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事件 昭和 59年 (モ) 2326号
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裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1985/03/20
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事仮処分
主文 一 債権者と債務者ら間の大阪地方裁判所昭和五七年(ヨ)第四七六二号仮処分申請事件について同裁判所が昭和五九年二月二八日なした仮処分決定は、製造用金型に関する部分を除き、認可する。
二 右決定中製造用金型に関する部分を取消す。
三 右製造用金型に関する部分の仮処分申請を却下する。
四 訴訟費用は債務者らの負担とする。
五 この判決は、第二項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 債権者1 主文第一項掲記の仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という)を認可する。
2 主文第四項と同旨。
二 債務者ら1 本件仮処分決定はこれを取消す。
2 債権者の本件仮処分申請はこれを却下する。
3 訴訟費用は債権者の負担とする。
当事者の主張
一 申請の理由1(一) 債権者は、「組合員のためにする公社等発注のワイヤプロテクタの共同受注、付帯する事業」などを事業目的とする中小企業等協同組合法(以下「組合法」と略称)上の組合(設立認可は昭和四〇年九月二一日)であり、その組合員は設立時から現在まで東高通信株式会社、日之出水道機器株式会社、マサル工業株式会社及び目黒電器製造株式会社の四社である。
(二) 債権者は、組合結成、設立準備の段階において、組合取扱いのコードプロテクターの統一タイプ化を検討し、その形状等についての仕様の統一を図つた結果、それまでのコードプロテクターの一般的外観形状となつていた所謂カマボコ形、半円形のものとは違つた別紙「本件商品図面」その(1)ないし(6)記載の形状に相似する仕様統一タイプの商品を開発し、更に検討を加えて右各図面記載の外観形状を有するコードプロテクター(以下それぞれ「本件商品(1)ないし(6)」といい、総称するときは「本件各商品」という)へと改良し、その改良後である昭和四一年から本件各商品を組合員である前記メーカーに製造させて債権者がその販売主体(当事者)となつてその全数量を販売代理店などを通じて全国の需要者に販売している。
(三) 債権者は、昭和五七年一〇月ころまでの間に、各種のカタログ類、パンフレツト類と外信新潮等の業界新聞紙における広告などにより、また本件各商品の販売活動により、本件各商品の宣伝、普及を図り、これらの営業活動を続けた。
その結果、それまでのコードプロテクターの主流となつていたカマボコ形を市場から駆逐し、コードプロテクター関連商品もカマボコ形から本件各商品の形状といえる梯形筒状体用のものへと転換を促す有様となつたほど、コードプロテクターとして本件各商品は唯一的な大量販売商品となり、広範な需要先を獲得し(第三者等業界関係者は取扱商品の説明などにおいて、本件各商品の外観形状を前提とする説明、宣伝を行う程になつた)、全国的な需要を認められて雑誌「月刊建設物価」に毎号ワイプロとして掲載されるなど、本件各商品の形態が債権者の商品であるとの周知性を獲得するに到つた。ちなみに、債務者らの商品が市場に出廻るまでの間は、コードプロテクターとしては、本件各商品が約一六年間にわたり市場を制覇していたものであり、需要者において本件各商品の形態は債権者の商品であるとの周知性が確立していた。
2 債務者【A】、同【B】は、申請外株式会社ユタカ化工社(以下「申請外会社」と略称)と共に、昭和五七年一〇月ころから別紙イ号商品図面その(1)ないし(6)記載のコードプロテクター、すなわち電線保護カバー(以下それぞれ「イ号商品(1)ないし(6)」といい、総称するときは「イ号各商品」という)を製造し、電気材料店などを通じて全国的に販売している。
また、債務者らは、申請外会社とは別に、そのころから株式会社日本エレツクなる未登記の会社名で主として関東地方においてイ号各商品の販売を行つている。
3 イ号各商品の形態はそれぞれ本件各商品の形態と同一であり、その結果イ号各商品が債権者の商品であるかのような誤認混同需要者に生じさせており、そのため債権者の営業上の利益が害されるおそれがある。
4(一) 債務者らは本件各商品に関する意匠権(登録番号第二七四三四四号)が権利存続期間満了により昭和五七年九月四日消滅後直ちにイ号各商品の製造販売を開始し、しかもその形態を本件各商品の形態と同一にするなど、債権者の今まで築きあげた信用をフリーライドしようとする目的は明らかである。
(二) また、従来の販売ルートを外れ、しかも本件各商品より安いイ号各商品が出廻ることは、本件各商品の流通秩序を混乱させるものであり、かかる混乱による損失を除去、予防するためにもその差止が急務である。
(三) そして、いつまでも債務者らの品質劣悪なイ号各商品の製造販売行為が放置されることは、債権者にとり、本件各商品の信用失墜ばかりでなく、多大な損害を蒙り、その損失を回復することが困難を極めることは必定であり、本件各商品をほとんど唯一の営業品目とする債権者にとつて存立の致命傷となる。
よつて、債権者は債務者らに対し、不正競争防止法(以下「不競法」と略称)に基づき、イ号各商品の製造販売及び販売のための展示の差止、イ号各商品(半製品を含む)及び製造用金型の廃棄を求める権利を有し、保全の必要性も存するから本件仮処分決定は正当であり、その認可を求める。
二 申請の理由に対する認否1 申請の理由1(一)の事実は認める。
同1(二)の事実のうち債権者の各組合員が本件商品(1)ないし(5)を製造している点は認め(なおその販売も右各組合員が行なつている)、その余の事実は不知。
同1(三)の事実は否認する。
2 同2の事実のうち申請外会社がイ号各商品を製造販売している点は認め、その余の事実は否認する。
3 同3の事実は否認する。ただし、本件各商品とイ号各商品の形状的同一性(類似)の点は認める。
4 同4(一)の事実は否認する。
同4(二)の事実は不知。
同4(三)の事実、主張は否認し、争う。
三 債務者らの主張1 債務者【A】は、申請外会社の従業員であり、同社の従業員としてイ号各商品の製造販売の業務に従事してきたものである。
そして同債務者は申請外会社の破産に先立つ昭和五九年九月になした商法による特別清算の申立の際、他の従業員と同様解雇され退社している。
右のとおり、債務者【A】個人は、過去においてイ号各商品の製造販売の主体であつた事実がないだけでなく、現在において申請外会社とは何らの関係を持たないものであり、直接にも間接にもイ号各商品の製造販売に一切関与していない。
債務者【B】は本件仮処分申請時より申請外会社の従業員ではなく申請外東京ユタカ化工販売株式会社の代表取締役である。そして大阪地方裁判所昭和五九年(ヨ)第四二八三号事件仮処分決定で同社に対し、仮処分命令が出されており、債務者【B】個人に対する本件仮処分申請は誤り又は不当である。
右のとおり、債務者各人に対しては被保全権利及び保全の必要性を全く欠如するものであり、このことからだけでも本件仮処分決定は失当である。
2 債権者の本件各商品の外観形状は不競法1条1項1号の「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」には本来的に該当しないものである。すなわち、
(一) 本件各商品の形態意匠出願、実用新案出願に値いしない程度のものであり、このことは右各手続が全くなされていない事実から明らかである。
(二) 更に本件各商品の形態は著作権が発生するなど到底考えられない単純な形状のものであつて、デザイン(意匠)的にはありふれた形状、従前公知の形状からコピーしたものに近いものとしか評価できない(万年筆や鉛筆の円形状又は六角形と大同小異の類である)。
右のとおり、本件各商品の形態には、商品表示としてこれという特異性がない。
また、本件各商品の形態は電線の保護及び周辺空間の安全確保を目的とし、中空の空間部分に電線を通じ、背面を床又は壁に接着する使用方法をとる電線保護カバーとしての技術的機能に由来する必然的な結果であり、かかる形態については不競法の保護から除外されるべきである。
3 債権者の本件各商品の外観形状は、不競法1条1項1号の「本法施工ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」商品表示に該当しないものである。すなわち、
本件各商品と類似外観形状からなる同種商品を製造販売している会社は、申請外会社以外にも多数存在している。
また、債権者の組合員のマサル工業株式会社は本件商品(1)ないし(3)に類似する電線保護カバーのモールについて周知性を獲得したと主張して別訴を提起しており、かかる事情は債権者が本件各商品の形態周知性を獲得することと相いれないものである。
4 債権者の本件各商品が仮に周知形状であるとしても、本件各商品とイ号各商品との間に不競法1条1項1号の出所混同のおそれは存しない。
本件各商品とイ号各商品の形態が同一又は類似しているとしても直ちに両者間に彼此混同を生ずるものではない。
債権者の組合員四社もそれぞれ商号、商標等を製品自体又は包装箱に附して独自の出所表示をなしており、単に製品の形態自体で自他商品の識別をしているのではない。これは商号、商標等を製品自体又は包装箱に附す方法により、その出所を表示するのが当業界に認められた慣例であるためである。
申請外会社もイ号各商品自体及び包装箱などにはつきりと申請外会社の商品であることを明示して販売しているのである。
5 債権者は、不競法1条1項本文に規定されている「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」に該当する「営業」者ではない。
(一) 債権者は組合法上の組合であり、組合法3条の「事業協同組合」に属するものである。
債権者の事業は、「組合員のためにする日本電信電話公社等発注のワイヤプロテクタの共同受注」であり、あくまでも「組合員のため」に「直接奉仕」することがその「共同経済行為」の「実体」「本質」である。したがつて所謂当業市場における実質的な経済行為であるワイヤプロテクタ(本件各商品)の製造販売行為は組合員四社それぞれによつて行われることを前提かつ基本としているのである。すなわち不競法1条1項の保護を受けるべき「営業者」は、組合員四社でなければならないし実際その通りである。債権者は本件各商品の販売行為ではなく単に受注行為に限りなしうるにすぎない。
(二) 申請外ワイヤプロテクタ販売株式会社(以下「ワイプロ販売会社」と略称)が他に営業者として存在している。
ワイプロ販売会社は、債権者の本件各商品と全く同一の外観形状のワイヤプロテクター販売専業の株式会社である。
ワイプロ販売会社の会社設立登記は昭和五七年四月一日であり、その登記前後より本件各商品の販売を大々的にしてきている(本件仮処分の申請前約八ケ月前)。
債権者はこれらの事実からみてあくまで「共同受注」のみの行為をしているだけで本件各商品の「販売行為」はしていないと見ざるをえない。本件各商品の販売行為をしているのはワイプロ販売会社である。ワイプロ販売会社こそは不競法1条1項の営業者に該当するものと認められ、債権者はそのようには認められないのである。
ワイプロ販売会社の業務、組織及び役員等の特色は次のとおりである。
(一) ワイプロ販売会社はその商号からしてワイヤプロテクターの販売専門商社である。
(二) 代表取締役は、【C】(債権者の専務理事)である。
(三) ワイプロ販売会社の本店住所は東京都台東区<以下略>で、債権者の住所と同じ場所、同じビルである。
(四) その他の取締役、監査役の全役員は債権者の組合員四社の代表取締役(四人)と常務取締役(一人)という構成である。
(五) 資本金は一〇〇〇万円である。
(六) 右(一)ないし(五)の事実に照らすと、本件各商品と同一の商品販売を現にしており、将来もその販売を続けて行こうとする営業者はワイプロ販売会社である。
6(一) 債権者は四社の組合員から構成されるものであり、債権者は、専務理事ほか二人程度の事務員で業務を行つており、その業務内容は組合員四社の本件各商品の販売行為について、取次、仲介などのサービス業務をすることによつて中間的手数料を取つている所謂ブローカー行為をしているにすぎないのである。このような債権者の経営実体からして、本件仮処分決定を発せられないことによつて受ける損失は極めて軽微なものでしかありえない。
(二) 本件各商品と同種商品を取扱つている同業他社においてもイ号各商品と同種の類似商品について申請外会社より数倍の量を大々的に製造販売している。これらの他社を黙認して債務者らのみに断行の仮処分を求めるのは不当である。
四 債権者の反論1 本件各商品の形態外観形状は、その開発前に存在していた一般的形状であつたカマボコ形、半円形に取つてかわるものとして選択されたものにすぎず、現在でも若干のものとしてではあるが現に他の形状のコードプロテクターが存在する程であり、何も不可選択的形状とか技術的機能に由来する必然的結果としての外観でないこと明らかであり、本件各商品形態自体に出所表示機能は十分存するし、しかも、本件各商品はその形態を長期間にわたり変更することなく唯一的商品として市場を制覇していた程で、そのユーザーにおいてはモールなどとは強度や構造及びその使用目的の相違する本件各商品形態自体が債権者の商品であることを表示するものと広く認識されている。そして、イ号各商品は形態が本件各商品のそれと同一で本件各商品の出所主体の誤認混同をユーザーに惹起させており、このことはイ号各商品自体に附された刻印(マーク)やその梱包箱の形態、表示内容で左右されることはない。
ちなみに、モールについても債務者らは不正競争行為をなし、その差止請求が認容された程である(疎甲第九〇号証参照)。
以上から知れる様に他の商品形態の選択が可能にもかかわらず本件各商品と互換性ある程全く同一、そつくりな外観形状にイ号各商品をしたのは、本件各商品形態の有するユーザーの認識、信用にただ乗りせんとしたからに他ならない。
2 債権者は、その組合員であるメーカーとは別個独立の存在で、メーカーより本件各商品の全部を購入し(この関係は、ユーザー等その余の者にとつていわば組合の内部的なものといえる)その需要先に自ら取引主体となつて販売するもの、すなわち、自ら「経済上の収支計算の上に立つて経済活動の一環として行われる事業活動」として本件各商品を販売しているもので、それに、これらの販売活動は債権者の事業目的内でもあるから、不競法上の「営業」の利益を害される当事者性を有する。
疎明(省略)
理 由一 債務者らは個人としてイ号各商品の製造販売とは無関係であり、本件仮処分申請は被保全権利及び保全の必要性を欠くと主張するので、まずこの点につき検討する。
申請外会社がイ号各商品を製造販売していることは当事者間に争いない(申請の理由2参照)。
証人【C】(以下「【C】」と略称)の証言により真正に成立したと認められる疎甲第一号証の二、成立に争いのない疎甲第四四号証、同第四五号証の一ないし三、同第四六号証の一、二、同第四七号証の一、二、同第九〇、九一号証、弁論の全趣旨により昭和五七年一〇月二一日当時の申請外会社及び株式会社日本エレツクの事務所の写真と認められる疎甲第五一号証の一ないし五、証人【C】の証言により昭和五九年一〇月二三日の永井化学こと【D】らのイ号各商品の占有保管状態の写真と認められる疎甲第九二号証、証人【C】の証言により昭和五九年一〇月三〇日の東京ユタカ化工販売株式会社などにおけるイ号各商品の占有保管状態の写真と認められる疎甲第九三号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる疎乙第一号証、成立に争いのない疎乙第一〇三号証、同第一〇九、一一〇号証、証人【C】の証言及び弁論の全趣旨に前記争いのない事実を総合すると、
(一) 債務者らは、共に、元田中産業株式会社東京支店に勤務していた者であるが、退職後(ただし債務者【A】は昭和五六年九月ころ申請外会社に入社)、昭和五七年初めころ株式会社日本エレツクと名乗る企業体(法人未登記。以下「日本エレツク」と略称)を起こし、実質上の責任者は債務者【A】がなり、同【B】は在京の責任者となり、事務所を東京都大田区<以下略>の申請外会社東京出張所と同一の場所に設け、申請外会社製造にかかるモール(壁用電線カバー)やイ号各商品の販売をなしている。
(二) 申請外会社は昭和五九年一〇月九日破産宣告を受けたが債務者【A】はその後も永井化学こと【D】、【E】に対しイ号各商品を発注し同人らに製造させており、債権者が右【D】らに対し、イ号各商品の製造販売等の差止を求める仮処分決定(当庁昭和五九年(ヨ)第四二八四号)をえて執行した際、債務者【A】から事務所(右執行現場)に電話が入り執行官とやりとりがあつた。
(三) 債権者が東京ユタカ化工販売株式会社(昭和五八年二月設立、代表者は債務者【B】、同社の営業拠点は申請外会社東京出張所及び日本エレツクと同一の場所である)に対し、イ号各商品の販売等の差止を求める仮処分決定(当庁昭和五九年(ヨ)第四二八三号)をえて執行をなした際にも前同様債務者【A】から執行官に電話が入つており、また執行前にイ号各商品が事務所外に搬出されていた。
なお、債権者が申請外会社に対する本件仮処分の執行として同社東京営業所内に存在したイ号各商品に対する執行に着手した際にも、現場で応対したのは債務者【B】であつたが、前同様その場に債務者【A】から電話が入り、次いで訴訟代理人からも電話があつて、該物品が右東京ユタカ化工販売株式会社の物とされてその執行が不能となつていた。
(四) 債務者らはイ号各商品を製造販売することが不正競争行為となることを争つている。
右事情を総合すると現在においてもなお、債務者らは共同して他の第三者にイ号各商品の製造を働きかけて製造し、あるいは第三者製造のイ号各商品及び従来の在庫品の販売、販売のための展示をするおそれがあるということができる。
そして、前記認定の事実から債務者【A】が単に申請外会社の従業員としての立場にとどまらず、自己の責任においてもイ号各商品の製造販売にかかわつていたことは明らかであり、また債務者【B】にしても、前記のとおり、東京ユタカ化工販売株式会社設立前に個人としてイ号各商品の販売にかかわつており、同会社の事務所が日本エレツクと同一場所にあり債務者【B】個人の活動と東京ユタカ化工販売株式会社の活動の区別がつきにくいこと及び債務者【A】との関係に照らすと、単に同会社の存在及び販売行為によつて債務者【B】個人に対する被保全権利及び保全の必要性を否定しさることはできない。
二 債権者が不競法1条1項柱書の「営業」者にあたるか否かにつき検討する。
1 請求原因1(一)の事実(債権者の説明)及び債権者の各組合員が本件商品(1)ないし(5)を製造している点は当事者間に争いがないが、債権者が本件各商品を自己の商品として販売していることにつき争いがあるので、まずその点を判断する。
成立に争いのない疎甲第二〇ないし第二五号証、同第三〇号証、同第三二号証、
同第三六号証、同第三九号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる疎甲第六〇号証、同第六三号証の一ないし三、同第六四、六五号証の各一ないし四、
同第六六号証の一ないし一〇、同第六七号証の一ないし三、同第六八、六九号証、
同第七〇号証の一ないし九、同第七一号証の一ないし六、同第七二号証の一ないし一〇、同第七三、七四号証の各一ないし六、同第七五号証の一ないし一四、同第八〇号証の一の一、二、同号証の二ないし四、同第八五号証、成立に争いのない疎乙第一〇一号証、弁論の全趣旨によりマサル工業株式会社の表示入りの本件各商品の包装箱と写真と認められる疎乙第七号証、同様に目黒電気製造株式会社の表示入りの本件各商品の包装箱の写真と認められる疎乙第八号証、同様に東高通信工業株式会社の表示入りの本件各商品の包装箱の写真と認められる疎乙第九号証、同様に日之出水道機器株式会社の表示入りの本件商品(1)ないし(5)の包装箱の写真と認められる疎乙第一〇号証、マサル工業株式会社の本件商品(4)の包装箱とその商品に争いのない疎検乙第八号証の一、二、目黒電気製造株式会社の本件商品(4)の包装箱とその商品に争いのない疎検乙第九号証の一、二、東高通信工業株式会社の本件商品(4)の包装箱とその商品に争いのない疎検乙第一〇号証の一、
二及び証人【C】の証言によれば次の事実が認められる。
(一) 債権者は需要者から本件各商品の発注を受け、メーカーの組合員に出荷等の指示をなし、商品の現物は各組合員から需要者に直送されるが、各組合員は各自の名義で債権者に対しその代金の請求書をだし、各販売先へは債権者がその名義で請求書及び納品書をだしてその代金を受取り、債権者は手数料名義のマージンを取得している。
(二) 各組合員の本件商品の宣伝パンフレツトには本件各商品は債権者の販売品である旨の注意書きがなされている。
(三) 本件各商品の包装箱には債権者の表示があり、組合員はメーカーと表示されている。
以上の事実を総合すると、債権者は本件各商品の受注販売につき、各組合員と需要者間を媒介しているだけではなく、需要者との売買契約の当事者であつて、自らがその商品主体として販売しているものと認めるのが相当である。
なお、債権者名義の納品書中に各組合員の記載のあるもの(疎甲第六六号証の一ないし一〇)、組合員から債権者に対する請求書中に納品先の記載のあるもの(疎甲第七一号証の二ないし六)があるが、前記認定事実に照らすと右は納品代行をなしているにすぎないものと認めるのが相当であり、また債権者とは別にワイプロ販売会社なる会社が存在する(成立に争いのない疎乙第六一号証)ものの、前記疎甲第八〇号証の一の一、二、同号証の二ないし四、疎甲第八五号証によれば、右ワイプロ販売会社とは債権者の一販売店にすぎないものと認められ、右各事実は前記結論を左右するものではない。
2 成立に争いのない疎甲第五八号証、同疎乙第三六号証によれば、債権者の商業登記簿上の事業内容は一項に「組合員のためにする日本電信電話公社等発注のワイヤプロテクタの共同受注」、九項に「前各号の事業に付帯する事業」と記載し、販売又は共同販売なる記載のないことが認められるものの、そもそも債権者の設立の動機は、昭和三九年頃までは現組合員ら屋内配線カバーのメーカーが各社各様のタイプのものを製造販売していたため利用者間にその統一の要望が高まり、これに応えて加入四社が製品タイプの一本化とその事業の共同化を目的としたものであつた(証人【C】の証言)から、債権者が需要者からの受注及びその販売の窓口となることを当然に予定していたことが推認でき、そうだとすれば、その意味内容としても「共同受注」はその後の共同販売を前提とし、これを含むものと解し得ないではなく、また共同受注の形態によつては共同販売と区別がつけにくく、債権者に共同販売行為を認めることは組合員の便宜にもなり、前示のとおり債権者の事業目的にかなつたものであるから、債権者が本件各商品を販売することをもつて目的外の行為とすることはできない。
3 ところで、債権者は組合法に基づく組合であり、その事業も前記のように「組合員のためにする」ものであり、組合法5条1項1号に「組合又は会員の相互扶助を目的とすること」と規定されており、直接に利益の獲得を目的とするものではない。しかし、組合である債権者もその事業を持続発展させていくために剰余金を必要とし、かかる剰余金の配当を組合員にでき(組合法5条1項4号)、しかも債権者の行つているワイヤプロテクターの販売は他の営利企業の販売行為と外形上何ら変わることなく、また競争関係に立つことがあり、かかる場合に不競法上の保護を与えない場合は、公正な流通経済の秩序維持ひいては一般消費者の保護を十分にはたしえない結果になるのであるから、債権者の事業も経済上その収支計算の上に立つて行われる事業と認めるのが相当であり、したがつて、債権者の本件各商品の販売行為は不競法1条1項柱書の「営業」に該当するということができる。
三1 証人【C】の証言により真正に成立したと認められる疎甲第一号証の一、
二、同第六〇号証、同第六一号証の一ないし六、同第七六、七七号証、同第八五、
八六号証、成立に争いのない疎甲第二号証の一ないし一一、同第三号証の一ないし四、同第五号証の一ないし六(ただし、発行年については弁論の全趣旨により認める)、同第九ないし第一七号証、同第一八号証の一、二、同第一九ないし第四〇号証、同第六二号証、同第八七号証の一、二、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる疎甲第四八号証の一、二、同第七八号証、前記疎甲第六三号証の一ないし三、同第六四、六五号証の各一ないし四、同第六六号証の一ないし一〇、同第六七号証の一ないし三、同第六八、六九号証、同第七〇号証の一ないし九、同第七一号証の一ないし六、同第七二号証の一ないし一〇、同第七三、七四号証の各一ないし六、同第七五号証の一ないし一四、同第八〇号証の一の一、二、同号証の二ないし四、前記疎乙第七ないし第一〇号証、弁論の全趣旨によりメグロの表示入りの本件商品(1)ないし(5)の写真と認められる疎乙第一一号証、弁論の全趣旨によりマサル、ヒノデ、メグロ、トーコーの表示入りの本件商品(2)の写真と認められる疎乙第一二号証、同様に本件商品(3)の写真と認められる疎乙第一三号証、
同様に本件商品(5)の写真と認められる疎乙第一四号証、同様に本件商品(6)の写真と認められる疎乙第一五号証、前記疎乙第一〇一号証、本件商品(1)に争いのない疎検甲第一号証の一、本件商品(2)に争いのない同号証の二、本件商品(3)に争いのない同号証の三、本件商品(4)に争いのない同号証の四、本件商品(5)に争いのない同号証の五、本件商品(6)に争いのない同号証の六、前記疎検乙第八ないし第一〇号証の各一、二、証人【C】の証言及び前記二1記載の争いのない事実によれば、以下の各事実が認められる。
(一) 本件各商品は別紙本件商品の説明書記載のとおりの電話線等の屋内配線に使用される長尺配線保護カバーで、底部条体と頭部条体から成り、両条体の合体にて中に電話線等を入れるための配線カバーを形成している。その形態は別紙本件商品図面その(1)ないし(6)記載のとおりで、それぞれ一号ないし五号、特五号の品名がつけられ、色彩はグレイで、各商品には<12513-001>の標章及び長方形の枠で囲まれた号数(たとえば<12513-002>)及びメーカー名(マサル・メグロ、トーコー、ヒノデのうちの一つ)が刻印されており、その包装箱には長方形の枠で囲んだ号数とWPのマーク(たとえば<12513-003>)が記載され、その横に債権者名、住所、電話番号及び「メーカー」との肩書を付した組合員の名前が表示されている。
(二) 債権者は、組合員を東高通信工業株式会社、日之出水道機器株式会社、マサル工業株式会社、目黒電機製造株式会社として、昭和四〇年九月二一日に設立認可を得ているが、組合結成、設立準備の段階で組合取扱いのコードプロテクターの統一タイプ化を検討し、その形状等についての仕様の統一を図つた結果、それまでのカマボコ形、半円形のものと異なり本件各商品の形状と相似する仕様統一タイプの商品を開発し、更に検討し、昭和四一年ころには本件各商品の形状に改良し、日本電信電話公社の仕様制定品とされ、現在までその形状は変つていない。
(三) 債権者は現在まで、組合員が製造した本件各商品の受注を受け、日本電信電話公社全国通信局、全国通信資材各社及び特約販売店に販売し、更に本件各商品は同所を通じ工事機関、業者に流れている。
(なお、成立に争いのない疎乙第一六号証、同第六四号証、東高通信工業株式会社が構造変更した現品であることに争いのない疎検乙第六号証、ワイプロ販売会社の商品見本であることに争いのない疎検乙第七号証によれば、債権者はカラーワイヤプロテクタと称して本件各商品とやや形状の異なる(底部と頭部の嵌合部分の間隙が本件各商品と比較して広い)コードプロテクターを販売していることが認められるものの、単に右事実から直ちに債権者が本件各商品の販売を中止し同商品にかえて右製品を販売しているものと認めることはできない。)(四) 債権者は本件各商品を発売以来、本件各商品のカタログ等を配布し、あるいは業界紙へ広告を掲載するなどして宣伝する一方、各組合員においても債権者の名前を表示して本件各商品の宣伝をなし、また第三者による関連商品の宣伝の際本件各商品が取り上げられた。そして、債権者の昭和四一年四月から同五八年三月三一日までの本件各商品の売上総合計は一億三四六九万本(内、昭和五七年度は一一六六万六〇〇〇本)であり、債権者は、昭和四三年から同五六年までの間、コードプロテクターに関して電話線関係はほぼ一〇〇パーセントのシエアを占め、それ以外の電灯線配線用などにしても高率のシエアを確保している。
右各事実を総合すると、昭和五七年一〇月ころまでには、本件各商品の形態は債権者の販売する商品であることを示す表示として需要者間で広く認識されるに至り、今日でも同様に認識されているということができる。
2 債務者らは本件各商品の形態はありふれたものであり特異性がない旨主張し、
いずれも成立に争いのない疎乙第一七ないし第三三号証を提出しているが、疎乙第一七ないし第二八号証(いずれも意匠公報)の各図面、疎乙第三〇ないし第三三号証(実用新案公報)記載の実施例は本件各商品の形態とは異なつており(疎乙第三三号証については後記参照)、疎乙第二九号証(実用新案公報)の実施例には本件商品(1)ないし(3)に近似した製品が記載されているが、右考案は昭和四五年九月一六日日本電信電話公社によつて出願されており、本件各商品が発売された後であり、しかも右考案はコードプロテクターに「表示線を設けた」点に新規性があるのであり、右書証をもつて本件各商品の形態が発売時すでにありふれたものであつたと認めることはできない。
また、疎乙第三三号証の考案と本件各商品とは、右考案が「本体1の下面は中央部を最高とする中高面5に形成し」(右考案の実用新案登録請求の範囲欄参照)ているのに対し、本件各商品は右構成を有しておらず、したがつて本件各商品の形態に不競法の保護を与えたとしても、前記考案に永久権を与えることにはならない。
そして、同じ床面に取り付けられるコードプロテクターといえどもカマボコ型、
半円型、長方型など本件各商品の梯形筒状体とは異なる形状のものが存するのであるから(前記疎甲第九号証、弁論の全趣旨により昭和五八年一月一三、一四日当時東京都内のデパート数社に存在したコードプロテクターの写真と認められる疎甲第五六号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる疎甲第五七号証、前記疎甲第八六号証)、本件各商品の形態技術的機能に由来する必然的な形態ということもできない。
3 債権者の組合員であるマサル工業株式会社は壁面天井に接着、ビス止め等で固定して、コア部分とカバー部分によつて形成される中空に電線(VVFケーブル)を収納することにより屋内配線を行うための白色のモールを製造販売しており、本件仮処分とは別に、その周知性を主張して債務者らのモール製品に対し訴訟を提起し、勝訴判決を得ていることは債務者ら主張のとおりである(疎甲第九〇号証)。
また、右モールは意匠登録第二七四三四四号の類似二の実施品であるのに対し、本件商品(2)は右の本意匠の、本件商品(1)は類似一の実施品であること(前記疎甲第九〇号証、成立に争いのない疎乙第八六、八七号証、同第九八号証、同第一〇二号証)、モールとコードプロテクターは一緒に使用されることがあり(前記疎乙第一〇三号証)、本件各商品のようなコードプロテクターをモールとまちがえて壁面に使用している例がみられる(成立に争いのない疎乙第九四号証の一ないし八、同第九五号証の一ないし三、同第九六号証の一ないし四、同第一〇五号証の一ないし四)ものの、本件各商品とマサル工業株式会社製造のモールとは形態が異なること(弁論の全趣旨により本件各商品とモールの写真と認められる疎甲第八四号証)、コードプロテクターは床面に固定して、中空に電話線などを配線するためのものであつて、踏まれても割れないくらいの強度を必要としており、モールとコードプロテクターとは用途を異にし、その強度、色あいも異にしていること(疎検甲第三号証中のモールとケーブルプロテクターとの対比、あるいはコードプロテクターである疎検甲第一、二号証の各一ないし六と日動電工株式会社のVAモールであることに争いのない疎検乙第一四ないし第一六号証との対比)、モール及び本件各商品であるコードプロテクターの主たる購入者が専門業者であることを考慮すると、両者の区別は十分に可能であり、マサル工業株式会社が前記モールを製造販売していることは前記周知性の判断を左右するものではない。
また、成立に争いのない疎甲第七九号証、株式会社正電社のS2トラフの写真に争いのない疎乙第五五号証の一ないし八、成立に争いのない疎乙第五六、五七号証、S2トラフ二〇個入りに争いのない疎検乙第三号証、株式会社正電社の4条用屋内ケーブルトラフの現品に争いのない疎検乙第一七号証によれば、株式会社正電社は屋内ケーブルトラフを昭和四七年六月一日から製造販売していることが認められるものの、右各疎明によれば、右トラフはデーター通信用のケーブル及びコード類を床上配線する場合に使用され、本件各商品のコードプロテクターとは使用目的を異にし、その形態も底部及び頭部各条体の内面中央に突条を設けている点において本件各商品の形態とは異なつていることが認められ、両者は十分区別が可能であり、S2トラフの製造販売の事実は本件各商品の周知性の判断に影響を及ぼすものとは認め難い。
4 債務者らは本件各商品と類似外観形状からなる同種商品を製造販売している会社が当業界に多数存在している旨主張し、前記疎乙第一号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる疎乙第三号証、同第六号証、同第六三号証、ダイツーコー株式会社の製品の写真に争いのない疎乙第四号証の一ないし四、未来工業株式会社の製品に争いのない疎検乙第一八ないし第二一号証及び弁論の全趣旨によれば、株式会社電研社、ダイツーコー株式会社、田中産業株式会社、未来工業株式会社はコードプロテクターを製造販売し、一部に本件各商品と似たものがあることが認められるものの、その販売時期は昭和五六年ころと最近であり、本件各商品が販売されてから十数年が経過しており、また、株式会社電研社及びダイツーコー株式会社に対しては債権者より類似品の製造販売の差止を求める訴訟が提起されており(成立に争いのない疎乙第二号証、前記疎乙第六三号証及び弁論の全趣旨)、前記事実は本件各商品の前記周知性の判断に何ら影響しない。
四 債務者らがイ号各商品を販売し、現在も製造販売等をなすおそれがあることは前記認定のとおりである。
そして、成立に争いのない疎甲第四三号証の一、二、イ号商品(1)に争いのない疎検甲第二号証の一、イ号商品(2)に争いのない同号証の二、イ号商品(3)に争いのない同号証の三、イ号商品(4)に争いのない同号証の四、イ号商品(5)に争いのない同号証の五、イ号商品(6)に争いのない同号証の六、イ号商品ボード見本に争いのない疎検甲第三号証、イ号商品(2)の包装箱に争いのない疎検乙第四号証によれば、イ号各商品は電話線等の屋内配線に使用される長尺配線カバーであり、その形態は別紙イ号商品図面その(1)ないし(6)記載のとおりであつて、色彩はグレイ、チヨコレート、アイボリーの三種があり、号数は一号ないし六号で表示されていること、そしてイ号各商品には申請外会社の亀のマーク及びユカタ一号ないし六号の刻印がなされ、その包装箱には右亀のマーク、亀の甲らを模した社章、申請外会社名、住所、電話番号が表示されていることが認められる。
五 イ号各商品と本件各商品の形状的同一性(類似)の点は当事者間に争いがない。
そして右事実及び前記疎甲第一号証の一、証人【C】の証言により真正に成立したと認められる疎甲第一号証の三に照らすと、イ号各商品を製造販売する行為は債権者の商品である本件各商品と混同を生じさせるものであるというべきであり、これにより債権者は営業上の利益が害されるおそれがあるといえる。
ところで、債務者らはイ号各商品自体及び包装箱に商号、商標等を附しており誤認混同のおそれはないと主張する。
そして前記のとおり、本件各商品には<12513-001>のマーク、メーカー(組合員)名などの刻印があり、包装箱にも債権者名、住所、電話番号、メーカー(組合員)名などが表示されているのに対し、イ号各商品には亀のマーク及びユタカなどの刻印があり、包装箱にも亀のマーク、申請外会社名、住所、電話番号等が表示されており、両者はこの点で非隔離的に対比すれば出所の選別が不可能ではないということができる。
しかし、本件各商品は包装箱に入れて販売されるばかりでなく、最終消費者に渡る際にはバラ売りも行われており(弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる疎甲第八一号証の一ないし二〇、同第八二号証の一ないし一九)、かかる場合には包装箱の表示の相違は商品主体を識別させることができず、また、商品自体の刻印の相違にしても右刻印は、いずれも各商品の端部に一か所なされ、さほど目立つものではなく、それに対して本件各商品とイ号各商品とは形状が同一であるばかりか、その寸法までほとんど同一であり(弁論の全趣旨により本件各商品とイ号各商品の写真と認められる疎甲第八三号証)、両者の包装箱の表示、商品の刻印の相違があつても、これを隔離的に観察するときは、商品出所の誤認混同を来たし得るものと認められる。
のみならず、本件各商品は、前認定のように、長年に亘り債権者が共同受注して、その販売業務も債権者の手で行われ来つたことにより、本件各商品の形状自体が債権者の取扱商品として、前示商品主体性を表わす出所表示機能を獲得したものと認められるから、これに前記各組合員名の表示が付されても、それはただ責任メーカーの表示として機能し得るに止まり、これによつて右形状自体が持つ債権者取扱商品としての出所表示機能を失わせるものではないものと認められる。そうして本件各商品は、右債権者の取扱(その取扱形態が不競法上の「営業」として保護すべきものであることは前示のとおり)によることによつて、その出所の信用性も得られていると認められるから、右周知形状と同一であるイ号各商品に接した最終需要者は、そこにユタカなどの表示があつても、それを前記債権者組合員名と同じく単なるメーカー名の表示と同格に把握し、イ号各商品もまた、本件各商品と同じ様に債権者取扱商品であるものと誤認しかつその信用に依拠してこれを選択するおそれも存するものと考えられ、これもまた、不競法1条1項1号にいう混同を生ぜしむる行為にあたるものということができる。
また、前記疎乙第一号証には申請外組合は総代理店、代理店販売をしているのみにすぎない旨の記載があるが、イ号各商品も最終的には消費者に渡る商品であり、
その段階では本件各商品と競合することが明らかであり、前示混同の生じることに変わりはない。
その他本件全疎明によるもコードプロテクターにおいて商品自体及び包装箱に商号、商標等を附することにより出所を表示する慣例があることを認めるに足りない。
六 以上によれば、債権者は債務者らに対し、不競法に基づきイ号各商品の製造、
販売、販売のための展示の差止を求める権利を有することが認められる(なお、債権者の事業中には仮処分申請をなすことは記載されていないが、債権者に当事者能力が認められることはいうまでもない)。
しかし、本件全疎明によるも債務者らがイ号各商品の製造用金型を占有ないし所有している事実は認めるに足りない。
そして、イ号各商品の形態は本件各商品のそれと同一であることは前記のとおりであるところ、イ号各商品の製造販売を放置するときは、イ号各商品と本件各商品が混同するおそれが極めて強く、したがつて債権者に営業上の損害を与えるおそれが十分認められ(右損害が極めて軽微なものでしかありえないことを認めるに足りる疎明はない)、本案訴訟の確定を待たず、仮にイ号各商品につき製造販売、販売のための展示の差止及びイ号各商品(半製品を含む)の執行官保管等をすべき必要性を認めることができる。
なお、申請外会社以外にもワイヤプロテクターを製造販売する会社があり、商品の一部に本件各商品と似たものがあることは前記認定のとおりであり、かかる会社に対し債権者が断行の仮処分を申請したことを認めるに足りる疎明はないが、かかる事情は本件仮処分の保全の必要性を否定するものとはならないというべきである。
七 よつて、本件仮処分決定は、製造用金型に関する部分を除き認可し、右部分を取消し、右部分の仮処分申請を却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条
92条93条を、仮執行宣言につき同法756条ノ二、196条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。
追加
本件商品図面その(2)〜その(6)、イ号商品図面その(2)〜その(6)(省略)本件商品の説明書(その(1)ないし(6)に共通)本件商品は電話線等の屋内配線に使用される長尺配線カバーであり、図示の如く、長手に亘り嵌め合せ構造となつた底部条体と頭部条体とから成り、両条体の合体にて右配線カバーを形成する。
右配線カバーの外観形状は、平坦な短い頭頂面と頭頂面より長くかつ平行な平坦底面と平坦頂面から平坦底面至近に亘つて左右へ末広がりとなる両流れ斜面と、両流れ斜面と平坦底面間に形成された巾狭の垂直側面とから成る六面体であり、各面が長手に亘つて等巾に形成され、左右対称のシンメトリツクな安定形状を備えた梯形筒条体である。
本件商品図面その(1)<12513-004>イ号商品の説明書(その(1)ないし(6)に共通)イ号商品は電話線等の屋内配線に使用される長尺配線カバーであり、図示の如く、長手に亘り嵌め合せ構造となつた底部条体と頭部条体とから成り、両条体の合体にて右配線カバーを形成する。
右配線カバーの外観形状は、平坦な短い頭頂面と頭頂面より長くかつ平行な平坦底面と平坦頂面から平坦底面至近に亘つて左右へ末広がりとなる両流れ斜面と、両流れ斜面と平坦底面間に形成された巾狭の垂直側面とから成る六面体であり、各面が長手に亘つて等巾に形成され、左右対称のシンメトリツクな安定形状を備えた梯形筒条体である。
イ号商品図面その(1)<12513-005>
裁判官 潮久郎
裁判官 紙浦健二
裁判官 徳永幸藏