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事件 昭和 53年 (ワ) 6006号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1980/07/15
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 1一 本訴被告(反訴原告)は別紙目録(一)記載のロツカーを販売してはならない。
二 本訴被告(反訴原告)は、本訴原告(反訴被告)ナシヨナル・フツトボール・リーグ・プロパテイーズ・インコーポレーテツドに対し金一〇〇万円、本訴原告(反訴被告)ソニー企業株式会社に対し七一万四五六五円及び右各金員に対する昭和五三年一一月八日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三 本訴原告(反訴被告)らのその余の本訴請求を棄却する。
2 反訴原告(本訴被告)の反訴請求を棄却する。
3 訴訟費用は本訴反訴を通じ全部本訴被告(反訴原告)の負担とする。
4 この判決は1の一、二項につき仮に執行することができる。
事実及び理由
申立
〔一〕本訴請求について1 本訴原告(反訴被告。以下単に原告という。)ら一 本訴被告(反訴原告)は別紙目録(一)記載のロツカーを製造販売してはならない。
二 本訴被告(反訴原告)は、原告ナシヨナル・フツトボール・リーグ・プロパテイーズ・インコーポレーテツドに対し金四〇〇万円、原告ソニー企業株式会社に対し金一九一万三二〇〇円及び右各金員に対する昭和五三年一一月八日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は本訴被告(反訴原告)の負担とする。
との判決並びに仮執行宣言。
2 本訴被告(反訴原告。以下単に被告という。)(本案前の申立)一 本件訴を却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決。
(本案の申立)一 原告らの請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決。
〔二〕反訴請求について1 被告一 原告らは被告に対し連帯して金五〇〇万円及びこれに対する昭和五五年一月三〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 反訴費用は原告らの負担とする。
との判決並びに第一項についての仮執行宣言。
2 原告ら(本案前の申立)一 本件反訴を却下する。
二 反訴費用は被告の負担とする。
との判決。
(本案の申立)一 被告の反訴請求を棄却する。
二 反訴費用は被告の負担とする。
との判決。
主張
〔一〕本訴について一 原告らの請求原因(A)不正競争行為の差止請求1 原告ナシヨナル・フツトボール・リーグ・プロパテイーズ・インコーポレーテツド(以下原告NFLPという。)は、米国のプロフツトボール・チームの連盟であるナシヨナル・フツトボール・リーグ(以下NFLという。)所属チームの名称(フランチヤイズの都市名と人間あるいは動物名とを組合せた愛称)と各チームのシンボル(アメリカン・フツトボールのヘルメツトを型どつた共通の図形の中に思い思いの絵や文字を描いたもの)からなる別紙目録(二)の一、二記載のシンボルマーク(以下本件表示という。)の商業的利用の管理のために特に設立されたカリフオルニア州法人たる会社であつて、チームの名称とシンボルマークの商業的利用に関する一切の権利を有し、その使用権を第三者に与えることを業としている。
原告NFLPは、米国において、本件表示を、繊維関係、シーツ、カーテン、文具、ゲーム類、アクセサリー、時計、雑貨など各種商品に付し、年間三〇〇億円にも達する商品化事業を営んでいる。
本件表示は、米国では、フツトボールのゲームのためだけではなく、原告NFLPから特に承認された優れた品質の商品を保証するとの意味を持つに至つており、
それらの製造業者は、原告NFLPにより制定された厳格なる品質管理基準と手続のもとに商品に本件表示を付すことが認められているのであり、本件表示は、NFL加盟チームとこれが行う競技と一体に考えられていて両者を表徴するものとされている。
原告ソニー企業は電気製品の製造で著名なソニー株式会社の子会社で、かねてから同社所有の建物の管理を主とし、傍ら輸入業、旅行代理店業等の事業を営んできたが、昭和四〇年後半の頃からは、ある種の図案などを商品につけて販売する事業(いわゆる商品化事業)をも営んでいる。
2(一) 原告NFLPと原告ソニー企業は昭和四八年一〇月二日本件表示に関する使用許諾契約を締結し、これにより原告ソニー企業は原告NFLPに約定の金額を支払つて本件表示の日本における唯一の使用権者(ライセンシー)として、特に指定された商品につけて商品化して事業を営む権利及びそれを第三者に有償で再使用(サブライセンス)せしめる権利を獲得した。
(二) 原告ソニー企業と原告NFLPとの右契約の際の契約書には、所定の各種の報告義務、記録、商品の品質管理についての義務、再使用の場合についての詳細な取極めがなされており、特に再使用許諾契約をなすときは、使用権者において、
本件表示が用いられる商品の品質に関する完全なコントロールを有する条項をも含まねばならず、そのなかには、各製品の生産前に代表的見本、包装、カウンター・デイスプレー及び使用さるべき広告の代表的見本の事前承認権の付与を含まねばならないなどが規定されている。そして、原告ソニー企業は、かくして本件表示について商品化権を取得するや、昭和四八年一一月一日、東京のホテルニユーオータニに、原告NFLPの幹部、米国大使館員同席のうえ、新聞雑誌等報道関係の人、数百人を招待して、原告ソニー企業と原告NFLPとが業務提携して本件シンボルマークの商品化事業を企画することになつた旨の発表会を行つた。各種業界誌などはこれを取り上げて報道したし、原告ソニー企業もまた、日経流通新聞、日本経済新聞、メンズクラブその他各種新聞雑誌に右事業につき広告した。
(三) 昭和四九年の初めから、原告ソニー企業は、逐次、訴外マルマン株式会社(以下各会社名中株式会社の語を省略する。)、月星化成、内外編物、ワールドパラマウントウエアー、モツク、ワコール、ニツキー、カワケイ、ヤマトヤ、オツクスフオード広島屋、栗原帽子、友国手袋、ゼンザブロニカ工業、シテイズン商事、
ピーオーピー、ツクダオリジナル、吉川、ヤマト化学工業などの各会社との間に、
一業種一社を原則としこれらの会社をサブライセンシー(再使用権者)とし、かゝる再使用権者に、本件表示を特に許諾した商品に使用して日本国内に限り販売などすることを許諾する旨の再使用許諾契約をなしたが、その契約書中には、許諾商品、使用料、商品の品質管理等についての約定、本件表示の使用許諾を得ていることを表示するため、使用権者において満足すべき形状及び内容を有するラベルを各許諾商品に付すべきことの約定その他の条項を含む詳細な取極めがなされている。
原告ソニー企業は、正当な権利者の承認された製品であることを明らかにするため、再使用権者の販売商品のすべてに、原告ソニー企業及び原告NFLPの商号と許諾商品である旨を英文字で表示した証紙を貼らせる取扱いをなし、再使用権者は原告ソニー企業との約定に基づき、右商品化事業に携るものである旨各種新聞雑誌に広告すると共に、本件表示をブレザー、靴、その他約定の商品に付して展示し、
販売あるいはその広告をしている。
原告ソニー企業が本件表示の商品化事業として再使用を認めた再使用権者及び使用を許諾した商品は、昭和五一年末現在別紙目録(三)記載のとおりである。
本件表示の使用態様は次のとおりである。
(1) 商品についての使用イ 各再使用権者がそれぞれの許諾された商品に付して(印刷などして)使用する。その形状、色彩は原告NFLPより指定されたとおりとする。
使用の態様については原告NFLPの承認を得ることとなつている。
ロ 右に関連して、景品としての使用がある。つまり、イは本件表示を付した商品を商品本来の用途でそのまま販売する場合であるが、ロはそういう商品を他の分野の(再使用権者のものでない)商活動の宣伝手段としての景品として使うことである。
このことは契約上特に規定し、原告NFLPの特別の承認を必要とするようになつている。あくまでもNFLのマークが不適当な取引分野と関連付けられることによつて、そのイメージを傷つけられないためである。
(2) 宣伝としての使用イ 当然のことながら、原告ソニー企業及び再使用権者が本件表示を付した商品自体の宣伝のために使用すること(新聞、雑誌、パンフレツト、テレビ等)は許される。
ただし、その態様において原告NFLPの承認する範囲であることを要する。
ロ 本件表示を付した商品の裏付なしに、本件表示を他の商売の宣伝のために直接用いることもあり得る。例えば甲第四二号証パンフレツト中に大洋漁業や日本ワーナー・ランバートの広告の写真があるが、両社は本件表示を付した商品を販売するところの本来の再使用権者ではない(この写真には再使用権者の製品が写されているので、前記(1)のロの単なる写真化のようであるが、必ずしもそうする必要はなく、広告文面自体にマークを配してもよい。)。かかる使用のためにはその都度原告ソニー企業と取極めをし、かつそれに対する使用料を支払うものである。
この宣伝も一般の宣伝の一態様として、基本的に原告NFLPの承認し得る範囲内であること勿論である。
ハ その他、具体的な商品販売と直接的には関係なしに、本件企画全体の宣伝、あるいは雰囲気醸成のために本件表示を使用することがある。例えば催し物の際に使うような場合がそれである。
3 しかるところ、被告は昭和五〇年一一月中旬頃から別紙目録(一)記載のロツカー(以下本件ロツカーという。)の製造販売を開始し、後記原告ら申請仮処分決定が執行された同五一年一〇月六日まで右販売を継続してきた。
4 被告の右ロツカー製造販売行為は不正競争防止法1条1項1号及び二号違反となるものであるが、その理由は次のとおりである。
(一) まず、本件表示は不正競争防止法1条1項1号にいう他人の商品たることを示す表示である。
本件表示は米国で商標登録がなされている(サービス・マークである。)。日本でも出願されているが未登録である(但し、昭和五三年一一月一三日付で商標法施行令1条所定の別表第二〇類の商品につき出願公告決定がなされている。)。しかし、不正競争防止法の適用に関する限り、商標登録の有無、あるいはさらに本件表示が厳密な意味で商標であるかどうかも要件ではない。同法の要求するところは、
ある表示が他人の商品たることを示す表示といいうるか否かである。
ところで本件表示については、原告ソニー企業により、昭和四八年一〇月原告NFLPよりその商品化権を取得したこと、及び一業種一社と定めて本件表示を商品につける再使用権者のグループを組織する計画である旨が発表された。そして、前述のように、その後現実に再使用権者により本件表示をつけた商品が販売されている。
原告ソニー企業はフツトボールチームのイメージを傷つけないよう慎重に業者を選択し、信頼しうるものを再使用権者としている。即ち、フツトボールマークをつけた商品は原告NFLP及び原告ソニー企業を軸とする特定の業者グループにより販売されており、本件表示はかゝるグループの営業と商品とを示している(特定の品物についていえば、一業種一社であるから、特定の業者のみの製品ということになる。)。そしてそのことは、この種の業界(このようなマークをつけうる商品の業界)にはよく知られている。
すなわち、本件表示は被告にとつて、他人の商品たることを示す表示である。
(二) 本件表示は不正競争防止法施行の地域たる日本において広く認識されている。
この点は証拠の示す通りであるが、あえて新聞記事や広告によらずとも、キヤラクター戦略が有効な分野の業者が、本件表示のような確立したキヤラクター・グループを知らないはずはないのである。毎日の同業者同士での、メーカー、問屋、小売での雑談で、新しいキヤラクターはたちまちのうちに周知となるのである。
本件表示は、NFL加盟チーム(クラブ)の名称と知的創作にかかる絵画とにより成るものであるが、原告ソニー企業は、アメリカのフツトボールが最近日本においても大変な人気を呼び、とみに脚光を浴びて来たことに着目し、右スポーツ熱の上昇を背景に、本件表示の顧客吸引力という商品価値を利用し、日本においてその商品化事業をなすことを企画し、再使用権者において本件表示を約定の商品に付して商品化事業を営んでいるものであつて、本件表示は、いわば、原告らを軸あるいは幹とする再使用権者グループの営業と商品の表示であることが広く認識されるに至つている。
(三) 被告の商品は他人の商品混同を生ぜしめるものである。
フツトボールマークを商品に使う者は原告NFLPー原告ソニー企業を軸とする再使用権者グループであるとの認識がある以上、被告の製品は、右グループに属する業者の製品であるとの誤認の生ずることは当然である。別紙目標(一)記載のようなビニールロツカーを製造販売している者は現在のところいないが、不正競争防止法に所謂混同とは、他人の商品と現実に店頭で取り違えたことに限定されるのではなく、他人の商品であるとの誤認を生ぜしめることをも含んでいるのである。従つて、被告の行為は不正競争防止法1条1項1号に違反する。
(四) さらに、被告の行為は不正競争防止法1条1項2号にも該当するものである。
(1) まず、前述したように、原告らとその再使用権者は、本件表示を使用して商品を販売するという一連の系統的な営業活動を行つている。そして、その活動は我が国においてよく知られている。ここに被告のように、同一の表示を使用して商品を販売する者が現われれば、その行為が原告らの営業活動と混同を生ぜしめることは自明の理である。従つて、被告の行為はまずこの意味において本号に該当する。
(2) 次に、被告の行為は、原告らの営業活動と離れても、米国のフツトボール連盟の活動と混同を生ぜしめる。
米国のナシヨナル・フツトボール・リーグ加盟のプロフツトボール・チームの名称もシンボルマークも、原告らの商品化事業を離れて、すでにわが国において著名である。毎週テレビでは百万人にものぼる視聴者がNFLのゲームを見ており、アメリカン・フツトボールの雑誌も「タツチダウン」、「アメリカン・フツトボール」の二種類も発行されており、その中を見れば、中学生でもマイアミ・ドルフインズとかピツツバーグ・ステイーラーズとかを知つていることがわかるのである。
従つて、このチーム名は驚くべきほど多数の日本人に知れているのである。
そういう状況にあつて、被告のような商品が出現すれば、必ずや、これは何等かの意味において各チーム、あるいはリーダーと関連があると思われるのは避け難いことである。何しろ、被告のロツカーの図柄は、実在のアメリカン・フツトボールのチーム名とそのシンボルマークより成立つているのである。
このような誤認こそ、正に不正競争防止法1条1項2号のいう他人の営業活動との混同である。被告はサービス・マークについては他人のものを使うことは自由勝手と考えているようである(この議論はフツトボール・チームのシンボルマークはサービスマークであるということを前提にしているのであろう。確かに元来はそういう性質を持つている。)。しかし、そのようなことはない。不正競争防止法の本条項こそ、正にそのような行為を取締るものと言うことができる。又、サービス対サービスの関係でなく、商品対サービス、サービス対商品の関係であつても、営業活動上の誤認が生ずれば本号の問題である。
(3) 商品化事業が進み、すでに当該表示が特定の一連の業者の製品の表徴として周知になれば、そもそも原始的に当該表示が現在の関係業者の独占し得べきものであつたか否かはもはや問題とならず、他の業者がこれを使用することは許されない。本件の表示はすでにその域に達している(この段階において、他の業者が最初は自分も使えたはずだから今使えないのは不公平であるということは当らない。本来の商標権でもそうであつて、商標は特許や意匠と異なり、権利者が最初に当該権利の対象を創作したかどうかは問題にならないのである。)。
本件の場合商品化したものは、実在のフツトボールの名称と、そのチームを象徴するシンボルマークであり、大衆の倫理感が、そのようなものを本人に無断で使えるはずはない、と判断するところに本件事業の基礎がある(実際、意識的あるいは無意識的に原告らに無断でこのマークを使用した者はかなり多いが、ひとり被告を除いては、何れも警告を受ければやめている。)。
(五) 原告らは被告の行為により営業上の利益を害されている。
原告らの行つている事業は、信頼のおける再使用権者グループを作り、良い品質の商品に本件表示を付し、高級な店で秩序立つた販売をし、長く続くキヤラクター事業にしようというものである。即ち、事業の核心は組織にあり、管理にある。
被告のような者が現われれば、それだけで管理が乱れ、内部の再使用権者に対する統制も難かしくなる。即ち、かかる行為は、原告らが苦心して築き、努力して維持している組織の根幹を危うくするものであり、重大な営業上の利益侵害である。
さらに、本件表示は品質保証機能を有している。即ち、一定の品質を備えた商品にだけ付することによつて、当該商品は信頼できるものであるとの評判をかちうるよう、原告NFLP及び原告ソニー企業は再使用権者の扱う商品の品質管理に十分注意を払つている。しかし、被告の扱う模倣品に対しては、そのような管理は不可能であり、この意味で本件表示の品質保証機能が害される虞が十分にある。これ又、重大な営業上の利益侵害である。
のみならず、本件表示は、アメリカン・フツトボールのイメージを連想せしめ、
それにより顧客を引きつける働きを持つている。しかるに被告のようにフツトボール・チームの名称とマークに類似した表示を無断で使用する者が出現すれば、それだけ顧客吸引力が弱まるわけであり、営業上の利益を害される虞のあることは明らかである。
(六) 従つて、原告らは不正競争防止法1条1項1号及び二号に基づき、被告の前記不正競争行為の差止を求める請求権を有している。
(B) 損害賠償請求1 被告の本件ロツカー製造販売行為が不正競争防止法1条1項1号及び二号に違反する違法行為であることは前述のとおりであり、被告は過失によるというよりむしろ故意をもつて右違法行為を行つたものである。即ち、
(一) まず、被告は最初に本件ロツカーのデザインをデザイナーに注文した際「現在流行しているものを。」といつて依頼している。そして、本件ロツカーに使用されているマークがアメリカのフツトボール・リーグのマークであり当時わが国において流行のものであることを十分承知していた。だからこそデザイナーが示した本件ロツカーのデザインを採用し決定したのである。
そして、被告が最初にまず、本件ロツカー六〇〇台の製造販売を開始した昭和五〇年一一月頃というのは原告らのグループにより本件表示を付した商品が発売されてから一年半以上も後のことであり、右原告らの営業は新聞などにも取り上げられていた。本件表示が現に流行のものであることを知つていた被告が原告らの前記営業活動を知らなかつた筈はない。もし、知らなかつたとすればその点を確かめなかつたところに重大な過失がある(むしろ、本件表示と本件ロツカーに使用されているマークの図柄が全く同一であることからすればおそらく原告らのグループの再使用権者の製品に付してあつたマークを写したのでないかと推測される。そうでなくてはこのような真似ができたこと自体不思議である。)。
(二) 右被告の販売行為を知つた原告ソニー企業は、同年一一月初め被告に対し本件ロツカーの製造販売行為は不正競争防止法1条1項1号及び二号に該当する不正競争行為であるから差し控えるようにとの口頭の申し入れをし、さらに同月二九日付内容証明郵便で同趣旨の警告を発したにもかかわらず、被告は右警告を無視して本件ロツカーを訴外ダイエーに納入した。被告に自己の行為が不正競争行為であるとの認識があつたことは明らかである。少くとも原告ソニー企業から右警告を受けた後になされた本件ロツカーの製造販売行為が故意に基づくものであることは明白である。
2 そして、原告ソニー企業は被告の右違法行為により一九一万三二〇〇円相当の損害を蒙り、原告NFLPは被告の右違法行為と後記のような不当訴訟行為により四〇〇万円相当の損害を蒙つた。
(一) 原告ソニー企業の蒙つた損害 原告ソニー企業は被告の前記違法行為なかりせば得べかりし利益相当の財産上の損害を蒙つたものであるが、その具体的な損害額は、被告が本件ロツカーを販売したことによつて得た利益額と同額であると推定するのが相当であると考えられる(【A】「註解不正競争防止法」一七二頁、その他現行特許法ー昭和三四年法律第一二一号ー以前の学説参照。)。しかるところ、被告は後記別件訴訟事件において、本件ロツカーを発売当初三〇三四本製造しその販売単価は四九〇〇円、製造原価は一個当り四一〇〇円であつたが、ダイエーに対しては、そのうち二〇〇九個を単価四九〇〇円で販売し、又六一二個については単価四六〇〇円で販売したことを自ら主張しているので、被告が本件ロツカーの販売により得た利益は、少くとも、
二〇〇九×八〇〇(円)=一六〇万七二〇〇円と六一二×五〇〇(円)=三〇万六〇〇〇円との合計一九一万三二〇〇円を下らない。
したがつて、右金額が原告ソニー企業の蒙つた損害額である。
仮に、右主張が認められないとしても、本件表示の使用許諾については少くとも右販売単価(四九〇〇円)の五パーセントの割合による使用許諾料が支払われるべきものであるから、右使用許諾料相当額七四万三三三〇円(四九〇〇円×〇・〇五×三〇三四=七四万三三三〇円)が原告ソニー企業の蒙つた損害額となる。
(二) 原告NFLPの蒙つた損害 被告の違法な本件ロツカーの製造販売行為をめぐつて原告らと被告の間では次のような保全処分手続及び本案訴訟手続がなされたため、原告NFLPは多大の出費を余儀なくされた。即ち、
(1) まず、(イ)昭和五〇年一二月一二日被告から大阪地方裁判所に原告ソニー企業を相手方とする営業妨害行為禁止仮処分の申請がなされ、右事件は同庁昭和五〇年(ヨ)第四〇二〇号事件(以下被告申請仮処分事件という。)として審理された。次に、(ロ)被告は昭和五一年二月五日、同庁に原告ソニー企業を被告とし右仮処分事件の本案訴訟である同庁昭和五一年(ワ)第四七九号製造販売差止請求権不存在確認請求事件(以下別件訴訟事件という。)を提起した。しかし、この訴訟については昭和五三年七月一八日被告の請求を棄却する旨の一審判決がなされた。(ハ)ところが、被告はこれを不服として大阪高等裁判所に控訴の申立をなし、右事件は同庁昭和五三年(ネ)第一三〇九号事件として再び審理されていたが、これも昭和五四年九月二八日控訴棄却即ち被告敗訴の判決がなされた。
一方、(a)原告らは、昭和五一年四月一一日、大阪地方裁判所に被告を相手方として前記不正競争行為禁止の仮処分申請をなし、右事件は同庁昭和五一年(ヨ)第一一八七号事件(以下原告申請仮処分事件という。)として審理されていたが、
同年一〇月五日右申請を認容する旨の仮処分決定があり右決定は翌六日執行された。そして、(b)その後、原告らは昭和五三年一〇月三日本訴を提起し今日に至つている。
(2) そこで、原告NFLPは右各訴訟につき要した費用のうち、まず(ロ)(ハ)の別件訴訟事件に要した費用を被告の不当な訴訟提起という違法行為によつて蒙つた損害として(別件訴訟の被告は原告ソニー企業だけで、原告NFLPは被告になつていないが、原告らの前示のような関係からして、その費用負担は原告NFLPがし、またはすることになつている。)、次に(b)の本件訴訟中の本訴事件に要した費用を被告の前記のような不正競争行為という違法行為によつて蒙つた損害として、それぞれその賠償を請求する。
即ち、右別件訴訟事件は、前記原告申請仮処分事件において裁判所より被告の本件ロツカーの販売は不正競争行為になる旨の判断が示され和解勧告があつたにもかかわらず被告においてこれを拒否しあえて提起したものであり、かつその控訴事件は一審判決において右同旨の判断が示され被告の主張の理由のないことが明らかにされたにもかかわらず被告がしつように控訴したために係属したものである。また、本件本訴も右一審判決の判断を尊重しこれを機会に被告の不正競争行為によつて惹起された紛争に終止符を打とうとしていた原告側の申入れが無視されたために原告らにおいて前記原告申請仮処分事件の結末をつけるためにやむを得ず提起したものであり、右各訴訟はいずれも被告の頑迷固陋な態度に起因して発生したものというべきである。
しかして、右訴訟はいずれも不正競争防止法違反の有無をめぐる専門的な事件であり、到底法律の専門家である弁護士なしに当事者本人で遂行できる性質のものではない。ことに原告NFLPは外国法人であるから本人訴訟は不可能である。
従つて、右訴訟遂行のために原告NFLPが費やした費用はいずれも被告の違法行為によつて蒙つた損害にほかならないところ、その金額は右別件訴訟事件の第一審事件につき金二〇〇万円、同控訴事件及び本訴については各金一〇〇万円を下らない。そして、右金額が極めて控え目な額であることは次のような事情に照らしても明らかである。即ち、右一審事件は被告からの不正競争防止法に基づく差止請求権不存在確認と金一五〇三万五〇〇〇円に及ぶ損害賠償請求の訴であつたから、その受任弁護士に支払われるべき手数料及び謝金の額だけで一七四万円強になる(右損害賠償請求のみを算定の基礎とし日本弁護士連合会報酬等基準規程によつて算出した額)。また、右事件においては多数の証拠書類等を提出し外国法人である原告NFLPとの英語による連絡あるいは英文書類の翻訳等に多大の労力と費用を費し、かつ受任弁護士が東京地方に在住する者であつたため大阪への出張を余儀なくされて費用も嵩んだものである。
(C) 結論 よつて、原告らは被告に対し(1)不正競争防止法1条1項一、二号により前記請求の趣旨記載の行為の差止と(2)原告ソニー企業は前記損害金一九一万三二〇〇円、原告NFLPは前記損害金四〇〇万円及び右各金員に対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五三年一一月八日から各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 被告の本案前申立の理由 本件表示が原告らを軸とする再使用権者グループの商品又は営業を示す表示として周知性があるとしても、それは後記の如く原告らが本件表示につきあたかも独占排他効のある権利を有するかの如く詐称しかつ脅迫的に再使用許諾契約を締結させた結果取得されたものであるから、法的保護に値するものではない。そうして、右グループなるものはこうした不正行為者を軸とするものであり、かつ原告らが取得する使用許諾料なるものも右不正行為に基づく不正所得である点において法的保護に値しないのであるから、原告らは本件ロツカーの販売の差止めを求めるについて当事者適格を有しないというべきである。
そうでないとしても、原告らは後記の如く不正競争防止法1条1項柱書所定の「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」には該当せず、仮に、本件ロツカーの販売により営業上の損害を受けるものがあるとしてもそれは原告らのいう再使用権者であつて原告ら自身ではない。原告らが右再使用権者を差し置いて本訴請求をなす適格を有するとすべき理由はない。
よつて、原告らの本訴はそもそも当事者適格を有しない者が提起した不適法な訴として却下されるべきである。
三 被告の本案の答弁 請求原因事実のうち、(A)3の事実、(B)1の(二)の内容証明郵便による警告があつた事実及び(B)2の(二)(1)の事実(原告ら主張の訴訟手続等の存在)は認めるが、その余の事実はすべて争う。
四 被告の主張及び抗弁(A) 差止請求について1 以下原告らの主張の理由のないことを前記法条項一、二号の要件と対比して明らかにするが、まずその主張の基本的な誤りを概括的に指摘しておくと次のとおりである。
原告らの主張の骨子は、原告らは本件表示の商品化権を有する者であり本件表示は原告らの許諾のもとに再使用権者らが販売する商品に使用されその商品表示ないし営業表示として周知なものであるからこれを使用した被告の本件ロツカーの販売行為は原告らとの関係で不正競争防止法1条1項一、二号の不正競争行為に該当するというのである。
そして、本件表示がNFL所属のフツトボールチームのマークとして著名であることから直ちに再使用権者の商品表示ないし営業表示として周知されているかの如くいうのであるが、これは明らかに事実の混同であり問題のすり替えである。何故なら本件表示はもともと右各チームが一チーム一マークの建前の下に各自に使用しているサービスマークでありそれ自体として不正競争防止法とは何のかかわりもないものだからである。原告らがその主張を理由あらしめようとするのであれば、まず、本件表示が再使用権者のどのような商品にどのような状態で使用されているかを明らかにすべきである。そうでなければ、本件表示が果して再使用権者らの商品表示ないし営業表示として使用されているのかどうかすら確定し得ず、その他の点の判断も不可能である。ところが、原告らは何らかかる挙に出ず右の如き問題のすり替えに終始している。
又、原告らは本件表示の商品化権を有しているということから、本件表示をわが国において使用するについては原告ソニー企業の許諾を得ることが必要であり、許諾を受けないで無断使用した場合は、その無断使用者の使用した表示が、原告ソニー企業の許諾を受けて使用する再使用権者の使用表示と全体的にではなく一部において共通するだけでも、又、両者のその表示の使用がマークとしての使用であると否とに関係なくさらには、双方の商品がそれ自体において、又取引の分野において如何に隔絶していても常に絶対に不正競争行為になり、しかも右無断使用行為があれば当然再使用権者の商品の売上げが減少しそのことは必然的に原告らの取得すべき本件表示の使用許諾料を減少せしめ原告らの営業利益を害することになるという。しかし、右主張は、原告らのいう商品化権(使用許諾権)なるものがしよせんは実定法に基づかない契約上の権利であつて契約当事者を拘束し得ても第三者に対しては何ら拘束力のないものであることを看過又は無視しあたかもそれが商標権や意匠権ないしはより強力な著作権と実質的に同等かそれ以上に強大な独占排他物を有するかの如くいうものであつて、右商品化権なるものの法的性質を誤解するばかりでなく取引の実情を全く無視するものである。その誤りであることは言うまでもない。
2 本件表示は原告らとの関係では不正競争防止法1条1項1号の「他人(原告ら)ノ商品タルコトヲ示ス表示」及び二号の「他人(原告ら)ノ営業タルコトヲ示ス表示」に該当しない。
(一) 本件表示は原告らも自認するとおり米国NFL所属の二八のフツトボールチームが各自使用しているマーク即ち右各チームの営業たることを示す表示にほかならず、原告らないし原告らを軸とする再使用権者グループのマークではない。
原告NFLPは右フツトボールチームの営業表示たる本件表示の商業的利用の管理をするものであり、原告ソニー企業は原告NFLPとの使用許諾契約に基づき本件表示の日本における商品化事業を行うものにすぎない。そして、原告らが日本において行う本件表示の商品化事業の実体は何かというに、それは元来前記フツトボールチームのマークとして使用されている本件表示(個々の図形)を日本の企業即ち原告らのいう再使用権者らにその販売商品に美的ないし趣味的な感興を付与するための意匠模様として使用するよう売り込むことでありマークの切り売り業である。
しかして、原告らと再使用権者間の関係をみるに、一方はマークの売主、他方はその買主で、前者がかなり高率の使用料を徴取する債権者であるのに対し各再使用権者はその支払義務を負う債務者であつて、両者の関係は協同関係どころか本質的には全く利害相反する対立関係にあるのである。即ち、原告らと再使用権者との間は、地主対借地人間の関係同様、一方が債権者、他方が債務者として法律的経済的に互いに対立した関係にあるのであつて協同関係にあるわけでは決してない。そして、再使用権者相互の間にも格別の協同関係がある訳ではない。再使用権者らは、
本来、各自が独立独歩に全く別異の営業を営むものであり、その間には、それぞれが、各自、原告ソニー企業と本件表示について再使用許諾契約を締結しているという以外には何のかかわりもない(なお、本件表示は二八種類に及んでいるので具体的に同一表示についての再使用許諾契約が締結されているかどうかは不明である。)。即ち、各社はそれぞれ自己固有の思惑と打算の下に他社には無関係に各個独立の営業を営んでいるのであつて一括して一グループとしての営業を営んでいるとみ得る要素は全く存しない。
以上によつて明らかな如く、原告らは自から本件表示を使用して商品を販売しているのでもなければ原告らと再使用権者とが統一性のある企業協同体を形成して営業を行つている訳でもないのであるから、本件表示をもつて原告らないし原告らを軸とする再使用権者グループの商品及び営業の表示とみるべき素地は存せず(原告らの主張の中には原告らが再使用権者の販売商品に対し品質管理をし統制をとつているかの如き部分が存するが当らない。例えば、内外編物はメリヤス衣料についてはレナウン社と並んでわが国最高の権威者であり、靴についての月星化成また然りである。かかる斯業界の最高権威者が自己の専門商品について素人である原告らから品質管理を受けるなどということ自体あり得べからざることであつて、右主張は理由のないものである。)、原告らないし原告らを軸とする再使用権者グループが前記法条項一号及び二号にいう「他人」に当らぬことは明白である。
(二) もし、本件において、右一、二号にいう「他人」に該当する者があり得るとしても、それは原告らのいう再使用権者であり原告らではない。何故なら、ある表示が右にいう「表示」としての意味をもつてくるのはそれが特定の商品ないし営業と結びついて使用されたときである。例えば、「富士」という表示が山の名としていかに著名であつても唯それだけでは右一号の適用対象とはならず、それが写真フイルム又は電気洗濯機という特定の商品と結びついて「富士写真フイルム」、
「富士電気洗濯機」となつた場合に始めて不正競争防止法適用の対象となるようなものである。
そして、本件において問題にされている本件表示は日本国内において誰れのどのような商品に使用されているかというに、それは原告ら自身の商品ではなく原告らのいう再使用権者らがそれぞれ販売する個々の商品即ち、内外編物の販売する「子供用衣料品」であり月星化成の販売する「靴」等である。これはいうまでもなく内外編物ないし月星化成の商品であり同人らの営業である。即ち、本件表示を使用する関係で右にいう「他人」に当るものがあるとすれば、それが右再使用権者たる訴外会社であつて原告らでないことは極めて明白である(尤も、右再使用権者らも本件表示をその商品ないし営業の表示として使用しているのでないことについては後記4参照。)。
3 本件表示は同項一号の「商品表示」及び二号の「営業表示」として「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」表示には該当しない。
(一) 本件表示は前記の如く元来が米国NFL所属のフツトボールチームのマークであり、そのマークがマーク自体としていかに著名なものであつたとしてもそれが特定の商品ないし営業の表示として使用されているものでない限り不正競争防止法適用の対象となるものでないことは前記のとおりである。そして、わが国において本件表示を特定の商品ないし営業と結びつけて使用している者は原告らのいう再使用権者にほかならないことも前記のとおりである。
しかして、右一号及び二号の「商品表示」ないし「営業表示」がそこにいう「広ク認識セラルル……表示」に該当するのは、あるマーク(商標)を付した特定の商品が反復継続して多量に販売せられたことによりあるいはあるマークが長年特定の者の営業を示す表示として使用された結果、該マークがその者の商品ないし営業の表示として多数の人に深く馴染れるに至つていることをいうものである。
(二) 従つて、原告らにおいて本件表示を右にいう周知表示であると主張する以上、まず本件表示が前記再使用権者らのどのような商品にその商品表示としてどのように使用されているかあるいは再使用権者らが本件表示をその営業表示としてどのように使用しているかを具体的に主張、立証すべきである。
ところが、原告らは何らかかる点を具体的に主張、立証しておらず、被告が本件ロツカーを販売する以前に本件表示を使用した再使用権者の商品が多量に販売されていた事実は全く存しないのであるから、本件表示が原告ら主張の如き周知性を取得していないことは明らかである。
4 被告が本件ロツカーを販売することは、同項一号の本件表示と「同一若ハ類似ノモノヲ使用シ又ハ之ヲ使用シタル商品」を販売すること及び二号の本件表示と「同一又ハ類似ノモノヲ使用シテ」いることには当らない。
(一) 本件ロツカーの販売行為が同項一、二号にいう同一又は類似表示の使用に該当するというためには、まず本件表示が特定の商品ないし営業の表示(自他識別標識)として使用されていることが具体的に特定され、かつ本件ロツカーにおける本件表示の使用も商品ないし営業の表示としての使用に該当することが明らかにされねばならない。蓋し、そうでなければ右一、二号にいう類否の判断自体が不可能だからである。
(二) ところで、本件表示を具体的にその商品ないし営業活動と結びつけて使用しているのは前記のとおり原告らのいう再使用権者なのであるから、原告らはまず右再使用権者らがその許諾表示を許諾商品にどのような態様で使用しているのか具体的に主張すべきである。そうでなければ本件表示(再使用権者の各許諾表示)が果して右一、二号にいう「商品表示」ないし「営業表示」として使用されているのかどうかすら判断できない。しかるに、原告らは被告の再三の要求にもかかわらず何ら右の点を明らかにしようとせず、具体的な商品ないし営業と結びつかない本件表示を示すだけである。このことは原告らの主張自体が不充分なものであることを意味するばかりでなく、本件ロツカーの発売以前には本件表示を実際に使用した商品の販売ないし営業活動の存しなかつたことを推測せしめるものである。本件表示を使用した具体的な商品ないし営業活動がないのに、同一又は類似表示の使用ということはあり得ない(なお、右許諾表示の中にその具体的な使用態様は別として実際に商品に付しあるいは営業活動に際し使用されていたものがあるとしても、それが本件ロツカーの意匠模様の構成中に取り入れられていないものであつた場合にはー被告が使用しているのは本件表示のうち七種のものだけであるー、右表示は本件ロツカーの表示とは全く無関係である。)。
(三) 仮に原告ら主張の再使用権者のうちの誰れかが許諾表示を許諾商品に使用して販売しておりそれが本件ロツカーの意匠模様に取り入れられている図柄のものであつたとしても、その具体的な使用態様が、単に当該商品の審美的趣味的効果だけを狙つた意匠模様としての使用にすぎず社会通念上その者の商品たることを示す出所識別の標識(マークないし商標)としての使用でない場合には、右許諾表示は一号の「商品表示」ないし二号の「営業表示」のいずれにも該当せず、本件ロツカーの意匠模様との類否を論ずるまでもなく右一、二号の適用は認められない。
しかるところ、再使用権者らが本件表示を自社ないし自社商品のマーク(自他識別標識)として使用しているものでないことは明らかである。何故なら内外編物、
月星化成を始めとする一九の再使用権者らはいずれもわが国では旧くから著名な有力会社でありそれぞれが永年使用して世の信用を獲得している自社固有の有名マークを有しこれによつて営業を続けてきた会社である。このように自己固有の有名マークを有する再使用権者らがいまさら本件表示を自社の商品ないし営業のマークとして使用するということは既存企業界の実情からみて到底考えられないからである。再使用権者が本件表示を自己のマークとして使用するということは個々的にもグループ企業体としてもあるべき筈はなく、再使用権者らの本件表示の使用需要者の美的趣味的選択感に訴えるための意匠模様としての使用にすぎないとみるのが常識的である。このことは、本件証拠上唯一の本件表示使用の実例と認められるマルマン(株)発売の便箋(甲第四六号証の一ないし四)をみると、その表紙や中表紙あるいは台紙裏の上縁部にはそれぞれ同社の著名商標たる「maruman」のマークが厳然として表示されていて本件表示に含まれる図柄は商品の外部からは見えない場所に趣味的要素である意匠模様として表示されているにすぎないことからも十分裏づけられている。
さらに、原告らの主張、立証によつても、原告らは正当な権利者によつて承認された製品であることを明らかにするため、再使用権者の販売商品のすべてに原告らの商号と許諾商品である旨を英文字で表示した証紙を貼らせる取扱いをしており、
その証紙からみて原告らの許諾を受けた製品と推定できる(甲第一〇七号証)というのであるから、もし、原告らを軸として構成される再使用権者グループが存在しその商品ないし営業であることを示すための表示があるとすれば、右証紙こそがそれであり、本件表示がその主張の如き「商品表示」ないし「営業表示」として使用されているものでないことは明らかである。
(四) 又、仮に再使用権者の使用していた表示(図柄)が本件ロツカーの模様として取り入れられている図柄のうちのどれかに当るものであり、かつ、それがその者の商品ないし営業のマークとして使用されていたとしても、これと比較される本件ロツカーにおける使用は、交互千鳥状に配列された七種の単位模様の反復からなる「全面柄模様」としての使用であつて商品の出所を識別する目印としての機能は本来的に有していない。それは商品の出所識別標識として機能するマークではなく純然たる意匠模様である。そして、再使用権者が本件ロツカーの模様のように相異なる七種の単位図形を交互千鳥状に反復配列して全面柄模様としたような表示を商品表示として使用していたという事実でもあれば格別、かかる事実はその使用対象商品の何たるかを問わず全く存在しない。従つて、本件ロツカーにおける全面柄模様はそれ自体としてもまた先行行為者の使用表示との相対関係においても、右一、
二号の同一又は類似の表示に当らないことは明白である。
なお、ここで、本件ロツカーの全面柄模様が一、二号にいう同一又は類似の表示を使用したことに当るか否かを判断するに際し留意されねばならないことは、本件ロツカーの柄模様全体が一つの統一性をもつた模様であるということである。もし、これを全体としてみることなくその模様の中から模様を構成する単位図柄の一つを分離抽出してきてそれと「他人ノ……表示」と同一性ないし類似性を云々するとすれば、それは例えば衣料生地における全面柄模様の中からその一つたるトンボの図柄のみを分離抽出してこれをもつて他人のトンボ印マークを冒用したものであると決めつけるのと同様、およそマーク(商標)とマーク(商標)間の同一性ないし類似性を判断するについての社会の通念に反する暴論であつて、前記一、二号にいう他人の表示と同一又は類似のものを使用したということについての判断を誤り、かつ、商標と商標の類否は両商標を各全体の上で比較して決すべきであるとする判例上確立された判定則(大審院昭和六年一〇月二〇日判決、東京高裁昭和三四年七月三〇日判決等参照。)にも反するものであり、許されない。
又、本件ロツカーにおける全面柄模様をもつて商品の出所を識別するためのマークであるというとすれば、それは衣料生地における全面柄模様をもつてその商品のマークであるというのと同様の誤りをおかすものであり、このようなことを言つていたのでは、ついには商品に表示した図柄はそのことごとくが商品の出所識別のマークであるとする暴論に陥らざるを得なくなるであろう。
5 被告が本件ロツカーを販売する行為は同項一号の「他人ノ商品ト混同ヲ生ゼシムル行為」及び二号の「他人ノ営業上ノ施設又ハ活動ト混同ヲ生ゼシムル行為」に該当しない。
右一、二号の「混同」とは空想的抽象的な問題ではなく現実的具体的な問題である。右にいう「混同行為」があるというは、正当商品に類似する不正競争商品が販売されていて不正競争商品が売れるとそれだけ正当商品の売れ行きが減少するというような因果関係が存し、又、右不正競争商品の販売がその商品の類似性の故に正当商品の販売業者の営業であると誤認されるような場合のことである。従つて、もし、原告らないし再使用権者において本件ロツカーとその形態ならびに全面柄模様の点において同一又は類似の衣類用ロツカーを商品として販売していた事実が存在すれば、その販売年数、数量その他の条件の具備如何によつては本件ロツカーの販売が右にいう「混同行為」に該当するという可能性もあるいは考えられるかもしれない。しかし、再使用権者らが販売する使用許諾商品は別紙目録(三)のリスト記載の商品であつてその中にはロツカーないしロツカーの近似商品とみるべきものは全く存しない。そこにあるのは例えば内外編物の「子供用アウトウエアー」、月星化成の「靴」の如く本件ロツカーとはその構成、形状、用途、用法いずれの点からみても何一つとして共通性代替性のない異種商品ばかりである。本件ロツカーが売れたために右商品の売れ行が落ちるというようなことは考えられず、又、本件ロツカーの販売が右再使用権者の営業と混同されるということもあり得ない。例えば「朝日ビール」と「朝日新聞」との間に「商品の混同」が起るとは考えられず、
「朝日ビール」の販売が朝日新聞社の営業と混同されることがないようなものである。原告らの主張の誤りであることはこの一点からしても明らかである。
さらに、右二号との関係でいえば、原告らが日本で行つている営業活動は、「本件表示の日本国内業者への使用権の切り売り」にすぎずそれ以上には一歩も出ていない。
これに対し、被告は右原告らの如き「本件表示使用権の切り売り」営業など一切行つておらず、そもそも原告らと競業関係に立つものではない。そして、被告は本件ロツカーの販売に当り原告らの商号ないしマークは一切使用していないのであるから、世人が本件ロツカーを原告らの販売商品として誤認することなどあり得ない。その点からいつても、本件ロツカーの販売行為が営業主体の混同を生ぜしめるものでないことは明らかである。
6 原告らは不正競争防止法1条1項柱書の「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」には該当しない。
本件ロツカーが再使用権者の販売する商品と全く異種のものであることは前記のとおりであり、かかる異種の商品間においてはたとえ同一の商標が使用されたとしても相互に商標の持つイメージないしは顧客吸引力を減殺し合うということは考えられない。例えば朝日ビールと朝日新聞とが同じ「朝日」という表示を使用しているからといつて互にその商標の持つイメージないし顧客吸引力をつぶし合つているとは到底考えられず、再使用権者らがいずれも本件表示を使用しているからといつて互に本件表示の持つイメージないし顧客吸引力をつぶし合つているとは考えられないようなものである。
もし、本件ロツカーの販売が全く異種商品である再使用権者らの商品に使用されている本件表示のイメージを稀釈化顧客吸引力を弱化するというのであれば、互に異種商品を販売する再使用権者が相互にその使用する表示のイメージと顧客吸引力を減殺し合つているという奇妙なことになるが、原告ら自身そのような主張をしているとは考えられない。
又、再使用権者ら相互の商品の販売が他の再使用権者の商品の売れ行きに影響を及ぼさないのと同様、本件ロツカーの販売が再使用権者の商品の売れ行きを減少せしめるものでないことも前記のとおりである。そして、再使用権者の商品の売れ行きが減少しない以上、原告ら(直接的には原告ソニー企業)の受くべき使用料収入の減少もあり得ない。仮に、右使用料の減少があり得るとしても、それは本件ロツカーの販売によつて受ける直接的な不利益ではなく、表示を現実に使用している再使用権者が不利益を蒙ることから派生する二次的間接的な不利益である。かかる間接的な不利益を蒙るにすぎない者は前記柱書にいう「営業上ノ利益ヲ害セラレル虞アル者」には該当しない。
7 仮に本件表示が原告らあるいは原告らを軸とする再使用権者グループの商品又は営業を示す表示として周知・著名性があるとしても、それは、原告らにおいて何ら本件表示の使用について独占排他権を有しないにもかかわらず、これあるかの如く詐称し、本件表示の使用者に対し不正競争防止法違反になると脅迫して謝罪をさせたうえその使用を禁止し、不法に他人の業務を妨害した公序良俗に反する行為をした結果取得したものである。
したがつて、原告らが再使用権者らとの再使用許諾契約によつて得た使用料なるものも正当な所得ではなくむしろ不正所得とみるべきものである。
以上のようにみて来ると、原告ソニー企業の再使用権者に対する再使用許諾契約締結行為はそれ自体一種の不正行為であり、原告らを軸とする再使用権者グループの営業なるものは、こうした不正行為者を軸とするものである点においてすでに法の保護に価せず、原告らがそうしたグループ営業の軸たる地位を根拠として本件ロツカーの販売差止を求めることは許されないというべきである。
8 被告の本件ロツカー販売行為は、不正競争防止法6条にいう「意匠法……ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当し、これについては同法1条1項一、二号の規定は適用されない(同法6条)。よつて、原告らの請求は理由がない。
被告は本件ロツカーの形状と模様との結合意匠について昭和五一年四月一日意匠法による意匠登録の出願をなし(意願昭五一ー一二二〇一、意匠に係る物品ロツカー)、右意匠は昭和五三年九月二〇日意匠登録第四九〇二九七号として登録された(以下本件登録意匠という。)。
しかして、同法6条が「第1条第1項第1号及第二号……ノ規定ハ特許法、実用新案法、意匠法又ハ商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為ニハ之ヲ適用セズ」と規定した法意は、右各法律に基づく権利がいずれも独占的排他効を有するものであることに鑑み、これらの権利と不正競争防止法に基づく権利が競合した場合、前者を後者の上位においてこれを優先せしめたところにあり、これを意匠法に即していえば後行者の使用する図柄が先行者の使用図柄の範囲から脱して一つの新たな「創作」に達した場合の「創作性」を重視したことを意味するから、意匠として登録された図柄の使用は、その登録後はもちろんその登録前においても同条にいう意匠法による権利の行使に当るというべきである。
そして、右意匠が登録された以上それが所定の手続により無効とされない限り何人もその効力を否定することは許されないし(この点に関しては、特許権に関してではあるが例え公知公用のものであつても一旦特許された後は無効処分が成立しない限り裁判所もその特許の当否、効力の存否を判断することはできないとさえされている点ー大審院大正四年四月三〇日判決等兼子・染野判例工業所有権法第二巻参照。)、右意匠には本来何らの無効原因もない。右登録意匠は訴外【B】の創作に係るもので被告は同人からその意匠登録を受ける権利を譲受けて出願したものであるが、右意匠はその図柄の配列構成が漸新であり、その模様に含まれる図柄の一つ一つを取り出してみればそれが本件表示と同一であるとしても、その意匠全体としての新規性はいかなる公知資料をもつてしても否定し得ないものとなつている。
又、被告は右意匠登録出願前である昭和五〇年一〇月三日に株式会社ダイエーに対し取引交渉のため本件ロツカーの見本を提示しその意匠を公知ならしめているが、
被告はこれより六月以内に前記出願をしたのであるからこれについては新規性喪失の例外規定たる同法4条2項、一項が適用され、右意匠は日本国内において公然知られた意匠に該当するには至らなかつたものとみなされる(同法4条2項、一項、
3条1項1号)。従つて、本件登録意匠が適法に登録された有効なものであることについては疑いの余地がなく、何人といえどもその効力を否定することは許されない。
よつて、本件ロツカーの販売が本件登録意匠権の行使として適法なものであることは明らかである。
五 原告の反論1 不正競争防止法は公正な競業秩序の形成維持を目的とするものである。同法1条1項一、二号は本法施行地域内において広く認識せられている他人の商品(一号)あるいは営業(二号)たることを示す表示と同一又は類似のものを使用して、
他人の商品あるいは営業上の施設又は活動と誤認混同を生ぜしめる行為を禁じ、これに違反してなされた行為につき、これにより営業上の利益を害せられる虞ある者に対し、差止請求権を認めている。つまり、ある「表示」が他人の商品あるいは営業を示すものとして国内において広く認識せられるに至るときは、その表示が著作権法による保護を受ける著作物あるいは商標登録を受けることができる標章、又は意匠登録を受けることができる意匠であるかどうかなど問うことなく、第三者が右周知表示と同一又は類似のものを用いて、他人の商品あるいは営業上の施設又は営業活動と混同せしめる行為は、法に定める除外事由に該当しない限り、禁ぜられる。これは、右の行為が営業上の自由な範囲を超え、競業秩序を破壊するものであつて、営業上の誠実な慣習に反する行為(パリ条約第10条の2(2))であることによるものである。そして同法は右混同を生ぜしめる行為について、これより営業上の利益を害せられる虞ある者にその行為を止むべきことを請求することができる旨を規定しており、同法条の救済を求めるのに、周知表示につき、著作権、商標権、意匠権などすでに実定法上の絶対権を有することが要求されるわけではない。
そして、原告らの主張は全て不正競争防止法に基づくものであり、商品化権なるものに基づく主張ではない。被告の主張は、右不正競争防止法の趣旨を全く理解せず、原告らの主張を誤解または曲解するものであつて失当である。
2 被告は、原告らを軸とする再使用権者グループは前記法条項一、二号にいう「他人」には該当しないというが、右にいう「他人」を個々の独立営業主体にのみ限るべき理由はない。あるグループが実在しそのグループが一つの表示をもつて知られるようになつていれば、そのグループは右にいう「他人」になりうるというべきである。
本件において、原告らを軸とし本件表示を使用する再使用権者グループは厳として実在し、その存在は新聞広告等により広く認識されている。
被告は、原告らと再使用権者との間の関係は協同ではなく使用料支払をめぐる対立的なものであるから一体性のあるグループを形成しえないと主張するが、使用料支払は事業の一面であり、本件表示を付した商品の販売がのびることが原告らと再使用権者との共通の関心事なのである。世上多くみられる技術援助契約においてもライセンサーとライセンシーとは実施料の受取権利者と支払義務者との関係にあるが、それでも外からみればGEー東芝グループとか、ウエステイングハウスー三菱グループとか呼ぶのである。それは金銭の授受面のみをとらえれば対立関係にあるといわなければならないであろうが、対外的な事業においては協同関係にあるからである。本件の原告らと再使用権者らとの関係も右と異なるところはない。
3 被告は、本件ロツカーにつき昭和五三年九月二〇日特許庁より意匠登録を受けたので、不正競争防止法6条により被告の本件ロツカーの製造販売行為は適法であると主張するが、右主張は理由がない。
(一) 被告が本件ロツカーの製造販売を開始した当時、被告は本件表示を使用し得る何らの権利も有しなかつたのであるから、その後被告がその主張の如き意匠権を取得したからといつて、被告の右製造販売行為が右意匠の登録前に遡つて適法となるいわれはない。
(二) 意匠法26条は出願前に当該意匠が他人の工業所有権の対象となつているときは業として登録意匠の実施をすることができないと規定しており、不正競争防止法について明文はないが類推適用されるべきである。
また原告NFLPは、被告の意匠登録出願(昭和五一年四月一日)より以前昭和五〇年一二月二六日にロツカーを含む商標法施行令1条所定の別表第二〇類の商品につき商標登録出願を行つており、たまたま意匠出願審査が早くなされた結果被告の出願が先に登録されたにすぎない。この点においても被告の意匠権は原告らの権利には対抗できない。
(三) 意匠登録を受けることができる者は、「意匠の創作をした者」(意匠法3条1項本文)又は創作者から意匠登録を受ける権利を承継した者(同法15条2項及びそれにより準用される特許法の条文参照)である。しかして、本件ロツカーに付されている模様の図柄は本件表示と同一のものであるが、本件表示はNFL加盟チームの名称と知的創作にかかる絵画から成るもので、その商業的利用に関する一切の権利は原告NFLPが有している。従つて本件表示に関して意匠登録を受ける権利は原告NFLPもしくはそれから意匠登録を受ける権利を承継した者のみが取得しうるのである。被告は、右事情を熟知していながら、他人創作にかかる意匠を自己の創作と詐称して、その後の昭和五一年四月一日に意匠登録の出願をしたものである。
被告の右意匠登録出願はいわゆる「冒認」であり、意匠法17条4号により特許庁は本来拒絶査定をすべきであつたし、登録された後も無効とされるべきものである(同法48条1項3号)。
(四) 仮に、本件登録意匠の要部がフツトボールチームのマークそれ自体ではなく、それを千鳥模様状に配置したことやロツカーの形状にあるというのであれば、
そのようなことは以前から多数の者が公用していたことで、創作というには当らない。
〔二〕反訴について一 被告の反訴請求原因1 大阪地方裁判所は昭和五一年一〇月五日原告申請仮処分事件につき原告らの申請を入れて被告の本件ロツカーの販売を禁止する旨の仮処分決定をなし、右決定は翌六日執行された。
そのため、被告は以後本件ロツカーを販売することができなくなり今日に至つているが、右は原告らが国家権力を利用して被告の本件ロツカーの販売を強制的に差止めたものである。
2 ところで、被告は本訴事件の抗弁として述べた如く昭和五三年九月二〇日本件ロツカーの意匠につき意匠登録をうけその権利者となつた。
そして、被告は本訴事件の答弁書(昭和五三年一一月一七日付)においていち早く本訴被告の主張及び抗弁の項8記載のとおり抗弁し、同年一二月二二日の本訴第一回口頭弁論期日においてその旨陳述した。
3 従つて、原告らとしても遅くとも右時点において被告の本件ロツカーの販売が本件登録意匠権の行使であり適法なものであることを認識した筈であるから、被告から右の如き主張を受けた以上、すすんで前記仮処分決定執行取消の手続をなすべき義務がある。
しかるに、原告らはその後も何ら右手続をしないまま今日に至つているが、これは明らかに前記義務に違反するものであり、本件ロツカーの販売即ち本件登録意匠権の行使を妨害する違法行為である。
4 被告は、原告らが右違法行為に出ることなく前記主張を受けた後遅滞なく前記執行取消の手続をしていれば、遅くとも昭和五四年一月からは本件ロツカーの製造販売を開始し得た筈であり、その月間販売数量を七〇〇本、一本当りの利益額を八〇〇円とすると(乙第四号証、甲第一〇八号証)、被告がこれにより得べかりし利益は同年一二月末日までの一年間に限つても六七二万円(八〇〇×七〇〇×一二=六七二万円)となる。
しかるに、被告は原告らの前記違法行為により右販売を妨げられ右一年間のうちに少くとも右金額を下らぬ利益を失いこれと同額の損害を蒙つた。
5 よつて、被告は、原告らに対し連帯して右損害金の内金五〇〇万円及びこれに対する本件反訴状送達の翌日である昭和五五年一月三〇日以降完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 原告らの本案前申立の理由本件反訴は二重起訴であり不適法である。
1 被告はすでに本件反訴被告である原告ソニー企業に対し本件ロツカーの製造販売差止請求権不存在確認を求め損害賠償を請求する旨の訴すなわち別件訴訟事件を提起し、右事件は大阪高等裁判所を経て現に最高裁判所に係属中である(同裁判所昭和五四年(オ)第一三〇八号事件)。
右事件における被告の損害賠償請求は、「原告ソニー企業が不正競争防止法上被告の本件ロツカーの製造販売を差止めるべき何らの権利も有しないのにこれを有するが如く主張して被告の右営業行為を妨害し、かつ原告申請仮処分事件で本件ロツカーの製造販売禁止等の仮処分決定を得てこれを執行したのは違法行為であり、被告は原告ソニー企業の右違法行為により合計一〇五三万五三〇〇円の損害(内訳、
(1)昭和五〇年一一月当時所有していた本件ロツカー三〇三四本を販売し得なくなつたことによる逸失利益相当額の損害五七万五三〇〇円、(2)営業妨害行為による精神的損害に対する慰藉料一〇〇万円、(3)右仮処分の不当執行による昭和五一年一〇月六日から同五三年一月五日までの一六か月間の逸失利益相当額の損害八九六万円)を蒙つたのでその賠償を請求する。」というのである。
そして、右損害賠償請求と本件反訴請求を比較すれば自から明らかな如く、両者において請求の対象となつている損害の発生時期(期間)こそ異つているがその発生原因は同一であり、本件反訴請求は前記別件訴訟事件において容易に請求を拡張して追加請求し得たものであるから、原告ソニー企業に対する関係で本件反訴が二重起訴となることは明白である。
2 又、原告NFLPに対する関係でも本件反訴は二重起訴となるというべきである。
なる程、同原告は前記別件訴訟ではその当事者となつておらず、当事者が異ればそれだけで訴訟物は同一でないとするのが通例である。しかし、訴訟物の同一性は単なる形式的な当事者の同一性からだけ判断されるべきものではなく、請求が同一であるか否かあるいは同一紛争であるか否かによつて決せられるべきものであり、
かかる観点から債権者代位権に基づく請求と代位された債務者からの請求は同一であるとされている。
しかるところ、本件反訴において、被告は原告らに対し連帯して同一金額の支払いを求めているのであり、その限りにおいて請求の内容は全く同一であつて原告ら両名に対する請求についての国家の判断が区々であつてよい筈はない。
原告NFLPに対する請求に対しても右要請から二重起訴の禁止規定の効力が及ぶと解すべきである。
このことは、被告と原告らの間の紛争の経過に鑑みれば一層明らかである。即ち、被告は本件反訴提起前すでに前記の如く別件訴訟事件を提起し原告ら両名の申請に基づく前記仮処分の執行は不当執行であると主張して原告ソニー企業に対し損害賠償を請求しているのであるから、原告NFLPに対しても右同様の損害賠償請求をなすのであれば、前記別件訴訟事件が一審係属中にこれをなし得た筈である。
それをしないでおいて、別件訴訟事件の第一審において被告の請求が棄却され事件が控訴審を経て上告審に係属するに至つた現段階において、あらためて本件反訴を提起するのはあまりに遅きにすぎ、まさに訴権の乱用というべきである。そして、
このような状況においては、本件反訴は原告NFLPに対する関係でも二重起訴として却下されるべきである。
三 原告らの答弁及び主張1 反訴請求原因1、2の事実は認めるが、その余の事実は否認する。
2(一) 被告の主張は、要するに被告の本件ロツカーの製造販売行為が不正競争防止法第6条所定の「意匠法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当することを前提としたものである。
しかし、被告の右行為は同条所定の行為に該当しない。従つて、原告らに被告の言うような仮処分執行解除義務がある筈がなく、被告の右主張は失当である。この点についてはすでに本訴において述べたとおりである。
(二) なお被告は原告らの仮処分解放義務違反を云々しているが、原告らが執行したのは被告の手許にある物品である。被告が昭和五四年度に営業しなかつたのは、執行の効果ではなくて、決定そのものの効果であり、被告がそれを守つているからである。決定を争うのは異議申立によるべく、それをしないでおいて右執行を違法であるというのは失当である。
四 被告の反論1 本件反訴は二重起訴ではない。本件反訴における請求は前記不当な仮処分執行により蒙つた損害の請求ではあるが、前記別件訴訟事件では全く請求していない昭和五四年度に発生した損害の請求であり、二重起訴に当らぬことは自明である。
2 原告らが、被告に対してした前記仮処分の執行は、単に当時被告の手許にあつた本件ロツカーに対してのみなされたものではなく、本件ロツカーの製造販売行為そのものを禁止する不作為命令の執行でありこれこそがその中核をなすものである。
この不作為命令の執行は、国家の権力による命令であるから、仮処分命令の申請者たる原告らの解放手続による解放がなされない限り、被告としてはこの禁止命令に違反して勝手に製造販売行為を再開するわけにゆかない。
原告らが言を左右にして解放手続を怠り被告の製造販売行為に対する禁止状態が継続する限り、原告らの違法行為が継続し被告の蒙むる損害が増大することを知るべきである。
証拠(省略)
理 由
本訴関係
〔一〕被告の本案前の申立について まず、被告は、本案前の妨訴抗弁として、(イ)仮に本件表示が原告ら主張のグループの商品又は営業を示す表示として周知性があるとしても、それは詐欺ないし脅迫的な不正行為によつて取得されたものであること、(ロ)原告らは何ら不正競争防止法1条1項柱書の「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」に該当しないことを理由として、本件本訴は当事者適格を有しない者が提起した不適法な訴であるから却下されるべきであるという。
しかし、(イ)一般に給付請求訴訟における原告適格は、訴訟で主張された実体法律関係上自ら当該給付請求権の帰属者であるという原告に当然与えられるのであつて、主張にかかる請求権の取得経過に関する瑕疵等請求権の存否、行使の許否にかかわる問題はすべて本案請求の当否として検討すべき事柄である。(ロ)また、
不正競争行為差止請求訴訟において原告が前記法条項柱書所定の「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」に該当するか否かは右差止請求権を肯認するための実体法上の要件であると解するのが相当である(不正競争防止法の目的の一つに消費者保護を挙げる見解に留意して、右柱書は、無限定な民衆訴訟を認めず、
右要件に該当する者のみが訴提起の法律上の利益を有することを定めた特別訴訟要件規定であると考える余地もないではないが、同法の定めた条項全体を通覧すると、同法はいわゆる不正競業行為を規制する実体法規定であると解するのが素直なみ方であり、いま前記要件部分のみを訴訟法規定と解さなければならない実益は特段見当らないー同法1条ノ二の一ないし三項も参照ーから、前記のような考えは採用しない。)。(ハ)のみならず、本件においては、被告が主張するような事実はいずれも証拠によつても認め難いこと後記のとおりである(後記〔二〕(A)の二3(五)及び三の説示参照)。
したがつて、被告の妨訴抗弁は理由がない。
〔二〕本案について(A) 差止請求について一 被告が昭和五〇年一一月中旬頃から本件ロツカーの製造販売を開始し原告申請仮処分決定が執行された翌五一年一〇月六日までこれを継続していたことは当事者間に争いがない。
二 原告らは被告の右本件ロツカーの製造販売行為は不正競争防止法1条1項1号及び二号に該当する不正競争行為である旨主張するので、以下この点について判断する。
1 原本の存在及び成立につき争いのない甲第一〇七号証(別件訴訟事件の一審における証人【C】の証人調書)とこれにより真正に成立したものと認められる甲第三号証の二、第四号証の一ないし三、第六号証、第六四号証、第六六号証、原本の存在とその成立に争いのない甲第二号証の一ないし六、成立に争いのない甲第三号証の一、第五号証、第七号証、第一一号証、文書の形式及び趣旨により全部真正に成立したものと推認できる甲第一号証の一、二、第八五号証の一ないし六、第八六ないし第九〇号証(甲第一号証の二については原本の存在も推認できる。)に弁論の全趣旨を合わせ考えると、次の事実が認められる。
(一) 原告NFLPは、一九六三年(昭和三八年)二月二〇日付定款によつて設立された法人で、米国のNFLに加盟するプロフツトボールチームが平等の持分を有し本件表示の商業上の利用を管理する目的をもつて設立された会社である。しかして、
右プロフツトボールチームはいずれも米国の州の法律によつて設立された法人であつて、それぞれその所属のチームの名称(フランチヤイズの都市名と人間あるいは動物名とを組合わせた愛称)と各チームの創作にかかるシンボルマーク(アメリカン・フツトボールのヘルメツトを型どつた共通の図形の中に思い思いの絵や英文字を描いたもの)、即ち本件表示をフツトボール試合興業等の営業を表示するものとして使用し、かついずれも米国においてサービス・マークとして商標登録を了しているが、原告NFLPは右各チームから直接又は間接に商業目的に関し本件表示を独占的に使用する権利及び第三者にこれを使用せしめる権利を取得し、かついかなる無断使用に対しても抗議を述べる権利を付託されている。
原告NFLPは、米国において本件表示を衣服類、シーツ、スポーツ用品、文具、ゲーム類、アクセサリー、時計、帽子、雑貨など各種商品に付し年間収益三〇〇億円にも達する商品化事業を営んでいる。
かくして、本件表示は、米国ではフツトボール・チームのために使用されるだけではなく、原告NFLPからその使用を許諾された商品の製造販売業者は、原告NFLPによつて定められた厳格な品質管理基準と手続のもとに商品に本件表示を付すことが許されているため、本件表示は原告NFLPから特に承認された優れた品質の商品を保証するとの意味をももつに至つている。
米国においては、フツトボールの歴史は古く、国技ともいわれて最も人気のあるスポーツ種目であるが、そのプロチームが組織されたのは一九二〇年で、まずアメリカン・プロフエツシヨナル・フツトボール・アソシエーシヨン(APFA)が発足し、これがNFLの前身で二年後NFLと改称された。一九二六年にはアメリカン・フツトボール・リーグ(AFL)が発足し、その後解散、発足をくり返し、一九六〇年に組織されたAFLは一九七〇年にNFLと合併し、現在に至つている。
現在NFLは二八チームからなり、半数ずつアメリカン・フツトボール・コンフエレンス(AFC)とナシヨナル・フツトボール・コンフエレンス(NFC)とに分かれ、それぞれのチヤンピオンが毎年一月ナンバー・ワンを争うが、このゲームはスーパーボウルといわれて最も人気があり、プロチームにはあこがれのスターも多数いることなどから近年フツトボールに対する人気は益々高まり、プロ野球の人気をも追越し、その年間観客動員数は一五〇〇万人に達するといわれ、愛好者も増える一方で、現在米国では一〇代の若者を中心に約二五〇万人がフツトボールを楽しんでいるといわれている。
このような背景のもとで原告NFLPの本件表示についての商品化事業は前記のように順調に拡大しているのである。
(二) 原告ソニー企業は電気製品の大手製造メーカーである訴外ソニー株式会社のいわゆる子会社として昭和三六年四月一日設立された会社であつて、同訴外会社所有の建物の管理運営を主営業とするかたわら、輸入業、海外旅行代理店業、無体財産権(商標権、特許権、著作権等)に基づくライセンス業務等の事業をもあわせ営んでいる株式会社である。
2 次に、前掲甲第六、第七号証、第一一号証、第六四号証、第六六号証、第一〇七号証のほか、成立に争いのない甲第八ないし第一〇号証、第一二ないし第四一号証、第六七ないし第八四号証、第九二、第九三号証(第一八号証、第七八、第七九号証については原本の存在も争いがない。)、文書の形式及び趣旨により真正に成立したものと推認できる甲第四二ないし第四五号証、第四六号証の一ないし四、右第一〇七号証により成立の認められる甲第四七号証の一、二、第四八ないし第六三号証、第六五号証の一ないし九、第九一号証、第九四号証(第四七号証の一、二については原本の存在も)及び弁論の全趣旨を合わせ考えると、次の事実が認められる。
(一) 原告ソニー企業は昭和四八年一〇月二日米国のカリフオルニア州法人である原告NFLPと本件表示に関する使用許諾契約を締結し、同原告に約定の金額を支払つて米国のプロフツトボール・クラブ(日本語としてはクラブよりもチームの語の方が一般に用いられているので、以下チームという。
)の連盟であるNFL加盟チームの名称とフツトボールのヘルメツトを型どつたシンボルからなる別紙目録(二)の一、二のシンボルマーク(もつとも、当時は、加盟チームは二六チームであつたが、その後、タンバ・ベイ・バツカニアズとシアトル・シーホークスの二チームが加盟して二八チームのシンボルマークを含むことになり、またバツフアロー・ビルズのシンボルマークは、別紙目録(二)の二のように変更された。しかし、以下特に断わらない限りこのような変更をも含めNFL加盟チームの名称とシンボルマークを本件表示ということとする。)を日本における唯一の使用権者(ライセンシー)として特に指定された商品に付けて商品化して事業を営む権利及びこれを第三者に有償で再使用(サブライセンス)せしめる権利を取得した。
(二) 原告ソニー企業と原告NFLPとの前記使用許諾契約書には、所定の各種の報告及び記録の義務、商品の品質管理を受ける義務、本件表示を再使用させる場合などについての詳細な取極めがなされており、ことに再使用許諾契約をする場合には原告ソニー企業と原告NFLPとの右契約書と同様な商品の品質管理についての厳格な条項を含むことが要求されている。
原告ソニー企業は、このようにして本件表示についてこれを商品に付することができる権利(いわゆる商品化権)を取得するや、昭和四八年一一月一日東京のホテルニユーオータニにおいて、原告NFLPの幹部、米国大使館員同席のうえ、新聞雑誌等報道関係者、関係各業者ら数百人を招待して、原告ソニー企業と原告NFLPとが業務提携して本件表示の商品化事業を企画することになつた旨の発表会を行い、各種業界誌はこの発表会について報道し、原告ソニー企業も、日経流通新聞、
日本経済新聞、メンズクラブその他各種新聞雑誌に右業務提携について広告をした。
(三) 原告ソニー企業は、その後一業種一社を原則として再使用権者を慎重に検討して選択し、昭和四九年一月一日訴外内外編物株式会社、同マルマン株式会社との間で本件表示を商品に付することに関する再使用許諾契約を期間一年間として締結したのをはじめ、逐次訴外株式会社カワケイ、同ニツキー株式会社、同栗原帽子株式会社、同株式会社東北丸正、同クリケツト株式会社、同内野株式会社、同株式会社ワールドパラマウントウエアー、同株式会社モツク、同ゼンザブロニカ工業株式会社と再使用許諾契約を結び同年四月頃から一斉に右再使用権者の本件表示を付した商品が百貨店、一流専門店のコーナー販売として発売され、その売行きは右発売直後から好調であり、その後右クリケツト株式会社と内野株式会社は契約期間満了によつて再使用権者ではなくなつたが、他のほとんどの会社については一年毎に同一内容の契約がくりかえし締結され、又、新たに再使用権を取得した会社もあり、結局昭和五一年末現在における再使用権者の名称と許諾品目は別紙目録(三)記載のとおりとなつている。 右各再使用許諾契約書中には、許諾商品の特定、使用料、品質管理等についての約定、本件表示の使用許諾を得ていることを表示するため、使用権者において、満足すべき形状及び内容を有するラベルを各許諾商品に付すべきことの約定その他の条項を含む詳細な取極めがなされており、原告ソニー企業は、正当な権利者の製品であることを明らかにするため、再使用権者の販売商品のすべてに、原告らの商号と許諾商品である旨を英文字で表示した証紙を貼らせる取扱いをなし、再使用権者は被告との約定に基づき、右商品化事業に携わるものである旨各種新聞雑誌にたびたび広告するとともに、本件表示を子供用アウトウエアー、紳士用ニツト布帛洋品その他約定の商品に付して販売あるいはその広告をしている。
これを具体的にいうと、商品の販売については、例えば、昭和五〇年九月頃までに、内外編物は子供用テイーシヤツ、トレーナー等に一商品一チームマーク(ヘルメツト図形と英大文字のチーム名の表示)としてカンサス・シテイー・チーフス(以下、チーフスという。他チーム名もこの例によつて略称する。)、ドルフインズ、パツカーズ、ラムス、ヴアイキングス、フオーテイ・ナイナーズ、ジエツツ、
ステイーラーズ、ビルズ、レドスキンズのマークを、以下同様に、ワールド・パラマウントはスポーツシヤツ、テイーシヤツ等にビルズ、カウボーイズ、ベンガルズ、パツカーズ、フオーテイ・ナイナーズ、レドスキンズ等一二チームのマークを、モツクは婦人用セーター、トレーナー等にカウボーイズ、ドルフインズ等のマークを、ニツキーは靴下にジアイアンツ等のマークを、カワケイはエプロン等にベンガルズ等のマークを、オツクスフオード広島屋はネクタイ等にフアルコンズ等のマークを、栗原帽子はジエツツ、パツカーズ等のマークを、月星化成は靴にバツカニアズとシーホークスを除く二六チームのマークを、シテイズン商事は時計にブロンコス、ベンガルズ、ラムス等のマークを、ピーオーピーはペナント等にオイラーズ、ライオンズ、ジエツツ等のマークを、吉川は洋傘等にジエツツ等のマークを、
それぞれ付して販売し、また同じ頃までに、マルマンはバツカニアズとシーホークスを除く二六チーム全部のマークを付したレポート用紙、ノート等を、ツクダオリジナルはパツカーズ、ライオンズ、フオーテイ・ナイナーズ、ラムス、ヴアイキングス等七以上のチームのマークを付した貯金箱等を販売している。次に広告については、例えば、マルマンは昭和四九年七月頃NFLシリーズと銘打つた商品の紹介及び本件表示(バツカニアズとシーホークを除く二六チームのマーク)を掲げたカタログを作成し、全国の文具小売店に頒布し、ワールド・パラマウントは雑誌「タツチダウン」(昭和五〇年六月号)に商品の紹介及びNFL加盟チームのマークを使用するについて原告NFLPから正式な認可を受けている旨掲載して商品及び営業の広告をし、内外編物は繊研新聞(昭和五〇年九月四日刊)にチーフス、ドルフインズ、パツカーズ、ラムス、ヴアイキングス、フオーテイ・ナイナーズ及びNFLPのマークを掲げ、NFL加盟チームのマークの使用はNFLアソシエーシヨンの加入者だけである旨掲載して営業広告をし、月星化成は雑誌「少年ジヤンプ」(昭和五〇年一〇月六日号)に商品の紹介及び本件表示(前記二六チームのマーク)を掲載して商品及び営業の広告をしている。
そして、原告ソニー企業自身も昭和五〇年九月頃までにオリジナル商品としてヴアイキングス、ブロンコス、パツカーズ、カウボーイズ等のマーク(一商品に一チームマーク)を付したバツグ、雑貨等を販売している。
又、原告ソニー企業は、再使用権者とともに、本件表示の商品化事業を成功させる方法を検討するためNFLアソシエーシヨンという団体を作つて月一回会合しているが、その下部組織として広報委員会と流通委員会を設け、広報委員会はこの企画のためどのような宣伝広告をなすべきかについて意見、情報を交換し、検討を加えるものであり、流通委員会は本件表示を付した商品の販売方法、例えば販売店舗の選定(商品の品位が下がり本件表示のイメージが傷つけられるような店舗は避ける。)販売に関する相互援助(あるデパートと取引のない再使用権者に対し取引のある者が援助するなど。)、末端における本件表示のある商品同士の衝突の防止をはかるなどの活動をしている。そして、このようなNFLアソシエーシヨンについて、原告ソニー企業は、昭和四九年初め新聞誌上でその設立を予定していることを発表し、その後日本経済新聞(昭和四九年六月二四日刊)、日経流通新聞(同月二六日刊)に本件表示(二六チーム)及びソニー・NFLアソシエーシヨンの加盟会社名(同原告を含めた一三社)を、また雑誌「チエツクメイト」(昭和五〇年第五号)にも本件表示及びNFLアソシエーシヨンの加盟会社名(同原告を除く一四社)を、それぞれ掲載して営業広告をし、さらに同年九月には原告らの商品化事業、許諾商品、その販売会社名の紹介及び本件表示を付した商品並びに営業の広告パンフレツトを作成し、全国の広告代理店、取引先に頒布し、その頃繊維業界新聞である繊研新聞(昭和五〇年九月四日刊)によつて再使用権者は「NFLアソシエーシヨンの加入者だけです」との表現で一括されその業績等の報道がなされた。
又、一般紙、業界紙、雑誌等でしばしば原告NFLPと原告ソニー企業との業務提携による本件表示の商品化事業が爆発的に成長している旨の特集記事が掲載されて来た。
(四) 原告ソニー企業が許諾した本件表示の具体的な使用態様の主なものは、次のとおりである。
(1) 商品についての使用態様イ 各再使用権者がそれぞれの許諾された商品に付して(印刷などして)使用するが、その商品の性質と品質、表示の形状、色彩等については原告NFLP及び原告ソニー企業が完全にこれをコントロールしている。
ロ 右に関連して本件表示を付した商品を景品として使用することは、同原告の事前の書面による承認のもとに行われている。
(2) 宣伝用としての使用態様イ 再使用権者が本件表示を付した商品自体の宣伝のために、新聞、雑誌、パンフレツト、テレビ等に本件表示を使用することができるが、その表示の形状、色彩等は原告らの承諾のもとに行われている。
ロ 本件表示を付した商品の裏付なしに、他の商売の宣伝のために本件表示を使用することもできるが、その場合にはその都度原告ソニー企業と取極めを行つている。
ハ その他、具体的な商品販売と直接的には関係なしに本件表示による商品化事業全体の宣伝あるいは雰囲気を醸成するために、例えば展覧会等催し物の会場において使用する場合もある。
(五) 日本においては、約四〇年ほど前にフツトボールが移入されたといわれているが、当時は関心も低かつたところ、昭和四九年四月から関東地方のテレビ局がNFLプロフツトボール・アワーを毎週定時番組として放映をはじめ、逐次関西、
中京地方のテレビ局でも放映するようになり昭和五〇年頃には全国的に、しかも視聴率の高い時間帯にフツトボール番組が組まれるようになり、他のスポーツ番組に比し安定した高い視聴率をあげている。又、アメリカン・フツトボールの専門の月刊誌として昭和四九年初めから「タツチダウン」、昭和五〇年初めからは「アメリカンフツトボール」が刊行されるようになり、日刊新聞や、青少年向けの雑誌などでもたびたびNFL加盟チームのこと、その試合の模様などが取上げられ、その都度本件表示やアメリカン・フツトボール独特の防具をつけた選手の白熱した試合の光景の写真などが大々的に登載され、日本でもアメリカン・フツトボールに対する関心が急速に高まり、若者らの心をとらえるようになつた。昭和五〇年五月頃から渋谷パルコ、池袋西武百貨店、大阪近鉄百貨店などで、アメリカン・プロフツトボールに関する展覧会など催物が開催され、本件表示を付した前記再使用権者の商品が、ことにフアツシヨン界における商品が、大量に販売されるに至つてこの傾向に拍車がかかり、本件表示についての関心度は爆発的に高まつた。
そして、昭和五一年八月一六日には、アメリカで最も古い歴史をもつチームの一つであるセントルイス・カージナルスとサン・ジエゴ・チヤージヤースの両チームが来日し、日本ではじめて本場の迫力に満ちたしかもスピーデイーな試合を後楽園球場で演じて興趣を盛り上げ、その際各種スポーツ新聞、一般新聞、雑誌、テレビなどが扇動的にその競技振り及び数万の観客の観戦模様を大きく報道して、今日では日本においても他のスポーツに比して人気のあるスポーツになつたということができる。
このような、アメリカン・フツトボールに対する関心の急速な拡大と、原告ソニー企業及び再使用権者による本件表示を付した商品の販売及びその大々的な広告宣伝等があいまつて、本件表示を付した商品の売行きは爆発的な成長を遂げ、昭和五〇年度の再使用権者の本件表示を付した商品の売上合計額は八〇億円にも達し、遅くとも同年初め頃以降は大衆向けの商品を扱つている通常の業者であれば誰でも、
本件表示を付した商品を扱つている業者は原告NFLPから使用許諾を受けた原告ソニー企業及び同原告から再使用権を許諾された業者であるということを知つている状況となつた。又、それゆえに本件表示を付した商品の売行きが好調であることに目をつけて原告らに無断で本件表示を付した商品、即ち模倣品を製造販売する業者も現われたが(その時期は多くは昭和五〇年春から秋にかけて)、原告ソニー企業はかかる業者に対してはその都度激しく抗議しており、抗議を受けた業者のほとんどは自己の非を認め、原告らに対し書面で謝罪の意を表明し、本件表示の使用を中止している。
以上の事実が認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。
3 そこで、以上に認定した1、2の事実に基づき、はたして被告の本件ロツカーの販売行為が不正競争防止法1条1項1号及び二号に該当するか否かを検討する。
(一) まず、本件表示が同項一号の「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」及び二号の「他人ノ営業タルコトヲ示ス表示」に当るか否かについて検討する。
右1で認定した事実によれば、本件表示は第一義的には、米国のNFL加盟チームのいわゆるサービス・マークであつて、同チームの営業たることを示す表示にほかならないことは被告所論のとおりである。しかし、本件においては、本件表示が単に右のような原初的な意味だけではなく、これを超えてさらに別の機能と意味を有するようになつていることを看過することはできない。即ち、本件においては、
前記認定事実によつて明らかなとおり、原告ソニー企業がいちはやく近時の日本におけるアメリカン・フツトボールに対する関心の増大に着目し、その人気を背景とする本件表示のもつ顧客吸引力、即ちアメリカン・フツトボール・ゲームのすさまじいまでのスリルと、肉体と肉体の激突という魅力を連想する男らしさ、かつこうの良さといつたイメージを商品化しようと企て、昭和四八年一〇月二日付の原告NFLPとの契約に基づき、同原告より日本における唯一の本件表示使用権者として特に指定された商品に付けて商品化する権利及び第三者に再使用せしめる権利を取得し、直ちに原告ソニー企業と原告NFLPとが業務提携して本件表示の商品化事業を企画することになつた旨の発表を大々的に行い、やがて翌四九年当初からは一業種一社と定めて業者を選択して再使用権者となし、厳しい品質管理を通じて本件表示の同一性と品質の良質化を維持するように努め、広告宣伝に力を注いだ結果、
わが国においても、遅くとも昭和五〇年初め頃以降は、商品に付された本件表示は単なる米国のプロフツトボールチームを示すマーク又は柄模様の域を脱して一定の出所識別機能品質保証機能をもつに至り、本件表示を付した商品は原告NFLPと原告ソニー企業を軸とする特定の再使用権者グループの商品であるとの認識が少なくとも一般消費者大衆に対する広告宣伝を必要とするような業界内においてはすでに確立したものと解するのが相当である。そうすると、本件表示は、叙上のような趣旨において同項一号の「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に当るということができる。
又、同様の趣旨において、本件表示は遅くとも昭和五〇年初め頃以降いわゆるサービス・マークとして原告NFLPと原告ソニー企業を軸とする再使用権者グループの商品化事業を示す表示であるとの認識もまた確立したものと解するのが相当である。そうすると、被告にとつて、本件表示は同項二号の「他人ノ営業タルコトヲ示ス表示」にも当るということができる。
被告の主張によれば、米国のプロフツトボール・チームのマークは、中間で誰がどのような意味付けをし、また宣伝をしたとしても、あくまで右チームのマークであることに変わりはないというのであり、右の主張がその限りにおいて一応首肯できるものであることは先に説示したとおりである。しかし、一般に営業活動上の表示はその使用者の使用方法、宣伝活動如何により、またその時代の社会経済情勢の変化等に伴つて、あらたな意義を附加されることのありうることは経験則に照らしてみやすい道理である。本件表示についても、先に説示したとおり、原告ソニー企業がわが国における一般大衆のフツトボールに対する急激な人気高揚を背景として、原告NFLPから契約に基づき適法に本件表示の再使用権を取得したうえ、その使用方法を厳重に管理統制し、宣伝活動をした結果、本件表示は前記第一義的な意味とは別にあらたに原告らを軸とする再使用権者グループの商品及び営業たることを示す表示として出所識別機能ひいては品質保証機能をもつにいたつたものであつて、かくして右原告らが取得した本件表示に関して受けるべき一定の保護法益は、被告の前記のような主張だけで左右されるものではない。
又、被告は、原告らと各再使用権者との間には利害の全く相対立する商取引の当事者の関係があるにすぎず、各再使用権者相互間は、各自独立の営業をしているだけで企業協同体としての関係はないから、かかるグループを目して同項一号及び二号の「他人」と解することはできない旨主張するが、すでに認定したところに照らすと、原告ら及び再使用権者は本件表示のもつ顧客吸引機能、出所識別機能品質保証機能を保護発展させる目的において共通の利害関係を有することは明らかであり、一業種一社の原則というのも、再使用権者間の対立抗争を避ける手段としてなされていることを合わせ考えると、原告ら及び再使用権者らは右共通の目的のもとに結束する団体と評価することが可能であり、このようなグループであれば、必ずしも一個の企業体といえるような場合でなくても、同項一号及び二号の「他人」に当ると解する妨げとはならないものというべく、従つて被告のこの点の主張も肯認することができない。
又、被告は、本件表示を特定の商品ないし営業に結びつけて使用しているのは再使用権者らであり、右再使用権者らはいずれも斯業界の最高権威者であるから、これらの者が販売する商品について素人である原告らが品質管理等の統制をなし得る筈がなく、仮に右にいう「他人」に当るものがあるとしてもそれは本件表示を具体的商品に結びつけて使用している再使用権者らであつて原告らではない旨主張する。しかし、前記認定事実によると、原告ソニー企業は、再使用契約によつて前記再使用権者に対し、本件表示の使用方法、態様、許諾商品の特定、品質、広告宣伝の方法等の管理統制を行ない、自己と再使用権者のグループの中で中核的な立場において本件表示の商品化事業を推進してきた結果、本件表示が原告らを軸とする前記特定の再使用権者グループの商品及び営業の表示として周知され、出所識別機能品質保証機能を併有するに至つたものであると認められるから、原告らは、不正競争防止法1条1項1号又は二号の「他人」に当る右グループの一員として右法条の他の要件が充たされる限り被告に対しその行為の差止請求権を行使しうるというべきである。従つて被告の右主張も採用できない。
(二) 次に、本件表示が同項一号及び二号の「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」表示に当るか否かについて検討する。
前記2で認定した事実によれば、遅くとも昭和五〇年初め頃以降は、日本において大衆向商品を扱つている通常の業者であれば誰でも、本件表示を付した商品を扱つている者及び本件表示を営業表示として使用している者は原告ら又は原告らから本件表示につき再使用権を許諾された者であることを知つている状況にあつたと解されるから、本件表示は原告らを軸とする特定の再使用権者グループの商品ないし営業表示であることが広く認識されているものと解するのが相当であり、従つて、
本件表示は同項一号及び二号の「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」表示に当るということができる。
(三) さらに、被告の本件ロツカーが、同項一号の本件表示と「同一若ハ類似ノモノヲ使用シ又ハ之ヲ使用シタル商品」であるか否か、及び二号の本件表示と「同一又ハ類似ノモノヲ使用シテ」いることになるか否かについて検討する。
本件ロツカーの正面及び両側面には、米国のいくつかのアメリカン・フツトボール・チームが使用しているヘルメツトのマークに相当する図形とそのチーム名が多数千鳥状に配列され全面柄模様となつていることは当事者間に争いがなく、この別紙目録(一)の柄模様と別紙目録(二)の一、二の本件表示とを対比して検討すると、本件ロツカーの柄模様はNFL加盟のアメリカン・プロフツトボール・チーム七チーム、即ちバツフアロービルズ、サンジエゴ・チヤージヤーズ、ピツバーグ・ステイラーズ、ニユーヨーク・ヂヤイアンツ、セントルイス・カーデイナルス、デトロイト・ライオンズ、アトランタ・フアルコンズのヘルメツトのマークに相当する図形とその下に当該チームの名称を英大文字で書いたもの多数を千鳥状に配列したもので、一見して本件表示中のそれぞれ該当のチームの名称及びシンボルマークと同一であることが認められる。そうすると、本件ロツカーは本件表示を全面柄模様として使用した商品であるとみることができ、本件表示を単数使用するか複数使用するかにかかわらず、本件表示を使用していることにかわりはないと解すべきであるから、本件ロツカーは同項一号の本件表示と「同一若ハ類似ノモノヲ使用シ又ハ之ヲ使用シタル商品」に該当するとともに、二号の本件表示と「同一又ハ類似ノモノヲ使用シテ」いることにもなるということができる(同項二号の「使用シテ」いるとは、営業表示として使用している場合のみならず、商品の表示として使用している場合をも含むものと解すべきである。)。
被告は、再使用権者らが本件表示を商品に付して使用しているとしてもそれは自社の商品ないし営業のマークとしての使用ではなく単なる意匠模様としての使用にすぎず、又、被告が本件ロツカーに付しているアメリカン・フツトボールチームのマークも単なる美的要素としての意匠模様であつて商品の出所識別標識としての意味を有するものではないから、本件ロツカーに使用されているフツトボールチームのマークは右一、二号にいう同一又は類似の表示に当らない旨主張するが、同項一号は、客観的に当該表示と同一もしくは類似のものを使用し又はこれを使用した商品を規制の対象としているのであつて、例え当該マークが美的要素を含む意匠模様としての価値を有する場合であつても、それがゆえに直ちに商品の出所識別標識としての機能がないと即断できないことは明らかであるから、意匠模様と商標が両立しないことを前提とするかのように思われる被告の主張は主張自体にわかに首肯することができない。そして、本件においては、本件表示が原告らを軸とする再使用権者グループの商品であることの表示又はこれらの者の営業表示として広く認識されるに至つたこと、及びその結果として、本件ロツカーにおけるマークは、被告の主観的意図如何にかかわらず、右ロツカーの出所が前記再使用権者グループであることを示す標識として機能する側面を有すると解されることはすでに説示したとおりである。
本件ロツカーの柄模様全体が被告のいうように一つの統一性ある意匠模様となつているとしても、そこに使用されている本件表示と同一の図柄(前記七種の各図柄)が、その一つ一つの大きさ、形状、配列の仕方等からみて、いまだ意匠模様の中に完全に埋没してしまつているわけではなく、なおそれ自体として、又全体として一つのマーク(標識)としての性質、機能を失うに至つていないことは、本件ロツカーであることについて争いのない検乙第一号証自体から明らかである。右模様自体、本件表示と「同一若ハ類似ノモノ」(一号)、「同一又ハ類似ノモノ」(二号)であると解するに特段の支障はないわけである。
さらに、再使用権者らがその販売商品に被告主張の如き証紙を貼付していることは原告らの自認するとおりであるが、例え右証紙が被告のいうように取引上出所表示の役割を果しているとしても、そのことのゆえに本件表示の商品表示ないし営業表示として出所識別機能が失われていると解さなければならない合理的理由はない。
又、被告は本件ロツカーの柄模様全体が一つの統一性ある模様であるからその中から単位図柄の一つを分離して判断するのは許されないというが、前示判断が被告のいうように単位図柄の一つを分離してなす判断でないことは前記の説示から明らかである。
なお、二つの表示の類否の判断において表示の近似の判定は原則的には全体としてなされるべきである(但しこの判定のみによつて表示の類否が決定されるというものではない。)との立場においても、本件ロツカーは原告らを軸とする再使用権者グループの商品又は営業の表示である本件表示と「同一又ハ類似」の表示を付したものと認めるのが相当であつて、本件ロツカーについてフツトボールチームのマークが全面千鳥模様に配列されていることは右判断の妨げとはならない。
(四) さらに、被告が本件ロツカーを製造販売する行為が同項一号の「他人ノ商品ト混同ヲ生ゼシムル行為」及び二号の「他人ノ営業上ノ施設又ハ活動ト混同ヲ生ゼシムル行為」に当るか否かについて検討する。
すでに認定判断したように本件表示を付した商品は、原告らを軸とする特定の再使用権者グループの商品であるとの認識が広く存在することに徴すると、本件表示と同一の表示を多数柄模様として使用する本件ロツカーも、
同じく右再使用権者グループの商品であるとの誤認を生ずることは容易に考えられることであり、従つて被告の右行為は同項一号の「他人ノ商品ト混同ヲ生ゼシムル行為」に当るということができる。
又、同じように、本件表示は原告らを軸とする特定の再使用権者グループの営業を表示するとの認識が広く存在することに徴すると、本件表示と同一の表示を多数柄模様として使用する本件ロツカーを製造販売する行為も、同じく右再使用権者グループの営業活動であるとの誤認を生ずることは容易に考えられることであり、従つて被告の右行為は同項二号の「他人ノ営業上ノ施設又ハ活動ト混同ヲ生ゼシムル行為」に当るということができる。
被告は、再使用権者らが本件表示を使用して販売する商品は本件ロツカーとは全く異種の商品ばかりで、本件ロツカーに類似する商品が存在しない以上同項一号の「混同」という事態は生じようがないと主張し、右再使用権者グループに属する者で現在までに本件ロツカーのようなビニールシートで被覆したロツカーを販売している者がいないことは原告らも明らかに争つていない。しかし、同項一号の「混同」を生ずる場合とは、他人の商品と現実に店頭で取違えるおそれのある場合のみならず、商品主体又は商品の出所を誤認するおそれがある場合をも含む趣旨であると解するのが相当であるし、前掲甲第四八号証によれば、すでに右再使用権者グループの一社であるヤマト化学工業株式会社(別紙目録(三)の一九欄参照)においてビニールロツカーについて本件表示の再使用を認めることを決定していること、
そもそも本件紛争の発端は同社がダイエーの東京赤羽店で本件ロツカーが売り出されているのを発見し、将来の自社製品との混同をおそれたことにあつたことが認められる。従つてこの点についての被告の主張も肯認することができない。
(五) さらに、原告が本件ロツカーを製造販売することにより原告らが不正競争防止法1条1項柱書の「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル」場合に当るか否かについて検討する。
前記2において認定判断したように、原告らの本件表示に関する商品化事業は、
一業種一社を原則として再使用権者を慎重に検討して選択し、厳格な品質管理を行うことによつて本件表示を付した商品は特に優れた品質を有する商品として保証するとの意味を獲得すべく努力していることが窺われるから、その管理統制の及ばない被告のような業者が現われると、それだけで管理が乱れ、内部の再使用権者に対する統制が崩れるおそれがあるとともに厳重な品質管理に服さない粗悪品が出廻わり、ひいては本件表示の品質保証機能が害されるおそれが生ずることは明らかである。又、本件表示はアメリカン・フツトボールのイメージを連想せしめることによる顧客吸引力を有していることもすでに説示したとおりであるところ、被告のように本件表示と同一の表示を付した商品を販売する者が多数現われれば、それだけ本件表示の持つイメージは希薄となつて顧客吸引力が弱まり、再使用権者グループの商品の売上げは減少し、ひいては原告らの営業上の利益が害されるおそれがあることは明らかである。従つて原告らは被告の本件ロツカーの製造販売の行為により同項柱書の「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル」ものに当るということができる。
被告は、被告が販売する本件ロツカーは再使用権者らが販売する商品とは全く異種のものであるから、その販売によつて本件表示の顧客吸引力を減殺したり、再使用権者の商品の売れ行きを減少させて原告らが取得すべき使用料収入を減少せしめることはないから、原告らは右にいう「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル」ものに当らないというが、例え異種の商品についてであつても被告の如く原告らの統制に服さないものが粗悪な商品に本件表示を勝手気ままに使用した場合、本件表示の品質保証機能を害し顧客吸引力を弱まらせる虞のあることは明らかであり、また右にいう「営業上ノ利益」を単に使用料収入の増減というような収支計算上ないし会計上の利益にのみ限ると解すべき理由はないので、被告の右主張は採用できない。
4 ところで、被告は、以上のほか本件における被告の基本的な見解として、原告らが一私的契約によつて本件表示の商品化権なるものを取得したと称し、右表示の使用につき強大な独占権を行使し、暴利を得るがごときことはわが国の法制下では到底認容できない旨主張しているけれども、原告らは、特段本件においていわゆる商品化権なる権利に基づいて差止請求権の行使ができると主張しているものではなく、不正競争防止法1条1項1号及び二号をその根拠条文として右のような主張をしているのであるから、被告の前記主張自体その前提を誤つているというほかない。又、原告らについては、1ないし3において認定判断したとおり同項一号及び二号適用のための要件はすべて満たされているのであつて、私的契約によつて得た強大な独占権に基づいて原告に対する差止請求をなすことが肯認されるわけではない(なお、被告の本件ロツカーの製造販売行為は、パリ条約10条の2(2)(3)1所定の商業上の公正な慣習に反する不正競争行為に該当すると解され、これによつて営業上の利益を害されるおそれのある者は法的に保護されるのが相当であると考えられる点も参照。)。
してみると、被告の前記主張もまた理由がない。
三 次に被告は、本件表示が原告らを軸とする再使用権者グループの商品又は営業を示す表示として周知性が認められるとしても、それは原告らの詐欺脅迫まがいの公序良俗に反する行為によつて取得されたものであるから、原告らは不正競争防止法上の保護を受けられない旨主張するが、本件表示が右グループの商品又は営業の表示として周知されるに至つた経緯は、前記認定のとおりであつて、その過程で原告らが被告のいうような公序良俗に反するような行為を行ない、その結果本件表示の周知性が獲得されることとなつたと認めるに足りる証拠はない。もつとも前記認定のように、原告ソニー企業が本件表示の無断使用者に対しその点を抗議し謝罪を求めた事実はあるが、同原告のこれらの行為によつて本件表示が広く認識されるに至つたものではなく、むしろ本件表示が広く認識された後にその無断使用者が現われ、右原告が抗議等の行為に出たものであると認められるから、いずれにしても被告の右主張は失当というべきである。
四 次に、被告の不正競争防止法6条に基づく抗弁について考える。
1 被告が昭和五一年四月一日本件ロツカーにかかる形状、模様の結合意匠について意匠登録出願をし(意願昭五一ー一二二〇一、意匠にかかる物品ロツカー)、右出願が昭和五三年九月二〇日意匠登録第四九〇二九七号として登録されたことは原告らも明らかに争わないから自白したものとみなす。
そうすると、被告の右意匠権取得後における本件ロツカー製造販売行為は右意匠権行使行為にほかならない(意匠法2条3項参照。被告は登録後は勿論登録前の製造販売も遡つて権利行使行為となるかの如く主張するが、意匠権はその設定登録により発生するものであつてー意匠法20条1項ーその効力が権利の発生前に遡つて生ずると解すべき理由は何ら存しないから、右主張はもとより失当である。)。
したがつて、右意匠権取得後における被告の本件ロツカー販売行為は不正競争防止法6条に照らし何ら上来説示のような不正競争行為にはならないと一応は考えられる。
2 しかし、いまひるがえつて、被告の右意匠権取得経過をみるに、前記擬制自白事実及び前記二の1、2の認定事実に前掲甲第四八号証、第一〇七号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第一〇六号証、第一〇八号証、成立に争いのない乙第二、第三号証並びに弁論の全趣旨を総合すると、被告はもともと本件表示がわが国において原告らを軸とする再使用権者グループの商品又は営業の表示として周知となつた時点(昭和五〇年初頃)以後である同年八月ごろ、大阪在住のデザイナー【B】に対し衣類用ビニールロツカーのデザインを依頼したのであるが、その際、
右デザイナーに現在流行しているデザインのものを頼む旨の注文をしていること、
そして、被告は右デザイナーから示された何枚かの原図の中の一つであつた本件表示と同一の図柄に着目し、これが最も若者に人気が出ると判断した結果、これを使用してデザインするよう右【B】に依頼し、同年秋には本件表示と同一のデザインを完成させ、よつてこれを付した本件ロツカーを製造の上同年一一月中旬六〇〇本をダイエーに納入販売したこと、しかるところ、
原告ソニー企業はこれを知り直ちにその代理人たる弁護士を通じ被告に対し同月二九日付内容証明郵便により本件表示に関する前記経過事実の概略を説明するとともに被告の本件ロツカーの製造販売は不正競争防止法に違反するから中止されたい旨の正当な警告を行つたが、被告はこれに応じようとせず、本件ロツカーの製造販売を続ける一方、対抗措置として、原告ソニー企業を相手方とする(イ)の仮処分申請(昭和五〇年一二月一二日)、(ロ)の別件本案訴訟の提起をするとともに(同五一年二月五日)、同年四月一日には本件意匠登録の出願をなし、やがて同五三年九月二〇日その登録をうけ本件登録意匠の意匠権者となつたものであること、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
3 右認定事実によると、(イ)被告の本件意匠登録出願は、原告らの本件表示の周知性確立後に、しかも原告ソニー企業から本件ロツカーの販売が不正競争行為になる旨の正当な警告を受けたにもかかわらず、あえてこれを無視するかたわら、専ら自己のロツカー販売行為の不正競争行為性を免れるために急拠なされた対抗措置であること、(ロ)したがつて、被告はその結果として自らの意匠登録出願当時すでに著名であつた原告らの本件周知表示の「かつこよさ」等のイメージを僭用し、
その顧客吸引力を無償で利用する一種の脱法的意図があつたといわれてもやむを得ないこと、(ハ)もともと、被告の本件登録意匠は、裁判所においてこれを当然無効として扱うことはできないとしても、その模様部分は原告らの本件表示と同一であり、いまその形状を含めた物品(ロツカー)全体として観察しても尚両者の類似混同性が認められること先に説示したとおりであること、したがつて、その登録要件の存在について疑義を述べる余地もないではないこと(意匠法5条2号参照)、
以上のような事情が認定、又は推認しうるところである。
その他、意匠法が先願の商標権の存する場合には、これと抵触する登録意匠の実施はできない建前をとつている点(同法26条参照。本件に右法条をそのまま類推適用すべきであるという原告らの主張はやや性急で首肯し難いが、少くともその趣旨は一つの事情として参照に値いすると考える。)等を彼此総合すると、本件において被告が本件意匠権を援用して自らのロツカー販売行為の不正競争行為性を免れようとすることは権利の濫用として許されないものと解すべきである(思うに、不正競争防止法6条は、未登録周知表示に与えられた権利と登録意匠権等との間の調和をはかることを目的とした規定には相違ないが、右規定によつて後者が必らず前者に優越すると解することは場合により妥当性を欠き極めて不合理である。不正競争防止法の保護法益と意匠権等によつて保障されている利益との間に差等を認めなければならない合理的理由はないのであつて、一定の場合にはむしろ前者の法益を保護するのが条理に照らし妥当であると考えられる場合が生ずる。そして、上来説示の見解はこのような配慮にも斉合するものと考える。なおまた、原告らが被告の右法条に基く抗弁に対してるる述べている反論中には以上のような権利濫用の主張も包含されていることが明らかである。以上の点について大阪地裁昭和三二年八月三一日判決下民集八巻八号一六二八頁ー三国鉄工事件ー、東京地裁昭和四一年八月三〇日判決下民集一七巻七・八号七二九頁ーヤシカ事件ー参照)。
4 そうすると、被告の前記抗弁は結局失当である。
五 はたしてそうだとすると、原告らの不正競争防止法1条1項1号及び二号に基く被告の本件ロツカー販売行為差止請求は理由がある。
ただ、被告の本件ロツカー製造行為については、いまだこれを原告らの周知商品表示を使用しまたはこれを使用した商品を販売、拡布、輸出する行為(一号関係)あるいは原告らの周知営業表示を使用する行為(二号関係)とは解し難いから、原告らの被告に対する本件ロツカー製造差止請求部分はそれが不正競争防止法1条1項の1号、二号のいずれに基くものであつても理由がない。
(B) 損害賠償請求について一 原告ソニー企業の請求1 被告の本件ロツカー販売行為が不正競争行為(違法行為)となることは前記のとおりである。
そして、前記の認定判断(A)二の1ないし3及び四の1参照。)に照らすと、
被告は昭和五〇年一一月中旬頃本件ロツカーをダイエーに納入しその販売を開始した際、すでに原告らを軸とする再使用権者グループの存在と本件表示がその商品ないしは営業の表示として使用されていること及び被告が本件ロツカーを製造販売すれば前記の如く混同を生ずる虞れがあり結局原告らないしは右再使用権者らの営業上の利益を害する結果になることを認識していたか、少くとも認識し得たにもかかわらず過失によりこのことを知らなかつたと認めるのが相当である。
また、もし同原告に主張のような営業上の損害があつたとすれば、それは被告の前記不正競争行為によつて蒙つたものであることはいうまでもない。
2 そこで、すすんで損害額について検討する。
(一) まず、同原告は、被告が本件ロツカーを販売したことによつて得た利益の額をもつて原告ソニー企業の蒙つた損害の額であると解すべき旨主張している。そして、一般に不正競争行為によつて生ずる営業上の損害額を的確に把握しこれを立証することは被侵害者にとつて極めて困難であること、現に工業所有権法四法(商標法38条1項、意匠法39条1項等)や著作権法(114条1項)では同様の困難を慮つて原告ソニー企業の主張と同旨の推定規定をもうけていること等に照らすと、同原告の主張は、それ自体は相応に合理性ある見解といわなければならない(東京地裁昭和五三年一〇月三〇日判決無体裁判例集一〇巻二号五〇九頁等参照)。しかし、それにもかかわらず、当裁判所は、本件については原告ソニー企業の主張をそのまま肯認することは適切でないと考える。けだし、原告ソニー企業は現在本件表示のライセンシーとして一定の条件のもとに一定の許諾料を得てサブライセンシーに本件表示の使用許諾することをその殆んど主たる業務としているものであること前示のとおりであつて、原告ソニー企業が自らロツカーに本件表示を使用してこれを販売して利益を得るというようなことは殆んど考え難いことであるから、いま被告が本件ロツカーを売却してえた利益全部を同原告の得べかりし利益と考えることは著しく経験則に反する結果となり相当でないからである(このような売却利益は単に本件表示の使用によつてえた利益のみではなく、他の諸々の価値が還元されて生じた利益をも含んでいる。)。
かえつて、このような場合は、原告ソニー企業が本件ロツカーについて本件表示を使用することを他に許諾(サブライセンス)した場合に得べかりし許諾料相当額をこそその蒙つた損害額と解するのが相当である。
(二) そこで、以上のような見解によつて同原告の蒙つた損害額をみるに、前掲甲第一一七号証および当裁判所に顕著な別件本案訴訟の第一審における被告自身の主張によれば、被告は原告ら主張の頃本件ロツカーを三〇三四本製造し、うち二〇〇九本を一本四九〇〇円で(合計九八四万四一〇〇円)、うち六一二本を一本四六〇〇円で(合計二八一万五二〇〇円)、うち四〇八本を一本四〇〇〇円で(合計一六三万二〇〇〇円)それぞれダイエー等に売却し、合計一四二九万一三〇〇円の売上金を得たこと、なお残五本は原告ソニー企業の別件仮処分決定の執行により売却不能となつたことを認めるに十分である。そして、当裁判所に顕著なこの種業界の実情その他諸般の事情を総合すると、本件表示の再実施許諾は原告ら主張のとおり売上額の五パーセントを下廻るものでないと解するのが相当である。したがつて、
この場合原告ソニー企業の得べかりし再実施許諾料は計算上七一万四五六五円となる。
3 そうすると、原告ソニー企業の蒙つた逸失利益相当損害額は七一万四五六五円となる。
二 原告NFLPの請求 (本訴に要した弁護士費用の出捐が被告の違法な本件ロツカー販売行為によつて生じた損害であるとする請求について)1 被告の本件ロツカー販売行為が損害賠償請求の対象となるべき不法行為であることは上来説示の認定判断により明らかである。
そして、このような不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴を提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、認容された請求の内容、金額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものにかぎり、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきであると解されるところ(最高裁昭和四四年二月二七日判決民集二三巻二号四四一頁参照。)、本件における前記不正競争行為の内容や被告が原告ソニー企業から警告を受けた後も右行為を続けていたこと及び原告らが本件本訴を提起するに至るまでに原告らと被告との間で原告ら主張の各保全ならびに訴訟手続がなされていたこと(本訴請求原因(B)2(二)(1)の事実、争いがない。)等に照らすと、本件本訴はまさに原告らがその権利擁護のためにその提起を余儀なくされたものといえること、また事案に照らし原告らが訴訟追行をするためには法律専門家である弁護士に委任するほかなかつたことが明らかである。そして、証人【D】の証言とこれにより成立を認むベき甲第一一四号証、第一一五号証によれば、本件本訴について要する原告らの弁護士費用は事柄の性質上すべて原告NFLPが出捐し負担することが約されていること、そこで原告NFLPは本件本訴代理人弁護士に対しその報酬だけでも五〇万円を支払わねばならないことになつているほか、裁判上その負担が決せられるいわゆる訴訟費用以外の費用(実費)として相当な額を受任弁護士に支払わざるを得ないと認められること、本件本訴が不正競争防止法違反の有無及びこれに関しての意匠権行使の適否をめぐる相応に高度かつ専門的な訴訟であること、及び本件訴訟の審理経過等諸般の事情を総合考慮し、他方では成立につき争い甲第一一三号証(日本弁護士連合会報酬等基準規程)をも参酌すると、原告NFLPは被告の前記不法行為による弁護士費用相当の損害として被告に対し金一〇〇万円を請求し得るに十分であると解する(原告ソニー企業が本訴において認容された逸失利益相当損害額は少額にすぎないが、その原因関係すなわち被告の本件ロツカー販売行為の違法性についての主張立証に成功するための訴訟活動は相応に困難かつ厄介なものであつたと認められるから、前記相当損害金額を定めるさいに右認容金額のみにこだわることは相当でない。また、"原告らは本訴において前記損害金請求のほか不正競争行為差止請求も訴求し、認容されたわけであるが、右請求の原因は前記不法行為の原因関係と殆んど共通であるから、本件においては右差止請求認容によつて享受する原告らの利益も考慮されて然るべきである。換言すると、本件においては差止請求訴訟もまた実質上不法行為訴訟と同視しー民訴法15条1項をめぐる解釈参照ー前記金額判断にさいし重要な資料とすべきである。)。
2 そうすると、原告NFLPの本訴における弁護士費用相当損害額はその請求額の全額一〇〇万円となる。
(別件本案訴訟の応訴に要した弁護士費用の出捐が被告の違法な右訴訟提起によつて生じた損害であるとする請求について)1 被告が原告ソニー企業を相手方とする別件本案訴訟(一、二審)を起こしたこと、及び被告が一、二審とも敗訴したことは当事者間に争いがない。
しかし、一般に、民事上の紛争が発生した場合その紛争を自己に有利に解決するために訴を提起しあるいは控訴を申立てることは、憲法上広く国民に保障された基本的な権利であるから、単に当該原告が敗訴の判決を受けたからといつて直ちにその訴(及び控訴)提起行為を不法行為法上の違法性ある行為と解することは相応でない。訴権の行使が民法上の不法行為と評価されるのは、例えば権利のないことを十分知りながら相手を害するためとかその他真の紛争解決以外の目的のためにあえて自らの訴権を利用する等の特段の事情が認められる場合に限定されるべきである。
そこで、こうした見地から被告の右訴及び控訴提起行為の違法性の存否についてみるに、右訴訟は原告ソニー企業が訴外において被告の本件ロツカーの販売は不正競争防止法1条1項一、二号に違反するとしてその中止を求めたのに対し被告において同原告は右条項各号にいう「他人」に当らず被告の右行為は右各号所定の行為には該当しない、被告の本件ロツカーの販売行為は適法行為であり(控訴審において右行為は本件登録意匠権の実施行為であり適法である旨も追加して主張した)、
これを違法とする右原告の行為こそ営業妨害行為(違法行為)であるとして差止請求権の不存在確認と損害賠償金の支払い等を求めたものであつて(前掲甲第一一七号証)、その訴旨自体は一応首肯しうるところであり、自己の主張の当否の判断を裁判所に迎ぐことは原告らがいうほどに非難に値いすることとは思われず、他に前示のような為にする意図その他の特段の事情は認められない。
ことに、別件訴訟は、本件訴訟と同じように事実認定の面でも法律解釈の面でも多くの検討すべき論点を含む事案であつたことにも想到すべきである。
結局、被告の別件本案訴訟及び控訴提起行為は社会通念上容認されるべき訴権行使の域を出るものではなく、いまこれを民法上の不法行為と評価することは困難である。
2 そうすると、原告NFLPの別件本案訴訟の応訴に要した弁護士費用相当損害金の賠償請求は爾余の判断をするまでもなく失当である。
反訴関係
〔一〕 原告らの本案前の申立について まず、原告らは、本件反訴は別件本案訴訟との関係で二重起訴になり不適法であると主張している(なお、右訴訟が上告審係属中で未だ確定していないことは原本の存在及び成立に争いない乙第五号証と当事者双方の弁論の全趣旨により明らかである。)。
しかし、民訴法231条にいう二重起訴とは、両訴の事件が同一であること、即ち、当事者と請求(訴訟物)との双方が同一であることを意味すると解すべきである。
しかるに、(イ)まず、原告ソニー企業に関しては、両訴は主観的には同一であるが客観的には同一とは言い難い。即ち、本件反訴における被告の請求は、同被告において原告申請仮処分事件決定の執行を解除しなかつたことを違法行為であるとして昭和五四年一月以降同年末までに蒙つた逸失利益相当の損害を請求するものであるのに対し、別件訴訟事件のそれは原告ソニー企業が何ら不正競争防止法1条1項1号、二号に基く差止請求権を有しないにもかかわらず被告及びダイエーに本件ロツカーの販売停止を申入れて被告の営業を妨害したこと及び原告申請仮処分事件決定の執行をしたことを理由として、右差止請求権の不存在確認等と昭和五三年一月までに発生した逸失利益相当の損害と慰籍料の支払いを請求するものであつて(前掲甲第一一七号等による職権調査)、両訴の請求が別異のものであること明らかである。(ロ)次に、原告NFLPに関しては、同原告も自認するとおり同原告は別件訴訟の当事者でないから、すでにこの点において二重起訴というための要件を欠いていること明らかである。それにもかかわらずこれを二重起訴と解すべきであるという同原告の主張は独自の見解であつて採用の限りでない。両原告を何らかの理由で同視したり、両原告間に訴訟担当関係を認めることは困難である。
原告らの本案前の申立は理由がない。
〔二〕 本案について 反訴請求原因1、2の事実については当事者間に争いがない。しかし、被告の反訴請求は本件ロツカーの製造販売が本件登録意匠権の行使行為として不正競争防止法1条1項一、二号の適用を免れうることを前提とするものであるところ、右の前提を認め難いことはさきに本訴について説示したとおりである。
そうすると、被告の反訴請求は、爾余の点の判断をするまでもなく失当である。
結論
以上によれば、(一)原告らの本訴請求中、(1)原告らの本件ロツカーの販売差止請求部分と(2)原告ソニー企業の損害賠償請求中金七一万四五六五円、原告NFLPの損害賠償請求中金一〇〇万円の支払いを求める部分及びこれらに対する附帯の遅延損害金の支払いを求める部分は理由があるが、(3)その余の請求部分は理由がなく、また、(二)被告の反訴請求はすべて理由がない。
よつて、原告らの本訴請求を右の限度で認容し、その余の請求及び被告の反訴請求はこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法89条92条を、仮執行の宣言につき同法196条を各適用して、主文のとおり判決する。
追加
別紙目録(一)<12180-001><12180-002>別紙目録(一)の物件の説明書写真が示すように、アメリカン・フットボール・チームのマークであるヘルメットを図案化したものの内部に種々独自の図形ないし文字を描いたものとその下にチーム名を英語大文字で記載したものの多数個を、全面に千鳥状に配列印刷したビニール製シートをもって、組立棚枠の正面および両側面を被覆してなる箱状の組立ロッカー別紙目録(二)の一<12180-003>別紙目録(二)の二<12180-004>別紙目録(三)再使用権者及び許諾品目リスト(五一年末現在)会社名許諾品目一内外編物(株)子供用アウターウエアー二(株)ワールドパラマウントウエアー紳士用ニット布帛用品(Vセーター、
ベスト、タートル、)スポーーツシヤツ、オープンシヤツ、ボタンダウンシヤツ、
トレーナーTシヤツ、ポロシヤツ、リゾートウエアー、ニット製カーデイガン、クルーセーター三(株)モツク婦人用衣料(トレーナー、コート、ブレザー、ジヤンバー、ワンピース、スカート、スラツクス、シヤツ、ブラウス、スエーター)四(株)ワコールスリーブウエアー(男児・女児・婦人用パジヤマ、女児・婦人用ネグリジエ、ランジエリーウエアー、女児用ガウン、婦人用カップドレス)五ニツキー(株)靴下六(株)カワケイハンカチ、スカーフ、エプロン七(株)ヤマトヤマフラー、スイムスーツ八(株)オツクスフオード広島屋ネクタイ、ベルト、サスペンダー、インテリヤクロス、アスコツトタイ九栗原帽子(株)帽子一〇友国手袋(株)手袋一一(株)東北丸正スポーツバツグ、シヨルダーバツグ、カジアルレジアーバツグ(ビーチを含む)、レツスンバツグ、クラツチバツグ、カーバツグ、リユツクサツク、スキーバツグ一二月星化成(株)靴一三マルマン(株)包装用紙、紙箱、紙袋フアイバー箱、書類入れカバン、買物袋、サイン帳、消ゴム、便箋、封筒、ノートブツク、アルバム、鉛筆、シヤープペンシル、状差し、バインダー、筆箱、下敷、画びよう一四ゼンザプロニカ工業(株)ライター一五シテイズン商事ウオツチ、クロツク一六(株)ピーオーピーポスター、ペナント一七(株)ツクダオリジナルボール(ミニ、ジユニア、オフイシヤル)貯金箱、バツチ、キーホルダー、ペンダント、デコパージ一八(株)洋傘、パラソル一九ヤマト化学工業(株)ビニール傘(ワードロープ、スツール、クツシヨン、インテリアボツクス、ゴミ箱、テーブルクロス、壁紙)
裁判官 畑郁夫
裁判官 上野茂
裁判官 中田忠男
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