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事件 平成 16年 (ネ) 3846号 損害賠償請求控訴事件
控訴人(1審原告) NKE株式会社(以下「原告」とい う。)
訴訟代理人弁護士 小松陽一郎
同 井崎康孝
同 辻村和彦
同 井口喜久治
被控訴人(1審被告) 株式会社エニイワイヤ(以下「被告会 社」という。)
被控訴人(1審被告) B(以下「被告B」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士 福田健次
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2005/06/21
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被告会社は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成13年12月6日(被告会社に対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,500万円及びこれに対する平成13年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で被告Bと連帯して)を支払え。
3 被告Bは,原告に対し,被告会社と連帯して,500万円及びこれに対する平成13年12月9日(被告Bに対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は,1,2審とも被告らの負担とする。
事案の概要
1 本件は,原告が,被告らに対し,@被告会社が,原告の商品等表示類似した商品等表示を使用して自社製品を販売したことは不正競争防止法2条1項1号に該当する,A被告B及び被告会社の被用者が,原告の営業秘密を窃取し,これを不正に利用して後記被告製品を製造,販売したことは同項4号,7号に該当する,B被告B及び被告会社の被用者が,原告の営業上の信用や上記被告製品の新規性等に関する虚偽の事実を流布したことは同項14号に該当すると主張して,原告の製造,販売に係る製品に類似する製品及びシステムの製造,販売の差止め,上記製品及びその部品の製造を被告会社の仕入先ないし外注先に発注することの差止め,原告の営業上の信用に関する虚偽事実の流布の差止め,原告が特許を有する技術を基礎とした製品の製造,販売の差止め並びに損害賠償を請求した事案である。
原審は,原告の請求をいずれも棄却したので,原告が控訴を提起したが,原告は,当審において,請求を前記第1の2,3のとおりに減縮した。
(以下,「第2 事案の概要」2ないし4,「第3 当裁判所の判断」1及び2の部分は,原判決を付加,訂正等した。ゴシック体太字の部分が,当審において,内容的に付加,訂正を加えた主要な箇所である。それ以外の字句の訂正等については,特に指摘していない。) 2 基礎となる事実(証拠を付さない事実は,当事者間に争いがない。) (1)ア 原告は,各種機器の設計及び製作等を業とする株式会社であり,昭和62年ころから,「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商品等表示を用いて省配線システムを構成する製品を製造,販売している(以下,「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商品等表示を用いた製品により構成される省配線システムを「ユニワイヤシステム」といい,原告に係る「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商品等表示を「原告表示」という。)。
イ 原告は,アに先立つ昭和61年ころから,黒田精工株式会社(以下「黒田精工」という。)と業務提携を行い,ユニワイヤシステム関連の製品の開発,販売等を共同で行っている。「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」なる商標は,黒田精工が有する商標権に基づくものであり,原告は黒田精工からその使用許諾を受けて,これを使用している。また,ユニワイヤシステム関連の製品を販売する企業は,株式会社日立製作所(以下「日立製作所」という。)を含め30社ほどあり,その中で,ユニワイヤシステム関連の製品全般を製造,販売する企業としては,原告,黒田精工のほかに吉田電機工業株式会社,CKD株式会社がある(以上の企業からなるグループを,以下「ユニワイヤグループ」という。)。黒田精工は,これらの企業に対しても上記商標の使用を許諾している。
(甲6,甲21,甲43の1・2,乙12,C証人,弁論の全趣旨) ウ 省配線システムとは,広義では,接続された2個以上の電気機器間の配線数を減少させる技術であるが,本件で問題とされている省配線システムとは,主に産業機械の電子制御のために用いられるシステムである(以下,「省配線システム」というときは,特記しない限りこの意味で用いる。)。省配線システムにおいては,同時並列的に発生する電気信号をいったん直列信号に変換した上で配線上を伝送させ,伝送完了後,再度並列信号に変換する技術(シリアル多重伝送技術)を用いることで,2本の電線により多数の同時並列的に発生する電気信号を伝送することが可能となる。このシリアル多重伝送技術自体は公知の技術であるが,信号の伝送手順(プロトコル)には様々な種類があり,省配線システムに係る製品を製造,販売する企業がそれぞれ採用する伝送手順を前提とした製品を製造,販売している。省配線システムの主たる需要者は,産業機械を導入するメーカー等である。
(甲4,甲6,乙5ないし乙9,C証人,被告B本人,弁論の全趣旨) (2) 被告会社は,電気電子機械器具,通信機械器具,制御用機械器具等の設計,製造及び販売等を業とする株式会社であり,平成13年4月2日に被告Bを代表取締役として設立された。
被告会社は,「エニイワイヤ」「AnyWire」との商標登録を行い,これらの商標を商品等表示として用いて省配線システムに係る製品の製造,販売を行っており,その中に,原判決別紙「製品一覧」(DC入力3線式ターミナルA40SB-08UD,A40SB-16UDを除く。)記載の製品が含まれている(上記商品は,後記AnyWire DBシリーズに係る製品である。以下,AnyWire DBシリーズに係る製品を「被告製品」といい,「エニイワイヤ」「AnyWire」との商品等表示を「被告表示」という。)。また,被告会社は,被告製品を販売するに当たり,被告製品がユニワイヤシステムとの「上位互換性」を有するとして販売活動を行っている。
(3) 被告Bは,原告入社前,立石電機株式会社(現商号「オムロン株式会社」)に勤務し,電子機器に関する開発に携わっていた。その後,昭和57年8月,原告(当時の商号は株式会社中村機器エンジニアリング)に入社し,その後,常務取締役に就任し,平成13年3月まで同職にあった。被告Bは,同月当時,原告においてユニワイヤシステムの製造,販売を担当する電子事業部の事業部長として,電子事業部の外注先や顧客との交渉等を統括していた。
(甲21,甲22,乙7,C証人,被告B本人) 3 本件の争点 (1) 不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為の成否 (2) 不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否 (3)(不正競争行為が成立する場合の)原告の損害 4 争点に関する当事者の主張 (1) 原告の主張 ア 不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為の成否 (ア) 原告の商品等表示周知性 原告は,昭和63年ころから,長期間にわたって原告表示を使用し,各種媒体を通じて広告宣伝活動を行った。その結果,ユニワイヤグループが省配線システムの分野において高い市場占有率を獲得するとともに,原告がユニワイヤグループの中核を担う企業であるとの評価を確立した。したがって,遅くとも平成12年ころには,原告表示は,原告の商品等表示として全国にわたって周知性を獲得した。
(イ) 類似性 原告表示の「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」と被告表示の「エニイワイヤ」「AnyWire」とは,「ワイヤ」が共通している上,「ユ」と「エ」の文字の形が極めて類似していることから,その外観は酷似している。また,「ニ」「ワイヤ」が共通しているため,称呼としても酷似しており,また,アルファベット表記の場合も称呼が酷似している。したがって,原告表示と被告表示とは酷似している。
なお,両表示の類似性の判断に当たっては,商品等表示全体を不可分として判断すべきである。
また,商品等表示の一部が識別力を有しない普通名詞であるか否かは,当該表示を用いる商品等との関係に留意して判断されるべきところ,原告表示は,原告の省配線システムに係る製品に用いられ,これは「針金」「電線」等とは全く異なるものである。のみならず,原告表示が遅くとも周知性を獲得した平成12年ころ以前は,他の省配線システムに係る製品を製造,販売する企業の中で,自社製品の名称として「ワイヤ」「WIRE」ないし「Wire」の表示を用いた者は,ユニワイヤグループ以外にはなく(甲65,甲66の1ないし4),また,上記の平成12年ころには,需要者又は取引者(以下「需要者等」という。)は,「ワイヤ」「WIRE」の名称の付された省配線システム機器=(イコール)「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との印象ないし連想を抱くに至っていたのであるから,「ワイヤ」「WIRE」の部分には,むしろ,強い識別力が認められるというべきである。
(ウ) 混同行為 原告表示と被告表示とが酷似していること,原告表示は原告の商品等表示として需要者に広く知れ渡っていること,省配線システムの分野で原告が製造,販売するユニワイヤシステム製品(以下「原告製品」という。)と被告製品とは完全な競合関係にあること,被告会社がユニワイヤシステムとの互換性を強調したり,被告Bがユニワイヤシステムの生み親であることが省配線システム業界で周知されており,被告会社においてもそれを強調する営業販売活動を行っていること等の事情に照らせば,需要者等において,両製品の出所が同一であるか若しくは関連すると混同するおそれがある。
なお,省配線システムに係る取引の実情に照らせば,需要者等が,省配線システムを構成する製品の出所に特に高度の関心を有することはない。すなわち,エンドユーザーは,当初の生産設備等導入の場面では,生産設備等の製造業者に設備全体の発注を出し,これに基づき,上記製造業者が省配線システムを用いるか否かも含めた仕様を決定し,その製造,販売業者に対して省配線システムを構成する製品を発注するのが実情であるから,省配線システムに係る製品の出所につき,生産設備等の製造業者が相応の関心を有するということはできるとしても,エンドユーザーが特に高度の関心を有することはない。また,いったん生産設備等が納入された後は,省配線システムに係る製品は消耗品として取り扱われていることから(インターネット上でも販売されている。甲67の1ないし3),エンドユーザーは,生産設備等の製造業者を介さずに,直接,省配線システムに係る製造,販売業者にこれを発注し又は取替えの依頼をするのが普通であって,その出所についてまで特別高度の関心を持つことはない。
イ 不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否 (ア) 被告Bは,平成13年6月13日,日立製作所産業機器グループのD(以下「D」という。)を訪れ,同人に対し,「原告は,開発陣の大勢が抜けてしまって新製品の開発はおろか,既存の製品のサポートもできない状態にある。」などと悪意ある虚偽の風説を流布し,原告の営業上の信用を著しく毀損した。
(イ) 被告会社は,平成13年11月13日から4日間,東京国際展示場で開催された「システムコントロールフェア2001」に自社製品を出展したところ,被告B及び被告会社の被用者は,被告会社のブースを訪ねた来訪者に対し,「自社開発の全く新しい技術を採用している。」などと虚偽の説明をするとともに,原告製品と同一の伝送方式を用いているにもかかわらず,「全く異なった画期的な新しい伝送方式を用いている。」「原告製品と上位互換性を有する。」などと虚偽の説明をして,原告の営業上の信用を毀損した。
殊に,被告会社が展示した製品(AnyWire DBシリーズ)における全四重伝送方式は,既に原告においてα]システムとして開発されていた技術を用いたものであって,これを「自社開発」等と表現するのは虚偽である。
すなわち,原告の従来製品における伝送方式は,Hシステム(制御信号と監視信号のオン,オフを,伝送信号の立下り時及び立上がり時の電圧レベルによって識別する方式)であったところ,原告は,遅くとも平成11年8月3日までに,RXシステム(制御信号のオン,オフを伝送信号の立下り時のパルス幅を変えることによって,監視信号のオン,オフを伝送信号に高周波を重畳することによって識別する方式)を開発し(甲72の証拠資料1参照),さらに,平成13年3月9日付けの株式会社ハーモリンク(以下「ハーモリンク」という。)による特許出願(甲71)より前に,上記RXシステムとHシステムを組み合わせた全四重伝送方式を採用するα]システムの開発を完了していた(甲70の6頁(5)等)。しかるに,被告Bは,上記α]システムに係る技術を,被告会社での製品に用いる意図の下に,ハーモリンク代表取締役のE(以下「E」という。)と結託して,上記のとおり,α]システムに係る技術と同一の内容の特許出願(甲71)をするとともに,原告の技術者等を被告会社に移籍させるべく画策していたものである(甲63の1ないし6,甲68の1ないし17,甲69の1ないし8,甲74の1ないし6,C証人)。
ウ 原告の損害(不正競争防止法5条1項に基づく損害主張) (ア) 不正競争防止法5条1項にいう「被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物単位数量当たりの利益の額」とは,売上額から変動経費のみを控除したいわゆる限界利益を指すと解されるところ,原告のユニワイヤシステム関連製品の平均製品単価は8004円であり,限界利益率は49.0パーセントであることから,ユニワイヤ製品の1個当たりの限界利益は3921円(8004円×0.49)である。
(イ) 被告らが被告製品の販売開始時期であると主張する平成14年度の被告製品の売上高は約2億円であり,平成15年度の被告製品の売上高は2億3000万円を下らない。原告のユニワイヤシステム関連製品と被告製品とでは,製品単価がほぼ同一であると考えられることから,被告製品の製品単価も8000円程度と考えられる。したがって,被告製品の譲渡数量は平成14年度で2万5000個(2億円÷8000円/個),平成15年度で2万8750個(2億3000万円÷8000円/個)である。他方,原告のユニワイヤ製品の平成14年度の売上高は5億8902万5724円(工場出荷金額は5億5158万2489円)であるが,平成13年度の工場出荷金額は7億7692万2241円,平成12年度の工場出荷金額は18億2291万2062円であることから,原告には,被告製品の年間売上高である2億円又は2億3000万円程度を吸収するだけの製造販売能力がある。
(ウ) したがって,原告の損害額は,2億1075万3750円(3921円×(2万5000個+2万8750個))であるが,本件においてはその一部請求として,被告会社に対しては,不正競争防止法2条1項1号及び14号に基づき,1億円及びこれに対する平成13年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めるとともに,被告Bに対しては,同項14号に基づき,500万円及びこれに対する平成13年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払(同号に基づく500万円及びその遅延損害金の限度で連帯)を求める。
(2) 被告らの主張 ア 不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為の成否について (ア) 周知性について 「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商標は,黒田精工が有する商標権に基づくものであり,原告は,黒田精工からこれらの商標権の使用許諾を受けているにすぎない。そして,黒田精工は,ユニワイヤグループを構成する他の企業に対しても,それらの商標の使用を許諾していること,原告自身がユニワイヤシステムに関する新聞記事や雑誌への投稿において,「ユニワイヤは,黒田精工とNKEの共同開発であり,ユニワイヤは黒田精工の登録商標です。」との注釈を付していることに照らせば,上記商標は,黒田精工の商標であると広く認識されていたものである。したがって,これを用いた原告表示が,原告の商品等表示として周知であるとはいえない。
(イ) 類似性ないし混同行為 「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」と「エニイワイヤ」「AnyWire」とは商品等表示として類似しておらず,混同のおそれもない。不正競争防止法2条1項1号における商品等表示類似性の判断方法は,外観,称呼又は概念の類比を取引の実情の下で全体的に判断すべきであるところ,両表示には外観,称呼に相違点がある上,@省配線システムに係る製品の需要者等は,商品の内容を十分に吟味した上で,商品の購入を決定していること,A原告製品と被告製品とは全く開発コンセプトが異なるものであり,被告会社は,両者の商品の違いを強調して販売していることに照らせば,省配線システムに係る製品の需要者等が,被告製品と原告製品との出所が同一であると混同することはあり得ない。
なお,「エニイワイヤ」「AnyWire」はいずれも商標登録されているところ,その事実は,本件における類似性の判断においても十分に考慮すべきである。
原告は,原告表示のうち「ワイヤ」「WIRE」の部分にも強い識別力が認められるというべきである旨主張するが,ユニワイヤの名付け親である黒田精工の元代表取締役が,「単一の」「電線」をイメージして「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との表示を採用したものであると表明していることからしても,「ワイヤ」「WIRE」が「電線」の意味であることは明らかであり,当該部分には格別の識別力はないというべきである。
また,原告は,平成12年ころの時点では,需要者等が,「ワイヤ」WIRE」の名称の付された省配線システム機器=(イコール)「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との印象ないし連想を抱くに至っていた旨主張するが,主張のような事実は全くない。
さらに,原告は,省配線システムに係る取引の実情に照らせば,需要者等が,省配線システムを構成する製品の出所に特に高度の関心を有することはない旨主張するが,同取引において,生産設備等の製造業者やエンドユーザーは,最初にシステムを選定検討するときに高度の注意を払った上でシステムを選定するものであるし,その後は,選定した当該システムに合致する商品型式を発注するのが通常であるから,需要者等がその出所に特に関心を持たないなどということはあり得ない。
イ 不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否 (ア) 被告BがDに対し,「原告は,開発陣の大勢が抜けてしまって新製品の開発はおろか,既存の製品のサポートもできない状態にある。」と述べた事実はない。
(イ) 被告会社が「システムコントロールフェア2001」に出展したこと,被告Bないし被告会社の被用者が,被告会社のブースを訪れた来訪者に対し,被告製品について「自社開発の新しい技術を採用している。」「ユニワイヤとは全く異なった画期的な新しい伝送方式を用いている。」との説明をした事実は認めるが,原告主張のその余の事実は否認する。被告製品は,原告製品とは全く異なる画期的な新しい伝送方式を採用しており,上記説明の内容は虚偽ではない。また,被告Bや被告会社の被用者が,原告から窃取した技術情報を基に被告製品を開発した事実はない。
なお,被告会社は,上記フェアにおいては,既にコンセプトが完成していたAnyWire DBシリーズに係る非動作モデルを展示していたものであるが,AnyWire DBシリーズに採用された伝送方式は,原告主張のα]システムの技術をそっくりそのまま用いたものではなく,ハーモリンクの特許出願(甲71)に係る技術と被告会社等が特許出願した技術(制御・監視信号伝送システム。特願2001-131366,特願2001-346269)から構成された新開発の省配線システムであって,上記のような説明をしたことは何ら虚偽ではない。
ウ 損害 原告の主張は争う。
当裁判所の判断
1 本件を巡る事実経過について 前記第2の2の事実に加え,後記認定事実中に掲記した各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告Bが原告を退社する経緯等について ア 平成7年ころから,原告の電子事業部の経営方針について,原告代表者と被告Bの間で意見の相違が表面化した。その後,平成12年3月,原告の取締役会において,原告代表者から電子事業部の分離について提案されたことを契機に,原告の社内において具体的な検討が行われ,原告の電子事業部と黒田精工との合併,上記電子事業部について被告Bが引受人となるマネジメント・バイ・アウト(MBO)の実施等の案が検討されたが,実現には至らなかった。
なお,平成8年6月ころ,被告Bが,Eを顧問として招聘することを提案したことから,Eが代表取締役を務めるハーモリンクと原告との間で顧問契約が締結された。
(甲21,甲22,乙7,被告B本人) イ 原告は,平成13年2月,被告Bとの間で,原告が電子事業部を継続する一方,被告Bが同年3月末限りで原告の取締役を辞任する旨合意し,同月16日,被告Bが原告に対して辞任届を提出した。
なお,原告は,被告Bとの間で,被告Bが退社後も引き続き省配線システムの新市場開拓や新商品の開発に携わること,被告Bが原告の外部スタッフとして原告に協力する旨合意し,その後,その旨の案内状(乙1の1)を,原告と被告Bと連名で,原告の顧客に送付した。
(甲22,乙1の1・2,乙2,乙7,C証人,被告B本人) ウ 被告Bは,平成13年4月2日に被告会社を設立したが,その後,同年6月末までの間に原告の電子事業部から9名の被用者が退職し,被告会社に入社した。また,同年4月ころ,原告と被告Bとの間で,被告Bが原告の外部コンサルタントに就任するか否かが検討されていたが,結局,その旨のコンサルタント契約は締結されなかった。
(甲22,甲64,乙7,C証人,被告B本人) エ 被告会社は,平成13年11月に開催された「システムコントロールフェア2001」に出展したが,同フェアにおいて,被告Bないし被告会社の被用者が,被告会社のブースを訪れた顧客に対し,被告製品について,「自社開発の新しい技術を採用している。」「ユニワイヤとは全く異なった画期的な新しい伝送方式を用いている。」との趣旨の説明を行った。その後,被告会社は,平成14年5月27日から被告製品の販売を開始した。
(甲61,乙7,乙10,乙15,C証人,被告B本人,弁論の全趣旨) (2) 原告製品と被告製品との異同 ア 省配線システムに用いられるシリアル多重伝送技術の一方式に半二重伝送方式がある。半二重伝送方式は従前から用いられている技術であり,一つのクロック波形に1種類の電気信号を重畳させ,2本の電線で接続した機器の上位側と下位側とで交互に電気信号の伝送を行うものであり,平成13年3月当時原告が製造,販売していた製品(Hシリーズ)に係る伝送方式もこの半二重伝送方式を採用していた。他方,被告製品(AnyWire DBシリーズ)においては,全四重伝送方式と称される伝送方式が採用されていた。全四重伝送方式とは,一つのクロック波形に4種類の電気信号を重畳させ,2本の電線で接続した機器の上位側と下位側で同時に電気信号の伝送を行うものであり,これにより,ビットバスと称される1ビット(点)単位で電気信号を伝達する系統とワードバスと称される16ビット(点)単位で電気信号を伝達する系統の2系統を混載させた形での電気信号の伝送を可能とするとともに,半二重伝送方式に比較して,伝送速度を向上させつつ同時に多数の電気信号を伝送することを可能にしている。被告会社は,ハーモリンクが特許出願(甲71)している技術について使用許諾を受け,これに被告会社の独自技術を組み合わせるなどして新たな伝送方式を開発した。
(甲6ないし甲8,甲17,甲71,乙3,乙5ないし乙10,被告B本人) イ 原告製品と被告製品との互換関係は,以下のとおりである。
すなわち,ユニワイヤシステムの親局(マスターユニット)で省配線システムを構成している場合,被告製品の子局(スレーブユニット)を使用することはできない。他方,ユニワイヤシステムの親局を被告製品の親局に取り替えた場合,被告製品のみで省配線システムを構成した場合に比べ性能は限定されるものの,従前使用していたユニワイヤシステムの子局を引き続き使用することができ,かつ,ユニワイヤシステムの製品のみで構成した場合より高速に電気信号の伝送が可能となる。被告会社は,全三重伝送方式と称される方法により,上記の互換関係を被告製品に与えており,このような互換関係について,「原告製品との上位互換性がある」旨表示して,販売活動を行った。
(甲7,甲8,甲17,甲23,乙5,乙7ないし乙10,乙15,C証人,被告B本人) ウ なお,原告は,被告製品(AnyWire DBシリーズ)の採用する伝送方式は,被告会社が開発したものではなく,原告において,原告の従来製品等の伝送方式であったHシステムとRXシステムとを組み合せて開発したα]システムに係る技術を用いたものにすぎないなどと主張し,上記主張に沿う証拠(甲24,甲70ないし甲73,C証人)を提出しているが,これらの証拠によっても,上記α]システムに係る技術の開発の詳細な経過や同技術に係る権利の帰属,被告製品の伝送方式の基となった前記ハーモリンクの特許出願(甲71)よりも前にα]システムに係る技術が開発されていたこと,被告製品の伝送方式に係る技術が上記α]システムの技術と同一であること(そもそも,被告製品の伝送方式に係る技術についてすら,概要はともかく,その詳細な内容は本件証拠上明らかでないといわざるを得ない。)等の立証が十分であるとはいいがたく,他に上記原告主張の事実を認めるに足りる証拠はないから,上記原告の主張は採用することができない。
(3) 原告の販売活動について ア 原告は,昭和63年以降,原告表示を使用して,以下の広告宣伝活動を行ってきた。
(ア) 原告は,遅くとも平成9年ころから平成12年末までの間,「日刊工業新聞」「電波新聞」「オートメレビュー」等産業機械系メーカーや商社等を購読者層とした業界紙に,ユニワイヤシステムに関する広告ないし記事を掲載し,広告宣伝活動を行ってきた。
なお,これらの業界紙の中に,原告について「省配線システムのパイオニア」(甲27の1),「ユニワイヤ・グループの黒田精工,吉田電機工業で販売活動を展開」(甲29の1)等の記載がされている。
(甲26の1・2,甲27の1,甲29の1ないし12,甲50,甲51,甲53) (イ) 原告は,遅くとも平成7年から平成12年末までの間,「IPG」「新製品情報」「日工フォーラム」「Bell」「メカトロニクス」「EPD」「COSMO Card」等産業機械系メーカー,生産財購入者,技術者等を購読者層とした雑誌,情報誌にユニワイヤシステムの広告ないし関連製品情報を掲載してきた。
(甲30の1ないし32,甲31の1ないし25,甲32の1ないし3,甲33の1ないし11,甲34の1ないし10,甲37の1,甲38の1ないし6,甲54) (ウ) 原告は,昭和63年から平成12年末までの間,自社でユニワイヤシステムのカタログを作成し,これを展示会や個別の営業活動で配布していた。
(甲39の1ないし9) (エ) 原告は,遅くとも平成9年1月には,ユニワイヤシステム関連情報及び広告宣伝を自社ウェブサイト上にアップロードして,全国の需要者がユニワイヤシステムの広告宣伝ないし関連製品情報を視認することを可能な状態にした。
(甲33の2) (オ) 平成5年10月,平成7年11月,平成9年10月及び平成11年10月,省配線システムの需要者の来場も見込まれる展示会である「システムコントロールフェア」が開催されたところ,原告は,同展示会にユニワイヤシステムを出展して,広告宣伝活動を行った。上記展示会の各回の来場者数はそれぞれ延べ6万人ないし11万人程度であった。
また,平成11年12月及び平成12年12月に,省配線システムの需要者の来場も見込まれる展示会である「セミコン・ジャパン99」「セミコン・ジャパン2000」が開催されたところ,原告は,同フェアに参加して広告宣伝活動を行った。「セミコン・ジャパン99」の来場者数は約11万3000人,「セミコン・ジャパン2000」の来場者数は約12万1000人であった。
(甲40の1ないし3,甲41の1・2,甲57の1・2,甲58の1・2,甲60) イ 平成8年度から平成12年度までの,原告の電子商品部の工場出荷金額は,9億8188万1108円(平成10年度)から18億2291万2062円(平成12年度)の間で推移している。
なお,平成13年度は7億7692万2241円,平成14年度は5億5158万2489円である。
(甲42) ウ 株式会社富士経済が実施した調査では,平成13年度の省配線システムの市場規模は約23億9000万円であり,ユニワイヤグループのシェアは47.3パーセント,原告単体でのシェアは12.6パーセントとされている。同じく平成14年度の市場規模は約24億8000万円であり,ユニワイヤグループのシェアは36.6パーセント,原告のシェアが15.3パーセントとされている。なお,上記調査によれば,平成12年度の省配線システムの市場規模は約39億5000万円である。
(甲43の1・2) 2 争点に対する判断 (1) 不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為の成否について ア 周知性について (ア) 前記1で認定した事実,殊に,@原告が,昭和63年以降,原告表示を使用して継続的に販売活動を行っていること,A原告が,遅くとも平成7年以降,各種業界紙,雑誌等においてユニワイヤシステムに関する広告宣伝を行うとともに,省配線システムの需要者が来場することが見込まれる展示会に出展するなどして,継続的に広告宣伝活動を行っていること,B平成13年度当時,省配線システムに係る製品全体に占める,ユニワイヤグループや原告のシェアが相当程度を占めており,これらの事実と前記1認定の省配線システムの市場規模の推移や原告の工場出荷額の推移等を総合すると,平成12年末においても原告を含むユニワイヤグループのシェアが少なくとも同程度であったと推認されることに照らせば,遅くとも平成12年末ころには,「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商品等表示は,全国の省配線システムの需要者の間で,少なくとも,原告を含めたユニワイヤグループに係る製品の商品等表示として広く認識され,周知の商品等表示になっていたこと,また,原告が同グループの中核企業の一つとしての地位を占めることが認識されていたものと認めることができる。
(イ) これに対し,被告らは,黒田精工が「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」の商標権者であり,原告は黒田精工からその使用許諾を受けていたにすぎないことや,黒田精工がユニワイヤグループを構成する他の会社に対してもこれらの商標の使用を許諾していたことを根拠に,これを用いた原告表示が,原告の商品等表示として周知であったとはいえず,不正競争防止法2条1項1号は適用されないと主張する。
しかしながら,不正競争防止法2条1項1号にいう「他人」には,当該商品等表示について商標権を有する者のみならず,その使用許諾権者と使用権者とのグループのように,当該商品等表示の持つ出所識別機能,品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的の下に結束していると評価できるようなグループも含まれるものと解するのが相当である。そして,前記1の認定事実に照らせば,ユニワイヤグループは,「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商品等表示出所識別機能,品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的の下に結束していると評価でき,かつ,原告も同グループの中核企業の一つとして認識されていたものであるから,原告も不正競争防止法2条1項1号の「他人」に該当し,その保護の対象となると解するべきである。したがって,この点に関する被告らの主張は採用できない。
類似性ないし混同行為について (ア) ある商品等表示が不正競争防止法2条1項1号所定の他人の商品等表示類似のものに当たるか否かについては,取引の実情の下において,需要者等が両表示の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両表示を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断すべきである。
本件についてみるに,原告表示を含む「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商品等表示と被告表示とは,確かに「ワイヤ」や「WIRE」ないし「Wire」の部分は同一ではあるが,「ワイヤ」や「WIRE」ないし「Wire」は「針金,電線,楽器の弦」を指す普通名詞であるから,それ自体が格別の識別力を有することはなく,識別力を有するのは,主として,上記商品等表示における「ユニ」「UNI」と被告表示における「エニイ」「Any」の部分であると認められる。そして,上記商品等表示と被告表示とは,「ユニ」と「エニイ」との部分が異なり,また,その字数及び音数も異なることから,両商品等表示の全体的な外観,称呼からみて,需要者類似のものとして受け取るおそれがあるとはいえない。また,前記1認定のとおり省配線システムの需要者は産業機械を導入するメーカー等であることに照らせば,一般消費者向けの商品に比較して,これらの需要者は,省配線システムの維持,管理に高い関心を有し,省配線システム関連製品の出所について高度の注意を払うのが通常であると推認されることに照らし,原告製品と被告製品の商品等表示を観察した場合,両商品等表示類似のものとして受け取るおそれがあるとはいえない。したがって,原告表示を含む「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との商品等表示と被告表示との間に類似性があるとはいえない。
(イ) これに対し,原告は,被告製品と原告製品との混同が生じている例があると主張し,この主張に沿う証拠(甲22,甲44ないし甲46,甲47の1・2)を提出する。確かに,上記各証拠によれば,複数の企業が被告製品を原告に誤って発注した事実は認められるが,これをもって直ちに被告製品の商品等表示が,その出所につき一般的に混同を生じさせるおそれがあると断言することはできない。したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。
また,原告は,@被告Bが被告会社で原告のユニワイヤ製品と競合する製品を扱うことを秘した上で退職した,A被告Bが当初原告・被告B間で予定されていた外部スタッフ就任を拒否した,B被告B及び被告会社が,原告に在籍していた被用者を被告会社に多数引き抜いた,といった事実主張を基に,被告B及び被告会社は,原告のユニワイヤシステムに係る事業を乗っ取るとの意図を有しており,上記意図の下で,原告のユニワイヤシステムに係る顧客を引き継ぎ,原告の事業との連続性を維持するために,あえて原告の商品等表示類似し,混同のおそれがある商品等表示を用いたと主張する。
確かに,証拠(甲63の1ないし6,甲68の1ないし17,甲69の1ないし8,甲74の1ないし6,C証人,被告B本人)によれば,平成13年2月から3月にかけて,被告Bが,原告の顧客を自身が新たに設立する新会社(被告会社)の顧客とする計画を立て,被告Bの計画に賛同した者とその実施方法を協議していた事実,被告Bが被告会社で原告のユニワイヤ製品と競合する製品を扱うことを原告に秘していた等の事実は認められるが,上記各証拠によっても,被告会社において,原告の事業との連続性を維持するため,ことさらに,原告製品と類似混同のおそれがある商品等表示を,被告製品の商品等表示として採用した事実までは認められず,他にこのような事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。
(ウ) さらに,原告は,原告表示のうち「ワイヤ」「WIRE」の部分にも強い識別力が認められる旨主張するが,省配線システムに係る製品の需要者等は,同システムが各機器間の配線(電線)数を減少させるためのシステムであることから,「ワイヤ」「WIRE」を「電線」を意味するものとして受け取ることは明らかであり,そうである以上,当該部分には格別の識別力はないというべきであって,この点の原告の主張は採用できない。
また,原告は,平成12年ころの時点では,需要者等が,「ワイヤ」WIRE」の名称の付された省配線システム機器=(イコール)「ユニワイヤ」「UNI-WIRE」との印象,連想を抱くに至っていたとも主張するが,これを認めるに足りる証拠はないし,原告は,ほかにも,省配線システムに係る取引の実情に照らし,その需要者等が,同システムを構成する製品の出所に特に高度の関心を有することはないなどと主張しているが,省配線システムを導入するエンドユーザー等にとって,同システムでつながれた機器が支障なく作動することが最大の関心事であると考えられることからすると,特定の省配線システムを導入した後に当該システムを構成する製品の一部を取り替える必要が生じた場合には,なるべくは,当初の製品と同一ないし互換性が完全に保証された製品を選択しようとするのが通常であると考えられることからすれば,需要者等がその出所に特に関心を持たないなどということは考えられず,この点の原告の主張も採用することができない。
ウ 以上のとおりであるから,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に関する原告の主張は理由がない。
(2) 不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の成否について ア 原告は,被告Bが,Dに対し,「エヌケーイーは,開発陣の大勢が抜けてしまって新製品の開発はおろか,既存の製品のサポートもできない状態にある」などと事実でない悪意ある風説を流布したと主張し,上記主張に沿う証拠(甲22,甲61,C証人)を提出する。しかしながら,これらの証拠は被告Bの発言を直接聞いたとの内容ではない上,仮にDが被告Bから原告のサポート体制について何らかの話を聞いていたとしても,当時,ユニワイヤシステムの開発に従事する原告の被用者が数名退職していることは事実だったのであるから,上記各証拠のみをもって,被告Bが原告のサポート体制についてことさらに虚偽の風説をDに伝達したとは即断できない。したがって,上記各証拠によって被告BからDに対し,虚偽の悪意ある風説を流布したと認めることはできず,他に上記原告の主張事実を認めるに足りる証拠はない。
イ 次に,原告は,「システムコントロールフェア2001」において,被告B及び被告会社の被用者が,被告会社のブースを訪れた来訪者に対し,被告製品について「自社開発の全く新しい技術を採用している。」「全く異なった画期的な新しい伝送方式を用いている。」「ユニワイヤとの上位互換性を有する。」と虚偽の説明をして(被告Bらが上記のような説明をしたこと自体は当事者間に争いがない。),原告の営業上の信用を毀損したと主張し,上記主張に沿う証拠(甲61,C証人)を提出する。
しかし,不正競争防止法2条1項14号でいう「虚偽の事実」とは,競争関係にある他人の営業上の信用を害する事実を指すところ,被告Bらは,他人の製品についてではなく,被告会社自身の製品について上記のような説明をしたものにとどまるから,これをもって直ちに競争関係にある他人の営業上の信用を害する行為と評価できるかは疑問であるのみならず,その点をおくとしても,前記のとおり,被告製品(AnyWire DBシリーズ)の採用する伝送方式が被告会社が自社で開発したものではないとまで認めるに足りる証拠がない以上,上記のように,被告Bらがこれを「自社開発」である等の表現をしたことをもって,直ちに虚偽の事実を告知又は流布したものと認めることもできない。
また,前記認定のとおり,当時ユニワイヤシステムにおいて採用されていた半二重伝送方式等と,被告製品に採用された全四重伝送方式とでは,電気信号の伝送速度,同時に伝送することのできる電気信号の種類や量において顕著な相違があるのであるから,被告会社において,自社製品に使用されている技術が画期的な新しい技術である旨説明しても虚偽とはいえない。
さらに,原告製品と被告製品とは上記1(2)イにおいて認定したような互換関係があるのであるから,上位互換性があるとの表現が虚偽であるともいうこともできない。
したがって,被告Bないし被告会社の被用者において上記のような表現を用いて販売活動を行ったとしても,これをもって不正競争行為ということはできない。
ウ したがって,不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為に関する原告の主張も理由がない。
3 その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,当審の認定,判断を左右するほどのものはない。
結論
以上の次第で,原告の本件請求は,いずれも理由がないからこれを棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
(平成17年3月3日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 中村心
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