確認に際し,Aオーナーから明確にお応え頂けない事が多く,次回のレビュー(2001年3月予定)にて明確にして頂きたいと存じます。」「今回の差し押え書状や日栄借入金の事実は,御社・当社双方の信頼関係を著しく損なった旨,改めてご確認いただけたと考えます。」b平成13年3月13日に実施された審査の結果には,次のとおりの記載等がある(甲17)。
「Aオーナーの姿勢は信頼関係を著しく損ない,再契約はできない。」「上記事実を踏まえ再契約は難しい。」「覚書締結以降改善が見られず,将来に渡り九州銀行の支援が不可欠であり契約を打ち切らざるを得ない。」「総合評価と致しましては,再契約,店舗展開共NGになります。
非常に厳しい状況ではありますが,現実を踏まえフルセル鰍ニして最前の選択をされることを期待致します。」イ第2覚書(甲19)(ア)覚書締結に至る経緯被告会社は,平成12年8月ころ,法人税及び消費税合計1170万円を滞納したため,本件契約の保証金500万円の差押えを受けた。
(イ)第2覚書の締結(ア)を原因として,本件契約の解除権が発生したものの,原告は,本件契約に規定する事項に加えて,平成13年5月31日,次に掲げる事項等を合意する旨の第2覚書(甲19)を締結した。
a被告会社は,ロイヤルティ料等その他本件店舗の営業上生じた債務を弁済期に遅滞なく支払う。
b被告会社は,aに係る合意等の遵守状況を勘案して,本件契約を継続するか解除するかについて審査するために,平成13年9月及び平成14年3月に実施するレビューを受けるものとする。
cbに規定するレビューについては,原告は,被告会社及び被告Aのフランチャイジーとしての姿勢,売上動向,担保資産処分状況及び金融機関の支援状況等を勘案して本件契約を継続するか否かを審査する。この場合において,被告会社は,原告の審査結果に異議なく従うことを予め約諾する。
d被告会社がaの事項を履行しない場合又は原告が履行しないと判断した場合には,原告は,被告会社に対し,相当期間内にこれを履行するよう催告する。
edの場合において,被告会社がその期間内にこれを履行しないときは,原告は,本件契約を解除することができる。この場合において,被告会社は,これに異議を述べることはできない。
(ウ)第2覚書に係る審査の結果平成14年3月6日に実施された審査の結果には,次のとおりの記載等がある(甲22)。
「現状のQSC(品質,サービス,清潔さのことをいう。以下同じ。)は改善傾向にあるものの,未だ【C】レベルでの運営となっています。特にサービス面においては,来店された顧客を捌くのに精一杯の状況です。クレンリネス面においてもリアクション的な対応であり,継続的に基準外となっています。ブランドイメージ向上の為にも早期に問題点を改善し,QSC向上を図って頂きますようにお願い申し上げます。又,小林本部長からも『オーナー御自身の目で店舗を観察し,QSCについて具体的な目標を明確に持ち,改善して欲しい。』との提言がありました。具体的な数値目標を設定された上でQSCの向上を進めて頂きたく,お願い申し上げます。」「銀行への支払いは順調なのか?」→「返済条件を変えてもらったので,順調になっています。(Aオーナー)」「銀行は順調だが,マクドナルド関連は遅延しているのか?」→「銀行を優先したのは申し訳ない。業者・御社を優先すべきであると考えています。(Aオーナー)」→「Mcd関係の支払いが滞ると納品が止まり,セールスが取れなくなる。どう考えておられるのか?フジエコーもフジパンもいつまでも黙っていないと思うが…」「マクドナルドのブランドを考えて欲しい。レビューを受けてから銀行に話しをするのは筋違いではないかと思う。オーナー自らが銀行と交渉して欲しいと思う。ロケーションからももっとブランドを上げれる店舗だと思う。もっとオーナー御自身が入り込んでいけば,売上・利益が出る店舗だと思う。QSCについては,基準の認識を一致させて欲しい。評価に納得していない部分もあると思うが,グレードを理解し,運営して欲しい。」「再契約評価NG;財務改善(現時点では再契約できません。)」ウ第3覚書(甲21)(ア)覚書締結に至る経緯a被告会社は,第2覚書の締結から平成14年5月までの間に,ロイヤルティ料等及び原材料代金の支払を10回遅滞した(ロイヤルティ料等未払金一覧表2ないし5及び原材料代金未払金一覧表4ないし9参照)。
b被告会社は,消費税360万円については5四半期以上,社会保険料については2か月以上,それぞれ滞納した。
(イ)第3覚書の締結(ア)を原因として,本件契約の解除権が発生したものの,原告は,本件契約に規定する事項に加えて,平成14年5月31日,次に掲げる事項等を合意する旨の第3覚書(甲21)を締結した。
a被告会社は,ロイヤルティ料等その他本件店舗の営業上生じた債務を弁済期に遅滞なく支払う。
b被告会社は,aの事項等の遵守状況を勘案して,本件契約を継続するか解除するかについて審査するために,平成14年9月及び平成15年3月に実施するレビューを受けるものとする。
cbに規定するレビューについては,原告は,被告会社及び被告Aのフランチャイジーとしての姿勢,売上動向,担保資産処分状況及び金融機関の支援状況等を勘案して本件契約を継続するか否かを審査する。この場合において,被告会社は,原告の審査結果に異議なく従うことを予め約諾する。
d被告会社がaの事項等を履行しない場合又は原告が履行しないと判断した場合には,原告は,被告会社に対し,相当期間内にこれを履行するよう催告する。
edの場合において,被告会社がその期間内にこれを履行しないときは,原告は,本件契約を解除することができる。この場合において,被告会社は,これに異議を述べることはできない。
(ウ)第3覚書に係る審査の結果平成15年3月27日に実施された審査の結果には,次のとおりの記載等がある(甲23)。
「2002年5月31日付覚書(3)の履行状況についての内容確認が実施されました。
以下に覚書に関する当社の現状判断について記述致します。
2項(1)について〔被告Aは,マクドナルドフランチャイジーのオーナーオペレーターとして,持てる時間の全てを店舗運営に充て,且つ最大限の努力と陣頭指揮によって,QSCの向上と売上・利益の獲得に成果を挙げること〕BC,FSMの店舗観察からはオーナーオペレーターとして持てる時間の全てを店舗運営に充てているとは判断できません。店舗で働く時間を増やして頂きたい。又,取引先等との面談で店舗を離れる時はMGRスケジュールで明確にしてください。以上により不履行と判断します。
2項(2)について〔被告会社は,店舗に係るすべての経費・公租公課等の支払を遅滞することなく所定の期日に支払うこと。〕財務諸表の確認をさせて頂いた内容からも支払い遅延が発生しており,不履行と判断致します。
2項(3)について〔被告Aは,経費の支出を抑制し,私的な経費及び冗長を一切店舗の経費に計上しないこと〕業務目的がはっきりしていない東京出張などがあり不履行と判断致します。」「覚書の不履行が多く,2003年5月31日迄で契約終了となりますがよろしいですか。
→努力はしてきました。それを評価して頂きたいし,契約を継続して頂きたい。(Aオーナー)→現状の財務状態では再契約はあり得ません。その事をご理解頂き対処をお考え下さい。」「前回お伝えしましたように再契約は出来ません。ご理解頂き,どのように幕を下ろすかお考え下さい。」「九州福岡では売上NO,1の店舗である事を常にお考え頂きブランドイメージを常に意識して下さい。財務面の問題解決が図れない現状では再契約は不可能です。」「再契約評価NG;財務改善(再契約は不可能です。)」エこのように,被告会社は,上記ア(ア),イ(ア)及びウ(ア)記載のとおり,本件契約の債務を履行しなかったことから,本件契約の規定に基づいて,解除権がそれぞれ発生した。しかしながら,原告は,解除権を行使する代わりに,被告会社との間で,別途第1覚書ないし第3覚書を締結して,契約期間を向こう一年間に限定するとともにロイヤルティ料等の支払を約するなどの合意を改めてした上で,当該合意の遵守状況等に照らして,本件契約を継続するか否かについて審査することにした。この審査の結果については,被告会社は,異議なくこれに従うことに合意した。
(2)第1通知書ないし第3通知書の送付ア第1通知書(ア)債務の履行状況(争いのない事実)a被告会社は,平成14年6月から平成15年3月までにロイヤルティ料等及び原材料代金の支払を10回遅滞した(ロイヤルティ料等未払金一覧表6ないし10及び原材料代金未払金一覧表10ないし14参照)。
b被告会社は,平成14年12月時点で,本件店舗の営業上生じた債務であるリース料111万円の支払を遅滞した。
c被告会社は,平成15年5月時点で,消費税516万円の支払を遅滞した。
d被告会社は,恒常的に2か月から3か月分の社会保険料(1ヶ月当たり約90万円に相当する。)の支払を遅滞した。
(イ)第1通知書の内容前記審査の結果及び上記債務の履行状況を踏まえて,原告は,被告会社に対して,平成15年5月29日,次の内容が記載された第1通知書(甲24)により,本件契約を解除する旨の意思表示をし,同月30日被告会社に到達した。
「前略当社は,貴社との間で,貴社・当社間のマクドナルド福岡新天町店に関する1996年6月1日付フランチャイズ契約の契約解除権を1年間留保する覚書を,2000年6月1日から合計3回に亘り,取り交わしてまいりました。この間,当社は,解除権留保の恩恵を受けるために貴社が履行すべき事項の履行状況と契約違反状態の是正状況を見てまいりましたが,当社が行った複数回の貴社とのレビューにおいても貴社が認めているように,その結果は当社が到底納得できるような履行と是正の状況ではありませんでした。このような次第ですので,2003年5月31日に解除権留保の延長期間が到来しますが,当社はこれ以降の延長はできないと判断いたしました。従って,当社は,貴社の契約違反により2003年5月31日をもってマクドナルド福岡新天町店に関する貴社とのフランチャイズ契約を解除いたしますので本書により通知いたします。
つきましては,フランチャイズ契約の解除後の措置につき,貴社と早急に話し合いをもって処理を進めてまいりたいと存じますので,当社担当と速やかにお打ち合わせ下さいますようお願い申し上げます。早々」イ第2通知書(ア)それにもかかわらず,被告会社は,審査結果に異議なく従うとの合意(前記(1)ウ(イ)c)に反して,これに従わずに,本件店舗の営業を継続したところ,原告は,被告会社に対し,本件店舗の営業を終了するよう求めて,平成15年8月11日,東京地方裁判所に調停を申し立てた(甲27)。原告が調停を申し立てたのは,本件契約が終了している以上,原材料供給の停止や原告標章の使用を禁止する強制措置をとることは可能であるが,顧客の最大限の満足を社是とする原告において,一方的に本件店舗の営業を停止することは,顧客に大きな不便を与えることになり,また顧客の原告に対する信頼感を毀損することにもなりかねず,事実上困難な状況であると判明したことによる。
しかしながら,合意に至らず,調停は成立しなかった(前記第2の2(7)エ)。
(イ)このような状況にあっても,被告会社は,本件店舗の営業を継続した上,別紙ロイヤルティ料等未払金一覧表のとおり,ロイヤルティ料等の支払を怠ったため,平成16年12月2日時点における未払金(支払期日を30日以上経過しているものであって,遅延損害金を含む。)は,2045万1696円となった。
(ウ)そこで,原告は,被告会社に対し,平成16年12月3日,次の内容等を記載した第2通知書(甲4の1)を送付し,これが同月4日に被告会社に到達した。
a被告会社は,原告に対し,平成17年1月3日までに上記(イ)の未払金を支払わなければならない。
b被告会社がaの債務を履行しない場合には,原告は,翌日午前0時の経過をもって本件契約を解除する。
caの未払金の支払に代えて,被告会社は,原告のガイドラインに基づき適格であると認定された相手方に対して,平成17年1月3日までに,マクドナルド店舗営業を売却することができる。この場合には,その売却代金は未払金に充当する。
dcの売却に代えて,被告会社は,原告に対し,平成17年1月3日までに,原告の独自の経営判断により決定される適正市場価格に基づいて,マクドナルド店舗営業を売却することができる。
ウ第3通知書(ア)これを受けて,被告会社は,イ(イ)の未払金を支払って,本件店舗の営業を継続した。被告会社は,その後,別紙ロイヤルティ料等未払金一覧表のとおり,なおも,ロイヤルティ料等の支払を怠ったため,平成17年1月12日時点における未払金(支払期日を30日以上経過しているものであって,遅延損害金を含む。)は692万3640円,その余のロイヤルティ料等の未払金は220万2801円となった。
(イ)そこで,原告は,被告会社に対し,平成17年1月13日,次の内容等を記載した第3通知書(甲5の1)を送付し,同通知書は同月15日に被告会社に到達した。
a被告会社は,原告に対し,上記(ア)の未払金を平成17年2月13日までに支払わなければならない。
b被告会社がaの債務を履行しない場合には,原告は,翌日午前0時の経過をもって本件契約を解除する。
caの未払金の支払に代えて,被告会社は,原告のガイドラインに基づき適格であると認定された相手方に対して,平成17年2月13日までに,マクドナルド店舗営業を売却することができる。この場合には,その売却代金は未払金に充当する。
dcの売却に代えて,被告会社は,原告に対し,平成17年2月13日までに,原告の独自の経営判断により決定される適正市場価格に基づいて,マクドナルド店舗営業を売却することができる。
(3)本件解除通知書の送付ア解除権行使に至る経緯(ア)第3通知書を受領した被告会社は,原告に対し,被告会社との間で委託販売契約を新たに締結することを内容とする平成17年2月3日付御提案書(甲6)を送付したものの,未払金の支払を一切しなかった。
上記御提案書には,次のとおりの提案が記載されている。
a売上金の取得割合を原告80%,被告会社20%とした上で,原告が被告会社に支払う最低保証額を月額580万円とする。
b委託販売期間を10年間とし,当該期間が満了するまで委託販売契約を解約できない。
c原告は,被告会社に対し,保証金として3億1500万円を預託する。
d原告は,被告会社から,直近12か月の売上の55%に相当する2億0178万1000円の代金で被告会社の営業権を買い取る。
e原告は,被告会社から,8500万円で本件店舗の固定資産を買い取る。
(イ)その提案は,原告にとって受け入れられるものではなかった。そこで,原告は,上記ウ(ア)の未払金を平成17年2月13日までに支払うことを求める書面(甲7の1)を改めて送付し,同書面は同月12日被告会社に到達した。上記書面には,以下の記載がある。
「2005年2月3日付『御提案書』と題する貴信に対して,本書により次のとおりご回答申し上げます。上記『御提案書』による貴社のご提案を当社内で慎重に検討いたしましたが,残念ながら貴社のお申入れはお受けいたしかねるものであります。貴社の債務不履行を原因として当社が平成17年1月13日付で貴社に送付した『条件付契約解除通知書』においては,福岡新天町店の店舗営業の売却による解決方法が選択肢として触れられているにも拘わらず,貴社はこれに何ら言及しておりません。加えて,貴社による未払金の支払の猶予期限が2月13日に迫るなか,当社の上記通知書に言及されることなくこのようなご提案をなされること自体,当社としては貴社の誠意をまったく感じ取ることができず,到底真摯な対応と受け取ることはできません。ともあれ,上記のとおり,貴社のご提案は当社といたしましてはお受けいたしかねるものである以上,貴社におかれましては猶予期限までに未払金全額のご入金を必ずご履行下さいますよう改めてお願い申し上げます。さもなければ,当社といたしましても『条件付契約解除通知書』記載の法的手段に速やかに移行するものでありますことを念の為申し添えます。
」(ウ)しかるに,被告会社は,原告に対し,平成17年2月13日までに上記(2)ウ(ア)の未払金を支払わず,その後ロイヤルティ料等の支払を一切しなかったことから,平成17年3月23日時点における未払金(支払期日を30日以上経過しているものであって,遅延損害金を含む。)は,1745万2769円となった。
(エ)なお,富士エコーは,被告会社に対し,その営業に係る原材料代金である3466万2851円の支払を求めて,東京地方裁判所に訴えを提起し,現在訴訟が係属中である。
イ本件解除通知書の送付そこで,原告は,被告会社に対し,平成17年3月23日,改めて,その未払金を書面の到達の日から7日以内に支払うよう求め,これを怠った場合には,本件契約を解除するなどと記載した本件解除通知書(甲8の1)を送付し,同通知書は同年3月25日に被告会社に到達した(以下「本件解除権の行使」という。)。
なお,本件解除通知書には,次のとおりの内容が記載されている。
「貴社は,通知人の貴社に対する平成17年1月13日付条件付契約解除通知書により,支払期限を30日以上遅延するロイヤルティ料等について,同年2月13日限りの支払を督促されたところ,貴社は,その履行期限の10日前の日付をもって,通知人に対し,法外な金員の要求を伴う営業場所における通知人の直営での店舗運営を提案され,これを通知人が拒絶した後も現在に至るまで平成17年1月13日付条件付契約解除通知書により請求したロイヤルティ料等を支払わないままとされているものであり,このような貴社の対応は,通知人が貴社に対して原契約を継続する機会を与えたことに対する背信行為と言わざるを得ないものであって,通知人との継続的契約における信頼関係を完全に破壊するものでありますので,最後にこの点も付言しておきます。」2争点(1)(解除権の濫用)について(1)本件解除権の行使に至る経緯を見るに,前記1認定のとおり,被告会社のロイヤルティ料等の不払等の債務不履行によって3回にわたり解除権が発生したが,原告は,第1覚書ないし第3覚書を締結して,被告会社に対して,再三にわたり業務の改善を促していたものである。その上で,原告は,被告会社の業務の改善の見込みについて,3年度にもわたって慎重に審査を重ねた結果,その見込みがないと判断して,やむなく,平成15年5月に第1通知書により,本件契約を解除する旨の意思表示をしたことが認められる。
それにもかかわらず,被告会社は,これを無視して本件店舗の営業を継続し,営業停止による顧客への不便に配慮した原告が申し立てた調停も不成立に終わった。被告会社は,その後にあっても,なおロイヤルティ料等の支払を怠り続け,第2通知書による解除の意思表示がされた後に一部の未払金を支払ったものの,平成16年12月31日以降は,これに係る支払を一切しなくなるまでに至ったことが認められる。
このような事情からすると,まさに,被告会社が本件解除通知書に記載しているとおり,被告会社の対応は,原告が被告会社に対して本件契約を継続する機会を与えたことに対する背信行為といわざるを得ないものであって,原告との間における信頼関係を著しく破壊するものである。
したがって,このような経緯を踏まえると,本件解除権の行使は,権利の濫用に当たるということはできず,その他これを認めるに足りる事情はない。
これに加えて,別紙原材料代金未払金一覧表記載の他社との間の未払金の累積状況及び当該他社からの提訴の状況(前記1(3)ア(エ))並びに前記の審査の結果(1(1)ア(ウ),同イ(ウ)及び同ウ(ウ)),平成16年における本件店舗の苦情件数(合計37件であって,客延べ10万人当たりのものでは,売上順位1位から10位までの店舗中第1位である。)及び別紙本件店舗苦情一覧表記載の当該苦情の内容など(甲51)に照らすと,原告は,本件店舗の営業には,品質,サービス及び清潔さ等のいずれにおいても問題があると判断して解除権を行使したものと認められる。このような状況は,もはや原告による改善指導の域を超え,原告のブランドイメージを損うおそれがあるまでに至っていたことからすると,本件解除権の行使は,単なる金銭的な問題に留まらず,原告自身の信頼を保つためにやむを得ず行われたものであって,このような意味からしても,これを権利の濫用に当たるということはできないものである。
(2)被告らの主張についてア委託販売契約について被告らは,平成17年4月1日に本件解除権が発生した当時,被告会社が原告との間で,未だ委託販売契約の締結に向けた交渉を継続していたことから,原告による本件解除権の行使は,不意打ちであって,不当なものであると主張する。
しかしながら,前記1(3)アのとおり,原告は,平成17年2月3日付の被告会社による委託販売契約の提案を内容とする御提案書(甲6)の送付を受けて,被告会社に対して,同月12日に到達した書面(甲7の1)を送付して,これに回答している。
この書面には,被告会社の対応が誠意を感じ取ることができず,到底真摯なものと受け取ることができないとして,被告会社の提案を受け入れることができないこと及び未払金の支払を求めることが記載されている。
このように,原告は,被告会社による提案について,誠意が全く感じられないとまで述べて,これを拒絶した上,未払金の支払を改めて求めていることに照らしても,本件解除権の行使は,不意打ちであるということはできない。
したがって,委託販売契約の提案又はこれに関する交渉は,権利の濫用と認めるべき事情とはなり得ない。
イ被告会社の損害について(ア)被告会社は,賃借権及び営業権の取得等の初期投資に10億円以上を費やしたが,これは,原告が,本件契約の期間を投下資本の回収が可能となる30年間とすることを約束したからであって,本件解除権が行使されれば,被告会社は,これらの費用を回収し得ないことになるから,多額の損害を被ると主張する。
(イ)前記争いのない事実(第2の2(3)ア)及び証拠(甲1の1)によれば,原告と被告会社が平成8年6月1日締結した本件契約は,次に掲げる内容の約定であったことが認められる。
a契約期間は平成8年6月1日から10年とし,自動的には更新しない(2条2項)。
b本件契約の有効期間は,10年をもって打ち切りとし,本件契約が被告会社に対し,何らその更新の保証,根拠,又は口実を与えるものではないことを,被告会社は承認し,同意する(28条1号)。
c本件契約は,付属添付書類並びに修正文書と共に,本フランチャイズ等に関連する当事者間における完全な契約を構成するものである。本件契約は,当事者間の最終的な合意である(26条1項)。
d上記契約文書中に含まれる条項は,先行する合意又は同時になされた口頭の合意を根拠として,これを否認することはできない。ただし,これを商談の経過又は履行の過程,又は当事者双方の合意により,追加した条項の成立の過程を証明するために用いることを妨げない(26条2項)。
e本件契約が解除された場合には,原告は,のれん代,看板料,その他名目の如何を問わず,無体財産に対する対価を被告会社に支払う必要がない(20条1項4号)。
f原告が,当該レストランの収益性又は収益の見込みにつき,何らの保証ないし約束もしなかったことを,被告会社は承認し,同意する(28条4号)。
(ウ)上記(イ)の本件契約の内容によれば,本件契約の期間は10年であり,被告会社に対し,その更新を保証するものではなく,また,原告が,その収益の見込みにつき,何らの保証するものではないことが明記されている。
そうすると,本件契約の期間は,10年であることが認められ,もとより投下資本が回収されることが約束されていたものではないのであるから,仮に,被告会社が本件契約の期間につき投下資本の回収が可能となる30年であると認識していたとしても,これは単なる希望にすぎないのであって,権利の濫用であると認めるべき事情とはなり得ない。
ウ解除権の留保について(ア)被告らは,第1覚書が締結される以前にあっては,本件契約に係る債務不履行は極めて軽微なものであるから,第1覚書は,本来行使することができない解除権を前提として締結されたものであり,このような第1覚書を前提として,第2覚書及び第3覚書が締結されたことを理由として,原告が,解除権の行使を留保したということはできないなどと主張する。
(イ)しかしながら,食品及び飲料を提供する本件店舗の営業にとって,これらの原材料を安定して供給することは,品質を保持するためにも,極めて重要なことであるから,被告会社が,原材料の購入先である富士エコー及びフジパンに対して,原材料等の代金の支払を怠ることは,本件契約の解除原因の最たるものであって,これを軽微なものということはできない。
(ウ)また,被告Aは,平成13年5月11日付返答書(甲18)において,「フランチャイズ契約継続に際し,覚書を締結することに異存ございません。
しかしながら,昨年の覚書締結から現在までの経緯を振り返ってみますと,貴社からのご指摘にもありましたように,私が『覚書の趣旨を理解していない』『覚書の主旨を曲解している』といった事態が生じました。この様な事態は私に取りましても本意ではございません。この度,再度覚書を締結するにあたり,この様な事態を再発させないためにも,この場をお借りして確認をさせて頂きます。まず,前提条件として確認しておきたいのは,私は昨年の覚書締結の時点でフランチャイズ契約に違反する行為を犯した事を認めていると言う事であります。その上で,覚書という条件の中で,契約継続をお願いしたのであります。」と記載している。これによれば,被告A自身も,第1覚書記載の債務不履行があったこと自体は認めている。
そして,この第1覚書(甲14)によれば,被告会社には,次の@ないしBのとおりの債務不履行があったことが認められる。
@被告会社は,本件店舗隣地増床部分に関する原告の指導に反して賃借権を購入した上,原告に対しては当該物件の賃貸借は購入していない旨の虚偽の報告をなした。
A被告会社は,原告に対して,再三にわたり虚偽の損益計算書・貸借対照表を提出し,更に平成11年度の税務申告について虚偽の申告書写を提出した。
B被告会社は,平成8年6月1日付原告・被告会社間で締結した本件原材料購入契約に基づく原材料代金の支払を合計3回にわたり遅延した。
このうち,@及びAの債務不履行の内容は,被告会社が原告に対して財務状況に関する重要事項について虚偽報告をしたものであるから,これのみをもっても,信頼関係を破壊するに足りる事情であるといえる。
したがって,第1覚書において原告が留保した解除権は,本来行使することができないものであるという被告の主張は,理由がない。
エ支払の見込みについて被告会社は,前記争いのない事実(第2の2(8)ア)のとおり,平成17年8月24日に64万7451円,同年9月30日に62万0237円の合計126万7688円を支払った。
しかしながら,その後は支払がされていない上,この金額は,元本の3パーセントにも満たないものであって,既に生じている遅延損害金すら完済し得ないものである。また,被告らは,株式会社親和銀行及び中小企業金融公庫との間で貸付金の返済に関する協議をしていると主張しているものの,その結果を何ら主張立証していない。
このような事情からすると,本件契約の最も基本的な債務であるロイヤルティ料等の未払金の支払の見込みはないものといわざるを得ない。
なお,被告らの主張を前提とすると,被告会社は,売上金の使途として,ロイヤルティ料等の支払(64万7451円)よりも,銀行等からの借入金の支払(612万2197円)を優先している(乙37)。
しかし,被告代表者自身も,審査(前記1(1)イ(ウ))において,「銀行を優先したのは申し訳ない。業者・御社を優先すべきであると考えています。」と述べているように,本件契約の趣旨に照らし,原告との間では,ロイヤルティ料等の支払は最優先すべきものであるとされていたと認められる。
したがって,このような被告会社の姿勢は,原告のフランチャイジーとして極めて不誠実なものであって,この点においても,原告と被告会社との信頼関係は,既に破壊されていたとするのが相当である。
(3)まとめ以上のとおり,被告らの主張は,いずれも採用することができず,本件解除通知書による解除権の行使が権利の濫用に当たるということはできない。
3争点(2)(債務不履行)について(1)争いのない事実(第2の2(3)ア)及び証拠(甲1の1,51,乙88)によれば,以下の事実が認められる。
ア原告と被告会社は,平成8年6月1日,次に掲げる内容の約定で,本件契約を締結した(甲1の1)。
(ア)マクドナルドレストランは,このマクドナルド方式を採用し,もって統一された同一形態の営業を営むことを重要な特色とするものであり,被告会社はこれに従い,これを実現するために,原告が定めた次の基準と営業政策を尊重し,遵守しなければならない(1条1項)。
(イ)この契約所定のレストランの運営は,現に効力を有し,又は将来において,原告が修正する基準及び営業政策に従い,もって折々の時点において効力を有する,マクドナルド方式に合致するよう行なわれなければならない(1条2項)。
(ウ)被告会社は,原告により,又は事前の原告の同意により,整えられた広告及び販売促進の方法ないし企画のみを使用しなければならない。被告会社の宣伝及び販売促進の素材に関し,原告が承諾を与えたこと,又は,原告が被告会社に交付するため上記の素材を準備したことを直接ないし間接の理由として,被告会社は原告に対し,その広告又は販売促進につき,何らの対価も請求し得ないものとする(5条2項)。
(エ)原告が,当該レストランの収益性又は収益の見込みにつき,何らの保証ないし約束もしなかったことを,被告会社は承認し,同意する(28条4号)。
イ100マック政策(争いのない事実)(ア)原告は,平成17年ころから,次のとおり値引販売を行いクーポン券を配布した。
a平成16年12月27日から平成17年1月3日までビックマックの200円(通常250円)での販売b平成17年1月29日及び30日(回収期間1月31日から2月6日まで)ハンバーガー無料券配布c平成17年2月11日から2月20日までチキンマックナゲットの100円(通常190円)での販売d平成17年2月21日から3月4日までマックシェイクの100円(通常200円)での販売e平成17年3月4日以降ディスカウントクーポン券の配布f平成17年3月18日から4月7日までマックシェイクの100円(通常200円)での販売g平成17年4月8日から4月18日までフィレオフィッシュの100円(通常190円)での販売(イ)原告は,これに加えて,平成17年4月18日以降,以下の商品をすべて100円で販売している(乙88)。
aチーズバーガー(旧価格120円)bマックチキン(新商品)cフィッシュマックディッパー(旧価格178円)dプチパンケーキ(旧価格178円)eアイスクリーム(旧価格157円)fマックシェイク(Sサイズ)(新商品)gコールドドリンク(Sサイズ)(旧価格168円)hブレンドコーヒー(Mサイズ)(旧価格189円)iホットアップルパイ(旧価格157円)(ウ)100円マック政策は,3772店舗により全国展開している原告のスケールメリットを生かすために,既存の客以外の新規顧客を広く取り込んで,その顧客をリピータにすることによって,利益を増加させようとするものである。
現実にも,原告は,このような政策によって,TC(レジの作動回数をいうものであって,来客店数の目安となるものをいう。以下同じ。)を,前年度と比較して,既存店で月平均12.1%増加させており,また,本件店舗に隣接する4店舗全店(天神ビブレ店,ジークス天神店,薬院駅前店及び天神店をいう。)においては,これ以上の割合でTCを増加させることに成功している(甲51)。
他方で,被告会社は,100円マック政策にもかかわらず,本件店舗において,TC自体が1.43パーセントの増加に留まっている(甲51)。なお,平成16年における本件店舗の苦情件数(客延べ10万人当たりのものをいう。)は,売上順位1位から10位までの店舗の中で全国第1位であり,その内容は,別紙本件店舗苦情一覧表記載のとおり,品質,サービス及び清潔さ等のいずれにおいても問題があると指摘をするものである(甲51)。
(2)上記(1)認定の事実,すなわち@本件契約において,被告会社は,原告の営業政策を尊重しこれを遵守しなければならないものとされ,他方で,原告は,これにより収益の見込みについて何ら保証又は約束をするものではないことを内容としていること,A100円マック政策は,原告のスケールメリットを生かすために,既存の客以外の新規顧客を広く取り込んで,その顧客をリピータにすることによって,利益を増加させようとするものであり,現実にも,原告は,このような政策によって,TCを増加させ,本件店舗に隣接する4店舗全店においては,これ以上の割合でTCを増加させることに成功していること,Bしかし,被告会社は,100円マック政策にもかかわらず,本件店舗において,TCの増加がわずかであり,リピーターを増加させるどころか,既存の顧客すら十分に確保できなかったこと,C被告会社に対する苦情件数が多いこと,以上の事実に照らせば,仮に,100円マック政策によって,被告会社の利益が減少したとしても,これは,本件店舗の品質,サービス及び清潔さ等本件店舗に固有の問題であって,100円マック政策を採ったことがフランチャイズ契約の本質に反するものと認めるに足りず,本件契約の債務不履行に当たるということはできない。
(3)被告会社の主張について被告会社は,ロイヤルティ料等の算出方法からすると,100円マック政策が一方当事者の犠牲の下に他方当事者の利益を上げるものであるとして,本件契約の債務不履行に当たると主張する。
しかしながら,ロイヤルティ料等は,売上高に比例してこれを算出するものであるから,被告会社の主張する収支計算(乙87)を前提とする場合であっても,売上高が減少している以上,ロイヤルティ料等も同様に減少することになるのであって,原告が一方的に利益を得ていることにはならない。
したがって,100円マック政策によって,被告会社の犠牲の下に,原告が利益を上げているという被告会社の主張は,採用できない。
4争点(3)(不当利得)について(1)原告は,被告会社との間で,平成8年5月31日,次の各号に掲げる本件店舗における被告会社の固定資産をそれぞれ当該各号に定める価額で同年6月1日をもって売却するとの契約を締結した(甲50)。なお,無形固定資産とは,営業権すなわち得意先又は仕入先関係,営業上の秘訣,販売の機会,経営の内部的組織など多年の営業活動から生じる営業上の価値をいうものとされている。
ア有形固定資産1616万9697円イ無形固定資産2億1461万6052円ウ残存リース料361万7640円(2)前記2(2)イ(イ)e及び上記(1)によれば,本件店舗の無形固定資産は,得意先又は仕入先関係,営業上の秘訣,販売の機会,経営の内部的組織など多年の営業活動から生じる営業上の価値をいうものであって,もとより本件契約が契約期間の途中で解除された場合であってもその対価の返還を求められる性質のものではないことが認められる。
したがって,上記(1)認定の売買契約は,そもそも本件店舗における一定期間の営業を保証するものではないから,上記無形固定資産の売買代金が本件店舗における一定期間の営業を行う権利の対価であることを前提とする被告会社の主張は,採用することができない。
(3)被告会社の主張について被告会社は,上記無形固定資産の売買代金が,被告会社において本件店舗の営業を30年間継続する権利の対価であると主張するが,これは,本件契約の期間が投下資本を回収できる30年であることを前提とするものと解される。
しかしながら,前記2(2)イ(イ)の本件契約の内容によれば,本件契約の期間は10年であり,被告会社に対し,その更新を保証するものではなく,また,原告が,その収益の見込みにつき,何らの保証するものではないことが明記されている。
そうすると,本件契約の期間は,10年であることが認められ,もとより投下資本が回収されることが約束されていたものではない。その他にこれを覆すに足りる証拠はないから,契約期間が30年であることを前提とする被告会社の主張は,その前提を欠くものである。
なお,被告会社は,原告との間で,前記2(2)イ(イ)dのとおり,契約文書中に含まれる条項は,先行する合意又は同時になされた口頭の合意を根拠として,これを否認することはできないことを合意している以上,仮に,被告会社が主張するような合意があったとしても,このような合意をもって,本件契約に規定されている本件契約の期間を否定することはできない。
したがって,被告会社の主張は,理由がない。
5結論(1)本訴について被告会社の未払ロイヤルティ料額等の金額は,別紙遅延損害金目録の元本欄記載のとおりであり,被告会社,被告A及び被告Bは,連帯して,その合計4965万2829円及びこれに対する同目録記載の約定遅延損害金を支払うべきである。前記2認定のとおり,本件契約は,解除により終了したから,原状回復請求権に基づき,被告会社はリース物件を返還すべきである。また,本件契約が終了した以上,被告会社が著名な原告標章を本件店舗の営業に使用する行為は,不正競争防止法2条1項2号所定の不正競争行為に当たり,これにより原告の営業上の利益侵害したものであるから,同法3条に基づき,被告会社は,原告標章の使用等の侵害の行為を停止するとともに,原告標章を抹消し,その行為を組成した物を廃棄すべきである。
以上の次第で,原告の本訴請求は,いずれも理由がある。
(2)反訴について前記3のとおり,原告の営業政策が本件契約の債務不履行に当たるとはいえず,前記4のとおり,不当利得も成立しないから,被告会社の反訴請求は,いずれも理由がない。
(3)よって,原告の本訴請求を認容し,被告会社の反訴請求を棄却することとし,主文第2及び第3項についての仮執行宣言は相当でなく,主文第1,第4及び第5項に限り仮執行宣言を付することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官高部眞規子裁判官東海林保裁判官中島基至
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