関連ワード | 類似性(類似) / 混同のおそれ(混同) / 表示の使用 / 差止請求(差止) / 営業上の利益 / 侵害 / 代理人 / 代表者 / 混同のおそれ(混同) / |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|---|
元本PDF | 裁判所収録の別紙1PDFを見る |
事件 |
平成
12年
(ワ)
4495号
不正競争行為差止請求事件
|
---|---|
原告 三菱商事株式会社右代表者代表取締役 【A】 原告 三菱地所株式会社右代表者代表取締役 【B】 原告 三菱建設株式会社右代表者代表取締役 【C】 右原告ら訴訟代理人弁護士 大野聖二 被告 有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーション 右代表者代表取締役 【D】 被告 三菱建材株式会社右代表者代表取締役 【E】 |
|
裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2000/06/30 |
権利種別 | 不正競争 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
一1 被告有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーションは、その営業上の施設又は活動に「有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーション」、 「三菱建材株式会社」、「三菱建材輸入住宅販売、INC.」その他「三菱」という文字を含む商号又は別紙目録(一)及び(二)記載の標章を使用してはならない。 2 被告有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーションは、「有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーション」という商号の抹消登記手続をせよ。 3 被告有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーションは、「三菱」という文字及び別紙目録(一)及び(二)記載の標章を封筒、看板、印刷物その他営業表示物件から抹消せよ。 二1 被告三菱建材株式会社は、その営業上の施設又は活動に「三菱建材株式会社」その他「三菱」という文字を含む商号を使用してはならない。 2 被告三菱建材株式会社は、「三菱建材株式会社」という商号の抹消登記手続をせよ。 3 被告三菱建材株式会社は、「三菱」という文字を封筒、看板、印刷物その他営業表示物件から抹消せよ。 4 原告の被告三菱建材株式会社に対するその余の請求を棄却する。 三 訴訟費用は、原告に生じた費用の二〇分の一と被告三菱建材株式会社に生じた費用の一〇分の一を原告の負担とし、原告に生じた費用のその余の費用と被告らに生じたその余の費用を被告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
請求
一 被告らは、その営業上の施設又は活動に「有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーション」、「三菱建材株式会社」、「三菱建材輸入住宅販売、INC.」その他「三菱」という文字を含む商号又は別紙目録(一)及び(二)記載の標章を使用してはならない。 二 被告有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーションは、「有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーション」という商号の抹消登記手続をせよ。 三 被告三菱建材株式会社は、「三菱建材株式会社」という商号の抹消登記手続をせよ。 四 被告らは、「三菱」という文字及び別紙目録(一)及び(二)記載の標章を封筒、看板、印刷物その他営業表示物件から抹消せよ。 |
|
事案の概要
本件は、原告らが、被告らに対し、被告らが、その営業上の施設又は活動に、「三菱」という文字を含む商号、別紙目録記載の各標章(以下、それぞれを「本件標章(一)」、「本件標章(二)」といい、これらを総称するときは、「本件各標章」という。)を使用しているのは、不正競争防止法2条1項1号、二号の不正競争行為に該当するとして、同法に基づいて、右商号及び本件各標章の使用差止め、右商号の抹消登記手続並びに「三菱」という文字及び本件各標章の被告ら営業表示物件からの抹消を求める事案である。 |
|
当事者の主張等
一 請求原因 1 当事者 (一) 原告らは、いずれも、【F】を創業者とする三菱系列企業(以下「三菱グループ」という。)に属する会社である。 (二) 被告三菱建材株式会社(以下「被告三菱建材」という。)は、昭和三三年一一月二〇日に設立された会社であるが、三菱グループに属する会社ではない。 (三) 被告有限会社三菱建材輸入住宅販売インコーポレーション(以下「被告三菱建材輸入住宅」という。)は、「グランドホームジャパンインコーポレーション」という名称の会社であったが、平成一一年七月一九日、現在の名称に商号変更登記をした。被告三菱建材輸入住宅も三菱グループに属する会社ではない。 2 原告らの営業表示 (一) 三菱グループに属する会社は、明治六年三月、その社名を三菱商会と改めて以来、商号に「三菱」の二字を用い、かつ、三つの菱形を組み合わせたスリーダイヤのマークを使用して、現在に至るまで、海運業、石炭業、造船業、鉄鋼業、製紙業、銀行業等広範囲にわたって営業活動をしている。 (二) 原告らは、いずれも三菱グループの会社として、その商号に「三菱」の二字を用い、スリーダイヤのマークを使用して、現在に至るまで、永年にわたり営業活動を続けてきた。 3 被告らの営業活動等 (一) 被告三菱建材は、平成一一年、被告三菱建材輸入住宅と輸入住宅販売ビジネス等に関する業務提携を行い、被告三菱建材輸入住宅に対して「三菱」の名称を使用することを許諾した。 (二) 被告らは、平成一一年秋ころから、「三菱建材株式会社輸入住宅販売」、「三菱建材輸入住宅販売INC.」等の「三菱」を含む名称を用いて、輸入住宅を販売し、輸入住宅販売に関する加盟店を募集している。 また、被告らは、その営業活動において、本件各標章を使用している。 さらに、被告らの広島事業所には、「三菱建材(株)」の看板が掲げられている。 4 「三菱」の名称及びスリーダイヤのマークは、著名であるところ、被告三菱建材輸入住宅の商号、右3(二)の被告らが使用している名称及び本件各標章は、 「三菱」の名称及びスリーダイヤのマークと同一又は類似である。 被告らによる右の各表示の使用によって、原告らは、営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれがある。 したがって、被告らによる右の各表示の使用は、不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為に該当する。 5 「三菱」の名称は、広く知られているところ、被告三菱建材の商号は、 「三菱」の名称と同一又は類似である。 被告三菱建材による同被告の商号その他「三菱」を含む商号の使用によって、混同が生じ、原告らは、営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれがある。 したがって、被告三菱建材による右商号の使用は、不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当する。 二 被告三菱建材輸入住宅は、請求原因事実を明らかに争わない。 三 被告三菱建材の認否及び主張 1 請求原因1(当事者)(一)、(二)の各事実は認める。 2 請求原因1(三)の事実及び2(原告らの営業表示)の事実を明らかに争わない。 3 請求原因3の事実は否認する。 被告三菱建材輸入住宅の商号、「三菱建材株式会社輸入住宅販売」、「三菱建材輸入住宅販売INC.」等の名称、本件標章(一)、(二)が使用された事実があるとしても、それらは、被告三菱建材に無断で使用されたものであるから、その使用について被告三菱建材は関係がない。 4 請求原因4、5のうち、「三菱」の名称及びスリーダイヤのマークが著名であり、「三菱」の名称が広く知られていることは認め、その余は争う。 被告三菱建材は、「三菱」を含む商号を使用しているが、そのことで原告に損害を与えたことはないから、右商号の使用差止めや抹消登記を求められる理由はない。 三菱グループ以外の者でも「三菱」の名称を使用している者は多数存在する。 |
|
当裁判所の判断
一 被告三菱建材輸入住宅に対する請求について 被告三菱建材輸入住宅は、請求原因事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。 請求原因事実によると、被告三菱建材輸入住宅に対する請求は理由があるから、これを認容することとする。 なお、被告三菱建材輸入住宅の代表者である【D】は、現在【D】自身が同社の代表者ではない旨主張するが、証拠(甲三の一)によると、【D】が同社の代表者であると認められ、これに反する証拠はない。 二 被告三菱建材に対する請求について 1 請求原因1(当事者)(一)、(二)の各事実は、当事者間に争いがない。 被告三菱建材は、請求原因1(三)の事実及び2(原告らの営業表示)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。 請求原因4、5のうち、「三菱」の名称及びスリーダイヤのマークが著名であり、「三菱」の名称が広く知られていることは、当事者間に争いがない。 2 証拠(甲二、乙一)と弁論の全趣旨によると、被告三菱建材は、その商号を使用して、営業活動を行っていることが認められるところ、「三菱建材株式会社」の商号は、三菱グループの名称として広く知られている「三菱」の表示と「三菱」の部分を共通にするから、「三菱」の表示と類似するものと認められる。 そして、請求原因2の事実に弁論の全趣旨を総合すると、被告三菱建材が右商号を使用することによって、同被告が三菱グループの一社であるとの誤信を生じさせるおそれがあるものと認められるから、被告三菱建材が右商号を使用する行為は、不正競争防止法2条1項1号が定める「混同を生じさせる行為」に当たり、 原告らの営業上の利益を侵害するものと認められる。 したがって、被告三菱建材が「三菱建材株式会社」の商号を使用する行為は、不正競争防止法2条1項1号が定める不正競争行為に当たる。 3(一) 請求原因1(三)の事実に証拠(甲四ないし九、乙二、乙三の一ないし七)と弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。 (1) 被告三菱建材代表者は、平成一一年五月、グランドホームアメリカンINC代表取締役【D】との間で、業務提携契約を締結した(以下、同契約において、被告三菱建材を「甲」、グランドホームアメリカンINCを「乙」という。)。その内容は、甲は乙及び乙の関係する輸入住宅建築事業に協力する、顧客との間で建築契約が成立したときは、乙は甲に対して坪当たり五〇〇〇円を支払う、契約が有効となるのは、乙が正式に株式会社三菱建材輸入住宅販売を法人設立した期日とする、というものであった。 (2) 被告三菱建材輸入住宅は、「グランドホームジャパンインコーポレーション」という名称の会社であったが、平成一一年七月一九日、現在の名称に商号変更登記をした。 (3) 被告三菱建材は、平成一一年七月二八日、グランドホームアメリカンINCに対して、株式会社三菱建材輸入住宅販売を設立することなく、株式会社三菱建材輸入住宅販売の名称を使用することは認めない旨の書面を送付した。被告三菱建材は、その後も、グランドホームアメリカンINCに対して、同趣旨の書面を送付した。 (4) 被告三菱建材輸入住宅は、平成一一年秋ころから、「三菱建材株式会社輸入住宅販売」、「三菱建材輸入住宅販売INC.」という名称及び本件各標章を使用して、輸入住宅を販売し、輸入住宅販売に関する加盟店を募集した。 被告三菱建材輸入住宅の広島事業所には、「三菱建材(株)輸入住宅販売広島事業所」の看板が掲げられていた。 (5) 株式会社三菱建材輸入住宅販売という商号の会社は設立されていない。 (二) 右(一)認定の事実によると、被告三菱建材は、平成一一年五月、グランドホームアメリカンINCとの間で、業務提携契約を締結し、株式会社三菱建材輸入住宅販売の名称を使用することを認めたが、株式会社三菱建材輸入住宅販売という商号の会社は設立されていないため、右契約はいまだ効力が生じていないこと、被告三菱建材は、被告三菱建材輸入販売に対し、株式会社三菱建材輸入販売という名称の使用を認めない旨の書面を送付していたが、被告三菱建材輸入住宅は、 同年七月に、現在の名称に商号変更登記をして、右(一)(4)認定のとおり営業活動を行っていたこと、以上の事実が認められる。 以上の事実によると、「三菱建材株式会社輸入住宅販売」、「三菱建材輸入住宅販売INC.」という名称や本件各標章を使用し、「三菱建材(株)輸入住宅販売広島事業所」の看板を掲げて、営業活動を行っていたのは、被告三菱建材輸入住宅であると認められ、被告三菱建材がこれらの活動を行っていたとまで認めることはできない。 しかし、効力が生じていないとはいえ、被告三菱建材が「三菱」を含む商号の使用を第三者に許諾していることからすると、被告三菱建材は「三菱」を含む「三菱建材株式会社」以外の商号を使用するおそれがあるものと認められる。 そして、被告三菱建材が「三菱建材株式会社」以外の「三菱」を含む商号を使用する行為は、右2で「三菱建材株式会社」について述べたのと同様に、不正競争防止法2条1項1号が定める不正競争行為に当たるということができる。 本件各標章については、右のとおり、被告三菱建材が本件各標章を使用していたとは認められず、本件各標章を使用するおそれがあるというべき事情も認められない。 4 よって、被告三菱建材に対する請求は、主文に記載した限度で理由がある。 5 なお、被告三菱建材は、三菱グループ以外の者でも「三菱」の名称を使用している者は多数存在する旨主張するが、右主張を認めるに足りる的確な証拠はないうえ、仮にそうであるとしても、直ちに右認定を左右するものではない。 四 結論 以上の次第であるので、主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言は、付さないこととする。 |
裁判長裁判官 | 森義之 |
---|---|
裁判官 | 内藤裕之 |
裁判官 | 杜下弘記 |