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事件 平成 10年 (ワ) 10052号 不正競争行為等差止等請求事件
原告 松下電工株式会社右代表者代表取締役 A右訴訟代理人弁護士 小松陽一郎
同 池下利男 右補佐人弁理士 B
同 C
被告 ソーゴトレイディング株式会社右代表者代表取締役 D
被告 有限会社大黒産業右代表者取締役 E右被告ら訴訟代理人弁護士 筒井 豊右補佐人弁理士 F
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1999/12/14
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告ソーゴトレイディング株式会社は、原告に対し、金一六四五万九八七二円及びこれに対する平成一〇年九月二九日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告に対し、連帯して金三七九万二〇〇四円及びこれに対する被告ソーゴトレイディング株式会社については平成一〇年九月二九日から、被告有限会社大黒産業については平成一〇年一〇月二日から、それぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、原告と被告ソーゴトレイディング株式会社の間の生じたものについては、これを二分し、その一を被告ソーゴトレイディング株式会社の負担とし、その余を原告の負担とし、原告と被告有限会社大黒産業との間に生じたものについては、これを二〇分し、その三を被告有限会社大黒産業の負担とし、その余を原告の負担とする。
五 この判決の主文第一、第二項については、仮に執行できる。
事実及び理由
請求
一 被告ソーゴトレイディング株式会社は、原告に対し、金一九八八万八一八七円及びこれに対する平成一〇年九月二九日(訴状送達の日の翌日)から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告に対し、連帯して金二四八九万七〇〇四円及びこれに対する被告ソーゴトレイディング株式会社については平成一〇年九月二九日から、被告有限会社大黒産業については平成一〇年一〇月二日(前同)から、それぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、原告が、被告らに対し、被告らが販売していた窓拭き器の形態は、
原告の商品表示として需要者広く認識されている原告の製造、販売にかかる窓拭き器の形態と類似し、誤認混同を生じさせるとして、不正競争防止法2条1項1号4条に基づいて、損害賠償を請求している事案である。
一 当事者間に争いのない事実 1 原告は、別紙目録一の部品と同目録二の部品を落下防止ひもで連結できるように組み合わせた窓拭き器(以下「原告製品」という。)を「ウラピカ」という商品名で製造、販売している。
2 原告製品の形態は、遅くとも平成九年一〇月までに、需要者の間に広く認識され、出所表示機能を有するものとなり、周知性を獲得した。
3 被告ソーゴトレイディング株式会社(以下「被告ソーゴトレイディング」という。)は、平成九年一一月ころから、別紙目録三の部品と同目録四の部品を落下防止ひもで連結できるように組み合わせた窓拭き器(以下「イ号物件」という。)を、また、平成一〇年一月ころから、同目録五の部品と同目録六の部品を落下防止ひもで連結できるように組み合わせた窓拭き器(以下「ロ号物件」という。)を販売してきた。
被告有限会社大黒産業(以下「被告大黒産業」という。)は、被告ソーゴトレイディングと共謀して、平成一〇年一月ころから、ロ号物件を販売してきた。
4 イ号物件の形態も、ロ号物件の形態も、原告製品の形態と同一又は類似しており、被告らは、右販売行為によって、少なくとも過失により不正競争を行い、
原告の営業上の利益侵害した。
二 争点 原告の損害額 【原告の主張】 1 イ号物件について (一) 被告ソーゴトレイディングが販売したイ号物件の売上総額は、一億一六二二万一八二五円である。
(二) 被告ソーゴトレイディングが右販売に要した費用は、次の(1)ないし(6)の合計九六三三万三六三八円である。
(1) 被告大黒産業からの仕入額(返品分控除後)五四四四万九〇一〇円 (2) 株式会社東和からの仕入額 一七九八万六七九八円 (3) 貸し倒れ損失(対サンビジョン) 一五五五万五七五〇円 (4) 売掛債権放棄 二八〇万〇〇〇〇円 (5) 出荷運賃倉庫料 四二六万一八四八円 (6) 組立・移動費用 一二八万〇二三二円 (三) したがって、被告ソーゴトレイディングがイ号物件の販売により得た利益額は、一九八八万八一八七円であり、右金額は、不正競争防止法5条1項により、原告の損害と推定される。
2 ロ号物件について (一) 被告ソーゴトレイディングが販売したロ号物件の売上総額は、五六三七万三九七五円である。
(二) 被告ソーゴトレイディングが右販売に要した費用は、次の(1)ないし(5)の合計三一四七万六九七一円である。
(1) 被告大黒産業からの仕入額(値引後) 二一〇〇万四二〇〇円 (2) 知多コピー外二社からの仕入額 七八八万五四五一円 (3) 貸し倒れ損失(対サンビジョン) 七一万八二〇〇円 (4) 出荷運賃倉庫料 一三三万三八七二円 (5) 組立・移動費用 五三万五二四八円 (三) したがって、被告ソーゴトレイディングがロ号物件の販売により得た利益額は、二四八九万七〇〇四円であり、右金額は、不正競争防止法5条1項により、原告の損害と推定される。
【被告らの主張】 1 イ号物件について (一) イ号物件の売上総額が一億一六二二万一八二五円であることは認める。
(二) イ号物件の販売に要した費用は、貸し倒れ損失一五五五万五七五〇円、売掛債権放棄二八〇万円は認める。その余の費用は、原告主張の金額を上回るから、争う。
2 ロ号物件について (一) ロ号物件の売上総額は三五二六万八九七五円であり、その限度で認める。
(二) ロ号物件の販売に要した費用については、被告ソーゴトレイディングの被告大黒産業からの仕入額が二一〇〇万四二〇〇円であること、知多コピー外二社からの仕入額が七八八万五四五一円であること、貸し倒れ損失が七一万八二〇〇円であることは認める。その余の費用は、原告主張の金額を上回るから、争う。
争点に対する当裁判所の判断
一 イ号物件について 1 被告ソーゴトレイディングのイ号物件の売上総額が一億一六二二万一八二五円であることは、当事者間に争いがない。
2 当事者間に争いのない事実と後掲各証拠によれば、被告ソーゴトレイディングが右販売に要した費用は、次の(一)ないし(六)の合計九九七六万一九五三円であると認められる。
(一) 仕入額(対被告大黒産業について) 五六〇一万〇一五〇円 (1) 証拠(乙2の1ないし10)によれば、被告ソーゴトレイディングが被告大黒産業からイ号物件を仕入れた際の仕入額は、一億〇三二六万〇一五〇円であると認められる。
右仕入額に関し、甲4の2(原告補佐人Bの報告書)には、被告ソーゴトレイディングは、イ号物件の代金のうち、一万四八六八台分の消費税相当額である一五六万一一四〇円を被告大黒産業に対して支払っていない旨の記載がある。
そこで、この点について検討すると、右記載が指摘するところは、乙2の4(被告ソーゴトレイディングの支払明細書)の平成九年一二月二二日分として計上されている「窓ふき名人」八四台及び一万四七八四台の合計一万四八六八台にかかる消費税相当額についてであると考えられるが、これは、その日付及び数量からロ号物件の仕入れについての記載であると認められ、かつ、右消費税相当額は、右支払明細書と締め切り日が同一であり、その体裁から続葉と認められる乙2の5に【税別仕入額】との表記のもとに計上されている一五六万八六四〇円の一部(一五六万一一四〇円)として、被告大黒産業に支払われているものと認められる。したがって、
右報告書の記載は、前記イ号物件の売上総額について結論を左右するものではない。
(2) そして、証拠(甲4の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、被告ソーゴトレイディングは、イ号物件三万台を被告大黒産業に対して返品したことにより、イ号物件の仕入額から一台当たり一五〇〇円の三万台分、合計四七二五万円(消費税を含む)を減額する旨の合意をしたことが認められる。なお、証拠(乙2の10、3の1ないし6)によれば、この返品された三万台のイ号物件については、
後述の原告がイ号物件を保管していた倉庫に保管され続け、被告ソーゴトレイディングと被告大黒産業との間でイ号物件の取引についての最終的な経理的処理がされた平成一〇年八月一〇日付で、被告大黒産業の仕入れ元である亜細亜貿易株式会社に直接返品されているものと認められる。したがって、右返品処理された三万台については、被告ソーゴトレイディングの不正競争行為(譲渡行為)に供されたものとは認められないから、以下の販売に要した費用の算定においては、これを考慮しないこととする。
(3) そうすると、結局、被告ソーゴトレイディングが被告大黒産業からイ号物件を仕入れるために要した費用は、一億〇三二六万〇一五〇円から、返品された三万台分の四七二五万円を控除した、五六〇一万〇一五〇円であると認められる。
(二) 仕入額(対株式会社東和について) 一九八五万三九七三円 証拠(甲4の1、乙4の1ないし9)によれば、被告ソーゴトレイディングが株式会社東和からイ号物件の付属品を仕入れた際の仕入額は、一九八五万三九七三円であると認められる。
この点、甲6(株式会社東和代理人の意見書)には、同社の被告ソーゴトレイディングに対する売上げは一七九八万六七九八円である旨記載されているが、本件全証拠によっても、右意見書に記載されている金額の根拠となる資料は存しないから、これを採用することはできない。
(三) 貸し倒れ損失(対サンビジョン) 一五五五万五七五〇円 イ号物件の販売に関し、被告ソーゴトレイディングのサンビジョンに対する貸し倒れ損失額が一五五五万五七五〇円であり、これがイ号物件の販売に要した費用であることは、当事者間に争いがない。
(四) 売掛債権放棄額 二八〇万円 イ号物件の販売に関し、被告ソーゴトレイディングの売掛債権放棄額が二八〇万円であり、これがイ号物件の販売に要した費用であることは、当事者間に争いがない。
(五) 出荷運賃倉庫料 四二六万一八四八円 (1) 倉庫料について @ 証拠(乙3の5、6)によれば、被告ソーゴトレイディングがイ号物件を保管していたのは、アヤハ運輸倉庫株式会社であると認められる。
A 証拠(甲7)によれば、アヤハ運輸倉庫株式会社における保管料は、一坪一か月当たり四〇〇〇円であることが認められる。
B 前掲甲4の2には、イ号物件の保管に要する倉庫の広さの算定について、イ号物件を積載したパレットを、一坪当たり二パレット二段積み(一坪当たり四パレット)として、一パレット当たり二八〇台(一坪当たり一一二〇台)保管することができる旨の記載があるので、右算定の合理性について検討する。
右算定においては、〇・五坪(一万六五〇〇平方センチメートル)の大きさのパレット一枚に、イ号物件を二八〇台収納する計算となる。仮に、一枚のパレット上に、イ号物件を一層四〇台七段積みで積載するとすれば、イ号物件一台当たり四一二・五平方センチメートル(一万六五〇〇/四〇)の面積が確保されることになる。これを、弁論の全趣旨により認められるイ号物件の用途(手で持ち上げて操作する窓拭き器)から想定される大きさに照らして検討すると、包装等による体積の増大を考慮に入れたとしても、イ号物件の保管のための充分な広さが確保されるものと認められる(例えば三〇センチメートル×一三・七五センチメートル)。そうすると、イ号物件を一坪当たり一一二〇台保管することができるとすることは、合理性を有するものと認められる。
C そこで、これに基づいて、イ号物件の保管に要した費用を算定すると、証拠(乙2の1ないし10)によれば、被告ソーゴトレイディングは、イ号物件を三万五五六二台(返品された三万台を除く)仕入れたことが認められる。右仕入れ台数を、一坪に収納できる一一二〇台で除した上で、これに一坪一か月当たりの保管料である四〇〇〇円を乗じると、イ号物件の一か月当たりの保管料は、一二万七〇〇七円であると認めることができる。
そして、証拠(乙2の1ないし10、乙3の1ないし6)によれば、
被告ソーゴトレイディングは、平成九年一〇月四日ころからイ号物件の取引(仕入)を開始し、遅くとも平成一〇年八月初めころまでには、その販売を中止したものと認められるから、被告ソーゴトレイディングがイ号物件を取り扱った期間における保管料は、一か月当たりの保管料一二万七〇〇七円に保管を要した期間である一〇か月を乗じた一二七万〇〇七〇円を上回ることはないものと認めるのが相当である。
(2) 出荷費用について 証拠(甲4の1)によれば、被告ソーゴトレイディングのイ号物件の販売先及び販売数量の状況を見ると、「角田無線」に対して七二八〇台、「富士パックス」に対して七六六〇台、「サンワ電業」に対して一三七五台、「サンビジョン」に対して四六一〇台、「バンドール」に対して一万〇一六〇台、その他の取引先に対して一八九〇台等であることが認められる。そうすると、前記認定のとおりのイ号物件の取引期間(約一〇か月)をも考慮すれば、被告ソーゴトレイディングの取引先に対するイ号物件の出荷は、数百台ないし数千台の単位で、一括して大量に発送したものと認めるのが相当である。
ところで、本件全証拠によっても、被告ソーゴトレイディングがイ号物件を出荷した際の発送先(取引先の所在地)、発送単位重量及び単位当たりの運送料金を、直接的に明確にする資料は存しない。そこで検討するに、証拠(甲8)によれば、原告が運送契約を締結している業者における運送料金は、一一キログラムから三〇キログラムまでの荷物を、イ号物件の保管場所であるアヤハ運輸倉庫株式会社の住所地である滋賀県(甲7、乙3の5、3の6)から関西地区に発送した場合には、荷物一個当たり五四〇円であり、同様に関東地区に発送した場合には荷物一個当たり七二〇円であることが認められる。そして、証拠(甲4の2)及び弁論の全趣旨によれば、イ号物件の重量は、一個当たり一キログラム内外であると認められるから、被告ソーゴトレイディングがイ号物件を出荷するに際して負担した運賃は、原告が運送契約を締結している業者を利用して、三〇キログラム(三〇台)単位で、イ号物件の需要者が多いと考えられる関西地区及び関東地区に発送した場合に要する費用を参考にして認定判断するのが相当である(なお、前記のとおり、被告ソーゴトレイディングによるイ号物件の発送は、数百台ないし数千台を一括発送したと考えられるから、その出荷に要した費用は右算定よりも少額になるとも考え得るが、少なくとも、三〇台単位で発送した場合の運送費用を上回ることはないと考えられる。)。
そこで、イ号物件の出荷に要した費用を算定すると、仕入総数である三万五五六二台を、すべて関西地区に発送したと仮定した場合、発送単位である三〇台で除した上で、発送単価五四〇円を乗じると、六四万〇一一六円となり、また、すべて関東地区に発送したと仮定した場合、発送単価を七二〇円として同様に算定すると、八五万三四八八円となる。
右の仮定に基づく運送費用の算定の結果を総合して、被告ソーゴトレイディングがイ号物件の販売に要した出荷運賃を判断すれば、これを最大に見積もったとしても、八五万三四八八円を上回ることはないものと認めるのが相当である。
(3) そうすると、イ号物件について、被告ソーゴトレイディングが要した出荷運賃倉庫料は、倉庫料一二七万〇〇七〇円に最大に見積もった場合の出荷運賃八五万三四八八円を加算しても二一二万三五五八円となり、少なくとも、原告が認める四二六万一八四八円を上回ることがないものと認められる。
(六) 組立費用 一二八万〇二三二円 証拠(甲9)によれば、原告における原告製品の組立費用は、一台当たり三六円であることが認められる。
被告ソーゴトレイディングが、右金額を超えて組立費用を要したと認めるに足りる証拠はないから、被告がイ号物件について要した組立費用は、三万五五六二台に三六円を乗じた一二八万〇二三二円と認めるのが相当である。
(七) 甲4の1(被告ソーゴトレイディング代表者作成のイ号物件についての収支計算書)には、被告ソーゴトレイディングが、株式会社東和に対し、名義借り料として四九四万六二五〇円を支払った旨の記載がある。
そこでこの点についても検討しておくと、証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば、被告ソーゴトレイディングは、イ号物件に販売元として株式会社東和の名称を表記することの対価として、同社に対し、名義借り料二五〇万円を支払ったことが認められる。しかし、被告ソーゴトレイディングが、株式会社東和に対し、名義借り料として右を上回る金員の支払をしたと認めるに足りる証拠はない。
そして、証拠(乙4の5、4の7)によれば、右の株式会社東和に対する名義借り料二五〇万円は、被告ソーゴトレイディングの株式会社東和からの仕入額中に、イ号物件一台当たり五〇円、五万台分について、手数料として既に計上されているものと認められる。
3 よって、被告ソーゴトレイディングがイ号物件の販売により得た利益は、
売上総額一億一六二二万一八二五円から、その販売に要した費用九九七六万一九五三円を控除した、一六四五万九八七二円であると認められる。
不正競争防止法5条1項により、右被告ソーゴトレイディングの利益額は、原告の損害と推定される。
二 ロ号物件について 1 被告ソーゴトレイディングのロ号物件の売上総額は、三五二六万八九七五円の限度で当事者間に争いがなく、右金額を超えて、被告ソーゴトレイディングがロ号物件を販売したと認めるに足りる証拠はない。
甲5の2(原告補佐人B作成の報告書)には、甲5の1(被告ソーゴトレイディング代表者作成のロ号物件についての収支計算書)において、被告ソーゴトレイディングが販売したロ号物件のうち、一万〇〇五〇台が一台当たり一六〇〇円で販売された旨記載されていることについて、他のロ号物件の販売価格(三六五〇円から三八〇〇円)と比較して低額にすぎ、これらは少なくとも一台三六〇〇円で販売されたと見るべきである旨の記載がある。しかし、このロ号物件一万〇〇五〇台について、一台当たり三六〇〇円で販売されたと認めるに足りる証拠はなく、かえって、本訴提起が平成一〇年九月二二日であるのに対し、甲5の1の作成日付が平成一一年四月一二日であることを考えると、ロ号物件について廉価処分をした可能性も否定できず、右一万〇〇五〇台について、一台当たり三六〇〇円で販売されたと認めることはできない。
2 当事者間に争いのない事実と後掲各証拠によれば、被告ソーゴトレイディングがロ号物件の販売に要した費用は、次の(一)ないし(五)の合計三一四七万六九七一円であると認められる。
(一) 仕入額(対被告大黒産業について) 二一〇〇万四二〇〇円 ロ号物件にかかる被告ソーゴトレイディングの被告大黒産業からの仕入額が二一〇〇万四二〇〇円であることは、当事者間に争いがない。
(二) 仕入額(対知多コピー外二社について) 七八八万五四五一円 ロ号物件にかかる知多コピー外二社からの仕入額が七八八万五四五一円であることは、当事者間に争いがない。
(三) 貸し倒れ損失(対サンビジョン) 七一万八二〇〇円 被告ソーゴトレイディングは、サンビジョンに対するロ号物件の販売について、貸し倒れ損失として七一万八二〇〇円を負担したこと、右金員がロ号物件の販売に要した費用であることは、当事者間に争いがない。
(四) 出荷運賃倉庫料 一三三万三八七二円 (1) 倉庫料について @ 証拠(乙3の5、6)及び弁論の全趣旨によれば、被告ソーゴトレイディングがロ号物件を保管していたのは、アヤハ運輸倉庫株式会社であると認められる。
そして、前記1(五)(1)で認定判断したとおり、アヤハ運輸倉庫における保管料は一坪一か月当たり四〇〇〇円であり、また、イ号物件とロ号物件の形態はほぼ同一であるから、一パレットにつき二八〇台を乗せて一坪に二段組四パレット(一一二〇台)を収納して保管できるとする保管料の算定方法は、合理性を有するものということができる。
A 証拠(甲5の2、乙2の4)によれば、被告ソーゴトレイディングが仕入れたロ号物件の台数は一万四八六八台であると認められる。そこで、右仕入台数を一坪に収納できる一一二〇台で除して、一坪一か月当たりの保管料である四〇〇〇円を乗じてロ号物件の保管に要した費用を算定すると、ロ号物件の保管に要した費用は、一か月当たり五万三一〇〇円であると認められる。
B 被告ソーゴトレイディングがロ号物件の販売を開始したのは平成一〇年一月ころであることは当事者間に争いがなく、証拠(甲5の1)及び弁論の全趣旨によれば、被告ソーゴトレイディングは、遅くとも平成一一年四月ころには、
ロ号物件の販売を中止したものと認められるから、ロ号物件の販売期間は、最も長くとも一五か月を上回ることはないものと認められる。
そこで、ロ号物件を一か月保管するために要する倉庫料五万三一〇〇円に、保管期間である一五か月を乗じて、被告ソーゴトレイディングがロ号物件の保管に要した費用を算定すると、最大でも七九万六五〇〇円を上回ることはないものと認められる。
(2) 出荷運賃について 証拠(甲5の1)によれば、被告ソーゴトレイディングのロ号物件の販売先及び販売数量の状況を見ると、「角田無線」に対して一三〇台、「サンビジョン」に対して一八〇台、「バンドール」に対して四〇〇〇台、「大和無線」に対して三一〇台、その他の取引先に対して一万〇〇五〇台であることが認められる。
そうすると、被告ソーゴトレイディングのロ号物件の販売は、前記のイ号物件の場合と比較すると、一取引に対する販売数量は相対的に少ないということができるが、なお、その販売期間(最大で一五か月程度)をも併せ考慮すれば、
取引先に対して数十台ないし数百台を一括して出荷発送したと認めるのが相当であり、したがって、その出荷運賃を算定するに際しては、イ号物件における出荷運賃の算定方法と同様の方法を採用することは合理的であると認められる。
そこで、イ号物件と同様にロ号物件の出荷運賃を算定すると、すべて関西地区に発送されたと仮定して試算した場合、仕入総数である一万四八六八台を発送単位である三〇台で除した上で、発送単価五四〇円を乗じて二六万七六二四円となり、また、すべて関東地区に発送されたと仮定して試算した場合、発送単価を七二〇円として同様に計算すると三五万六八三二円となる。
これらを総合して検討すると、ロ号物件の販売において、被告ソーゴトレイディングが要した費用は、多く見積もったとしても、三五万六八三二円を上回ることはないものと認めるのが相当である。
(3) そうすると、右算定に基づく倉庫料七九万六五〇〇円に、最大に見積もった運送費用三五万六八三二円を加算しても一一五万三三三二円であるから、被告らがロ号物件の販売のために要した出荷運賃倉庫料は、原告が認める一三三万三八七二円を上回ることはないものと認められる。
(五) 組立費用 五三万五二四八円 前記認定のとおり、原告が原告製品の組立に要した費用は一台当たり三六円であるところ、被告ソーゴトレイディングがロ号物件の組立に、右金額を上回る費用を要したと認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告ソーゴトレイディングがロ号物件の組立に要した費用は、一万四八六八台に三六円を乗じた、五三万五二四八円であると認めるのが相当である。
(六) 前掲甲5の1には、被告ソーゴトレイディングが、株式会社東和に対し、ロ号物件の販売手数料として七〇万〇五〇〇円を支払った旨の記載があるが、
本件全証拠によっても、株式会社東和が、ロ号物件の販売に関与していたと認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告ソーゴトレイディングが、ロ号物件の販売について、
販売手数料を費用として要したとは認められない。
3 よって、被告ソーゴトレイディングがロ号物件の販売により得た利益は、
売上総額三五二六万八九七五円から、その販売に要した費用三一四七万六九七一円を控除した、三七九万二〇〇四円であると認められる。
不正競争防止法5条1項により、右被告ソーゴトレイディングの利益額は、被告ソーゴトレイディングがロ号物件を販売したことにより原告が被った損害の額と推定される。
三 結論 よって、原告の請求は、主文第一、第二項の限度で理由がある。
(平成一一年一一月四日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 渡部勇次
裁判官 水上周