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事件 昭和 54年 (ワ) 8223号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1982/09/27
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告らは、原告に対し、各自金三七五〇万円及びこれに対する昭和五四年八月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
三 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 主文一、二項同旨2 仮執行の宣言二 請求の趣旨に対する答弁1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
当事者の主張
一 請求の原因1 原告の営業及びその商品 原告は、昭和二八年八月二四日設立された各種娯楽機械の輸出入、製造、販売、
賃貸その他を主たる営業の目的とする会社で、昭和五三年四月一日現在、払込資本金四五〇〇万円、従業員約一〇〇〇名、日本国内における営業所及び出張所合計七〇か所、昭和五二年における年商約一二八億円、昭和五三年における年商約二九三億円の規模を有して営業を行なつているが、同年七月以降、別紙第一、第二目録記載のテレビ型ゲームマシン(商品名スペース・インベーダー、以下、「原告商品」という。)を、国内七〇か所に所在する営業所及び出張所並びにオペレーター(卸売業者)を介して、ゲーム場、喫茶店その他の需要者に販売又は賃貸し、あるいは国内各所に所在する原告の直営するゲーム場において一般の入場者の使用のために展示している。
2 原告商品の構成(一) 原告商品は、マイクロ・コンピユーター・システムを利用した影像再生装置によつて、その受像機に映し出される影像を主体として、遊戯者が一定の操作をすることによつて遊戯するテレビ型と称せられるゲームマシンの一種で、かかるテレビ型ゲームマシンは、昭和四八年七月ころから我が国において製造発売され、その後同種機械の開発により現在ゲームマシンの主流となりつつあるものであるが、
これら機械の受像機に映し出される映像とその変化の形態及び遊戯方法は、商品の生命自体ともいうべき重要性を有し、その構成要素として特徴づけられるもので、
右構成要素によつて商品の個別性が識別される。
(二) 近時、宇宙に対する人類の関心は、単なる学問的分野にとどまらず、文学、映画あるいは雑誌、テレビジヨン等における話題その他によつて顕著に認められるところである。原告商品は、この社会的関心を基礎として、人類の生活圏たる地球を含む宇宙空間へ侵入する空想上の生物をインベーダー(侵入者)として表現した別紙第四目録(一)ないし(三)の各(イ)、(ロ)記載の原画に基づく同第三目録(一)、(二)記載の影像を主体とし、これを受像機面上に五段一一列に配置し、遊戯者が、ジグザグコースをたどりながら進行してくる右インベーダーの発射するミサイルを避けつつ、四基のバリヤをビーム砲基地とし、その後方に位置するビーム砲によつて、インベーダー及びその後方に時々出現し受像機面上を横断通過するUFOを爆破、消滅させることによつて得点を競うゲームマシンで、その詳細は別冊説明書上段に記載のとおりであるが、このような遊戯方法及び原告商品の受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とその変化の形態は、従前のテレビ型ゲームマシンにおいて全く存在せず、顕著な特殊性及び新規性を有する。
3 原告商品の周知性(一) 原告商品は、原告との間でその開発製造した製品はすべて原告の商品として販売される旨の約定を結んでいる訴外パシフイツク工業株式会社において昭和五三年六月中旬完成され、同月一六日に原告肩書本店所在地タイトービル一階シヨールームにおいて、同月二三日に大阪市中之島所在の国際貿易センターにおいてそれぞれ開催された原告の新製品発表会に出展され、その後同年七月以降前記のとおり全国に所在するゲーム場、喫茶店その他に設置され、あるいは原告の直営ゲーム場において使用されている。
(二) 原告商品は、右新製品発表会に参会した東京においては約五五〇名の、大阪においては約四〇〇名のオペレーター及びゲーム場、喫茶店等の経営者その他ゲームマシンの需要者を主とする業界関係者の絶賛をあび、その受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とその変化の形態及び遊戯方法における特殊性と新規性は、業界の話題となり、業界紙、専門誌、新聞等において広く原告の新製品として紹介されると共に、原告においても新聞、雑誌に広告を掲載し、パンフレツトを配布する等大々的な宣伝活動を行なつた。
これらの紹介、宣伝と原告商品の前記特殊性と新規性により、原告商品の受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とその変化の形態及びその遊戯方法は、原告の商品であることを示す表示として昭和五三年一〇月中には日本全国にわたつて、取引者及び需要者間に広く認識されるに至つた。
4 被告会社の営業及びその商品 被告会社は、昭和五四年五月一五日、テレビ型ゲームマシンの製造、販売及び賃貸等を営業の目的として設立された会社であるが、同日ころから商品名を「フアイテイング・ミサイル」とするテレビ型ゲームマシン(以下、「被告商品」という。)を製造、販売及び賃貸している。
5 被告商品の構成 被告商品の外形的形態は、別紙第五目録記載のとおりであり、テレビ型ゲームマシンである被告商品の構成の主体である受像機に映し出される影像は、別紙第三目録(一)、(二)記載の影像を主体とし、その配列及び変化の形態、UFOの出現状況並びに遊戯方法は別冊説明書下段に記載のとおりである。
6 原告商品と被告商品の混同 被告商品は、その形態において、別紙第一目録記載のテーブル型の原告商品と外形的にほとんど相違せず、その受像機に映し出されるインベーダー等の影像とその変化の形態及び遊戯方法において原告商品と同一であるから、被告会社の被告商品の製造販売賃貸行為は被告商品を原告商品であるかのように需要者及び遊戯者に誤認混同を生じさせている。
7 被告らの責任(一) 被告会社は、被告製品の製造販売賃貸行為が、被告商品を原告商品であるかのように需要者及び遊戯者に混同を生ぜしめることを知りながら又は過失により知らないで、右行為をして、原告の営業上の利益を害したものであるから、被告会社は、不正競争防止法第1条の2の規定に基づき、原告に対し、右行為により原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。
(二) 被告【A】は、被告会社の代表取締役として、その職務を行なうにつき、
被告会社の被告製品の製造販売賃貸行為が被告商品を原告商品であるかのように需要者及び遊戯者に混同を生ぜしめる行為であることを知りながら、又は過失により知らないで、もしくは被告会社のために忠実に職務を遂行する義務に重大な過失により違反して被告会社をして右行為をなさしめたものであるから、民法第709条もしくは商法第266条の3の規定に基づき、原告に対し、右行為により原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。
8 損害 被告会社は、昭和五四年五月一五日から同年七月末日までの間に被告製品を合計一五〇〇台製造し、これを販売又は賃貸した。
原告は、原告商品の類似品の製造に関して、通常一台当たり二万五〇〇〇円の許諾料を得ているから、原告が、被告会社に対し右製造を許諾した場合に通常受けるべき製造許諾料は右二万五〇〇〇円に右製造台数一五〇〇を乗じた三七五〇万円であり、原告は右と同額の得べかりし利益の損害を被つた。
9 よつて、原告は、被告らに対し、各自右損害金三七五〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である昭和五四年八月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求の原因に対する認否1 請求の原因1、2の各事実はいずれも知らない。
2 同3(二)のうち、原告商品の受像機に映し出される影像とその変化の形態及びその遊戯方法が原告の商品であることを示す表示にあたるとの事実は否認し、同3のその余の事実は知らない。
3 同4の事実は認める。
4 同5のうち、被告商品の外形的形態が原告主張のとおりである事実は認め、その余の事実は否認する。
5 同6の事実は否認する。
6 同7のうち、被告【A】が被告会社の代表取締役である事実は認め、その余の事実は否認する。
7 同8の事実は否認する。
証拠(省略)
理 由一 その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第五六号証、証人【B】の証言に弁論の全趣旨を総合すれば、請求の原因1の事実が認められる。
二 右認定の事実に、前掲甲第五六号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第五七号証の一・二、
証人【C】の証言によりいずれも真正に作成されたものと認められる甲第一号証の一ないし五、第二、第三号証の各一ないし三、第四号証の一・二、第五号証の一ないし四、第六ないし第八号証の各一・二、第九ないし第一一号証の各一ないし三、
第一二号証の一・二、第一三号証、第一四ないし第一六号証の各一・二、第一七、
第一八号証、第一九号証の一ないし三、第二〇号証の一・二、第二一号証の一ないし三、第二二号証の一・二、第二三、第二四号証、第二五ないし第二八号証の各一・二、第二九ないし第三七号証、証人【C】、同【B】の各証言及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
1 原告商品は、原告との間でその開発製造した製品はすべて原告の商品として販売される旨約定を結んでいる訴外パシフイツク工業株式会社において昭和五三年六月中旬に完成され、同月、原告の新製品として発表され、同年七月から、販売賃貸等されたところの、マイクロ・コンピユーター・システムを利用した影像再生装置によつて、その受像機に映し出される影像を主体として、遊戯者が一定の操作をすることによつて遊戯するテレビ型ゲームマシンの一種であり、テーブル型(別紙第一目録記載のとおりのもの)とアツプライト型(同第二目録記載のとおりのもの)との二種類がある。その受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様は別冊説明書上段記載のとおりであるところ、これら影像とその変化の態様、とくに別紙第三目録(一)、(二)記載のインベーダーの影像とその変化の形態、インベーダーからも遊戯者が操作するビーム砲に対しミサイルを発射して攻撃を仕掛けてくる点及び遊戯者が操作するビーム砲による攻撃が成功し得点が上るにつれ、インベーダーの進行速度が速くなる等の点は、従前のテレビ型ゲームマシンの影像とその変化の態様にみられぬ特殊かつ新規なものであつた。
2 原告は、昭和五三年七月から、原告商品を全国七〇か所に所在する営業所及び出張所並びにオペレーターを介して、ゲーム場、喫茶店その他の需要者に販売、賃貸し、また全国各所に所在する直営のゲーム場に使用のため展示しているが、その販売、賃貸及び展示した数量は、同年九月末までに三〇〇〇台(テーブル型二〇〇〇台、アツプライト型一〇〇〇台)、同年一〇月末までに合計七〇〇〇台、同年一二月末までに合計二万三〇〇〇台(テーブル型とアツプライト型とは三対一の割合)に達し、以後翌五四年七月まで逐次増加したが、更に原告は、昭和五三年一二月から一四社程度に対し対価を得て原告商品の製造を許諾し、その総許諾台数は一〇万台に上つた。
3 原告商品は、昭和五三年六月一六日東京の本社ビル一階シヨールームにおいて、また同月二三日大阪市所在の国際貿易センターにおいて開催された原告の新製品発表会に展示発表され、その受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様の前記特殊性及び新規性が出席した業界関係者の注目を浴び、昭和五三年中において、業界紙、専門誌、新聞等に多数回にわたり紹介されるとともに、原告によつて、業界紙、パンフレツト等により継続的な宣伝活動がされた。
4 原告商品は、ゲーム場に備え付けられるや前記特殊性及び新規性から、東京、
大阪等の都会を中心に遊戯者の人気を集め、昭和五三年一〇月ころからは大流行となつたこと、これに前記2のとおりの販売賃貸等の態様及び数量、3のとおりの業界紙による紹介、原告による宣伝活動等も加わつて、遅くとも昭和五四年一月初めころには、日本全国にわたつてゲーム場、喫茶店の経営者、遊戯者等の需要者に、
原告商品の受像機に映し出される別紙第三目録及び別冊説明書上段記載のインベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様は原告の商品であることを示すものとして、広く知られるようになつた。
以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定の事実によると、原告商品の受像機に映し出される前記インベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様は、それ自体、
商品の出所を表示することを目的とするものではないが、遅くとも昭和五四年一月初めころには、取引上二次的に原告商品の出所表示の機能を備えるに至つたものと認められるのであつて、不正競争防止法第1条第1項第1号の規定にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」として、そのころ我が国において周知になつたものということができる。
三 請求の原因4の事実は当事者間に争いがない。
四 証人【B】の証言によつて原告主張のとおりの写真であると認められる甲第五八号証の一ないし四、同証言に弁論の全趣旨を総合すれば、被告商品の受像機に映し出される各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様は、別冊説明書下段記載のとおりであり、原告商品のものに対比し、TAITO CORPORA TIONの表示がなく、また受像機上に一時的に映し出されるゲーム名が原告商品においてはSPACE INVADERであるのに対し、被告商品はSPACE MISSILEと表示されている点が相違するのみで、他は全く同一であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右事実によれば、被告商品は、前記原告商品であることを示す表示としてのその受像機に映し出されるインベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれら影像の変化の態様と同一の、インベーダーを主体とする各種影像とゲームの進行に応じたこれらの変化の態様をその受像機に映し出すものであつて、被告会社が被告商品を製造販売及び賃貸する行為は、被告商品を原告商品と混同させるものというべきである。
五 証人【B】の証言により真正に作成されたものと認められる甲第五九号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第四六号証の二、いずれも郵便官署作成部分についてはその方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定され、その余の部分については弁論の全趣旨により真正に作成されたものと認められる甲第四六号証の一、第四八号証及び同証言に弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
訴外株式会社ウコーコーポレーシヨンは、昭和五四年一月上旬ころから、被告商品と同一の商品を製造販売賃貸していたが、これを知つた原告は、右会社代表取締役【D】に対し、同月一九日到達の書面をもつて、右商品の製造販売行為は不正競争防止法に違反する旨を警告した。同年二月ころ、同社は事実上倒産し、被告【A】が代表取締役である訴外株式会社九州ウコーへ営業譲渡を行ない、その際、
右【D】は、被告【A】に対し、同商品の製造等を継続するにあたつては原告の許諾を得るべきことを伝えたが、訴外九州ウコーは、そのまま、同商品(このころ、
受像機に映し出されるゲーム名の表示はSPACE MISSILEと変更された。)の製造販売等を継続した。被告【A】は、同年五月一五日、被告会社を設立して代表取締役となり、訴外九州ウコーから、同会社が訴外株式会社ウコーコーポレーシヨンから引きついだ工場施設、営業施設、従業員等すべてを承継し、被告商品の製造販売賃貸を行なつた。
以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右事実によれば、被告【A】は、被告会社の代表取締役としての職務を行なうにつき少なくとも過失により前記四の原告の商品と混同を生ぜしめる行為をしたものと認められるから、被告会社及び被告【A】は各自、不真正連帯の関係で、右行為により原告に生じた損害を賠償すべき義務がある。
原告は、前記のとおり、第三者に対し、対価を得て原告商品の製造を許諾しており、被告らの右行為により右許諾料相当額の利益を喪失したものということができ、前掲甲第五六号証、第五九号証、証人【C】、同【B】の各証言によれば、被告会社が昭和五四年五月一五日から同年七月末日までの間に製造した被告商品は少なくとも一五〇〇台であり、原告が第三者に対し原告商品の製造を許諾する際の通常の許諾料は一台につき二万五〇〇〇円であると認められるから、原告が喪失した得べかりし利益は、二万五〇〇〇円に右製造台数一五〇〇を乗じた三七五〇万円となる。
六 以上のとおりであるから、被告らは各自、原告に対し、原告の右損害金三七五〇万円及びこれに対する右不法行為の日の後である昭和五四年八月一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務があり、この義務の履行を求める原告の本訴請求はすべて理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条第93条の、仮執行の宣言につき同法第196条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。
追加
第一目録スペースインベーダー(テーブル型)<12316-001>第二目録スペースインベーダー(アツプライト型)<12316-002>第三目録の(一)インベーダー(スペースインベーダー)の影像<12316-003>第三目録の(二)インベーダー(スペースインベーダー)の影像<12316-004>第四目録の(一)インベーダーの原画<12316-005>第四目録の(二)インベーダーの原画<12316-006>第四目録の(三)インベーダーの原画<12316-007>第五目録フアイテイング・ミサイル(スペースミサイル)<12316-008>別冊説明書<12316-009><12316-010><12316-011><12316-012><12316-013><12316-014><12316-015><12316-016><12316-017><12316-018><12316-019><12316-020><12316-021><12316-022><12316-023><12316-024><12316-025><12316-026><12316-027><12316-028><12316-029><12316-030>
裁判官 牧野利秋
裁判官 清水篤
裁判官 設楽隆一
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