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関連ワード 商標登録 /  普通名称 /  呼称 /  一般名称(一般的名称) /  特別顕著性 /  代表者 /  品質等誤認表示(誤認) / 
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事件 昭和 61年 (ネ) 200号
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裁判所 福岡高等裁判所 宮崎支部
判決言渡日 1987/09/07
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
全容
控訴人は、「一 原判決を取消す。二 被控訴人らは、その製造または販売にかかる食酢につき、「くろず」、「黒酢」、及び「くろ酢」、その他「くろず」、
「黒酢」、及び「くろ酢」を付加して表示する商標を使用し、またはこれを使用した食酢を販売拡布もしくは輸出してはならない。三 被控訴人らの占有する「くろず」、「黒酢」、及び「くろ酢」、その他「くろず」、「黒酢」、及び「くろ酢」を付加して表示する商標、及びこれらの商標を使用した看板、標識、容器、包装紙、印刷物の占有を解いて、申請人の委任する執行官にこれが保管を命ずる。四 右執行官はその保管にかかる看板、標識、容器、包装紙、印刷物につき、被控訴人らが前項の各商標を抹消削除する旨申し出たときはこれを許し、当該物件に対する保管を解くことができる。五 前二項の場合において執行官は、その保管にかかることを公示するため適当な方法をとらねばならない。六 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、主文同旨の判決を求めた。
当事者の主張は、当審における左記主張・反論を付加するほか、原判決事実摘示のとおり(但し原判決三枚目表七行目から八行目の「申請人会社の代表取締役【A】は」とあるのを「控訴人会社の初代代表取締役の一人である【A】(昭和六〇年一○月一九日死亡)は」と訂正)であるからこれを引用する。
(控訴人の主張)一 控訴人が使用している「くろず」の名称は、福山町一帯において「あまん」と通称され来つた天然米酢を、控訴人が健康食品として商品化するにあたり名付けた名称であり、従来全く使われたことのない新規な名称である。控訴人の米酢は、昭和五二年三月から「坂元のくろず」の商品名で、ほぼ六年間に亘り独占的に宣伝販売されて来た結果、今日取引界において「健康酢」といえば「くろず」を指し、
「くろず」は健康酢の代名詞ともなつて、健康食品としての特別顕著性を取得している。おおよそ、商品の名称であつても、それが未だ一般に知られず、且つ同業者間においても使用する者がない場合には、商標機能を有するものというべきであり、右事実に鑑みれば、正にその場合に該当する。
二 特許庁が控訴人の「海蔵くろず」なる商標の出願を拒絶したのは、商標法4条1項16号によつてであり、3条1項1号によつてではない。原審認定はこの点を誤つている。ある名称が普通名称であるか否かと、品質の誤認を生ずるおそれがあるか否かとは明確に区別すべきであり、ある商品の普通名称を示す語が、他の商品の商標として使用されるときは常に品質の誤認を生ぜしめるおそれありと機械的にいつてしまうことはできない。
(被控訴人らの反論)一 「くろず」「黒酢」が法2条1項1号普通名称であることは従来述べたとおりである。控訴人が使用して来た商品名は単なる「くろず」ではなく「坂元のくろず」である。
二 特許庁の拒絶理由は3条1項1号を直接の根拠とはしていないが、4条1項16号を導き出す前提として「黒酢」「くろず」が黒味を帯びた食酢の普通名称であることを認めた-だからこれをくろず以外の指定商品(梅酢、リンゴ酢等等、食酢一般)に使えば品質の誤認を生ずるものとしたのである。若し控訴人が指定商品を「くろず」に限定補正すれば拒絶理由は解消し登録される(疎乙B第四一号証)が、それによつても他人の「海蔵くろず」の使用を禁じ得るに止まり、「黒酢」「くろず」の使用を禁ずることはできない。
証拠関係(省略) 理 由一 当裁判所は、当審における新たな証拠調の結果を参酌してもなお、控訴人の本件仮処分申請はいずれも失当として却下を免れないものと判断するが、その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決の理由説示記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一九枚目表一一行目から一二行目にかけて「一人である」とあるを「一人であつた」と改め、同二〇枚目表二行目「就任し」の次に「(【A】は昭和六〇年一〇月一九日死亡)」を挿入する。
2 同二〇枚目裏三行目「被申請人森産業」とあるを「訴外森産業」と改める。
3 原判決の理由五を(二一枚目表一一行目から二二枚目裏一〇行目まで)次のとおり変更する。
「五 被申請人らは、同人らの使用するクロズという名称はいわゆる普通名称の普通使用である旨主張するので、これについて判断する。
(一) 法2条1項1号にいう普通名称とは取引界において商品の一般的名称であるとして通用しているものをいい、言語構成上性状、品質、機能等を説明的に表現するものは、誰が最初にそれを使用し始めたかを問わず、普通名称と認めるべきものであり、また普通に使用せられる方法とは普通名称使用の態様が一般取引上普通に行われる程度のものであることを指すというのが相当である。
(二) (1) 成立に争いのない疎乙A第四号証の一ないし三(同B第三号証)によると、昭和五六年七月発行の日本醸造協会雑誌に「鹿児島では食酢のことをアマンといい、福山米酢は酢の代名詞でもあつたが、これを数年間醸成して着色の進んだものを黒酢(クロス)」ともいつていた」と記載されていることが、(2) 弁論の全趣旨により成立を認め得る同第五号証の一、二によると、昭和五七年七月頃玄米酢が既に「黒酢」とも呼称されていたことが、(3) 弁論の全趣旨により成立を認め得る同第七号証の一、二(同B第三三号証)によると、昭和五八年九月開催の醸造に関するシンポジユウム(日本醸造協会)の席上、前(1)認定記載同旨の報告がなされたことが、(4) 成立に争いのない疎乙B第一五ないし一七、
一九号証、弁論の全趣旨により成立を認め得る同第一〇及び第一九号証などによると、それらはいずれも最近の発行にかかる雑誌、書物類ではあるが「黒酢」が天然米酢の別称として慣用されていることを報じ又はその事実を前提とする記述がなされているが、それら各記事の性格に照らし、前認定の控訴人が「坂元のくろず」「薩摩黒酢」を使用し来つたことによる影響を受けたとは認め難いことが、それぞれ一応認められる。
(三) 成立に争いのない疎乙B第二二、二三号証、第二六号証の一、二、第二七号証の一ないし五、官署作成部分の成立について争いがなく、その余の部分は弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる疎乙B第二四、第二五号証の各一、二、及び被控訴人福山酢醸造代表者尋問(原審)の結果によれば、被控訴人福山酢醸造が事実摘示欄第二、三1(二)で主張する事実、すなわち、控訴人会杜は昭和五五年六月一二日、特許庁に対し、指定商品及び商品の区分を「第三一類、調味料、香辛料、食用油脂、乳製品(その後「食酢」のみに補正)、商標を前記【A】の名を冠して「海蔵くろず」とする商標登録出願をしたこと、右出願は一旦出願公告され公衆審査にかけられたところ、「くろず」は黒味を帯びた食酢の性状を表現する普通名称であることなどを理由にダイオー株式会社外一名から異議申立がなされたこと、特許庁は昭和五八年一一月二九日、右出願商標は「その構成中の『くろず』は福山地方で玄米から作られる醸造酢は、その原料名を付して玄米酢と呼はれると共に、黒味を帯びていることから、黒酢(くろす、くろず)と呼ばれている。してみれば『くろず』は黒味を帯びた食酢を表わす名称であるから、これを本願の指定商品(食酢)中、くろず以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある」との理由で商標法4条1項16号に基づき拒絶査定したこと、これに対し控訴人会社は不服の審判を請求し、その理由中において黒味を帯びた食酢が存在し「黒酢」と一般に呼ばれていることまでをも否定するものではなく、これまで平仮名で「くろず」と表示されたことはないから申請人の出願は認められるべきであると主張したが、請求の理由を記載した補正書が指定期間を徒過して提出されたため不受理処分とされたことが、一応認められる。(なお控訴人は右審判請求の理由に関し、疎甲第三〇ないし三三号証、同第三五号証を援用して、それが錯誤に基づくものである様に疎明するけれども、右各証拠はいずれも、本紛争発生後、控訴人の意を承けて作成された疑がありたやすく採用し難いのみならず、右の如き重要な事柄につき主張の点に錯誤があつたとは認められない。)(四) さらに前記(二)項掲記の各証拠並びに成立に争いのない疎乙B第四三号証、同第四四号証の一、二及び原審における控訴会社代表者尋問の結果により真正に成立したものと認められる疎甲第三三号証の三によれば、現在では、本件訴訟に現れた範囲においても、当事者の他に米を原料とする食酢あるいはこれを含有する商品の容器、包装、宣伝に「クロズ」の語を用いている業者の数は一〇を下らないこと、控訴人においても単なる「くろず」ではなく「坂元のくろず」の表示を用いていること、「クロズ」を健康食品としての米を原料とする醸造酢の総称と理解されている状況も窺われることが一応認められる。
(五) 前記(一)の基準に従い、右(二)ないし(四)認定の事実に原審証人【B】の証言及びこれにより成立を認め得る疎乙A第一号証(同B第八、C第五号証)と、「黒酢(クロズ、クロス)」が言語構成上黒味を帯びた食酢の性状を極めて直截に表現する言葉であることを併せ考慮すると、「黒酢(クロズ、クロス)」は、本件使用の対象となつている天然醸造米酢を指すものとしても、当該商品の普通名称に該当するといわざるを得ず(「黒酢」が他に、「コンブまたはシイタケの黒焼きにしたものをすりつぶして酢を加えたもの」の総称としての意味を有すること〔疎乙A第三号証、同B九号証の二、同C二号証の二〕はこの判断の妨げとならない)、被控訴人らはこれを食酢に普通に用いる方法でもつて使用していると認められるから、法2条1項1号により、法1条の適用が排除され、控訴人会杜は被控訴人らの右使用を妨げることができないものといわなければならない。」4 控訴人の当審主張に対する判断。
(一) 前認定(原判決理由二、三項)によれば、天然醸造米酢の健康食品性に着目し、これに「黒酢」「くろす」をその構成の一部とする商標を付して宣伝販売した者は【C】ないしさかもと薬品を蒿矢とし、被控訴人らは、控訴人会社が「坂元のくろず」「薩摩黒酢」の販売を始め、その販売実績を相当程度挙げた五、六年後に後発参入した者らであることは控訴人主張のとおりであるが、宣伝販売において健康食品性が強調され、世上天然醸造米酢の健康食品性に更めて注目を集めさせたことがあるにしても(もつとも、古来食酢が一般に保健上著効を有することは世間一般に知られていたところでもあるが)、薬品として売られたわけではなく、その呼称として食酢の一性状を表わす普通名称がそのまま用いられたに過ぎない本件の場合、以後消費者が「黒酢(くろず、くろす)」につき、その健康食品性に着目してその購買することであつても、なお右呼称が先に認定した普通名称性を失い、健康食品としての天然醸造米酢についての特別顕著性を取得するものとは解せられない。
(二) 特許庁の拒絶査定理由に対する原審認定の誤解をいう部分は、右拒絶査定理由は前3(三)認定のとおりであつて、その解釈は前掲被控訴人らの反論のとおりであり、また「食酢」と「健康食品たる天然醸造酢」が、黒酢(くろず、くろす)の呼称との関係で、別個の商品であることを前提とする控訴人の主張は前説示のとおり相当でない。
よつていずれも理由がない。
二 そうすると、控訴人の本件申請を却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法95条89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 潮久郎
裁判官 吉村俊一
裁判官 栗田健一
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