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事件 昭和 55年 (ネ) 1310号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 1981/07/28
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 控訴人(附帯被控訴人)の本件控訴を棄却する。
二 原判決主文1項を次の括孤内のとおり変更する。
「1 控訴人(附帯被控訴人)は別紙目録(一)記載のロツカーを販売してはならない。
2 控訴人(附帯被控訴人)は同ロツカーに用いられる同目録表示の図形及び文字が印刷されたビニール製シートを廃棄せよ。
3 控訴人(附帯被控訴人)は被控訴人(附帯控訴人)ナシヨナル・フツトボール・リーグ・プロパテイーズ・インコーポレーテツドに対し金一五〇万円を支払え。
4 控訴人(附帯被控訴人)は被控訴人(附帯控訴人)ソニー企業株式会社に対し金七一万四五六五円及びこれに対する昭和五三年一一月八日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
5 被控訴人(附帯控訴人)らのその余の請求を棄却する。」三 控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の負担とし、附帯控訴費用はこれを三分し、その二を控訴人(附帯被控訴人)の、その余を被控訴人(附帯控訴人)らの負担とする。
四 この判決の第二項括孤内は被控訴人(附帯控訴人)ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。原判決主文4項を右の限度で変更する。
事実及び理由
申立
一 控訴人(附帯被控訴人、「控訴人」という。)(控訴事件につき) 原判決中控訴人敗訴部分を取消す。
被控訴人らの本訴請求を棄却する。
被控訴人らは、連帯して、控訴人に対し金五〇〇万円及びこれに対する昭和五五年一月三〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの連帯負担とする。
第三項につき仮執行の宣言。
(附帯控訴事件につき) 本件附帯控訴を棄却する。
附帯控訴費用は附帯控訴人の負担とする。
二 被控訴人(附帯控訴人、「被控訴人」という。)ら(控訴事件につき) 本件控訴を棄却する。
(附帯控訴事件につき) 原判決を次のとおり変更する。
控訴人は別紙目録(一)記載のロツカーを販売してはならない。
控訴人は同ロツカーに用いられる同目録表示の図形及び文字が印刷されたビニール製シートを廃棄せよ。
控訴人は被控訴人ナシヨナル・フツトボール・リーグ・プロパテイーズ・インコーポレーテツドに対し金二〇〇万円を支払え。
控訴人は被控訴人ソニー企業株式会社に対し金七一万四五六五円及びこれに対する昭和五三年一一月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
仮執行の宣言。
主張、証拠
当事者双方の主張及び証拠の関係は、次に付加、訂正するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決六枚目表五行目「提掲」を「提携」と、同二五枚目裏一一行目「誰れ」を「誰」と、同二七枚目表一行目「馴染れ」を「馴染まれ」と、同二八枚目裏一一行目「誰れ」を「誰」と、同三三枚目表八行目「行」を「行き」と、同三七枚目表七行目「漸新」を「斬新」と、同四五枚目表五行目「乱用」を「濫用」と、同四六枚目表三行目「仮分」を「仮処分」とそれぞれ改める。)。
一 被控訴人ら1 原判決主文1項において認容された別紙目録(一)記載のロツカーの販売禁止請求の目的を確実に達成するためには、同ロツカーに用いられるビニール製シートから同シート上に印刷ずみの同目録表示の図形及び文字を抹消させるか、又は同シートそのものを廃棄させる必要があるが、同シート上から右印刷部分を抹消させることは不可能であり、廃棄させるより外はない。そこで、被控訴人らは、附帯控訴により、当審における新たな請求として、控訴人に対し同ロツカーに用いられる同目録表示の図形及び文字を印刷したビニール製シートの廃棄を求める。不正競争防止法には物の廃棄について明文の規定はないけれども、不正競争行為の差止請求に随伴する効果としてかかる請求が許されることは疑いない(東京高裁昭和五三年一〇月二五日判決、判例時報九一四号六〇頁、【A】「註解不正競争防止法」六九頁参照)。
2 被控訴人らと控訴人との間には、本件紛争に関し、(1) 控訴人が被控訴人ソニー企業株式会社(以下「被控訴人ソニー企業」という。)を相手方として申立てた営業妨害行為禁止仮処分事件(大阪地方裁判所昭和五〇年(ヨ)第四〇二〇号事件)、(2)被控訴人らが控訴人を相手方として申立てた不正競争行為禁止仮処分事件(大阪地方裁判所昭和五一年(ヨ)第一一八七号事件)、(3)控訴人が被控訴人ソニー企業を被告として提起した製造販売差止請求権不存在確認等請求事件(大阪地方裁判所昭和五一年(ワ)第四七九号事件)、(4) 右(3)事件の第一審判決に対する控訴人からの控訴事件(大阪高等裁判所昭和五三年(ネ)第一三〇九号事件)、(5) 被控訴人らが控訴人を被告として提起した不正競争行為差止等請求事件(原審訴訟)、(6)本件控訴事件があり、右(1)ないし(5)の全事件につきすべて被控訴人らの申立が認容され、控訴人はすべて敗訴した。
被控訴人ソニー企業と被控訴人ナシヨナル・フツトボール・リーグ・プロパテイーズ(以下「被控訴人NFLP」という。)との間において、原判決添付別紙目録(二)の一及び二記載のマーク(以下、本件表示という。)の使用に関する日本国における紛争に要した弁護士費用は被控訴人NFLPが負担する旨の約定があるので、右各事件に要した弁護士費用は被控訴人NFLPの負担となつた。被控訴人NFLPは原審において右(3)及び(4)の訴訟事件について支出せざるをえなかつた弁護士費用合計三〇〇万円を控訴人の不当な訴訟提起によつて蒙つた損害として、(5)の訴訟事件の弁護士費用一〇〇万円を不正競争行為という違法行為により蒙つた損害として請求したが、原判決は(3)及び(4)の訴訟事件について弁護士費用請求をすべて棄却し、(5)の訴訟事件について弁護士費用一〇〇万円のみを認容し、その余の弁護士費用の請求を棄却した。
そこで、被控訴人NFLPは、附帯控訴により、原判決中弁護士費用に関する部分を変更し、(3)及び(4)の訴訟事件についてはこれに要した弁護士費用合計三〇〇万円のうち五〇万円、(5)の訴訟事件についてはこれに要した弁護士費用のうち一〇〇万円(原判決認容額)の支払を求め、かつ、当審における新たな請求として、本件控訴事件に要した弁護士費用一〇〇万のうち五〇万円の支払を求める。
なお、被控訴人NFLPは、従前右各弁護士費用について昭和五三年一一月八日又は昭和五五年一一月一四日から各完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金を付加して請求していたが、右遅延損害金の請求はすべてこれを取下げる。
ちなみに、被控訴人らの調査によれば、控訴人は昭和五三年末既に倒産しており、その後は同五四年二月一四日設立された丸竹織ネーム株式会社(代表取締役は控訴人代表者の子)が控訴人の営業を引継いでおり、他方控訴人はその所有の土地建物を昭和五四年九月に売却しているのであつて、控訴人の会社としての実体は遅くとも昭和五四年末までには消滅している。このような状況のため被控訴人らは仮執行宣言付の原審判決を得たものの、その執行を断念せざるをえなかつた。しかるに、控訴人は本件控訴を提起し、そのため被控訴人らはまたしても回収のあてのない訴訟費用の出捐を強いられることになつた。現実には何らの実体を有していない控訴人のこのような訴訟行為は、その当事者能力が否定されるべきであると考えるが、少くとも控訴権の濫用に当る。
3 原判決添付別紙目録(二)の一及び二記載の本件表示は、遅くとも昭和五〇年初めころには、被控訴人らの表示として日本国において広く認識されるに至つた。
二 控訴人1 被控訴人ら主張1、2の附帯控訴の理由中、控訴人と被控訴人らとの間に被控訴人ら主張のような仮処分事件及び本案訴訟事件があること、本件において原審が被控訴人らの請求の一部を棄却したことは認め、被控訴人ソニー企業と同NFLPとの間において被控訴人ら主張のような弁護士費用負担に関する約定があることは知らず、その余の点は争う。
2 被控訴人らはその主張にかかる本件表示が遅くとも昭和五〇年初めころには日本国において広く認識されるに至つた旨主張するが、本件表示(三〇種類の各図柄)は在米のアメリカンフツトボール・プロチームが一チーム一種類の割合で使用してきた図柄であつて、一九の再使用権者(原判決添付別紙目録(三)記載の一九社)が自己の商品と結びつけて使用した図柄ではない。再使用権者らが現実に自己の商品に結びつけて使用した図柄は甲第四六号証の一ないし四記載のもの以外には絶対にないのである。被控訴人らの右主張は著しい虚構である。
3 原判決は、控訴人が原審繋属中の昭和五三年九月二〇日に取得した登録第四九〇二九七号意匠権(別紙目録(一)記載のとおり。)に基づいてした不正競争防止法第6条に基づく抗弁を、権利の濫用として排斥したが、右判断は、第一に原判決が被控訴人ソニー企業の控訴人に対する警告状の趣旨を誤解し、この重大な誤解が基礎となつている点において、第二に控訴人の右登録意匠の取得について無効原因となるような違法性はもちろん、被控訴人ソニー企業から警告を受けた事情をも含めて何らの不正違法がないのに、これを不正行為と速断した点において、第三に権利濫用観念を誤つた点において、重大明白な誤りを犯している。その理由は次に述べるとおりである。
意匠権の行使には、(イ)意匠権者自身が意匠の実施(製造、販売)をするという内面的、消極的な面と、(ロ)他人に対して当該実施行為の禁止をするという外面的、積極的な面とがあるが、本件で問題となるのは(イ)の面であつて、(ロ)ではない。一私人たる被控訴人ソニー企業の警告行為があつたがために、意匠権者である控訴人がその登録意匠を自ら実施することさえ許されないことになるという原判決の権利濫用理論を是認すると、他人の実施行為に対する禁止権どころか、意匠権者自身が実施することさえできない奇妙な意匠権が存在することを認めることになるが、このような結論は登録意匠の法制に明らかに矛盾するから、この一点から考えても原判決の権利濫用論の誤りは明白である。そもそも特許権、実用新案権、意匠権等の侵害訴訟の審理過程において、原告の有する特許登録に明白な無効原因が存することが明らかになつた場合でも、一旦特許権が設定登録された以上、
特許庁においてその特許の無効審決が確定しないかぎり、その特許は有効なものとして被告に対し差止損害賠償等を命ずる判決をしなければならないとするのが大正四年四月三〇日大審院判決(大正三年(ワコ)第一三二号)以来一貫した判例である。如何に明白な無効原因を包蔵した特許権であつても、無効審決が確定しないかぎり、これによつて第三者に対する権利行使も適法可能であるとしたこの確立された判例の考え方と比較して、出願前に一私人から不正競争行為として抗議を受けたとの一事によつて、不正競争防止法6条に基づく意匠権者の抗弁権を根底から否定し、ひいては意匠権者自身の実施さえ禁止されるとした原判決の権利濫用論は、
余りにも正反対の極論であつて、到底承認することができない。不正競争防止法6条に不正競争行為の除外例として意匠権の行使が規定されている以上、すべての意匠権がその除外例規定の適用を受けることになるのは、絶対権としての意匠権の効力上当然である。同じ意匠権のうちにこの法条の適用を受けるものと受けえられないものとの二種があるとした原判決の判断は、意匠権の絶対性と不正競争防止法6条の解釈適用を全く誤つたものである。
原判決七七枚目表「被告の本件登録意匠は、裁判所においてこれを当然無効として扱うことはできないにしても……」なる説示は、控訴人の意匠登録取得行為を罪悪視したもので、控訴人の人格にもかかわる重大な意思表示であるが、控訴人の意匠登録取得行為のどこにそのような不正、不法があるとされるのか心外である。
思うに、原審は同意匠の登録出願日たる昭和五一年四月一日より前の同五〇年一一月中に、控訴人が同意匠の実施品であるロツカーをダイエーに販売し、それを知つた被控訴人ソニー企業が控訴人に対し甲第一一二号証の警告をした点を捉えて、
「出願前控訴人自身が販売して公知にし、新規性を喪失した意匠であることを知りつつ、特許庁を欺いて獲得した登録詐獲罪の所産である。」と考えたのではなかろうか。しかしそれは余りにも軽卒な速断である。控訴人の同意匠登録の取得にはその創作性の点においても、新規性の点においても、また創作者からの出願権の承継関係においても、何らの違法性、不法性がないのはもちろん、その登録取得の目的が、被控訴人らからの不正競争防止法による追及を回避するためというようなケチなものではなく、唯工業所有権を獲得することによつて営業上の独占利益追求の地位を確立し、ひいては私的財産形成の一助とすること以外になかつたことは、一般の場合と異なるところはないのである。
被控訴人ソニー企業の警告状(甲第一一二号証)は、「アメリカに所在する某々フツトボール・プロチームが個々に使用しつつある当該マーク(以下、「A者のA表示」と略称する。)ないし「同被控訴人が主張する商品化権又は独占的使用権の対象とされる表示(以下、「B者のB表示」と略称する。)を根拠とするものであつて、「同被控訴人から使用許諾を受けた再使用権者がそれぞれ自己の商品に使用しつつある表示(以下、「C者のC表示」と略称する。)を法律上の根拠としたものではなかつた。本訴において被控訴人らが不正競争防止法によつて保護されるべきであると主張しているのはC者のC表示なのであるから、右警告は別の事実を根拠とした別種の警告であつたのに、原判決はこれをC者のC表示を根拠とする警告であると誤解し、この警告を根拠に控訴人の意匠権取得行為を非難攻撃した点において重大な誤りを犯している。この警告状について特に留意すべき点は、同被控訴人のいう「独占的使用権」なるものの本質が何であつたかということである。前記A者のA表示自体はそれについて著作権があるわけではなく、フツトボール競技という興業に使用する単なるサービスマークである。したがつて、その独占権としての効力も同種のサービス業の範囲に限られるのであつて、物品販売業の領域、それもこの世に存在するあらゆる商品についての使用の独占を効力範囲とするものでは本来ない。
本源の使用者たるA者の有する独占権の効力範囲がこのように特定された極めて狭小なものである以上この本源の使用者たるA者からのリレー的契約によつて使用権を取得したに過ぎない被控訴人ソニー企業の独占権が右本源者の有するそれよりも強大広範囲のものでないことは事理の当然である。こうした詮議の上に立つて被控訴人ソニー企業が警告書でいう独占使用権なるものを考察すると、それは第三者をも拘束する法律用語としての「独占的使用権」ではなくして、実は単なる一手許諾契約、すなわち、一方当事者たる被控訴人NFLPが他方当事者たる被控訴人ソニー企業に対し、「この契約が存続する限り、これと同一の使用許諾はソニー企業以外の者には与えない」という被控訴人NFLPの一方的な義務を伴つた使用権でしかないのである。したがつて、被控訴人ソニー企業が実質独占的使用権でないものを独占的使用権と詐称して、控訴人を初め甲第六七ないし第七七号証、第八〇ないしい八二号証の各名宛人を含む多数の第三者に対して使用停止を強要したのは、まさに詐欺脅迫行為以外の何ものでもなく、かかる被控訴人ソニー企業の不法行為に屈するわけにはゆかないとして妨害排除の仮処分申請、本訴提起等の法的手段に訴えたのは控訴人として当然の措置である。警告状の趣旨が何であれ、これに承服せず、その追及から逃れる手段として意匠の登録を受けたのだから、その意匠登録取得は罪悪行為であり、かかる罪悪行為によつて取得した意匠権を不正競争防止法6条の抗弁理由に使用することは権利の濫用であつて許されないとしたのが原判決であるが、善悪正邪の逆倒も甚だしいといわねばならない。
原判決は権利濫用論の理由付けの一つとして、意匠権の先願商標権に対する牴触関係を規定した意匠法26条の法理を引用している。しかし、前記A者のA表示(在米フツトボールチームの使用するマーク)については、その本源の使用主たるA者といえども日本国において商標権を取得していないし、また、同条において登録意匠が商標権に牴触するとは商標と商品の両面において両者間に同一又は類似の関係がある場合であつて、商標が互に同一又は類似であつても商品が同一でも類似でもない場合は商標権との牴触の問題は生じないのであるから、以上何れの点からみても権利濫用論の理由付けとして意匠法26条の法理を引用したのは失当も甚だしい。
4 原判決は、原判決添付別紙目録(二)の一及び二記載の在米アメリカンフツトボール・プロチームの使用するシンボルマーク自体であるところの本件表示なるものが、被控訴人らを軸とする再使用権者グループの商品及び営業たることを示す表示として、控訴人の本件ロツカー発売当時既に広く認識されていたとの事実を認定した。しかし、原判決にいう本件表示なるものは、原判決自らがいつているように、それ自体は在米のアメリカンフツトボール・プロチームの使用しているマークであつて、被控訴人らの主張する再使用権者らが使用している表示そのものではない。在米のアメリカンフツトボール・プロチームが使用しているマークと、再使用権者らが現実に自己の商品に使用している表示とは、全く別物である。控訴人の本件ロツカーが、それの表示(図柄)の上から再使用権者グループの使用する商品の表示と混同を生ぜしめるものであるとするには、再使用権者グループが商品の上に現実に使用している具体的な表示そのものと直接比較して決定すべきであり、再使用権者らが現実に使用している表示ではない在米のアメリカンフツトボール・プロチームの使用マークと比較しても全く無意味である。これは至極当然の論理であるが、原判決は控訴人の本件ロツカーが比較されるべき対照物を取り違えて事件を処断した驚くべき違法を犯していると同時に、当然判決理由の齟齬ともなる。なお、
再使用権者らが現実に商品の上に使用した図柄がどんなもので、どんな商品の、どこに、どのような態様で表示されたものであつたかという具体的事実については、
甲第四六号証の一ないし四以外に被控訴人らの主張、立証はないのである。
次に、控訴人の本件ロツカー(それに表示された全面柄模様が商品の出所識別標識としてのマークに当るかどうかの議論は暫く措く。)が被控訴人主張の再使用権者らが現実に自己の商品に使用している表示と同一又は類似であるということを理由に、控訴人の本件ロツカー販売行為が不正競争防止法1条1項1号又は二号に該当すると結論するためには、再使用権らの使用表示の著名性(広く認識せられた他人の表示)をその使用実績の上から確定する必要がある。その確定のためには、
(1) 各再使用権者が現実に商品に使用した表示(図柄)、(2) その表示を現実に使用した商品、(3) その表示の使用態様、等の基本事項をまず明確にした上で、少くとも、(4) その各使用年数、(5) その各商品の販売量、販売地域を数字的に確定することが絶対に必要である。しかるに、原判決は数千言を費して問題の核心に関係のない、単なる図柄使用の動機等、商品表示の著名性の認定に全く無用無関係の事項を認定しただけで、本件表示なるものが、再使用権者らの商品の表示として、控訴人の本件ロツカー発売当時既に周知性を取得していたものと速断した。原判決中右の点に関して僅かに意味があると思われる認定は、「原告ソニー企業及び再使用権者による本件表示を付した商品の販売及びその大々的な広告宣伝等があいまつて、……昭和五〇年度の再使用権者の本件表示を付した商品の売上合計額は八〇億円にも達し、……」という部分のみであるが、右認定は、再使用権者の販売した商品が具体的には何であつたか、その商品のどこに、どのような態様で、どの図柄が表示されていたかという肝腎な基本的事項に何一つ考慮を払うことなく莫然と売上金額のみを認定したものであるから、右事実をもつて再使用権者らの使用している表示の著名性(周知性)を認定することは許されない。
5 仮に、控訴人の本件ロツカー販売行為が、被控訴人ら主張の再使用権者ら販売の商品との間に混同が生じるため、不正競争防止法1条1項1号又は二号に該当するとしても、控訴人の右行為によつて直接損害を受けたり、損害を受けるおそれのある者は再使用権者らであり、競合商品の販売をしていない被控訴人らではないことは明白である。したがつて、控訴人の右行為については、被控訴人らは不正競争防止法1条1項にいう「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」に該当しないから、
本訴請求につき原告適格を有しない。
三 証拠(省略) 理 由
原審における被控訴人らの本訴請求及び控訴人の反訴請求について
当裁判所は、原審における被控訴人らの本訴請求を原判決が認容した限度において正当として認容すべく、右認容された分以外の被控訴人NFLPの原審における損害賠償請求を失当として棄却すべく、控訴人の反訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決の理由と同一であるから、その記載を引用する。
なお、被控訴人らは、控訴人は当事者能力がなく、また、本件控訴は控訴権の濫用である旨主張するが、右主張は理由がなく、採用することができない。
一 原判決四九枚目裏一行目「という」を「と主張する」と改め、同五〇枚目裏七行目から八行目「第三号証の二、」を削除し、一〇行目「甲第三号証の一、」を「甲第三号証の一、二」と改め、一一行目「第一一号証」の次に「第二〇号証、」を挿入し、同五三枚目表一一行目「前掲甲」の次に「第四号証の一ないし三、」を挿入し、同裏七行目「第九四号証」の次に「、第九六号証」を挿入し、七行目から八行目にかけての「第四七号証の一、二」を「第六〇ないし第六三号証」と改め、
同七五枚目表六行目「原告ら」から七行目「みなす。」までを「成立に争いのない乙第二、三号証によつてこれを認めることができる。」と改め、同裏八行目「前記擬制自白」を「前項冒頭認定の」と改め、同一一行目「争いのない」の次に「甲第一一二号証、前掲」を挿入し、同七六枚目表九行目「本件表示と同一の」を「本件表示のうちの七種と同一ないし酷似の図柄を用いた別紙目録(一)記載の」と改め、同裏六行目「相手方とする」の次に「本訴請求原因(B)2(二)(1)記載」を挿入し、同七七枚目表一二行目から末行にかけての「本件表示と同一であり」を「本件表示のうちの七種と同一であるか又は酷似しており」と改め、同七九枚目表八行目「1参照」を「1ないし3参照」と改め、同裏四行目「また、」から六行目「いうまでもない。」までを「したがつて、控訴人は同被控訴人に対し控訴人の本件ロツカー販売行為により同被控訴人に生じた営業上の損害を賠償する責に任じなければならない。」と改め、末行「四法(」の次に「特許法102条1項
実用新案法29条1項、」を挿入し、同八〇枚目裏末行頁「第一一七号証」を「第一〇六号証、第一〇八号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第一一六号証の一」と改め、同八二枚目裏末行及び同八三枚目表九行目各「相応に」をいずれも「かなり」と改め、同八三枚目表二行目「争い甲」を「争いのない甲」と改め、同八四枚目裏一一行目「前掲」を「成立に争いのない」と改め、末行「迎ぐ」を「求める」と改める。
二 控訴人は、不正競争防止法6条に不正競争行為の除外例として意匠権の行使が規定されている以上、すべての意匠権がその除外例規定の適用を受けることになるのは絶対権としての意匠権の効力上当然であり、同じ意匠権のうちにこの法条の適用を受けるものと受け得られないものとの二種があるとした原判決の判断は、意匠権の絶対性と不正競争防止法6条の解釈適用を全く誤つたものである旨主張する。
しかし、権利の行使及び義務の履行は信義に従い誠実にこれをなすことを要し、権利の濫用が許されないことは、民法1条に明定されているところである。したがつて、絶対権としての所有権の行使においてもその濫用が許されないのと同様に、意匠権の行使においてもそれが濫用にわたる場合にはその行使が否定されることになることは当然である。そして、原本の存在及び成立に争いのない甲第一〇六ないし第一〇八号証、成立に争いのない甲第一一二号証、同乙第二、三号証、右甲第一〇七号証により真正に成立したものと認める甲第四八号証によると、原判決理由第一〔二〕(A)四1ないし3の各事実、すなわち、控訴人は、本件表示(原判決添付別紙目録(二)の一、二記載のシンボルマーク)が我が国において被控訴人らを中核とする再使用権者グループの商品又は営業の表示として広く認識されるに至つた昭和五〇年初め頃の後である昭和五〇年八月以降において、本件表示のもつ強い顧客吸引力を利用する意図のもとに本件ロツカーのデザインの作成を依頼して完成させ、同年一一月中旬本件ロツカーの販売を開始したこと、したがつて本件ロツカーの販売当初から被控訴人らは控訴人に対し不正競争防止法に基づきその販売の差止を請求し得る地位を取得していたこと、被控訴人ソニー企業は控訴人に対し同年一一月末頃本件ロツカーの販売が被控訴人らに対する関係で不正競争防止法1条1項1号、二号に該当する旨を警告するとともにその販売をとりやめるよう要求したこと、これに対し、控訴人は同被控訴人の警告及び要求を無視するかたわら、当然予期される同被控訴人らの不正競争防止法に基づく差止請求等を免れるための対抗措置として、同五一年四月一日本件ロツカーにかかる形状、模様の結合意匠について意匠登録出願をして意匠権を取得したことが認められるのであつて、このような事情下における控訴人の本件ロツカー販売行為は、形式的には登録意匠権の行使に該当するけれども、右意匠権の取得が被控訴人らに対する関係で信義に反するものといわざるをえないから、不正競争防止法6条にいう意匠権の正当な行使と認めることができず、控訴人が同条の適用を主張することは権利の濫用として許されないと解するのが相当である。したがつて、控訴人の右主張は採用することができない。
控訴人は、被控訴人ソニー企業の警告状(甲第一一二号証)は、米国のアメリカンフツトボール・プロチームが個々に使用しつつあるシンボルマークないし同被控訴人が主張する商品化権又は独占的使用権の対象とされる表示を根拠とするものであつて、同被控訴人から使用許諾を受けた再使用権者がそれぞれ自己の商品に使用しつつある表示を根拠としたものではない旨主張する。しかし、原判決理由第一〔二〕(A)二2冒頭掲記の各証拠によれば、被控訴人ソニー企業はすべての宣伝広告を通じて当初から本件表示(原判決添付別紙目録(二)の一、二記載のシンボルマーク)全部を常にNFLマークとして一体的に同被控訴人を中核とする再使用権者グループの販売商品の宣伝広告に使用してきており(バツフアロービルズのマークについては当初原判決添付別紙目録(二)の一最上段記載のものであり、後に同二下段記載のものに変更されたけれども、両マークは類似範囲内のものであると認められる。)、同被控訴人が再使用権者と再使用許諾契約を締結する際にも、販売商品は特定制限するが、使用する表示には制限がなく再使用権者は本件表示全部を使用できることになつていること、再使用権者らは青少年向きアウトウエア、スポーツシヤツ、トレーナー、Tシヤツ、帽子、スポーツバツグ、レジヤーバツグ、
文房具、鞄、靴下、ガラスコツプ等の商品に本件表示のうちの任意の一つを直接付して販売しているが、本件表示の全部でも一部でも任意に使用できる契約になつているため、各再使用権者が各種新聞、雑誌、パンフレツト等に商品の宣伝広告をする際には、その時点で現実に商品に付している個々のマークにはこだわらず、NFLマーク付きないしアメリカンフツトボール・プロチームのマーク付き商品という特徴を強調し、本件表示全部を自己の販売商品の表示として宣伝広告に使用する例が多いこと、このような本件表示の使用態様、本件表示がすべてアメリカンフツトボールのヘルメツトを型どつた簡単な基本型で統一されており、いずれもアメリカンフツトボール・プロチームのイメージを彷彿させるものであること等から、各種新聞雑誌の報道も本件表示の個々のマークのチーム名等にはとらわれず、本件表示を一体的なものと観念して「アメラグフアツシヨン」、「NFLマーク商品」等と称呼するのが一般であり、取引業界及び顧客層の間においても、被控訴人らを中核とする再使用権者らのグループの商品(本件表示のうちの一つが付されている。)を一括して、統一的に把握し、「アメリカンフツトボール・フアツシヨン」、「NFLマーク商品」、「ナシヨナルフツトボールリーグ・マーク付き商品」、「アメリカンフツトボール・バツグ」等と称呼、観念されていること、その結果本件表示全部が一つのまとまつた関連表示として、昭和五〇年初め頃、主として青少年向き衣料、身の廻り品、文房具等の商品分野において、被控訴人らを中核とする再使用権者グループの商品及び営業の表示として、広く認識されるに至つたと認めるのが相当であるから、被控訴人ソニー企業が右警告状において本件表示を法的根拠としたことは正当であり、控訴人の右主張は採用することができない。
三 控訴人は、本件表示は被控訴人らの主張する再使用権者らが現実に使用している表示とは全く別物である旨主張するが、再使用権者らが現実に本件表示を使用していることは前記二のとおりであるから、控訴人の右主張は採用することができない。
控訴人は、本件表示は在来のアメリカンフツトボール・プロチームが一チーム一種類の割合で使用している図柄であつて、一九の再使用権者が自己の商品と結びつけて使用した図柄ではなく、再使用権者らが現実に自己の商品に結びつけて使用した図柄は甲第四六号証の一ないし四記載のもの以外には絶対にない旨主張するが、
控訴人の指摘する甲第四六号証の一ないし四に記載の図柄は本件表示そのものにほかならず(ただし、バツフアロービルズのマークについては変更後のもの。控訴人の使用したのもこの変更後のもの。)、したがつて、控訴人の右主張は理由がない。
控訴人は、本件ロツカー販売行為が不正競争防止法1条1項1号又は二号に該当すると結論するためには、本件表示の著名性をその使用実績の上から確定する必要があり、その確定のためには、各再使用権者が現実に商品に使用した表示、その表示を現実に使用した商品、その表示の使用態様等の基本事実をまず明確にした上で、少なくとも、その使用年数、その各商品の販売量、販売地域を数字的に確定することが絶対に必要である旨主張する。表示の著名性(周知性)確立の有無の判断に際しては、右控訴人主張の諸点も考慮の対象となりうるが、その判断の基礎とされるべき事実は右の諸点のみに限られるものではなく、広く当該表示の特質及び印象の強さ、伝播力の速さ及び強さ、使用した広告媒体の質及び量、商品及び表示に対する購買者層の評価ないし人気(反応)、マスコミ報道の姿勢、他の流行との相乗作用、取引の実情等諸般の事情を総合考慮してその判断をすべきものである。そして、右の諸事実を総合判断した結果本件表示が昭和五〇年初めごろ我が国において被控訴人らを中核とする再使用権者グループの商品又は営業の表示として広く認識されるに至つたものと認めることができることは、前記二及び原判決理由第一(二)(A)二2、3記載のとおりであり、右認定に際し各商品の販売量、販売地域を数字的に確定することが絶対に必要であると解すべき合理的理由はないから、
控訴人の右主張は採用することができない。
四 控訴人は、本件ロツカー販売行為が不正競争防止法1条1項1号又は二号に該当するとしても、右行為によつて直接損害を受けたり、損害を受けるおそれのあるものは再使用権者であり、被控訴人らは同項柱書所定の「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」には該当しないから、本訴請求につき原告適格を有しない旨主張する。しかし、前記のとおり、被控訴人NFLPは、米国のNFLに加盟するプロフツトボールチームが平等の持分を有し本件表示の商業上の利用を管理する目的をもつて一九六三年に設立された会社、被控訴人ソニー企業は、昭和四八年一〇月二日被控訴人NFLPと本件表示に関する使用許諾契約を締結し、右契約上日本における唯一の使用権者として特に指定された商品に付して商品化して事業を営む権利及びこれを第三者に有償で再使用せしめる権利を取得した者であり、本件表示は昭和五〇年初め頃には我が国において被控訴人らを中核とする再使用権者グループの商品及び営業たることを示す表示として広く認識されるに至つたのであつて、被控訴人らは、控訴人の本件ロツカー販売行為により再使用権者に対する統制、商品の出所識別機能、品質保障機能及び顧客吸引力を害されその結果営業上の利益を害されたと主張して不正競争防止法に基づき右販売の差止損害賠償等を請求している本件訴訟において正当な当事者であることは、明らかである。そして、前記事実によれば、被控訴人らは控訴人の本件ロツカー販売行為により被控訴人ら主張のような理由でその営業上の利益を害されたものと認めるのが相当である。よつて、控訴人の右主張は採用することができない。
被控訴人らの当審における新たな請求について
一 不正競争防止法1条1項に基づく請求として、特許法100条、商標法36条などの規定と同様に、当該不正競争行為そのものの停止のほかに、その予防的措置を求めることができるものと解するのが相当であるから、控訴人に対し本件ロツカーに用いられる別紙目録(一)表示の図形及び文字が印刷されたビニール製シートの廃棄を求める被控訴人らの当審における新たな請求は理由があり、正当として認容すべきである。
二 さらに、被控訴人NFLPは本件控訴事件及び附帯控訴事件に要した弁護士費用五〇万円を請求しているので、検討する。
不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴訟を提起し又は相手方の控訴に対して応訴することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、認容された請求の内容、金額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる金額の範囲内のものにかぎり右不法行為と相当因果関係に立つ損害としてその賠償を請求しうるものと解されるところ、原審証人【B】の証言、
同証言により真正に成立したものと認める甲第一一四、一一五号証及び弁論の全趣旨によると、被控訴人NFLPは、本件控訴事件及び附帯控訴事件につき本件被控訴代理人弁護士に対し弁護士費用(報酬及び実費等)として少くとも五〇万円を支払わなければならないと認められること、本件訴訟が高度かつ専門的知識を要するものであること、その他本件訴訟の審理経過等諸般の事情を総合考慮すると、被控訴人NFLPは控訴人に対し本件不正競争行為と相当因果関係に立つ損害として右弁護士費用相当額五〇万円の支払を請求しうるものというべきである。したがつて、その支払を求める同被控訴人の当審における新たな請求は理由があり、正当として認容すべきである。
結語
よつて、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、被控訴人の附帯控訴は右ビニール製シートの廃棄及び本件控訴審の弁護士費用相当額五〇万円の支払を求める当審における新たな請求について理由があり、その余は失当であるから(なお、被控訴人NFLPは前記のとおり年五分の割合による遅延損害金の請求を取下げた。)、原判決主文1項を主文二項括弧内のとおり変更し、控訴費用及び附帯控訴費用の負担につき民事訴訟法95条89条92条93条を適用し、同法196条により本判決主文第二項括弧内は被控訴人ら勝訴部分に限り仮に執行することができるものとし、原判決主文4項を右の限度で変更し、主文のとおり判決する。
裁判官 川添萬夫
裁判官 露木靖郎
裁判官 庵前重和
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