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関連ワード 周知性 /  広く認識 /  需要者 /  顧客層 /  商品等表示 /  他人の商品 /  類似性(類似) /  外観 /  観念 /  印象 /  記憶 /  混同のおそれ(混同) /  表示の使用 /  先使用 /  誤認混同 /  不正の目的(不正競争の目的) /  差止請求(差止) /  営業上の利益 /  デザイン /  侵害 /  競業関係 /  識別力 /  混同のおそれ(混同) /  品質等誤認表示(誤認) /  推定 / 
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事件 平成 7年 (ワ) 2409号
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裁判所 京都地方裁判所
判決言渡日 1996/09/05
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告は、「京都コトブキ」の営業表示を使用してはならない。
2 被告は、包装その他の印刷物から「京都コトブキ」の表示を抹消せよ。
3 被告は京都地方法務局平成二年四月二日受付をもってなされた「株式会社京都コトブキ」の商号登記の抹消登記手続をせよ。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 1、2につき仮執行の宣言二 請求の趣旨に対する答弁主文同旨
当事者の主張
一 請求原因1 原告会社の沿革 原告は、昭和四二年一〇月二三日に、営業目的を菓子、パン、冷菓等の製造、加工及び販売等として設立された会社である。
原告の沿革は、昭和二二年三月に創立者【A】が神戸市<以下略>において、
「寿本舗」として創業した店舗に始まる。その後、寿本舗は、昭和二四年一一月九日に株式会社(株式会社寿本舗)となり、昭和四六年四月一日には商号を「株式会社お菓子のコトブキ」に変更した。
そして、原告は、昭和五七年八月に、株式会社お菓子のコトブキの営業全部を譲り受け、現在に至っている。
2 原告の営業表示及びその周知性(一) 原告の商号は、株式会社コンフェクショナリーコトブキであるが、営業表示としては、原告の前身会社である寿本舗の時代から、単に片仮名表記の「コトブキ」を使用しており、また他からも、「コトブキ」と称されてきた。なお、「コンフェクショナリー」の用語は、「菓子商」を意味する識別力のない用語であり、原告の商号の要部は「コトブキ」である。
(二) 株式会社寿本舗は、昭和四三年四月から、既存の特約店販売網を再編してフランチャイズシステムを採用し、商号を「株式会社お菓子のコトブキ」に変更した昭和四六年には、フランチャイズ店は、近畿地区を中心に二〇〇店を数え、また、この年京都地区に進出し、翌四七年には京都における店舗数は一二店になった。
その後、昭和四八年三月には関東地区に進出し、前記営業譲渡が行われた昭和五七年までに、中部地区、東海地区などにも営業展開をした。
そして、平成に入ると、原告の店舗数は関東、関西を中核として約五〇〇店舗となり、さらに平成三年一〇月には国際事業部を設立し、中国の北京、上海、天津等にも進出した。
(三) 原告は、昭和四三年ころから活発な宣伝活動を開始し、原告がこれに費やした費用は、同年当時約三億円であったが、以後増加の一途をたどっている。具体的にはテレビ、ラジオ、雑誌といった宣伝媒体を通じた宣伝、戸別訪問、イメージタレントを起用した全国各地のフランチャイズ店でのサイン会等の地域に根ざした宣伝、及び業界紙への広告掲載による業界向けの宣伝等である。
(四) その結果、前記(二)のフランチャイズ店販売網と相まって、原告の営業表示である「コトブキ」は、遅くとも昭和四六年ころまでには、全国的に需要者の間に広く認識されるところとなり、京都地区においても、同年ころには広く認識されるに至った。
3 被告の営業表示 被告は、平成二年四月二日、本店を京都市<以下略>、商号を「株式会社京都コトブキ」、営業目的を観光土産品の販売及び観光土産店の経営等として設立されたものであるが、現在、その本店所在地において、看板に「京都コトブキ」という営業表示を掲げて使用し、その販売にかかる菓子の包装に「京都コトブキ」の営業表示を使用し、また「株式会社京都コトブキ」の商号を使用している。
4 営業表示の類似性 原告の営業表示は、前記のとおり「コトブキ」である。
そして、被告の営業表示(営業表示としての商号を含む。以下同様)の「京都コトブキ」のうち、「京都」は単に地名であっていわゆる識別力のない部分であり、
その要部は「コトブキ」であるので、原告と被告の各営業表示はその要部が同一であって、両者は類似している。
5 混同のおそれの存在 原告の営業表示である「コトブキ」は、前記2のとおり極めて高い周知性を有していること、原告と被告の各営業表示は前記4のとおり極めて類似すること、原告と被告は共に菓子類を販売しており競業関係にあること、原告は菓子類の製造販売業者として、経営の多角化を図っており、将来的には、被告と同様に観光土産菓子を販売し、また、被告と同様に観光ホテル等での販売をしないというわけではないことなどからすると、被告が、菓子類を「京都コトブキ」の営業表示を用いて販売することは、原告または原告の子会社と何らかの関係のある営業主体の営業であると混同されるおそれがあるのみならず、商品の出所が同一ではないかと混同されるおそれがある。また、現に混同の事例も生じている。
なお、被告は、被告の営業表示は、包装箱の表面に貼付された「責任票」にしか記載されておらず、その表示も小さく、認知されることは希であるなどと主張するが、賞味期限を確認するのはむしろ消費者の常識であり、混同を生じる恐れを否定する事情とはいえない。
6 営業上の利益侵害されるおそれの存在 被告がその営業表示を使用することが、原告の営業活動と被告の営業活動とを混同させるものであることは、前記5のとおりであり、このため原告が営業上の利益侵害されるおそれのあることは明らかである。
7 よって、原告は、被告に対し、不正競争防止法2条1項1号に基づき、被告の営業表示の差止、被告商品の包装等の印刷物からの被告の営業表示の抹消及び被告の商号登記の抹消登記手続をそれぞれ求める。
二 請求原因に対する認否1 請求原因1の事実は不知。
2(一) 同2(一)の事実は否認する。
原告または原告の前身会社が使用してきた営業表示は、「お菓子のコトブキ」、
「CONFECTIONERY KOTOBUKI」、「コンフェクショナリーコトブキ」、「おいしさ、愛。<32059-001>コトブキ」等であって、これらの構成要素の一部である「コトブキ」は単独では、営業表示として機能していないというべきである。
(二) 同2(二)、(三)の各事実は不知。
(三) 同2(四)の事実は否認する。
昭和四六年当時、京都地区において原告のフランチャイズ店が一二店あったとしても、京都府の人口(平成六年統計で二五四万人)からすれば、原告の営業表示が一般顧客の間で周知であったことの根拠にはならない。
3 同3のうち、被告会社が、原告主張のとおり設立されたことは認める。
「株式会社京都コトブキ」の表示は、被告商品の包装箱裏面右下部分に貼付された小さな「責任票」の下欄に発売元として記載されているだけである。したがって、
商品が陳列された状態では、顧客の目に留まることはなく、通常顧客が、商品を裏返して右責任票を見た上で商品を購入するということはない。
4 同4の事実は否認する。
(一) 原告の営業表示は、前記2(一)のとおり、「お菓子のコトブキ」、「CONFECTIONERY KOTOBUKI」、「コンフェクショナリーコトブキ」、「おいしさ、愛。<32059-001>コトブキ」等であって、「コトブキ」単独では営業表示として機能しておらず、普通名詞の寿(ことぶき)の片仮名またはローマ字表記である「コトブキ」または「KOTOBUKI」の部分のみでは識別力は弱く、その他の部分と一体としてみるべきであるところ、これらの各営業表示と、被告の商号である「京都コトブキ」を比較すると、外観、称呼、観念のいずれの点からしても到底類似しているとはいえない。
(二) 被告の商号のうち、「京都」は地名であるから識別力に欠けるというのは妥当でない。被告は、「京都」の部分と「コトブキ」の部分を区別することなく、
同じ大きさの同一形態の文字で一体的に表記しているのであるから、その外観、称呼、観念は「京都コトブキ」を一体として考察する必要がある。そうすると、仮に原告の営業表示が「コトブキ」であるとしても、「京都コトブキ」とは外観、称呼、観念のいずれの点からも類似しているとはいえない。
5 同5の事実は否認する。
原告と被告の販売商品、販売場所、販売方法は、次のとおりそれぞれ全く異なっており、原告の商品と被告の商品が混同されるおそれはなく、その営業主体が混同されるおそれもない。
(一) 販売商品の相違 販売商品としては、原告の販売商品が洋菓子(九四パーセント)、和生菓子(六パーセント)であるのに対し、被告のそれは、
観光土産菓子であって和菓子が主体であり、和生菓子はほとんど販売していない。
(二) 販売場所の相違 販売場所としては、原告はフランチャイズ店もしくは直営店で販売しているのに対し、被告は観光地の土産販売店、ホテル、旅館の売店、キヨスク、ドライブイン売店で販売している。
(三) 販売方法の相違 販売方法としては、原告は「お菓子のコトブキ」あるいは「CONFECTIONERY KOTOBUKI」と店舗名として大きく表示された洋風店舗(洋菓子専門店)において販売しており、顧客は原告の店舗であることを認知した上で原告商品を購入している。また、顧客は、もっぱら通勤、通学途中の勤労者、学生及び買物目的の主婦等である。一方、被告は、その商品を販売店の販売台に陳列し、当該観光地にちなんだ土産菓子としての商標で購入方をアピールし、商品見本を提示し、試食の機会を提供するなどしている。また、前記のとおり「京都コトブキ」の表示は商品の包装箱の裏面に記載してあるので、顧客は商品が被告のものであることはほとんど認識せずに購入している。
したがって、一般消費者が原告及び被告の商品を混同し、あるいはその営業主体を混同するおそれはない。また、原告の取引業者は、もっぱらフランチャイズ店またはこれになろうとする者であり、被告の取引業者は、販売店(ホテル、土産物店等)もしくは販売店になろうとする者であるから、これらの取引業者が原告と被告の営業主体を混同するおそれがないことは明らかである。
6 同6の事実は争う。
三 抗弁(先使用の抗弁) 被告は、昭和二七年四月二五日、商号を壽製菓株式会社、本店を鳥取県米子市<以下略>として設立された会社の子会社である。
昭和三四年ころから壽製菓株式会社は観光土産菓子の製造・販売を手がけるようになり、これらの商品の販売は全国各地に設立した被告を含む子会社らが行っている。ちなみに、京都地区には、昭和三五年ころから、約二五の販売店舗があった。
被告は平成二年四月二日に壽製菓株式会社の子会社として設立されたものであって、親会社の「寿」を訓読みした「ことぶき」の片仮名表示である「コトブキ」をその商号の一部に使用したものであり、不正競争防止法11条1項3号の「他人の商品等表示需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一若しくは類似商品等表示を使用するもの又は商品等表示に係る業務を承継した者」に該当する。
壽製菓株式会社及び被告は、不正競争の目的なく「コトブキ」という表示を使用しているものである。
四 抗弁に対する認否 否認する。
被告の主張は、自らの営業表示の使用の主張ではなく、親会社である壽製菓株式会社の先使用の主張であるので、理由がない。
被告は、その営業表示を被告の親会社である壽製菓株式会社から承継したというが、被告の親会社が使用していた営業表示は、「壽製菓株式会社」ないし「壽製菓」であり、右営業表示は被告の営業表示である「京都コトブキ」とは同一性を欠くものである。
また、原告の営業表示である「コトブキ」は、昭和四六年当時から周知だったのであるから、同年以降、壽製菓株式会社が相次いで子会社に「コトブキ」の名を使用しているのは、不正競争の目的があるといえる。
証拠(省略)
理 由一 原告の沿革について 証拠(甲一、三ないし八、一七、二一、証人【B】)によれば、次の事実が認められる。
1 寿本舗時代(一) 原告の現相談役である【A】は、昭和二二年三月、神戸市<以下略>に、
寿本舗を創業した。その後、寿本舗は、昭和二四年に株式会社に組織変更し、商号を「株式会社寿本舗」とした(以下、組織変更前の寿本舗及び株式会社寿本舗をあわせて「寿本舗」という)。
(二) 寿本舗の当初の資本金は一〇〇万円であったが、その後、同社は、資本金を昭和二六年に一八〇万円、同二八年に二七〇万円、同三〇年に八〇〇万円、同四〇年に八四〇〇万円に増資している。
(三) 寿本舗は、特約店販売網による販売方法を採用していたところ、特約店の数は、昭和三二年は一五店舗であったものが、次第に増加して大阪、兵庫の都市を中心に同四三年には一五〇店舗になった。
(四) 寿本舗の当初の売上げは、和菓子七五パーセント、アイスクリームを含む洋菓子が二五パーセントであったが、その後、食生活の洋風化に伴い、洋菓子を中心とする商品構成への転換を図り、その一環として、既存の特約店販売網を再編し、昭和四三年四月、フランチャイズシステムを正式採用した。
(五) その結果、寿本舗の年商は、昭和四一年に約一四億五〇〇〇万円、同四二年に約一八億六〇〇〇万円であったものが、同四四年には約二八億六〇〇〇万円と増加し、右販売網の再編は成果を見せた。
2 お菓子のコトブキ時代(一) 寿本舗は、昭和四六年四月、商号を「株式会社お菓子のコトブキ」に変更した(以下「(株)お菓子のコトブキ」という)。
(二) (株)お菓子のコトブキは、昭和四六年には近畿地区を中心にフランチャイズ・チェーン店(以下「店舗」ともいう)約二〇〇店を有していたが、昭和四八年三月に東京地区、同五四年九月に中部地区、同五五年一〇月に東海地区にそれぞれ進出している。
(三) 京都地区へは昭和四六年に進出したが、同四七年には京都地区における店舗数は一二店舗となり、現在では約二四店舗となっている。
(四) (株)お菓子のコトブキは、昭和五七年度には、資本金が七億〇五六〇万円に増資されている。
3 コンフェクショナリーコトブキ時代(一) 原告は、昭和四二年一〇月二三日に、菓子、パン、冷菓等の製造、加工及び販売、レストラン、喫茶店の経営等を目的として設立された株式会社であるが、
昭和五七年八月に(株)お菓子のコトブキの営業全部を譲り受けた(その結果、
(株)お菓子のコトブキは、平成三年九月に、商号を「株式会社コトブキホールディング」と変更したが、同社は何ら営業活動はしておらず、いわゆる持株会社として機能しているにすぎない)。
(二) 原告は、その後も順調に業績を伸ばし、平成三年には国際事業部を設立して中国やベトナムへも進出し、年商も平成四年度には二一五億円に達するに至っている。
(三) また、現在、原告の店舗数は関西、関東を中心に約五三〇店舗となっており、販売内容としては洋菓子約八五パーセント、
和菓子約一五パーセントである。
二 原告の営業表示及びその周知性について1 営業表示の使用状況 証拠(甲三ないし一二、一四、一六、証人【B】)によれば、次の事実が認められる。
(一) 前記認定のとおり、寿本舗、(株)お菓子のコトブキ及び原告は、いずれも主に特約店あるいはフランチャイズ・チェーン店による販売活動をしたきたものであるが、寿本舗時代の販売店の看板等には、「寿本舗」という表示とともに「KOTOBUKI CONFECTIONERY」または「洋菓子のコトブキ」(「コトブキ」の文字は、別紙1と同様に太字でやや丸みを帯びた字体であり、
「洋菓子の」は、別紙1の「お菓子の」と同様に、「コトブキ」の文字に比べると、これといった特徴もなく文字も小さい。)あるいは「コトブキ」(字体は別紙1と同様)等の表示が付され、また、配送用のトラックの車体の側面には、「寿本舗」の表示の上に、「お菓子のコトブキ」(別紙1のとおり)の表示が付されている。
(二) (株)お菓子のコトブキ時代になると、ピンクとオレンジと白を共通カラーとする一定のモデュールの店舗が見られ、その看板には「お菓子のコトブキ」(全体としては、別紙2のとおりであり、「コトブキ」の文字は、別紙1よりもさらに丸みを帯びた太字になっている。また、「お菓子の」と「コトブキ」の間に「KO」の字をイメージしたと考えられるマークが描かれているが、このマークは、「お菓子のコトブキ」の文字の上、あるいはその文字とは別に表示されている場合もある。)という表示が付されるようになった。また、当時の配送用トラックの車体の側面には、店と同様「お菓子のコトブキ」(別紙2)の表示が付されていた。
(三) そして、原告(コンフェクショナリーコトブキ)の時代になると、(株)お菓子のコトブキ時代のピンクとオレンジと白を共通カラーとしたモデュールの店舗の他にも、店舗のスペース、立地条件及び周囲の環境等に合わせた形態の販売店が登場するようになった(原告は、これらの販売店を「都市型」と「郊外型」に分けている)。そして、これらの販売店の看板には、
「CONFECTIONERY KOTOBUKI」(全体としては別紙3のとおりであり、「KOTOBUKI」の文字の方が大きく描かれている。)、「コンフェクショナリーコトブキ」(やや丸みのある文字で、「コトブキ」の文字は大きく書かれている。)、「コトブキ」(字体は別紙4のとおりであり、別紙1や2に比べると字も細くなり、特徴のないものとなっている。また、その左横にケーキをイメージした<32059-001>のマークが表示されている。)、あるいは「おいしさ、愛。コトブキ」(全体としては別紙5のとおりであるが、「コトブキ」の字体は別紙4とほぼ同じであり、「おいしさ、愛。」の部分は、「コトブキ」の表示よりも小さな字で表示されている。また文字の左横に<32059-001>のマークが表示されている。)といった表示が付されている。
(四) また、いずれの時代においても、その会社案内(フランチャイズ・チェーン店勧誘用のパンフレットを含む)には、原告を「コトブキ」、または原告のフランチャイズ・チェーン店を「コトブキ(の)FC店」とする表現が頻繁に使用されている。
(五) さらに、昭和四六年一〇月には日本経済新聞に、昭和四九年ころには雑誌「近代経営」に、それぞれ原告を「コトブキ」と称した記事が掲載され、昭和四五年から同四六年ころの菓子業界の業界紙「製菓時報」は、原告を「コトブキ」、または原告のフランチャイズ・チェーンを「コトブキ・チェーン」と称して記事を掲載している。
2 宣伝活動等 証拠(甲三ないし一七、証人【B】)によれば、次の事実が認められる。
(一) 原告は、フランチャイズシステムを採用した昭和四三年ころから、宣伝費を多額に費やして宣伝活動を行うようになった。
原告の宣伝活動の方法としては、テレビ(関西テレビ、朝日放送、毎日放送、読売テレビ、近畿テレビ)、ラジオ(ラジオ関西、朝日放送、ラジオ大阪)、新聞(神戸新聞、朝日新聞、京都新聞、いずれも単発出稿)、雑誌(週刊読売、主婦と生活、ノンノン、アンアン等)、新規開店する店の周辺の市町村へのチラシ、タレントによるサイン会などであった。
昭和四三年当時、これらの宣伝に要した費用は、約三億円であり、その後も増加の一途をたどっている。
(二) 原告は、フランチャイズシステムの採用及びその急速な展開により、菓子業界の中でも注目される存在であった。特に、昭和四六年に、京都を地元とする株式会社タカラブネとの間で、タカラブネの販売店が原告とフランチャイズ契約を締結したことから訴訟となり、このことは京都新聞等により大きく報じられた。
(三) また、原告は、昭和四七年六月から一〇月まで、京都進出の一周年記念としてプレゼントセールを行い、そのころ京都新聞に、当時の一二店舗の場所等も記載したそのセールの広告を掲載した。
3 原告の営業表示と周知性(一) 右の事実を前提に、原告の営業表示とその周知性について検討するに、原告は、片仮名表記の「コトブキ」が自己の営業表示であり、右営業表示が京都地区はもとより全国的にも周知されていると主張し、被告は、「コトブキ」は、普通名詞でありそれのみでは識別力は弱く、したがって、「お菓子の」、「コンフェクショナリー」等の言葉等と結合することによって初めて識別力が生ずると主張している。
確かに「コトブキ」という言葉自体は、寿(ことぶき)すなわち「めでたいこと」などを意味する普通名詞であり、その言葉自体の識別力はさほど強いものではない。
(二) しかしながら、前記1のとおり、原告は、長年にわたり「コトブキ」単独の表示、または「洋菓子の」、「お菓子の」、「コンフェクショナリー」、あるいは「おいしさ、愛。」の文字またはケーキをイメージしたマークを付けた「コトブキ」を営業に使用してきたところ、「コトブキ」にこれらの言葉を付して看板等に表示する場合にも、「コトブキ」の部分を引き立たせるように表示の大きさ及び字体が工夫されていること、これらの表示のうち「洋菓子の」、「お菓子の」、「コンフェクショナリー」等の部分は、単に原告の営業内容の説明等にすぎず、それ字体で特に識別機能を有するものではないこと、「コトブキ」以外にどのような表示を使用するかは、時代の違いとともに、各店舗によっても違いがみられ、その立地条件または外観等によって使い分けられていること、会社案内においても原告は自己を「コトブキ」とする記述を頻繁に使用しており、新聞、雑誌等でも原告は「コトブキ」と称されていることがそれぞれ認められる。
(三) さらに、前記の2のとおり、原告は、昭和四三年ころから積極的に宣伝活動を展開してきたことが認められるところ、右の宣伝の例として「お菓子の」を付した「コトブキ」(「お菓子のコトブキ」の字体等は、別紙1とほぼ同じ)の表示をテレビ、新聞、雑誌、チラシによる宣伝にも使用していることも認められる(甲六、一七)。
(四) そうすると、「コトブキ」の表示は、寿本舗の時代から、多少の字体等の変動はあるものの、常に、看板等に掲げられ、あるいは宣伝活動に使用されてきた営業表示の要部をなすものと認めるのが相当である。
(五) これらの事実に、前記一の京都への進出を含めた原告のこれまでの発展状況を総合すると、遅くとも昭和四六、七年ころには、京都において、「コトブキ」を要部とする原告の営業表示は、菓子業界に属する営業主体としては原告を示すもの、すなわち、原告の営業表示として、周知であったと認めることができる。
なお、前記1のとおり、原告は「CONFECTIONERY KOTOBUKI」等のローマ字表記の表示も使用していることが認められるが、これらは「コトブキ」の営業表示と併用していると認められるから、右認定を左右するものではない(甲三)。もっとも、右のようなローマ字表記や前記の付加された文字やマークは、顧客誘因性の強いフランチャイズ・チェーンの看板などにほとんど例外なく使用されており、その使用状況をも考慮すれば、需要者において一体として印象づけられ記憶される側面も否定できないのであり、被告の営業表示との混同を検討するにあたっては留意されなければならない。ちなみに、原告自身、「コトブキ」ブランド(甲三)と称したり、ブランドを「コンフェクショナリーコトブキ」(甲五)と表示したりしている。
三 被告の営業表示について 被告は、本店所在地において看板に「京都コトブキ」の営業表示を掲げて使用し、その販売にかかる菓子の包装に(株式会社)「京都コトブキ」の営業表示を使用していることが認められる(甲二、一八ないし二〇、検甲一及び二、検乙五ないし七、一一及び一二、一七及び一八)。
四 両者の営業表示の類似性について そこで、「コトブキ」を要部とする原告の営業表示と被告の営業表示である(株式会社)「京都コトブキ」とを比較すると、被告の営業表示のうち、地名を表示する「京都」の部分は、右営業表示が使用された結果広く認識されるに至った等の特別の事情がない限り、「コトブキ」という部分に比して注意を引くことは少ないといえるところ、そのような特別の事情は認められない(商号のうち、「株式会社」は、単に会社の種類を表すのみである)。そうすると、「京都コトブキ」の要部は「コトブキ」であり、これは原告の営業表示の要部と同一である。
したがって、両表示を現実の使用状況と離れて、それ自体において比較する限り、両者は、全体としてみても、外観、称呼のいずれの点からも類似性を有すると認めることができる。
混同を生ずるおそれについて1 原告商品の販売形態等 原告の商品構成、販売形態は、先にもみてきたところであるが、さらに、証拠(甲三、五、六、証人【B】)によれば、以下の事実も認められる。
(一) 原告は、そのフランチャイズ・チェーンの勧誘パンフレット(甲六)にも記載されているように、一流菓子店としての個性と特色を強く打ち出し、スーパーでは買えない独自の魅力を持った商品の開発を目指しており、高級化志向に対応して、「味」のファッション化を志向するなど、販売商品の大半を占めるショートケーキやデコレーションケーキなどの洋菓子を中心に、お菓子の味と品質の高さを売り物にし、その商品の箱や包装などにも高級感のあるものを使用している(甲五)。
(二) 原告は、昭和四三年にフランチャイズシステムを採用して以来、フランチャイズ・チェーン店の拡大に取り組み、それによって業績を拡大してきたものであり、その商品の販売は、一部の直営店やショッピングセンター等の売り場を除けば、主として、フランチャイズ・チェーン店で行われている(証人【B】は、スーパー、コンビニエンスストア、ドライブイン等でも販売しているかのような供述をしているが、具体性に乏しく、仮にあっても極めてわずかと考えられる)。
(三) そして、原告のフランチャイズ・チェーン店は、前記のような商品志向に合わせ、主婦や若い女性の顧客層に向けて、しゃれたセンスで定評のある洋菓子専門店といったイメージを目指し、店内は白を基調とした洗練された統一的なデザインの下に、スペース、立地条件、周囲の環境に応じて、都市型、郊外型などに分け、専門家がより意匠をこらしたハイグレードな店舗デザインをし、ショッピングセンター内の店舗についても、コンパクトで効率のよい設計をすることを方針としている(甲三、五)。
(四) これらの点においては、「コンフェクショナリーコトブキ」、「CONFECTIONERY KOTOBUKI」(別紙3)、「コトブキ」(別紙4)といった表示が掲げられ、原告の店であることが一目で分かるようになっている(甲三、五、六)2 被告商品及びその販売形態等 証拠(甲一八ないし二〇、検乙一ないし二九、証人【C】)によれば、以下のような状況が認められる。
(一) 被告の商品は、観光土産菓子であり、饅頭等の和菓子が中心である。そして、商品の入った箱もその商品に合わせた模様や観光地をあしらった図柄模様の包装紙で包まれ、その表に観光地名を使った「京都の名菓 栗づくし」「京都名菓 抹茶の詩」「名菓 京都 もみじ饅頭」といった商品名が表示されている。
(二) 被告は、主にホテルの売店、観光地の土産物店、JR駅構内のキヨスクなどにおいて、販売活動を行っており、直営店での販売はされていない。そして、それらの販売店において、被告の商品は、特別に被告の販売コーナーなどを設けることなく、他社の土産品等と共に陳列台に積み上げて並べられ、一番上にガラス見本を乗せて、商品がどういう内容の菓子であるかが分かるようにし、店によっては試食ができるようにしている。
(三) 被告商品には、包装された箱の裏面または側面の責任票に一文字の大きさが約三ミリないし四ミリ四方で(株式会社)「京都コトブキ」と記載されている以外には、陳列コーナーにも商品にも被告の商品表示は示されていない。そのため、
当該商品が被告のものであることは一見して分からない状態にある。
(四) したがって、観光客が大半を占めるといえる顧客は、商品名を見て、または、ガラス見本を見て、あるいは試食をして、商品を選択することが多いと推定される。
3 前記1、2で認定した事実を比較してみると、商品構成においては、原告商品は洋菓子が大半であり、その包装等も高級感のあるものが使用されているのに対し、被告商品は、観光土産の和菓子でありその包装等もそれにふさわしいものであること、販売場所及び販売方法等においても、原告は、主に女性客を中心に、高級洋菓子店というイメージを目指して造られている原告商品の専門店において、原告の商品であること、すなわち「コトブキ」ないしは「コンフェクショナリーコトブキ」ブランドとして販売する方法をとるのに対し、被告は、観光ホテルや土産物店においてその観光地にちなんだ商品名や商品の見本等により販売し、被告商品であることが一見して分からないような販売方法をとっているなど、両者の商品構成、
販売場所、販売方法には、顕著な違いが認められる。
4 しかるところ、原告は、現実に混同の事例が生じている旨主張し、原告の社員である証人【B】は、その友人が、JR構内で販売されている被告商品を購入した際、被告商品の包装に付されている被告の営業表示を見て、当該商品を原告商品だと思い、原告商品がJR構内でも販売されているかどうかについて、原告に問い合わせがあった、同様のことを他の社員からも聞いた旨の供述をしている。
しかし、同人の証言には裏付けとなるものがないばかりか、供述内容自体においても、当該の友人がなぜそのような問い合わせをしてきたのかなどあいまいな部分もあり、直ちに混同事例が存在したと認定するには不十分である。
5 しかも、左記のように、被告の親会社である壽製菓株式会社は、原告がフランチャイズ・チェーン店を展開しているのと同一地域に、「コトブキ」を要部とする子会社を設立している(甲三、検乙二〇)。
記〔原告の地域〕 〔被告の子会社〕 兵庫県 株式会社コトブキ香寿庵 西宮市 昭和五五年設立 三重県 株式会社三重コトブキ製菓 鳥羽市 昭和五七年設立 岡山県 株式会社瀬戸内コトブキ 岡山市 昭和六二年設立 奈良県 株式会社奈良コトブキ 大和郡山市 昭和六三年設立 愛知県 株式会社東海コトブキ 名古屋市 平成元年設立 仮に、【B】の前記証言を採用するとしても、京都地区以外にもこれだけ多くの地域に「コトブキ」の名称を冠した被告と同様の営業形態と推定される会社が存在するのに、【B】が説明する程度の混同事例しかないというのは、かえって奇異というべきである。そればかりか、証人【C】及び同【B】の各証言によれば、一般消費者から原告あるいは被告に対し、購入した被告商品が原告商品であるという認識の下での問い合わせ、あるいは苦情が寄せられたという事実はないと認めることができ、他に混同が生じていることをうかがわせる事情も認められない。
6 先に判断したように、原告と被告の営業表示は、その要部がまったく同一であり、営業表示全体の比較においても、その類似性は高いのに、右のような実情にあることは、前記のとおり、両者の商品構成、販売場所、販売方法に顕著な相違があることに起因するものと考えられる。
そして、以上のような状況の下においては、被告がその営業表示を使用することにより、一般消費者が原告と被告を同一営業主体または両者間に親会社、子会社の関係もしくは関連会社などの関係が存するものと誤認混同させているともそのおそれがあるとも認めることはできず、まして、取引業者が右のように誤認混同するおそれがあるとは認めがたいといわざるをえない。
なお、原告は、原告が菓子類の製造販売業者として、経営の多角化を図っており、将来的にも観光土産菓子を販売したり、またホテルや旅館において販売したりしないというわけでもなく、他方、被告が将来土産菓子以外の菓子を販売しないという絶対的な保証もないとして、混同のおそれがないとはいえないと主張する。しかし、証人【B】の証言によっても、原告が将来土産菓子を販売するかどうか、ホテルや旅館において菓子を販売するかどうかは、現在具体的な計画となっているとは認められず、また、被告が将来土産菓子以外の菓子を販売することを認めるべき証拠もない。したがって、原告の右主張は仮定的事実を前提とするものであって、
この仮定的事実から前記のような混同のおそれがあるものと認めることはできない。
六 以上の次第であるから、その余の点につき判断するまでもなく、被告がその営業表示の(株式会社)「京都コトブキ」を使用することが、不正競争防止法上の不正競争行為に該当すると認めることはできず、原告の本訴請求はいずれも理由がないというべきである。
よって、原告の請求はいずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 井垣敏生
裁判官 松本利幸
裁判官 本田敦子
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