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事件 昭和 47年 (ワ) 7232号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1978/10/30
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告株式会社金子製作所の被告富士工業株式会社及び被告池永テグス合資会社に対する請求をいずれも棄却する。
二 原告株式会社金子製作所は別紙第三物件目録記載の投げ釣り用天秤を製造販売してはならない。
三 被告極東資材株式会社は別紙第三物件目録記載の投げ釣り用天秤を販売してはならない。
四 原告株式会社金子製作所は被告富士工業株式会社に対し、金二、九五〇万円及びこれに対する昭和五二年九月二七日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
五 被告極東資材株式会社は被告富士工業株式会社に対し、別紙第三謝罪広告目録記載の謝罪広告を同目録記載の要領で同目録記載の新聞、雑誌に各一回ずつ掲載せよ。
六 被告富士工業株式会社の、原告株式会社金子製作所及び被告極東資材株式会社に対する各その余の請求並びに被告日本釣具資材株式会社、同【A】に対する各請求をいずれも棄却する。
七 甲事件の訴訟費用は原告株式会社金子製作所の負担とし、乙事件の訴訟費用はこれを十分し、その七を原告株式会社金子製作所の、その二を被告富士工業株式会社の、その一を同極東資材株式会社の各負担とする。
八 この判決は第二、三項につき、及び被告富士工業株式会社において金一、〇〇〇万円の担保を供したときは第四項につき、それぞれ仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の申立
一 甲事件について1 原告株式会社金子製作所(以下、「原告会社」という。)(一) 被告富士工業株式会社(以下、「被告富士工業」という。)は、別紙第一物件目録記載の投げ釣り用天秤を製造販売してはならない。
(二) 被告富士工業は、原告会社に対し、金八、一九〇万円及びこれに対する昭和五二年九月二七日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
(三) 被告池永テグス合資会社(以下、「被告池永テグス」という。)は、
(一)項記載の投げ釣り用天秤を販売してはならない。
(四) 被告池永テグスは、原告会社に対し、金三、一五〇万円及びこれに対する昭和五二年九月二七日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
(五) 被告富士工業、同池永テグスは、原告会社に対し、別紙第一謝罪広告目録記載の広告を同目録記載の要領で同目録記載の新聞、雑誌に三回宛掲載せよ。
(六) 訴訟費用は、被告富士工業、同池永テグスの負担とする。
との判決及び第一ないし第四項についての仮執行の宣言を求める。
2 被告富士工業、同池永テグス(一) 主文第一項と同旨。
(二) 訴訟費用は、原告会社の負担とする。
との判決を求める。
二 乙事件について。
1 被告富士工業(一) 被告日本釣具資材株式会社(以下、「被告日本釣具」という。)及び原告会社は、別紙第二物件目録記載の振り出釣竿の保護キヤツプを製造し、譲渡し、貸し渡し、若しくは貸し渡しのため展示してはならない。
(二) 被告日本釣具及び原告会社は、その占有する前項記載の振り出釣竿の保護キヤツプ及びその製造に必要な金型を廃棄せよ。
(三) 被告日本釣具、原告会社及び被告【A】(以下、「被告【A】」という。)は、各自、被告富士工業に対し、金一五四万八、〇〇〇円及びこれに対する昭和四八年一〇月一九日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
(四) 原告会社は別紙第三物件目録記載の投げ釣り用天秤の製造販売を、また被告極東資材株式会社(以下、「被告極東資材」という。)は同目録記載の投げ釣り用天秤の販売を、それぞれしてはならない。
(五) 被告極東資材、原告会社及び被告【A】は、各自、被告富士工業に対し、
金三、六〇〇万円及びこれに対する昭和五二年九月二七日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
(六) 被告極東資材及び原告会社は、被告富士工業に対し、別紙第二謝罪広告目録記載の広告を同目録記載の要領で同目録記載の新聞、雑誌に三回宛掲載せよ。
(七) 訴訟費用は、被告極東資材、同日本釣具、原告会社及び被告【A】の負担とする。
との判決及び第一ないし第五項についての仮執行宣言を求める。
2 被告極東資材、同日本釣具、原告会社及び被告【A】(一) 被告富士工業の請求を棄却する。
(二) 訴訟費用は、被告富士工業の負担とする。
との判決を求める。
当事者の主張
一 甲事件1 原告会社の請求の原因(一) 原告会社の権利 原告会社は、左記実用新案権(以下、「本件甲実用新案権」といい、その考案を「本件甲考案」という。)(別添、公報(甲)参照)について、昭和四七年五月三〇日設定し、同年六月一五日登録をした、期間・全期間、地域・日本全国、範囲・全部とする専用実施権(以下、「本件専用実施権」という。)を有する。
考案の名称 引き通し式おもり又はうきを有する投げ釣り用屈折子出願日 昭和三九年六月二〇日出願公告日 昭和四四年五月一二日登録日 昭和四四年一二月一〇日登録番号 第八八九六一四号(二) 実用新案登録請求の範囲 本件甲考案の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の欄の記載は、次のとおりである。
「図面に示す様に引き通し式におもり又はうきをつけ一端に道糸を連結する元リング13を有し他端に屈折部4に連結する先リング7を有する引き通し部11と、
前記先リング7と関節状に連結した元リング6を有し他端に鉤素を結ぶ先リング3を有する屈折部4とを有し、前記引き通し部のおもりより先リングに近い側に先リング7側に向つて凹状をなし屈折部の屈折を制限する鍔状部を設けて成る引き通し式おもり又はうきを有する投げ釣り用屈折子の構造。」(三) 本件甲考案の構成要件 本件甲考案は、次の要件により構成される引き通し式おもり又はうきを有する投げ釣り用屈折子の構造である。
(1) 引き通し部11と屈折部4を有し、これを関節状に連結すること。
(2) 引き通し式おもり又はうきがつけられている引き通し部11は、一端に道糸を連結する元リング13を有し、他端に屈折部4と関節状に連結する先リング7を有すること。
(3) 屈折部4は、一端に引き通し部11の先リング7と関節状に連結する元リング6を有し、他端に鉤素を結ぶ先リング3を有すること。
(4) 引き通し部11に、先リング7側に向つて凹状をなし、屈折部の屈折を制限する鍔状部を設けること。
(四) 本件甲考案の作用効果(1) 引き通し部11と屈折部4を、それぞれの各端部に形成した各リング6、
7で連結しているため、双方は関節状となつて屈折自在となる。
(2) 引き通し部11に挿し通した引き通し式おもり又はうきは摺動自在となり、かつ、引き通し部11の下端部の先リング7は前記(1)のとおり屈折自在の作用を奏する。なお引き通し部11の上端の元リング13には道糸が連結される。
(3) 屈折部4の元リング6は屈折自在の作用をし、なお、その先リング3には鉤素が連結される。
(4) 引き通し部11に設けた凹状の鍔状部5は、屈折部4が関節部分を中心に屈折する範囲を制限する。すなわち、本件甲考案の仕掛けにおいては、投げの際、
引き通し部11に摺動自在につけられた引き通し式おもり又はうきは、遠心力により、(公報図面矢印)A方向に応力を受け、鍔状部をA方向に押しつけ、接合して一体となつた状態で飛行するとともに、屈接部4は、鉤素とともに空気抵抗を受けて関節部より屈折し、鍔状部5により制限を受ける状態、つまり引き通し部に対して九〇度前後に屈折した状態(公報図面の状態)で飛行及び沈降する。したがつて、鉤素と道糸との間に少なくとも屈折部の長さ以上の間隔が得られることにより、鉤素のからみが防止できるとともに、海底に着くと引き通し部11と屈折部4は一直線状になるため、根掛りせず、かつ、魚信が竿先に直接伝わる引き通し式仕掛けの特徴が十分生かされる。
ところで、従来の技術によると、投げ釣り用片天秤は、L型又はこれに近い形をしていて、投げるとき鉤素が道糸に対して天秤の長さだけ間隔をおいて飛行し、鉤素がからまることのない長所を有する反面、根掛りし易い状況下においては、L型に出張つた部分が根掛りの原因となり、仕掛けを取られることが多く、また魚信が竿先に直接伝わらない欠点を有していた。また、引き通し式仕掛は、直線状の引き通し部を有しているので、根掛りの欠点はないが、投げられて飛行する際、鉤素と道糸とがおもりの部分を先頭に飛行し、鉤素と道糸とが接近し、鉤素がからみ、魚信が良好に得ることができない欠点を有していた。
このような技術水準のもとにおいて、本件甲考案は、前記構成をとり、投げ釣り用の屈折子に関しては、引き通し部と屈折部を関節状に連結し、屈折伸展を自在のものとしながら、右屈折部の屈折度を約九〇度に制限させるため、凹状部材を採用し、その結果、従来の片天秤の持つ欠点である根掛りを防止し、また、従来の引き通し式仕掛けの持つ欠点である飛行時における鉤素と道糸のからみを防止し、その長所を生かせるもので、画期的なものである。
(五) 被告富士工業、同池永テグスの営業及びその商品 被告富士工業は、昭和四七年六月一五日前から別紙第一物件目録記載の富士ジエツト天秤(以下、「本件第一の物件」という。)を業として製造販売し、被告池永テグスは、同日前から本件第一の物件を業として販売している。
(六) 本件第一の物件の構造(1′) 牽引線条5と鉤素支持字杆8を関節状に連結していること(番号は、本件第一の物件については、別紙第一物件目録記載のものを指す。以下、同様)(2′) 引き通し式おもり1、2、3、3′、3′′(以下、「引き通し式おもりA」という。)が摺動自在に挿通されている牽引線条5は、一端に道糸接続用撚り戻し環7に連結する連結環6を有し、他端に鉤素支持干8と関節状に連結する連結環6′を有すること。
(3′) 鉤素支持杆8は、一端に牽引線条5の連結環6′と関節状に連結する連結環10′を有し、他端に鉤素を結ぶ鉤素用撚り戻し9の連結環11と連結する連結環10を有すること。
(4′) 牽引線条5に挿通されている引き通し式おもりAの先端(連結環6′に近い端)を連結環6′に向つて凹状とし、その凹状底面部に該凹部に沿つた曲面を有するステンレス補強管12が嵌着されていること。
(七) 本件甲考案と本件第一の物件との対比(1) (六)、(1′)の牽引線条5は(三)、(1)の引き通し部11に、右(1′)の鉤素支持杆8は右(1)の屈折部4に、それぞれ該当し、両者が関節状に連結されていることも同一であるから、本件第一の物件の構造(1′)は、本件甲考案の構成要件(1)を充足する。
(2) (六)、(2′)の牽引線条5に引き通し式おもりAが摺動自在に挿通されている構造は、(三)、(2)の引き通し部11に引き通し式おもりがつけられている構成と同一であり、右(2′)の連結環6は右(2)の元リング13に、右(2′)の連結環6′は右(2)の先リング7に、それぞれ該当するから、本件第一物件の構造(2′)は、本件甲考案の構成要件(2)を充足する。
(3) (六)、(3′)の鉤素支持杆8の一端の連結環10′は(三)、(3)の屈折部4の元リング6に、右(3′)の連結環10は右(3)の先リング3に、
それぞれ該当するから、本件第一の物件の構造(3′)は、本件甲考案の構成要件(3)を充足する。
(4) (六)、(4′)は(三)、(4)に該当する、すなわち、
(イ) 本件甲考案の明細書の記載によれば、本件甲考案における鍔状部は、先リング7側に向つて凹状をなす部材であつて、引き通し部11の先リング7と屈折部4(元リング6の付近)を押圧して屈折部4の屈折を引き通し部11に対して九〇度前後に制限する効果を有するものであるから、本件甲考案にいう鍔状部とは、この機能面に即して、「屈折部の屈折を押圧により制限する部材」の意に解釈されるべきであり、また、本件甲考案においては、鍔状部は引き通し部11のおもりより先リングに近い側に設けられていれば足り、引き通し部11のおもりと一体として設けられているか、別体(分離)として設けられているかは問わないものと解すべきである。もつとも明細書添附の図面には特定の具体的な形状をした鍔状部が表示されていてしかもこの鍔状部と引き通し部11のおもりとが別体のものとして図示されているけれども、いうまでもなく右図面の記載は本件甲考案の一実施例を図示したものにすぎず、この図面によつて本件甲考案にいう鍔状部の構造及び鍔状部と引き通し部11のおもりとの関係が限定されるいわれはない。
ところで、本件第一の物件においては、引き通し式おもりAの先端部(底面部。
以下同じ)を凹状に形成し、これに凹状のステンレス補強管12を嵌着し、これらにより、鉤素支持杆8(本件甲考案の屈折部4に該当する。)の屈折を押圧により制限しているのであるから、右の凹状に形成されている引き通し式おもりAの先端部とこれに嵌着されている凹状のステンレス補強管12は、本件甲考案における鍔状部に該当し、しかも牽引線条5(本件甲考案の引き通し部11に該当する。)の引き通し式おもりAより連結環6′(本件甲考案の先リング7に該当する。)に近い側に設けられている。
なお、本件第一の物件において、鉤素支持杆8の屈折を押圧により制限している態様は、次のとおりである。
(a) 引き通し式おもりAの先端部の鉛部分が残存している場合、ステンレス補強管12の底部が連結環6′を、右おもりAの先端部が鉤素支持杆8を、それぞれ押圧し、鉤素支持杆8の屈折を制限する。
(b) 引き通し式おもりAの先端部の鉛部分が摩滅した場合、ステンレス補強管12の底部が連結環6′を、右補強管12の円周部が鉤素支持杆8を、それぞれ押圧する。
右補強管12は円周部の経は小さいが、引き通し式おもりAが高速で飛行するので、十分鉤素支持杆8を押圧することができる。そしてもし、本件第一の物件からステンレス補強管12を取り除いてみると、右おもりAの先端の鉛は、一回の使用により、摩滅損壊し、鉤素支持杆8の屈折を制限する機能を失うのであつて、ステンレス補強管12は、鉤素支持杆8の屈折を制限する不可欠の部材ということができる。
以上によれば、本件第一の物件の構造(4′)は、本件甲考案の構成要件(4)を充足する。
(ロ) 仮に、本件第一の物件における引き通し式おもりAの凹状に形成されている先端部とこれに嵌着されている凹状のステンレス補強管12が、本件甲考案にいう鍔状部に該当しないとしても、引き通し式おもりAの凹状に形成されている先端部とこれに嵌着されている凹状のステンレス補強管12とは鍔状部と同一の作用効果を奏するから、両者間には置換可能性があり、しかも本件甲考案出願当時の当業技術者にとつて本件甲考案の鍔状部に代えて右おもりAの先端部と右のようなステンレス補強管12を置換しても、本件甲考案と同一の作用効果を発揮しうることは容易に想到しうることである。したがつて、本件第一の物件におけるおもりAの先端部と右ステンレス補強管12は本件甲考案の鍔状部と均等である。
また仮に、本件甲考案において鍔状部と、引き通し部11のおもりとが別体に構成されたものに限定されるとしても、本件甲考案の引き通し部11のおもりと鍔状部とを別体として設けることと本件第一の物件の引き通し式おもりAの先端部とこれに嵌着されているステンレス補強管12を右おもりAと一体として設けることとを対比すると、投げの際、飛行時において本件甲考案のものは、おもり先端部は鍔状部を押圧し、鍔状部と一体となつて飛行し、あたかもおもりの下底面自体に凹状底面を形成したようになるうえに、おもりと鍔状部とが別体であることは作用効果において何らの差異がないから、おもりを鍔状部と別体に構成することと、おもりの先端凹状部に凹状のステンレス補強管を嵌着することとの間には置換可能性があり、しかも本件甲考案出願当時の当業技術者にとつて、おもりの先端凹状部に凹状のステンレス補強管を嵌着させ一体として構成することは、容易に想到しうることである。したがつて本件第一の物件の引き通し式おもりAとその先端部及びステンレス補強管12とを一体として設けることは、本件甲考案の引き通し部11のおもりと鍔状部とを別体として設けることと均等である。
(5) しかして、本件第一の物件が奏する作用効果も本件甲考案のそれと同一である。
(6) 以上のとおりであるから、本件第一の物件は、本件甲考案の技術的範囲に属する。
(八) 損害賠償義務及び損害(1) 被告富士工業、同池永テグスは、本件専用実施権の存在を知りながら、昭和四七年六月一五日から少くとも昭和五二年九月一五日までの間、本件第一の物件を製造販売し、あるいは販売して、原告会社の本件専用実施権を侵害したから、原告会社がこれにより受けた損害を賠償すべき義務がある。すなわち、
(2) 被告富士工業は、昭和四七年六月一六日から昭和五二年九月一五日までの期間、本件第一の物件を製造販売し、これにより一カ月当り金六八六万円の売上金を得て、少くとも金一三〇万円の利益を得ていたから、右金一三〇万円に右期間の総月数六三を乗じた金八、一九〇万円の利益を挙げ、また、被告池永テグスは、右期間、本件第一の物件を販売し、これにより、一か月当り金七〇〇万円の売上金を得て、少なくとも金五〇万円の利益を得ていたから、右金五〇万円に右期間の総月数六三を乗じた金三、一五〇万円の利益を挙げた。
したがつて、原告会社は、これらと同額の損害を受け、また、模造品である本件第一の物件が右のように製造販売されていることにより、営業上の信用を失墜させられた。
(九) 侵害差止損害賠償請求及び謝罪広告請求 よつて、原告会社は、被告富士工業、同池永テグスに対し、本件第一の物件の製造販売、あるいは販売の差止を求め、かつ右(八)に記載したところにより、被告富士工業に対し損害金八、一九〇万円、被告池永テグスに対し損害金三、一五〇万円及びいずれも甲事件請求の趣旨訂正の申立書送達の日の翌日である昭和五二年九月二七日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、右被告らに対し、原告会社の営業上の信用を回復するのに必要な処置として、別紙第一謝罪広告目録記載の謝罪広告の掲載を求める。
2 被告富士工業、同池永テグスの答弁及び主張(一) 答弁(1) 請求の原因(一)、(二)、(五)、(六)の各事実は認める。
(2) 同(三)、(四)、(七)、(八)の各事実は否認する。
(二) 主張 本件甲考案と本件第一の物件とを対比すると、次のとおりである。
(1) 本件甲考案は、先端を凹状に形成した釣鐘型の引き通し式おもりの先(先リングに近い側)に、右おもりとは別個独立に先リング7側に向つて凹状をなし、
屈折部4の屈折を制限する鍔状部を設けることを要件としている。これに対し、本件第一の物件は、プラスチツク軽量材をもつて、テーパー型に形成し、その外周面に軸線と並行して縦に突出形成した三枚のプラスチツク薄板の翼状片3、3′、3′′を設けたおもり主体1の基部に、先端角を球形状にした鉛分銅2を固着して全体が砲弾型に形成された引き通し式おもりAの下底面部(鉛分銅2部分)に、連結環6′側に向つて、右おもりAの中心を貫く中心孔4を中心として、円凹状を形成し、該円凹状底面部に該円凹状に沿つた曲面を有するステンレス補強管12を嵌着しているのであるから、引き通し式おもりA自体の構造が本件甲考案にいう引き通し式おもりのそれと異なるのみならず、屈折部4(連結環6′)の屈折を制限するため引き通し式おもりA自体とは別個独立に設けられた屈状部を備えていない。
したがつて、本件第一の物件は、本件甲考案の構成要件(原告会社主張の構成要件(4))を充足しない。
(2) また、本件甲考案にかかる投げ釣り用屈折子においては、前述のとおり、
鍔状部を設けたため、これを備えた仕掛けを投げた際、鉤素と道糸との間に少なくとも屈折部4の長さの間隔が得られることにより、鉤素が道糸にからむのを防止しうる作用効果を有するが、他面、鍔状部を引き通し式おもりの進行方向に向つて凹状に形成することとしたため、仕掛けを投げた際、空気中においては空気抵抗、水中においては水の抵抗を強く受け、ひいては飛行を制限されて、遠方まで飛行し難いほか、直進も妨げられて予定の方向に向かわないのみならず、鍔状部を引き通し式おもりとは別個独立に設けることとしたため、該鍔状部が海底において根掛りし易いうえ、引き通し部11と屈折部4とを二つ折りにたたむこともできず、収納及び携帯に極めて不便であるなどの欠点を有する。これに対し、本件第一の物件は、
引き通し式おもりAが先端角を球形状として砲弾型に形成されているとともに、三枚(3、3′、3′′)の羽根を備えているため、これを投げた際、空気中における空気抵抗、水中における水の抵抗とも少く、遠方まで飛行し、かつ、予定の方向に向つて直進するほか、引き通し式おもりAの基部1をプラスチツク軽量材で作り、これに前記三枚の羽根を備えているため、仕掛けを巻き取る際、右おもりAが直ちに浮き上がつて、その根掛りを防止するのみならず、引き通し式おもりAの下底面に円凹状を形成し、該部にステンレス補強管12を嵌着しているため、これが本件甲考案における鍔状部と似通つた役割を果たし、本件甲考案にかかる投げ釣り用屈折子に備わる前述のような作用効果を有し、また、頑強なステンレス補強管12により引き通し式おもりAにおける軟弱な鉛部分が潰れて中心孔4を潰圧変形し、牽引線条5の中心孔4中における自由な摺動を妨げるに至ることを極力防止し、かつ、右円凹状部にはまる連結環6′の自由な回転をも容易にし、もつて、魚信の鋭敏な感得を保証する(なお、本件第一の物件にステンレス補強管12を設けることとしたのは、もつぱらこの効果を意図したものである。)。のみならず、右円凹状部に連結環6′がはまり込んで連結環6′が保護され、さらに、本件甲考案にかかる投げ釣り用屈折子と異なり、引き通し部11と屈折部4とを二つ折りにすることもでき、収納及び携帯に便利である。
したがつて、本件第一の物件は、本件甲考案にかかる投げ釣り用屈折子と極めて異なつた作用効果を有するから、原告会社の均等の主張は理由がない。
(3) よつて、本件第一の物件は、甲考案の構成要件の一部を充足しておらず、
またこれと均等ではないから、本件甲考案の技術的範囲に属しないものである。
二 乙事件1 被告富士工業の請求の原因(一) 当事者の営業 被告富士工業は、金属品及び合成樹脂品の製作などを目的とする株式会社であり、主として、釣具用品類の製造販売を行つている。
被告極東資材は、金属、合成樹脂の製造、加工などを目的とする株式会社であり、主として、釣具用品類の販売を行つている。
被告日本釣具は、釣具の製造販売などを目的とする株式会社であり、なお、昭和四七年五月からは倒産状態にある。
原告会社は、一般プレス加工を目的とする株式会社であり、主として、釣具用品類の製造販売を行つている。
被告【A】は、被告日本釣具の代表取締役である。
(二) 実用新案権に基づく請求(1) 被告富士工業の権利 被国富士工業は、左記実用新案権(以下、「本件乙実用新案権」といい、その考案を「本件乙考案」という。)を有する。(別添、公報(乙)参照)。
考案の名称 振り出釣竿の保護キヤツプ出願日 昭和四三年一二月一八日出願公告日 昭和四六年一一月二二日登録日 昭和四七年五月二二日登録番号 第九六四五二二号(2) 実用新案登録請求の範囲 本件乙考案の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の欄の記載は、次のとおりである。
「図面に示すように下端開放せる筒状主体1の片側に竿先導糸環が侵入し得る縦切込2を穿ち、主体の上部には連杆繋筒3又は環状帯を被設すると共に該連繋筒の下端に伸縮性を有する緊締片4又は弾性紐類を連結して下端部を縦切込から突出せる導糸環に係合せしめるようにした振り出釣竿の保護キヤツプの構造。」(3) 被告日本釣具、原告会社の製品の構造 被告日本釣具及び原告会社は、金型を使用して、昭和四六年一二月頃から別紙第二物件目録記載の保護キヤツプ(以下、「本件第二の物件」という。)を製造して譲渡し、貸し渡し、若しくは、貸し渡しのため展示している。
(4) 本件乙考案と本件第二の物件との対比 本件第二の物件は、本件乙考案の構成要件をすべて充足し、その作用効果も同一であるから、本件乙考案の技術的範囲に属するものである。
(5) 損害賠償義務及び損害(イ) 被告日本釣具の代表者である被告【A】、原告会社の代表者である【B】は、昭和四六年一二月当時、本件乙実用新案権の存在を知りながら、共謀のうえ、
原告会社において、本件第二の物件を製造し、被告日本釣具において、右物件を販売した。したがつて、被告日本釣具及び原告会社の前記各代表者は、故意により、
被告富士工業の本件乙実用新案権を侵害したものであり、被告日本釣具、原告会社の右行為は、その代表取締役の職務の執行についてなされたものであり、また、被告【A】は、取締役がその職務を行うについて、悪意により、右行為に及んだものであるから、被告日本釣具、原告会社及び被告【A】は、被告富士工業がこれにより受けた損害を賠償すべき義務がある。
(ロ) ところで、被告日本釣具は、本件第二の物件を、昭和四六年一二月二五日頃、訴外株式会社魚心観に対し、二万五、三八五個(代金合計金七八万六、四四五円相当)販売したほか、その頃から乙事件の訴提起の日である昭和四八年九月一九日までの間、全国各地の釣具店に対し、少なくとも二五万個(代金合計金七八六万円相当)販売し、これらにより、少なくとも合計金一五四万八、〇〇〇円の利益を得たから、被告富士工業は、これと同額の損害を受けた。
(6) 侵害差止及び損害賠償請求 よつて、被告富士工業は、被告日本釣具及び原告会社に対し、本件第二の物件の製造、譲渡、貸渡、若しくは貸渡のための展示の差止並びにその占有する本件第二の物件及びその製造に必要な金型の廃棄を求めるとともに、被告日本釣具、原告会社及び被告【A】に対し、各自、右(5)の損害金一五四万八、〇〇〇円及びこれに対する乙事件訴状送達の日の翌日である昭和四八年一〇月一九日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(三) 不正競争防止法第1条に基づく請求(1) いわゆる商品主体混同行為(イ) 本件第一の物件の周知性 被告富士工業は、昭和四一年九月から本件第一の物件を製造販売しているが、右物件は、同被告が甲事件において、主張したとおり、独特の形状を有し、その作用効果が極めて優れているうえ、発売以来、同被告が鋭意広告宣伝に努めてきたため、釣具店をはじめとする需要者の人気を博し、その売上げは、昭和四二年三月末までに三三万四、〇〇〇余個、その後の昭和四三年三月末までの一年間について一一〇万余個、昭和四四年三月末までの一年間について一三一万余個、昭和四五年三月末までの一年間について一七八万余個、昭和四六年三月末までの一年間について二二七万余個、昭和四七年三月末までの一年間について二六六万余個であり、逐年、飛躍的に増大し、遅くとも昭和四五年中には、その独特の形態自体から被告富士工業の製造販売にかかる釣天秤として、日本全国に広く認識されるに至つた。
(ロ) 後記本件第三の物件の形態など 被告極東資材及び原告会社の各代表者並びに被告【A】は、本件第一の物件の右のような好調な売行きに着目し、これと形態、
構造を同じくする釣天秤を販売して利益を挙げようと企て、共謀のうえ、昭和四六年四月から原告会社において、別紙第三物件目録記載の投げ釣り用天秤(マツハ天秤。以下、「本件第三の物件」という。)を製造してこれを被告極東資材に販売し、同被告はこれを他に販売している。
(ハ) 本件第一の物件と本件第三の物件との混同など 本件第一の物件と本件第三の物件とは、その形態、構造を同じくし、両者は、その鉛分銅部分において、本件第一の物件には「富士」の小さな文字が刻印されているのに対し、本件第三の物件には「マツハ」の小さな文字が刻印されている点に差異があるにすぎないから、両者は、混同され、取引の際、本件第三の物件が、被告富士工業の製造販売にかかる本件第一の物件と混同され、その結果被告富士工業はその営業上の利益を害されている。
(2) 結び よつて被告富士工業は、不正競争防止法第1条第1項第1号に基づき、原告会社及び被告極東資材に対し、本件第三の物件の製造販売の差止を求める。
(四) 不正競争防止法第1条ノ二に基づく請求(1) 損害賠償請求(イ) 侵害行為と損害賠償義務 原告会社及び被告極東資材の各代表者並びに被告【A】は、前記(三)、1、
(ロ)のとおり、共謀のうえ、需要者に対し、本件第三の物件が被告富士工業の製造販売にかかる本件第一の物件であると混同されることを知りながら、昭和四六年四月一日から、あえて、本件第三の物件を販売して、本件第一の物件との混同を生じさせた。
また、被告富士工業、同極東資材及び原告会社とは釣具用品類の販売に関して、
競争関係にあるところ、原告会社及び被告極東資材の各代表者並びに被告【A】は、本件第三の物件を製造販売するに際し、これを有利に行うため、被告富士工業の本件第一の物件の製造販売を妨害しようと企て、共謀のうえ、被告富士工業を攻撃するため、次のような行為に及んだ。すなわち、被告【A】は、自己が代表取締役である被告日本釣具が昭和四六年一〇月二三日、訴外【C】から本件甲実用新案権についての専用実施権の設定を受けると、被告富士工業による本件第一の物件の製造販売が前述したとおりの理由で本件甲実用新案権を侵害しないことを知悉しながら、あえてこれが本件甲実用新案権を侵害する旨を強弁するに至つた。また、被告極東資材は、原告会社製造の本件第三の物件の販売に乗り出したうえ、昭和四七年五月一〇日、釣具業界紙である「日本釣具新報」に、次いで、同月一五日、釣具業界紙である「釣具界」に、いずれも、当時、原告会社がいまだ本件甲実用新案権について専用実施権を取得していないのにかかわらず、「極東資材は、工業所有権者である原告会社と提携して本件第三の物件の販売に乗り出したところ、被告富士工業は、本件甲実用新案権の実施品となる本件第一の物件を製造して、右実用新案権を侵害している。」旨の虚偽の事実を掲載し、かつ、被告富士工業が、原告会社及び被告極東資材などの本件第二の物件の製造販売について、同製造販売が本件乙実用新案権の侵害となる旨警告などをしたことを故意に歪曲し、「被告富士工業は、本件第三の物件の製造販売が同被告の有する工業所有権を侵害する悪質な模造品である旨の文書を各釣具店などに送付し、あるいはその旨を釣具業界紙に広告するなどして宣伝した。」旨虚偽の事実を掲載したほか、同年六月末頃発行の釣具雑誌、「関西のつり」七月号一八一頁に「マツハ天秤の模造品、類似品にご注意」として、本件第一の物件が本件甲実用新案権の侵害品であるとの印象を与える虚偽の広告を掲載した。これらにより、被告富士工業は、営業上の信用を失墜させられ、
かつ、営業上の利益を害された。したがつて、原告会社及び被告極東資材の各代表者並びに被告【A】は、故意もしくは過失により、被告富士工業の営業上の利益を害したものであり、原告会社及び被告極東資材の右各行為は、その代表者の職務の執行についてなされたものであるから、原告会社、被告極東資材及び同【A】は、
被告富士工業がこれにより受けた損害を賠償すべき義務がある。
(ロ) 損害 ところで、原告会社、被告極東資材及び同【A】は、右の不正競争行為(いわゆる商品主体混同行為、虚偽事実の陳述流布行為)の少なくとも一つ又は両者の競合により、昭和四六年四月一日から昭和五二年三月三一日までの六年間において、本件第三の物件の製造販売により一か年平均金四、〇〇〇万円、したがつて六か年で合計金二億四、〇〇〇万円の売上金を得て、その一割五分に相当する金三、六〇〇万円の純利益を得た。
しかして、不正競争防止法第1条第1項第1号、第六号該当の各行為により、損害を受けた者は、特許法第102条第1項、実用新案法第29条第1項、商標法第38条第1項、意匠法第39条第1項の各規定などの類推適用により、相手方が侵害行為により得た利益の額をもつて、自己の受けた損害の額と推定して請求しうるものと解すべきであるから、被告富士工業が原告会社、被告極東資材及び同【A】の右不正競争行為により右六年間に受けた損害は金三、六〇〇万円と推定されるものである。
仮に、原告会社、被告極東資材及び同【A】の得た利益の額をもつて、被告富士工業の受けた損害の額と推定することが許されないとしても、被告富士工業は、本件第三の物件の販売により、本件第一の物件の販売個数を減少させられ、その売上高が金一億一、四八〇万円減少し、その二割に相当する金二、一〇〇万円の利益を失つたから、これと同額の損害を受けた。
(2) 謝罪広告請求 原告会社及び被告極東資材の各代表者並びに被告【A】は、共謀のうえ、前記(三)、(1)、(ロ)及び(四)、(1)、(イ)の態様のいわゆる商品主体混同行為及び虚偽事実の陳述流布行為を行い、その結果被告富士工業は、右商品主体混同行為によつても、その営業上の信用を害された。
(3) 結び よつて、被告富士工業は、不正競争防止法第1条ノ二第一項に基づき、原告会社、被告極東資材及び同【A】に対し、各自、右(1)の損害金三、六〇〇万円、
予備的に損害金二、一〇〇万円及びこれらに対する乙事件請求拡張の申立書送達の日の翌日である昭和五二年九月二七日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、不正競争防止法第1条ノ二第三項に基づき、原告会社及び被告極東資材に対し、営業上の信用を回復するのに必要な処置として別紙第二謝罪広告目録記載の謝罪広告の掲載を求める。
2 被告極東資材、同日本釣具、原告会社、被告【A】の答弁(一) 請求の原因(一)の事実は認める。
(二) 同(二)の(1)及び(2)の事実は認める。
(三) 同(二)の(3)の事実中、被告日本釣具、原告会社が本件第二の物件を製造販売したことがあることは認めるが、現在においても製造販売などをしていることは否認する。
(四) 同(二)の(4)の事実は認める。
(五) 同(二)の(5)、(イ)の事実は否認する。
(六) 同(二)の(5)、(ロ)の事実中、被告日本釣具が本件第二の物件を訴外株式会社魚心観に対し、二万五、三八五個(代金合計金七八万六、四四五円相当)を販売したことは認めるが、販売の時期及びその余の点は否認する。
(七) 同(三)の(1)、(イ)の事実中、被告富士工業が本件第一の物件を製造販売していることは認めるが、その余の点は否認する。
(八) 同(三)の(1)、(ロ)の事実中、原告会社が本件第三の物件を製造して被告極東資材に販売し、同被告がこれを他に販売していることは認めるが、製造販売の時期及びその余の点は否認する。
(九) 同(三)の(1)、(ハ)の事実中、本件第一の物件と本件第三の物件とは、被告富士工業主張のような差異があるだけで、形態、構造を同じくしていることは認めるが、その余の点は否認する。
(一〇) 同(四)の(1)、(イ)の事実中、被告【A】が被告日本釣具の代表取締役であること、被告日本釣具が被告富士工業主張の日に訴外【C】から本件甲実用新案権について専用実施権の設定を受けたこと、被告極東資材が被告富士工業主張の日にその主張の各釣具業界紙及び釣具雑誌に、その主張のような事実及び広告を掲載したことは認めるが、その余の点は否認する。
(二) 同(四)の(1)、(ロ)及び(2)の事実は否認する。
3 被告極東資材、同日本釣具、原告会社、被告【A】の抗弁(一) 原告会社は、本件専用実施権に基づき、その権利の行使として本件第三の物件を製造して被告極東資材に販売し、同被告は、これを他に販売しているのであるから不正競争防止法第6条の規定により、被告富士工業が主張する同法第1条第1項第1号第1条ノ二の規定は適用されないから、同被告の同法条に基づく請求は失当である。
(二) 被告日本釣具及び原告会社の本件第二の物件の製造販売などが仮に本件乙実用新案権の侵害になるとしても、そもそも、本件乙考案は、被告【A】が昭和四三年に考案したうえ、被告富士工業に対し、その試作を依頼したところ、同被告がこれを自己の考案といつわり、実用新案登録の出願をし、本件乙実用新案権を取得したものであるから、同被告の右実用新案権に基づく本件請求は、権利の濫用として、許されないものである。
4 右3の主張に対する被告富士工業の答弁 否認する。
証拠関係(省略)
理 由
甲事件について。
一 (原告会社の権利、実用新案登録請求の範囲の欄の記載、被告富士工業、同池永テグスの行為) 原告会社が本件専用実施権を有すること、本件甲考案の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の欄の記載が原告会社主張のとおりであること、被告富士工業が業として本件第一の物件を製造販売し、被告池永テグスが業としてこれを販売していることは当事者間に争いがない。
二 (本件甲考案の構成要件) 成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報)と前項で確定した本件甲考案の実用新案登録請求の範囲の欄の記載によれば、本件甲考案は、次の構成要件からなる引き通し式おもり又はうきを有する投げ釣り用屈折子であると認められる。
1 引き通し部と屈折部を有し、これを関節状に連結すること。
2 おもり又はうきが引き通し式につけられている引き通し部は、一端に道糸を連結する元リングを有し、他端に屈折部と関節状に連結する先リングを有すること。
3 屈折部は、一端に引き通し部の先リングと関節状に連結する元リングを有し、
他端に鉤素を結ぶ先リングを有すること。
4 引き通し部に、引き通し部のおもりより先リングに近い側に先リング側に向つて凹状をなし、屈折部の屈折を制限する鍔状部を設けること。
しかして、前記実用新案登録請求の範囲の欄の記載に前顕甲第一号証によつて認めうるところの考案の詳細な説明の欄の記載、特に、その欄における「この仕掛けにおいては投げの際、竿が振られると遠心力により錘は(又はうきは)矢印A方向に応力を受け鍔状部をA方向に押しつつこれに接した状態において飛行する………」(本件実用新案公報(甲)一欄三四行ないし二欄一行)との記載及び図面に示されたところを参酌し、かつ、右詳細な説明の欄の記載及び図面中に、引き通し部におもりと鍔状部とを一体として設けることも本件甲考案の技術的範囲に属することを示唆するところを見出しえないことに徴すれば、右構成要件4の「引き通し部に、引き通し部のおもりより先リングに近い側に先リング側に向つて凹状をなし、
屈折部の屈折を制限する鍔状部を設ける。」とはおもりより先リングに近い側に先リング側に向つて凹状をなし、屈折部の屈折を制限する鍔状部を、おもりのつけられている引き通し部に、おもりとは別個独立に別体として設けることをその構成とするものであつて、本件甲考案は、引き通し部におもりと鍔状部とを一体として設けるものは含まない、と認めるほかはない。
三 (本件甲考案の構成要件と本件第一の物件の構造との対比) そこで本件甲考案と本件第一の物件とを対比検討すると、本件甲考案では、前記のとおり、おもりのつけられている引き通し部に、おもりとは別体に先リング側に向つて凹状をなし、屈折部の屈折を制限する鍔状部を設けるのに対し、本件第一の物件ではおもりと別体に設けられた鍔状部なるものがないから、本件第一の物件は、本件甲考案の構成要件4を充足しない。
ところで原告会社は、本件第一の物件においては、引き通し式おもりAの先端部とこの先端部に嵌着されているステンレス補強管12は右おもりAと一体として設けられているが、これは本件甲考案のおもりと鍔状部とを別体として設けることと均等であるとの趣旨の主張をする。
しかしながら、仮に、本件第一の物件の引き通し式おもりAの先端(連結環6′に近い端)を連結環6′に向つて凹状とした先端部と、その凹状底面部に嵌着した、該凹状部に沿つた曲面を有するステンレス補強管12とが、本件甲考案における「鍔状部」に該当し、更に、本件第一の物件の「右引き通し式おもりAの先端部とこれに嵌着されているステンレス補強管12を右おもりAと一体として設けること」なる構造をもつて、原告会社主張のように本件甲考案における「おもりと鍔状部とを別体に設けること」なる構成に置換することが許されるとしても、本件甲考案出願当時の当業技術者にとつて、右置換が、本件甲考案の構成の記載から容易に推考しうるものであることを認めるに足る的確な証拠はないから、原告会社の右均等の主張は、この点においてすでに採用できない。
よつて、本件第一の物件は本件甲考案の技術的範囲に属しない。
四 (結び) 以上のとおりであるから、本件第一の物件が本件甲考案の技術的範囲に属することを前提とする原告会社の被告富士工業、同池永テグスに対する各請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
乙事件について。
一 当事者の営業 被告富士工業は、金属品及び合成樹脂品の製作などを目的とする株式会社であり、主として、釣具用品類の製造販売を行つていること、被告極東資材は、金属、
合成樹脂の製造、加工などを目的とする株式会社であり、主として、釣具用品類の販売を行つていること、被告日本釣具は、釣具の製造販売などを目的とする株式会社であること、原告会社は、一般プレス加工を目的とする株式会社であり、主として釣具用品類の製造販売を行つていること、被告【A】は、被告日本釣具の代表取締役であることは当事者間に争いがない。
二 実用新案権に基づく請求について1 (被告富士工業の権利、実用新案登録請求の範囲の欄の記載) 被告富士工業が本件乙実用新案権の実用新案権者であること、本件乙考案の願書に添附した明細書の実用新案登録請求の範囲の欄の記載が被告富士工業の主張のとおりであることは当事者間に争いがない。
2 (被告日本釣具、原告会社の製品の構造) 被告日本釣具及び原告会社が、本件第二の物件を製造販売したことは当事者間に争いがない。
ところで、被告富士工業は、本件第二の物件を、被告日本釣具及び原告会社において昭和四六年一二月頃から少なくとも乙事件の訴提起の日である昭和四八年九月一九日まで製造販売している旨主張するが、成立に争いのない乙第一二号証、証人【D】の証言により真正に成立したものと認められる乙第一四号証、同証人及び証人【E】の各証言、被告【A】本人の供述(ただし、同供述中後記措信しない部分を除く。)を総合すれば、被告日本釣具及び原告会社は、本件第二の物件を昭和四六年夏頃から同年一二月末日頃まで製造販売したことが認められる(同年一一月二二日には製造をやめた旨の被告【A】本人の供述部分は前顕乙第一二号証、証人【D】の証言に照らして採用し難い。)けれども、昭和四七年以降現在まで同被告主張のように製造譲渡等をしていることを認めるに足りる証拠はなく、また、本件第二の物件の製造に必要な金型を、被告日本釣具及び原告会社において現に占有使用していることを認めるに足りる証拠もない。
3 (本件乙考案と本件第二の物件との対比) 本件第二の物件の構造を表示するものであることについて当事者間に争いのない別紙第二物件目録の記載によれば、本件第二の物件は、本件乙考案の実用新案登録請求の範囲に記載の特徴をすべてそのまま備えていると認められるから、本件乙考案の技術的範囲に属するものであることが明らかである。
4 (被告富士工業の損害) 被告日本釣具が、本件第二の物件を、昭和四六年一二月二五日頃、訴外株式会社魚心観に対し、二万五、三八五個(代金合計金七八万六、四四五円相当)を販売したことは当事者間に争いがないが、右販売によつて被告日本釣具の得た利益額が、
いくばくであるかについては、これを認めるに足りる証拠はない。更に、前記昭和四六年一二月二五日頃から被告富士工業が主張する昭和四八年九月一九日までの間、被告日本釣具が全国各地の釣具店に対し、その主張の個数を販売したこと、したがつて同被告が右個数に相当する代金額を得たことを認めるに足りる証拠はない。
してみると、被告日本釣具が昭和四六年一二月二五日頃から前記昭和四八年九月一九日までの間、本件第二の物件を販売したことにより少なくとも金一五四万八、
〇〇〇円の利益を得た旨の被告富士工業の主張を肯認するに由ないものといわなければならない。
5 (結び) 以上のとおりであるから、被告富士工業の被告日本釣具、原告会社及び被告【A】に対する各請求は、これらの各請求が、いずれも被告日本釣具及び原告会社の主張する理由により、権利の乱用となるかどうかの点につき判断するまでもなく、理由がない。
三 不正競争防止法第1条に基づく請求について1 いわゆる商品主体混同行為(一) (本件第一の物件の形態の周知商品表示性) 被告富士工業が、昭和四一年九月から、本件第一の物件を製造販売していることは当事者間に争いがない。
ところで、被告富士工業は、本件第一の物件が遅くとも昭和四五年中には、その独特の形態自体から被告富士工業の製造販売にかかる釣天秤として日本全国に広く認識されるに至つた旨主張するので、まず、この点につき検討を加える。
商品の形態は、その商品が本来具有すべき機能を十分に発揮させることを目的として選択されたものであつて、商品の出所を表示することを目的とするものではないが、その商品の形態が、同種の商品の中にあつて独特の形状を有し、あるいは一定の商品に長期間又は短期間でも強力な宣伝などが加わつて使用された結果、商品の形態自体が、取引上二次的に、その商品の出所表示の機能を備える場合があり、
かような場合には、その形態自体が、商品の技術的機能に由来する必然的、不可選択的な結果でない限り、不正競争防止法第1条第1項第1号の規定の趣旨に照らして、同号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当するものと解すべきである。
そこで、当事者間に争いのない前記(一)の冒頭の事実、証人【D】の証言により真正に成立したものと認められる乙第三三号証の一ないし三二、同証人、証人【F】及び同【E】の各証言、被告極東資材代表者、同被告【A】本人の各供述(ただし、証人【E】の証言、被告極東資材代表者の供述中後記措信しない部分を除く。)を総合すれば、次の事実が認められる。
(1) 本件第一の物件は、プラスチツク軽量材をもつて、テーパー型に形成し、
その外周面に軸線と並行して縦に突出形成した三枚のプラスチツク薄板の翼状片3、3′、3′′を設けたおもり主体1の基部に、先端角を球形状にした鉛分銅2を固着して全体が砲弾型に形成されている引き通し式おもりAにあつて、右おもりA自体の下底面部(鉛分銅2部分)に、連結環6′側に向つて、右おもりAの中心を貫く中心孔4を中心として、先細の円凹状を形成し、該円凹状底面部に該円凹状に沿つた曲面を有するステンレス補強管12を嵌着した形態をなしている釣天秤であること。
(2) 被告富士工業は、昭和四一年九月から本件第一の物件を製造し、これを販売代理店である被告池永テグスあるいは全国各地にある約三〇軒の特約店を通じて販売していること。
(3) 本件第一の物件の被告富士工業による製造販売数量は、昭和四二年四月一日から昭和四三年三月末日までの間、約一一〇万個、昭和四三年四月一日から昭和四四年三月末日までの間、約一三一万個、昭和四四年四月一日から昭和四五年三月末日までの間、約一七八万個、昭和四五年四月一日から昭和四六年三月末日までの間、約二二七万個であつたこと。
(4) 本件第一の物件の販売を開始した昭和四一年九月以前には、本件第一の物件とその形態において同一の釣天秤は販売されておらず、また、昭和四一年九月当時釣天秤として数種類の天秤があつたけれども、いずれも本件第一の物件の形態と全体的形状において相違し、さらに、本件第一の物件の販売を開始した昭和四一年九月以降被告極東資材が本件第三の物件を市販しはじめた昭和四七年四月頃までの間、本件第一の物件と形態において同一又は類似する釣天秤は販売されていなかつたこと及び本件第一の物件の形態は、釣天秤の技術的機能に由来する必然的な結果ではなく、右の形態のものとして選択されたものであること。
(5) 被告富士工業は、本件第一の物件の販売が開始されて以来、魚釣りを取扱つている月刊雑誌に本件第一の物件についての広告を継続して掲載し、宣伝活動を行つていること。
(6) 本件第一の物件は、前記(1)で認定した形態を有するところ、前記(4)のとおり、本件第一の物件の販売の前後を通じこれと形態上同一のものはなく、また数種類あつた釣天秤の形態も全体的形状において、本件第一の物件と相違し、しかも釣天秤の形態のうちから右のような形態を選択したことなどから、本件第一の物件は、その形態において独特であり、この形態上の独特性に前記(2)、
(3)のとおりの販売態様並びに販売数量及び(5)の広告宣伝などが加わつて、
遅くとも昭和四五年中には日本全国にわたつて、釣具問屋、小売業者などにおいて、その形態は、被告富士工業の商品を示すものとして広く知られるようになつたこと。
以上の事実が認められ、右認定に反する証人【E】の証言及び被告極東資材代表者の供述部分は乙第三三号証の一ないし三二、証人【D】、同【F】の各証言に照らして採用し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
以上の認定事実によれば、本件第一の物件の形態は、被告富士工業の商品であることを示す表示として、いわゆる周知性をも取得したと解すべきである。
(二) (原告会社、被告極東資材による本件第三の物件の製造販売) 原告会社が本件第三の物件を製造してこれを被告極東資材に販売し、被告極東資材が右物件を他に販売していることは当事者間に争いがない。しかして原告会社、
被告極東資材が本件第三の物件の製造販売を開始したのが昭和四六年四月からであることを認めるに足りる証拠はなく、証人【E】の証言、被告極東資材代表者の供述及び本件口頭弁論の全趣旨によれば、原告会社が本件第三の物件の製造を開始したのは、被告富士工業が主張する日より後である昭和四七年一月か二月頃であり、
遅くとも同年四月末までには右物件を被告極東資材に販売し、被告極東資材が右物件の販売を開始したのは同年同月のうちのことであることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
ところで、被告富士工業は、原告会社の本件第三の物件の製造販売及び被告極東資材の右物件の販売は、本件第一の物件の好調な売行きに着目し、これと形態、構造を同じくする釣天秤を販売して利益を挙げようと企てた原告会社及び被告極東資材の各代表者、被告【A】の共謀に基づくものである旨主張するが、右主張を認めるに足りる証拠はない。却つて、前顕甲第一号証、成立に争いがない甲第二号証、
証人【E】の証言、被告極東資材代表者の供述を総合すると、昭和四六年末頃、当時本件甲実用新案権の専用実施権者であつた被告日本釣具から、被告極東資材を通じ、被告日本釣具が資金繰りに困難なところから右専用実施権を譲渡したい旨申込を受けた原告会社が、市場調査のうえ、これを譲り受けることとし、右権利に基づき、その実施品として、昭和四七年一月か二月頃本件第三の物件を製造し、これを被告極東資材に販売するに至つたのであつて、製造される本件第三の物件は、その形態、構造が、本件第一の物件のそれとは、製品としては似たものという結果にはなるものの、原告会社、被告極東資材としては、それは本件第一の物件が本件甲考案の権利に牴触するものであると判断し、専用実施権の譲受、本件甲考案の権利に従つたものとしての本件第三の物件の製造が、それぞれ行われたことを窺い知ることができるのである。
(三) (本件第一の物件と本件第三の物件との混同) それぞれ本件第一、第三の各物件の構造を表示するものであることについて当事者間に争いのない別紙第一、第三の各物件目録の記載、証人【D】、同【F】の各証言、被告極東資材代表者の供述、本件第一の物件であることについて当事者間に争いのない検甲第一、検乙第一各号証によれば、次の事実が認められる。
(1) 本件第一の物件と本件第三の物件とは、鉛分銅部分において、前者には「富士」の小さな文字が刻印されているのに対し、後者には「マツハ」の小さな文字が刻印されている点が相違するほかは、その形態において同一であること。
(2) 本件第一の物件と本件第三の物件とを同時に取扱つている小売店の中には、両者を同一の箱に入れておき、
顧客が「ジエツト天秤」(本件第一の物件の商品名)を指定しても、「マツハ」(「マツハ天秤」は本件第三の物件の商品名)の刻印のある本件第三の物件を売り、顧客もそれが本件第一の物件か本件第三の物件かを問題にせずに購入していること。
(3) 釣具を取扱う業者は、本件第一の物件、本件第三の物件を主に前記鉛分銅部分の文字の相違から両者を識別することができるけれども、右文字を見落せばその識別は困難であり、さらに、一般需要者は、両物件を手にしてみても本件第三の物件の製造販売の主体の表示が付されていない以上、「マツハ」の文字が本件第一の物件とは別の主体による製品を示すものであることを知らない限り、その識別は全く困難であること。
以上の事実が認められ、右認定に反する証人【E】の証言は前掲証拠に照らして採用し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
右事実によれば、原告会社及び被告極東資材は、本件第一の物件の形態と同一の形態を本件第三の物件に使用して、これを販売し、もつて原告会社、被告極東資材の商品を被告富士工業の商品であるかのように一般需要者をして混同を生ぜしめ、
また、将来にわたつて右のような混同を生ぜしめるおそれがあるものといわなければならない。
(四) (営業上の利益を害するおそれ) 前記のとおり、原告会社、被告極東資材の商品と被告富士工業のそれとが、取引者及び一般需要者に現に混同され、及び混同されるおそれがあることに照らせば、
他に特段の事情の認められない本件にあつては、被告富士工業の営業上の利益が害されるおそれがあるものというべきである。
2 原告会社、被告極東資材の抗弁(不正競争防止法第6条の主張) 原告会社及び被告極東資材は、原告会社が本件専用実施権に基づき、その権利の行使として本件第三の物件を製造して被告極東資材に販売し、同被告がこれを他に販売しているのであるから不正競争防止法第6条の規定により、被告富士工業が主張する同法第1条第1項第1号の規定は適用されない旨主張するが、本件第三の物件の構造を表示するものであることについて当事者間に争いのない別紙第三物件目録の記載及び証人【D】、同【E】の各証言によれば、本件第三の物件の構造は本件第一の物件のそれと同一であることが認められる。しかして、甲事件についてした前記判断によれば、本件第一の物件は本件甲考案の技術的範囲に属しないところ、前記認定のとおり、本件第三の物件は構造において本件第一の物件と同一であるから、本件第三の物件も本件甲考案の技術的範囲に属しないというべく、したがつて、原告会社の本件第三の物件の製造販売及び被告極東資材の右物件の販売は、
本件専用実施権に基づく権利の行使としての行為とは認め難い。
よつて、原告会社、被告極東資材の右抗弁は採用することができない。
3 結び 以上のとおりであるから、被告富士工業の原告会社、被告極東資材に対する不正競争防止法第1条第1項第1号に基づく差止請求は、いずれも理由がある。
四 不正競争防止法第1条ノ二に基づく請求について1 損害賠償請求(一) いわゆる商品主体混同行為(1) (侵害行為と損害賠償義務) 原告会社及び被告極東資材が、本件第三の物件を販売して被告富士工業の商品と混同を生ぜしめる行為をしたこと、すなわち不正競争防止法第1条第1項第1号に該当する行為をしたことは、前記三に判断したとおりである。
しかして、本件口頭弁論の全趣旨によれば、原告会社及び被告極東資材の右行為により被告富士工業が営業上の利益を害されたものと認められる。
ところで、成立に争いのない甲第三号証、同第七、第八号証、証人【E】の証言、被告極東資材代表者及び被告【A】の各供述を総合すると、次の事実を認めることができる。すなわち、前記認定したように被告日本釣具から原告会社に、本件甲考案の専用実施権を譲渡したい旨申入れがあつたのであるが、その際、原告会社及び被告極東資材では、市場調査の結果、当時被告富士工業で製造販売している釣具すなわち本件第一の物件が、本件甲考案の公報の実施例に記載されているものと同様の物品であると判断し、かつ、この物品が、被告富士工業発行のパンフレツトによると、商品名を「ジエツト天秤」とし、「パテント」とか「PAT.」の記載があることを知つたが、いわゆるパテントは存在しないことが間もなく判明したものの、右のジエツト天秤が、原告会社において譲受けることとなる専用実施権の、
もととなる本件甲考案の権利に抵触するかどうかが、原告会社及び被告極東資材の関心事であつたので、弁理士にこの点の鑑定を求めたところ、弁理士から、本件甲考案の権利に牴触する旨の鑑定を得、また、原告会社、被告極東資材の知る弁護士からも、口頭で、同様の意見であることを伝えられたことから、原告会社、被告極東資材としては、それでは原告会社が製造する釣具すなわち本件第三の物件が本件第一の物件と同一の形態ではあるが、原告会社が本件甲考案の専用実施権を得ておけば本件第三の物件を製造販売することはさし支えはないものと判断して、原告会社において、前記のとおり専用実施権を譲り受け、本件第三の物件を製造し、これを被告極東資材に販売するに至つたことを認めることができ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。
右事実によれば、原告会社、被告極東資材の各代表者は、本件第三の物件を製造販売した当時は勿論、右製造販売前本件甲考案についての専用実施権を譲り受けるに際し、すでに、それ以前に被告富士工業から製造販売されていた本件第一の物件の形態を認識し、そのうえで本件第三の物件につき本件第一の物件と同一の形態を使用したと解するのが相当であるから、この点において、原告会社及び被告極東資材としては、少くとも過失によつて被告富士工業の商品と混同を生ぜしめる行為をして被告富士工業の営業上の利益を害したものといわざるをえない。もつとも、原告会社、被告極東資材では、一名の弁理士から、本件第一の物件の構造が本件甲考案の技術的範囲に属するという鑑定を得、弁護士からも口頭で同様の意見を得たこと、原告会社、被告極東資材では、この鑑定、意見によつて、本件第三の物件を製造、販売することは、本件第一の物件と同一のものを製造、販売することにはなるが、差し支えないものと判断したものであることは、さきに認定したところであるが、ある物件の構造が、考案の技術的範囲に属するか否かの判断は、専門的知識を伴う法的判断であるから、十分な調査研究を尽すべきであり、右に認定した程度をもつては、本件第一の物件が本件甲考案の権利範囲に属するかどうかの的確な判断を下すのに十分な調査を尽したものとはいい難いから、原告会社及び被告極東資材が前記のように、弁理士の鑑定や弁護士の口頭による意見をもとにして前記のように判断して本件第三の物件を製造販売したことは、前記過失を否定する事情とはなし難い。
してみると、原告会社及び被告極東資材は、被告富士工業に対し、同被告の受けた損害を賠償すべき義務がある。
(2) (損害) 不正競争行為によつて生じた損害の賠償について、その請求しうる損害額の算定方法については、就中失われた利益については通常の不法行為の場合と異なり、企業の利益の減少が種々の要因に左右されるなどその立証が特に困難なことは経験則上明らかで、このような困難の救済を目的として、被告富士工業が主張する諸法の規定が設けられているものであり、そのうち、商標法は、不正競争防止法と、不正競業の防止という目的において共通するものであることに鑑み、当裁判所は、不正競争行為によって受けた損害の額を算定するにつき商標法第38条の規定を類推し、侵害者がその行為によつて得た利益の額をもつて被侵害者の損害の額と推定することができるものとする。したがつて、これと同旨に出た、被告富士工業の主張は正当である。そこで、これを本件についてみるに、前記認定のように原告会社が本件第三の物件を被告極東資材に販売したのは、昭和四七年四月であるが、同月中の日を確定すべき証拠がない本件では、同年五月一日以降の販売額をもつて基礎とせざるをえないところ、証人【E】の証言によれば、同月一日から、被告富士工業が主張する昭和五二年三月三一日まで本件第三の物件の年間平均売上高は、金四、
〇〇〇万円で、これに対するいわゆる純利益は右売上高の一五パーセントであることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はないから、純利益額は、金二、九五〇万円と算出され、これが原告会社が、被告極東資材に対し、右期間本件第三の物件を販売して挙げた利益であるから、原告会社の得た右利益をもつて被告富士工業の受けた損害であると推定すべく、この推定を覆すに足りる主張、立証はない。
次に、右に認定したことからすれば、昭和四七年五月一日をもつて被告極東資材が本件第三の物件を販売した始期として販売額の基礎とせざるをえないところ、被告極東資材代表者の供述によれば、同月一日から昭和五二年三月三一日までの間の右物件の年間平均売上高は金四、〇〇〇万円であることは認められるけれども、これに対するいわゆる純利益はいくばくであるかは、同供述によつてはこれを認めることができない。なお、証人【F】の証言中には、本件第三の物件とその形態、構造が同一の本件第一の物件を、被告池永テグスが販売して得た純利益は売上高の五パーセントである旨の供述があるけれども、被告池永テグスに関する右純利益率をもつて直ちに被告極東資材が本件第三の物件を販売したことにより得べき純利益率ともなし難い次第である。しかして、他に、被告極東資材において得た純利益の額を肯認するに足りる証拠はない。
(二) 虚偽事実の陳述流布行為(1) (競争関係) すでに確定した、当事者間に争いのない第二、一(当事者の営業の項)の事実によれば、被告富士工業は、原告会社及び被告極東資材との関係で不正競争防止法第1条第1項第6号にいう、競争関係にあるものということができる。
(2) (陳述流布行為とその内容) まず、被告富士工業は、同被告による本件第一の物件の製造販売が本件甲実用新案権を侵害しないことを被告【A】は知悉しながら、あえてこれが本件甲実用新案権を侵害する旨を強弁するに至つた旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
次に、被告極東資材が、昭和四七年五月一〇日、釣具業界紙である「日本釣具新報」に、次いで同月一五日、同じく釣具業界紙である「釣具界」に、「極東資材は、工業所有権者である原告会社と提携して本件第三の物件の販売に乗り出したところ、被告富士工業は、本件甲実用新案権の実施品となる本件第一の物件を製造して、右実用新案権を侵害している。」、「被告富士工業は、本件第三の物件の製造販売が同被告の有する工業所有権を侵害する悪質な模造品である旨の文書を各釣具店などに送付し、あるいはその旨を釣具業界紙に広告するなどして宣伝した。」旨を各掲載したこと、昭和四七年六月末頃発行の釣具雑誌、「関西のつり」七月号一八一頁に「マツハ天秤の模造品、類似品にご注意」との広告を掲載したことは当事者間に争いがないところ、被告富士工業は、被告極東資材が前記日時に前記各釣具業界紙及び釣具雑誌に右のような文言及び広告を掲載したのは、原告会社及び被告極東資材の各代表者並びに被告【A】の共謀に基づくものである旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。したがつて、被告極東資材の前記陳述流布行為は、同被告が単独で行つたものといわざるをえない。
(3) (陳述流布行為の内容と損害賠償義務) 右(2)に挙示した文言及び広告の掲載内容が、虚偽か否か及び営業上の信用を害するか否かにつき判断するに、まず「極東資材は、工業所有権者である原告会社と提携して本件第三の物件の販売に乗り出したところ、被告富士工業は、本件甲実用新案権の実施品となる本件第一の物件を製造して、右実用新案権を侵害している。」との文言を掲載した点については、前顕甲第二号証、証人【E】の証言、被告極東資材代表者、被告【A】本人の各供述によれば、原告会社は昭和四七年四月二二日被告日本釣具から本件甲実用新案権についての専用実施権の移転を受けたものとして、同年六月一五日その旨の登録をしたことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はないところ、右認定事実によれば、前記の点を釣具業界紙に掲載した昭和四七年五月一〇日、同月一五日当時、右専用実施権の移転登録はいまだなされていなかつたのであるから、右専用実施権の移転の効力は生じておらず、したがつて原告会社はいまだ専用実施権者であるとはいい難く、また、甲事件について前記判断したところによれば、本件第一の物件は、本件甲考案の技術的範囲に属しないものであるから、本件第一の物件は本件甲実用新案権の実施品ということはできないし、被告富士工業による本件第一の物件の製造は本件甲実用新案権を侵害するものでもない。
してみると、前記の点は、真実に反するものといわざるをえず、しかもその内容自体から被告富士工業の営業上の信用を害することが明らかである。
よつて、前記の点を釣具業界紙に掲載した行為は、不正競争防止法第1条第1項第6号にいう、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為に該当する。
次に、「被告富士工業は、本件第三の物件の製造販売が同被告の有する工業所有権を侵害する悪質な模造品である旨の文書を各釣具店などに送付し、あるいはその旨を釣具業界紙に広告するなどして宣伝した。」との文言を掲載した点については、右文言が昭和四七年五月一〇日付の「日本釣具新報」に、次いで同月一五日付の「釣具界」にそれぞれ掲載されたことは、争いがないが、右五月一五日までに、
被告富士工業が、本件第三の物件を被告極東資材において販売することをもつて被告富士工業の有する工業所有権を侵害する旨右のように文書を送付し、あるいは宣伝したことは、被告極東資材代表者の供述によつても肯認し難く、他に、これを認めるに足りる証拠はない。却つて、証人【D】の証言によれば、右五月一五日当時は本件第二の物件が被告日本釣具から販売されていることについてその代表者である被告【A】に対し、被告富士工業の有する実用新案権を侵害する旨申入れていたものであることを認めることができるのであり、同証人の証言に成立に争いのない乙第一一、第二四、第二六、第二七号証を総合すれば、被告富士工業は、昭和四七年四月一五日付で釣具店などに対し、「昭和四六年後半より同被告の有する工業所有権すなわち本件乙実用新案権の実施品である保護キヤツプと構造において同一の悪質な模造品すなわち本件第二の物件が売り出され、これが、現在工業所有権すなわち本件乙実用新案権の侵害品として処理中であること並びに本件第一の物件と同一の模造品(本件第三の物件)が出廻つている」旨を記載し、加えて、「これらの模造品の製造あるいは販売をしないように」との趣旨を記載した文書を送付したこと、さらに、この趣旨を周知せしめるため釣具業界の報道機関にも同一の文書を送付したこと、右文書を受領した各報道機関は、これを記事としてそれぞれの各釣具業界紙に右文書に記載されている内容を掲載したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。以上の事実関係からすると、被告富士工業は、本件第二の物件を指称して本件乙実用新案権を侵害する旨、主張していたのであると解するのが相当であり、右文言に、本件第三の物件を製造販売することが被告富士工業の有する工業所有権を侵害する旨文書を送付し、あるいは宣伝したとあるのは事実に反するものといわざるをえない。もつとも、前顕乙第二四号証によれば、釣具業界紙のうち「釣具新聞」の昭和四七年四月一五日付の記事中には、本件第二の物件だけでなく本件第三の物件を製造又は販売することも本件乙実用新案権を侵害する旨の記載のあることが認められるが、同号証及び証人【D】の証言によれば、右記載部分は、「釣具新聞」を発行している訴外名光通信社が記事とするために加えたものであつて、被告富士工業が、その指示に基づき掲載させたものではないことが認められるので、同号証の存在は、前段認定を左右するものではない。
しかしながら、右文言が、右に説示した点で事実に反するものではあるけれども、右文言の内容自体からすれば、右文言をもつては、いまだ被告富士工業の営業上の信用を害するものとは断定し難いばかりでなく、右文言が掲載されたことにより同被告がその営業上の信用を害されたことを認めるに足りる証拠はないので、右文言を右釣具業界紙に掲載したことをもつて、不正競争防止法第1条第1項第6号に該当するものとはなし難い。
更に、「マツハ天秤の模造品、類似品にご注意」との広告を掲載した点については、成立に争いのない乙第二二号証の一ないし三、証人【D】の証言によれば、右のような広告を掲載した雑誌が発行された昭和四七年六月末頃、当時マツハ天秤すなわち本件第三の物件と同一の形態をした釣天秤として市場に存在したのは、被告富士工業の製造にかかる本件第一の物件のみであり、これらと酷似する釣天秤も存しなかつたこと、右のような広告を掲載した部分には、被告極東資材が工業所有権つまり本件甲実用新案権に基づいてマツハ天秤を販売している旨の記載のあることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
右事実に、本件口頭弁論の全趣旨を併わせ考えれば、右広告の文言中、「マツハ天秤の模造品、類似品」というのは、富士ジエツト天秤すなわち、本件第一の物件のことを指称しているものであることは、釣具取扱い業者、一般需要者において容易に知ることができたと解するのが相当であるから、右文言は、本件第一の物件が本件甲実用新案権の侵害品であるとの印象を与えることは明らかである。
ところで、甲事件についてすでに判断したところによれば、本件第一の物件は、
本件甲考案の技術的範囲に属しないのであるから、これが属することを前提とする趣旨の右文言は、真実に反しており、しかもその内容自体から被告富士工業の営業上の信用を害するものであることが明らかであるから、右文言を含む広告を前記の釣具雑誌に掲載した行為は、不正競争防止法第1条第1項第6号にいう、他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為に該当する。
しかして、本件口頭弁論の全趣旨によれば、被告富士工業は、被告極東資材による右虚偽事実の陳述及び流布行為により営業上の利益もまた害されたものと認められる。
ところで、釣具業界紙に前認定のような虚偽事実を掲載する時点において、原告会社が本件甲実用新案権の専用実施権者であるか否かは、被告極東資材代表者において調査すれば容易に判明した事柄であるから、同被告は、少なくとも過失により被告富士工業の営業上の利益を害したものというべく、その責を免れない。被告極東資材が弁理士の鑑定、弁護士の口頭による意見を得たことは、右過失を否定する事情とはなし難いことさきに説示のとおりである。
したがつて、被告極東資材は、被告富士工業のこうむつた損害を賠償すべき義務がある。
(4) (損害) 被告富士工業が被告極東資材の虚偽事実の陳述流布行為によつてこうむつた損害の額は、前記説示の理由により、被告富士工業主張のとおり、被告極東資材が右行為によつて得た利益の額をもつて、これと推定し、これを請求することができると解すべきものであるが、前記1、(一)、(2)のとおり右利益額についてはこれを認めるに足りる証拠はない。
(三) 原告会社の抗弁(不正競争防止法第6条の主張) 原告会社は、本件専用実施権に基づき、その権利の行使として本件第三の物件を製造して被告極東資材に販売しているのであるから不正競争防止法第6条の規定により、被告富士工業が主張する同法第1条ノ二の規定は適用されない旨主張するけれども、前記三2で説示したのと同一の理由によつて採用することができない。
(四) 結び 以上のとおりであるから、被告富士工業の不正競争防止法第1条ノ二に基づく損害賠償請求は、原告会社に対して金二、九五〇万円及びこれに対する同被告が主張する昭和五二年九月二七日(この日が請求拡張の申立書送達の日の翌日であることは記録上明らか)から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を求める限度において理由があり、その余の請求は理由がなく、又、被告極東資材及び被告【A】に対する各請求は、いずれも理由がない。
2 謝罪広告請求(一) いわゆる商品主体混同行為 原告会社及び被告極東資材が、不正競争防止法第1条第1項第1号のいわゆる商品主体混同行為をしたことは、前記三に判断したとおりである。
ところで、被告富士工業は、前記のいわゆる商品主体混同行為により営業上の信用を害されたことを理由にその信用を回復するに必要な処置として別紙第二謝罪広告目録記載の謝罪広告を命ずべきことを求める旨主張するが、いわゆる商品主体混同行為により、本件第三の物件を本件第一の物件であるかのように混同を生ぜしめられたこと前認定のとおりではあるが、本件第三の物件が本件第一の物件に比較して品質などが劣悪であることなどの特段の事情の認められない本件にあつては、右混同によつて直ちに被告富士工業の営業上の信用まで害されたとは断定し難い次第である。
(二) 虚偽事実の陳述流布行為前記四、1、(二)で説示したとおり被告極東資材は、過失により不正競争防止法第1条第1項第6号該当の行為をしたものであるから、被告富士工業は、同法第1条ノ二第三項の規定により、被告極東資材に対し、被告富士工業の営業上の信用を回復するに必要な処置を命ずべきことを請求しうるものといわなければならない。
しかして、この信用回復のため必要な処置としては、本件にあらわれた、被告極東資材が前記虚偽事実の陳述流布行為をなすに至つた経緯、態様その他諸般の事情を斟酌して、別紙第三謝罪広告目録記載の謝罪広告を同目録記載の要領で同目録記載の新聞、雑誌に各一回宛掲載することをもつて十分とすべく、被告富士工業の謝罪広告請求のうち、右認容の限度をこえる部分はその必要な処置の限度をこえるものといわなければならない。
(三) 結び 以上のとおりであるから、被告富士工業の被告極東資材に対する不正競争防止法第1条ノ二に基づく謝罪広告請求は、被告極東資材に対し、別紙第三謝罪広告目録記載の謝罪広告を同目録記載の要領で同目録記載の新聞、雑誌に各一回宛掲載を求める限度において理由があるが、その余の請求は理由がなく、また、原告会社及び被告【A】に対する各請求は、いずれも理由がない。
甲事件及び乙事件の結論
そうすると、原告会社の本訴請求及び被告富士工業の被告日本釣具、原告会社及び被告【A】に対する実用新案権に基づく請求はいずれも失当として棄却すべきであるが、被告富士工業の原告会社及び被告極東資材に対する不正競争防止法第1条の請求は、相当として認容し、また、被告富士工業の原告会社に対する同法第1条ノ二の損害賠償請求は前示認定の限度において相当として認容し、その余の請求は失当として棄却すべく、被告富士工業の被告極東資材及び同【A】に対する同法第1条ノ二の損害賠償請求は失当として棄却すべきであり、被告富士工業の被告極東資材に対する同法第1条ノ二の謝罪広告請求は前示認定の限度において相当として認容し、その余の請求は失当として棄却すべく、被告富士工業の原告会社及び被告【A】に対する同法第1条ノ二の謝罪広告請求は失当であるから棄却すべきである。
訴訟費用の負担及び差止請求並びに金員支払部分の仮執行の宣言については、民事訴訟法第89条第92条第93条第196条の各規定を適用して主文のとおり判決する。
追加
第一物件目録一投げ釣り用天秤(富士ジエツト天秤)第一図は正面図、第二図は第一図におけるAーA′線上の横断図面、第三図は一部切欠縦断側面図である。
図中1はプラスチツクの軽量材をもつてテーパー型に形成したおもり主体、3、
3′、3′′は主体1の外周面にその軸線と並行して縦に突出形成した三枚のプラスチツク薄板の翼状片である。2は主体1の基部に固着した鉛分銅であつて、その先端を球形状とし、主体1と相まつて全体を砲弾型に一体化している。4はおもり主体1の中心に貫通した中心孔で、おもりの先端において連結環6′側に向つて凹状となり、その凹状底面部に該凹状に沿つた曲面を有するステンレス補強管12が嵌着されている。5は中心孔4に緩く貫通した真直な牽引線条で適当な長さを有し、両端にそれぞれ連結環6、6′を形成する。7は牽引線条5の一方の連結環6に遊動的に連結した道糸接続用撚り戻し環、8は鉤素支持干であつて、その一端に牽引線条5の連結環6′と関節状に連結する連結環10が形成され、牽引線条5に対し、屈伸自在に遊動し、他端に鉤素用撚り戻し9の連結環11に連結する連結環10が形成されている。13は鉤素である。
<12099-001><12099-002>第二物件目録一振り出釣竿の保護キヤップ第一図は正面図、第二図は側面図、第三図は使用状態を示す縦断側面図、第四図は第一図におけるA―A′線上の断面図である。図中1は適当な大きさと長さを有する適材製筒状主体で頂部は錐形に尖成し、下端は開放して幾分の弾力性を付与する。2はキヤツプ主体の前側に形成した縦切込であつて、竿先に連結した導糸環数個が侵入しうる長さと幅とを有し、下端は主体の開放口に連なつて開放する。3はキヤツプ主体の頂部にかぶせた弾力性の連繋筒で、図示のように主体の錐形頂部を覆う筒状に形成するか、あるいは主体の上部に嵌合しうる環状帯とするのも随意である。4は連繋筒の下端から一体的に延長した弾縮性の緊締片であつて、主体の縦切込2に一致する導糸環受孔5と、その下方に数個の係合透孔6とを穿つていて、この緊締片は、弾力性に富み、下方に向つて伸長しうると同時に上方に向つて収縮するものである。なお、緊締片の代りに連繋筒に弾性紐類を連結して下端に導糸環掛止部を構成してもよい。
<12099-003>第三物件目録一投げ釣り用天秤(マツハ天秤)説明及び図面は、別紙第一物件目録のそれと同一である。
第一謝罪広告目録一掲載の内容謝罪広告当社らが製造及び販売していた「富士ジエツト天秤」は、貴社の有する登録第八八九六一四号実用新案専用実施権に牴触し、その製造販売の許されないことが判決確定により明白になりました。
当社らは何らの工業所有権を有しないにもかかわらず、法に違反し、「富士ジエツト天秤」をパテント製品として宣伝販売するとともに、卸売業者に対し貴社製品である「マツハ天秤」は不正品だから買わないよう呼びかけるなど「マツハ天秤」の販売を妨害し、かつ、貴社の信用を著しく毀損いたしました。ここに深く謝罪し、貴社の信用回復のため、この広告をなすものであります。
昭和年月日静岡市<以下略>富士工業株式会社代表取締役【G】沼津市<以下略>池永テグス合資会社無限責任社員【H】東京都荒川区<以下略>株式会社金子製作所代表取締役【B】殿二掲載の要領1広告の大きさ三段、幅二〇センチメートル2使用活字表題一号文言五号広告人の住所、氏名三号名宛人の住所、氏名三号三掲載の新聞、雑誌1名称釣具新聞所在大阪市<以下略>発行者名光通信社こと【I】2名称日本釣具新報所在東京都豊島区<以下略>発行者日本釣具新報社こと【J】3名称釣具界所在東京都千代田区<以下略>発行者株式会社釣具界(代表者【K】)4名称月刊関西のつり所在大阪市<以下略>発行者株式会社関西のつり社(代表者【L】)以上第二謝罪広告目録一掲載の内容謝罪広告当社らは、相提携して昭和四七年四月より釣具用品類を製造販売するに当たり、
極東資材株式会社は実用新案登録第八八九六一四号屈折式片天秤についての専用実施権を有せず、株式会社金子製作所をして製造せしめて販売している「マツハ天秤」は貴社が昭和四一年より製造販売している「富士ジエツト天秤」と全く同一の模造品であつて、右実用新案とは異なり、これが実施品とはみられないものであるのに、「マツハ天秤」の正当の工業所有権者は当方であると称し、これを盛んに製造販売し、しかも「富士ジエツト天秤」はこの実用新案権を侵害していないのに、
侵害しているなどと前記のごとき事実に反する誤つた広告を業界新聞、雑誌に度々広告し、また、株式会社金子製作所も昭和四七年四月二八日当時は右実用新案権の専用実施権の登録もないのに、同様に「富士ジエツト天秤」は右実用新案権の侵害であるとして貴社に対し、「富士ジエツト天秤」の製造販売を取り止め、当社の指定する東京都、大阪府内の有名新聞六紙以上に当社の同意する謝罪広告をせよなどと誤つた催告をするとともに、その旨の広告を極東資材株式会社と提携して同会社をして度々なさしめ、よつて、貴社の多年にわたる営業上の信用を失墜毀損し、また、その営業を妨害し、損害を与えましたことを深く謝罪するとともに、その信用回復のため、この広告をなすものであります。
昭和年月日東京都港区<以下略>極東資材株式会社右代表取締役【M】東京都荒川区<以下略>株式会社金子製作所右代表取締役【B】静岡市<以下略>富士工業株式会社右代表取締役【G】殿二掲載の要領1広告の大きさ三段、幅二〇センチメートル2使用活字表題一号文言五号広告人の住所、氏名三号名宛人の住所、氏名三号三掲載の新聞、雑誌1名称釣具新聞所在大阪市<以下略>発行者名光通信社こと【I】2名称日本釣具新報所在東京都豊島区<以下略>発行者日本釣具新報社こと【J】3名称釣具界所在東京都千代田区<以下略>発行者株式会社釣具界(代表者【K】)4名称月刊関西のつり所在大阪市<以下略>発行者株式会社関西のつり社(代表者【L】)以上第三謝罪広告目録一掲載の内容謝罪広告当社は、昭和四七年四月より釣具用品類を販売するに当たり、昭和四七年五月一〇日及び同月一五日当時、株式会社金子製作所(代表取締役【B】)がいまだ実用新案権(考案の名称・引き通し式おもり又はうきを有する投げ釣り用屈折子、登録番号・第八八九六一四号)についての専用実施権設定の登録がないのに、「当社は工業所有権者である株式会社金子製作所と提携してマツハ天秤を販売し」と、また、富士ジエツト天秤は右実用新案権の侵害品でないのに「侵害品である」と、それぞれ事実に反する誤つたことを釣具業界紙、釣具雑誌に掲載し、よつて、貴社の多年にわたる営業上の信用を毀損し、また、その営業を妨害しましたことを深く謝罪するとともに、その信用回復のため、この広告をなすものであります。
昭和年月日東京都港区<以下略>極東資材株式会社右代表取締役【M】静岡市<以下略>富士工業株式会社右代表取締役【G】殿二掲載の要領使用活字表題一号文言(年月日も含む)五号広告人の住所、氏名三号名宛人の住所、氏名三号三掲載の新聞、雑誌1名称日本釣具新報所在東京都豊島区<以下略>発行者日本釣具新報社こと【J】2名称釣具界所在東京都千代田区<以下略>発行者株式会社釣具界(代表者【K】)3名称月刊関西のつり所在大阪市<以下略>発行者株式会社関西のつり社(代表者【L】)以上<12099-004><12099-005><12099-006><12099-007><12099-008><12099-009>
裁判官 秋吉稔弘
裁判官 伊藤博
裁判官 塚田渥
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