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事件 昭和 50年 (ワ) 3035号
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裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 1977/12/23
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
主文 原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告1 被告は別紙第二目録記載の伝票会計用伝票を製造、販売、頒布してはならない。
2 被告はその所有する右伝票及びその製造に使用する印刷用原版を廃棄せよ。
3 被告は原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和五〇年五月一日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
との判決並びに仮執行の宣言二 被告 主文同旨の判決
当事者の主張
一 原告の請求の原因1 原告は、昭和三八年一月二八日に設立された株式会社であつて、別紙第一目録記載の伝票会計用伝票(以下「本件伝票」という。)の製造販売を主たる業務としているものである。
2 本件伝票は、一般に「ミロク票簿」と称されており、伝票会計用複写伝票を起票した後、各勘定科目別に段落的にバインダーにフアイルすることにより、記帳会計の帳簿と同様の一覧性と転記を必要としない伝票会計の正確性及び迅速性とを兼ね備えているものであつて、その基本的特徴は次の二点に集約される。
(一) 伝票の上辺に余白を置くことなく第一行欄が設けられていること。このため、勘定科目別に一覧形式にフアイルしたとき、伝票相互の行間に余白を生じることなく各行が連続して表示される。
(二) 伝票の左右両側に等間隔の整理穴が設けられていること。右整理穴は、伝票を一覧形式にフアイルするためのもので、一穴のずれが一行のずれとなるよう設定されており、またこれが伝票の両側にあるため、伝票をバインダーの左右いずれにもフアイルすることができる。
3(一) 本件伝票は訴外【A】によつて考案され、一個の伝票会計システムとして体系化されたものであるが、右訴外人は、本件伝票を「ミロク票簿」と名付ける一方、昭和三二年六月原告の前身であるミロク経理協会(法人格のない社団)を設立し、以来継続的に全国の一般企業、学校法人、地方自治体、各種団体、職業会計人等に対し、右伝票会計システムを普及指導するとともに、同システムに用いられる本件伝票を製造販売してきた。そして、昭和三八年一月前記ミロク経理協会が法人化されて原告が発足し、同協会の営業の一切を承継した。
(二) 本件伝票は、前述のような形態上の特徴と普及販売活動とが相まつて、その形態自体が原告の商品であることを示す表示として、昭和四〇年頃には全国の需要者間に広く認識されるに至つた。
4 被告は、現在SSビジネス・フオームコンサルタントの名称で主として伝票会計用伝票の製造販売を業としている者であるが、昭和四五年八月原告に入社し、東京票簿システム指導部に配属され、専ら前記伝票会計システムの普及指導及び本件伝票の販売に従事していたところ昭和四六年二月原告を退社し、その後直ちに本件伝票と同一の伝票を製造販売することを企て、その印刷を訴外株式会社千明社及び同株式会社太平洋印刷に依頼することとし、遅くとも同年一一月頃から別紙第二目録記載の伝票会計用伝票(以下、原告の主張において「被告伝票」という。)を製造販売して現在に至つている。
5 被告伝票は本件伝票の前記形態上の特徴をいずれも備えているうえ、被告は、
被告伝票の価格表やパンフレツト等についても本件伝票のものを模倣し、これらに被告伝票の見本を付して、原告のユーザーを含む需要先を対象にダイレクトメール方式及び訪問方式による販売を行つているため、被告の販売活動先から原告に対したびたび問い合わせがあるなどの混乱を生じている。すなわち、被告による被告伝票の製造販売行為は、需要者が被告伝票を原告の本件伝票と混同する事態を生じさせているものである。
6 本件伝票と被告伝票とは全くの競合関係にあり、両者が混同されることによつて原告の営業上の利益は現に甚しく侵害されており、今後も継続して侵害されるおそれがある。
7 被告は、被告伝票を製造販売するにつき、故意又は少なくとも過失があつたから、右製造販売行為によつて原告が蒙つた損害を賠償する義務がある。
ところで、被告は、前述のとおり、昭和四六年一一月頃から株式会社千明社及び株式会社太平洋印刷に被告伝票の印刷を依頼し、両社から仕入原価にして少なくとも各金二〇〇〇万円に相当する製品の納入を受け、これを右原価の二・五倍の価格で販売してきたから、被告伝票の本訴提起の日(昭和五〇年四月一二日)までの総売上高は少なくとも金一億円である。そして、被告は被告伝票の製造販売を一人で行つており、その経費は高々販売価格の三割と推測されるから、右製造販売による純利益は前記総売上高の三割すなわち金三〇〇〇万円を下らず、原告は右同額の損害を蒙つたものである。
8 よつて、原告は、被告に対し、不正競争防止法第1条第1項第1号の規定に基づき被告伝票の製造販売頒布の差止と被告が所有する右伝票及びこれを印刷するための原版の廃棄とを求めるとともに、損害賠償として前記損害金の内金五〇〇万円及びこれに対する前記侵害行為の後である昭和五〇年五月一日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求の原因に対する被告の認否1 請求の原因1は認める。
2 同2のうち、原告主張の二点が本件伝票の基本的特徴であることは不知、もつとも本件伝票が右主張のような形態を備えていることは争わない。その余は認める。
3 同3は否認する。
4 同4のうち、被告が原告を退社した後直ちに本件伝票と同一の伝票の製造販売を企てたこと、被告が現在も別紙第二目録記載の伝票を製造販売していることは否認する。ことに、同目録記載の伝票中19、24、29、30及び31のものは、
これまでに製造販売したことが全くなく、また、同目録記載の伝票中右の五点を除くその余のもの(以下、被告の主張において「被告伝票」という。)は、かつて製造販売したことはあるが、昭和四九年一一月頃からその製造販売を停止している。
これらの点を除くその余の事実は認める。
5 同5ないし同7は否認する。
三 被告の主張1 商品の形態そのものが一定の要件を備えた場合に不正競争防止法第1条第1項第1号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」となりうることはいうまでもないが、商品の形態がその技術的機能に由来する必然的な結果であるときは、これを除外すべきであつて、右形態を商品表示と目することはできないものと解すべきである。なぜならば、右の場合に商品の形態を商品表示として不正競争防止法により保護すれば、その技術を存続期間の限られた特許権あるいは実用新案権以上の権利としてすなわち一種の永久権として特定人に独占させる結果になり、不合理だからである。
そこで、本件についてこれをみるに、原告が本件伝票の商品表示として主張する形態上の特徴は、以下に述べるとおり、いずれも伝票の技術的機能に由来する必然的な結果であるから、商品表示には当たらないというべきである。
(一) 伝票の上辺に余白を置くことなく第一行欄が設けられていることについて 右の形態は、伝票を一覧形式にフアイルしたとき、伝票相互の行間に余白を生じることなく各行が連続して表示されるという技術的機能を伝票に持たせたことから必然的に生ずる結果であり、このことは原告の主張自体から明らかである。すなわち、伝票の上辺に余白を置けば、一覧形式にフアイルしたとき行間にその余白が介在することは避けられず、これを避けるためには伝票の上辺に余白を置くことなく第一行欄を設けるほかはないからである。
(二) 伝票の左右両側に等間隔の整理穴(とじ穴)があることについて(1) 右の形態のうち、「伝票の左右両側にとじ穴を設けた」との点は、伝票にバインダーの左右いずれの側にもフアイルすることができるという技術的機能を持たせたことに由来する必然的な結果であり、このことも原告の主張自体から明らかである。すなわち、伝票にバインダーの左右いずれの側にもフアイルすることができるという機能を持たせるためには、これ以外の方法はありえないからである。
さらに、本件伝票のうち、別紙第一目録の33ないし36のものは、後に述べるとおり、コンピユーター用一般経理票簿であるところから、その左右両側の穴は、
本来伝票をコンピユーターにかけるためのマージナルパンチ穴であり、これをとじ穴に転用しているにすぎないともいいうる。そして、マージナルパンチ穴は伝票の左右両側に設けることが必要であるから、別紙第一目録中の33ないし36の伝票の左右両側に穴が設けられていることは、この意味からも技術的機能に由来する必然的な結果ということができる。
(2) 次に、前記形態のうち、とじ穴の間隔を「等間隔」にしたとの点につき検討するに、「等間隔」の意味については次の二とおりが考えられる。一つは、左右の一方の側に設けられたとじ穴相互の間隔が他方の側に設けられたとじ穴相互の間隔と等しいという意味であり、他の一つは、同じ側に設けられたとじ穴相互の間隔がすべて等しいという意味である。そこで、以下二つの場合に分けて考察する。
まず、前者についてみるに、この形態は、前記(1)と同様に、伝票にバインダーの左右いずれの側にもフアイルすることができるという技術的機能を持たせたことに由来する必然的な結果というべく、このことは原告の主張自体から明らかである。すなわち、バインダーの左右いずれの側にもフアイルすることができるとの原告の主張は、同じバインダーの左右両側にフアイルして両ページを一覧式の帳簿とすることができる(甲第二号証四六ページ)との意味であることは明白であるところ、同じバインダーの左右両側にフアイルする以上、左右のとじ穴相互の間隔はそのバインダーのとじ具の歯の間隔に一致しなければならず、したがつて、一方の側のとじ穴相互の間隔は他方の側のとじ穴相互の間隔と等しくならざるをえないからである。
次に、後者についてみるに、この形態は、伝票をバインダーに段落的にフアイルするとの技術的機能に由来する必然的な結果であり、このことも原告の主張自体から明らかである。すなわち、伝票を段落的にフアイルするというのは、一穴のずれが一行のずれとなるように各行を設定した伝票を適宜の穴数だけずらしてフアイルすることであり、そのためには伝票の左右一方の側に設けられたとじ穴相互の間隔がすべて等しいことが不可欠だからである。
ちなみに、本件伝票のうち、別紙第一目録の1ないし32のものはとじ穴の間隔(穴の中心から中心までの間隔)が九・五ミリメートル、目同録の33ないし36のものは一二・七ミリメートルである。
このうち、とじ穴の間隔が九・五ミリメートルというのは、工業標準化法に基づく日本工業規格「帳票の設計基準」(昭和二八年一〇月二七日制定・JIS・Z八三〇三)で定められた帳票(帳簿、伝票、届用紙その他これに準ずるもの)のとじ穴寸法と同一であるから、右の形態は万人共有のものであつて、いかなる理由によつても特定人において独占することは許されないものである。
また、とじ穴の間隔が一二・七ミリメートルというのは、日本工業規格「情報処理用連続伝票」(昭和五〇年二月一日制定・JIS・C六二八三)で定められた連続伝票(コンピユーター用伝票)のマージナルパンチ穴の間隔と同一であり、連続伝票の場合にはこれをフアイルする際右マージナルパンチ穴をとじ穴として転用することができる。そうすると、別紙第一目録の33ないし36の伝票は、コンピユーター用一般経理伝票簿であることがわかる。したがつて、とじ穴の間隔を一二・七ミリメートルとして形態は、これに接する需要者、取引者をして単にその伝票をコンピユーター用伝票として受け取らせるにとどまり、何ら出所表示機能を果すものではない。
2 また、本件伝票の形態は、以下に述べるとおり、そもそも出所表示機能を有しない。
(一) 原告の主張する本件伝票の形態上の特徴は前述のとおり専ら技術的機能に由来するものであり、需要者もまた本件伝票の購入の動機をその技術性においているのであつて、本件伝票の形態の出所を知るための目じるしとして把握することは到底考えられない。この事情は被告伝票を購入する場合においても同様である。すなわち、需要者は、被告伝票の形態が本件伝票の形態と同一又は類似であることから、その形態のいわゆる第二次的意義によりその出所を混同し、原告の伝票であると誤認して購入するのではなく、端的に被告伝票の形態の有する技術性に着目し、
その形態が一覧式伝票会計システムに適合するから購入するのである。したがつて、本件伝票の形態は出所表示機能を有するに至つていない。
(二) 本件伝票の形態が出所表示機能を有しないことは、本件伝票の販売形態からも明らかである。すなわち、原告による本件伝票の販売は、まず講習会等により需要者にミロク式会計システムを教育し、次いで原告独自のフオームを持つた専用注文書により注文を受けるという方式によつており、店頭販売方式は採つていない。このような注文販売方式においては、伝票の形態は何ら自他商品識別機能ないし出所表示機能を果しえないことが明らかである。
3 次に、被告の伝票は、「既製品伝票」と「特注伝票」とに分けられるところ、
既製品伝票が誰でも使用しうるような一般的な記載内容、形態となつているのに対し、特注伝票は、それを使用する者が独自の記載内容、形態を自ら決定したうえ、
その印刷製本を被告に請負わせて作成するものである。そして、注文者が請負人たる被告に原告主張の形態を備えた伝票の製造を発注した場合、被告が注文どおりの伝票を製造すれば、右伝票と物理的に不可分一体のものとして原告主張の形態が存在することになる。しかしながら、注文者と被告との間においては、右注文どおりに作られた伝票の形態は、単に伝票と不可分一体のものとして本来的、物理的機能を果しているにとどまり、それを超えて出所表示機能まで果しているものでないことはいうまでもない。
したがつて、仮に原告主張の形態が原告の商品であることを示す表示として周知であるとしても、少なくとも特注伝票の製造販売は何ら原告の権利を侵害するものではない。
四 被告の主張に対する原告の反論1 被告は、専ら技術的機能に由来する商品の形態を、不正競争防止法で保護すれば、技術を一種の永久権として保護する結果になり、不合理であると主張する。
しかしながら、商品の形態が専ら技術的機能に由来する場合であつても、その形態の特異性が周知性と相まつて二次的に出所表示機能を備えることは可能であるし、その場合に商品の形態模倣による不正競争行為から保護することは、商品にその形態をとらせた技術自体を保護することにはならないから、被告の右主張は理由がない。
2 また、被告は、原告主張の本件伝票の形態が専ら技術的機能に由来するものであり、また何ら出所表示機能を有しないから、商品表示たりえないと主張する。
たしかに、商品の形態は、その目的とする機能を十分発揮させるよう選択されるものであつて、機能に由来するところが大であるが、右目的からくる制約内で、目的を達成する手法の相違や材質の選択等により同種の商品の中にあつて、形態上の特異性を取得することがありうる。これを本件についてみれば、本件伝票と同種の一覧式伝票会計用伝票には、イーザー式、COC式、アルフ式等数種が存在するところ、これらは上辺に余白を置かず第一行欄が設けられている点では共通であるが、フアイル方式に差異があり、イーザー式及びCOC式はバインダーの右側にのみフアイルするため、伝票の左側にのみ整理穴があり、またアルフ式は伝票を糊で貼布する方法を採つているため、整理穴がないのに対し、本件伝票はバインダーの左右にフアイルするため、伝票の左右両側に整理穴がある。このように、本件伝票の形態は、単に一覧式伝票会計用に使用するという本来の技術的機能に由来する必然的な結果にとどまるものではなく、他の同種商品の中にあつて特異性を有している。そして、本件伝票は、右のような形態上の特異性に長年にわたる宣伝、普及活動が加わつて極めて強力な周知性を取得し、その形態自体により原告の伝票であることが識別できるまでに至つているものである。
したがつて、本件伝票の形態は、それ自体出所表示機能を有するものとして、商品表示とみるべきである。
3 次に、被告は、その製造販売する伝票のうち、いわゆる特注伝票は、注文者においてその形態を決定するものであるから、仮にこれが原告主張の形態を備えている場合であつても、その製造販売は原告の権利を侵害しないと主張する。
しかしながら、被告が伝票を製造販売するに至つた前述の経緯及びその伝票が原告と同一の会計システムに適合させることを目的としていること等からすれば、被告の製造販売する伝票は、特注伝票であつても原告主張の形態を備えていることは明らかであるし、原告主張の形態を備えている以上、その製造販売が原告の権利を侵害することに変りはない。
証拠関係(省略)
理 由一 原告が本件伝票を製造販売していること、被告が昭和四六年一一月頃から少なくとも昭和四九年一〇月末頃までの間、別紙第二目録記載の伝票(ただし、同目録中19、24、29、30、31のものを除く。)を製造販売していたことは、当事者間に争いがない。
二 原告は、本件伝票の形態を構成する諸要素のうち、(1)伝票の上辺に余白を置くことなく第一行欄が設けられていること、(2)伝票の左右両側に等間隔の整理穴が設けられていることの二点が不正競争防止法第1条第1項第1号にいう「他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」に該当すると主張する。
思うに、商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであつて、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。
しかしながら、商品の形態がその技術的機能に由来する必然的な結果であるときは、例外として、右形態につき不正競争防止法による保護を求めることは許されないものといわなければならない。けだし、この場合に商品の形態を同法により保護するとすれば、商品にその形態をとらせた技術そのものを一種の永久権として特定人に独占させるという結果を容認せざるをえず、技術的思想を保護するための特許権及び実用新案権に存続期間の制限を設けた法意を没却することになり、不合理だからである。
三 ところで、本件伝票が原告の主張する前記(1)、(2)の形態を備えていることは当事者間に争いがないから、次に、これらが本件伝票の技術的機能に由来する必然的な結果であるか否かにつき判断する。
本件伝票が、起票した複写伝票を勘定科目別に段落的にバインダーにフアイルすることにより、記帳会計の帳簿と同様の一覧性と転記を必要としない伝票会計の正確性、迅速性とを兼ね備えているものであること、本件伝票が前記(1)の形態を備えている結果、伝票を一覧形式にフアイルしたとき、伝票相互の行間に余白を生ずることなく各行が連続して表示されること、本件伝票の前記(2)の形態は伝票を一覧形式にフアイルするためのもので、その整理穴は一穴のずれが一行のずれとなるよう設定されているとともに伝票の両側に設けられているため、伝票をバインダーの左右いずれの側にもフアイルすることができることは、いずれも当事者間に争いがなく、右の事実と成立に争いのない甲第二号証、第五号証、原告代表者【B】の供述を総合すれば、本件伝票が前記(1)の形態を採つているのは、伝票を一覧形式にフアイルしたとき、伝票相互の行間にいわゆる「マ」すなわち余白が介在するのを避けるためであり、また前記(2)の形態を採つているのは、伝票を段落的にすなわち整理穴一つのずれが一行のずれに対応するように設計された伝票を適当な穴数だけずらしてフアイルし、しかも伝票の左側の穴を使つてバインダーの右側に、伝票の右側の穴を使つてバインダーの左側にフアイルするというように両ページ見開きの一覧式帳簿とするためであることが認められ、この認定に反する証拠はない。
以上の事実に基づき考察を進めることとし、まず、前記(1)の形態についてみるに、この形態は、伝票を一覧形式にフアイルした場合に伝票相互の行間に余白を生ずることなく各行が連続して表示されるようにすることを目的とするものであるが、このような技術的機能を本件伝票に持たせるためには、伝票の上辺に余白を置くことなく第一行欄を設けるという前記(1)の形態を採るほかはなく、したがって、この形態は右の技術的機能に由来する必然的な結果というべきである。
次に、前記(2)の形態についてみるに、この形態は、被告の指摘するように、
伝票の「左右両側」に「等間隔」の整理穴を設けたというのであり、さらに、右の「等間隔」であるとの点は、左右いずれか一方の側に設けられた整理穴相互の間隔が他方の側の整理穴相互の間隔と対応して相等しく、かつ同じ側に設けられた整理穴相互の間隔もすべて等しいというものであることは明らかである。
そして、伝票の「左右両側」に前者の意味で「等間隔」の整理穴を設けたとの点は、本件伝票に、同一のバインダーの左右いずれの側にもフアイルすることができるという技術的機能を持たせたことに由来する必然的な結果というべきである。なぜならば、伝票を同一のバインダーの左右いずれの側にもフアイルするためには、
左右の整理穴相互の間隔はともにそのバインダーのとじ具の歯の間隔に一致しなければならないからである。
また、整理穴が後者の意味で「等間隔」であるとの点は、伝票をバインダーに段落的にフアイルするという技術的機能を本件伝票に持たせたことに由来する必然的な結果というべきである。なぜならば、伝票を段落的にフアイルするというのは、
前述のとおり、一穴のずれが一行のずれに対応するよう設計された伝票を適当な穴数だけずらしてフアイルするということであつて、そのためには伝票の同じ側に設けられた整理穴相互の間隔はすべて等しくなければならないからである。
以上に説示したとおり、前記(1)、(2)の形態は専ら本件伝票の技術的機能に由来するものであるから、前記の理由により原告は右の形態につき不正競争防止法による保護を受けえないものである。
四 よつて、原告の本訴請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。
追加
第一目録伝票会計用に使用する伝票であつて、第一目録別紙のごとく、伝票の上辺に余白を置くことなく第一行欄が設けられ、月日、適要、金額その他が記入でき、かつ伝票の左右両側に一穴のずれが一行のずれとなるよう設定させた等間隔のバインダー用整理穴を有し、これら伝票を段落的に編綴すれば一覧式会計用帳簿の形態となる様式の各種伝票及びこれら伝票が連続的に連結する各種伝票別紙1納品票簿(6枚組)(在庫管理表付)<12049-001><12049-002>(第一目録別紙2〜38省略)第二目録伝票会計用に使用する伝票であつて、第二目録別紙のごとく、伝票の上辺に余白を置くことなく第一行欄が設けられ、月日、摘要、金額その他が記入でき、かつ伝票の左右両側に一穴のずれが一行のずれとなるように設定された等間隔のバインダー用整理穴を有し、これら伝票を段落的に編綴すれば一覧式会計用帳簿の形態となる様式の各種伝票及びこれら伝票が連続的に連結する各種伝票別紙1納品伝票(6枚組)(在庫管理表付)<12049-003><12049-004>(第二目録別紙2〜36省略)
裁判官 秋吉稔弘
裁判官 佐久間重吉
裁判官 安倉孝弘
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