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事件 平成 8年 (ワ) 12929号 不正競争行為差止等請求事件
原告 リーバイ ストラウス アンド カンパニー 右代表者 【A】 右訴訟代理人弁護士 松尾眞
同 難波修一
同 兼松 由理子
同 鳥養雅夫
同 寒竹恭子
同 向宣明右訴訟復代理人弁護士 岩波修
同 上村 真一郎
被告 株式会社エドウィン商事 右代表者代表取締役 【B】 右訴訟代理人弁護士 田中克郎
同 宮川 美津子
同 中村勝彦
同 長坂省
同 五十嵐 敦
同 玉井 真理子
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/06/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告は、別紙被告標章目録(一)及び(二)記載の標章を付した被服を販売してはならない。
二 被告は、前項の被服を廃棄せよ。
三 原告のその余の請求を、いずれも棄却する。
四 訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
五 この判決は、主文一、二項に限り、仮に執行することができる。ただし、被告が、金二〇〇〇万円の担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。
事実及び理由
請求
一 被告は、別紙被告標章目録(一)ないし(七)及び(一〇)記載の標章を付した被服を販売してはならない。
二 被告は、前項の被服を廃棄せよ。
三 被告は、別紙被告標章目録(八)ー一の図形に文字を記載した標章〔例として被告標章(八)ー二ないし(八)ー四〕及び(九)を、被告の商品の宣伝広告及び販促資材に使用してはならない。
事案の概要
原告は、@別紙原告標章目録記載の各標章が原告の商品等表示として周知ないし著名であるが、被告はこれと類似する別紙被告標章目録記載の各標章を付した商品を販売し、また、右各標章を宣伝広告及び販促資材に使用しているので、原告の商品との混同のおそれがある旨、及びA被告の右行為は原告の有する商標権の侵害に当たる旨を主張して、被告に対し、不正競争防止法及び商標権に基づき、右行為の差止め等を求めた。
一 前提となる事実(特に記載しない限り、当事者間に争いがない。) 1 当事者 原告は、ジーンズ等の衣料品の製造販売等を業とする米国法人である。被告は、ジーンズ等の被服の製造販売を業とする日本法人である。
2 原告の標章 原告は、原告の製造販売するジーンズ(以下「原告商品」という。)に関して、別紙原告標章目録記載の各標章(以下順に「原告標章一ないし六」という。)を以下のとおり使用している。
原告は、原告商品のバックポケット部分に、ステッチ(刺繍、針目の意味で用いる。)によって原告標章一及び二を付し、また、これを宣伝広告に使用している。 原告は、原告商品のうち、品番「501」及び「505」の各商品のパッチ(つぎ布、あて布の意で用いる。)及びラベル部分に、それぞれ原告標章三及び四を付して、販売し、宣伝広告に使用している。
原告は、原告商品のバックポケットの横部分に、原告標章五ー一ないし五ー四のタブを付して、販売し、宣伝広告に使用している。
原告は、原告標章六を、原告商品の包装、ラベル、店内広告等に使用している。
3 原告の商標権 原告は、次の各商標権(以下、それぞれ「原告商標権一ないし六」といい、その登録商標を「原告商標一ないし六」という。)を有する(弁論の全趣旨により認める。)。
(一) 登録番号 二二〇五〇九四 出願日 昭和五五年九月三〇日 登録日 平成二年一月三〇日 存続期間の更新登録日 平成一一年一二月二一日 指定商品 第一七類 被服(運動用特殊被服を除く)その他本類に属する商品 登録商標 別紙原告商標目録(一)記載のとおり (二) 登録番号 二〇〇六二四四 出願日 昭和四六年二月二四日 登録日 昭和六二年一二月一八日 存続期間の更新登録日 平成九年一一月一八日 指定商品 第一七類 被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く) 登録商標 別紙原告商標目録(二)記載のとおり (三) 登録番号 二六二四一〇一 出願日 昭和五九年九月二六日 登録日 平成六年二月二八日 指定商品 第一七類 ジーンズパンツ 登録商標 別紙原告商標目録(三)記載のとおり (四) 登録番号 〇六八五〇九〇 出願日 昭和三九年一月九日 登録日 昭和四〇年九月四日 存続期間の更新登録日 平成七年九月二八日 指定商品 第一七類 被服、布製身回品、寝具類 登録商標 別紙原告商標目録(四)記載のとおり (五) 登録番号 一二二二一五六 出願日 昭和四六年七月二九日 登録日 昭和五一年九月二七日 存続期間の更新登録日 平成八年一二月二四日 指定商品 第一七類 被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く) 登録商標 別紙原告商標目録(五)記載のとおり (六) 登録番号 一五九七四一九 出願日 昭和五四年五月八日 登録日 昭和五八年六月三〇日 存続期間の更新登録日 平成六年一月二八日 指定商品 第一七類 被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く) 登録商標 別紙原告商標目録(六)記載のとおり 4 被告標章の使用 被告は、被告の製造販売するジーンズ(以下「被告商品」という。)に関して、別紙被告標章目録記載の各標章(以下順に「被告標章一ないし一〇」という。)を、以下のとおりの態様で使用している。
被告は、昭和五九年から被告標章一、二(ステッチ)を、平成六年から被告標章三、四(ステッチ)を、いずれもジーンズのバックポケット部分に付した「サムシング」と呼ばれるジーンズを製造販売している。
被告は、平成六年から、被告標章五(505)を付した被告商品を製造販売し、また、宣伝広告に使用している。
被告は、昭和三九年から被告標章六(タブ)を、平成六年から被告標章七(タブ)を、いずれも被告商品のバックポケットの横部分に付している。
被告は、平成六年から被告標章八の二ないし四(ロゴ)を、平成七年から被告標章九(ロゴ)を、被告商品についての宣伝広告、売場ディスプレイ等に使用している。なお、被告は、被告標章八の一を使用したことはない。
被告は、被告標章一〇(タブ)を被告商品のバックポケットの横部分に付している。
二 争点〔不正競争防止法に基づく請求〕 1 原告標章一、二と被告標章一ないし四について(弓形ステッチ) (原告の主張) (一) 原告標章一、二の商品等表示性 ジーンズのポケット部分のステッチの模様は、ジーンズというスタイル、生地、形の限られている商品において、他の商品と差別化する際に大きな威力を有している。ジーンズにおいて、バックポケットのステッチは、それのみで商品の出所表示機能を有し、その識別力は他の部分におけるパッチより強い。
ジーンズのバックポケットの大きさは、パッチの大きさの四、五倍もある。ジーンズを着用したとき、ウエスト部分に付されたパッチは上着やバンド等で隠れる場合が多いのに対し、腰部分のポケットに付されたステッチは隠れることがない。消費者が商品の出所や種類を区別する指標は、購入後に取り外されるラベルや、遠くからは認識できないパッチに記載された文字ではなく、バックポケットに施されたステッチである。
各ジーンズメーカーは、ステッチをジーンズの自他識別機能を有するものとして重視し、登録商標を取得するだけでなく、商品カタログや雑誌やテレビコマーシャル等においても、ステッチが目立つような宣伝広告方法、例えばポケットのステッチを大写しにする方法や、ポケットのステッチが見えるような形でジーンズを並べる方法等を採用している。被告も、ポケットのステッチによる標章について登録商標を有している。
(二) 著名性周知性 原告標章一、二は、長年の使用によって、原告商品のトレードマークであるアーキュエットステッチ(弓形刺繍、弓形針目の意で用いる。)として著名となっている。
すなわち、ジーンズは、商品の性質上、他メーカーの商品と区別させるためには、細部に差異を設ける以外にない。そのような細部の差異として原告の創業時から大きな役割を果たしてきたものの一つが、バックポケットのステッチである。各ジーンズメーカーは自己の商品の特徴を出すために、バックポケットのステッチのデザインに工夫を凝らしており、その宣伝広告も、バックポケットを前面に出すように行われている。原告は、原告標章一、二を含むバックポケットを原告商品の特徴を強く表すものとして重視し、これを使用した販促活動を精力的に行っている。
原告標章一、二は、一八〇〇年代中期から一貫して原告商品を示すものとして使用され続けており、アーキュエットステッチを見れば、原告のジーンズであることが分かるほどに、著名性周知性を獲得している。
原告標章一、二は、我が国において、遅くとも一九七三年(昭和四八年)に、他社が製造販売する類似品と明確に区別して、原告商品であることを示すために原告が初めて使用したものである。そして現在も、取引業者、消費者の間において、原告の商品表示としての著名性周知性を獲得している。
(三) 類似性混同 原告標章一、二と被告標章一ないし四の模様を比較すると、以下の点で類似する。すなわち、被告標章一については、@ジーンズのバックポケットに付されている点、A左右二つのアーチからなる点、Bそれぞれのアーチは、ほぼ平行な二本の曲線からなる点、C左右二つのアーチが左右線対称である点が共通である。
なお、被告標章三、四については、Cの点で異なる部分もあるが、二本の曲線からなるアーチが二つ結合した図形である点で共通する。
被告標章一、二について、商品カタログの写真を見ると、被告のジーンズにも原告標章一、二(アーキュエットステッチ)がついているとの誤認が容易に生じ、原告標章一、二と類似した印象を与える。
被告標章三、四は、左右線対称ではないが、購入者がジーンズを着用した状態では、丸みを帯びたヒップにより、また、真後ろからだけでなく横からも見られることにより、一層混同を生じやすい。
ジーンズのバックポケットのステッチは、購入後においては、ジーンズの出所を示すものとして、より重要な役割を果たす。すなわち、購入後は、出所を示す紙ラベルが取り払われ、ウエスト部分のパッチは着用した場合、上着などで隠れることが多く、生地にも模様がないのが通常なので、生地の模様で出所を区別することはできない。そこで、購入後、出所を区別するのは、バックポケットに付されたステッチを置いて、他の方法がない。たとえ被告商品に「エドウィン」又は「サムシング」という標章等が付されていても、混同防止力は微力である。ステッチの形状が類似であれば、それだけで、原告製品と被告商品との混同が生じる。
(被告の反論) (一) 原告標章一、二の商品等表示性、著名性周知性 原告標章一、二は、バックポケットのデザインとして使用され、商品識別機能を有しないから、商品等表示には該当しない。
すなわち、原告標章一、二は、ジーンズのポケットの一部に縫われた針目であって、ステッチを構成している糸とジーンズを縫製した糸は同色の糸が使用され、ステッチが強調されているわけではない。商標審査基準において、地模様のみからなるものは商標法3条1項6号に該当し、登録できないものとされているのも同趣旨である。消費者は、一般に、ポケットに付された刺繍を意識することはない。ジーンズが店舗に陳列されている場合、最も目立つのは、商品の標章を表記したパッチ及び紙ラベルである。右側ポケット部分のステッチは、バックポケット上に糸で縫いつけられた大きな紙ラベルに隠れるか、目立たない場合が多い。最近は、多くのジーンズが、漂白によりインディゴ染めのブルーを中古風にしているので、ステッチが目立たなくなっている。ステッチが一番目立つのは、原色の強いブルージーンズであるが、そのようなジーンズの占める割合は小さい。さらに、共糸ステッチを使用しているカラージーンズの場合、ステッチを構成する糸は生地と同一ないし類似の色の共糸が使用されている。原告も、同様のカラージーンズを数多く販売している。
原告は、様々な形態のステッチを使用してきており、ステッチのデザインに統一性はない。また、二本の曲線からなるアーチが二つ結合した形状のステッチは、第三者も多く使用し、原告が独占的に使用してきたものではない。
同様の理由から、原告標章一及び二の周知性著名性もない。
(二) 類似性 原告標章一、二と被告標章一、二を比較すると、以下の点で差異がある。すなわち、@原告標章一、二は、バックポケットの両端部分とステッチの中心部分との高低差が大きく、両端部分から中心部に向かっての曲がりが大きい。他方、被告標章一、二は、両端部分と中心部の高低差が小さく、両端部分から中心部に向かっての曲がりが小さい。A原告標章一、二は、二本の曲線が中央部で互いに交差し、中央部にひし形の図形を形成している。原告は、右図形をダイヤモンドポイントと称している。他方、被告標章一、二は、二つの曲線のうち、上方の曲線は交差しているが、下方の曲線同士は交差していない。その結果、ダイヤモンドポイントは形成されず、むしろ、EDWINの「W」状の図形が形成されている。B原告標章一、二は、右ダイヤモンドポイントの中心に横線がある。他方、被告標章一、二においては、そのような横線はない。
原告標章一、二と被告標章三、四を比較すると以下の点で差異がある。
すなわち、@原告標章一、二は、二本の曲線が平行であるのに対し、被告標章三、
四は、二本の曲線が、両端と中央部とでは間隔が異なり、平行でない。A原告標章一、二は、左右二つのアーチが線対称であるのに対し、被告ステッチは、左右二つのアーチが線対称でない。B原告標章一、二は、バックポケットの両端部分からステッチの中心部分に対しほぼ下向きの曲線で構成されているのに対し、被告標章三、四は、二つのアーチの一方が、端から中心部へ上方へ向かった後、下方に向かうという弓形の曲線で構成されている。C原告標章一、二は、二本の曲線が中央部で互いに交差し、中央部にひし形の図形(ダイヤモンドポイント)を形成している。他方、被告標章三、四は、二つの曲線のうち、上方の曲線は交差しているが、
下方の曲線は交差していない。D原告標章一、二は、右ダイヤモンドポイントの中心に横線がある。他方、被告標章三、四は、そのような横線はない。E原告標章一、二には、三角形の図形はない。他方、被告標章三、四には、中心部の先端に三角形の図形がある。F 被告が実際に販売している「SOMETHING505」のジーンズのバックポケットにおいては、その中央部分に二本又は一本の濃紺色の横線が縫い込まれている。洗濯後はその部分が浮き出て明確になるが、店頭で実際に販売される商品は大半が洗ってから納品されているので、この二本線が目立ち、原告標章一、二とは異なる印象を与える。G原告標章一、二と被告標章三、四とは、
弓形のステッチを囲む二重線の五角形のステッチの形状が大きく異なる。
(三) 混同 購入時において、混同のおそれがないことは、以下のとおり明らかである。すなわち、ジーンズの売り場は、原則として、各メーカー別に明確に分けられ、それぞれ看板等により、商品の出所を明らかにした上で販売されている。消費者が購入時にジーンズを手にとっても、ポケットに刺繍されたステッチは紙ラベルで隠れているので確認できず、むしろ、パッチや紙ラベルによって、商品の種類や出所等を確認する。購入者は、必ず、自己の体型に合うかどうかを試着するし、デザイン、素材、色の好み、価格、出所等を吟味してから購入する。したがって、バックポケットに付されたステッチの形状によって、商品の出所を混同することはない。
原告は、消費者が被告商品を購入した後の混同のおそれを主張するが、
そのような混同は、不正競争防止法上の混同とはいえない。すなわち、同法2条1項1号においては、他人の周知表示と類似の表示を使用し、又はこのような表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、
若しくは輸入して、他人の商品等と混同を生じさせるような行為のみが不正競争行為とされ、類似表示を付した商品を単に自ら着用等するような行為は禁止されていないことに照らすならば、同法所定の「混同」に、購入後の混同が含まれないことは明らかである。
2 原告標章三、四と被告標章五について(501、505) (原告の主張) (一) 商品表示性著名性周知性 原告は、原告標章三を一八九〇年より、原告標章四を一九六〇年(昭和三五年)より、原告商品の商品名として使用してきた。原告標章三、四(501、
505の数字)は、原告商品が、ジーンズの業界において、創業当時から世界的な人気を維持し続け、「リーバイス」の名称と共に用いられてきたことによって、単なる数字の羅列に止まることなく、原告の商品であるという出所を識別する標章として、日本を含め世界中で著名性周知性を獲得している。
すなわち、原告は、原告の日本支社が設立される前から、「501」という商品名のジーンズを、我が国において輸入販売し、一九六〇年(昭和三五年)ころには取引需要者及びジーンズファンの間で、一九七二年(昭和四七年)ころには一般消費者の間で、周知性及び著名性を獲得した。また、原告は、「505」という商品名のジーンズを、一九七六年(昭和五一年)ころから、我が国において販売し始め、一九八〇年(昭和五五年)ころまでには一般消費者の間で周知性及び著名性を獲得した。
原告は、日本を含む全世界において、501、505に関して、多大な宣伝広告、販売促進活動を行い、当該標章の著名性周知性の獲得、維持について努力を傾注している。
原告商品の中でも特に501、505の付された商品は、現在でも古着屋などでビンテージ物として買い求める消費者が多く、昔の着古された501、505商品を探し当てることは、ジーンズ愛好家の中では流行になっている。
なお、原告標章三は、数字の組み合わせであるにもかかわらず、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に関わる商品であることを認識することができるもの」(商標法3条2項)に該当すると判断され、商標登録されている。
(二) 類似性、同一性 原告標章三と被告標章五とは、以下のとおり類似する。すなわち、外観において、原告標章三と被告標章五は三ケタのうち上二ケタが同一であり、類似する。称呼において、被告標章五はテレビコマーシャルでは、「ゴーマルゴ」と呼ばれているが、これは原告標章三の愛称である「ゴーマルイチ」と比べると音節のうちほぼ三分の二が共通するので、類似する。
原告標章四と被告標章五とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても同一である。
(三) 混同 被告は、「エドウィン505」、「505チノーズ」、「サムシング505」、「フィオルッチ505」「リー505.B」「リー505.Z」(以下、
まとめて「被告の「505」製品群」という。)を製造販売している。
被告標章五の使用は、原告標章三、四の著名性ただ乗りしたものである。被告が被告の「505」製品群を製造販売した場合、原告標章三、四について原告が有する顧客に対する訴求力を不当に薄めることになる。これは、原告標章のイメージへのただ乗りであり、原告標章の識別力に対するダイリューションであり、原告が長年払ってきた営業努力を無にさせる行為である。
被告が被告の「505」製品群を製造販売すると、あたかも原告がそのようなシリーズ商品を製造販売しているかのような錯覚を一般消費者に与える。
「エドウィン505」という商品には被告の名称が示されているが、他の「フィオルッチ」「チノーズ」「サムシング」などは被告の名称が示されてないから、これらについては、一般消費者の間に、営業主体についての混同が生じる。
また、原告と被告の間に何らかの提携関係があり、被告の「505」ジーンズが原告の「505」ジーンズと何らかの関係があるのではないかという誤認混同も生じる。ジーンズ業界においては、ジーンズの製造業者が自己の会社名を識別表示として使用している場合でも、他の標章を扱う例があり、原告も被告も、そのような標章の使用態様を実施している。したがって、一般消費者は、被告の「505」製品群に接した場合、被告が原告のライセンスを受けた上で商品を製造販売しているのではないかと誤解する。
(四) 被告標章五の商品等表示としての使用 被告の被告標章五(505)の使用態様は、単なる商品管理上の便宜のためではなく、自他商品の識別機能を果たすためのものである。単に商品管理上の必要性のみに基づく使用であれば、対内的な商品管理面でのみ使用すれば足りるにもかかわらず、被告は、「505」を被告製品自体に付しているだけでなく、カタログにも大きく「505」と表示しているし、雑誌の宣伝広告にも「505」を表記している。このような被告の使用態様に照らすならば、被告は商品名として「505」を使用していることは明白である。
なお、原告は、「501」、「505」の双方を商品名として使用し、
その旨の宣伝広告も実施している。
(被告の反論) (一) 商品等表示性、周知性著名性 原告標章三、四は、以下のとおり、商品識別機能を有せず、周知、著名な商品等表示とはいえない。
すなわち、原告標章三、四は、数字を構成要素とするものであり、右数字は製品番号に由来する。このような単なる数字の羅列は、極めて簡単かつありふれた標章にすぎず、識別力はないので、商品等表示には該当しない。商標審査基準において、数字が原則として、商標法3条1項5号に規定する「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」として登録拒絶事由に挙げられているのも、同趣旨である。単なる数字の羅列を特定人の独占的使用にゆだねることは、公益上も妥当ではない。
原告は、「501ーXX」という番号のジーンズを「501」ジーンズ商品の最高級品に位置づけているにもかかわらず、その紙ラベル上に「501」を表示していないが、このことからしても、原告が「501」という数字を単なる製品番号として使用し、商品名として使用していないことは明らかである。
「501」という表示は、原告商品においても、広告においても、「LEVI’S」という表示とともに用いられ、「501」だけが単独で用いられることはない。「505」については、原告独自の広告宣伝活動は一切行われていない。
我が国では、各メーカーとも、ジーンズの製品番号として数字、特に五〇〇番台の三桁の数字を用いる例が多く、また、「501」、「505」なる番号が付されたジーンズも、他社から販売され、原告が右表示を独占的に使用していたわけではない。
原告は、「501」が単なる数字の羅列でありながら、永年の使用により特別顕著性を獲得した結果、商標法3条2項によって商標登録が認められたことを主張するが、右登録は根拠を欠く。原告は、「505」について「LEVI’S 505」で商標登録を出願し、「505」のみの商標登録出願は行っていない。
(二) 類似性 商品の取引上、何人も数字を自由に使用できるよう保障する必要があり、これを特定人の独占的使用にゆだねることは公益上妥当ではない。数字に関する類似性の範囲は狭く解すべきであり、その範囲は同一標章か、又は同一標章と同視し得べき標章に限定すべきである。
そこで、原告標章三「501」と被告標章五「505」を比較した場合、その外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しないので、両標章は非類似である。これに対し、原告は、上二桁が共通するから両標章は類似する旨主張するが、このような考え方をとった場合、「500」から「509」の番号すべてが「501」と類似する結果になり、妥当を欠く。
(三) 混同 ジーンズの販売についての前記のような特殊性に鑑みれば、原告商品と被告商品との混同のおそれはない。なお、原告の「505」ジーンズと被告の「505」ジーンズは、全く異なる特徴を有する商品である。すなわち、原告の「505」ジーンズは、従来の一般的なものであり、股上が浅くタイトなシルエットを有するジーンズであるのに対し、被告の「505」ジーンズは、従来の一般的なものとは異なる「ビンテージジーンズ」であって、股上が深く、かなり太めのルーズ感のあるジーンズである。
また、被告の「505」ビンテージシリーズの好調な売れ行きからも、
「505」という製品番号が付された被告商品を見て、消費者や取扱業者が、原告商品と誤認混同する可能性はない。すなわち、被告の「505」シリーズのジーンズは、発売以来、「ビンテージジーンズ」という商品コンセプトが若者の心を捉え、一九九四年(平成六年)には三七万四九五〇本、一九九五年(平成七年)には九九万二一六二本、一九九六年(平成八年)には一一三万三〇九三本の売上をあげる大ヒット商品となっている。被告は、「EDWIN505」シリーズの広告宣伝費として、一九九四年(平成六年)には四億九〇五〇万円、一九九五年(平成七年)には一〇億二〇四二万円、一九九六年(平成八年)には六億五二四九万円の費用を掛けた。
なお、被告は、内部の製品番号基準に従って「505」という番号を付けたにすぎない。
3 原告標章五と被告標章一、三のタブ部分及び被告標章六、七、一〇について(タブ) (原告の主張) (一) 原告標章五の商品等表示性、著名性周知性 原告標章五はいずれも以下のとおり原告の商品等表示として著名、周知である。
すなわち、原告標章五ー一は、文字のない赤いタブであるが、原告商品の一〇%に付され、遅くとも一九七二年(昭和四七年)から使用されている。原告標章五ー二は「ビッグ・イー」と呼ばれ、一九七一年(昭和四六年)以前に製造された原告のジーンズのほぼすべてに付されており、原告標章五ー四は「スモール・イー」と呼ばれ、一九七一年(昭和四六年)以降に製造された原告のジーンズのほぼすべてに付されている。また、原告標章五ー三は「オレンジタブ」と呼ばれ、一九六〇年代から原告のジーンズに付され始めた。
そして、戦後、原告製品が輸入されるようになったときから、原告標章五ー二が付けられていたから、原告標章五ー二は一九六〇年(昭和三五年)ころには周知性及び著名性を獲得した。原告標章五ー一、三及び四については、一九七〇年(昭和四五年)前半にはいずれも著名性周知性を獲得した。
原告は、これらタブの分類や、タブの種類等について従前から雑誌やテレビコマーシャル等で積極的な宣伝広告を行っている。
(二) 類似性、同一性 原告標章五ー一ないし四と被告標章一及び三のタブ部分、被告標章六、
七及び一〇は、以下のとおり、同一又は類似である。すなわち、形状において、長方形の布を二つ折りにし、輪の反対部分をバックポケットの横上部に縫い込んでいる点で同一であり、色彩において、原告標章五ー一、二及び四と被告標章六、一〇は、赤である点で同一であり、原告標章五ー三と被告標章七は、オレンジである点で同一であり、原告標章五ー一、二及び四と被告標章七は色が赤とオレンジである点で類似している。 確かに、原告標章は右バックポケットの左側に、被告標章は、右バックポケットの右側に付けられている点で相違するが、付けられた位置の相違にさほどの重要性はない。
また、被告各標章中に、小さく「SOMETHING」「EDWIN」という文字が記載されているが、被告商品を着用した場合には、タブ中の文字は識別できないので、「SOMETHING」等の文字が記載されていることは重要性がなく、また、原告標章五の特徴的部分は、文字を記載しない布片をポケットの縫い目に縦長に縫いつけられていることにあるから、被告商品のタブに文字が記載されていることが、同一性、類似性を否定する根拠にはならない。
(三) 混同 原告標章と被告標章の類似性に鑑みれば、購買者が商品を選択する際に、被告商品を原告商品と誤解する可能性が著しく高い。被告商品を原告商品と誤解しないとしても、被告商品が、原告商品と関連のある会社により生産販売されたり、原告からライセンスを受けて生産販売されたのではないかという誤解を生じる。
(被告の反論) (一) 商品等表示性、著名性周知性 原告標章五ー一は、単に赤色の布で の文字が刺繍されているだけの標章であって、このような単純な標章は商品識別力がなく、商品等表示になり得ない。また、原告標章五ー二ないし四においては、「LEVI’S」又は「Levi’s」という標章の識別力が非常に強いため、赤い長方形の布やオレンジ色の布に刺繍されているということは、識別力を有しない部分といえる。
原告は、原告標章五の特徴的部分は、文字を記載しない布片がポケットの縫い目に縦長に縫いつけられていることにあると主張する。しかし、そのような形状のタブは、日本にジーンズが登場した当初から現在に至るまで一般に用いられていたのであり、原告商品に限られたものではない。すなわち、国産第一号のジーンズとして有名となったCANTONのバックポケットには赤タブが付けられていたし、ビッグジョンの一九六五年(昭和四〇年)発売の第一号ジーンズにも赤タブが付けられていた。また、被告も、一九六四年(昭和三九年)から現在まで、「EDWIN」という文字が付された赤色のタブを使用しているが、その間、タブの色の種類を増やしたことの他は、長方形の形状を変更していない。
なお、原告自身も、少なくとも一〇種類以上に及ぶ様々な色のタブを使用しており、「赤」タブだけに特別な商品識別力を見いだす根拠はない。
(二) 類似性 原告標章五ー二ないし四においては、「LEVI’S」又は「Levi’s」という文字部分に特徴があり、赤色やオレンジ色、長方形の布という点は、ありふれたもので、特別の識別力がないことに鑑みれば、原告標章五ー二ないし四の要部は、「LEVI’S」又は「Levi’s」の文字部分である。また、
被告各標章要部は「SOMETHING」や「EDWIN」の文字部分である。そこで、原告標章五ー二ないし四と被告標章一、三のタブ部分、被告標章六、七及び一〇の各要部を比較すると、両者は、外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しない。
4 原告標章六と被告標章八、九について(ハウスマークロゴ) (原告の主張) (一) 原告標章六の著名性周知性 原告は、原告商品の広告宣伝、販促資材等として、原告標章六を使用している。原告標章六は、一九七二年(昭和四七年)ころには我が国において著名性及び周知性を獲得した。
原告標章六は、雑誌、広告及び店の展示などにおいて原告の出所を表示するものとして使用されている。特に、売場においては、原告標章六を印刷した紙ラベルを原告商品のポケット部分に貼り付けて店に展示すると共に、原告標章六を大書したポスターを売場の随所に張り付けることによって、一見して原告商品の売場であるように工夫している。
(二) 類似性 原告標章六と被告標章八ー一は、色が赤である点で同一であり、その形状は、@上辺が直線である点、A四角形の下辺に二つの波形が付されている点が共通し、相互に類似する。
原告標章六と被告標章八ー二ないし四は、@上辺が直線である点、A四角形の下辺に二つの波形が付されている点、B中の文字が白である点が共通し、相互に類似する。 原告標章六と被告標章九は、@色が赤である点、A上辺が直線である点、B中の文字が白である点で共通し、相互に類似する。
なお、被告標章八ー二ないし四及び九は、広告及び売場のディスプレイに使用された状態では、原告標章六に、より一層類似する。
(三) 混同 原告標章六は、原告の営業を示す表示として原告の宣伝広告活動には必ず用いられている。原告は、小売店に対し、原告標章六と同型のプレートやフラッグ(布)を売場のディスプレイに使用するよう指定し、小売店は、原告標章六と同型の大きなプレートをジーンズ売場の壁に掛けたり、天井からつり下げたり、商品陳列棚上に立て掛けたりして、原告商品の売場であることが分かるように使用している。このような陳列方法は、我が国で、原告商品が直接販売された当初から行われていた。
被告標章八、九の実際の使用態様は、原告の使用態様と類似しており、
原告の売場であるかの誤解を抱かせる。
(被告の反論) 原告の類似性に関する主張は否認する。
原告標章六の要部は、「Levi’s」という文字部分の商品識別力の強さに鑑みるならば、当該文字部分と考えるべきである(図形の形状が共通する原告商標五と原告商標六とが連合商標として登録されていないにもかかわらず、「Levi’s」という文字部分が共通する原告商標四と原告商標五とが連合商標として登録されているということに照らすと、原告標章六の要部は「Levi’s」という文字部分であると考えるのが相当である。)。
原告標章六と被告標章八、九とを対比すると、原告標章六の文字部分が「Levi’s」であるのに対して、被告標章八、九の各文字部分はそれぞれ「NEW Vintage 505(三行書き)」、「NEW Vintage(二行書き)」、「NEW Vintage EDWIN(三行書き)」、「EDWIN」であり、両者は外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しない。
さらに、文字を除く図形部分のみを比較しても、原告標章六と被告標章八、九は、以下のとおり、類似しない。
すなわち、原告標章六と被告標章八を対比すると、@原告標章六は左右の辺が斜めであるのに対し、被告標章八は垂直である。A原告標章六は左右の辺の長さが同一であるのに対し、被告標章八は左辺が短く右辺が長い。B原告標章六は、
下部が二個の円弧からなるのに対し、被告標章八は、下部が三個の円弧からなる。
C原告標章六は、円弧の形状は、正円の一部であるのに対し、被告標章八は、円弧の形状は、右に傾いた楕円の一部である。D原告標章六は、下部の頂点(左辺・右辺の下端を除く)が、左辺・右辺の下端を結ぶ直線上か内側に位置するのに対し、
被告標章八は、下部の頂点(左辺・右辺の下端を除く)が、左辺・右辺の下端を結ぶ直線よりはるかに外側に位置している。E原告標章六は、二つの円弧が並列配置されているのに対し、被告標章八は、三つの円弧がアルファベットの「W」を形成するよう配置されている。
また、原告標章六と被告標章九を対比すると、@原告標章六は、上辺の左右の頂点の角度が、被告標章九の角度より大きい。A原告標章六は、左右下端の頂点の角度が鋭角であるのに対し、被告標章九は、左右下端の頂点の角度が鈍角である。B原告標章六は、下部に円弧が二つ並列配置されているのに対し、被告標章九は、下部に直線が二本配置され、さらに、左右の辺及び下部の二本の直線で、アルファベットの「W」を形成している。
〔商標権に基づく請求〕 5 商標的使用 (原告の主張) 被告は、被告標章一ないし四を商標として使用している。このことは、被告自身がバックポケット上のステッチ(被告標章一ないし四とは別のもの)について登録商標を得ていることから明らかである。
被告は、被告標章一ないし四を装飾的に用いているので、商標的な使用に当たらないと主張する。
しかし、被告の使用態様は、以下のとおり、原告商標一及び二に関する原告の使用態様と同じであり、出所表示機能を果たしていることは明らかであるから、商標的使用といえる。すなわち、原告は、一〇〇年以上の間、原告商標一、二を、一貫して原告のジーンズのバックポケットのステッチとして使用し続け、かつ、アーキュエットステッチと原告商品とを結びつける全世界的なマーケティング活動を展開することによって、アーキュエットステッチの出所表示機能を確立している。このように、原告商標一、二が商標として使用されていることは明らかであるから、被告がこれと同様の態様でステッチを自己のジーンズに使用することは、
商標的な使用といえる。
(被告の反論) 被告は、被告標章一ないし四を、バックポケットのステッチとして、装飾的に使用しているのであって、商品の識別標識として使用していない。このような装飾的使用は、商標としての使用に該当せず、商標権侵害行為を構成しない。
原告は、原告商品のバックポケットに刺繍してあるステッチ等をもって、
当該登録商標の使用であるとしているが、そのような使用態様も、当該登録商標の商標的使用ではないので、当該登録商標について使用していることを前提とする原告の主張は理由がない。
6 商標の類似性 (原告の主張) 原告商標一及び二と被告標章一ないし四は類似する。原告商標三と被告標章五は類似する。原告商標四と被告標章六、七及び一〇は類似する。原告商標六と被告標章八、九は類似する。具体的な対比は、不正競争防止法に基づく請求に係る主張のとおりである。
(被告の主張) 原告商標と被告標章はいずれも類似しない。具体的な対比は、不正競争防止法に基づく請求に係る主張のとおりである。
争点に対する判断
〔不正競争防止法に基づく請求〕 一 争点1(原告標章一、二と被告標章一ないし四)について 1 商品等表示性、著名性周知性について (一) 証拠(甲一〇、二三、二八ないし三一、三四ないし三七、四三、四五ないし四八、五三、五四、五六、五七、六四、六七、七〇、八〇、八一、八三、八八、八九、九一ないし九三、一〇三、一〇四、一一〇、一二七ないし一二九、一三二ないし一三四、一五七、一六〇、一六四、一六八、一六九、一九〇ないし一九四、二〇四ないし二〇七、二一六)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 原告は、一九七一年(昭和四六年)以降、雑誌、カタログにおいて、
原告標章一及び二を強調する宣伝広告を継続的に実施していた。右各標章を紹介した代表的な雑誌、カタログ、パンフレット等に、以下のものがある。
一九七一年(昭和四六年)「だぶだぼ」一〇、一一号 一九七二年(同四七年) 「プレイボーイ」六月二七日号、「日本繊維新聞」五月三一日号、「ストアーズレポート」七月号、「だぶだぼ」一二、一三号 一九七三年(同四八年) 「プレイボーイ」六月五日号、一二日号、一九日号、「リーバイスニュース」(カタログ) 一九七五年(同五〇年) 「アン・アン」一一月二〇日号、「メンズカタログ」一二月号、「男子専科メンズモード事典」、「メンズクラブ」七、八、九月号 一九七六年(同五一年) 「メンズクラブ」増刊アイビー特集、三、一一月号 一九七七年(同五二年) 「ジーンズの本」 一九八一年(同五六年) 「メンズクラブ」特別号リーバイスニュースレター、「リーバイスブルージーンズの伝説」 一九八二年(同五七年) 「ホットドッグプレス」四、一一月号、「ウイズ」四月号 一九八五年(同六〇年) 「メンズクラブ」六、七月号 一九八六年(同六一年) 春夏カタログ、秋冬カタログ 一九八七年(同六二年) 「メンズクラブ」一月号、春夏カタログ、秋冬カタログ 一九八八年(同六三年) 「メンズクラブ」二、三月号、春夏カタログ 一九八九年(平成元年) 「ホットドッグプレス」七月二五日号、八月二五日号、「メンズノンノ」八、九月号、「チェックメイト」九月号、「ファインボーイズ」八、九月号、「ポパイ」八月一六日号、「ブーン」一一月号 一九九〇年(同二年) 「メンズクラブ」八月号、「ホットドッグプレス」一〇月一〇日、一一月一〇日号 一九九一年(同三年) 「ホットドッグプレス」一一月号、「メンズノンノ」一〇月号 一九九二年(同四年) 「チェックメイト」五月号、「ブーン」九月号、「ポパイ」三月号 一九九三年(同五年) 「メンズノンノ」七、八月号、「キャラウェイ」二月号 一九九五年(同七年) 「ブーン」三月号、「ブーンジーンズ200」 一九九六年(同八年) カタログ (2) 一九七九年(昭和五四年)から一九九三年(平成五年)にかけて、原告標章一、二を強調したテレビコマーシャルが全国的に放映され、右標章を宣伝する屋外広告も設置されたことがある(甲一三八)。
(3) 各種調査においても、原告標章一、二は、需要者の間において、強い出所表示機能を有しているとの結果を示している。すなわち、@過去六か月間にジーンズを購入した者を対象とした調査で、原告標章二を示されて、出所をリーバイスと正しく答えた者の割合は、一五歳から二九歳までの層で四六パーセントであり、右層を含む一五歳から六九歳までの全年齢層で三一パーセントであった(甲二九五)、A年齢一五歳から三四歳までの男女で、過去一年以内に、いずれかのブランドのジーンズを自分で購入(購入してもらった者も含む。)した者で、その出所を明確に答えられた者を対象にした調査では、原告標章二を確かに見た、見たような気がする者の割合は八六パーセントであり、そのうち、三七パーセントが出所をリーバイスと正しく答えた(甲三〇〇)、Bジーンズメーカー、アパレルメーカーに本人、家族が勤務している者等を除いた一般消費者を対象とした調査で、原告標章二のみを示されてリーバイスと正しくブランド名を答えた者の割合が、一八・三パーセントに上る(乙一七四)という結果を示している。
以上認定した事実によれば、原告標章一、二は、原告の商品又は営業表示として需要者広く認識され、周知となっているものと認められる。なお、右原告標章が、原告の商品又は営業表示として、著名であるとまでは認めることはできない。
(二) これに対し、被告は、以下の点を挙げて、原告標章一、二は、原告の商品等表示として周知性はないと主張する。すなわち、@右原告標章は、バックポケットの刺繍のデザインにすぎない、A原告標章の使用形態は、原告標章の特徴を強調するものではない、B原告がバックポケットに付したステッチの形態には統一性がない、C第三者が、原告標章に類似するステッチを使用しているなどの点を主張する。
しかし、@、Aについては、前記認定のとおり、原告は、右原告標章の特徴を際だたせた宣伝広告等を長期間にわたって継続してきたことが明らかであり、Bについては、確かに、原告が使用してきたステッチの形状に多少の変遷はあるが、極く僅かな変更にすぎないので、いずれも、前記の結論を左右するものではなく、被告の主張は採用できない。Cについては、被告が被告標章一、二を一九八四年(昭和五九年)から、被告標章三、四を一九九四年(平成六年)から使用を開始し(当事者間に争いがない。)、また、第三者が一九八八年(昭和六三年)以降、原告標章に近い形状のステッチを使用したことが窺われる(乙一一ないし一三)。しかし、原告は、右いずれの時期よりはるか前から、原告標章一、二に関する大量の宣伝広告を実施し、その結果、強い出所表示機能を有していることは前記のとおりであること、右第三者が販売した商品に関する宣伝広告や販売の規模、周知性の程度は明らかでないこと、原告は、右原告標章に類似すると判断した第三者の商品については、発見する度ごとに、その販売を中止させる努力をしてきたこと(甲二二五ないし二七九号証)等の事実に照らすならば、第三者が原告標章に類似するステッチを使用していたことは、前記の結論を左右することにならない。
2 類似性 (一) 原告標章一、二と被告標章一、二を対比する。原告標章一、二と被告標章一、二とは、以下の点が共通する。すなわち、@ジーンズのバックポケットに付されたステッチであること、A左右二つのアーチからなること、B左右二つのアーチは線対称であること、Cそれぞれのアーチは、ほぼ平行な二本の曲線からなること、D二本の曲線は、両端部分から中央部分に向かって、円弧を描くようにして次第に下降し、中心部で交差していること等の点で共通する。右の共通点に照らすならば、両標章は、類似しているということができる。
これに対し、被告は、原告標章一、二と被告標章一、二とは、@原告標章は、被告標章と比べて、両端部分と中央部分との高低差が大きいこと、A原告標章は、二本の曲線が中央部で互いに交差し、中央部にひし形の図形を形成しているのに対し、被告標章は、そのような図形がない等の点で相違する旨主張する。しかし、@、Aいずれの相違も僅かな点にすぎず、前記の多くの共通点に照らして、前記結論を左右するものとはいえない。
(二) 原告標章一、二と被告標章三、四を対比する。原告標章一、二と被告標章三、四とは、以下の点が共通する。すなわち、@ジーンズのバックポケットに付されたステッチであること、A左右二つのアーチからなること、Bそれぞれのアーチは二本の曲線からなること、C二本の曲線は、両端部分から中央部分に向かって、円弧を描くようにして次第に下降し、中心部で交差していること等の点で共通する。
他方、両者は、以下の点で相違する。すなわち、@原告標章は、二本の曲線が平行であるのに対し、被告標章は、両端部と中央部とでは、二本の曲線の距離が異なり、平行でない、A原告標章は、左右二つのアーチが線対称であるのに対し、被告標章は、左右二つのアーチが線対称でない、B原告標章は、バックポケットの両端部分からステッチの中央部にかけてほぼ下向きの曲線で構成されているのに対し、被告標章は、二つのアーチの一方が、端部から中央部へ上方へ進んだ後、
下方に進むという弓形曲線で構成されている点で大きく相違する。
右のとおり、両者は、共通している点もあるが、重要な点において相違していることに照らすと、両者は全体として類似しないというべきである。
3 混同 前記1、2のとおり、原告標章一、二は、原告の商品又は営業を表示するものとして相当程度広く認識されていること、右原告標章と被告標章一、二とは、
重要な点において多く共通し、類似性が強いことが認められ、前記の認定事実に照らすならば、需要者が、原告と被告の間で、商品又は営業を誤認混同したり、少なくとも被告標章一、二が付された商品を製造販売する者が原告と何らかの資本関係、提携関係等を有するのではないかと誤認混同するおそれがあると認められる。
これに対し、被告は、ジーンズの一般の販売形態、被告がある程度の期間被告標章一、二を使用していること等から混同のおそれはない旨主張するが、原告標章一、二を強調して展開した原告の宣伝広告活動等の状況に照らすならば、被告の主張する事情を考慮に入れてもなお、前記の結論を左右するものとはいえない。
4 結論 以上のとおり、原告の請求中、不正競争防止法に基づき、被告標章一、二の使用の差止めを求める部分は理由があるが、被告標章三、四の使用の差止めを求める部分は理由がない。
二 争点2(原告標章三、四と被告標章五)について 1 原告標章三について (一) まず、商品等表示性、著名性周知性を判断する。
証拠(甲八、四五、四七、四九ないし五四、五七、六四、六五、六七、
六九、七一、七二、八一、八三、八七、九〇、九三ないし九九、一〇三、一〇四、
一〇九、一一〇、一二七ないし一二九、一三二ないし一三四、一五二、一五四、一五五、一六〇、一六四、一六五、一八六、一九二)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 原告は、一九七五年以降継続的に、雑誌、カタログ等において、原告標章三を、単なる商品の管理番号としてではなく、「ジーンズのオリジナル」、
「リーバイス製品の代表」という商品の位置付けを強調する宣伝広告を実施した。
また、雑誌等においても、そのような紹介がされてきた。そのような紹介が掲載された雑誌、パンフレット等に以下のものがある。
一九七五年(昭和五〇年)「メンズクラブ」一、八月号 一九七六年(同五一年) 「メンズクラブ」増刊アイビー特集 一九七七年(同五二年) 「平凡パンチ」五月二日号 一九八一年(同五六年) 「メンズクラブ」特別号リーバイスニュースレター、「アンアン」八、一〇月号 一九八二年(同五七年) 「ホットドッグプレス」一一月号、「スコラ」一一月号、「アンアン」五月号、「ポパイ」一〇月二五日号 一九八四年(同五九年) 「チェックメイト」二、六月号、「ホットドッグプレス」一二月号 一九八五年(同六〇年) 「メンズクラブ」二、七月号 一九八六年(同六一年) 春夏カタログ、秋冬カタログ 一九八七年(同六二年) 「メンズクラブ」一月号、春夏カタログ、秋冬カタログ 一九八八年(同六三年) 「メンズクラブ」二月号、春夏カタログ 一九八九年(平成元年) 「グランマガジン」六月号、「ブーン」一一月号 一九九〇年(同二年) 「メンズクラブ」八月号 一九九一年(同三年) 「ホットドッグプレス」一一月号、「ポパイ」三月号 一九九二年(同四年) 「チェックメイト」五月号、「ブーン」九月号、「ポパイ」三月号 一九九三年(同五年) 「メンズノンノ」七、八月号、「メンズクラブ」七、九月号、「キャラウェイ」二月号 一九九四年(同六年) 「メンズクラブ」五、八、九、一一月号 一九九五年(同七年) 「メンズクラブ」一月号、「ファインボーイズ」四月号、「ブーンジーンズ二〇〇」 一九九六年(同八年) 「フォーブズ日本版」六月号、カタログ 一九九七年(同九年) 「ブーンビンテージ」 (2) 調査においても、原告標章三は、需要者の間において、出所表示機能を有しているとの結果を示している。すなわち、ジーンズメーカー、アパレルメーカーに本人、家族が勤務している者等を除いた一般消費者を対象とした調査で、原告標章三を示されて、出所をリーバイスと答えた者の割合が、一六・六パーセントであった(乙一七四)。
以上認定した事実によれば、原告標章三は、原告の商品又は営業表示として需要者広く認識されており、周知となっているものと認められる。なお、右原告標章が、原告の商品又は営業を示すものとして著名であるとまでは認めることはできない。
(二) そこで、進んで、両標章の類否について判断する。
前記のとおり、原告が原告標章三を永年使用することによって、「501」という数字から構成される右標章は、原告の商品又は営業を示すものとして、
特別な識別力が生じたものと解することができる。他方、商取引において、特定の数字を特定人の独占的使用にゆだねることに弊害があることは容易に推測できるところである。したがって、数字で構成される標章について、特別な識別力が生じたとしても、その独占的使用を許すべき類似の範囲は、厳格に解すべきであって、同一又は実質的に同一といえる範囲に限られるものと解するのが相当である。このような観点から、原告標章三「501」と被告標章五「505」を対比すると、その外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しないので、両標章は非類似である。原告は、上二桁が共通するから両標章は類似する旨主張するが、右主張は採用の限りでない。
2 原告標章四について 本件全証拠によっても、原告が、「505」という数字から構成される原告標章四について、一般の製品番号とは異なり、特定の商品又は出所を示すものとして、継続的な宣伝広告をした等の事実を認めることはできない。したがって、原告標章四は、原告の商品又は営業を示す機能を有しない。したがって、原告標章四について、商品等表示性を獲得したことを前提とする原告の主張は採用できない。
3 結論 以上のとおり、不正競争防止法に基づき、被告標章五の使用の差止めを求める部分は理由がない。
三 争点3(原告標章五と被告標章一、三のタブ部分、被告標章六、七及び一〇)について 1 商品表示性著名性周知性について 原告標章五のうち、赤色ないしオレンジ色の色彩部分(換言すれば、原告標章五の一及び同五の二ないし四のうち文字部分を除いた部分)が、原告の商品等表示として著名ないし周知であるか否かについて判断する。
証拠(甲二八、四三、一三五、二一六、乙一四ないし一七、一九、三四、
三六、三七、三九ないし四一、四五、四六、四八ないし六三、六六ないし八六、八九、九一、九二、九四ないし九六、九八、一〇〇ないし一〇六、一〇八、一一〇ないし一一五、一二二、一二七、一二九、一三二ないし一三五、一三七、一三八、一四〇、一四二、一四三、一四八、一四九)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(一) 原告は、昭和四七年ころまでに、バックポケットの横上部に赤色のタブを付けて、原告商品を販売し、また、赤色のタブに関連した宣伝広告を実施した。また、以下の雑誌等にも、赤色のタブを取り上げたものが現れるようになった。@一九七二年(昭和四七年)「日本繊維新聞」五月三一日付、A一九八一年(同五六年)「リーバイスブルージーンズの伝説」、B一九九一年(平成三年)「ホットドッグプレス」一〇月号、C一九九二年(同四年)「チェックメイト」五月号、「ブーン」九月号 (二) 一方、原告は、原告標章五ー二ないし四(いずれも原告の通称が表示されている。)について、多数の宣伝広告をしているが、地の色彩である赤色、オレンジ色を原告商品に対応させるものとして強調したものではなかった。また、赤色のタブは、一九六〇年(昭和三五年)ころから、原告以外の商品、すなわち、被告、ビッグジョン、ボブソン及びラングラー等のジーンズ商品において、多数使用されていた。
以上認定した事実、原告が、タブの色彩を原告の商品等表示として強調するような宣伝広告を格別実施していたものでないこと、被告及び第三者が一九六〇年ころから長期間にわたって、赤色のタブを継続的に使用し、原告のみが赤色ないしオレンジ色のタブを使用してきたというような事情はないことに照らすならば、
赤色ないしオレンジ色のタブの色彩が、その色彩上の特徴の故に、原告の商品等表示として著名ないし周知であるということはできない。したがって、原告標章五ー一は、原告の商品等表示には当たらない。
なお、原告標章五ー二ないし四には、「LEVI’S」又は「Levi’s」という原告の通称が付されているから、全体として原告の著名な商品等表示であることは明らかである。
2 類似性について 前記のとおり、原告標章五ー二ないし四は、原告の商品等表示として著名かつ周知であるが、赤色ないしオレンジ色のタブの色彩は、原告の商品等表示としての特徴部分であるとはいえないことに照らし、その要部は、原告の通称として著名である「LEVI’S」又は「Levi’s」との記載部分であるといえる。
そして、被告標章一、三のタブ部分、被告標章六、七及び一〇は、いずれも原告標章五の二ないし四の要部を備えていないから、両者は類似しない。
3 結論 以上のとおり、不正競争防止法に基づき、被告標章一、三のタブ部分、被告標章六、七及び一〇の使用の差止めを求める部分は理由がない。
四 争点4(原告標章六と被告標章八、九)について 1 商品等表示性、著名性周知性について 証拠(甲一二ないし二二、二四ないし三一、三四、四二、四三、四五、五二、五四、五六、五八、六〇、六三、六四、六六、六八、七〇、八〇、八一、八三、八九、九一、九二、一〇二、一〇九、一一二ないし一二一、一二三ないし一二六、一二九、一三四、一五三、一五五、一六二、一六八、一六九、一八五、一八七ないし一九一、一九三ないし二一四)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、遅くとも一九七一年以降継続的に、原告商品の宣伝広告のために、原告標章六を積極的に使用してきたこと、その全体形状は、上部が水平の直線、左右の辺が下方に進むにしたがって狭まった直線、下部が二個の円弧で構成され、バックポケットに付けられたステッチ模様を連想させる独特の形からなること、原告標章六には、原告の通称として著名である「Levi’s」の文字が表記されていることに照らすと、原告標章六は、全体として原告の商品等表示として著名であるといえる。
2 類似性について そこで、進んで、両標章の類否について判断する。
原告標章六と被告標章八、九とを対比すると、原告標章六の文字部分が「Levi’s」であるのに対して、被告標章八、九の各文字部分はそれぞれ「NEW Vintage 505(三行書き)」、「NEW Vintage(二行書き)」、「NEW Vintage EDWIN(三行書き)」、「EDWIN」であり、両者は外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しない。
のみならず、原告標章六と被告標章八、九について、文字部分を除く図形部分を比較しても、両標章は類似しない。
すなわち、原告標章六と被告標章八を対比すると、@原告標章六は左右の辺が斜めであるのに対し、被告標章八は垂直である、A原告標章六は左右の辺の長さが同一であるのに対し、被告標章八は、左辺が短く右辺が長い、B原告標章六は、下部が二個の円弧からなるのに対し、被告標章八は、下部が三個の円弧からなる、C原告標章六は、円弧が正円の一部であるのに対し、被告標章八は、円弧が右に傾いた楕円の一部である、D原告標章六は、下部の頂点(左辺・右辺の下端を除く)が、左辺・右辺の下端を結ぶ直線上か内側に位置するのに対し、被告標章八は、下部の頂点(左辺・右辺の下端を除く)が、左辺・右辺の下端を結ぶ直線より外側に位置している等の相違点があり、全体として異なる印象を与える。
また、原告標章六と被告標章九を対比すると、@原告標章六は、上辺の左右の頂点の角度が、被告標章九の角度よりも大きい、A原告標章六は、左右下端の頂点の角度が鋭角であるのに対し、被告標章九は、左右下端の頂点の角度が鈍角である、B原告標章六は、下部に円弧が二つ並列配置されているのに対し、被告標章九は、下部に直線が二本配置され、さらに、左右の辺及び下部の二本の直線で、アルファベットの「W」形状を形成している等の相違点があり、全体として異なる印象を与える。
3 結論 以上のとおり、不正競争防止法に基づき、被告標章八、九の使用の差止めを求める部分は理由がない。
〔商標権に基づく請求関係〕 五 争点5(商標的使用)について 商標法2条3項1号は、標章の使用を「商品又は商品の包装に標章を付する行為」としている。被告は、被告商品のバックポケット上にステッチにより被告標章一ないし四を付しているから、およそ商品又は出所を表示する機能を果たしていないというような特段の事情がない限り、被告が同標章を商標として使用しているといえるところ、本件においては、特段の事情の存在は窺われない。
これに対し、被告は、被告標章一ないし四を、専ら装飾的に使用しているので、商標として使用していない旨主張する。しかし、前掲各証拠によれば、原告、
被告も含めたジーンズメーカーは、バックポケットのステッチをジーンズの自他識別機能を有するものとして重視し、商品カタログや雑誌やテレビコマーシャル等において、ステッチが目立つような宣伝広告方法を工夫していること、被告も、ポケットのステッチによる標章につき登録商標を有していることが認められ、そうすると、被告が被告標章一ないし四を、装飾的にのみ用いていないことは明らかであって、被告のこの点についての主張は採用できない。
六 争点6(商標の類似性)について 前記のとおり、@原告商標一、二と被告標章一、二は類似するが、他方、A原告商標一、二と被告標章三、四、A原告商標三と被告標章五、B原告商標四と被告標章六、七、一〇、C原告商標六と被告標章八、九は、いずれも類似しない。
結局、商標権に基づく請求は、原告商標一、二に基づき、被告標章一、二の使用の差止めを求める部分のみ理由がある。
〔結論〕 以上のとおり、原告の請求のうち、不正競争防止法又は商標権に基づき、被告標章一、二の使用の差止めを求める部分は理由があり、その余は理由がない。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 石村智
裁判官 沖中康人